説明

貨幣処理装置

【課題】包装硬貨の補充をする場合に誤った抜取操作を防止するための簡単な構造を設けることによって、貨幣処理装置の稼動状態での補充を可能にして稼動効率を向上させる。
【解決手段】装填庫装着部17に装着可能な、貨幣を装填するための複数の列ごとに設けられた装填庫18と、装填庫装着部17に装着された状態で、装填庫18に装填された貨幣を投出する貨幣投出部23と、装置本体に対して施開錠可能な遮蔽扉であって、装填庫18が装填庫装着部17へ装填された状態で、装填庫を遮蔽する遮蔽扉41a,41bとを有し、遮蔽扉41a,41bは装填庫18の複数の列ごとに、独立して開閉可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関の両替機等に内蔵される貨幣処理装置に関し、さらには包装硬貨等の貨幣を金種別に装填する装填庫(トレー)に装填された貨幣を管理して補充することのできる貨幣処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貨幣処理装置には、同金種の複数本の包装硬貨を装填する金種別装填庫が複数段設けられている。また、この貨幣処理装置には、該金種別装填庫から一本ずつ取出した包装硬貨を昇降動作によって取出口まで搬送するバケットが設けられている。
また、貨幣処理装置は、装置内部に装填した包装硬貨の現金管理を行なうため、各金種別装填庫内に装填する包装硬貨の装填量を検知し、現金管理する管理手段を備えている。
【0003】
従来、装填庫に装填した包装硬貨の金種及び残量を検知する検知手段を備えた貨幣処理装置が提案されている。この貨幣処理装置の検知手段は、包装硬貨の装填方向に沿って、装填庫両側面に備えられたスリットを通過する光のON/OFFの変化状態にて包装硬貨の残量及び金種を検知する貨幣検知センサ等で実現される。この貨幣処理装置は、貨幣検知センサがスリットに沿って移動して当該装填庫に装填された包装硬貨の残量及び金種を検知することができる。
【0004】
前記従来例によれば、貨幣検知センサによって、装置内部に装填した貨幣処理装置の残量、金種などを検知して、装填した包装硬貨の残量管理を行なうことができ、装填した包装硬貨の残量が少なくなった場合に、装填した包装硬貨が無くなる以前に包装硬貨を補充することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-192097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、包装硬貨の補充では、図12,13に示すように、いったん貨幣処理装置10′を休止させ、保守員が装置後扉40を開け、遮蔽扉41があればそれも開けて装填庫を抜取り、包装硬貨を装填庫に補充し、補充済の装填庫を装着していた。保守員は、貨幣処理装置10′に包装硬貨の装填本数を計数する計数処理を実行させて正常に包装硬貨が補充されたことを確認した上で、貨幣処理の取扱を再開させていた。
【0007】
しかし、実際の運用においては、貨幣処理装置を利用する利用客が行列を成して次々に利用している場合が多い。このため、補充のため貨幣処理装置を休止させると、多数の利用客を待たせることにつながるので、貨幣処理装置を稼動させたまま包装硬貨を補充することが望まれていた。
そこで前記特許文献1によれば、装填庫装着部に抜取可能に装着された複数の装填庫ごとに、抜取りの可否を判定し、この判定によって抜取不可と判定された装填庫の誤った抜取操作を防止するロック装置が具備されている。これにより、稼動状態の貨幣処理装置に対して、動作処理に支障することなく包装硬貨を補充できる。
【0008】
ところが、前記先行技術によれば、貨幣処理装置に、複数の装填庫ごとにロック装置を設けなければならず、また各装填庫に対してロック装置の施開錠を行う必要があり、包装硬貨の補充操作が煩雑になるという問題があった。
