説明

貨物用コンテナ

【課題】コーナーポスト、ひいては貨物用コンテナ全体の軽量化を図りつつ、部材耐力の確保の双方を同時に実現することが可能な貨物用コンテナを提供する。
【解決手段】矩形状の底パレット11と、底パレット11から立ち上げられた側面パネル12ならびに前後パネル13と、底パレット11の上面の隅部に立設され、各パネルの縁部に接続され外側へ突設させたコーナーポスト14と、コーナーポスト14の上端および下端に接合されたコーナーフィッティング17を備える貨物用コンテナにおいて、コーナーポスト14は、パネルの縁部に対して外側へ略直交する方向へ延長された拡幅面と、上記拡幅面の外端から上記パネルの縁部に対して略平行に折り曲げられ、コーナーフィッティング17の外縁より内側へ間隔をおいて設けられた突出面とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積み込んだ貨物を海上輸送および陸上輸送するための貨物用コンテナに関し、特に重量を軽減させつつ、部材耐力を向上させる際に好適な貨物用コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
貨物を輸送する貨物用コンテナは、主に鋼、ステンレス、アルミニウム等の金属製の部材からなり、直方体状の箱体で構成されている。また、この貨物用コンテナは、内部に貨物を積み込み、例えば船舶、トラック、鉄道等の輸送手段を介して輸送される。特に近年においては、日本国内のみならず、世界各国間のグローバルな物流を効率化する観点から、貨物用コンテナの耐荷性能、全体寸法、輸送機器との連結部分の形状などがISO等の国際規格に基づき全世界でほぼ共通化されている。貨物用コンテナを一定のルールのもと規格化し共通化を図ることにより、輸送時の互換性や利便性が確保されている。
【0003】
ところで、近年では、地球環境保護の観点から、物流の分野においても温室効果ガスの排出量削減の動きが高まりつつあり、貨物を運搬する船舶、トラック、鉄道等の移動手段に対して軽量化が進められつつある。貨物用コンテナは、これら移動手段により輸送されるものであることから、コンテナ自体の軽量化を図ることにより、移動手段を含めた全体の軽量化に繋がり、地球環境保護を図る上でより好ましいものとなる。このような背景のもと、貨物用コンテナにおいても軽量化の要請が高まりつつあるが、ここでは、ISOに規定される特に耐荷性能を確保しつつ、軽量化を図ることが必要となる。
【特許文献1】特表2005−536413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11(a)は、従来における貨物用コンテナの側面パネル71と前後パネル72が交差するコーナー部の拡大断面図を示している。このコーナー部には、コーナーポスト81が設けられている。コーナーポスト81は、側面パネル71の縁部71aに対して外側へ略直交する方向へ延長された拡幅面83と、拡幅面83の外端から側面パネル71の縁部71aに対して略平行に折り曲げられた突出面84とを備え、また前後パネル72の縁部72aに対して外側へ略直交する方向へ延長された拡幅面86と、拡幅面86の外端から前後パネル72の縁部72aに対して略平行に折り曲げられた突出面87とを備えている。突出面84と突出面87は互いに略直交する関係にある。このような断面形状からなるコーナーポスト81は、側面パネル71の縁部71aや前後パネル72の縁部72aに対して外側へ突出した形状となっている。
【0005】
また、このコーナーポスト81の上端および下端には、コーナーフィッティング91が取り付けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
このコーナーフィッティング91は、貨物用コンテナを積み上げる際に互いに当接されたり、クレーンやトラックで移動する際の機器の取り付け部を連結するための治具である。このコーナーフィッティング91は、コーナーポスト81に対して溶接等により接合される。
【0007】
図11(b)は、このコーナーフィッティング91が取り付けられたコーナーポスト81の側面図を示している。突出面84(87)は、コーナーフィッティング91に対して溶接部89により接合される。突出面84(87)は、コーナーフィッティング91の外側端よりも内側にわずかに間隔をおいて設けられている。しかしながら、この間隔はあくま
