説明

負極および二次電池

【課題】サイクル特性を向上させることが可能な二次電池を提供する。
【解決手段】正極21および負極22と共に電解質を備え、正極21と負極22との間に設けられたセパレータ23に電解質が含浸されている。負極22は、負極集電体22A上に、複数の負極活物質粒子を含む負極活物質層22Bを有している。SEMを用いて負極22(負極活物質層22B)の表面を観察し、SEM像を画像処理して負極活物質粒子ごとに粒子面積を算出できるようにしたとき、所定の観察エリア内に含まれる複数の負極活物質粒子の平均粒子面積は、1μm2 以上60μm2 以下である。充放電時において負極活物質層22Bの膨張に伴う内部応力が分散されるため、負極22全体の形状安定性が保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極集電体上に負極活物質層を有する負極、およびそれを備えた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラ、携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が広く普及しており、その小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。これに伴い、ポータブル電子機器の電源として、電池、特に軽量で高エネルギー密度が得られる二次電池の開発が進められている。
【0003】
中でも、充放電反応にリチウムの吸蔵および放出を利用する二次電池(いわゆるリチウムイオン二次電池)は、鉛電池やニッケルカドミウム電池よりも大きなエネルギー密度が得られるため、大いに期待されている。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、正極および負極と共に電解質を備えている。負極は、負極集電体上に負極活物質層を有しており、その負極活物質層は、充放電反応に寄与する負極活物質を含んでいる。
【0005】
負極活物質としては、黒鉛などの炭素材料が広く用いられている。しかしながら、最近では、ポータブル電子機器の高性能化および多機能化に伴って電池容量のさらなる向上が求められていることから、炭素材料に代えて、ケイ素などの高容量化材料を用いることが検討されている。ケイ素の理論容量(4199mAh/g)は黒鉛の理論容量(372mAh/g)よりも格段に大きいため、電池容量の大幅な向上が期待されるからである。
【0006】
負極活物質層の形成方法としては、気相法、液相法、焼結法、溶射法あるいは塗布法などの多様の方法が用いられているが、二次電池の性能を安定に向上させることを考えると、塗布法よりも気相法等が好ましい。負極活物質の微細化が抑制されると共に、負極集電体と負極活物質層とが強固に一体化して電子伝導性が向上するからである。これにより、優れた電池容量およびサイクル特性が得られる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−135115号公報
【0007】
ところが、負極活物質としてケイ素などの高容量化材料を用いた場合には、充放電時において負極活物質層が膨張および収縮しやすいことが懸念される。これにより、負極活物質層の膨張および収縮が激しいと、負極集電体と負極活物質層とを強固に一体化させたとしても負極活物質層が崩壊し得るため、十分な特性が得られない可能性がある。
【0008】
そこで、負極活物質層の崩壊を抑制するために、さまざまな検討がなされている。具体的には、酸素含有量が異なる第1の層と第2の層とを含むようにし、それらを交互に積層させる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。また、負極活物質層中に金属元素(鉄、ニッケルあるいはコバルトなどの強磁性金属元素)を含有させる技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この場合には、強磁性金属元素の濃度が高い金属高濃度層と、強磁性金属元素の濃度が低い金属低濃度層とを含むようにしている。これらの技術によれば、負極活物質層の膨張および収縮が緩和されるため、充放電時において負極活物質層が崩壊しにくくなる。
【特許文献2】特開2004−349162号公報
【特許文献3】特開2007−257866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、ポータブル電子機器は益々高性能化および多機能化しており、その消費電力は増大する傾向にあるため、二次電池の充放電が頻繁に繰り返され、そのサイクル特性が低下しやすい状況にある。このため、二次電池のサイクル特性に関して、より一層の向上が望まれている。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、サイクル特性を向上させることが可能な負極および二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の負極は、負極集電体上に複数の負極活物質粒子を含む負極活物質層を有し、負極活物質層の表面から観察した際における複数の負極活物質粒子の平均粒子面積が1μm2 以上60μm2 以下のものである。
【0012】
本発明の二次電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極が負極集電体上に複数の負極活物質粒子を含む負極活物質層を有し、負極活物質層の表面から観察した際における複数の負極活物質粒子の平均粒子面積が1μm2 以上60μm2 以下のものである。
【0013】
上記した「負極活物質層の表面から観察した」とは、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)を用いて、倍率を2000倍として、負極集電体および負極活物質層の積層方向から負極(負極活物質層)の表面を観察したことを意味している。また、「複数の負極活物質粒子の平均粒子面積」とは、上記した条件で負極の表面を観察したSEM像を画像処理し、負極活物質粒子ごとに粒子面積を算出できるようにした場合において、所定の観察エリア(縦42μm×横64μm)内に含まれる複数の負極活物質粒子の粒子面積の平均値を意味する。これらの画像処理や演算には、それらを実行可能な機能を有するソフトウェア(いわゆる画像処理ソフト)が用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の負極によれば、負極活物質層の表面から観察した際における複数の負極活物質粒子の平均粒子面積が1μm2 以上60μm2 以下であるので、電極反応時において負極活物質層の膨張および収縮に伴う内部応力が分散され、負極全体の形状安定性が保たれる。これにより、本発明の負極を用いた二次電池によれば、サイクル特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る負極の断面構成を表している。この負極は、例えば二次電池などの電気化学デバイスに用いられるものであり、一対の面を有する負極集電体1と、それに設けられた負極活物質層2とを有している。
【0017】
負極集電体1は、良好な電気化学的安定性、電気伝導性および機械的強度を有する金属材料、特に電極反応物質と金属間化合物を形成しない1種あるいは2種以上の金属元素を構成元素として有する材料によって構成されているのが好ましい。このような金属材料としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、クロム(Cr)あるいはステンレスなどが挙げられる。
【0018】
また、上記した金属材料は、負極活物質層2と合金化する1種あるいは2種以上の金属元素を構成元素として有しているのが好ましい。負極集電体1と負極活物質層2との間の密着性が向上するため、その負極活物質層2が負極集電体1から剥離しにくくなるからである。電極反応物質と金属間化合物を形成せず、しかも負極活物質層2と合金化する金属元素としては、例えば、負極活物質層2が負極活物質としてケイ素を含有する場合には、銅、ニッケルあるいは鉄などが挙げられる。これらの金属元素は、強度および導電性の観点からも好ましい。
【0019】
なお、負極集電体1は、単層構造あるいは多層構造のいずれを有していてもよい。負極集電体1が多層構造を有する場合には、例えば、負極活物質層2と隣接する層がそれと合金化する金属材料によって構成され、隣接しない層が他の金属材料によって構成されるのが好ましい。
【0020】
負極集電体1の表面は、粗面化されているのが好ましい。いわゆるアンカー効果によって負極集電体1と負極活物質層2との間の密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層2と対向する負極集電体1の表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法としては、例えば、電解処理によって微粒子を形成する方法などが挙げられる。この電解処理とは、電解槽中において電解法によって負極集電体1の表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。電解法を使用して作製された銅箔は、一般に「電解銅箔」と呼ばれている。
【0021】
負極活物質層2は、複数の負極活物質粒子を含んでおり、必要に応じて、負極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。この負極活物質粒子は、電極反応物質(例えばリチウムなど)を吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含有している。
【0022】
電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。このような材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明における「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含まれる。また、「合金」は、非金属元素を有していてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、あるいはそれらの2種以上が共存するものがある。