そこで本発明は、包装硬貨の補充をする場合に誤った抜取操作を防止するための簡単な構造を設けることによって、稼動状態での補充を可能にして稼動効率を向上させ、利用客の利便性を向上させる貨幣処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の貨幣処理装置は、装填庫装着部に装着可能な、貨幣を装填するための複数の装填庫と、前記装填庫装着部に装着された状態で、前記装填庫に装填された貨幣を投出する貨幣投出部と、装置本体に対して施開錠可能な遮蔽扉であって、前記装填庫が前記装填庫装着部へ装着された状態で、前記装填庫を遮蔽する前記遮蔽扉とを有し、前記遮蔽扉は、前記複数の装填庫に対して、独立して開閉可能に複数設けられている。
【0010】
この構成であれば、貨幣処理装置が処理中であっても、入出金処理をしていない装填庫を貨幣補充の対象とし、入出金処理をしている装填庫を補充の対象から除外することができる。したがって、貨幣処理装置の処理中において、「貨幣を取出予定の金種別装填庫が抜取られることによって自動両替装置に障害が生じる」ことを防止するとともに、従来のように利用客を待たすことなく、貨幣処理装置の処理作業を実施することができる。したがって、保守員の手間も省け、貨幣補充が適切にできる。
【0011】
補充すべき装填庫の属する位置を表示する画面表示部がさらに設けられていることが好ましい。保守員はこの表示を見ながら、装填庫に貨幣を補充することができる。
各遮蔽扉には、遮蔽扉を独立してロックするロック機構がそれぞれ備えられ、貨幣処理装置の貨幣処理中に出入金処理をする装填庫を遮蔽する遮蔽扉は、前記ロック機構によりロックされることが好ましい。このロック機構を設けることにより、出入金処理中の装填庫を誤って抜き出すという事態を避けることができる。
【0012】
各遮蔽扉で遮蔽される複数の装填庫は、互いに同一金種の装填庫が含まれていることが好ましい。こうすれば、貨幣処理装置は、入出金の対象とする装填庫を選択するときに、補充の対象に選定された装填庫が属さない、他の装填庫の中から選択することができるので、利用客を待たせることもなく、稼働率の向上が実現できる。
前記装填庫は列ごとに設けられており、前記遮蔽扉は一枚で一列の装填庫を遮蔽するものであってもよいし、一枚で複数の列の装填庫を遮蔽するものであってもよい。
【0013】
前記装填庫に収容されている貨幣の数を計数する貨幣検知センサをさらに有し、前記遮蔽扉を閉じたときに、前記貨幣検知センサによって計数された結果を用いて各装填庫を自動的に精査する手段をさらに有することが好ましい。
前記装填庫は、紙幣又は包装貨幣を装填するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】貨幣処理装置を内蔵する自動両替機10の外観構成を示す斜視図である。
【図2】自動両替機10の接続状態と貨幣処理機能を示す機能ブロック図である。
【図3】包装硬貨処理部15、装填庫装着部17の内部構造を示す模式的な断面図である。
【図4】装填庫18の斜視図である。
【図5】包装貨幣を収納した装填庫18の斜視図である。
【図6】複数の透過スリットが形成された装填庫18の側板を示す図である。
【図7】自動両替機10の背面を見た斜視図であり、装置後扉40を開いた状態を示す。
【図8】自動両替機10の背面を見た斜視図であり、遮蔽扉41bを開いた状態を示す。
【図9】装填庫18への貨幣の補充を許容する貨幣補充取扱い動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】補充対象列の選択動作を示すフローチャートである。
【図11】装填庫装着部17の各列に、互いに同一金種の装填庫18が含まれているようにした装填庫18のレイアウトを示す図である。
【図12】従来の貨幣処理装置10′の背面を見た斜視図であり、装置後扉40を開いた状態を示す。
【図13】従来の貨幣処理装置10′の背面を見た斜視図であり、遮蔽扉41を開いた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は貨幣処理装置を内蔵する自動両替機10の外観構成の一例を示している。
筐体の正面上部には、タッチパネル式ディスプレイを有する顧客操作部12、取扱中/取扱中止を表示する取扱状態表示部12A、釣銭やバラの両替硬貨が投出されるバラ硬貨取出口14aが設けられ、その下方には包装硬貨取出口15aと紙幣入出金口16aが設けられている。貨幣を入出金する前記のバラ硬貨取出口14a、包装硬貨取出口15a及び紙幣入出金口16aにはそれぞれシャッタ14b,15b及び16bが設けられており、当該貨幣の入出金時に当該シャッタが開閉されるようになっている。また、正面下部の垂直面には、入金紙幣中の硬貨等の異物を返却するための異物返却口16cが設けられている。カード挿入口やレシート発行口の図示は省略する。
