貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造
【課題】貨物自動車のテールランプ装置の背面が剥き出し状態のままであると、雪道走行時に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)がテールランプ装置の背面に大塊状に付着・堆積して(寒冷地では凍って硬くなる)、テールランプ装置を破損させる原因になる。
【解決手段】車輌後部にテールランプ装置を設けた貨物自動車において、テールランプ装置の背面を可撓性のある弾性板からなるカバー材で被覆しているとともに、カバー材は、その上下各辺部又は左右各辺部を固定してカバー材の上下又は左右の中間領域を車輌走行時の風圧又は/及び振動で前後に弾性変形し得る状態で取付ていることにより、走行時に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物がテールランプ装置の背面付近に付着しにくくなるようにしている。
【解決手段】車輌後部にテールランプ装置を設けた貨物自動車において、テールランプ装置の背面を可撓性のある弾性板からなるカバー材で被覆しているとともに、カバー材は、その上下各辺部又は左右各辺部を固定してカバー材の上下又は左右の中間領域を車輌走行時の風圧又は/及び振動で前後に弾性変形し得る状態で取付ていることにより、走行時に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物がテールランプ装置の背面付近に付着しにくくなるようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、貨物自動車の走行時に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)がテールランプ装置の背面に付着しにくくするための貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造に関するものである。尚、本願において、テールランプ装置の背面とは、該テールランプ装置における車輌前方側の面のことである。
【背景技術】
【0002】
貨物自動車の後部には、図17に示すようにテールランプ装置(コンビネーションランプ)17が剥き出し状態で設置されており、走行時には矢印Bで示すように後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物がテールランプ装置17の背面に付着する。特に、雪道を走行する場合は、後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)が図17に符号Rで示すようにテールランプ装置17の背面に付着して順次堆積するようになる。そして、テールランプ装置背面に堆積した跳ね上げ物Rは、外気温が非常に低いと氷状に硬くなって固着し(脱落しにくくなり)、且つ雪道を連続走行していると該固着跳ね上げ物Rが順次大塊状に成長するようになる。
【0003】
尚、一般の貨物自動車(図17)には、後輪14の後側近傍位置に泥よけカバー141を垂れ下げて、該垂れカバー141により後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物のかなりの量を受け止め得るようになっているが、特に高速走行時には後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物が飛沫となって周囲に舞い上がり、その飛沫(跳ね上げ物)がテールランプ装置17の背面側に達して該テールランプ装置の背面に付着・堆積するようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記(図17)のように、テールランプ装置17の背面で固着跳ね上げ物Rが大塊状に成長すると、次のような問題があった。
【0005】
まず、その大塊状固着跳ね上げ物Rによりテールランプ装置背面付近の構造物や電気ケーブル172等が損傷する虞れがある。特に、寒冷地では固着跳ね上げ物Rが凍り付くので、その除去作業時には該固着跳ね上げ物Rをハンマー等で叩き割ることがあるが、そのときテールランプ背面を損傷させたり電気ケーブル172を断線させたりする危険性が高くなる。
【0006】
又、特に雪道での走行中には固着跳ね上げ物Rの成長が早いので、その除去のための掃除回数が多くなるとともに、その掃除のために毎回多大な労力が必要となる。
【0007】
さらに、走行中には、テールランプ装置17の背面に固着している大塊状の跳ね上げ物Rが車輌の振動で大塊状のまま剥離して路上に落下する(図17の符号R′)ことがあるが、その場合、大塊状跳ね上げ物R′が路上の障害物となって後続車に危険を及ぼす虞れがある。
【0008】
ところで、一般の貨物自動車の中には、図17に鎖線図示するように、テールランプ装置17の背面側近傍に比較的大面積の垂れカバー142を荷台4の下面から垂れ下げて、該垂れカバー142によりテールランプ装置背面に跳ね上げ物が付着しにくくしたものがある。ところが、この垂れカバー142は、大面積であるので材料コストが高くなるとともに、その取付けが面倒であり(荷台下面に取付台143を固定してその取付台143に垂れカバー142を取付ける必要がある)、さらには見映えが悪くなる等の問題がある。
【0009】
又、この垂れカバー142を設けたものでも、該垂れカバー142とテールランプ装置17の背面との間に大きな隙間があるので、その隙間に跳ね上げ物が回り込んで、時間の経過とともにテールランプ装置17の背面で跳ね上げ物Rが大塊状に成長することがある。
【0010】
尚、このような大面積の(特に上下に長い)垂れカバー142は、後述する(図1〜図9に示す本願第1実施例)ように荷台を後傾させて被運搬車輌を載せ降ろしでき、且つテールランプ装置が荷台の後傾に伴って路面にかなり近づく位置まで降下するような車輌運搬車には適用できないものである。即ち、この種の車輌運搬車において荷台が後傾して荷台後端部が接地した状態では、テールランプ装置が路面にかなり近づく位置まで降下しているので、該テールランプ装置の背面側近傍に垂れカバー142を取付ける上下スペースが確保できない。
【0011】
そこで、本願発明は、比較的簡単な構成で走行中に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)がテールランプ装置の背面付近に付着しにくくなるようにするとともに、荷台後傾式の車輌運搬車にも適用できるようにした貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、貨物自動車の走行中に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)がテールランプ装置の背面に付着・堆積するのを防止するための、貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造を対象としている。
【0013】
ところで、貨物自動車のテールランプ装置は、シャシフレームの後端部に取付けたものや荷台の後端部下面に取付けたものがあるが、いずれの取付形態のものでもテールランプ装置の背面は剥き出し状態で設置されているのが現状である。そして、貨物自動車が例えば雪道を走行する場合には、上記「背景技術」の項で説明したように、後輪で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)がテールランプ装置の背面に付着・堆積して大塊状に成長していき、上記「発明が解決しようとする課題」の項で説明したような各種の問題が発生する。
【0014】
そこで、本願発明は、貨物自動車におけるテールランプ装置の背面に上記跳ね上げ物が付着・堆積しにくくなるようにしたものである。尚、本願の以下の説明において、カバー材の背面とは、車輌前方側の面のことである。
【0015】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明に係る貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造は、車輌後部にテールランプ装置を設けた貨物自動車において、テールランプ装置の背面を可撓性のある弾性板からなるカバー材で被覆したものである。
【0016】
このカバー材は、材質としてゴムやプラスチックが使用可能であり、適度の可撓性と弾性とを兼備した薄板状のものが採用される。このカバー材の大きさは、テールランプ装置背面の全面積を被覆し得る程度で比較的小面積のものでよい。又、このカバー材の表面(特に車輌前方側となる面)は、跳ね上げ物が付着しにくい平滑面としたものが好ましい。
【0017】
そして、このカバー材は、テールランプ装置の背面を被覆した状態で、該カバー材の上下各辺部又は左右各辺部を固定して、カバー材の上下又は左右の中間領域が車輌走行時の風圧又は/及び振動で前後に弾性変形し得る状態で取付けている。即ち、このカバー材の取付状態では、その上下又は左右の中間領域がテールランプ装置の背面から若干離間していて、該中間領域が前後に弾性変形し得るようになっている。
【0018】
このカバー材の取付形態としては、その上下各辺部を固定したり(左右各辺部は非固定)、又はその左右各辺部を固定したり(上下各辺部は非固定)することができる。このカバー材の上下各辺部又は左右各辺部を固定する対象部分としては、テールランプ装置の外周部が適当であるが、テールランプ装置の外周近傍にある適宜の部材に固定するようにしてもよい。
【0019】
尚、この請求項1で使用されるカバー材は、平面状態で設置したものでもよいが、後述する請求項2のようにカバー材の中間領域を前方に向けて曲面状に突出させたものが好ましい。
【0020】
この請求項1の跳ね上げ物付着防護構造は、次のように機能する。即ち、この跳ね上げ物付着防護構造を装備した貨物自動車が例えば雪道を走行すると、後輪で路上の泥や雪を後方に跳ね上げて、その跳ね上げ物がテールランプ装置方向にも飛散するが、そのときテールランプ装置の背面がカバー材で被覆されているので、該跳ね上げ物がカバー材で阻止されてテールランプ装置背面にはほとんど接触しない(ごく一部の跳ね上げ物はカバー材の左右側辺部又は上下辺部の隙間からテールランプ装置背面側に回り込むことがあるが、その量は微々たるものである)。
【0021】
又、後輪で跳ね上げた跳ね上げ物の一部は、その跳ね上げスピードと車輌の走行スピードにより、カバー材の背面(車輌前方側の面)に衝突するが、該カバー材は前後に弾性を有しているのでその弾性力により衝突した跳ね上げ物を撥ね返す作用があり、カバー材背面に付着する跳ね上げ物の量を極力少なくする作用が生じる。尚、カバー材背面を平滑面にしていると、該カバー材背面に接触した跳ね上げ物が滑り易くなるので、跳ね上げ物付着防止機能が一層良好となる。
【0022】
さらに、車輌走行状態では、カバー材が風圧を受けることにより該カバー材の中間領域が前後に弾性変形する(風圧の変化で撓み量が変化する)一方、走行車輌の振動によりカバー材も共振して振動するようになり、それらの作用(カバー材の弾性変形作用と振動作用)によって、カバー材背面に跳ね上げ物が一時的に付着しても、その付着跳ね上げ物を振るい落とす作用が生じる。
【0023】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1に係る貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造において、前記カバー材の中間領域を車輌前方側に突出する曲面部としていることを特徴としている。即ち、この曲面部は、カバー材を上下各辺部で固定しているものではその上下中間領域が側面視で前方に突出している一方、カバー材を左右各辺部で固定しているものではその左右中間領域が平面視で前方に突出している。
【0024】
