説明

負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法

【課題】 本発明は、電荷制御剤としてスルホン酸系共重合体を用い、トナーの製造にエマルジョン凝集法を適用した場合でも、電荷制御剤がバインダ樹脂に均一に付着した負帯電性静電潜像現像用トナーを簡便に製造できる負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法は、ラジカル重合性単量体単位およびスルホン酸系単量体単位を含むスルホン酸系共重合体の乳化重合エマルジョンである負電荷制御剤乳化分散液(A)と、バインダ樹脂のエマルジョンであるバインダ樹脂乳化分散液(B)と、着色剤が水中に分散した着色剤分散液(C)および/または離型剤が水中に分散した離型剤分散液(D)とを配合し、混合して混合液を調製する混合工程と、該混合液に含まれる固形物を凝集させて回収する回収工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式電子写真法において、静電荷潜像を可視像とする際に用いられる負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式電子写真法において、静電荷潜像を可視像とする際に用いられるトナーとしては、バインダ樹脂、着色剤、電荷制御剤、必要に応じて磁性粉体、その他添加剤を含むものが使用されている。
トナーの製造方法としては、トナーを構成する成分を含む塊を粉砕する粉砕法が一般的であったが、近年では、粒子を微細かつ均一にでき、高解像度化に容易に対応できることから、エマルジョン凝集法が普及しつつある(例えば、特許文献1参照)。このエマルジョン凝集法では、まず、粉末状の電荷制御剤を水に分散させて電荷制御剤水分散液を調製した後、この電荷制御剤水分散液とバインダ樹脂のエマルジョンと着色剤とを混合して混合液を得る。次いで、混合液に凝集剤を添加して、混合液に含まれる固形物を凝集させ、得られた固形物を濾過により回収した後、洗浄、乾燥する。そして、この方法により得られた乾燥固形物をトナーとして用いる。
【0003】
一般的に、トナーを静電荷潜像の可視像化(現像)に供する際には、摩擦によりその表面を帯電しておく。トナーに含まれる電荷制御剤は、その際の帯電の電荷を制御するためのものであり、含金属錯体塩系の染料等が広く使用されている。しかしながら、含金属錯体塩系染料はバインダ樹脂との相溶性が低く、バインダ樹脂に均一に付着しにくいという問題を有する。そこで、電荷制御剤として、スルホン酸系単量体単位を含有する共重合体(以下、スルホン酸系共重合体という。)を用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。スルホン酸系共重合体は樹脂であるからバインダ樹脂との相溶性に優れる。
【特許文献1】特開2001−134005号公報
【特許文献2】特許第3555562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載のスルホン酸系共重合体は、ラジカル重合性単量体とスルホン酸系単量体とを、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などにより重合した後、溶媒に溶解または分散した固形物を回収することで得られる。
ところで、上記スルホン酸系共重合体を電荷制御剤として用い、エマルジョン凝集法によりトナーを製造する場合には、スルホン酸系共重合体の固形物を水に混合して電荷制御剤分散液を調製し、この電荷制御剤水分散液とバインダ樹脂のエマルジョンと着色剤とを混合して混合液を得る必要がある。しかしながら、スルホン酸系共重合体の固形物は水に再分散しにくいため、トナーの製造に上述したエマルジョン凝集法を適用した場合には、電荷制御剤であるスルホン酸系共重合体がバインダ樹脂に均一に付着したトナーを得ることは困難であった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、電荷制御剤としてスルホン酸系共重合体を用い、トナーの製造にエマルジョン凝集法を適用した場合でも、電荷制御剤がバインダ樹脂に均一に付着した負帯電性静電潜像現像用トナーを簡便に製造できる負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法は、ラジカル重合性単量体単位およびスルホン酸系単量体単位を含むスルホン酸系共重合体の乳化重合エマルジョンである負電荷制御剤乳化分散液(A)と、バインダ樹脂のエマルジョンであるバインダ樹脂乳化分散液(B)と、着色剤が水中に分散した着色剤分散液(C)および/または離型剤が水中に分散した離型剤分散液(D)とを配合し、混合して混合液を調製する混合工程と、
該混合液に含まれる固形物を凝集させて回収する回収工程とを有することを特徴とする。
本発明の負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法においては、負電荷制御剤乳化分散液(A)のスルホン酸系共重合体に含まれるラジカル重合性単量体単位がスチレン系単量体単位および/またはアクリル系単量体単位であり、スルホン酸系単量体単位が2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸単位であることが好ましい。