【0023】
上記した金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、電極反応物質と合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素が挙げられる。具体的には、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)、あるいは白金(Pt)などである。中でも、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種が好ましく、ケイ素がより好ましい。電極反応物質を吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0024】
ケイ素を構成元素として有する材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金あるいは化合物や、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0025】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。ケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を有するものが挙げられ、ケイ素に加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。ケイ素の合金あるいは化合物の一例としては、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 4 、Si2 2 O、SiOv (0<v≦2)、SnOw (0<w≦2)、あるいはLiSiOなどが挙げられる。
【0026】
負極活物質層2は、例えば、気相法、液相法、焼結法あるいは溶射法、またはそれらの2種以上の方法、すなわち負極結着剤を必要としない方法によって形成されている。気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(Chemical Vapor Deposition :CVD)法あるいはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電解鍍金あるいは無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。焼結法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合してから溶剤に分散させて塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼結法に関しても、公知の手法を用いることが可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が挙げられる。
【0027】
負極活物質層2が気相法などの堆積法によって形成される場合、その負極活物質層2は、1回の堆積工程によって形成された単層構造を有していてもよいし、複数回の堆積工程によって形成された多層構造を有していてもよい。ただし、堆積時に高熱を伴う真空蒸着法などを用いる場合には、負極集電体1が熱的ダメージを受けることを抑制するために、負極活物質層2が多層構造を有しているのが好ましい。堆積工程を複数回に分割して行うことにより、その堆積工程を1回で行う場合と比較して、負極集電体1が高熱に晒される時間が短くなるからである。
【0028】
この負極活物質層2は、負極集電体1と合金化しているのが好ましい。負極集電体1と負極活物質層2とが強固に連結されて一体化するため、両者の間の電子伝導性が向上すると共に、電極反応時において負極活物質層2の膨張および収縮が抑制されるからである。この場合には、負極集電体1と負極活物質層2とが隣接する領域のうち、全ての領域で合金化していてもよいし、一部の領域だけで合金化していてもよい。少なくとも一部の領域で合金化していれば、全く合金化していない場合と比較して、負極集電体1と負極活物質層2との間の密着性が向上するからである。なお、本発明における「合金化」には、負極集電体1の構成元素と負極活物質層2の構成元素とが完全な合金を形成している状態だけでなく、両者の構成元素が拡散しあって混在している状態も含まれる。この場合には、両者の界面において、負極集電体1の構成元素が負極活物質層2に拡散していてもよいし、負極活物質層2構成元素が負極集電体1に拡散していてもよいし、両者の構成元素が互いに拡散しあっていてもよい。
【0029】
また、負極活物質層2は、その厚さ方向において、酸素含有量が異なる複数の層を有しているのが好ましい。電極反応時において負極活物質層2の膨張および収縮が抑制されるからである。この場合には、酸素含有量が異なる2種類の層を複数ずつ有するのが好ましく、それらが交互に積層されているのがより好ましい。より高い効果が得られるからである。なお、酸素含有量が異なる2種類の層間では、酸素含有量が明確に異なっていてもよいし、明確に異なっていなくてもよい。後者の場合には、酸素含有量が連続的に変化しているのが好ましい。ただし、2種類の層間における酸素含有量は、極端に違いすぎないのが好ましい。酸素含有量が極端に変化すると、イオンの拡散性が低下したり、抵抗が増大する可能性があるからである。
【0030】
なお、負極導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックあるいはケチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、負極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
【0031】
ここで、図2を参照して、負極の詳細な構成について説明する。図2は負極の表面構造を表しており、(A)はSEM像(二次電子像)、(B)は(A)に示したSEM像を画像処理したものである。なお、図2では、例えば、気相法(真空蒸着法)を用いて負極活物質層2を形成した場合を示している。
【0032】
SEMを用いて、倍率を2000倍として、負極集電体1および負極活物質層2の積層方向から負極(負極活物質層2)の表面を観察すると、図2(A)に示したように、大小さまざまな粒径を有する複数の負極活物質粒子200が見られる。この場合には、1つの負極活物質粒子200が他の負極活物質粒子200から明確に区別されて単独で存在している部分があれば、複数の負極活物質粒子200(1次粒子201)があたかも1つの粒子(2次粒子202)のように集合している部分もある。
【0033】
図2(A)に示したSEM像を画像処理して負極活物質粒子200間の境界を特定にすることにより、図2(B)に示したように、各負極活物質粒子200の輪郭を鮮明にすることができる。これにより、各負極活物質粒子200の存在領域(占有範囲)が正確に認識されるため、負極活物質粒子200の数をカウントすると共に、負極活物質粒子200ごとに粒子面積を算出することができる。
【0034】
負極(負極活物質層2)の表面から観察した際における複数の負極活物質粒子200の平均粒子面積は、1μm2 以上60μm2 以下である。複数の負極活物質粒子200の粒径分布が適正化されるため、電極反応時において負極活物質層2の膨張および収縮に伴う内部応力が分散され、負極全体の形状安定性が保たれるからである。これにより、負極が二次電池に用いられた場合には、優れたサイクル特性が得られる。上記した平均粒子面積は、図2(B)に示した画像処理後の像(以下、単に「画像処理像」という。)に基づいて、所定の観察エリア(縦42μm×横64μm)内に含まれる複数の負極活物質粒子200から算出される値である。
【0035】
詳細には、平均粒子面積が1μm2 よりも小さいと、負極活物質粒子200全体の表面積が増大する。これにより、負極が電解質と共に電気化学デバイスに用いられた場合に、負極活物質粒子200が電解質と反応してSEI(Solid Electrolyte Interface phase )などの不可逆な反応被膜が形成されやすくなるため、電気化学デバイスの電気的性能(例えば二次電池における電池容量)などが低下する可能性がある。一方、平均粒子面積が60μm2 よりも大きいと、電解質との接触面積が減少するため、電極反応時において電極反応物質の出入りが負極活物質粒子200間において不均一になると共に負極活物質層2が崩壊あるいは滑落する可能性がある。
【0036】
この平均粒子面積は、2μm2 以上40μm2 以下であるのが好ましく、5μm2 以上17μm2 以下であるのがより好ましい。上記した電気化学デバイスの性能低下などが生じる可能性がより低くなるため、より高い効果が得られるからである。
【0037】
なお、複数の負極活物質粒子200の中に、上記した観察エリア内に全体像(1つの負極活物質粒子200の輪郭の全て)が含まれておらず、その一部だけが含まれているものがある場合には、それをカウントせずに粒子面積を算出する。
【0038】
特に、複数の負極活物質粒子200の粒子面積の総和に対する、20μm2 以上30μm2 以下の粒子面積を有する負極活物質粒子200の粒子面積の総和の割合(面積比率)は、10%以上60%以下であるのが好ましい。複数の負極活物質粒子200のうち、上記した負極全体の形状安定性の確保に寄与する20μm2 以上30μm2 以下の粒子面積を有するものの占有割合と、それ以外の粒子面積を有するものの占有割合との間のバランスが適正化されるため、より高い効果が得られるからである。なお、面積比率は、面積比率(%)=(20μm2 以上30μm2 以下の粒子面積を有する負極活物質粒子200の粒子面積の総和/複数の負極活物質粒子200の粒子面積の総和)×100で表される。この面積比率は、上記した平均粒子面積と同様に、所定の観察エリアの画像処理像に基づいて算出される値である。
【0039】
また、複数の負極活物質粒子200の平均円形度は、0.4以上であるのが好ましく、0.4以上0.8以下であるのがより好ましい。平均円形度が0.4よりも小さいと、負極活物質粒子200の輪郭が真円から遠ざかるため、電極反応時において負極活物質層2がスムーズに膨張および収縮しにくくなるからである。この平均円形度は、上記した平均粒子面積と同様に、所定の観察エリアの画像処理像に基づいて算出される値(真円を1.0とする)である。なお、平均円形度は、SEM観察時の倍率が低いほど大きな値となる傾向があることから、ここで規定する平均円形度は、上記したように、2000倍の倍率で観察したSEM像に基づいて算出される値であるとする。
