説明

負極活物質およびそれを用いたアルカリ電池

【課題】亜鉛合金粉末の組成および粒度分布を最適化することにより、耐食性および電極反応性に優れた亜鉛合金粉末からなる負極活物質を提供することを目的とする。
【解決手段】アルカリ電池用負極活物質が、150メッシュ未満の微粉末および150メッシュ以上の粗粉末を含む亜鉛合金粉末からなり、前記亜鉛合金粉末は、Inを300ppm〜800ppmおよびBiを100ppm〜500ppm含み、前記微粉末は、Al、Ca、Ba、Sr、Mg、およびGaからなる群より選ばれる少なくとも一種を合計で80ppm〜400ppm含み、前記粗粉末は、Al、Ca、Ba、Sr、Mg、およびGaからなる群より選ばれる少なくとも一種を合計で50ppm以下含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛合金粉末からなる負極活物質およびそれを用いたアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アルカリ電池の保存中における負極亜鉛の腐食による水素ガス発生を抑制するために、水銀を含む亜鉛粉末を用いて水素過電圧を高める方法が採用されている。
しかし、近年、環境負荷の低減が要求されているところから、環境に有害な水銀の含有量を低減することを目的としてアルカリ電池の亜鉛合金の耐食性向上や防食剤の検討が種々に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、亜鉛にIn、Bi、Al、Ga等の元素を添加する方法が提案されている。また、特許文献2では、Ca、Ba、Sr等のアルカリ土類金属を添加する方法が提案されている。
しかし、Al、Ca、Ba、Sr等は亜鉛合金中に多く含まれると、耐食性は向上するが、亜鉛の電極反応が妨害されて、高負荷放電特性が低下するという問題があった。
【0004】
また、近年アルカリ電池は、デジタルカメラ等の電子機器の電源に用いられることが多く、優れた高負荷放電特性が要求されている。
アルカリ電池の高負荷放電特性を向上させる方法としては、負極性能の改善が挙げられる。負極活物質である亜鉛の電極反応を改善させるために、例えば、特許文献3では、亜鉛合金粉末中における微粉率を増加させて、反応に寄与する亜鉛粉末の総反応面積を増大させることが提案されている。また、特許文献4では、150メッシュ未満の球状亜鉛粉末を用いることが提案されている。
【0005】
しかし、高負荷放電特性を向上させるために亜鉛合金粉末中の微粉率を一定以上に増加させると、耐食性の高い亜鉛合金粉末でも、水素ガスの発生量が増大し、電解液が漏出する可能性がある。また、上記のように亜鉛合金粉末への高耐食性を有する異種元素の添加量が増大すると、高負荷放電特性が低下するという問題があった。
【特許文献1】特開昭61−077259号公報
【特許文献2】特開昭62−040157号公報
【特許文献3】特表2001−512284号公報
【特許文献4】特開2003−317714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題を解決するため、亜鉛合金粉末の組成および粒度分布を最適化することにより、耐食性および電極反応性に優れた亜鉛合金粉末からなる負極活物質を提供することを目的とする。また、上記の負極活物質を用いて保存特性および高負荷放電特性に優れたアルカリ電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の負極活物質は、150メッシュ未満の微粉末および150メッシュ以上の粗粉末を含む亜鉛合金粉末からなり、前記亜鉛合金粉末は、Inを300ppm〜800ppmおよびBiを100ppm〜500ppm含み、前記微粉末は、Al、Ca、Ba、Sr、Mg、およびGaからなる群より選ばれる少なくとも一種を合計で80ppm〜400ppm含み、前記粗粉末は、Al、Ca、Ba、Sr、Mg、およびGaからなる群より選ばれる少なくとも一種を合計で50ppm以下含むことを特徴とする。