で溶接89を行う際の溶接代を確保するためのものであり、例えば3〜4mmの溶接部の脚長の幅を確保できる程度の幅で構成される。このような間隔に対して溶接部89を設けると、図11(b)に示すように側面から視認した場合にはほぼ溶接代が溶接部89の脚長により埋まり、あくまで溶接部89をコーナーポスト81の一部として考えた場合に、コーナーポスト81の突出面84(87)はコーナーフィッティング91の外縁から後退していない、すなわちセットバックしていない状態になる。
【0008】
このような従来におけるコーナーポスト81の断面図心G1´は、コーナーフィッティング91の断面図心G0´に対して図11(a)中、X方向に対してexだけ離間しており、Y方向においてeyだけ離間している。即ち、これらの断面図心G1´と断面図心G0´とは互いに一致しておらず、大きく偏心しているのが現状であった。
【0009】
コンテナ船への積み込み時や、コンテナターミナルでの積み重ね状態での保管など、貨物用コンテナを上下に載置して段積みした場合には、コーナーポスト81には、段積みによる圧縮軸力が負荷される。この圧縮軸力は、コーナーポスト81の上下端に取り付けられたコーナーフィッティング91から伝達されてくることになる。しかしながら、上述したように、コーナーポスト81の断面図心G1´と、コーナーフィッティング91の断面図心G0´は互いに偏心している。その結果、図12に示すように、断面図心G0´とG1´の距離、すなわち偏心量eが存在する状況で、圧縮荷重Pがコーナーフィッティング91の断面図心G0´に付与された場合、コーナーポスト81には圧縮荷重Pに加えて、偏心による曲げ力(曲げモーメントMの大きさはP×eに相当)が作用することになる。その結果、かかる偏心圧縮に伴ってコーナーポスト81の部材耐力が低下してしまうという問題点があった。
【0010】
特に従来の貨物用コンテナによれば、コーナーポスト81の断面形状を、極力コーナーフィッティング91の断面形状に合わせるとともに、そのコーナーポスト81の断面積を大きくとることにより、圧縮荷重Pに対する部材耐力の向上を図ろうとしていた。このため図11に示すように、セットバックの幅は、溶接代分だけ残すように極めて狭く設定している状況にあった。
【0011】
しかしながら、このような従来の貨物用コンテナによれば、コーナーポスト81の断面積を大きくとらなければならない分において、重量が増加してしまう。即ち、圧縮荷重Pに対する部材耐力の向上を図るためには、コーナーポスト81の断面積を大きくとらなければないが、その分重量が増大し、軽量化の要求に応えることができないという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、コーナーポスト、ひいては貨物用コンテナ全体の軽量化を図りつつ、部材耐力の確保の双方を同時に実現することが可能な貨物用コンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の貨物用コンテナは、矩形状の底パレットと、上記底パレットから立ち上げられた側面パネルならびに前後パネルと、上記底パレットの上面の隅部に立設され、上記各パネルの縁部に接続され外側へ突設させたコーナーポストと、上記コーナーポストの上端および下端に接合されたコーナーフィッティングを備える貨物用コンテナにおいて、上記コーナーポストは、上記パネルの縁部に対して外側へ略直交する方向へ延長された拡幅面と、上記拡幅面の外端から上記パネルの縁部に対して略平行に折り曲げられ、上記コーナーフィッティングの外縁より内側へ間隔をおいて設けられた突出面とを有する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の貨物用コンテナは、請求項1記載の貨物用コンテナにおいて、上記コーナーポストにおける突出面と上記コーナーフィッティングの外縁との間隔は、上記コーナーポストと上記コーナーフィッティングを接合する溶接部の脚長の幅よりも大きく、かつ上記コーナーポストの断面図心が、上記コーナーフィッティングの断面図心よりも外側もしくは一致する位置となるように予め調整されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上述した構成からなる本発明では、コーナーポストの断面図心G1と、コーナーフィッティングの断面図心G0の偏心量が小さくなり、貨物用コンテナを上下に積み上げた場合に作用する偏心圧縮による曲げ応力を低減もしくは排除することができる。その結果、かかる偏心圧縮に伴うコーナーポストの部材耐力が低下してしまうという問題点を解消することが可能となる。