【0040】
上記した画像処理を行うためには、任意のソフトウェア(画像処理ソフト)を用いればよい。この画像処理ソフトとしては、例えば、SEM像に基づいて上記した画像処理を自動で実行する機能を有するものが挙げられる。このような自動実行型の画像処理ソフトを用いることにより、人為的な誤差等が含まれないため、画一的で再現性に優れた画像処理像を得ることができるからである。特に、画像処理ソフトとしては、平均粒子面積(粒子面積の算出を含む)を算出する機能を有するものが好ましい。平均粒子面積を高精度に算出することができるからである。この場合には、平均粒子面積を算出する機能と共に、面積比率および平均円形度を算出する機能も有しているのが好ましい。1種類の画像処理ソフトを用いて平均粒子面積、面積比率および平均円形度(以下、単に「平均粒子面積等」ともいう。)を高精度に算出することができるからである。
【0041】
なお、画像処理を行った際に、画像処理ソフトによる処理によって認識されなかった負極活物質粒子200間の境界線がある場合には、その境界線をマニュアルで補ってもよい。詳細には、SEM像中に目視で認識できる境界線があるにもかかわらず、その境界線が画像処理像中に含まれていなかった場合には、画像処理像中に境界線を追加(書き込む)する処理(補正処理)を行うことにより、その境界線も加味されるようにしてもよい。このような補正処理を行うことにより、平均粒子面積等をより高精度に算出することができるからである。
【0042】
また、SEM像中に明らかな異物(ゴミなど)が存在し、それが画像処理の精度等に影響を与える可能性がある場合には、画像処理像中から異物を削除する処理(補正処理)をマニュアルで行うようにしてもよい。このような補正処理を行うことにより、平均粒子面積等の算出精度を向上させることができるからである。
【0043】
さらに、所定の観察エリア(縦42μm×横64μm)内において平均粒子面積等を算出する際に、その観察エリアとして設定する場所が異なれば平均粒子面積等に誤差が生じる可能性がある場合には、視野を変えて複数の観察エリアにおいて平均粒子面積を算出したのち、その平均値を求めるのが好ましい。このような平均化処理を行うことにより、平均粒子面積等を高精度に算出することができるからである。なお、視野を変える回数は、任意に設定可能である。
【0044】
図2では、負極活物質層2の形成方法の一例として気相法を用いた場合について説明したが、液相法、焼結法あるいは溶射法などの他の形成方法を用いた場合においても、SEMを用いて複数の負極活物質粒子を観察することができる。よって、他の形成方法を用いた場合においても、図2を参照して説明した場合と同様の手順を経ることにより、平均粒子面積等を算出することができる。
【0045】
この負極は、例えば、以下の手順によって製造される。
【0046】
図3は、負極を製造するために用いられる製造装置(蒸着装置)の概略構成例を表している。この蒸着装置は、例えば、電子ビーム蒸着法を用いて負極集電体1の表面に負極活物質層2を形成するものである。
【0047】
具体的には、蒸着装置は、蒸着処理槽101の内部に、蒸発源102A,102B(坩堝121A,121Bおよび蒸着物質122A,122B)と、キャンロール(成膜ロール)103A,103Bと、シャッタ104A,104Bと、巻取ローラ105,106と、ガイドローラ107〜111と、フィードローラ112とを備えている。この蒸着処理槽2の外側には、真空排気装置113が設置されている。
【0048】
蒸着処理槽101は、2つの開口114Kが設けられた仕切板114によって蒸発源設置室101A,101Bと被蒸着物走行室101Cとに仕切られている。蒸発源設置室101A,101Bは、隔壁115によって隔離されている。キャンロール103A,103Bの外周面のうち、蒸発源設置室101A,101Bに進入した部分120A,120Bは、蒸着物質122A,122Bが堆積される領域である。
【0049】
蒸発源102A,102Bは、例えば、電子銃(図示せず)を備えており、負極材料である蒸着物質122A,122Bを加熱して蒸発(気化)させるようになっている。坩堝121A,121Bには、例えば、ウォータジャケットなどの冷却系が付設されていてもよい。
【0050】
なお、被蒸着物である負極集電体1は、例えば、帯状の連続構造を有している。この負極集電体1は、例えば、一端側が巻取ローラ105に巻き取られていると共に他端側が巻取ローラ106に取り付けられている。これにより、負極集電体1は、巻取ローラ105からガイドローラ107、キャンロール103A、ガイドローラ108、フィードローラ112、ガイドローラ109,110、キャンロール103Bおよびガイドローラ111をこの順に経由して巻取ローラ106まで搬送され、その巻取ローラ106によって巻き取られるようになっている。
【0051】
この蒸着装置を用いて負極を製造する際には、負極集電体1を搬送させながら、坩堝121A,121Bに収容された蒸着物質122A,122Bを蒸発させて負極集電体1の表面に堆積させることにより、負極活物質層2を形成する。この場合には、負極集電体1が搬送される過程において、坩堝121Aから蒸発した蒸着物質122Aが負極集電体1の一方の面(表面)に堆積されると共に、坩堝121Bから蒸発した蒸着物質122Bが負極集電体1の他方の面(裏面)に堆積される。これにより、1度の搬送工程において、負極集電体1の両面に負極活物質層2が形成される。
【0052】
この負極活物質層2を形成する場合には、負極集電体1を一方向だけに搬送させることにより、単層構造を有するようにしてもよいし、あるいは負極集電体1を双方向に往復搬送させることにより、多層構造を有するようにしてもよい。この場合には、負極集電体1の搬送速度や負極活物質層2の形成速度(蒸着物質122A,122Bの堆積速度)などの条件を任意に調整可能である。
【0053】
なお、ここでは、2つの蒸発源設置室101A,101Bを備えた蒸着装置を用いたが、必ずしもこれに限られず、1つの蒸発源設置室を備えた蒸着装置を用いてもよい。
【0054】
この負極を製造する場合には、その製造条件を調整することにより、上記した複数の負極活物質粒子の平均粒子面積等を変化させることができる。
【0055】
単層の負極活物質層2を形成する場合の条件としては、例えば、負極集電体1の表面粗度(例えば十点平均粗さRz)や、負極材料の堆積速度などが挙げられる。この他、必要に応じて、負極材料の堆積時にガス(例えばアルゴン(Ar)ガスなど)を導入したり、その導入量を調整してもよい。
【0056】
図3に示したような負極集電体1を搬送可能な装置を用いて多層の負極活物質層2を形成する場合の条件としては、例えば、単層の負極活物質層2を形成する場合について説明した条件の他、負極集電体1の搬送速度あるいは負極活物質層2の層数などが挙げられる。
【0057】
この負極によれば、負極活物質層2の表面から観察した際における複数の負極活物質粒子の平均粒子面積が1μm2 以上60μm2 以下であるので、電極反応時において負極活物質層2の膨張に伴う内部応力が分散され、負極全体の形状安定性が保たれる。したがって、負極を用いた電気化学デバイスの性能向上に寄与することができる。より具体的には、負極が二次電池に用いられる場合には、サイクル特性の向上に寄与することができる。この場合には、複数の負極活物質粒子の平均粒子面積が2μm2 以上40μm2 以下であり、さらに5μm2 以上17μm2 以下であれば、より高い効果を得ることができる。
【0058】
また、複数の負極活物質粒子200の粒子面積の総和に対する、20μm2 以上30μm2 以下の粒子面積を有する負極活物質粒子200の粒子面積の総和の割合(面積比率)が10%以上60%以下であり、あるいは観察エリア内における複数の負極活物質粒子の平均円形度が0.4以上0.8以下であれば、より高い効果を得ることができる。
【0059】
また、負極活物質粒子がケイ素の単体、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有していれば、電極反応時において負極活物質層2が膨張および収縮しやすい傾向にある。よって、負極活物質層2の膨張および収縮に伴う内部応力が効果的に緩和されるため、より高い効果を得ることができる。
【0060】
次に、上記した負極の使用例について説明する。ここで、電気化学デバイスの一例として二次電池を例に挙げると、上記した負極は、以下のようにして二次電池に用いられる。
【0061】
(第1の二次電池)
図4および図5は第1の二次電池の断面構成を表しており、図5では図4に示した巻回電極体20の一部を拡大して示している。ここで説明する二次電池は、例えば、負極22の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池である。
【0062】
この二次電池は、主に、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、セパレータ23を介して正極21と負極22とが積層および巻回された巻回電極体20と、一対の絶縁板12,13とが収納されたものである。この円柱状の電池缶11を用いた電池構造は、円筒型と呼ばれている。
【0063】
電池缶11は、例えば、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有しており、鉄、アルミニウムあるいはそれらの合金や、ステンレスなどの金属材料によって構成されている。なお、電池缶11が鉄によって構成される場合には、例えば、ニッケルなどの鍍金が施されてもよい。一対の絶縁板12,13は、巻回電極体20を上下から挟み、その巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