【0016】
筐体の内部には、バラ硬貨の入出金処理をするバラ硬貨処理部14、紙幣の入出金処理をする紙幣処理部16が設置され、包装硬貨取出口15aの下部には包装硬貨の出金処理をする包装硬貨処理部15が設置されている。包装硬貨処理部15には、包装硬貨処理部15に包装硬貨を供給するための装填庫装着部17が分離/結合可能に接続されている。
図2は、図1に示した自動両替機10(例えば2台を図示している)を手数料管理サーバ20に接続構成したネットワーク構成を示している。また同図に各自動両替機10の内部の貨幣処理機能をブロック構成で示す。
【0017】
図2において、自動両替機10は、装置全体を制御する制御部(CPU)11に対して、両替貨幣の選択操作などをするための顧客操作部12と、装着センサ31と、貨幣検知センサ32と、係員画面33と、ロック機構42と(いずれも後述)が接続されている。また制御部11には、制御プログラム並びに装着センサ31及び貨幣検知センサ32で検知した結果を記憶するハードディスクなどの記憶部13と、手数料管理サーバ20との通信を制御する通信部22とが接続されている。これらの各部の機能の全部又は一部は、記憶部13に記録されたプログラムを、自動両替機10のコンピュータが実行することにより実現される。
【0018】
手数料管理サーバ20は、両替に対応して前払い手数料を記憶する記憶部21を備えており、通信回線等の伝送媒体2を介して各自動両替機10とオンライン接続される。なお、手数料管理サーバ20を備えない形態も可能であり、この場合、前払い手数料を記憶する記憶部は、複数台の自動両替機10に対して1つであり、ファイルシェアリング等の形態により各自動両替機10から共用されるようにしてもよい。さらに、記憶部を各自動両替機10に内蔵しておいても構わない。
【0019】
図3は、包装硬貨処理部15及び装填庫装着部17の内部構造を示す模式的な断面図である。
包装硬貨処理部15は、包装硬貨処理部15に包装硬貨を供給するための前記装填庫装着部17が設けられており、装填庫装着部17には、貨幣を装填するための複数の装填庫18が装着可能になっている。装填庫18は縦複数列に設置されている。この実施形態では図7、図8に示すように、縦2列に設置されている。
【0020】
包装硬貨処理部15には、金種別の装填庫18から包装硬貨30を1本ずつ取り出して金種等を鑑別した上で収納する昇降式のバケット23が備えられ、バケット23に集積した包装硬貨30は、包装硬貨取出口15aを通して利用者により取出される。なお、昇降式のバケット23は、包装硬貨処理部15の制御を行う制御部11(図2)と接続されている。
【0021】
装填庫18は、図3に示すように、同一金種を奥行き方向に並列させて多数収納することができるように、長尺形状に形成されている。金種別の装填庫18は左右二列で上下方向に複数段配設され、それぞれは包装硬貨30を取り出す先端部分が下向きとなるように前傾姿勢で装填庫装着部17に抜取可能に装着されている。
装填庫装着部17は、各装填庫18の装着の有無を検知するためのセンサ(「装着センサ」という)31を備えている。装着センサ31は、装填庫装着部17に設けられた上下方向の枠部(図示せず)の、各段の装填庫18の先端に対応する位置に取り付けられていて、装填庫18を検知することにより、装填庫18の装着および非装着の判断を行う。装着センサ31は例えば赤外線で送受信する送受信機で構成しても良く、この場合装填庫18にトランスポンダを設置することにより、装着センサ31は装填庫18の装着の有無、金種の区別を読み取ることができる。
【0022】
制御部11は、装着センサ31をセンシングすることにより、金種別の装填庫18の装着、非装着(抜取中)を監視しており、各金種別の装填庫18の装着か非装着(抜取中)かを集計した結果を、記憶部13に記憶させる。
また、装填庫装着部17は、各装填庫18内部に収納された包装硬貨の有無を検知し、収納本数に変化がないかを調べるための貨幣検知センサ32を備えている。この貨幣検知センサ32については後述する。