【0016】
また本発明によれば、コーナーポストの断面積を小さくすることができるため、コーナーポスト自体の軽量化を図ることが可能となる。コーナーポスト自体の軽量化を図ることが可能となれば、貨物用コンテナ全体の軽量化にもつながり、温室効果ガスの排出量削減、ひいては地球環境保護の観点からも好適な構成とすることが可能となる。またコーナーポストの断面積を小さくすることにより材料コストの低減にも寄与し、さらに表面積も小さくなるために塗装にかかるコストの低減にも寄与することになる。
【0017】
このように、本発明に係る貨物用コンテナは、コーナーポスト、ひいては貨物用コンテナ全体の軽量化を図りつつ、部材耐力の確保の双方を同時に実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、積み込んだ貨物を輸送するための貨物用コンテナについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明を適用した貨物用コンテナ1の斜視図を示している。この貨物用コンテナ1は、貨物を積み込むことが可能な箱体で構成され、鋼、ステンレス、アルミニウム等の金属製で構成される。貨物用コンテナ1は、例えば船舶、トラック、鉄道等の輸送手段を介して輸送されることを前提としているため、輸送時の互換性や利便性を向上させる観点から、例えばISO等の規格に基づいた仕様とされている。
【0020】
貨物用コンテナ1は、図1に示すように矩形状の底パレット11と、底パレット11から立ち上げられた側面パネル12ならびに前後パネル13と、底パレット11の上面の隅部に立設され、各パネル12、13の縁部に接続され外側へ突設させたコーナーポスト14と、天板15とを備えている。またコーナーポスト14の上端および下端には、コーナーフィッティング17が設けられている。
【0021】
底パレット11は、上面のデッキ板21と下面のベースフレーム22とを備え、必要に応じてフォークリフトの爪部が差し込まれる図示しないリフト用孔が形成される。デッキ板21は木合板などの板、ベースフレームは鋼製部材等で構成されている。
【0022】
側面パネル12ならびに前後パネル13は、底パレット11の上面の周縁部に立設されることにより底パレット11の上面に貨物を収容する収容空間を形成する板状部材である。側面パネル12ならびに前後パネル13は、各々が底パレット11上に設置されるとともに、隣接するパネル12、13同士が後述するコーナーポスト14を介して相互に接続される。隣接する側面パネル12と前後パネル13とは、互いに略直交する関係にある。なお、側面、前後面、天面のいずれかの面には、図示は省略する開閉ドアが設けられ、ここからコンテナ内に貨物が積み込まれる。例えば、前後面のいずれかに開閉ドアが設けら
れる場合には、ドアに隣接するコーナーポストが本発明が対象とする部材(拡幅面と突出面を有し隣接するパネルの縁部に連続する部材)とは別の形状の溝形鋼等で形成される場合もある。このような場合には、本発明は前後面のいれずかにのみ適用することもできる。すなわち、本発明はコンテナの四隅全てでなく、四隅のうち任意の部分にのみに適用することもできる。
【0023】
図2は、側面パネル12ならびに前後パネル13の断面構成図を、図3は、コーナーポスト14ならびにコーナーフィッティング17の接合部分の拡大斜視図を示している。側面パネル12ならびに前後パネル13は、例えば、厚みが1mm〜2mm程度の比較的薄い鋼板により構成されており、水平な上フランジ31及び下フランジ32と、この上フランジ31及び下フランジ32の間に形成されているウェブ33とを有している。その結果、山部34と谷部35とが交互に形成された形状とされる。
【0024】