【0064】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、その内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient:PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることによって取り付けられている。これにより、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の金属材料によって構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡、あるいは外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上となった場合に、ディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との間の電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度の上昇に応じて抵抗が増大することにより、電流を制限して大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料によって構成されており、その表面にはアスファルトが塗布されている。
【0065】
巻回電極体20の中心には、センターピン24が挿入されていてもよい。この巻回電極体20では、アルミニウムなどの金属材料によって構成された正極リード25が正極21に接続されていると共に、ニッケルなどの金属材料によって構成された負極リード26が負極22に接続されている。正極リード25は、安全弁機構15に溶接などされて電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は、電池缶11に溶接などされて電気的に接続されている。
【0066】
正極21は、例えば、一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。ただし、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0067】
正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によって構成されている。
【0068】
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでおり、必要に応じて、正極結着剤や正極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0069】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム含有化合物が好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。中でも、遷移金属元素としてコバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、Lix M1O2 あるいはLiy M2PO4 で表される。式中、M1およびM2は、1種類以上の遷移金属元素を表す。xおよびyの値は、充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
【0070】
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Lix Ni1-z Coz 2 (z<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Lix Ni(1-v-w) Cov Mnw 2 (v+w<1))、あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 4 )などが挙げられる。中でも、コバルトを含む複合酸化物が好ましい。高い容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。また、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物としては、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-u Mnu PO4 (u<1))などが挙げられる。
【0071】
この他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物や、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物や、セレン化ニオブなどのカルコゲン化物や、硫黄、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
【0072】
もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0073】
正極結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0074】
正極導電剤としては、例えば、上記した負極導電剤と同様の材料が挙げられる。
【0075】
負極22は、上記した負極と同様の構成を有しており、例えば、一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bの構成は、それぞれ負極集電体1および負極活物質層2の構成と同様である。この負極22では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料における充電可能な容量が正極の放電容量よりも大きくなっているのが好ましい。
【0076】
図6は、図5に示した正極21および負極22の平面構成を表している。なお、図6では、正極21における正極活物質層21Bの形成範囲に網掛けを施しており、負極22における負極活物質層22Bの形成範囲に網掛けを施している。
【0077】
この二次電池では、例えば、正極活物質層21Bが正極集電体21Aの表面の一部(例えば、長手方向における中央領域)に設けられているのに対して、負極活物質層22Bが負極集電体22Aの表面の全体に設けられている。すなわち、負極活物質層22Bは、負極集電体22A上において、正極活物質層21Bと対向する領域R1および対向しない領域R2に設けられている。
【0078】
この場合には、負極活物質層22Bのうち、領域R1に設けられている部分だけが充放電反応に寄与し、領域R2に設けられている部分は充放電反応に寄与しない。これにより、領域R2に設けられている部分では、充放電反応を経ても負極活物質層22Bの状態(複数の負極活物質粒子の粒径分布など)が変化しないため、負極22の製造後の状態(初期状態)がそのまま維持される。よって、上記した複数の負極活物質粒子の平均粒子面積等を算出する場合には、領域R2における負極活物質層22Bについて算出するのが好ましい。充放電の履歴に依存せず、平均粒子面積等を再現性よく算出することができるからである。
【0079】
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながら電極反応物質のイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜や、セラミックからなる多孔質膜などによって構成されており、これらの2種以上の多孔質膜が積層されたものであってもよい。
【0080】
このセパレータ23には、電解質が含浸されている。なお、セパレータ23は、セパレータとしての本来の役割を担いながら、同時に電解質としての役割を担うようなもの(イオン伝導性を有するが電子伝導性を有しない)であってもよい。
【0081】
電解質に含まれる溶媒は、例えば、有機溶剤などの非水溶媒の1種あるいは2種以上を含有しており、その非水溶媒の具体例は、以下の通りである。ただし、以下で説明する一連の溶媒は、任意に組み合わされてもよい。
【0082】
非水溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、あるいはジメチルスルホキシドなどが挙げられる。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルからなる群のうちの少なくとも1種が好ましい。この場合には、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)と炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
【0083】
特に、溶媒は、ハロゲン化炭酸エステルのいずれか1種あるいは2種以上を含有しているのが好ましい。充放電時において負極22の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解質の分解反応が抑制されるからである。このハロゲン化炭酸エステルは、ハロゲンを構成元素として有する鎖状炭酸エステルや、ハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルである。前者としては、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどが挙げられ、後者としては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどの環状化合物が挙げられる。ただし、ハロゲンを構成元素として有する鎖状炭酸エステルあるいはハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルに該当するものであれば、上記以外の他の化合物であってもよい。
【0084】
また、溶媒は、不飽和結合を有する環状炭酸エステルのいずれか1種あるいは2種以上を含有しているのが好ましい。電解質の化学的安定性がより向上するからである。不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ビニレンあるいは炭酸ビニルエチレンなどが挙げられる。ただし、不飽和結合を有する環状炭酸エステルに該当するものであれば、上記以外の他の化合物であってもよい。
【0085】