ところで、貨物自動車の走行中には、テールランプ装置を被覆しているカバー材の背面に風圧を受けるが、カバー材の中間領域を前方に突出する曲面部としていると、該カバー材に衝突した跳ね上げ物混じりの気流が該曲面部に沿って上下又は左右に逃げ易くなり、その気流に含まれる跳ね上げ物がカバー材背面に接触する量を少なくできる。
【0025】
又、カバー材の中間領域を曲面部としていると、該カバー材の中間領域に弾性変形時の撓み代を十分に確保でき、該カバー材が一層撓み易くなる。
【0026】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2に係る貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造において、貨物自動車として、車輌のシャシフレームの後端部位置において傾動自在に支持された傾斜フレームと、該傾斜フレーム上に車輌前後方向に移動自在に支持された荷台と、前記傾斜フレームの後端部に設置された支持脚とを備え、さらに該支持脚部分にテールランプ装置を設けた車輌運搬車を採用していることを特徴としている。尚、この請求項3の跳ね上げ物付着防護構造では、支持脚部分に設けたテールランプ装置の背面にカバー材を取付けている。
【0027】
この種の車輌運搬車では、荷台を後方移動及び後傾させた車輌積み降ろし姿勢において荷台後端部が接地する関係で、テールランプ装置を荷台後部の下面に設置することができず、該テールランプ装置の設置場所としては、スペース的に傾斜フレームの後端部に設けている支持脚部分が適当である。尚、テールランプ装置を傾斜フレーム後端部の支持脚部分に設置した車輌運搬車として、本件出願人は特願2008−243831で既に特許出願している。
【0028】
ところで、テールランプ装置を傾斜フレームの支持脚に設置した車輌運搬車では、次のような背景があった。即ち、荷台後端部が接地した車輌積み降ろし姿勢では、テールランプ装置が傾斜フレーム後端部及び支持脚とともに下動して、該テールランプ装置が路面にかなり近づくようになり、該テールランプ装置の下方にさほど余裕スペースがなくなる。他方、テールランプ装置の背面が剥き出しのまま(本願のカバー材がないもの)では、雪道走行時においてテールランプ装置背面付近に跳ね上げ物が固着していくが、その固着跳ね上げ物は順次下方側にも大きく(大塊状に)成長していく。この大塊状の固着跳ね上げ物は、外気温が非常に低いと氷状に硬くなる。そして、テールランプ装置背面付近に固着跳ね上げ物が大塊状(氷状に硬くなっている)に成長した状態で、荷台が車輌積み降ろし姿勢まで後傾すると、大塊状固着跳ね上げ物の下部が路面上に接触する(押付けられる)ことがあり、そのときテールランプ装置やその電気ケーブルに不自然な押圧力が作用して、該テールランプ装置やその電気ケーブルが損傷する虞れがある。
【0029】
そこで、本願請求項3の跳ね上げ物付着防護構造では、支持脚部分に設置したテールランプ装置の背面をカバー材で被覆しているが、このカバー材は、可撓性のある弾性板製であるので、上記請求項1で説明したようにカバー材背面に跳ね上げ物(泥、雪等)が付着・堆積しにくい性状となっている。従って、雪道を走行中においても跳ね上げ物がカバー材の背面で大きく成長することがなく、荷台を車輌載せ降ろし姿勢(支持脚及びカバー材が下動している)にした状態でも、付着跳ね上げ物が路面上に接触するというトラブルは発生しない。
【0030】
尚、この請求項3のように貨物自動車として車輌運搬車を採用したものでも、カバー材はテールランプ装置の背面を被覆する程度の比較的小面積範囲のものでよいので、荷台を車輌載せ降ろし姿勢にした状態では該カバー材がかなり下方に位置するものの、カバー材は路面からかなり離間しているので、該カバー材が路面に接触することがない。
【発明の効果】
【0031】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明の跳ね上げ物付着防護構造は、車輌後部のテールランプ装置の背面を可撓性のある弾性板からなるカバー材で被覆し、該カバー材は、その上下各辺部又は左右各辺部を固定してその上下又は左右の中間領域が車輌走行時の風圧や振動で前後に弾性変形し得る状態で取付けたものである。従って、この請求項1の跳ね上げ物付着防護構造には、次のような効果がある。
【0032】
(1) 走行中に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)がカバー材によりテールランプ装置背面に接触するのを防止できる。
【0033】
(2) 後輪で跳ね上げた跳ね上げ物の一部はカバー材の背面に衝突するが、該カバー材は前後に弾性を有しているので、その弾性力により衝突した跳ね上げ物を撥ね返す作用があり、カバー材背面に付着する跳ね上げ物の量を極力少なくすることができる。
【0034】
(3) 車輌走行状態では、カバー材が風圧を受けることにより該カバー材の中間領域が前後に弾性変形する(風圧の変化で撓み量が変化する)一方、走行車輌の振動によりカバー材も共振して振動するようになり、それらの作用(カバー材の弾性変形作用と振動作用)によって、カバー材背面に跳ね上げ物が一時的に付着しても、その付着跳ね上げ物を振るい落とすことができる。
【0035】
尚、上記(2)及び(3)のように、カバー材背面に跳ね上げ物が付着・堆積しにくいと、該跳ね上げ物によるテールランプ装置(その電気ケーブルも含む)への悪影響を無くすことができるとともに、付着跳ね上げ物の掃除回数を少なくすることができる。
【0036】
(4) カバー材は、テールランプ装置背面を被覆し得る程度の比較的小面積のものでよいので、従来の大面積の垂れカバー(図17の符号142)に比して材料コストが安価となる。
【0037】
(5) カバー材は、テールランプ装置背面側の見えにくい小面積範囲にあるので、従来の大面積の垂れカバー(図17の符号142)に比して見映えがさほど悪くならない。
【0038】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明では、上記請求項1の跳ね上げ物付着防護構造において、カバー材の中間領域を車輌前方側に突出する曲面部としている。従って、この請求項2の発明では、上記請求項1の効果に加えて次の効果がある。
【0039】
(1) 走行中に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物混じりの気流がカバー材の曲面部に沿って上下又は左右に逃げ易くなり、その気流に含まれる跳ね上げ物がカバー材背面に付着する量を少なくできる。
【0040】
(2) カバー材の中間領域を曲面部としていると、該カバー材の中間領域に弾性変形時の撓み代を十分に確保できるので、該カバー材が一層撓み易くなって、より一層の付着跳ね上げ物の振るい落とし機能を発揮できる。
【0041】
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、貨物自動車として上記説明の車輌運搬車を採用し、その支持脚部分に設置したテールランプ装置の背面を請求項1又は2のようにカバー材で被覆したものであるが、上記のようにカバー材の背面には跳ね上げ物が付着・堆積しにくい構造であるので、この請求項3の車輌運搬車(車輌載せ降ろし状態でテールランプ装置及びカバー材が路面にかなり近づく)であっても、上記請求項1又は2の跳ね上げ物付着防護構造を支障なく採用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本願第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造を採用した貨物自動車(車輌運搬車)の側面図である。
【図2】図1の車輌運搬車の分解図である。
【図3】図1の車輌運搬車に使用されている支持脚付近の拡大図である。
【図4】図3の平面視相当図で車幅半分を表す平面図である。
【図5】図4のV矢視拡大図である。
【図6】本願第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造の機能説明図である。
【図7】図1の車輌運搬車における荷台通常傾斜角状態の側面図である。
【図8】図1の車輌運搬車における荷台緩傾斜角状態の側面図である。
【図9】図8の状態における支持脚付近の拡大図である。
【図10】本願第2実施例の跳ね上げ物付着防護構造の側面図(図6相当図)である。
【図11】本願第3実施例の跳ね上げ物付着防護構造の平面図(図4相当図)である。
【図12】図11のXII矢視拡大図である。
【図13】本願第4実施例の跳ね上げ物付着防護構造を採用した貨物自動車の後部側面図である。
【図14】図13の一部拡大図である。
【図15】図14のXV−XV矢視相当図である。
【図16】本願第5実施例の跳ね上げ物付着防護構造を採用した図14相当図である。
【図17】従来の貨物自動車の後部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図1〜図16を参照して本願のいくつかの実施例を説明すると、図1〜図9には第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造を採用した貨物自動車(車輌運搬車)を示し、図10には第2実施例の跳ね上げ物付着防護構造を示し、図11〜図12には第3実施例の跳ね上げ物付着防護構造を示し、図13〜図15には第4実施例の跳ね上げ物付着防護構造を採用した貨物自動車を示し、図16には第4実施例(図14)の取付変形例を示した第5実施例の跳ね上げ物付着防護構造を示している。又、図1〜図9の第1実施例は本願の請求項1、2、及び3に対応するものであり、図10の第2実施例は本願の請求項1及び3に対応するのものであり、図11〜図12の第3実施例は本願の本願の請求項1、2、及び3に対応するものであり、図13〜図15の第4実施例と図16の第5実施例はそれぞれ本願の請求項1及び2に対応するものである。
【0044】
[図1〜図9の第1実施例]
図1〜図9の第1実施例で採用している貨物自動車は、図7又は図8に示すように、荷台4を後方移動及び後傾させて、該荷台4上に運搬すべき車輌Sを積み降ろしできるようにした車輌運搬車を対象にしている。
【0045】
まず、この第1実施例で採用している車輌運搬車の基本構成について、図1〜図3を参照して説明する。尚、本願実施例の説明において、前方又は前部とは車輌の前方側のことであり、後方又は後部とは車輌1の後方側のことであり、左右とは車輌の幅方向のことである。又、テールランプ装置17の背面及びカバー材18の背面とはそれぞれ車輌の前方側のことである。
【0046】
この車輌運搬車は、図1〜図3に示すように、シャシフレーム11を有する車輌1と、シャシフレーム11上のサブフレーム12に固定されたガイドレール2と、サブフレーム12の後端部においてそれぞれ傾動自在に支持された傾斜フレーム3と、傾斜フレーム3上に車輌前後方向に移動自在に支持された荷台4と、荷台4を傾斜フレーム3に対して車輌前後方向に移動させる伸縮シリンダ51を有し且つ該伸縮シリンダ51の伸縮動によって傾斜フレーム3を荷台4と共にガイドレール2に対して傾動させる傾動装置5とを備えて構成されている。
【0047】
シャシフレーム11と、サブフレーム12と、ガイドレール2と、傾斜フレーム3とは、それぞれ左右一対有しているが、図示例(図1〜図3)では側面視のみであるので、それぞれ1つしか表示していない。尚、他の実施例では、サブフレーム12を用いない構造のものも採用できる。
【0048】
左右のガイドレール2は、それぞれ所定長さを有する断面コ型のフレーム材が使用されている。この各ガイドレール2は、それぞれ車輌前後方向に向けた状態で左右のサブフレーム12に固定している。尚、サブフレーム12を使用しない場合には、ガイドレール2を直接シャシフレーム11に取付ける。
【0049】