【0023】
次に、包装硬貨を収納する装填庫18の構造について図4〜図6を用いて説明する。
図4、図5は装填庫18の斜視図であり、図6は装填庫18の部分側面図である。
装填庫18は、その内部ボックスの形状(幅、高さなど)に応じて、特定の金種の包装硬貨30を収納する構成になっており、装填庫18の下端部には、包装硬貨30を支える爪36が設けられている。装填庫18の側面には、収納された包装硬貨30の本数を認識するための貨幣検知センサ32が、装填庫18をその長手方向Aに沿って走査可能に備えられている。
【0024】
詳述すると、金種別の装填庫18の各側面には、包装硬貨30の両端面を支持する側板34が立設されている。各側板34には、包装硬貨30の直径に相当する間隔を隔てて複数の透過スリット35が形成されている。透過スリット35は、この実施形態では上下2段形成されており、上段の透過スリット35aは、包装硬貨30の中心部に相対する位置に形成されている。これは5円玉、50玉のような中心に孔の開いた硬貨を識別するためである。下段の透過スリット35bは、包装硬貨30の有無と、その配置間隔を識別するため、包装硬貨30の底部に相対する位置に形成されている。
【0025】
貨幣検知センサ32は、装填庫18の長手方向Aに沿って走査される基板(図示せず)に搭載されている。該貨幣検知センサ32は、図4で示すように、投光側の投光センサ32aと、受光側の受光センサ32bとの一組で構成されている。そして、上下段の透過スリット35a,35bに対向して上下各2組、設置されている。上段の投光センサ32aから出射される光線が透過スリット35aを移動する軌跡を、図6において“37”で示し、下段の投光センサ32aから出射される光線が透過スリット35bを移動する軌跡を、図6において“38”で示している。
【0026】
このような構成の貨幣検知センサ32は、前記投光センサ32aを光源として、装填庫18側板34の下段スリット35bに向けて照射された照射光が装填庫18内部に装填された包装硬貨30の隙間を透過して、装填庫18側板34の下段スリット35bに届く透過光の有無を受光センサ32bで検知する構成となっている。包装硬貨30が存在すれば、光は遮られて受光センサ32bで検知できない。包装硬貨30と次の包装硬貨30との隙間があれば、光は透過して受光センサ32bで検知できる。そこで貨幣検知センサ32及びその基板を装填庫18の長手方向Aに沿って走査していき、光が透過状態から遮蔽状態に変化した回数、及び/又は光が遮蔽状態から透過状態に変化した回数を数えることで、包装硬貨30の有無、本数を知ることができる。また透過状態を保持する時間と、遮蔽状態を保持する時間とに基づいて、包装硬貨30の直径を推定することができ、これにより金種を確認することができる。
【0027】
また、前述したように、上段スリット35aにおいて、光が透過状態から遮蔽状態に変化した回数、及び/又は光が遮蔽状態から透過状態に変化した回数を数えることで、5円玉、50玉のような中心に孔の開いた硬貨の本数を知ることができる。なお10円玉など孔の開いていない硬貨では、硬貨が装填されている範囲では常に遮蔽状態となる。
このようにして制御部11は、各装填庫18別に包装硬貨30の本数、金種を集計することができる。集計した結果を、記憶部13に記憶させる。このように、貨幣検知センサ32は装填庫18を自動的に精査する手段として機能する。
【0028】
図7及び図8は、自動両替機10を背面から見た斜視図である。自動両替機10の背面には、背面全体を開閉する装置後扉40と、各列の装填庫装着部17を開放して装填庫18を引き出すために設けられた遮蔽扉41a,41bとが取り付けられている。装置後扉40も遮蔽扉41a,41bも、いずれも保守員が操作して開ける扉である。
遮蔽扉41a,41bは、2列ある装填庫装着部17に対応して2つ設けられている。しかし、これに限定されるものではなく、遮蔽扉41は、装填庫18が3列に設置されているものであれば、これらの3列に対して3つ設けられていてもよい。また装填庫18が3列に設置され、遮蔽扉は2つ存在し、第一の遮蔽扉は1列目と2列目の装填庫18を遮蔽し、第二の遮蔽扉は3列目の装填庫18を遮蔽するものであってもよい。要するに、遮蔽扉は複数存在し、その数は、装填庫18の列数又はそれ以下であれば良い。また、遮蔽扉は1列の装填庫を上下に分割して遮蔽してもよいし、同一金種がそれぞれの遮蔽扉に分かれるように、遮蔽扉を構成しても構わない。