この他、溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)や酸無水物を含有していてもよい。電解質の化学的安定性がより向上するからである。スルトンとしては、例えば、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンなどが挙げられる。酸無水物としては、例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物あるいはマレイン酸無水物などのカルボン酸無水物や、エタンジスルホン酸無水物あるいはプロパンジスルホン酸無水物などのジスルホン酸無水物や、スルホ安息香酸無水物、スルホプロピオン酸無水物あるいはスルホ酪酸無水物などのカルボン酸とスルホン酸との無水物などが挙げられる。
【0086】
電解質に含まれる電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種あるいは2種以上を含有しており、そのリチウム塩の具体例は、以下の通りである。ただし、以下で説明する一連のリチウム塩は、任意に組み合わされてもよい。
【0087】
リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 5 4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)、あるいは臭化リチウム(LiBr)などが挙げられる。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
【0088】
電解質塩の含有量は、例えば、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であるのが好ましい。この範囲外では、イオン伝導性が極端に低下する可能性があるからである。
【0089】
この二次電池は、例えば、以下の手順によって製造される。
【0090】
まず、正極21を作製する。最初に、正極活物質と、結着剤と、導電剤とを混合して正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードあるいはバーコータなどを用いて正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布したのち、乾燥させる。最後に、必要に応じて加熱しながらロールプレス機などを用いて塗膜を圧縮成型することにより、正極活物質層21Bを形成する。この場合には、圧縮成型を複数回に渡って繰り返してもよい。
【0091】
次に、上記した負極の作製手順と同様の手順により、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを形成して負極22を作製する。
【0092】
二次電池の組み立ては、以下のようにして行う。最初に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などして取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などして取り付ける。続いて、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層および巻回させて巻回電極体20を作製したのち、その巻回中心にセンターピン24を挿入する。続いて、一対の絶縁板12,13で挟みながら巻回電極体20を電池缶11の内部に収納すると共に、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接し、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接する。続いて、電池缶11の内部に電解質を注入して、セパレータ23に含浸させる。最後に、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより、固定する。これにより、図4〜図6に示した二次電池が完成する。
【0093】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解質を介して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解質を介して正極21に吸蔵される。
【0094】
この円筒型の二次電池によれば、負極22が上記した負極と同様の構成を有しているので、サイクル特性を向上させることができる。この二次電池に関する他の効果は、上記した負極と同様である。
【0095】
(第2の二次電池)
図7は第2の二次電池の分解斜視構成を表しており、図8は図7に示した巻回電極体30のVIII−VIII線に沿った断面を拡大して示している。
【0096】
第2の二次電池は、例えば、上記した第1の二次電池と同様に、リチウムイオン二次電池である。この二次電池は、主に、フィルム状の外装部材40の内部に、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30が収納されたものである。このフィルム状の外装部材40を用いた電池構造は、ラミネートフィルム型と呼ばれている。
【0097】
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの金属材料によって構成されており、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によって構成されている。これらの金属材料は、例えば、薄板状あるいは網目状になっている。
【0098】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムがこの順に貼り合わされたアルミラミネートフィルムによって構成されている。この外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルムが巻回電極体30と対向するように、2枚の矩形型のアルミラミネートフィルムの外縁部同士が融着あるいは接着剤によって互いに接着された構造を有している。
【0099】
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料によって構成されている。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0100】
なお、外装部材40は、上記したアルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムによって構成されていてもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムによって構成されていてもよい。
【0101】
電極巻回体30は、セパレータ35および電解質36を介して正極33と負極34とが積層および巻回されたものであり、その最外周部は、保護テープ37によって保護されている。
【0102】
正極33は、例えば、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものである。負極34は、上記した負極と同様の構成を有しており、例えば、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものである。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34A、負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23の構成と同様である。
【0103】
電解質36は、上記した溶媒および電解質塩と、それらを保持する高分子化合物とを含んでおり、いわゆるゲル状になっている。ゲル状の電解質36は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に漏液が防止されるので好ましい。
【0104】
溶媒および電解質塩の種類は、上記した第1の二次電池について説明した場合と同様である。
【0105】
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、あるいはポリカーボネートなどが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。電気化学的に安定だからである。
【0106】
ただし、ゲル状の電解質36における溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有するものまで含む広い概念である。したがって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
【0107】
なお、ゲル状の電解質36に代えて、溶媒および電解質塩をそのまま用いてセパレータ35に含浸させてもよい。
【0108】
この二次電池は、例えば、以下の3種類の製造方法によって製造される。
【0109】
第1の製造方法では、最初に、例えば、上記した第1の二次電池における正極21および負極22の作製手順と同様の手順により、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成して正極33を作製すると共に、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成して負極34を作製する。続いて、溶媒および電解質塩と、高分子化合物と、溶剤とを含む前駆溶液を調製して正極33および負極34に塗布したのち、溶剤を揮発させてゲル状の電解質36を形成する。続いて、正極集電体33Aに正極リード31を取り付けると共に、負極集電体34Aに負極リード32を取り付ける。続いて、電解質36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層させてから長手方向に巻回し、その最外周部に保護テープ37を接着させて巻回電極体30を作製する。最後に、例えば、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、その外装部材40の外縁部同士を熱融着などで接着させて巻回電極体30を封入する。この際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に、密着フィルム41を挿入する。これにより、図7および図8に示した二次電池が完成する。
【0110】