【0008】
前記微粉末と前記粗粉末との混合重量比が20:80〜70:30であるのが好ましい。
前記微粉末における粒子の最短径に対する粒子の最長径の比の平均値が1〜2であるのが好ましい。
また、本発明は、上記の負極活物質を用いたアルカリ電池に関する。上記の負極活物質を用いることにより、低負荷および高負荷放電特性ならびに保存特性に優れたアルカリ電池が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、亜鉛合金粉末の組成および粒度分布を最適化することにより、耐食性および電極反応性に優れた亜鉛合金粉末が得られる。
また、上記の亜鉛合金粉末を負極活物質として用いたアルカリ電池では、亜鉛合金の腐食による水素ガスの発生が抑制され、保存特性が改善されるとともに、高負荷放電特性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは、負極活物質(亜鉛合金粉末)の腐食による水素ガス発生を抑制し、かつ電極反応性を改善するために、亜鉛合金粉末の組成および粒度分布について種々検討した。
その結果、負極活物質としての亜鉛合金粉末が、150メッシュ未満の微粉末(以下、合金粉末Aと表す)および150メッシュ以上の粗粉末(以下、合金粉末Bと表す)からなり、前記亜鉛合金粉末が、In(インジウム)を300ppm〜800ppmおよびBi(ビスマス)を100ppm〜500ppm含み、前記合金粉末Aが、Al(アルミニウム)、Ca(カルシウム)、Ba(バリウム)、Sr(ストロンチウム)、Mg(マグネシウム)、およびGa(ガリウム)からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下、異種元素と表す)を80ppm〜400ppm含み、前記合金粉末Bが、上記の異種元素を50ppm以下含む場合に、耐食性が向上して、水素ガス発生が抑制され、かつ電極反応性が向上することを見出した。そして、上記の亜鉛合金粉末を負極活物質に用いたアルカリ電池では、優れた保存特性および高負荷放電特性が得られることを見出した。
【0011】
亜鉛合金粉末における150メッシュ以上の粗粉末とは、亜鉛合金粉末を篩いにかけた際に、150メッシュの篩網の篩上に残る亜鉛合金粉末を示す。好ましくは、36メッシュの篩網を通過し、150メッシュの篩網の篩上に残る亜鉛合金粉末を示す。また、亜鉛合金粉末における150メッシュ未満の微粉末とは、亜鉛合金粉末を篩いにかけた際に、150メッシュの篩網を通過する亜鉛合金粉末を示す。好ましくは、亜鉛合金粉末を篩いにかけた際に、150メッシュの篩網を通過し、330メッシュの篩網の篩上に残る亜鉛合金粉末を示す。
【0012】
亜鉛合金粉末が水素過電圧の高いInおよびBiを上記の範囲で含むことにより、亜鉛合金粉末の腐食が抑制される。亜鉛合金粉末中のIn含有量が300ppm未満であり、かつ亜鉛合金粉末中のBi含有量が100ppm未満であると、水素ガスの発生を抑制する効果が十分に得られない。一方、亜鉛合金粉末中のIn含有量が800ppmを超え、かつ亜鉛合金粉末中のBi含有量が500ppmを超えると、高負荷放電特性が低下する傾向がある。
水素ガス発生の抑制の効果と、優れた高負荷放電特性とを適度に兼ね備えるため、亜鉛合金粉末中のIn含有量は、300ppm〜500ppmが好ましい。
同様に、水素ガス発生の抑制の効果と、優れた高負荷放電特性とを適度に兼ね備えるため、亜鉛合金粉末中のBi含有量は、150ppm〜300ppmが好ましい。
【0013】
InおよびBiの含有量は、合金粉末AとBとを混合した負極活物質として用いられる亜鉛合金粉末全体に対する量であり、亜鉛合金粉末全体でInおよびBiを上記の範囲で含んでいればよい。したがって、合金粉末AおよびB中のInおよびBiの含有量は、同じでも異なっていてもよい。
【0014】