各ガイドレール2の形状(案内軌条)は、伸縮シリンダ51の伸縮時に傾斜フレーム3をスムーズに(ほぼ等速で)傾動させ得るように設定されている。具体的には、各ガイドレール2は、前部に後方に向けて上り傾斜する上り傾斜部21と中間部に水平部22と後部に後方に向けて下り傾斜する下り傾斜部23とを連続して形成している。又、各ガイドレール2には、それぞれ全長に亘って内向きガイド溝24(図2)が形成されている。
【0050】
各傾斜フレーム3には、前後に長いH型鋼が使用されている。尚、この各傾斜フレーム3は、シャシフレーム11の全長よりかなり長い長さを有している。この各傾斜フレーム3の左右両側には、それぞれ全長に亘って内向きガイド溝と外向きガイド溝とが形成されている。又、この両傾斜フレーム3は、長さ方向の後端部付近において連結材33(図2)で連結されている。
【0051】
各傾斜フレーム3の後端部には、それぞれ下向きの支持脚9(左右一対ある)が取付けられている。尚、この支持脚9の詳細については後述する。
【0052】
この各傾斜フレーム3は、長さ方向中央部よりやや後方寄り位置をサブフレーム12の後部連結部13上に傾動自在に支持(支持部8)している。この実施例では、該支持部8は、各傾斜フレーム3の下面に設けたブラケット82をサブフレーム12の後部連結部13に設けたブラケット81にそれぞれ支軸83で枢着している。そして、この各傾斜フレーム3は、図1に示すようにシャシフレーム11(サブフレーム12)上において水平状態となる格納姿勢と、図7及び図8に示すように支持部8を中心にして支持脚9が接地した後傾姿勢との間で傾動し得るようになっている。
【0053】
荷台4は、車輌載せ台41の下面に左右2本の縦根太42を有している。この各縦根太42は、車輌載せ台41の左右幅の中心線から左右に所定等間隔を隔てた位置に配置されている。又、両縦根太42間の間隔は、前記両傾斜フレーム3の間隔よりかなり広い間隔に設定している。
【0054】
車輌載せ台41の後端部下面には、接地ローラ43が取付けられている。又、荷台4の後端部には、煽り板44を起伏自在に取付けている。
【0055】
そして、この荷台4は、後述する移動体6を介して各傾斜フレーム3に対して車輌前後方向に移動させ得るようにしている。
【0056】
傾動装置5は、上記ガイドレール2と、1本の伸縮シリンダ51と、該伸縮シリンダ51のチューブ52に取付けられていて各ガイドレール2の内向きガイド溝24に沿って移動する各ローラ55とを有している。
伸縮シリンダ51のチューブ52には、図2に示すように、その前端部及び後端部にそれぞれ左右外向きに突出する軸を設けて該各軸の先端部にそれぞれ左右一対とする前後2組のローラ(前ローラ57、後ローラ58)を設けている。そして、この伸縮シリンダ51は、シリンダロッド53を前部側に向けた状態で、該シリンダロッド53の先端部を各傾斜フレーム3の前端部に支軸で連結するとともに、シリンダチューブ52の前後各端部に設けた前後2組の各ローラ57、58をそれぞれ左右の傾斜フレーム3の各内向きガイド溝に沿って転動するようにして取付けている。従って、この伸縮シリンダ51は、伸縮時に傾斜フレーム3に対してシリンダチューブ52側が移動し、且つ前後・左右(合計4つ)の各ローラ57、58がそれぞれ各傾斜フレーム3の内向きガイド溝に沿って移動するので、側面視において伸縮シリンダ51が傾斜フレーム3に対して平行姿勢を維持したままで伸縮するようになっている。
【0057】
傾動装置5の一部となる左右1組のローラ55は、シリンダチューブ52の前部寄り位置においてそれぞれ短小な下向きアーム54の下端部に外向き状態で取付けられていて、それぞれガイドレール2の内向きガイド溝24内に嵌入されている。そして、この各ローラ55は、伸縮シリンダ51が伸縮すると、各ガイドレール2の内向きガイド溝24に沿って前後に移動し、そのとき伸縮シリンダ51を介して各傾斜フレーム3が支持部8を中心に傾動するようになっている。
【0058】
荷台4は、各傾斜フレーム3上を倍速装置Aによって伸縮シリンダ51の伸縮量の2倍の量だけ前後に移動し得るように設置されている。この倍速装置Aは、移動体6と左右のチエン7を有して構成されている。
【0059】
移動体6は、左右の傾斜フレーム3に沿って前後に移動し得るように設置されている。尚、この移動体6は、側面視において各傾斜フレーム3に対して常に平行姿勢を維持した状態で前後移動する。
【0060】
左右の各チエン7は、図2に示すようにそれぞれ2分割された第1分割チエン71と第2分割チエン72とを有している。
【0061】
この実施例では、各チエン7は、次のように取付けられている。図2に示すように、まず伸縮シリンダ51のチューブ52の前端部及び後端部には、それぞれシリンダチューブ52の左右各外側にチエン巻掛け用の滑車(合計4つ)56,56が取付けられている。そして、一方の第1分割チエン71は、後側の滑車56に巻掛けた状態で該第1分割チエン71の前側端部を移動体6に固定する一方、該第1分割チエン71の後側端部を傾斜フレーム3に固定している。又、他方の第2分割チエン72は、前側の滑車56に巻掛けた状態で該第2分割チエン72の前側端部を移動体6に固定する一方、該第2分割チエン72の後側端部を傾斜フレーム3に固定している。
【0062】
荷台4は、移動体6に対して荷台前端部寄り位置において支軸64(図1)により一点で枢着されている。
【0063】
そして、この倍速装置Aは、伸縮シリンダ51が伸縮すると、移動体6を前後の各滑車56,56及びチエン7(第1分割チエン71及び第2分割チエン72)によって伸縮シリンダ51の伸縮量の2倍の長さだけ前後移動せしめ、従って荷台4も移動体6とともに伸縮シリンダ51の伸縮量の2倍の長さだけ前後移動せしめるようになっている。
【0064】
支持脚9は、左右の各傾斜フレーム3のそれぞれ後端部に同じものが1つずつ設置されている。又、この左右の支持脚9は、連結材で連結されていて、該各支持脚9が同時に前後揺動するようになっている。尚、左右の支持脚9は同形のものが使用されているので、以下の説明では車輌後方側から見て左側の支持脚9で説明する。
【0065】
この支持脚9は、図3に拡大図示するように、上部側に前後に向く横向き腕部90aと該横向き腕部90aの前端から下方に延出させた下向き脚部90bとを有した逆L形部材90を使用している。そして、この支持脚9は、横向き腕部90aの後端部を傾斜フレーム3の後端部下面において支軸91(図1)で枢着して、下向き脚部90bが前後に揺動し得るように装着している。
【0066】
逆L形部材90における横向き腕部90aと下向き脚部90bとの角部には、荷台受けローラ92を設けている。この荷台受けローラ92は、荷台4の縦根太42を受ける(載せる)ものであり、該荷台受けローラ92上に荷台の縦根太42が載っている状態では、後述するように支持脚9の前方側揺動を禁止するようになっている。
【0067】
逆L形部材90における下向き脚部90bの下端部には、接地ローラ93を設けている。この接地ローラ93は、地面に接地した状態で転動し、支持脚9の前後揺動動作をスムーズに行わせるものである。
【0068】
尚、この支持脚9における荷台受けローラ92の上端から接地ローラ93の下端までの長さは、特に限定するものではないが50cm程度が適当である。
【0069】
支持脚9の下向き脚部90bには、後述(図8、図9)するように傾斜フレーム3が最大後傾し且つ支持脚9の下向き脚部90bが前方側に最大揺動した時点で、傾斜フレーム3の下面に衝合して該支持脚9がそれ以上、前方側に揺動するのを禁止するためのストッパー15(図3)を取付けている。
【0070】
左右の各支持脚9には、図3及び図4に拡大図示するように、車幅方向に長い後部バンパー16が装着されている。この後部バンパー16には揺動アーム162が取付けられていて、この揺動アーム162の先端部を支持脚9の下向き脚部90bに支軸163(図3)で枢支していることにより、後部バンパー16を支持脚9より後側において前後に揺動自在なる状態で装着している。
【0071】
後部バンパー16の左右各端部は、図4に示すように左右の各支持脚9の位置よりそれぞれ外側に所定長さだけ突出させている。この後部バンパー16における支持脚9より外側の突出部分は、後述するようにテールランプ装置(コンビネーションランプ)17の取付スペースとなるものである。又、後部バンパー16の左右各外端部には、それぞれ接地ローラ161が取付けられている。
【0072】
後部バンパー16は、付勢部材(コイルバネ)164により後部バンパー16側の接地ローラ161が支持脚9側の接地ローラ93に近接する方向に付勢している。この付勢部材164は、支持脚9の下向き脚部90bと後部バンパー16側の揺動アーム162間に介設されている。後部バンパー16の揺動アーム162は、該揺動アーム162と支持脚9の下向き脚部90b間に設けたストッパー機構(係合部166と係合受部167)によって、それ以上、図3の右回転方向に回転しないようにしている。
【0073】
後部バンパー16上には、各支持脚9よりそれぞれ外側部分において左右一対のテールランプ装置(コンビネーションランプ)17が取付けられている。この各テールランプ装置17は、車幅方向の左右外端寄り近傍に設置されていて、左右の各後輪14のほぼ直後方に位置している。
【0074】
このテールランプ装置17の複数(図示例では3つ)のランプ171,171,171部分には、背面側からそれぞれ電気ケーブル172が接続されているとともに、テールランプ装置背面側には各電気ケーブル172等を保護するガード板173が設けられている。そして、本願では、該ガード板173を含めてテールランプ装置17の背面と表現している。
【0075】
尚、この第1実施例では、テールランプ装置17を後部バンパー16上に取付けているが、該後部バンパー16が支持脚9に取付けられている関係で、該テールランプ装置17が間接的に支持脚9部分に設けられている(本願請求項3に構成に合致する)。
【0076】
支持脚9は、荷台格納状態(図1、図3)において支持脚格納装置10により前方に揺動させた状態で格納されるようになっている。尚、支持脚格納装置10の構成及び機能については、本件出願人が既に提案している特願2008−243831において詳細に説明しているが、本願の跳ね上げ物付着防護構造に直接関係がないので、支持脚格納装置10についての詳細な説明は省略する。尚、支持脚格納装置10を機能させる前提として、荷台4が格納位置にあるときには支持脚9が前方に揺動し得るようにする必要があるが、そのために荷台格納状態で支持脚9の荷台受けローラ92に対応する位置の荷台の縦根太42の下面に、図1及び図3に示すように上向き凹部(段差部)42aを設けている。
【0077】
次に、第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造を説明する前に、この第1実施例で使用されている車輌運搬車の基本的な作動方法を説明する。
【0078】
図1に示す荷台格納状態では、伸縮シリンダ51が全縮小していて、下向きアーム54のローラ55がガイドレール2の前部寄り位置(上り傾斜部21の前方)にあって傾斜フレーム3が水平姿勢となっており、且つ荷台4も最前位置において水平姿勢を維持している。
【0079】
荷台4を車輌積込み姿勢まで作動させるには、伸縮シリンダ51を伸長させる。すると、シリンダチューブ52が後方に移動し、下向きアーム54に取付けられているローラ(左右一対ある)55がガイドレール2の上り傾斜部21を経て水平部22まで移動すると、図7に示すように支持脚9が接地するまで傾斜フレーム3を後傾させるとともに、荷台4が倍速装置Aにより伸縮シリンダ伸長量の2倍長さだけ後方移動して荷台後端部の接地ローラ43が地面に接地する。
【0080】