また天板15は、側面パネル12ならびに前後パネル13の上端に取り付けられることにより、内部に貨物を収容するための収容空間を形成するために上側を覆うものである。天板13も例えば厚みが1mm〜2mm程度の鋼板等で構成されるものであり、フランジとウェブとからなる折板が適用されていてもよい。
【0025】
次に、本発明を適用した貨物用コンテナ1に適用されるコーナーポスト14ならびにコーナーフィッティング17の構成について説明をする。
【0026】
図4は、コーナーポスト14ならびにコーナーフィッティング17の拡大平面図を示している。図4において、コーナーポスト14は、側面パネル12の縁部12aに対して略直交する方向(X方向)でかつ外側へ延長された拡幅面43と、拡幅面43の外端から側面パネル12の縁部12aに対して略平行方向(Y方向)に折り曲げられた突出面44とを備え、また前後パネル13の縁部13aに対して略直交する方向(Y方向)で外側へ延長された拡幅面46と、拡幅面46の外端から前後パネル13の縁部13aに対して略平行方向(X方向)に折り曲げられた突出面47とを備えている。突出面44と突出面47は互いに略直交する関係にある。
【0027】
このような断面形状からなるコーナーポスト14は、例えば厚みが4mm〜8mm程度の中程度の厚みを持つ鋼板からなり、側面パネル12の縁部12aや前後パネル13の縁部13aに対して外側へ突出した形状となっており、貨物用コンテナ1においては、柱としての機能を担うことになる。また、拡幅面43に対して略鉛直方向に折り曲げられた接合面48と、拡幅面46に対して略鉛直方向に折り曲げられた接合面49とをそれぞれ形成し、接合面48を側面パネル12の縁部12aに、また接合面49を前後パネル13の縁部13aへそれぞれ溶接等により接合する。
【0028】
図5に示すように、貨物用コンテナ1を上下に段積みしたとき、上下の貨物用コンテナ1のコーナーフィッティング17が相互に当接されることになる。その結果、上に積み上げられた貨物用コンテナ1からの荷重は、コーナーポスト14の上端に設けられたコーナーフィッティング17により受けることになる。
【0029】
コーナーフィッティング17の詳細な構成は、例えば図6に示すように、鋳物製のボックス状の基体に対して側面から横穴38が設けられ、さらに上面からは上穴37が設けられている。これら横穴38や上穴37は、それぞれクレーンなどによる吊り上げや運搬の際の取り付け機器が装着可能となっている。また、このコーナーフィッティング17は、上に積み上げられる貨物用コンテナ1におけるコーナーフィッティング17に対して、当接面36同士で当接されることになる。この当接面36に負荷された荷重は、下部に取り付けられたコーナーポスト14へと伝達されていくことになる。なお、この図6の例では
、あくまでコーナーポスト14の上端に取り付けられるコーナーフィッティング17を例にとり説明をしたが、コーナーポスト14の下端に取り付けられる場合も同様である。かかる場合には、当接面36が下向きに位置することになる。
【0030】
このようなコーナーフィッティング17に対するコーナーポスト14の取り付け配置については、例えば図4に示すように、突出面44(47)は、コーナーフィッティング17の外縁より内側へ間隔をおいて設けられており、セットバックが形成されている。また、コーナーポスト14の断面図心G1は、コーナーフィッティング17の断面図心G0に対して、X方向に対してeだけ離間しており、Y方向においてeだけ離間しているものとする。また、X方向のセットバックをSとし、Y方向のセットバックをSする。また、コーナーフィッティング17のX方向およびY方向の幅をDおよびD、G0と突出面44とのX方向の間隔をg、G0と突出面47とのY方向の間隔をg、G0と接合面48とのX方向の間隔をlとし、G0と接合面49とのY方向の間隔をlとする。
【0031】
本発明を適用した貨物用コンテナ1は、従来技術と比較して、セットバックS、セットバックSが大きくなるように設定されている。
【0032】