合金粉末A中の異種元素の含有量が80ppm未満であると、水素ガスの発生量が多くなる。一方、合金粉末A中の異種元素の含有量が400ppmを超えると、低負荷および高負荷放電特性が低下する。
水素ガス発生の抑制の効果と、優れた低負荷および高負荷放電特性とを適度に兼ね備えるため、合金粉末A中の異種元素の含有量は、100ppm〜200ppmが好ましい。
また、上記合金粉末A中の異種元素としては、水素ガス発生が少なく、優れた放電特性が得られるため、AlとBaとを組み合わせて用いるのが好ましい。
【0015】
合金粉末B中の異種元素の含有量が50ppmを超えると、低負荷放電特性が低下する。合金粉末B中の異種元素の含有量は40ppm以下であるのが好ましく、さらに、合金粉末Bは異種元素を含まないのがより好ましい。
また、上記合金粉末B中の異種元素としては、優れた放電特性が得られるため、AlとBaとを組み合わせて用いるのが好ましい。
【0016】
高負荷放電特性の向上と水素ガス発生の抑制とのバランスの観点から、亜鉛合金粉末中における合金粉末Aの混合比率が20重量%〜70重量%であるのが好ましい。亜鉛合金粉末中の合金粉末Aの混合比率が20重量%未満であると、高負荷放電特性が低下する。一方、亜鉛合金粉末中の合金粉末Aの混合比率が70重量%を越えると、水素ガスの発生量が多くなる。さらに、亜鉛合金粉末中における合金粉末Aの混合比率が30重量%〜60重量%であるのがより好ましい。
【0017】
合金粉末Aにおける、粒子の最短径に対する粒子の最長径の比(以下、最長径/最短径と表す)の平均値が1〜2であるのが好ましい。最長径/最短径の平均値が2以下であると、粒子形状は球状に近くなり、水素ガスの発生量が減少する。なお、最短径に対する最長径の比が1であるとは、最長径と最短径とが等しく、粒子形状が球形であることを意味する。さらに、最長径/最短径の平均値が1.0〜1.8であるのがより好ましい。
【0018】
合金粉末Aにおける、粒子の最短径に対する粒子の最長径の比は、例えば、高圧窒素ガスを用いて亜鉛合金溶湯を噴霧して粉末化する際に、雰囲気中の酸素濃度を調整することにより、制御することができる。亜鉛合金溶湯が噴霧され、液滴になった際に、雰囲気中の酸素濃度が高いと、理由は明確ではないものの不定形状に固定されやすくなるため、粒子の最短径に対する粒子の最長径の比の大きなものができやすい。一方、酸素雰囲気中の酸素濃度が低いと、表面張力により球状に近い形状になりやすい。
【0019】
最長径/最短径の平均値は、例えば、偏りなく採取した合金粉末試料を光学顕微鏡またはマイクロスコープによって二次元画像としてデータ化し、少なくとも30個以上の粒子(例えば50個の粒子)についてそれぞれ最長径および最短径を測定して最長径/最短径を算出し、これらの値の平均値を求めることにより得られる。
【0020】
負極活物質に用いる亜鉛合金粉末の粒度範囲は36メッシュ〜330メッシュであるのが好ましい。さらに好ましくは、亜鉛合金粉末の粒度範囲は40メッシュ〜300メッシュである。
また、合金粉末AおよびB中には、少量(例えば30ppm以下)のPb(鉛)や、不純物としてのFe(鉄)を少量(例えば5ppm以下)含んでいてもよい。
【0021】
次に、本発明の負極活物質の製造方法について以下に説明する。但し、本発明の負極活物質の製造方法はこれに限定されない。
例えば、高純度亜鉛地金(純度99.9%以上)を加熱溶解し、所定の異種金属を所定量添加して合金化した溶湯を、アトマイズ法により粉末化する。そして、得られた亜鉛合金粉末を、150メッシュの篩にかけ、篩を通過する150メッシュ未満の微粉末(合金粉末A)を得る。
【0022】
一方、高純度亜鉛地金(純度99.9%以上)を加熱溶解し、所定の異種金属を所定量添加して合金化した溶湯をアトマイズ法により粉末化する。得られた亜鉛合金粉末を、150メッシュの篩にかけ、篩上に残る150メッシュ以上の粗粉末(合金粉末B)を得る。