【0029】
各遮蔽扉41a,41bの上部には、各列の装填庫装着部17に対応して、装填庫18別の貨幣装填本数等を表示する係員画面33a,33bが設置されている。係員画面33a,33bは液晶表示画面などで構成される。係員画面33a,33bは、各列の装填庫18に対して、装填庫18が抜き取り中かどうか、装填庫18が装着されている場合には包装硬貨30の本数(実際の装填数でも装填可能数でもよいが、以下では装填可能数を想定する)、装填異常(金種違い)の有無、異常の部位などの項目を表示することができる。さらに装填庫18への装填が可能かどうかを表示することもできる。
【0030】
それぞれの遮蔽扉41a,41bには、当該列の装填庫18の抜取りを規制するため、扉の開閉をロックするロック機構42(図8参照)を備えている。ロック機構42の構造は限定されないが、例えば装填庫装着部17の所定位置に設けられたピンと、扉のそのピンに対応する位置に設けられた前記ピンに係合するレバーと、当該レバーを固定するソレノイドとで構成してもよい。ロック機構42は、制御部11に接続されており、いずれかの遮蔽扉41a,41bが開き禁止制御された場合、制御部11によって、前記ソレノイドを駆動することによりレバーが連動して、前記ピンとともに遮蔽扉41a,41bを装填庫装着部17にロックする。このようにして、装填庫装着部17からの装填庫18の抜取りを規制する。
【0031】
なお、装填庫18は、上述したように、左右二列で備えられているため、遮蔽扉41a,41bに備えたロック機構も、左右それぞれの遮蔽扉41a,41bに独立して配置されている。
図9は、包装硬貨処理部15における装填庫18への貨幣の補充を許容する貨幣補充取扱い動作を説明するフローチャートである。
【0032】
制御部11は、何れかの列の遮蔽扉41と装置後扉40が閉じられた時点で、装着センサ31を用いてその列の装填庫18の装着状態を点検する。なお、扉が閉じられた時点以外に一定の時刻(毎朝8時など)になれば点検をするという動作を追加しても良い。
制御部11は次に、装着されている各装填庫18に対して、貨幣検知センサ32を走査して、当該装填庫18の貨幣検知センサ32の検知結果を調べる(ステップS1)。
【0033】
このように貨幣検知センサ32で装填庫18を自動的に精査することにより、包装硬貨補充後の本数チェック、金種違いのチェックが可能となり、厳正化を図れる。その結果、包装硬貨がない(0本の)装填庫18があれば、当該装填庫18を補充の対象に選定するとともに、手数料管理サーバ20の所定の画面に「補充すべきトレーがあります」と、表示する(ステップS2)。なお、補充の対象に選定する条件として、包装硬貨がない(0本)以外に、包装硬貨の収納数が残り少ない(m本以下;mは1以上の所定の整数)、を条件にしてもかまわない。
【0034】
保守員により装置後扉40が開かれると(ステップS3のYes)、制御部11は自動両替機10が両替動作に入っているかどうかをチェックする(ステップS4)。両替動作に入っていなければ、無条件で装填庫18の補充を許可する。
両替動作に入っていれば出金の対象とする装填庫18の抜き取りを禁止すべきであるが、本発明では、この判断を装填庫18の列ごとに行う。このため、何れかの列の装填庫18が出金中であっても、他の列の装填庫18を補充可能にするところに特徴がある。すなわち、何れかの列の装填庫18が出金中であっても、その列以外の列の装填庫18の補充を許可する。
【0035】
そこで制御部11は、補充の対象に選定されている装填庫18が属さない、他列の装填庫18を入出金の対象とするような制御をすることが好ましい。このためには、図11に示すように、各列に、互いに同一金種の装填庫18が含まれているようにすることが好ましい。すなわち列ごとに金種を均等にレイアウトしておく。こうすれば、制御部11は、入出金の対象とする装填庫18を選択するときに、補充の対象に選定された装填庫18が属さない、他列の中から選択することができる。
【0036】
このようにして制御部11は、包装硬貨の補充の対象になっている列は、入出金中の装填庫18が属する列とは違う列とすることができる。