図7の側面図に示すように、セットバックS、Sが大きくなるように設定されていることから、コーナーポスト14とコーナーフィッティング17とを接合するための溶接部69の脚長の幅を確保するための溶接代に加えて、さらにコーナーフィッティング17が外側に突出した形状とされている。すなわち、コーナーポスト14における突出面44、47とコーナーフィッティング17の外縁との間隔は、溶接部69の脚長の幅よりも大きくとられている。
【0033】
このセットバックS、セットバックSは、コーナーフィッティング17の断面図心G0に対するコーナーポスト14の断面図心G1の偏心量を小さくするように、予め調整されたものである。図4に示すG0とG1の偏心量と、図11に示すG0´とG1´の偏心量を比較した場合、前者の方が偏心量が小さくなる。本発明によれば、セットバックS、セットバックSを大きくすることにより、コーナーフィッティング17の外縁よりも内側に突出面44、47を形成し、コーナーポスト14の断面図心G1を従来と比較して内側へとシフトさせることが可能となり、その結果、コーナーフィッティング17の断面図心G0とより近づけることが可能となる。
【0034】
即ち、本発明では、コーナーポスト14の断面図心G1と、コーナーフィッティング17の断面図心G0との間での偏心量が小さくなることにより、以下に説明する効果を奏することになる。
【0035】
貨物用コンテナ1を上下に載置することにより、コンテナ船への積み込み時や、コンテナターミナルでの積み重ね状態での保管など、貨物用コンテナを上下に載置して段積みした場合には、コーナーポスト14には、段積みによる圧縮軸力が負荷される。この圧縮軸力は、コーナーポスト14の上下端に取り付けられたコーナーフィッティング17から伝達されてくることになる。ここでは、上述したように、コーナーポスト14の断面図心G1と、コーナーフィッティング17の断面図心G0の偏心量は小さく抑えられる。その結果、図4に示すように、断面図心G0、G1間において偏心量e、eが存在する状況ででも、圧縮荷重Pがコーナーフィッティング17の断面図心G0に付与された場合、コーナーポスト14に圧縮荷重Pとともに加わる偏心による曲げ力を低減することができる。
【0036】
その結果、かかる偏心圧縮に伴うコーナーポスト14の部材耐力が低下してしまうとい
う問題点を解消することが可能となる。
【0037】
また本発明によれば、コーナーポスト14の断面積を小さくすることができるため、コーナーポスト14自体の軽量化を図ることが可能となる。コーナーポスト14自体の軽量化を図ることが可能となれば、貨物用コンテナ全体の軽量化にもつながり、温室効果ガスの排出量削減、ひいては地球環境保護の観点からも好適な構成とすることが可能となる。またコーナーポスト14の断面積を小さくすることにより材料コストの低減にも寄与し、さらに表面積も小さくなるために塗装にかかるコストの低減にも寄与することになる。
【0038】
このように、本発明を適用した貨物用コンテナ1は、コーナーポスト14、ひいては貨物用コンテナ1全体の軽量化を図りつつ、部材耐力の確保の双方を同時に実現することが可能となる。
【実施例1】
【0039】
以下、本発明を適用した貨物用コンテナ1について、実際に偏心圧縮に対するコーナーポストの部材耐力と重量の関係を調査した結果について説明をする。
【0040】
図8は、コーナーポスト14の断面図心G1がコーナーフィッティング17の断面図心G0の外側にある場合における応力分布を示している。この応力分布は、それぞれ圧縮軸力、X軸回りの曲げ、Y軸回りの曲げ、による引張および圧縮の応力を示したものである。ここで点S、Tは、軸力と偏心曲げによる複合的な圧縮応力が最も大きくなる可能性がある箇所である。点Sは、接合面48に位置しており、点Tは、接合面49に位置している。それぞれの点が降伏応力σ(コーナーポスト14を構成する材料の降伏応力)になるものとして求めた点Sの耐力Psは、下記(1)式により、点Tの耐力Ptは、下記(2)式により表される。
【0041】
Ps=σ(1/A+e/z−l/g・e/z−1・・・・(1)
Pt=σ(1/A+e/z−l/g・e/z−1・・・・(2)
【0042】
ここでAは、コーナーポスト14の断面積であり、zは、コーナーポスト14のX軸回りの正側(Y軸の正方向)の断面係数、z-は、コーナーポスト14のX軸回りの負側(Y軸の負方向)の断面係数、zは、コーナーポスト14のY軸回りの正側(X軸の正方向)の断面係数、zは、コーナーポスト14のY軸回りの負側(X軸の負方向)の断面係数を表している。またlはG0と接合面48との間隔であり、lはG0と接合面49との間隔である。gは、突出面44とG0との間隔であり、gは、突出面47とG0との間隔である。