そして、合金粉末Aと合金粉末Bとを所定の比率で混合することにより本発明の負極活物質である亜鉛合金粉末を得ることができる。
【0023】
150メッシュを基準とした亜鉛合金粉末の分級は、例えば、RO−TAP法による篩振盪機と、JIS Z 2510に基づくSUS製のJIS標準篩網とを用いて行うことができる。
ただし、最終的に本発明の負極活物質が得られるのであれば、分級する基準は上記のように150メッシュに必ずしも限定されない。亜鉛合金粉末の作製が容易である点で150メッシュの篩で分級するのが好ましいが、例えば100メッシュ〜200メッシュの篩やそれ以外の篩を用いて分級してもよい。
【0024】
合金粉末Aおよび合金粉末Bを製造する具体的方法および上記以外の条件については、現在公知の方法および条件(例えば、特開昭50−48427号公報の229ページ右上段7行目〜右下段16行目、特許第3434961号明細書の段落[0012]等参照)の技術常識に基づいて適宜設計すればよい。分級する前段階までの合金粉末Aおよび合金粉末Bの製造方法は、同じであっても、異なっていてもよい。ただし、収率の面から、合金粉末Aについては合金粉末Aが多くなるように製造するのが好ましく、合金粉末Bについては合金粉末Bが多くなるように作製するのが好ましい。合金粉末Aがより多くなるように製造するには、例えば、合金粉末Aに噴霧する圧縮空気の噴霧圧力を高くすればよく、合金粉末Bがより多くなるように製造するには、例えば、合金粉末Bに噴霧する圧縮空気の噴霧圧力を低くすればよい。
【0025】
また、本発明のアルカリ電池は、上記の亜鉛合金粉末からなる負極活物質を含む負極、二酸化マンガンを含む正極、および前記正極と負極とを隔離するセパレータとを具備する。
負極には、例えば、上記の亜鉛合金粉末と、少量の酸化亜鉛を含む水酸化カリウム水溶液からなる電解液と、ポリアクリル酸ナトリウムからなるゲル化剤とを混合したゲル状負極が用いられる。
【0026】
正極には、例えば、二酸化マンガン等の正極活物質、黒鉛等の導電剤、および上記の電解液とを混合した正極合剤が用いられる。
正極活物質は、二酸化マンガン以外に、例えば、酸化銀やオキシ水酸化ニッケルなどの金属酸化物系活物質を用いてもよく、それらの少なくとも1種を二酸化マンガンと混合して用いてもよい。また、空気を還元する触媒極を正極としてもよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
《実施例1》
(1)負極活物質の作製
純度99.97%の亜鉛を約500℃で溶解し、In含有量が450ppm、Bi含有量が250ppm、およびAl含有量が150ppmとなるようにIn、Bi、およびAlを添加し、均一に溶解させた。圧縮空気(噴射圧:50kg/cm、酸素濃度:21容量%)で亜鉛合金溶湯を噴霧して粉末化し、亜鉛合金粉末を得た。そして、得られた亜鉛合金粉末を150メッシュの篩で分級して篩下(150メッシュ未満)の亜鉛合金粉末A(微粉末)を得た。
【0028】
一方、純度99.97%の亜鉛を約500℃で溶解し、In含有量が450ppm、Bi含有量が250ppm、およびAl含有量が20ppmとなるようにIn、Bi、およびAlを添加し、均一に溶解させた。圧縮空気(噴射圧:50kg/cm)で亜鉛合金溶湯を噴霧して粉末化し、亜鉛合金粉末を得た。そして、得られた亜鉛合金粉末を150メッシュの篩で分級して篩上(150メッシュ以上)の亜鉛合金粉末B(粗粉末)を得た。
上記で得られた亜鉛合金粉末AおよびBを重量比50:50の割合で混合し、負極活物質用の亜鉛合金粉末を得た。
【0029】
(2)ゲル状負極の作製
電解液、ならびにゲル化剤としてポリアクリル酸ナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースを重量比100:3:1の割合で混合し、ゲル状電解液を得た。このゲル状電解液および上記で得られた亜鉛合金粉末を重量比1:2の割合で混合しゲル状負極を得た。なお、電解液には、37重量%の水酸化カリウムおよび3重量%の酸化亜鉛を含むアルカリ水溶液を用いた。