第2の製造方法では、最初に、正極33に正極リード31を取り付けると共に、負極34に負極リード32を取り付ける。続いて、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層して巻回させたのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製する。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着などで接着させて、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、溶媒および電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製して袋状の外装部材40の内部に注入したのち、外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とすることにより、ゲル状の電解質36を形成する。これにより、二次電池が完成する。
【0111】
第3の製造方法では、最初に、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ35を用いることを除き、上記した第2の製造方法と同様に、巻回体を形成して袋状の外装部材40の内部に収納する。このセパレータ35に塗布する高分子化合物としては、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体、すなわち単独重合体、共重合体あるいは多元共重合体などが挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体や、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体などである。なお、高分子化合物は、上記したフッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種あるいは2種以上の高分子化合物を含んでいてもよい。続いて、電解質塩を溶解させた溶媒を外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、外装部材40に加重をかけながら加熱し、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、高分子化合物がゲル化して電解質36が形成されるため、二次電池が完成する。
【0112】
この第3の製造方法では、第1の製造方法と比較して、二次電池の膨れが抑制される。また、第3の製造方法では、第2の製造方法と比較して、高分子化合物の原料であるモノマーや溶媒などが電解質36中にほとんど残らず、しかも高分子化合物の形成工程が良好に制御されるため、正極33、負極34およびセパレータ35と電解質36との間において十分な密着性が得られる。
【0113】
このラミネートフィルム型の二次電池によれば、負極34が上記した負極と同様の構成を有しているので、サイクル特性を向上させることができる。この二次電池に関する他の効果は、上記した負極と同様である。
【0114】
(第3の二次電池)
図9は、本発明の第3の二次電池の断面構成を表している。第3の二次電池は、例えば、上記した第1の二次電池と同様に、リチウムイオン二次電池である。この二次電池は、正極51が収容された外装缶54と負極52が収容された外装カップ55とが、電解質が含浸されたセパレータ53を介して積層されたのちにガスケット56を介してかしめられたものである。これらの外装缶54および外装カップ55を用いた電池構造は、コイン型と呼ばれている。
【0115】
外装缶54および外装カップ55、ならびにガスケット56の構成は、それぞれ上記した第1の二次電池における電池缶11およびガスケット17の構成と同様である。
【0116】
正極51は、例えば、正極集電体51Aの片面に正極活物質層51Bが設けられたものである。負極52は、上記した負極と同様の構成を有しており、例えば、負極集電体52Aの片面に負極活物質層52Bが設けられたものである。正極集電体51A、正極活物質層51B、負極集電体52A、負極活物質層52Bおよびセパレータ53の構成、ならびに電解質の組成は、それぞれ第1の二次電池における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23の構成、ならびに電解質の組成と同様である。
【0117】
この二次電池は、例えば、以下の手順によって製造される。
【0118】
最初に、例えば、上記した第1の二次電池における正極21および負極22の作製手順と同様の手順により、正極集電体51Aの片面に正極活物質層51Bを形成して正極51を作製すると共に、負極集電体52Aの片面に負極活物質層52Bを形成して負極52を作製する。続いて、所定の直径のペレットとなるように正極51および負極52を打ち抜く。続いて、正極51を外装缶54に収容すると共に、負極52を外装カップ55に貼り付ける。最後に、外装缶54と外装カップ55とを電解質が含浸されたセパレータ53を介して積層させたのち、ガスケット56を介してかしめる。この際、内容積に対して正極51および負極52の厚さが足りないようであれば、必要に応じて、両者を密着させるために導電性スペーサなどを入れてもよい。これにより、図9に示したコイン型の二次電池が完成する。
【0119】
このコイン型の二次電池によれば、負極52が上記した負極と同様の構成を有しているので、サイクル特性を向上させることができる。この二次電池に関する他の効果は、上記した負極と同様である。
【実施例】
【0120】
本発明の実施例について詳細に説明する。
【0121】
(実施例1−1〜1−17)
以下の手順により、図9に示したコイン型の二次電池を製造した。この際、負極52の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池となるようにした。
【0122】
まず、正極51を作製した。最初に、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中において900℃で5時間焼成することにより、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(平均粒径=5μm)92質量部と、正極結着剤としてポリフッ化ビニリデン5質量部と、正極導電剤としてカーボンブラック36質量部とを混合して正極合剤としたのち、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、アルミニウム箔(厚さ=15μm)からなる正極集電体51Aの片面に正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機を用いて圧縮成型して正極活物質層51Bを形成した。最後に、正極活物質層51Bが形成された正極集電体51Aをペレット状に打ち抜いた。
【0123】
次に、電子線衝撃加熱式の真空蒸着法を用いて、粗面化された電解銅箔からなる負極集電体52A(厚さ=25μm)の片面に、負極材料としてケイ素を堆積させて複数の負極活物質粒子を含む負極活物質層52Bを形成することにより、負極52を作製した。この負極活物質層52Bを形成する場合には、蒸着源(負極材料)として単結晶のケイ素を用いて負極集電体52Aを静止させたままでケイ素を堆積することにより、単層構造となるようにした。この際、必要に応じて負極材料の堆積速度やチャンバ内へのガス導入(アルゴンガス)を調整することにより、表1に示したように、複数の負極活物質粒子の平均粒子面積を1.1μm2 以上59.4μm2 以下の範囲内で変化させた。この場合における面積比率および複数の負極活物質粒子の平均円形度は、表1に示した通りであった。
【0124】
平均粒子面積を算出する場合には、以下の手順を経た。最初に、SEMを用いて2000倍の倍率で負極52(未充電状態の負極活物質層52B)の表面を観察し、所定の観察エリア(縦42μm×横64μm)のSEM像を得た。続いて、KSオリンパス株式会社製の画像処理ソフトiTEMを用いてSEM像を画像処理し、各負極活物質粒子の輪郭を鮮明にした。最後に、上記した画像処理ソフトを用いて、複数の負極活物質粒子の平均粒子面積を算出した。この画像処理ソフトによる算出処理としては、観察エリア内に含まれる複数の負極活物質粒子をID付け(ナンバリング)し、そのIDごとに負極活物質粒子の粒子面積を算出したのち、その平均値を演算した。この平均粒子面積(%)は、(観察エリア内においてID付けした負極活物質粒子の粒子面積の合計/観察エリア内においてID付けした負極活物質粒子の総数)×100で表される。この際、より平均的で信頼性の高い値を得るために、視野を変えながら4箇所の観察エリアのSEM像を得たのち、その4箇所のSEM像に基づいて平均粒子面積(4視野の合計粒子面積を4視野の粒子総数で割った値)を求めた。
【0125】
面積比率を算出する場合には、IDごとに負極活物質粒子の粒子面積を算出し、20μm2 以上30μm2 以下の粒子面積を有する負極活物質粒子のIDを特定したのち、面積比率を演算したことを除き、上記した平均粒子面積の算出手順と同様の手順を経た。この面積比率(%)は、(20μm2 以上30μm2 以下の粒子面積を有する負極活物質粒子の粒子面積の合計/観察エリア内においてID付けした負極活物質粒子の粒子面積の合計)×100で表される。
【0126】
平均円形度を算出する場合には、粒子面積および平均粒子面積に代えてそれぞれ円形度および平均円形度を算出したことを除き、上記した平均粒子面積の算出手順と同様の手順を経た。この平均円形度は、(観察エリア内においてID付けした負極活物質粒子の円形度の合計/観察エリア内においてID付けした負極活物質粒子の総数)×100で表される。
【0127】
次に、溶媒として4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と炭酸ジエチル(DEC)とを混合したのち、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を溶解させて、電解質を調製した。この際、溶媒の組成(FEC:DEC)を質量比で50:50とし、電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/dm3 とした。
【0128】