この図7の状態では、支持脚9の下向き脚部90bが傾斜フレーム3に対して下向きに角度略90°方向に向いた姿勢で維持されている。即ち、支持脚9の荷台受けローラ92が荷台の縦根太42で上動するのを規制されていて、支持脚9が支軸91を中心にして前方側に揺動するのを禁止しているので、支持脚9の姿勢が安定した状態で該支持脚9による傾斜フレーム後端部の支持高さが高くなっている。尚、図7の時点では、傾斜フレーム3の対地角が約10°であるので、支持脚9の下向き脚部90bも鉛直姿勢から角度約10°だけ前方側に揺動しているが、そのときの支持脚9による傾斜フレーム後端部の支持高さは、支持脚9の長さ(例えば50cm)よりごく短い程度の「高支持状態」となっている。その後、煽り板44を後方に倒伏して地面に接地させると、一般車高車Sを積込み得る姿勢(荷台対地角が10°程度)となる。
【0081】
又、荷台4を図7の状態からさらに緩傾斜させるには、伸縮シリンダ51をさらに伸長させる。すると、荷台4の接地ローラ43が接地したまま荷台4がさらに後方移動して、荷台4の傾斜角が傾斜フレーム3の傾斜角より小さくなっていくが、荷台4は傾斜フレーム3(実質は移動体6)に対して荷台前端部の一点(支軸64の位置)を中心にして傾動し得るようになっているので、荷台4を傾斜フレーム3に対して支障なく傾動させることができる。又、荷台4の傾斜角が傾斜フレーム3の傾斜角より小さくなると、支持脚9の荷台受けローラ92に対する押圧規制が解除されて支持脚9が支軸91を中心にして前側に揺動可能となる。
【0082】
そして、荷台4がさらに後方移動して、図8及び図9に示すように荷台前端部が傾斜フレーム3の後端部付近に達したときに、伸縮シリンダ51の伸長が停止して荷台4の後方移動が完了する。
【0083】
この図8(及び図9)の状態では、支持脚9が前方側に大きく揺動して、支持脚9による傾斜フレーム後端部の支持高さが非常に低くなっている(「低支持状態」となる)。因に、図8の状態では、荷台4の前部がかなり低位置まで降下していて、荷台4が地上近傍の略水平位置まで降下しており、該荷台4が非常に緩い傾斜角(例えば2〜3°程度)で安定している。この図8の荷台緩傾斜状態では、一般車高車は当然であるが、低車高車であっても何ら問題なく乗り込ませることができる。
【0084】
尚、荷台4は、図7に示す通常傾斜角状態から図8に示す緩傾斜角状態までの任意の傾斜状態で車輌を積込み得るようになっている。
【0085】
荷台4を車輌積込み姿勢状態から格納するには、伸縮シリンダ51を縮小させることで車輌積込み時の動作とは逆順序で格納させることができる。
【0086】
ところで、上記第1実施例で使用されている車輌運搬車では、図3及び図4に拡大図示するように、テールランプ装置(コンビネーションランプ)17が支持脚9側の後部バンパー16上に取付けられている。そして、通常は、テールランプ装置17の背面が剥き出し状態で露出しているが、このようにテールランプ装置背面が剥き出し状態のままであると、上記「背景技術」の項で説明したように、例えば雪道走行時にはテールランプ装置背面に後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物が付着・堆積して大塊状に固着するようになり(例えば図17の符号R)、その大塊状固着跳ね上げ物によって、上記「発明が解決しようとする課題」で説明した各種のトラブルを起こす原因になる。
【0087】
特に、図1〜図3に示す車輌運搬車のように、テールランプ装置17が後部バンパー16上に設置されたものでは、通常走行時において該テールランプ装置17がかなり低位置にあるので、後輪14からの跳ね上げ物が大量に接触し易くなる。そして、テールランプ装置背面に大塊状の跳ね上げ物が固着した状態(寒冷地では氷状に硬くなる)で、図7又は図8(図9に拡大図示)に示すように後部バンパー16(接地ローラ161)が接地するまで降下するとテールランプ装置17も路面にかなり近づき、テールランプ装置背面の大塊状固着跳ね上げ物の下端部が路面上に接触する(押付けられる)ことがある。このようにテールランプ装置背面で固着している大塊状跳ね上げ物が路面上に押付けられると、その反力でテールランプ装置17付近が損傷する虞れがある。
【0088】
そこで、この第1実施例に使用されている車輌運搬車には、テールランプ装置17の背面に、後輪14による跳ね上げ物が付着しにくくなるようにした跳ね上げ物付着防護構造を装備している。
【0089】
図1〜図9に示す第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造は、図3〜図5に拡大図示するように、テールランプ装置17の背面を可撓性のある弾性板からなるカバー材18で被覆したものである。
【0090】
このカバー材18は、材質としてゴムやプラスチックが使用可能であり、適度の可撓性と弾性とを兼備した薄板状のものが採用されている。
【0091】
このカバー材18の大きさは、テールランプ装置背面の全面積を被覆し得る程度で比較的小面積のものでよい。又、このカバー材の表面(特に車輌前方側となる面)は、跳ね上げ物が付着しにくい平滑面としている。
【0092】
そして、この第1実施例で使用されているカバー材18は、図3〜図5に拡大図示するように、テールランプ装置17の背面を被覆した状態で、該カバー材18の上下各辺部18a,18bをそれぞれ止具(固定ボルト)19,19で固定して、カバー材18の上下中間領域18eが車輌走行時の風圧や振動で前後に弾性変形し得る状態で取付けている。即ち、この第1実施例のカバー材取付形態は、カバー材上辺部18aをテールランプ装置17の上面部に止具19(図示例では左右3箇所)で固定している一方、カバー材下辺部18bを後部バンパー16の背面側に設けた取付板16aに止具19(図示例では左右3箇所)で固定している。
【0093】
又、この第1実施例で使用されているカバー材18は、その上下中間領域18eが側面視(図3、図6)において車輌前方側に突出する曲面部となるように取付けている。
【0094】
この第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造は、次のように機能する。即ち、この跳ね上げ物付着防護構造を装備した車輌運搬車が雪道を走行すると、図1に矢印Bで示すように後輪14で路上の泥や雪を後方に跳ね上げて、その跳ね上げ物がテールランプ装置17の方向にも飛散するが、そのときテールランプ装置17の背面がカバー材18で被覆されているので、該跳ね上げ物がカバー材18で阻止されてテールランプ装置背面にはほとんど接触しない(ごく一部の跳ね上げ物はカバー材の左右側部の隙間からテールランプ装置背面側に回り込むことがあるが、その量は微々たるものである)。
【0095】
又、後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物の一部は、図6に矢印Cで示すように、その跳ね上げスピードと車輌の走行スピードにより、カバー材18の背面(車輌前方側の面)に衝突するが、該カバー材18は前後に弾性を有しているのでその弾性力により衝突した跳ね上げ物を撥ね返す作用があり、カバー材背面に付着する跳ね上げ物の量を極力少なくする作用が生じる。
【0096】
さらに、車輌走行状態では、カバー材18が風圧を受けることにより該カバー材の中間領域18eが前後に弾性変形する(風圧の変化で撓み量が変化する)一方、走行車輌の振動によりカバー材18も共振して振動するようになる。即ち、カバー材18の中間領域18eが図6の矢印Dのように前後に振動する。従って、カバー材背面に跳ね上げ物が一時的に付着(図6の符号Ra)しても、カバー材18の弾性変形作用と振動作用によって、その付着跳ね上げ物Raを振るい落とす作用が生じる。
【0097】
又、車輌運搬車の走行中には、テールランプ装置17を被覆しているカバー材18の背面に風圧を受けるが、カバー材18の中間領域18eを前方に突出する曲面部としていると、図6に矢印E,Eで示すようにカバー材18に衝突した跳ね上げ物混じりの気流が該曲面部に沿って上下に逃げ易くなり、その気流E,Eに含まれる跳ね上げ物がカバー材背面に接触する量を少なくできる。
【0098】
さらに、カバー材18の中間領域18eを曲面部としていると、該カバー材の中間領域18eに弾性変形時の撓み代を十分に確保でき、該カバー材18が一層撓み易くなる。
【0099】
この第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造では、カバー材18に有する上記各機能により、雪道のような条件の悪い状況下での走行時でも、テールランプ装置17の背面側に跳ね上げ物(泥や雪)が付着しにくくなり、従来のように跳ね上げ物が大塊状に固着した場合の各種問題点を未然に解消できる。
【0100】
又、この第1実施例で使用している車輌運搬車において、図7又は図8(図9に拡大図示)に示すように車輌載せ降ろし可能状態では、傾斜フレーム3が後傾して支持脚9が接地することにより、テールランプ装置17が路面にかなり近づくが、カバー材18によりテールランプ装置17の背面付近に跳ね上げ物が付着しにくい構造となっているので、支持脚9が接地しても何ら支障がない。即ち、テールランプ装置背面側に大塊状の跳ね上げ物が固着しないので、大塊状固着跳ね上げ物の下部が路面に押付けられてテールランプ装置を損傷させるというトラブルは発生しない。
【0101】
尚、この第1実施例で使用している車輌運搬車では、支持脚9として前後に揺動させて傾斜フレーム3の傾斜角度を変更させ得るものを採用しているが、他の実施例では、支持脚9を傾斜フレーム3の後端部に揺動不能に固定したものを採用してもよい。又、この第1実施例では、テールランプ装置17を支持脚9に取付けた後部バンパー16上に設置しているが、他の実施例では、後部バンパー16がないものでもよく、その場合はテールランプ装置17を支持脚9に直接取付ければよい。
【0102】
[図10の第2実施例]
図10の第2実施例の跳ね上げ物付着防護構造は、上記第1実施例の変形例を示したものであり、カバー材18の取付対象となる貨物自動車は第1実施例の車輌運搬車である。尚、図10は第1実施例の図6相当図である。
【0103】
この第2実施例の跳ね上げ物付着防護構造でも、第1実施例と同様に支持脚に取付けた後部バンパー16の上部にテールランプ装置17を設置し、該テールランプ装置17の背面側をカバー材18で被覆している。
【0104】
又、図10の第2実施例で使用されているカバー材18も、第1実施例のものと同様に可撓性のある弾性板が用いられている。そして、このカバー材18は、横長平面状のものをテールランプ装置17の背面から若干間隔をもって上下向きに配置し、その上辺部18a及び下辺部18bをそれぞれ止具(固定ボルト)19,19で固定して、カバー材の上下中間領域18eが前後に弾性変形(矢印D)し得る状態で取付けている。尚、カバー材18の上辺部18aはテールランプ装置17の上面部から前方に突出させた取付板17aの前端部に固定し、カバー材18の下辺部18bは後部バンパー16の背面に取付けた取付板16aに固定している。
【0105】
この第2実施例のカバー材18では、第1実施例の曲面部を有したカバー材より前後の撓み代が少ないが、この第2実施例のカバー材18でも中間領域18eが前後に弾性力を有しているので、矢印Cで示すように跳ね上げ物がカバー材18の背面に衝突したときに撥ね返し作用が発生するとともに、走行時に受ける風圧によっても中間領域18eが前後に振動(矢印D)する作用が発生する。
【0106】
従って、この第2実施例のものでは、上記第1実施例の形態のカバー材(前方に突出する曲面部がある)より跳ね上げ物付着防護機能が若干劣るものの、カバー材18の背面に跳ね上げ物が付着・堆積するのを防護し得る機能がある。又、この第2実施例のカバー材18は、平面形状であるので取付けが比較的簡単となる。
【0107】
[図11〜図12の第3実施例]
図11〜図12の第3実施例の跳ね上げ物付着防護構造も、上記第1実施例の変形例を示したものであり、カバー材18の取付対象となる貨物自動車は第1実施例の車輌運搬車である。尚、図11は第1実施例の図4相当図であり、図12は同図5相当図である。