本発明の負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法においては、負電荷制御剤乳化分散液(A)のスルホン酸系共重合体におけるラジカル重合性単量体単位の含有量が99.5〜80質量%、かつ、スルホン酸系単量体単位の含有量が0.5〜20質量%であることが好ましい。
本発明の負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法においては、混合工程では、負電荷制御剤乳化分散液(A)中の固形分が、前記混合液に含まれる固形物中の0.1〜15質量%になるように配合することが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法によれば、エマルジョン凝集法によるトナーの製造であるにもかかわらず、電荷制御剤がバインダ樹脂に均一に付着した負帯電性静電潜像現像用トナーを簡便に製造できる。
本発明の負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法において、負電荷制御剤乳化分散液(A)のスルホン酸系共重合体に含まれるラジカル重合性単量体単位がスチレン系単量体単位および/またはアクリル系単量体単位であり、スルホン酸系単量体単位が2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸単位である場合には、重合しやすい上に、好ましい軟らかさの共重合体を得ることができる。
また、本発明の負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法において、負電荷制御剤乳化分散液(A)のスルホン酸系共重合体におけるラジカル重合性単量体単位の含有量が99.5〜80質量%、スルホン酸系単量体単位の含有量が0.5〜20質量%である場合には、得られるトナーに適度な帯電性を付与することができる。
また、混合工程にて、負電荷制御剤乳化分散液(A)中の固形分が、前記混合液に含まれる固形物中の0.1〜15質量%になるように配合する場合にも、得られるトナーに適度な帯電性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の負帯電性静電潜像現像用トナー(以下、トナーと略す。)の製造方法は、負電荷制御剤乳化分散液(A)とバインダ樹脂乳化分散液(B)と着色剤分散液(C)および/または離型剤分散液(D)とを配合し、混合して混合液を調製する混合工程と、混合工程により調製された混合液に含まれる固形物を凝集させて回収する回収工程とを有する。
以下、各工程について説明する。
【0008】
(混合工程)
混合工程にて配合される(A)〜(D)成分について説明する。
負電荷制御剤乳化分散液(A)は、ラジカル重合性単量体単位とスルホン酸系単量体単位を含むスルホン酸系共重合体の乳化重合エマルジョンである。ここで、乳化重合エマルジョンとは、乳化重合によって得られたエマルジョンのことである。また、スルホン酸系共重合体は負電荷制御剤として機能するものである。
【0009】
ラジカル重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル等のアクリル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリルなどが挙げられる。
スルホン酸系単量体としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スルホエチルアクリル酸、スルホエチルメタクリル酸、スルホエチルメタクリル酸ナトリウム等のスルホアルキル(メタ)アクリル酸系単量体などが挙げられる。
ラジカル重合性単量体およびスルホン酸系単量体はそれぞれ1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0010】
上記単量体の中でも、重合しやすい上に、好ましい軟らかさの共重合体を得ることができることから、ラジカル重合性単量体がスチレン系単量体および/またはアクリル酸系単量体であり、かつ、スルホン酸系単量体が2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸であることが好ましい。
【0011】
スルホン酸系共重合体においては、ラジカル重合性単量体単位の含有量が99.5〜80質量%およびスルホン酸系単量体単位の含有量が0.5〜20質量%であることが好ましく、ラジカル重合性単量体単位の含有量が99〜85質量%およびスルホン酸系単量体単位の量が1〜15質量%であることが好ましい(ただし、ラジカル重合性単量体単位とスルホン酸系単量体単位との合計が100質量%である。)。ラジカル重合性単量体単位の含有量が99.5質量%を超えると(スルホン酸系単量体単位の含有量が0.5質量%未満であると)、得られるトナーが充分に帯電しないことがある。また、ラジカル重合性単量体単位の含有量が80質量%未満である(スルホン酸系単量体単位の含有量が20質量%を超える)場合においても、充分な帯電性を確保することができなくなる。
【0012】
負電荷制御剤乳化分散液(A)は、ラジカル重合性単量体とスルホン酸系単量体とを乳化重合することにより得られる。