最後に、金属製の外装缶54に正極51を収容すると共に、セパレータ53を介して負極52と必要に応じて導電性スペーサと外装カップ55とを積層し、電解質を注液したのち、ガスケット56を介してかしめた。この際、多孔性ポリプロピレンを主成分とするフィルムによって多孔性ポリエチレンを主成分とする中心材フィルムが挟まれた積層構造を有するセパレータ(厚さ=23μm)を用いると共に、そのセパレータ53を介して正極活物質層51Bと負極活物質層52Bとが対向するようにした。これにより、コイン型の二次電池が完成した。この二次電池を製造する際には、正極活物質層51Bの厚さを調節することにより、満充電時において負極52にリチウム金属が析出しないようにした。
【0129】
(比較例1−1,1−2)
平均粒子面積、面積比率および平均円形度を表1に示したように変化させたことを除き、実施例1−1〜1−17と同様の手順を経た。
【0130】
これらの実施例1−1〜1−17および比較例1−1,1−2の二次電池について、サイクル特性を調べた。その結果を表1および図10に示す。
【0131】
サイクル特性を調べる際には、最初に、電池状態を安定化させるために25℃の雰囲気中において1サイクル充放電させたのち、再び充放電させて、2サイクル目の放電容量を測定した。続いて、同雰囲気中においてサイクル数の合計が100サイクルとなるまで充放電させて、100サイクル目の放電容量を測定した。最後に、放電容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。この際、1サイクル目の充放電条件としては、0.2mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が4.2Vに達するまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流密度が0.05mA/cm2 に達するまで充電したのち、0.2mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が2.5Vに達するまで放電した。2サイクル目以降の充放電条件としては、0.2Cの電流で電池電圧が4.2Vに達するまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流密度が0.1mA/cm2 に達するまで充電したのち、0.2Cの電流で電池電圧が2.5Vに達するまで放電した。この「0.2C」とは、定格容量(2サイクル目の放電容量)を5時間で放電しきる電流値である。
【0132】
なお、平均粒子面積等を算出する際の手順やサイクル特性を調べる際の手順は、以降の一連の実施例および比較例についても同様である。
【0133】
【表1】

【0134】
表1および図10に示したように、負極活物質層が単層構造を有する場合には、平均粒子面積が大きくなるにしたがって、放電容量維持率が増加したのちに減少する傾向を示した。この場合には、平均粒子面積が1μm2 以上60μm2 以下である実施例1−1〜1−17において、その範囲外である比較例1−1,1−2と比較して、放電容量維持率が大幅に増加した。また、実施例1−1〜1−17では、平均粒子面積が2μm2 以上40μm2 以下であると、70%以上の高い放電容量維持率が得られ、さらに平均粒子面積が5μm2 以上17μm2 以下であると、85%以上の著しく高い放電容量維持率が得られた。
【0135】
これらのことから、本発明の二次電池では、負極活物質層が単層構造を有する場合に、負極活物質層の表面から観察した際における複数の負極活物質粒子の平均粒子面積が1μm2 以上60μm2 以下であることにより、サイクル特性が向上することが確認された。この場合には、平均粒子面積が2μm2 以上40μm2 以下、さらに5μm2 以上17μm2 以下であれば、特性がより向上することも確認された。
【0136】
(実施例2−1〜2−6)
負極材料の堆積速度やチャンバ内へのガス導入を調整することにより、表2に示したように、面積比率を9.7%以上63.0%以下の範囲内で変化させたことを除き、実施例1−1〜1−17と同様の手順を経た。この際、平均粒子面積および平均円形度は、表2に示した通りであった。
【0137】
これらの実施例2−1〜2−6の二次電池についてサイクル特性を調べたところ、表2および図11に示した結果が得られた。
【0138】
【表2】

【0139】
表2および図11に示したように、面積比率が大きくなるにしたがって、放電容量維持率は増加したのちに減少する傾向を示した。この場合には、面積比率が10%以上60%以下であると、70%以上の高い放電容量維持率が得られた。
【0140】
これらのことから、本発明の二次電池では、面積比率が10%以上60%以下であれば、サイクル特性がより向上することが確認された。
【0141】
(実施例3−1〜3−17)
以下の手順により、図7および図8に示したラミネートフィルム型の二次電池を製造した。この際、負極34の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池となるようにした。
【0142】
まず、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成したことを除き、実施例1−1〜1−17と同様の手順によって正極33を作製した。
【0143】
次に、図3に示した蒸着装置を用いて、負極集電体34Aを往復搬送させながら、その両面に多層構造を有する負極活物質層34Bを形成したことを除き、実施例1−1〜1−17と同様の手順によって負極34を作製した。この際、負極集電体34Aの片面側における負極活物質層34Bの層数を10層とした。また、負極材料の堆積時に蒸着処理槽101内に酸素ガスを導入し、その導入量を変化させることにより、酸素含有量が異なる2種類の層が交互に積層された構造を有するように負極活物質層34Bを形成した。特に、負極活物質層34Bを形成する場合には、負極集電体34Aの搬送速度あるいは負極活物質層34Bの層数や、蒸着処理槽101内へのガス導入(アルゴンガス)を調整することにより、表3に示したように、平均粒子面積を1.0μm2 以上57.2μm2 以下の範囲内で変化させた。この場合における面積比率および平均円形度は、表3に示した通りであった。なお、平均粒子面積、面積比率および平均円形度の算出手順は、実施例1−1〜1−17と同様である。
【0144】
図2に示したSEM像およびその画像処理像は、実施例3−8の負極34に関するものである。実施例3−8における面積比率の内訳の詳細は、10μm2 以下が27.0%、10μm2 以上20μm2 以下が33.0%、20μm2 以上30μm2 以下が28.0%、30μm2 以上が12%であった。
【0145】
最後に、実施例1−1〜1−17と同様の手順によって電解質を調製したのち、正極33および負極34と共に電解質を用いて二次電池を組み立てた。最初に、正極集電体33Aの一端にアルミニウム製の正極リード31を溶接すると共に、負極集電体34Aの一端にニッケル製の負極リード32を溶接した。続いて、正極33と、微多孔性ポリプロピレンフィルムからなるセパレータ35(厚さ=25μm)と、負極34とを積層および巻回させたのち、粘着テープからなる保護テープ37で巻き終わり部分を固定して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成した。続いて、外側から、ナイロンフィルム(厚さ=30μm)と、アルミニウム箔(厚さ=40μm)と、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ=30μm)とが積層された3層構造のラミネートフィルム(総厚=100μm)からなる外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺を除く外縁部同士を熱融着して、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納した。続いて、実施例1−1〜1−17と同様の組成を有する電解質を調製したのち、それを外装部材40の開口部から注入してセパレータ35に含浸させて巻回電極体30を作製した。最後に、真空雰囲気中において外装部材40の開口部を熱融着して封止することにより、ラミネートフィルム型の二次電池が完成した。この二次電池については、正極活物質層33Bの厚さを調節することにより、満充電時において負極34にリチウム金属が析出しないようにした。
【0146】
(比較例2−1,2−2)
平均粒子面積、面積比率および平均円形度を表3に示したように変化させたことを除き、実施例3−1〜3−17と同様の手順を経た。
【0147】
これらの実施例3−1〜3−17および比較例2−1,2−2の二次電池についてサイクル特性を調べたところ、表3および図12に示した結果が得られた。
【0148】
【表3】

【0149】
表3および図12に示したように、負極活物質層が多層構造を有する場合においても、表1および図10と同様の結果が得られた。すなわち、平均粒子面積が1μm2 以上60μm2 以下である実施例3−1〜3−17では、その範囲外である比較例2−1,2−2と比較して、放電容量維持率が大幅に増加した。また、平均粒子面積が2μm2 以上40μm2 以下であると、80%以上の高い放電容量維持率が得られ、さらに平均粒子面積が5μm2 以上17μm2 以下であると、90%以上の著しく高い放電容量維持率が得られた。
【0150】
これらのことから、本発明の二次電池では、負極活物質層が多層構造を有する場合においても、負極活物質層の表面から観察した際における複数の負極活物質粒子の平均粒子面積が1μm2 以上60μm2 以下であることにより、サイクル特性が向上することが確認された。この場合には、平均粒子面積が2μm2 以上40μm2 以下、さらに5μm2 以上17μm2 以下であれば、特性がより向上することも確認された。
【0151】
(実施例4−1〜4−4)
負極集電体34Aの搬送速度、負極材料の堆積速度、あるいは負極活物質層34Bの層数や、蒸着処理槽101内へのガス導入(アルゴンガス)を調整することにより、表4に示したように、平均円形度を0.38以上0.75以下の範囲内で変化させたことを除き、実施例3−1〜3−17と同様の手順を経た。この場合における平均粒子面積および面積比率は、表4に示した通りであった。
【0152】
これらの実施例4−1〜4−4の二次電池についてサイクル特性を調べたところ、表4および図13に示した結果が得られた。
【0153】
【表4】