【0108】
この第3実施例の跳ね上げ物付着防護構造でも、第1実施例と同様に支持脚9に取付けた後部バンパー16の上部にテールランプ装置17を設置し、該テールランプ装置17の背面側をカバー材18で被覆している。
【0109】
又、図11〜図12の第3実施例で使用されているカバー材18も、第1実施例のものと同様に可撓性のある弾性板が用いられている。そして、この第3実施例では、カバー材18をテールランプ装置17の背面から若干間隔を持たせた状態で、該カバー材18の左右各側辺部18c,18dをそれぞれテールランプ装置17の左右側面部に止具(固定ボルト)19,19で固定して、カバー材の左右中間領域18eが前後に弾性変形(符号D)し得る状態で取付けている。
【0110】
又、この第3実施例のカバー材18は、その左右中間領域18eを平面視(図11)において車輌前方側に突出する曲面部としている。尚、カバー材18は、左右幅の方が上下幅より長いので、カバー材18の左右各側辺部18c,18dを固定したものでは前後の撓み代を大きくとれる。
【0111】
この第3実施例のカバー材18でも、その左右中間領域18eが前後に弾性力を有しているので、矢印Cで示すように跳ね上げ物がカバー材18の背面に衝突したときに撥ね返し作用が発生するとともに、走行時に受ける風圧によっても中間領域18eが前後に振動(矢印D)する作用が発生する。
【0112】
又、車輌運搬車の走行中には、テールランプ装置17を被覆しているカバー材18の背面に風圧を受けるが、カバー材18の中間領域18eを前方に突出する曲面部としているので、、図11に矢印E,Eで示すようにカバー材18に衝突した跳ね上げ物混じりの気流が該曲面部に沿って左右に逃げ易くなり、その気流E,Eに含まれる跳ね上げ物がカバー材背面に接触する量を少なくできる。
【0113】
従って、この第3実施例の跳ね上げ物付着防護構造でも、上記第1実施例のものと同様にカバー材18の背面に跳ね上げ物が付着・堆積するのを防護し得る機能がある。
【0114】
[図13〜図15の第4実施例]
図13〜図15の第4実施例では、貨物自動車として一般的な荷台固定型のものを採用している。
【0115】
この第4実施例の貨物自動車では、左右のテールランプ装置17が左右のシャシフレーム11の外面からそれぞれ支持台11a(図15)を介して外側に突出する状態で取付けられている。尚、この場合、テールランプ装置17の下方は大きく開放されているとともに、テールランプ装置17の上面と荷台4の下面との間に隙間を有している。
【0116】
そして、この第4実施例の跳ね上げ物付着防護構造でも、テールランプ装置17の背面を可撓性のある弾性板からなるカバー材18で被覆している。尚、第4実施例のカバー材18の第1実施例のものと同じ材質である。
【0117】
このカバー材18は、その上辺部18a及び下辺部18bをそれぞれテールランプ装置17の上面と下面にそれぞれ止具(固定ボルト)19,19で固定して、その上下中間領域18eが前後に弾性変形し得る状態で取付けている。又、カバー材18の上下中間領域18eは、第1実施例のものと同様に前方側に突出する曲面部としている。
【0118】
尚、この第4実施例の跳ね上げ物付着防護構造は、上記第1実施例のものに比してカバー材18の取付車種が異なるものの、基本的構成は第1実施例のものと同じである。
【0119】
この第4実施例の跳ね上げ物付着防護構造でも、雪道走行時に後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物(矢印B)がテールランプ装置17の背面付近に飛散して、その一部がカバー材18に接触するが、カバー材18に可撓性と弾性力があるので、第1実施例のカバー材と同様な機能を発揮する。
【0120】
即ち、跳ね上げた跳ね上げ物の一部がカバー材18の背面に衝突した際に、該跳ね上げ物を図14に矢印Cで示すように撥ね返す作用がある。又、車輌走行中には、カバー材18が風圧を受けることにより該カバー材の中間領域18eが前後に弾性変形する(風圧の変化で撓み量が変化する)一方、走行車輌の振動によりカバー材18も共振して振動(図14の矢印D)し、付着跳ね上げ物Raを振るい落とす作用が生じる。又、車輌走行中には、テールランプ装置17を被覆しているカバー材18の背面に風圧を受けるが、カバー材18の中間領域18eを前方に突出する曲面部としていると、図14に矢印E,Eで示すようにカバー材18に衝突した跳ね上げ物混じりの気流が該曲面部に沿って上下に逃げ易くなる(その気流E,Eに含まれる跳ね上げ物がカバー材背面に接触する量を少なくできる)。さらに、カバー材18の中間領域18eを曲面部としていると、該カバー材の中間領域18eに弾性変形時の撓み代を十分に確保でき、該カバー材18が一層撓み易くなる。
【0121】
従って、この第4実施例の跳ね上げ物付着防護構造では、カバー材18に有する上記各機能により、雪道のような条件の悪い状況下での走行時でも、テールランプ装置17の背面側に跳ね上げ物(泥や雪)が付着しにくくなる。
【0122】
[図16の第5実施例]
図16の第5実施例の跳ね上げ物付着防護構造は、第4実施例(図14)の取付変形例を示すものである。即ち、この図16の第5実施例では、テールランプ装置17を貨物自動車の荷台4の後端部下面に取付けたものである。この場合、荷台4の後端部下面に取付台4aを固定して、該取付台4aでテールランプ装置17を支持しているので、テールランプ装置17の上面と荷台4の下面との間は取付台4aで塞がれている。
【0123】
この図16の第5実施例でも、テールランプ装置17の背面をカバー材18で被覆しているが、このカバー材18は第4実施例(図13〜図15)のカバー材と同形態のものである。
【0124】
この第5実施例のものでは、車輌走行中にカバー材18に衝突した跳ね上げ物混じりの気流Eがカバー材18の上方側には逃げにくいが、その他の機能は上記第4実施例のものと同じである。
【0125】
従って、この第5実施例(図16)のものでも、カバー材背面への跳ね上げ物付着防護機能を十分に発揮するものである。
【符号の説明】
【0126】
1は貨物自動車(車輌運搬車)、2はガイドレール、3は傾斜フレーム、4は荷台、5は傾動装置、6は移動体、11はシャシフレーム、12はサブフレーム、14は後輪、16は後部バンパー、17はテールランプ装置、18はカバー材、18aは上辺部、18bは下辺部、18c,18dは側辺部、18eは中間領域、19は止具(固定ボルト)、51は伸縮シリンダである。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、貨物自動車の走行時に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)がテールランプ装置の背面に付着しにくくするための貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造に関するものである。尚、本願において、テールランプ装置の背面とは、該テールランプ装置における車輌前方側の面のことである。
【背景技術】
【0002】
貨物自動車の後部には、図17に示すようにテールランプ装置(コンビネーションランプ)17が剥き出し状態で設置されており、走行時には矢印Bで示すように後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物がテールランプ装置17の背面に付着する。特に、雪道を走行する場合は、後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)が図17に符号Rで示すようにテールランプ装置17の背面に付着して順次堆積するようになる。そして、テールランプ装置背面に堆積した跳ね上げ物Rは、外気温が非常に低いと氷状に硬くなって固着し(脱落しにくくなり)、且つ雪道を連続走行していると該固着跳ね上げ物Rが順次大塊状に成長するようになる。
【0003】
尚、一般の貨物自動車(図17)には、後輪14の後側近傍位置に泥よけカバー141を垂れ下げて、該垂れカバー141により後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物のかなりの量を受け止め得るようになっているが、特に高速走行時には後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物が飛沫となって周囲に舞い上がり、その飛沫(跳ね上げ物)がテールランプ装置17の背面側に達して該テールランプ装置の背面に付着・堆積するようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記(図17)のように、テールランプ装置17の背面で固着跳ね上げ物Rが大塊状に成長すると、次のような問題があった。
【0005】
まず、その大塊状固着跳ね上げ物Rによりテールランプ装置背面付近の構造物や電気ケーブル172等が損傷する虞れがある。特に、寒冷地では固着跳ね上げ物Rが凍り付くので、その除去作業時には該固着跳ね上げ物Rをハンマー等で叩き割ることがあるが、そのときテールランプ背面を損傷させたり電気ケーブル172を断線させたりする危険性が高くなる。
【0006】
又、特に雪道での走行中には固着跳ね上げ物Rの成長が早いので、その除去のための掃除回数が多くなるとともに、その掃除のために毎回多大な労力が必要となる。
【0007】
さらに、走行中には、テールランプ装置17の背面に固着している大塊状の跳ね上げ物Rが車輌の振動で大塊状のまま剥離して路上に落下する(図17の符号R′)ことがあるが、その場合、大塊状跳ね上げ物R′が路上の障害物となって後続車に危険を及ぼす虞れがある。
【0008】
ところで、一般の貨物自動車の中には、図17に鎖線図示するように、テールランプ装置17の背面側近傍に比較的大面積の垂れカバー142を荷台4の下面から垂れ下げて、該垂れカバー142によりテールランプ装置背面に跳ね上げ物が付着しにくくしたものがある。ところが、この垂れカバー142は、大面積であるので材料コストが高くなるとともに、その取付けが面倒であり(荷台下面に取付台143を固定してその取付台143に垂れカバー142を取付ける必要がある)、さらには見映えが悪くなる等の問題がある。
【0009】
又、この垂れカバー142を設けたものでも、該垂れカバー142とテールランプ装置17の背面との間に大きな隙間があるので、その隙間に跳ね上げ物が回り込んで、時間の経過とともにテールランプ装置17の背面で跳ね上げ物Rが大塊状に成長することがある。
【0010】
尚、このような大面積の(特に上下に長い)垂れカバー142は、後述する(図1〜図9に示す本願第1実施例)ように荷台を後傾させて被運搬車輌を載せ降ろしでき、且つテールランプ装置が荷台の後傾に伴って路面にかなり近づく位置まで降下するような車輌運搬車には適用できないものである。即ち、この種の車輌運搬車において荷台が後傾して荷台後端部が接地した状態では、テールランプ装置が路面にかなり近づく位置まで降下しているので、該テールランプ装置の背面側近傍に垂れカバー142を取付ける上下スペースが確保できない。
【0011】
そこで、本願発明は、比較的簡単な構成で走行中に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)がテールランプ装置の背面付近に付着しにくくなるようにするとともに、荷台後傾式の車輌運搬車にも適用できるようにした貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、貨物自動車の走行中に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)がテールランプ装置の背面に付着・堆積するのを防止するための、貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造を対象としている。