その際に使用する重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエート、ジシクロヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
乳化剤としては特に制限されず、例えば、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、メタクリロイロキシエチルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、乳化重合の際には、ラジカル重合性単量体とスルホン酸系単量体とをそれぞれ別々に添加することが好ましい。スルホン酸系単量体は水に溶解しやすいため、別々に添加することによりラジカル重合性単量体との共重合性を高めることができる。
この乳化重合により得られた負電荷制御剤乳化分散液(A)中のスルホン酸系共重合体含有量は10〜40質量%であることが好ましい。
【0013】
バインダ樹脂乳化分散液(B)は、バインダ樹脂のエマルジョンのことである。バインダ樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単独重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレンアクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体もしくはこれらの共重合体、ビスフェノール型ジオールおよびグリコールからなる群から選ばれた少なくとも1つのジオール成分と、フタル酸、イソフタル酸、テルフタル酸などのジカルボン酸またはトリメリット酸とから合成されるポリエステルが好ましい。
【0014】
バインダ樹脂乳化分散液(B)は、乳化重合により得られる。また、各種重合法により得られたバインダ樹脂の固形物を分散媒中に乳化分散させることによっても得られる。バインダ樹脂乳化分散液(B)中の乳化剤としては特に制限されず、例えば、負電荷制御剤乳化分散液(A)に含まれる乳化剤と同じものが挙げられる。
バインダ樹脂乳化分散液(B)中のバインダ樹脂含有量は10〜50質量%であることが好ましい。
【0015】
着色剤分散液(C)は、着色剤が水中に分散した液であり、具体的には、懸濁分散液であってもよいし、乳化分散液であってもよい。ただし、着色剤の分散性を向上させるためには、乳化剤(界面活性剤)を含んだ乳化分散液が好ましい。乳化剤としては、着色剤の種類に応じて、カチオン性、アニオン性、非イオン性のいずれかが適宜選択される。
【0016】
着色剤分散液(C)中の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6G、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリールメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系染顔料などを単独で、あるいは混合して使用できる。
着色剤分散液(C)中の着色剤含有量は5〜30質量%であることが好ましい。
【0017】
離型剤分散液(D)は、離型剤が水中に分散した液であり、具体的には、懸濁分散液であってもよいし、乳化分散液であってもよい。ただし、離型剤の分散性を向上させるためには、乳化剤(界面活性剤)を含んだ乳化分散液が好ましい。乳化剤としては、離型剤の種類に応じて、カチオン性、アニオン性、非イオン性のいずれかが適宜選択される。
【0018】
離型剤分散液(D)中の離型剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、高級脂肪酸ビスアミド系ワックス、カルナバワックスなどの天然ワックスなどが挙げられる。
離型剤分散液(D)中の離型剤含有量は5〜30質量%であることが好ましい。
【0019】
混合工程においては、負電荷制御剤乳化分散液(A)中の固形分が前記混合液に含まれる固形物中の0.1〜15質量%になるように各成分を配合することが好ましい。このように配合することにより、得られるトナーに含まれる負電荷制御剤乳化分散液(A)の固形分の量を0.1〜15質量%、特に0.5〜10質量%にすることができる。トナーに含まれる負電荷制御剤乳化分散液(A)の固形分の量が前記範囲外にあると、トナーが適度な帯電性を有することができず、乾式電子写真法により形成した画像の特性が低くなる傾向にある。すなわち、トナーに含まれる負電荷制御剤乳化分散液(A)の固形分の量が0.1質量%より少ないと、トナー帯電の立ち上がりが悪い、トナー飛散が多い、トナーのボタ落ちが生じるなどの問題が起きることがある。一方、10質量%より多くなると、トナーの吸湿性が強くなり、帯電量の経時変化が大きくなる。
なお、ここでいう各成分とは、(A)〜(D)成分のみを配合する場合にはこれらの成分のことであり、後述する他の成分(E)をさらに配合する場合には(A)〜(E)成分のことである。
【0020】
また、混合工程においては、上記(A)〜(D)成分以外に、他の成分(E)を配合してもよい。他の成分(E)としては、例えば、トナーを二成分系現像剤として用いる場合には、キャリアを含む分散液などが挙げられる。ここで、キャリアとしては、カスケード現像方式を実施する場合には樹脂コートしたガラスビーズやスチール球等が挙げられ、磁気ブラシ現像方式を実施する場合にはフェライトや微粉鉄、あるいはいわゆるバインダ型キャリア等が挙げられる。