【0043】
また図9は、コーナーポスト14の断面図心G1がコーナーフィッティング17の断面図心G0の内側にある場合における応力分布を示している。この応力分布も、図8と同様に、それぞれ圧縮軸力、X軸回りの曲げ、Y軸回りの曲げ、による引張および圧縮の応力を求めたものである。ここで点Uは、軸力と偏心曲げによる複合的な圧縮応力が最も大きくなる可能性がある箇所である。この点Uは、突出面44と突出面47との交点である。かかる点Uが降伏応力σになるものとして求めた点Uの部材耐力Puは、以下の(3)式で与えられる。
【0044】
Pu=σ(1/A+e/z+e/z−1・・・・(3)
【0045】
コーナーポスト14の断面図心G1と、コーナーフィッティング17の断面図心G0とが一致し、偏心量がゼロとなる場合には、偏心曲げの影響が無くなり、部材耐力P0は、式(1)〜(3)で偏心量(e、e)をそれぞれゼロとした以下の(4)式により与
えられる。
【0046】
P0=σ(1/A)−1・・・・・・・・・・(4)
【0047】
表1に偏心圧縮に対するコーナーポストの部材耐力と重量の関係を調査した結果を示す。この表1には、セットバックS、S、コーナーポスト14の断面積A、偏心量e、e、偏心率e/D、e/D、耐力比(式(1)〜(4)から求まる耐力のうち最小の耐力に基づき算出)、重量比、性能比(=耐力比/重量比)の項目を示している。この表1において、No.1は、従来品、すなわちコーナーポストの突出面とコーナーフィッティングの外側端の間隔が溶接部の脚長に相当する溶接代の幅のみ確保され、コーナーポストの突出面はコーナーフィッティングの外縁から後退しておらず、セットバックしていない、すなわちSおよびSがゼロであるとしたものである。No.1では、溶接部69を確保するための溶接代の幅は、X方向で3mm、Y方向で4mmであるが、No.2〜8のセットバック量についても、これらの値を含めない数値として表している。なお、表1中の耐力比および重量比は、No.1の耐力および重量を基準としたものである。また、耐力比を重量比で除して求めた性能比は、重量あたり部材耐力、すなわち重量で基準化した部材性能を比較するために定義したものである。
【0048】
【表1】

【0049】
表1においては、No.1からNo.8にかけてセットバックS、Sがゼロから徐々に大きくなるように設定されているが、ここではNo.2〜No.6が本発明品に含まれる。
【0050】
セットバックS、Sをゼロから徐々に大きくすることにより、偏心量e、eは徐々に小さくなり、これに応じて偏心率e/D、e/Dも徐々に小さくなる。ちなみにNo.6は、偏心量e、eをそれぞれゼロとした場合の例である。セットバックS、Sを徐々に大きくするにつれ、偏心量e、e(偏心率e/D、e/D)が小さくなり、偏心圧縮による曲げの影響が軽減されて耐力比が大きくなり、一方で、重量比が徐々に小さくなる傾向が示されている。
【0051】
図10は、耐力比、重量比、性能比の関係を示す。この図10によれば、No.1からNo.6にかけて耐力比が増加しているにも関わらず、重量比が低減されているのが分かる。これは、貨物用コンテナ1全体の軽量化を図りつつ、部材耐力の確保の双方を同時に実現することが可能となることを示している。また、性能比をみてみると、重量を抑制しながら部材耐力の向上を図る効果が、セットバックS、Sをゼロに近づけるほど得られ、本発明により40%程度の性能向上も可能であることが分かる。
【0052】
一方、No.7〜8はいずれも偏心量がマイナスであり、G1がG0よりも内側に位置する場合であるが、耐力比が低下する傾向にあることが分かる。G1がG0よりも内側に位置する場合には、図9に示すような応力分布により点Uの応力上昇が著しくなり、これ
に起因して耐力比が急激に低減する。
【0053】
以上、表1ならびに図10に示す結果から、コーナーポスト14における突出面44、47とコーナーフィッティング17の外縁との間隔は、溶接部69の脚長の幅よりも大きく、かつコーナーポスト14の断面図心が、コーナーフィッティング17の断面図心よりも外側もしくは一致する位置となるように予め調整されていることが望ましいといえる。