【0013】
ところで、貨物自動車のテールランプ装置は、シャシフレームの後端部に取付けたものや荷台の後端部下面に取付けたものがあるが、いずれの取付形態のものでもテールランプ装置の背面は剥き出し状態で設置されているのが現状である。そして、貨物自動車が例えば雪道を走行する場合には、上記「背景技術」の項で説明したように、後輪で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)がテールランプ装置の背面に付着・堆積して大塊状に成長していき、上記「発明が解決しようとする課題」の項で説明したような各種の問題が発生する。
【0014】
そこで、本願発明は、貨物自動車におけるテールランプ装置の背面に上記跳ね上げ物が付着・堆積しにくくなるようにしたものである。尚、本願の以下の説明において、カバー材の背面とは、車輌前方側の面のことである。
【0015】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明に係る貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造は、車輌後部にテールランプ装置を設けた貨物自動車において、テールランプ装置の背面を可撓性のある弾性板からなるカバー材で被覆したものである。
【0016】
このカバー材は、材質としてゴムやプラスチックが使用可能であり、適度の可撓性と弾性とを兼備した薄板状のものが採用される。このカバー材の大きさは、テールランプ装置背面の全面積を被覆し得る程度で比較的小面積のものでよい。又、このカバー材の表面(特に車輌前方側となる面)は、跳ね上げ物が付着しにくい平滑面としたものが好ましい。
【0017】
そして、このカバー材は、テールランプ装置の背面を被覆した状態で、該カバー材の上下各辺部又は左右各辺部を固定して、カバー材の上下又は左右の中間領域が車輌走行時の風圧又は/及び振動で前後に弾性変形し得る状態で取付けている。即ち、このカバー材の取付状態では、その上下又は左右の中間領域がテールランプ装置の背面から若干離間していて、該中間領域が前後に弾性変形し得るようになっている。
【0018】
このカバー材の取付形態としては、その上下各辺部を固定したり(左右各辺部は非固定)、又はその左右各辺部を固定したり(上下各辺部は非固定)することができる。このカバー材の上下各辺部又は左右各辺部を固定する対象部分としては、テールランプ装置の外周部が適当であるが、テールランプ装置の外周近傍にある適宜の部材に固定するようにしてもよい。
【0019】
尚、この請求項1で使用されるカバー材は、平面状態で設置したものでもよいが、後述する請求項2のようにカバー材の中間領域を前方に向けて曲面状に突出させたものが好ましい。
【0020】
この請求項1の跳ね上げ物付着防護構造は、次のように機能する。即ち、この跳ね上げ物付着防護構造を装備した貨物自動車が例えば雪道を走行すると、後輪で路上の泥や雪を後方に跳ね上げて、その跳ね上げ物がテールランプ装置方向にも飛散するが、そのときテールランプ装置の背面がカバー材で被覆されているので、該跳ね上げ物がカバー材で阻止されてテールランプ装置背面にはほとんど接触しない(ごく一部の跳ね上げ物はカバー材の左右側辺部又は上下辺部の隙間からテールランプ装置背面側に回り込むことがあるが、その量は微々たるものである)。
【0021】
又、後輪で跳ね上げた跳ね上げ物の一部は、その跳ね上げスピードと車輌の走行スピードにより、カバー材の背面(車輌前方側の面)に衝突するが、該カバー材は前後に弾性を有しているのでその弾性力により衝突した跳ね上げ物を撥ね返す作用があり、カバー材背面に付着する跳ね上げ物の量を極力少なくする作用が生じる。尚、カバー材背面を平滑面にしていると、該カバー材背面に接触した跳ね上げ物が滑り易くなるので、跳ね上げ物付着防止機能が一層良好となる。
【0022】
さらに、車輌走行状態では、カバー材が風圧を受けることにより該カバー材の中間領域が前後に弾性変形する(風圧の変化で撓み量が変化する)一方、走行車輌の振動によりカバー材も共振して振動するようになり、それらの作用(カバー材の弾性変形作用と振動作用)によって、カバー材背面に跳ね上げ物が一時的に付着しても、その付着跳ね上げ物を振るい落とす作用が生じる。
【0023】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1に係る貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造において、前記カバー材の中間領域を車輌前方側に突出する曲面部としていることを特徴としている。即ち、この曲面部は、カバー材を上下各辺部で固定しているものではその上下中間領域が側面視で前方に突出している一方、カバー材を左右各辺部で固定しているものではその左右中間領域が平面視で前方に突出している。
【0024】
ところで、貨物自動車の走行中には、テールランプ装置を被覆しているカバー材の背面に風圧を受けるが、カバー材の中間領域を前方に突出する曲面部としていると、該カバー材に衝突した跳ね上げ物混じりの気流が該曲面部に沿って上下又は左右に逃げ易くなり、その気流に含まれる跳ね上げ物がカバー材背面に接触する量を少なくできる。
【0025】
又、カバー材の中間領域を曲面部としていると、該カバー材の中間領域に弾性変形時の撓み代を十分に確保でき、該カバー材が一層撓み易くなる。
【0026】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2に係る貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造において、貨物自動車として、車輌のシャシフレームの後端部位置において傾動自在に支持された傾斜フレームと、該傾斜フレーム上に車輌前後方向に移動自在に支持された荷台と、前記傾斜フレームの後端部に設置された支持脚とを備え、さらに該支持脚部分にテールランプ装置を設けた車輌運搬車を採用していることを特徴としている。尚、この請求項3の跳ね上げ物付着防護構造では、支持脚部分に設けたテールランプ装置の背面にカバー材を取付けている。
【0027】
この種の車輌運搬車では、荷台を後方移動及び後傾させた車輌積み降ろし姿勢において荷台後端部が接地する関係で、テールランプ装置を荷台後部の下面に設置することができず、該テールランプ装置の設置場所としては、スペース的に傾斜フレームの後端部に設けている支持脚部分が適当である。尚、テールランプ装置を傾斜フレーム後端部の支持脚部分に設置した車輌運搬車として、本件出願人は特願2008−243831で既に特許出願している。
【0028】
ところで、テールランプ装置を傾斜フレームの支持脚に設置した車輌運搬車では、次のような背景があった。即ち、荷台後端部が接地した車輌積み降ろし姿勢では、テールランプ装置が傾斜フレーム後端部及び支持脚とともに下動して、該テールランプ装置が路面にかなり近づくようになり、該テールランプ装置の下方にさほど余裕スペースがなくなる。他方、テールランプ装置の背面が剥き出しのまま(本願のカバー材がないもの)では、雪道走行時においてテールランプ装置背面付近に跳ね上げ物が固着していくが、その固着跳ね上げ物は順次下方側にも大きく(大塊状に)成長していく。この大塊状の固着跳ね上げ物は、外気温が非常に低いと氷状に硬くなる。そして、テールランプ装置背面付近に固着跳ね上げ物が大塊状(氷状に硬くなっている)に成長した状態で、荷台が車輌積み降ろし姿勢まで後傾すると、大塊状固着跳ね上げ物の下部が路面上に接触する(押付けられる)ことがあり、そのときテールランプ装置やその電気ケーブルに不自然な押圧力が作用して、該テールランプ装置やその電気ケーブルが損傷する虞れがある。
【0029】
そこで、本願請求項3の跳ね上げ物付着防護構造では、支持脚部分に設置したテールランプ装置の背面をカバー材で被覆しているが、このカバー材は、可撓性のある弾性板製であるので、上記請求項1で説明したようにカバー材背面に跳ね上げ物(泥、雪等)が付着・堆積しにくい性状となっている。従って、雪道を走行中においても跳ね上げ物がカバー材の背面で大きく成長することがなく、荷台を車輌載せ降ろし姿勢(支持脚及びカバー材が下動している)にした状態でも、付着跳ね上げ物が路面上に接触するというトラブルは発生しない。
【0030】
尚、この請求項3のように貨物自動車として車輌運搬車を採用したものでも、カバー材はテールランプ装置の背面を被覆する程度の比較的小面積範囲のものでよいので、荷台を車輌載せ降ろし姿勢にした状態では該カバー材がかなり下方に位置するものの、カバー材は路面からかなり離間しているので、該カバー材が路面に接触することがない。
【発明の効果】
【0031】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明の跳ね上げ物付着防護構造は、車輌後部のテールランプ装置の背面を可撓性のある弾性板からなるカバー材で被覆し、該カバー材は、その上下各辺部又は左右各辺部を固定してその上下又は左右の中間領域が車輌走行時の風圧や振動で前後に弾性変形し得る状態で取付けたものである。従って、この請求項1の跳ね上げ物付着防護構造には、次のような効果がある。
【0032】
(1) 走行中に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物(泥、雪等)がカバー材によりテールランプ装置背面に接触するのを防止できる。
【0033】
(2) 後輪で跳ね上げた跳ね上げ物の一部はカバー材の背面に衝突するが、該カバー材は前後に弾性を有しているので、その弾性力により衝突した跳ね上げ物を撥ね返す作用があり、カバー材背面に付着する跳ね上げ物の量を極力少なくすることができる。
【0034】
(3) 車輌走行状態では、カバー材が風圧を受けることにより該カバー材の中間領域が前後に弾性変形する(風圧の変化で撓み量が変化する)一方、走行車輌の振動によりカバー材も共振して振動するようになり、それらの作用(カバー材の弾性変形作用と振動作用)によって、カバー材背面に跳ね上げ物が一時的に付着しても、その付着跳ね上げ物を振るい落とすことができる。
【0035】
尚、上記(2)及び(3)のように、カバー材背面に跳ね上げ物が付着・堆積しにくいと、該跳ね上げ物によるテールランプ装置(その電気ケーブルも含む)への悪影響を無くすことができるとともに、付着跳ね上げ物の掃除回数を少なくすることができる。
【0036】
(4) カバー材は、テールランプ装置背面を被覆し得る程度の比較的小面積のものでよいので、従来の大面積の垂れカバー(図17の符号142)に比して材料コストが安価となる。
【0037】
(5) カバー材は、テールランプ装置背面側の見えにくい小面積範囲にあるので、従来の大面積の垂れカバー(図17の符号142)に比して見映えがさほど悪くならない。
【0038】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明では、上記請求項1の跳ね上げ物付着防護構造において、カバー材の中間領域を車輌前方側に突出する曲面部としている。従って、この請求項2の発明では、上記請求項1の効果に加えて次の効果がある。
【0039】
(1) 走行中に後輪で跳ね上げた跳ね上げ物混じりの気流がカバー材の曲面部に沿って上下又は左右に逃げ易くなり、その気流に含まれる跳ね上げ物がカバー材背面に付着する量を少なくできる。
【0040】
(2) カバー材の中間領域を曲面部としていると、該カバー材の中間領域に弾性変形時の撓み代を十分に確保できるので、該カバー材が一層撓み易くなって、より一層の付着跳ね上げ物の振るい落とし機能を発揮できる。
【0041】