【0021】
(回収工程)
回収工程において、混合液に含まれる固形物を凝集させる方法としては、例えば、凝集剤を添加する塩析法、異なる電荷の乳化分散液を混合するヘテロ凝集、乳化破壊を生じるpHに調節するpH調節法、乳化破壊を生じる温度に調節する温度調節法、混合液を真空乾燥器内に噴霧するスプレードライ法などを適用することができる。
これらの中でも塩析法が簡便であるため好ましい。塩析法を適用する場合の凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、硝酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、ポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。凝集剤の添加量は、混合液中の分散媒を100質量%とした際の0.05〜10質量%であることが好ましく、0.075〜2質量%であることがより好ましい。
【0022】
混合液を凝集して得た固形物は回収後に、洗浄、乾燥することが好ましい。洗浄方法としては、例えば、多量の水で洗い流す方法などが挙げられ、乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥法、赤外線照射乾燥法、真空乾燥法などが挙げられる。
【0023】
上記回収工程により回収された固形物をトナーとして用いる。固形物をそのままトナーとして用いてもよいが、解砕し、分級して所定範囲の粒径のものを選別して用いることが好ましい。
得られたトナーの帯電量は10〜40μC/gであることが好ましく、15〜35μC/gであることがより好ましい。トナーの帯電量が10μC/g未満であると、トナーを記録シートの所定の部分に転写することが困難になり、画像を形成した際に背景部分が汚れやすくなる。また、トナーの帯電量が40μC/gを超えると、画像濃度が低下する傾向にある。
【0024】
上述したように、トナーの製造方法における負電荷制御剤分散液(A)は、スルホン酸系共重合体の乳化重合エマルジョンであり、スルホン酸系共重合体が均一に分散した液である。そのため、負電荷制御剤乳化分散液(A)と、バインダ樹脂乳化分散液(B)と、着色剤分散液(C)および/または離型剤分散液(D)とを配合し、混合することにより、均一な混合液を調製できる。また、スルホン酸系共重合体の乳化重合エマルジョンを固形物化せずに、そのまま用いるため、混合液を容易に調製できる。したがって、この混合液に含まれる固形物を凝集させて回収することにより、電荷制御剤がバインダ樹脂に均一に付着したトナーを簡便に製造できる。そして、このようなトナーを用いれば、画質に優れた画像を形成できる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
[調製例1]負電荷制御剤乳化分散液(A−1)の調製
攪拌機、コンデンサ、温度計、窒素導入管を備えた3Lフラスコに、純水1000g、乳化剤としてモノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム塩(日本乳化剤製ニューコール293)8g、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩(日本乳化剤製ニューコール707−SF)2gを仕込み、30分間窒素置換した。
次いで、上記フラスコにペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)2gを仕込み、攪拌して溶解させた。その後、窒素導入下70℃に昇温し、スチレン280gおよびアクリル酸−2−エチルヘキシル(2−EHA)80gの単量体混合物と、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AAPS)40gを純水600gに溶解した水溶液とを、3時間かけて、それぞれ別々にフラスコ内に滴下した。その後、80℃のまま3時間重合し、残存モノマーを低減させる目的で、KPS0.3gをあらたに添加し、85℃に昇温し、2時間反応させて負電荷制御剤乳化分散液(A−1)を得た。
【0026】
[調製例2]負電荷制御剤乳化分散液(A−2)の調製
アクリル酸−2−エチルヘキシル(2−EHA)80gの代わりにアクリル酸−n−ブチル80gを混合したこと以外は調製例1と同様にして負電荷制御剤乳化分散液(A−2)を得た。
【0027】
[調製例3]負電荷制御剤乳化分散液(A−3)の調製
モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム塩8gの代わりにアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(日本乳化剤製ニューコール271A)8gを混合したこと以外は調製例1と同様にして負電荷制御剤乳化分散液(A−3)を得た。
【0028】
[調製例4]負電荷制御剤乳化分散液(A−4)の調製
モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム塩8gの代わりにメタクリロイロキシエチルスルホン酸ナトリウム(日本乳化剤製アントックスMS−2N)1gを用い、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩(日本乳化剤製ニューコール707−SF)の量を3gとしたこと以外は調製例1と同様にして負電荷制御剤乳化分散液(A−4)を得た。
【0029】
[調製例5]負電荷制御剤乳化分散液(A−5)の調製
スチレンの量を318g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の量を1gに変更したこと以外は調製例1と同様にして負電荷制御剤乳化分散液(A−5)を得た。
【0030】
[調製例6]負電荷制御剤乳化分散液(A−6)の調製
スチレンの量を220g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の量を100gに変更したこと以外は調製例1と同様にして負電荷制御剤乳化分散液(A−6)を得た。
【0031】
[調製例7]負電荷制御剤乳化分散液(A−7)の調製
サリチル酸系金属錯体(オリエント化学工業製ボントロンE−84)10g、非イオン性界面活性剤(三洋化成工業製ノニポール400)5g、イオン交換水190gを混合し、ホモジナイザ(IKA製ウルトラタラックスT25)を用いて、20分間分散させて負電荷制御剤乳化分散液(A−7)を得た。
【0032】
[調製例8]バインダ樹脂乳化分散液(B−1)の調製
攪拌機、コンデンサ、温度計、窒素導入管を備えた3Lフラスコに、純水930g、乳化剤としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(日本乳化剤製ニューコール271A)10gを仕込み、30分間窒素置換した。
次いで、上記フラスコにペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)2gを仕込み、攪拌して溶解させた。その後、窒素導入下80℃に昇温し、スチレン280gおよびアクリル酸−n−ブチル120gの単量体混合物を仕込み、攪拌した。その後、フラスコ内を80℃に昇温し3時間重合した。その後、残存モノマーを低減させる目的で、KPS0.3gをあらたに添加し、85℃に昇温し、2時間反応させてバインダ樹脂乳化分散液(B−1)を得た。
【0033】
[調製例9]バインダ樹脂乳化分散液(B−2)の調製
単量体混合物に、アクリル酸8gをさらに含有させたものを用いたこと以外は調製例8と同様にしてバインダ樹脂乳化分散液(B−2)を得た。
【0034】
[調製例10]バインダ樹脂乳化分散液(B−3)の調製
攪拌機、コンデンサ、温度計、窒素導入管を備えた3Lフラスコに、純水930g、乳化剤としてアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(日本乳化剤製ニューコール271A)10gを仕込み、30分間窒素置換した。
次いで、上記フラスコにペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)2gを仕込み、攪拌して溶解させた。その後、窒素導入下80℃に昇温し、スチレン340gとアクリル酸−n−ブチル60gとn−ドデシルメルカプタン(花王製チオカルコール20)12gの混合液を仕込み、攪拌した。その後、フラスコ内を80℃に昇温し5時間重合した。その後、残存モノマーを低減させる目的で、KPS0.3gをあらたに添加し、85℃に昇温し、2時間反応させ、さらにKPS0.3gを添加し、85℃に昇温し、2時間反応させてバインダ樹脂乳化分散液(B−3)を得た。
【0035】
[調製例11]バインダ樹脂乳化分散液(B−4)の調製
混合液に、メタクリル酸8gをさらに含有させたものを用いたこと以外は調製例10と同様にしてバインダ樹脂乳化分散液(B−4)を得た。
【0036】
[調製例12]着色剤分散液(C−1)の調製
カーボンブラック(デグサ製NIPEX150)50g、非イオン性界面活性剤(三洋化成工業製ノニポール400)5g、イオン交換水200gを混合し、ホモジナイザ(IKA製ウルトラタラックスT25)を用いて、20分間分散させて着色剤分散液(C−1)を得た。
【0037】
[調製例13]着色剤分散液(C−2)の調製
カーボンブラック50gの代わりに銅フタロシアニン顔料(大日本インキ化学工業製FASTOGEN BLUE TGRC.I.B 15:3)50gを混合したこと以外は調製例12と同様にして着色剤分散液(C−2)を得た。
【0038】
[調製例14]離型剤分散液(D−1)の調製
パラフィンワックス(日本精蝋製HNP0190)50g、カチオン性界面活性剤(花王製サニゾールB50)5g、イオン交換水200gを混合し、95℃に加熱した後、ホモジナイザ(IKA製ウルトラタラックスT25)を用いて、20分間分散させて離型剤分散液(D−1)を得た。
【0039】
(製造例1〜12)
1Lフラスコ中に、上述のようにして得た負電荷制御剤乳化分散液(A−1〜7)、バインダ樹脂乳化分散液(B−1〜4)、着色剤分散液(C−1,2)、離型剤分散液(D−1)を表1および表2に示す量で配合し、攪拌しながら45℃に昇温して混合した。