【0054】
なお、ISO規格では、段積み荷重の性能を調査する上で、上段の貨物用コンテナ1を、下段の貨物用コンテナ1に対して、X方向に38mm、Y方向に25.4mmずらして性能調査が行なわれる場合がある。このとき、上段のコンテナ下部のコーナーフィッティング17底面と、下段のコンテナ上部のコーナーフィッティング17上面は、点での接触ではなく、面で接触することとなるため、このずれ量そのものが直接的に偏心量となるわけではなく、この場合においても、断面図心G1と断面図心G0を近づけることにより偏心曲げの影響を緩和し、部材耐力の向上を図りつつ部材重量を低減する本発明の効果を奏することができる。
【0055】
本発明を実施するための構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0056】
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明を適用した貨物用コンテナの斜視図である。
【図2】側面パネルならびに前後パネルの断面構成図である。
【図3】コーナーポストならびにコーナーフィッティングの接合部分の拡大斜視図である。
【図4】コーナーポストならびにコーナーフィッティングの拡大平面図である。
【図5】本発明を適用した貨物用コンテナを上下に段積みした状態を示す図である。
【図6】コーナーフィッティングの詳細な構成を示す図である。
【図7】コーナーポストならびにコーナーフィッティングの側面図である。
【図8】コーナーポストの断面図心G1がコーナーフィッティングの断面図心G0の外側にある場合における応力分布を示す図である。
【図9】コーナーポストの断面図心G1がコーナーフィッティングの断面図心G0の内側にある場合における応力分布を示す図である。
【図10】耐力比と重量比の関係を示す図である。
【図11】従来における貨物用コンテナの側面パネルと前後パネルが交差するコーナー部の拡大断面図である。
【図12】部材の偏心圧縮の状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0058】
1 貨物用コンテナ
11 底パレット
12 側面パネル
12a 側面パネルの縁部
13 前後パネル
13a 前後パネルの縁部
14 コーナーポスト
15 天板
17 コーナーフィッティング
21 デッキ板
22 ベースフレーム
31 上フランジ
32 下フランジ
33 ウェブ
34 山部
35 谷部
36 当接面
37 上穴
38 横穴
43、46 拡幅面
44、47 突出面
48、49 接合面
69 溶接部
71 側面パネル
71a 側面パネルの縁部
72 前後パネル
72a 前後パネルの縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の底パレットと、上記底パレットから立ち上げられた側面パネルならびに前後パネルと、上記底パレットの上面の隅部に立設され、上記各パネルの縁部に接続され外側へ突設させたコーナーポストと、上記コーナーポストの上端および下端に接合されたコーナーフィッティングを備える貨物用コンテナにおいて、
上記コーナーポストは、上記パネルの縁部に対して外側へ略直交する方向へ延長された拡幅面と、上記拡幅面の外端から上記パネルの縁部に対して略平行に折り曲げられ、上記コーナーフィッティングの外縁より内側へ間隔をおいて設けられた突出面とを有すること
を特徴とする貨物用コンテナ。
【請求項2】
上記コーナーポストにおける突出面と上記コーナーフィッティングの外縁との間隔は、上記コーナーポストと上記コーナーフィッティングを接合する溶接部の脚長の幅よりも大きく、かつ上記コーナーポストの断面図心が、上記コーナーフィッティングの断面図心よりも外側もしくは一致する位置となるように予め調整されていること
を特徴とする請求項1記載の貨物用コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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