なお、カード挿入中、両替金種選択中など、入出金動作につながる前段階の動作中は、入出金の対象とする装填庫18がまだ特定できないので、「補充不可表示」とし、全列の遮蔽扉41をロックすることが望ましい。この場合、次のステップS5に移らずに、「しばらくお待ちください」といった表示を出して、遮蔽扉41をロックし、装填庫18の補充を許可してもよい条件が整うまで待つ。装填庫18の補充を許可するかどうかの判断の詳細は、図10を用いて後に詳しく説明する。
【0037】
制御部11は、装填庫18の補充を許可してもよい場合、係員画面33に「左列(又は右列)を開いて、何段目の装填庫18を補充してください」と表示する(ステップS5)。補充すべき金種も同時に表示する。
保守員は、係員画面33の表示により補充すべき装填庫18の列、段数を確認した上で、当該列の遮蔽扉41を開いて装填庫18を抜取り、包装硬貨30を追加補充し、金種別装填庫18を装填庫装着部17に装着する(ステップS6)。その後遮蔽扉41と装置後扉40とが閉じられると(ステップS7)、本処理はスタートに戻る。すなわち、制御部11は、装着センサ31を用いてその列の装填庫18の装着状態を点検すると共に、貨幣検知センサ32を走査して、装填庫18nが正常に補充されたことを確認するために包装硬貨の本数を計数する。そして再び、包装硬貨の収納数がないか残り少ない収納庫を探索する(ステップS1)。
【0038】
次に、制御部11が、装着されている各装填庫18に対して、どの列の装填庫18を補充の対象にするかどうかの判定基準を説明する。図10は、補充対象列の選択動作を示すフローチャートである。
まず、両替動作が行われていない「待機中」であれば、いかなる装填庫18も補充の対象にする(ステップT1)。遮蔽扉41のロックは、すべて解除される。
【0039】
顧客によって両替処理が開始されると(ステップT2)、カード挿入、紙幣入出金口16aからの入金処理、顧客操作部12での両替金種選択と完了ボタン操作、出金処理、硬貨取出口14a、包装硬貨取出口15a及び紙幣入出金口16aでの支払い動作が続いて行われる。この流れにおいて、カード挿入動作は入金動作の前段階であり、両替金種選択中は出金動作の前段階であるので、「補充不可表示」とし、全列の遮蔽扉41をロックすることが望ましい。
【0040】
紙幣入出金口16aからの入金処理中は、通常は、紙幣が入金されるので、包装硬貨を装填する装填庫18は入金処理の対象になることはないが、包装硬貨を出金する可能性があるので、入金処理をしている装填庫18の属する列を特定する(ステップT3)。出金処理中は、通常、包装硬貨を装填する装填庫18が出金の対象に選ばれるので、その出金処理をしている装填庫18の属する列を特定する(ステップT3)。特定された列が出金処理の対象に選ばれている場合であっても、当該列は補充の対象としないで、他の列のみを補充の対象とする(ステップT5)。例えば右列の装填庫18が出金処理の対象に選ばれている場合、右列は補充の対象としないで、左列のみを補充の対象とする。
【0041】
補充の対象とされなかった列は、係員画面33に「補充不可表示」がなされるとともに、当該列の遮蔽扉41はロックされる(ステップT5)。よって、保守員が当該列の装填庫18を開けることはできなくなる。
補充の対象とされた列は、係員画面33に「補充可表示」(図9のステップS4)がなされるとともに、当該列はロックが解除される(ステップT6)。よって、保守員が当該列の装填庫18を開けることができる。
【0042】
両替処理が終了し、硬貨取出口14a、包装硬貨取出口15a及び紙幣入出金口16aでの支払い動作中は、任意の装填庫18を補充の対象にして、待機中(ステップT1)にリターンする(ステップT7)。
以上のように、自動両替機10が両替取扱中であっても、入出金処理をしていない列の装填庫18を補充の対象とし、入出金処理をしている列の装填庫18を補充の対象から除外することができる。したがって、包装硬貨処理部12の入出金処理中において、「入出金予定の金種別装填庫18が抜取られることにより自動両替装置に障害が生じること」を防止するとともに、従来のように利用客を待たすことなく、両替取扱中に補充作業を実施することができる。