次いで、上記フラスコ中に10質量%の凝集剤である硝酸カルシウム水溶液30gを2時間かけて添加した後、95℃まで昇温し、その温度で2時間保持した。その後、室温に冷却し、純水500gで洗浄しながら、ヌッチェで吸引濾過(ろ紙:ADVANTEC製FILTER PAPER 5C)して固形物を回収した後、回収した固形物を45℃で20時間送風乾燥した。
次いで、乾燥した固形物を解砕機(岩谷産業製ミルサー600)により解砕した後、分級機(日本ニューマティック工業MDS)により分級して、平均粒径7μmのトナーを得た。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
製造例1〜12のトナーについて、以下の方法により帯電量を測定した。
まず、トナー100質量%に対してアエロジルR972(日本アエロジル製シリカ粒子)0.5質量%を添加して均一に攪拌した。次いで、このシリカ付きトナー100質量部にキャリア(パウダーテック社製F−150)3質量部を混合した後、20℃、65%RHの雰囲気下で60分間摩擦帯電させた。そして、帯電量を、東芝ケミカル製ブローオフ粉体帯電量測定装置(TB−203)により測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0043】
スルホン酸系共重合体の乳化重合エマルジョンである負電荷制御剤乳化分散液(A)を、バインダ樹脂乳化分散液(B)と着色剤分散液(C)と離型剤分散液(D)とに配合して得た製造例1〜11のトナーは、スルホン酸系共重合体がスチレン−アクリル共重合体に均一に付着していた。しかも、負電荷制御剤乳化剤分散液(A)の配合量が特定の範囲内で、スルホン酸系共重合体におけるラジカル重合性単量体単位およびスルホン酸系単量体単位の含有量が特定の範囲である製造例1〜7のトナーは、適度な帯電性を有していた。しかし、負電荷制御剤乳化剤分散液(A)の配合量が少ない製造例8のトナーは帯電性が低く、負電荷制御剤乳化剤分散液(A)の配合量が多い製造例9のトナーは帯電性が高すぎた。また、負電荷制御剤乳化分散液(A)中のスルホン酸系共重合体におけるラジカル重合性単量体単位およびスルホン酸系単量体単位の含有量が特定の範囲にない製造例10,11のトナーも帯電性が低かった。
これに対し、負電荷制御剤乳化分散液(A)として含金属錯体塩系染料を用いた製造例12のトナーは、負電荷制御剤がバインダ樹脂に均一に付着していなかった上に、帯電性も低かった。
【0044】
また、負電荷制御剤乳化分散液(A−1)から回収したスルホン酸系共重合体の固形物の水への再分散性について以下のようにして調べた。
まず、負電荷制御剤乳化分散液(A−1)を、50℃の真空乾燥機内により、水分が1%以下になるまで乾燥してスルホン酸系共重合体の固形物を得た。次いで、得られたスルホン酸系共重合体の固形物5gを、非イオン系界面活性剤(三洋化成工業製ノニポール400)をイオン交換水190に溶解した乳化剤水溶液に添加した。そして、ホモジナイザ(IKA製ウルトラタラックスT25)を用いて、20分間分散させた。その結果、スルホン酸系共重合体は水中に分散せず、ホモジナイザの攪拌を停止すると、直ちに沈降した。つまり、スルホン酸系共重合体の固形物は水に再分散しにくい。そのため、電荷制御剤としてスルホン酸系共重合体の固形物を用い、トナーの製造にエマルジョン凝集法を適用した場合には、電荷制御剤がバインダ樹脂に均一に付着したトナーを得ることは困難である。したがって、電荷制御剤としてスルホン酸系共重合体を用い、トナーの製造にエマルジョン凝集法を適用する際には、本発明は極めて有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性単量体単位およびスルホン酸系単量体単位を含むスルホン酸系共重合体の乳化重合エマルジョンである負電荷制御剤乳化分散液(A)と、バインダ樹脂のエマルジョンであるバインダ樹脂乳化分散液(B)と、着色剤が水中に分散した着色剤分散液(C)および/または離型剤が水中に分散した離型剤分散液(D)とを配合し、混合して混合液を調製する混合工程と、
該混合液に含まれる固形物を凝集させて回収する回収工程とを有することを特徴とする負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】
負電荷制御剤乳化分散液(A)のスルホン酸系共重合体に含まれるラジカル重合性単量体単位がスチレン系単量体単位および/またはアクリル系単量体単位であり、
スルホン酸系単量体単位が2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸単位であることを特徴とする請求項1に記載の負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
負電荷制御剤乳化分散液(A)のスルホン酸系共重合体におけるラジカル重合性単量体単位の含有量が99.5〜80質量%、かつ、スルホン酸系単量体単位の含有量が0.5〜20質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
混合工程では、負電荷制御剤乳化分散液(A)中の固形分が、前記混合液に含まれる固形物中の0.1〜15質量%になるように配合することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の負帯電性静電潜像現像用トナーの製造方法。