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、貨物自動車として上記説明の車輌運搬車を採用し、その支持脚部分に設置したテールランプ装置の背面を請求項1又は2のようにカバー材で被覆したものであるが、上記のようにカバー材の背面には跳ね上げ物が付着・堆積しにくい構造であるので、この請求項3の車輌運搬車(車輌載せ降ろし状態でテールランプ装置及びカバー材が路面にかなり近づく)であっても、上記請求項1又は2の跳ね上げ物付着防護構造を支障なく採用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本願第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造を採用した貨物自動車(車輌運搬車)の側面図である。
【図2】図1の車輌運搬車の分解図である。
【図3】図1の車輌運搬車に使用されている支持脚付近の拡大図である。
【図4】図3の平面視相当図で車幅半分を表す平面図である。
【図5】図4のV矢視拡大図である。
【図6】本願第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造の機能説明図である。
【図7】図1の車輌運搬車における荷台通常傾斜角状態の側面図である。
【図8】図1の車輌運搬車における荷台緩傾斜角状態の側面図である。
【図9】図8の状態における支持脚付近の拡大図である。
【図10】本願第2実施例の跳ね上げ物付着防護構造の側面図(図6相当図)である。
【図11】本願第3実施例の跳ね上げ物付着防護構造の平面図(図4相当図)である。
【図12】図11のXII矢視拡大図である。
【図13】本願第4実施例の跳ね上げ物付着防護構造を採用した貨物自動車の後部側面図である。
【図14】図13の一部拡大図である。
【図15】図14のXV−XV矢視相当図である。
【図16】本願第5実施例の跳ね上げ物付着防護構造を採用した図14相当図である。
【図17】従来の貨物自動車の後部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図1〜図16を参照して本願のいくつかの実施例を説明すると、図1〜図9には第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造を採用した貨物自動車(車輌運搬車)を示し、図10には第2実施例の跳ね上げ物付着防護構造を示し、図11〜図12には第3実施例の跳ね上げ物付着防護構造を示し、図13〜図15には第4実施例の跳ね上げ物付着防護構造を採用した貨物自動車を示し、図16には第4実施例(図14)の取付変形例を示した第5実施例の跳ね上げ物付着防護構造を示している。又、図1〜図9の第1実施例は本願の請求項1、2、及び3に対応するものであり、図10の第2実施例は本願の請求項1及び3に対応するのものであり、図11〜図12の第3実施例は本願の本願の請求項1、2、及び3に対応するものであり、図13〜図15の第4実施例と図16の第5実施例はそれぞれ本願の請求項1及び2に対応するものである。
【0044】
[図1〜図9の第1実施例]
図1〜図9の第1実施例で採用している貨物自動車は、図7又は図8に示すように、荷台4を後方移動及び後傾させて、該荷台4上に運搬すべき車輌Sを積み降ろしできるようにした車輌運搬車を対象にしている。
【0045】
まず、この第1実施例で採用している車輌運搬車の基本構成について、図1〜図3を参照して説明する。尚、本願実施例の説明において、前方又は前部とは車輌の前方側のことであり、後方又は後部とは車輌1の後方側のことであり、左右とは車輌の幅方向のことである。又、テールランプ装置17の背面及びカバー材18の背面とはそれぞれ車輌の前方側のことである。
【0046】
この車輌運搬車は、図1〜図3に示すように、シャシフレーム11を有する車輌1と、シャシフレーム11上のサブフレーム12に固定されたガイドレール2と、サブフレーム12の後端部においてそれぞれ傾動自在に支持された傾斜フレーム3と、傾斜フレーム3上に車輌前後方向に移動自在に支持された荷台4と、荷台4を傾斜フレーム3に対して車輌前後方向に移動させる伸縮シリンダ51を有し且つ該伸縮シリンダ51の伸縮動によって傾斜フレーム3を荷台4と共にガイドレール2に対して傾動させる傾動装置5とを備えて構成されている。
【0047】
シャシフレーム11と、サブフレーム12と、ガイドレール2と、傾斜フレーム3とは、それぞれ左右一対有しているが、図示例(図1〜図3)では側面視のみであるので、それぞれ1つしか表示していない。尚、他の実施例では、サブフレーム12を用いない構造のものも採用できる。
【0048】
左右のガイドレール2は、それぞれ所定長さを有する断面コ型のフレーム材が使用されている。この各ガイドレール2は、それぞれ車輌前後方向に向けた状態で左右のサブフレーム12に固定している。尚、サブフレーム12を使用しない場合には、ガイドレール2を直接シャシフレーム11に取付ける。
【0049】
各ガイドレール2の形状(案内軌条)は、伸縮シリンダ51の伸縮時に傾斜フレーム3をスムーズに(ほぼ等速で)傾動させ得るように設定されている。具体的には、各ガイドレール2は、前部に後方に向けて上り傾斜する上り傾斜部21と中間部に水平部22と後部に後方に向けて下り傾斜する下り傾斜部23とを連続して形成している。又、各ガイドレール2には、それぞれ全長に亘って内向きガイド溝24(図2)が形成されている。
【0050】
各傾斜フレーム3には、前後に長いH型鋼が使用されている。尚、この各傾斜フレーム3は、シャシフレーム11の全長よりかなり長い長さを有している。この各傾斜フレーム3の左右両側には、それぞれ全長に亘って内向きガイド溝と外向きガイド溝とが形成されている。又、この両傾斜フレーム3は、長さ方向の後端部付近において連結材33(図2)で連結されている。
【0051】
各傾斜フレーム3の後端部には、それぞれ下向きの支持脚9(左右一対ある)が取付けられている。尚、この支持脚9の詳細については後述する。
【0052】
この各傾斜フレーム3は、長さ方向中央部よりやや後方寄り位置をサブフレーム12の後部連結部13上に傾動自在に支持(支持部8)している。この実施例では、該支持部8は、各傾斜フレーム3の下面に設けたブラケット82をサブフレーム12の後部連結部13に設けたブラケット81にそれぞれ支軸83で枢着している。そして、この各傾斜フレーム3は、図1に示すようにシャシフレーム11(サブフレーム12)上において水平状態となる格納姿勢と、図7及び図8に示すように支持部8を中心にして支持脚9が接地した後傾姿勢との間で傾動し得るようになっている。
【0053】
荷台4は、車輌載せ台41の下面に左右2本の縦根太42を有している。この各縦根太42は、車輌載せ台41の左右幅の中心線から左右に所定等間隔を隔てた位置に配置されている。又、両縦根太42間の間隔は、前記両傾斜フレーム3の間隔よりかなり広い間隔に設定している。
【0054】
車輌載せ台41の後端部下面には、接地ローラ43が取付けられている。又、荷台4の後端部には、煽り板44を起伏自在に取付けている。
【0055】
そして、この荷台4は、後述する移動体6を介して各傾斜フレーム3に対して車輌前後方向に移動させ得るようにしている。
【0056】
傾動装置5は、上記ガイドレール2と、1本の伸縮シリンダ51と、該伸縮シリンダ51のチューブ52に取付けられていて各ガイドレール2の内向きガイド溝24に沿って移動する各ローラ55とを有している。
伸縮シリンダ51のチューブ52には、図2に示すように、その前端部及び後端部にそれぞれ左右外向きに突出する軸を設けて該各軸の先端部にそれぞれ左右一対とする前後2組のローラ(前ローラ57、後ローラ58)を設けている。そして、この伸縮シリンダ51は、シリンダロッド53を前部側に向けた状態で、該シリンダロッド53の先端部を各傾斜フレーム3の前端部に支軸で連結するとともに、シリンダチューブ52の前後各端部に設けた前後2組の各ローラ57、58をそれぞれ左右の傾斜フレーム3の各内向きガイド溝に沿って転動するようにして取付けている。従って、この伸縮シリンダ51は、伸縮時に傾斜フレーム3に対してシリンダチューブ52側が移動し、且つ前後・左右(合計4つ)の各ローラ57、58がそれぞれ各傾斜フレーム3の内向きガイド溝に沿って移動するので、側面視において伸縮シリンダ51が傾斜フレーム3に対して平行姿勢を維持したままで伸縮するようになっている。
【0057】
傾動装置5の一部となる左右1組のローラ55は、シリンダチューブ52の前部寄り位置においてそれぞれ短小な下向きアーム54の下端部に外向き状態で取付けられていて、それぞれガイドレール2の内向きガイド溝24内に嵌入されている。そして、この各ローラ55は、伸縮シリンダ51が伸縮すると、各ガイドレール2の内向きガイド溝24に沿って前後に移動し、そのとき伸縮シリンダ51を介して各傾斜フレーム3が支持部8を中心に傾動するようになっている。
【0058】
荷台4は、各傾斜フレーム3上を倍速装置Aによって伸縮シリンダ51の伸縮量の2倍の量だけ前後に移動し得るように設置されている。この倍速装置Aは、移動体6と左右のチエン7を有して構成されている。
【0059】
移動体6は、左右の傾斜フレーム3に沿って前後に移動し得るように設置されている。尚、この移動体6は、側面視において各傾斜フレーム3に対して常に平行姿勢を維持した状態で前後移動する。
【0060】
左右の各チエン7は、図2に示すようにそれぞれ2分割された第1分割チエン71と第2分割チエン72とを有している。
【0061】
この実施例では、各チエン7は、次のように取付けられている。図2に示すように、まず伸縮シリンダ51のチューブ52の前端部及び後端部には、それぞれシリンダチューブ52の左右各外側にチエン巻掛け用の滑車(合計4つ)56,56が取付けられている。そして、一方の第1分割チエン71は、後側の滑車56に巻掛けた状態で該第1分割チエン71の前側端部を移動体6に固定する一方、該第1分割チエン71の後側端部を傾斜フレーム3に固定している。又、他方の第2分割チエン72は、前側の滑車56に巻掛けた状態で該第2分割チエン72の前側端部を移動体6に固定する一方、該第2分割チエン72の後側端部を傾斜フレーム3に固定している。
【0062】
荷台4は、移動体6に対して荷台前端部寄り位置において支軸64(図1)により一点で枢着されている。
【0063】
そして、この倍速装置Aは、伸縮シリンダ51が伸縮すると、移動体6を前後の各滑車56,56及びチエン7(第1分割チエン71及び第2分割チエン72)によって伸縮シリンダ51の伸縮量の2倍の長さだけ前後移動せしめ、従って荷台4も移動体6とともに伸縮シリンダ51の伸縮量の2倍の長さだけ前後移動せしめるようになっている。
【0064】
支持脚9は、左右の各傾斜フレーム3のそれぞれ後端部に同じものが1つずつ設置されている。又、この左右の支持脚9は、連結材で連結されていて、該各支持脚9が同時に前後揺動するようになっている。尚、左右の支持脚9は同形のものが使用されているので、以下の説明では車輌後方側から見て左側の支持脚9で説明する。
【0065】
この支持脚9は、図3に拡大図示するように、上部側に前後に向く横向き腕部90aと該横向き腕部90aの前端から下方に延出させた下向き脚部90bとを有した逆L形部材90を使用している。そして、この支持脚9は、横向き腕部90aの後端部を傾斜フレーム3の後端部下面において支軸91(図1)で枢着して、下向き脚部90bが前後に揺動し得るように装着している。
【0066】
逆L形部材90における横向き腕部90aと下向き脚部90bとの角部には、荷台受けローラ92を設けている。この荷台受けローラ92は、荷台4の縦根太42を受ける(載せる)ものであり、該荷台受けローラ92上に荷台の縦根太42が載っている状態では、後述するように支持脚9の前方側揺動を禁止するようになっている。
【0067】