【0030】
(3)正極合剤の作製
正極活物質としての二酸化マンガン粉末および導電剤としての黒鉛粉末を重量比94:6の割合で混合し、この混合物100重量部あたり上記と同様の電解液を2重量部添加し、充分に攪拌した後、フレーク状に圧縮成型した。ついでフレーク状の正極合剤を粉砕して顆粒状とし、これを篩によって分級し、10メッシュ〜100メッシュのものを中空円筒状に加圧成型してペレット状の正極合剤を得た。
【0031】
(4)アルカリ電池の組み立て
以下に示す手順で、図1に示す構造の単3形アルカリ電池を作製した。図1は、アルカリ電池の一部を断面とした正面図である。
電池ケース1内に上記で得られた正極合剤を2個挿入し、加圧治具により正極合剤2を再成型して電池ケース1の内壁に密着させた。そして、電池ケース1内に配置された正極合剤2の中央に有底円筒形のセパレータ4を配置し、セパレータ4内へ上記と同様の電解液を所定量注入した。所定時間経過した後、上記で得られたゲル状負極3をセパレータ4内へ充填した。なお、セパレータ4には、ポリビニルアルコール繊維とレーヨン繊維を主体として混抄した不織布を用いた。
【0032】
続いて、負極集電子6をゲル状負極3の中央に挿入した。なお、負極集電子6には、ガスケット5および負極端子を兼ねる底板7を予め一体化させた。そして、電池ケース1の開口端部を、ガスケット5の端部を介して、底板7の周縁部にかしめつけ、電池ケース1の開口部を封口した。最後に、外装ラベル8で電池ケース1の外表面を被覆して、アルカリ電池(以下、電池と表す)を得た。
【0033】
《実施例2〜61》
表1〜3に示すように合金粉末AおよびBの組成および混合比率を変えた以外は実施例1と同様の方法により負極活物質2〜61を作製した。そして、実施例1の負極活物質1の代わりに負極活物質2〜61を用いた以外は実施例1と同様の方法により電池2〜61を作製した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
《比較例1〜24》
表4に示すように合金粉末AおよびBの組成および混合比率を変えた以外は実施例1と同様の方法により負極活物質62〜85を作製した。そして、実施例1の負極活物質1の代わりに負極活物質62〜85を用いた以外は実施例1と同様の方法により電池62〜85を作製した。
【0038】
【表4】

【0039】
《実施例62》
合金粉末Aの作製において、酸素濃度0.02容量%の雰囲気中で直接高圧窒素ガスを用いて粉体化した以外は、実施例1と同様の方法により負極活物質86を作製した。そして、負極活物質86を用いた以外は実施例1と同様の方法により電池86を作製した。
【0040】
《実施例63》
合金粉末Aの作製において、酸素濃度0.05容量%の雰囲気中で直接高圧窒素ガスを用いて粉体化した以外は、実施例1と同様の方法により負極活物質87を作製した。そして、負極活物質87を用いた以外は実施例1と同様の方法により電池87を作製した。
【0041】
《実施例64》
合金粉末Aの作製において、酸素濃度0.1容量%の雰囲気中で直接高圧窒素ガスを用いて粉体化した以外は、実施例1と同様の方法により負極活物質88を作製した。そして、負極活物質88を用いた以外は実施例1と同様の方法により電池88を作製した。
【0042】
《実施例65》
合金粉末Aの作製において、酸素濃度0.2容量%の雰囲気中で直接高圧窒素ガスを用いて粉体化した以外は、実施例1と同様の方法により負極活物質89を作製した。そして、負極活物質89を用いた以外は実施例1と同様の方法により電池89を作製した。
【0043】
《実施例66》
合金粉末Aの作製において、酸素濃度10容量%の雰囲気中で直接高圧窒素ガスを用いて粉体化した以外は、実施例1と同様の方法により負極活物質90を作製した。そして、負極活物質90を用いた以外は実施例1と同様の方法により電池90を作製した。