【0154】
表4および図13に示したように、平均円形度が大きくなるにしたがって、放電容量維持率は増加したのちに減少する傾向を示した。この場合には、平均円形度が0.40以上、より具体的には0.4以上0.8以下であると、80%以上の高い放電容量維持率が得られた。
【0155】
これらのことから、本発明の二次電池では、平均円形度が0.4以上、好ましくは0.4以上0.8であれば、サイクル特性がより向上することが確認された。
【0156】
上記した表1〜表4および図10〜図13の結果から、本発明の二次電池では、負極活物質層が複数の負極活物質粒子を含む場合に、その負極活物質層の表面から観察した際における複数の負極活物質粒子の平均粒子面積が1μm2 以上60μm2 以下であることにより、負極活物質層の層構造(単層あるいは多層)などに依存せずに、サイクル特性が向上することが確認された。
【0157】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の負極の使用用途は、必ずしも二次電池に限らず、二次電池以外の他の電気化学デバイスであっても良い。他の用途としては、例えば、キャパシタなどが挙げられる。
【0158】
また、上記した実施の形態および実施例では、二次電池の種類として、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づいて表されるリチウムイオン二次電池について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。本発明の二次電池は、例えば、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に伴う容量とリチウムの析出および溶解に伴う容量とを含み、かつ、それらの容量の和によって表される二次電池についても、同様に適用可能である。この二次電池では、負極活物質としてリチウムを吸蔵および放出することが可能な材料が用いられ、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料における充電可能な容量が正極の放電容量よりも小さくなるように設定される。
【0159】
また、上記した実施の形態および実施例では、電池構造が円筒型、ラミネートフィルム型あるいはコイン型である場合、ならびに電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げて説明したが、本発明の二次電池は、角型あるいはボタン型などの他の電池構造を有する場合や、電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合についても同様に適用可能である。
【0160】
また、上記した実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他の1族元素や、マグネシウム(Mg)あるいはカルシウム(Ca)などの2族元素や、アルミニウムなどの他の軽金属を用いてもよい。
【0161】
また、上記した実施の形態および実施例では、本発明の負極あるいは二次電池における平均粒子面積について、実施例の結果から導き出された適正範囲を説明しているが、その説明は、平均粒子面積が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本発明の効果を得る上で特に好ましい範囲であり、本発明の効果が得られるのであれば、平均粒子面積が上記した範囲から多少外れてもよい。このことは、面積比率や平均円形度などについても、同様である。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】本発明の一実施の形態に係る負極の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した負極の表面構造を表すSEM像およびその画像処理像である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る負極を製造するために用いられる製造装置の概略構成例を表す断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る負極を用いた第1の二次電池の構成を表す断面図である。
【図5】図4に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図6】図5に示した正極および負極の構成を表す平面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る負極を用いた第2の二次電池の構成を表す断面図である。
【図8】図7に示した巻回電極体のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る負極を用いた第3の二次電池の構成を表す断面図である。
【図10】平均粒子面積と放電容量維持率との間の相関(電池構造:コイン型,負極活物質層=単層)を表す図である。
【図11】面積比率と放電容量維持率との間の相関(電池構造:コイン型,負極活物質層=単層)を表す図である。
【図12】平均粒子面積と放電容量維持率との間の相関(電池構造:ラミネートフィルム型,負極活物質層=多層)を表す図である。
【図13】平均円形度と放電容量維持率との間の相関(電池構造:ラミネートフィルム型,負極活物質層=多層)を表す図である。
【符号の説明】
【0163】
1,22A,34A,52A…負極集電体、2,22B,34B,52B…負極活物質層、11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17,56…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33,51…正極、21A,33A,51A…正極集電体、21B,33B,51B…正極活物質層、22,34,52…負極、23,35,53…セパレータ、24…センターピン、25,31…正極リード、26,32…負極リード、36…電解質、37…保護テープ、40…外装部材、41…密着フィルム、54…外装缶、55…外装カップ、200…負極活物質粒子、201…1次粒子、202…2次粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体上に、複数の負極活物質粒子を含む負極活物質層を有し、
前記負極活物質層の表面から観察した際における前記複数の負極活物質粒子の平均粒子面積は、1μm2 以上60μm2 以下である
ことを特徴とする負極。
【請求項2】
前記平均粒子面積は、2μm2 以上40μm2 以下であることを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項3】
前記平均粒子面積は、5μm2 以上17μm2 以下であることを特徴とする請求項2記載の負極。
【請求項4】
前記複数の負極活物質粒子の粒子面積の総和に対する、20μm2 以上30μm2 以下の粒子面積を有する負極活物質粒子の粒子面積の総和の割合(面積比率)は、10%以上60%以下であることを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項5】
前記複数の負極活物質粒子の平均円形度は、0.4以上0.8以下であることを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項6】
前記負極活物質層は、気相法、液相法、焼結法あるいは溶射法によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項7】
前記負極活物質粒子は、ケイ素(Si)の単体、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項8】
前記負極活物質層は、その厚さ方向において、酸素含有量が異なる2種類の層を複数ずつ有することを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項9】
前記負極活物質層は、前記負極集電体と合金化していることを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項10】
正極および負極と共に電解質を備えた二次電池であって、
前記負極は、負極集電体上に、複数の負極活物質粒子を含む負極活物質層を有し、
前記負極活物質層の表面から観察した際における前記複数の負極活物質粒子の平均粒子面積は、1μm2 以上60μm2 以下である
ことを特徴とする二次電池。
【請求項11】
前記平均粒子面積は、2μm2 以上40μm2 以下であることを特徴とする請求項10記載の二次電池。
【請求項12】
前記平均粒子面積は、5μm2 以上17μm2 以下であることを特徴とする請求項11記載の二次電池。
【請求項13】
前記複数の負極活物質粒子の粒子面積の総和に対する、20μm2 以上30μm2 以下の粒子面積を有する負極活物質粒子の粒子面積の総和の割合(面積比率)は、10%以上60%以下であることを特徴とする請求項10記載の二次電池。
【請求項14】
前記複数の負極活物質粒子の平均円形度は、0.4以上0.8以下であることを特徴とする請求項10記載の二次電池。
【請求項15】
前記負極活物質層は、気相法、液相法、焼結法あるいは溶射法によって形成されていることを特徴とする請求項10記載の二次電池。
【請求項16】
前記負極活物質粒子は、ケイ素の単体、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項10記載の二次電池。
【請求項17】
前記負極活物質層は、その厚さ方向において、酸素含有量が異なる2種類の層を複数ずつ有することを特徴とする請求項10記載の二次電池。
【請求項18】
前記負極活物質層は、前記負極集電体と合金化していることを特徴とする請求項10記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−245649(P2009−245649A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88238(P2008−88238)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】