【0043】
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではない。包装硬貨処理部15での包装硬貨の補充取扱いを説明したが、バラ硬貨処理部14、紙幣処理部16のそれぞれに両替用の紙幣、バラ硬貨が補充される場合も同じように取り扱うことができる。また本実施例においては、装填庫18の抜取可否を表示する一例として、装填庫装着部17の背面側に係員画面33を設けた構成で説明したが、本実施形態に限らず各装填庫18の指定が判る構成であれば、例えば、自動両替機10の任意の場所に上記係員画面33を設けても良い。また係員画面33は、液晶表示で各装填庫18の指定を案内する構成に限らず、発光ダイオードなどが発光する色に応じて案内する構成など、保守員が金種別装填庫18ごとの抜取可否が判断できる構成のものであればよい。また本実施の形態では、装填庫を2列に並べ、1列ごとに遮蔽版で遮蔽するようにしたが、列ごとに遮蔽しなくても、1枚の遮蔽版で複数の装填庫を遮蔽できるようにしても構わない。その他本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 自動両替機
11 制御部(CPU)
15 包装硬貨処理部
17 装填庫装着部
18 装填庫
19 表示部
30 包装硬貨
31 装着センサ
32,32a,32b 貨幣検知センサ
33a,33b 係員画面
34 側板
35,35a,35b 透過スリット
40 装置後扉
41a,41b 遮蔽扉
42 ロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装填庫装着部と、
装填庫装着部に装着可能な、貨幣を装填するための複数の装填庫と、
前記装填庫装着部に装着された状態で、前記装填庫に装填された貨幣を投出する貨幣投出部と、
装置本体に対して施開錠可能な遮蔽扉であって、前記装填庫が前記装填庫装着部へ装着された状態で、前記装填庫を遮蔽する前記遮蔽扉とを有し、
前記遮蔽扉は、前記複数の装填庫に対して、独立して開閉可能に複数設けられていることを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項2】
補充すべき装填庫の属する位置を表示する画面表示部がさらに設けられている請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
各遮蔽扉には、遮蔽扉を独立してロックするロック機構がそれぞれ備えられ、貨幣処理装置の貨幣処理中に出入金処理をする装填庫を遮蔽する遮蔽扉は、前記ロック機構によりロックされる請求項1又は請求項2に記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
各遮蔽扉で遮蔽される複数の装填庫は、互いに同一金種の装填庫が含まれている請求項1から請求項3の何れかに記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
前記装填庫は列ごとに設けられており、
前記遮蔽扉は、一枚で一列の装填庫を遮蔽する請求項1から請求項4の何れかに記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
前記装填庫は列ごとに設けられており、
前記遮蔽扉は、一枚で複数の列の装填庫を遮蔽する請求項1から請求項4の何れかに記載の貨幣処理装置。
【請求項7】
前記装填庫に収容されている貨幣の数を計数する貨幣検知センサをさらに有し、前記遮蔽扉を閉じたときに、前記貨幣検知センサによって計数された結果を用いて各装填庫を自動的に精査する請求項1から請求項6の何れかに記載の貨幣処理装置。
【請求項8】
前記装填庫は、紙幣又は包装貨幣を装填するものである請求項1から請求項7の何れかに記載の貨幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−64016(P2012−64016A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208175(P2010−208175)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】