【0044】
《実施例67》
合金粉末Aの作製において、酸素濃度21容量%の雰囲気中で直接高圧窒素ガスを用いて粉体化した以外は、実施例1と同様の方法により負極活物質91を作製した。そして、負極活物質91を用いた以外は実施例1と同様の方法により電池91を作製した。
【0045】
[評価]
負極活物質1〜91における合金粉末Aおよび作製後10日間静置した電池1〜91について以下に示す評価を行った。
(イ)放電特性の評価
20℃環境下、1A(高負荷)または100mA(低負荷)の電流値で0.9Vまで放電し、放電時間を計測した。
【0046】
(ロ)保存特性の評価
封口体を取り外した状態の電池を、流動パラフィンを充填したガス捕集用ガラス治具内にセットし、45℃の環境下で20日間保存した。そして、保存期間中に発生した水素ガス量を測定した。
【0047】
(ハ)合金粉末Aにおける粒子の最短径に対する最長径の比の平均値の測定
偏りなく採取した合金粉末試料を光学顕微鏡によって二次元画像としてデータ化し、50個の粒子についてそれぞれ最長径および最短径を測定して、最長径/最短径を算出し、これらの値の平均値を求めた。
【0048】
これらの評価結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5中の放電時間は、高負荷放電および低負荷放電のいずれも電池1の放電時間を100とした指数で表した。また、ガス発生量は、電池1のガス発生量を100とした指数で表した。
電池を評価した結果より、低負荷放電時間が95以上であり、かつ高負荷放電時間が90以上であり、かつガス発生量が200未満のものを、低負荷放電特性、高負荷放電特性、および保存特性が良好であると判断した。
【0049】
【表5】

【0050】
(A)合金粉末AおよびBへの異種元素(Al、Ca、Ba、Sr、Mg、またはGa)の添加について
Al、Ca、Ba、Sr、Mg、またはGaを150ppm含む合金粉末AおよびAl、Ca、Ba、Sr、Mg、またはGaを20ppm含む合金粉末Bを用いた本発明の電池1〜6では、良好な低負荷および高負荷放電特性ならびに保存特性が得られた。また、2種類の異種元素を含む合金粉末AおよびBを用いた本発明の電池7〜9においても、良好な放電特性および保存特性が得られた。
【0051】
一方、合金粉末AおよびBのBa含有量が40ppmと同じである電池66では、合金粉末A中におけるBa含有量が少ないため、ガス発生量が増大した。また、合金粉末AおよびBのBa含有量が80ppmと同じである電池67では、合金粉末B中におけるBa含有量が多いため、低負荷および高負荷放電特性が低下した。
以上のことから、亜鉛合金粉末の粒度に応じて各異種元素の含有量を適宜変えることにより、保存特性の向上と、低負荷および高負荷放電特性の向上とを同時に実現できることがわかった。
【0052】
(B)亜鉛合金粉末(合金粉末AおよびB)中のIn含有量について
亜鉛合金中のIn含有量が300ppm〜800ppmである本発明の電池10〜13では、良好な高負荷および低負荷放電特性ならびに保存特性が得られた。亜鉛合金中のIn含有量が300ppm未満である電池62では、ガス発生量が多くなった。In含有量が800ppmを超える電池63では、低負荷および高負荷放電特性が低下した。
【0053】
(C)亜鉛合金粉末(合金粉末AおよびB)中のBi含有量について
亜鉛合金中のBi含有量が100ppm〜500ppmである本発明の電池14〜17では、良好な高負荷および低負荷放電特性ならびに保存特性が得られた。亜鉛合金中のBi含有量が100ppm未満である電池64では、ガス発生量が多くなった。Bi含有量が500ppmを超える電池65では、低負荷および高負荷放電特性が低下した。
【0054】
(D)合金粉末A中の異種元素(Ba、Al、Sr、Ca、Mg、またはGa)の含有量について
合金粉末A中の異種元素の含有量が80ppm〜400ppmである本発明の電池18〜31では、良好な高負荷および低負荷放電特性ならびに保存特性が得られた。合金粉末A中の異種元素の含有量が80ppm未満である電池68、70、72、74、76、および78では、ガス発生量が多くなった。一方、異種元素の含有量が400ppmを超える電池69、71、73、75、77、および79では、低負荷および高負荷放電特性が低下した。
【0055】
(E)合金粉末B中の異種元素(Ba、Al、Sr、Ca、Mg、またはGa)の含有量について
合金粉末B中の異種元素の含有量が0ppm〜50ppmである本発明の電池32〜43では、良好な高負荷および低負荷放電特性ならびに保存特性が得られた。異種元素の含有量が50ppmを超える電池80〜85では、低負荷放電特性が低下した。
【0056】
(F)合金粉末Aと合金粉末Bの混合比率について、
合金粉末Aの混合比率が20重量%〜70重量%である電池45〜48、51、52、55、56、59、および60の場合に良好な低負荷および高負荷放電特性ならびに保存特性が得られた。合金粉末Aの混合比率が20重量%未満の電池49、53、57、および61では、高負荷放電特性が低下し、合金粉末Aの混合比率が70重量%を超える電池44、50、54、および58では、ガス発生量が多くなった。
【0057】
(G)合金粉末Aの粒子形状について
合金粉末Aの粒子における最長径/最短径の平均値が1.0〜2.0である電池86〜89では、ガス発生がさらに抑制されて、優れた保存特性が得られた。これより、合金粉末Aの粒子形状は球形に近いほどガス発生が抑制されることがわかった。
なお、負極活物質1〜85では、合金粉末Aにおける粒子の最長径/最短径の平均値は3.0以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明のアルカリ電池は高負荷放電特性および保存特性に優れているため、デジタルカメラ等の電子機器や携帯機器に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のアルカリ電池の一例の一部を断面にした正面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 電池ケース
2 正極合剤
3 ゲル状負極
4 セパレータ
5 ガスケット
6 負極集電子
7 底板
8 外装ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
150メッシュ未満の微粉末および150メッシュ以上の粗粉末を含む亜鉛合金粉末からなり、
前記亜鉛合金粉末は、Inを300ppm〜800ppmおよびBiを100ppm〜500ppm含み、
前記微粉末は、Al、Ca、Ba、Sr、Mg、およびGaからなる群より選ばれる少なくとも一種を合計で80ppm〜400ppm含み、
前記粗粉末は、Al、Ca、Ba、Sr、Mg、およびGaからなる群より選ばれる少なくとも一種を合計で50ppm以下含むことを特徴とするアルカリ電池用負極活物質。
【請求項2】
前記微粉末と前記粗粉末との混合重量比が20:80〜70:30である請求項1記載のアルカリ電池用負極活物質。
【請求項3】
前記微粉末における粒子の最短径に対する粒子の最長径の比の平均値が1〜2である請求項1記載のアルカリ電池用負極活物質。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の負極活物質を用いたアルカリ電池。

【図1】
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【公開番号】特開2006−302774(P2006−302774A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125455(P2005−125455)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】