逆L形部材90における下向き脚部90bの下端部には、接地ローラ93を設けている。この接地ローラ93は、地面に接地した状態で転動し、支持脚9の前後揺動動作をスムーズに行わせるものである。
【0068】
尚、この支持脚9における荷台受けローラ92の上端から接地ローラ93の下端までの長さは、特に限定するものではないが50cm程度が適当である。
【0069】
支持脚9の下向き脚部90bには、後述(図8、図9)するように傾斜フレーム3が最大後傾し且つ支持脚9の下向き脚部90bが前方側に最大揺動した時点で、傾斜フレーム3の下面に衝合して該支持脚9がそれ以上、前方側に揺動するのを禁止するためのストッパー15(図3)を取付けている。
【0070】
左右の各支持脚9には、図3及び図4に拡大図示するように、車幅方向に長い後部バンパー16が装着されている。この後部バンパー16には揺動アーム162が取付けられていて、この揺動アーム162の先端部を支持脚9の下向き脚部90bに支軸163(図3)で枢支していることにより、後部バンパー16を支持脚9より後側において前後に揺動自在なる状態で装着している。
【0071】
後部バンパー16の左右各端部は、図4に示すように左右の各支持脚9の位置よりそれぞれ外側に所定長さだけ突出させている。この後部バンパー16における支持脚9より外側の突出部分は、後述するようにテールランプ装置(コンビネーションランプ)17の取付スペースとなるものである。又、後部バンパー16の左右各外端部には、それぞれ接地ローラ161が取付けられている。
【0072】
後部バンパー16は、付勢部材(コイルバネ)164により後部バンパー16側の接地ローラ161が支持脚9側の接地ローラ93に近接する方向に付勢している。この付勢部材164は、支持脚9の下向き脚部90bと後部バンパー16側の揺動アーム162間に介設されている。後部バンパー16の揺動アーム162は、該揺動アーム162と支持脚9の下向き脚部90b間に設けたストッパー機構(係合部166と係合受部167)によって、それ以上、図3の右回転方向に回転しないようにしている。
【0073】
後部バンパー16上には、各支持脚9よりそれぞれ外側部分において左右一対のテールランプ装置(コンビネーションランプ)17が取付けられている。この各テールランプ装置17は、車幅方向の左右外端寄り近傍に設置されていて、左右の各後輪14のほぼ直後方に位置している。
【0074】
このテールランプ装置17の複数(図示例では3つ)のランプ171,171,171部分には、背面側からそれぞれ電気ケーブル172が接続されているとともに、テールランプ装置背面側には各電気ケーブル172等を保護するガード板173が設けられている。そして、本願では、該ガード板173を含めてテールランプ装置17の背面と表現している。
【0075】
尚、この第1実施例では、テールランプ装置17を後部バンパー16上に取付けているが、該後部バンパー16が支持脚9に取付けられている関係で、該テールランプ装置17が間接的に支持脚9部分に設けられている(本願請求項3に構成に合致する)。
【0076】
支持脚9は、荷台格納状態(図1、図3)において支持脚格納装置10により前方に揺動させた状態で格納されるようになっている。尚、支持脚格納装置10の構成及び機能については、本件出願人が既に提案している特願2008−243831において詳細に説明しているが、本願の跳ね上げ物付着防護構造に直接関係がないので、支持脚格納装置10についての詳細な説明は省略する。尚、支持脚格納装置10を機能させる前提として、荷台4が格納位置にあるときには支持脚9が前方に揺動し得るようにする必要があるが、そのために荷台格納状態で支持脚9の荷台受けローラ92に対応する位置の荷台の縦根太42の下面に、図1及び図3に示すように上向き凹部(段差部)42aを設けている。
【0077】
次に、第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造を説明する前に、この第1実施例で使用されている車輌運搬車の基本的な作動方法を説明する。
【0078】
図1に示す荷台格納状態では、伸縮シリンダ51が全縮小していて、下向きアーム54のローラ55がガイドレール2の前部寄り位置(上り傾斜部21の前方)にあって傾斜フレーム3が水平姿勢となっており、且つ荷台4も最前位置において水平姿勢を維持している。
【0079】
荷台4を車輌積込み姿勢まで作動させるには、伸縮シリンダ51を伸長させる。すると、シリンダチューブ52が後方に移動し、下向きアーム54に取付けられているローラ(左右一対ある)55がガイドレール2の上り傾斜部21を経て水平部22まで移動すると、図7に示すように支持脚9が接地するまで傾斜フレーム3を後傾させるとともに、荷台4が倍速装置Aにより伸縮シリンダ伸長量の2倍長さだけ後方移動して荷台後端部の接地ローラ43が地面に接地する。
【0080】
この図7の状態では、支持脚9の下向き脚部90bが傾斜フレーム3に対して下向きに角度略90°方向に向いた姿勢で維持されている。即ち、支持脚9の荷台受けローラ92が荷台の縦根太42で上動するのを規制されていて、支持脚9が支軸91を中心にして前方側に揺動するのを禁止しているので、支持脚9の姿勢が安定した状態で該支持脚9による傾斜フレーム後端部の支持高さが高くなっている。尚、図7の時点では、傾斜フレーム3の対地角が約10°であるので、支持脚9の下向き脚部90bも鉛直姿勢から角度約10°だけ前方側に揺動しているが、そのときの支持脚9による傾斜フレーム後端部の支持高さは、支持脚9の長さ(例えば50cm)よりごく短い程度の「高支持状態」となっている。その後、煽り板44を後方に倒伏して地面に接地させると、一般車高車Sを積込み得る姿勢(荷台対地角が10°程度)となる。
【0081】
又、荷台4を図7の状態からさらに緩傾斜させるには、伸縮シリンダ51をさらに伸長させる。すると、荷台4の接地ローラ43が接地したまま荷台4がさらに後方移動して、荷台4の傾斜角が傾斜フレーム3の傾斜角より小さくなっていくが、荷台4は傾斜フレーム3(実質は移動体6)に対して荷台前端部の一点(支軸64の位置)を中心にして傾動し得るようになっているので、荷台4を傾斜フレーム3に対して支障なく傾動させることができる。又、荷台4の傾斜角が傾斜フレーム3の傾斜角より小さくなると、支持脚9の荷台受けローラ92に対する押圧規制が解除されて支持脚9が支軸91を中心にして前側に揺動可能となる。
【0082】
そして、荷台4がさらに後方移動して、図8及び図9に示すように荷台前端部が傾斜フレーム3の後端部付近に達したときに、伸縮シリンダ51の伸長が停止して荷台4の後方移動が完了する。
【0083】
この図8(及び図9)の状態では、支持脚9が前方側に大きく揺動して、支持脚9による傾斜フレーム後端部の支持高さが非常に低くなっている(「低支持状態」となる)。因に、図8の状態では、荷台4の前部がかなり低位置まで降下していて、荷台4が地上近傍の略水平位置まで降下しており、該荷台4が非常に緩い傾斜角(例えば2〜3°程度)で安定している。この図8の荷台緩傾斜状態では、一般車高車は当然であるが、低車高車であっても何ら問題なく乗り込ませることができる。
【0084】
尚、荷台4は、図7に示す通常傾斜角状態から図8に示す緩傾斜角状態までの任意の傾斜状態で車輌を積込み得るようになっている。
【0085】
荷台4を車輌積込み姿勢状態から格納するには、伸縮シリンダ51を縮小させることで車輌積込み時の動作とは逆順序で格納させることができる。
【0086】
ところで、上記第1実施例で使用されている車輌運搬車では、図3及び図4に拡大図示するように、テールランプ装置(コンビネーションランプ)17が支持脚9側の後部バンパー16上に取付けられている。そして、通常は、テールランプ装置17の背面が剥き出し状態で露出しているが、このようにテールランプ装置背面が剥き出し状態のままであると、上記「背景技術」の項で説明したように、例えば雪道走行時にはテールランプ装置背面に後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物が付着・堆積して大塊状に固着するようになり(例えば図17の符号R)、その大塊状固着跳ね上げ物によって、上記「発明が解決しようとする課題」で説明した各種のトラブルを起こす原因になる。
【0087】
特に、図1〜図3に示す車輌運搬車のように、テールランプ装置17が後部バンパー16上に設置されたものでは、通常走行時において該テールランプ装置17がかなり低位置にあるので、後輪14からの跳ね上げ物が大量に接触し易くなる。そして、テールランプ装置背面に大塊状の跳ね上げ物が固着した状態(寒冷地では氷状に硬くなる)で、図7又は図8(図9に拡大図示)に示すように後部バンパー16(接地ローラ161)が接地するまで降下するとテールランプ装置17も路面にかなり近づき、テールランプ装置背面の大塊状固着跳ね上げ物の下端部が路面上に接触する(押付けられる)ことがある。このようにテールランプ装置背面で固着している大塊状跳ね上げ物が路面上に押付けられると、その反力でテールランプ装置17付近が損傷する虞れがある。
【0088】
そこで、この第1実施例に使用されている車輌運搬車には、テールランプ装置17の背面に、後輪14による跳ね上げ物が付着しにくくなるようにした跳ね上げ物付着防護構造を装備している。
【0089】
図1〜図9に示す第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造は、図3〜図5に拡大図示するように、テールランプ装置17の背面を可撓性のある弾性板からなるカバー材18で被覆したものである。
【0090】
このカバー材18は、材質としてゴムやプラスチックが使用可能であり、適度の可撓性と弾性とを兼備した薄板状のものが採用されている。
【0091】
このカバー材18の大きさは、テールランプ装置背面の全面積を被覆し得る程度で比較的小面積のものでよい。又、このカバー材の表面(特に車輌前方側となる面)は、跳ね上げ物が付着しにくい平滑面としている。
【0092】
そして、この第1実施例で使用されているカバー材18は、図3〜図5に拡大図示するように、テールランプ装置17の背面を被覆した状態で、該カバー材18の上下各辺部18a,18bをそれぞれ止具(固定ボルト)19,19で固定して、カバー材18の上下中間領域18eが車輌走行時の風圧や振動で前後に弾性変形し得る状態で取付けている。即ち、この第1実施例のカバー材取付形態は、カバー材上辺部18aをテールランプ装置17の上面部に止具19(図示例では左右3箇所)で固定している一方、カバー材下辺部18bを後部バンパー16の背面側に設けた取付板16aに止具19(図示例では左右3箇所)で固定している。
【0093】
又、この第1実施例で使用されているカバー材18は、その上下中間領域18eが側面視(図3、図6)において車輌前方側に突出する曲面部となるように取付けている。
【0094】
この第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造は、次のように機能する。即ち、この跳ね上げ物付着防護構造を装備した車輌運搬車が雪道を走行すると、図1に矢印Bで示すように後輪14で路上の泥や雪を後方に跳ね上げて、その跳ね上げ物がテールランプ装置17の方向にも飛散するが、そのときテールランプ装置17の背面がカバー材18で被覆されているので、該跳ね上げ物がカバー材18で阻止されてテールランプ装置背面にはほとんど接触しない(ごく一部の跳ね上げ物はカバー材の左右側部の隙間からテールランプ装置背面側に回り込むことがあるが、その量は微々たるものである)。
【0095】
又、後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物の一部は、図6に矢印Cで示すように、その跳ね上げスピードと車輌の走行スピードにより、カバー材18の背面(車輌前方側の面)に衝突するが、該カバー材18は前後に弾性を有しているのでその弾性力により衝突した跳ね上げ物を撥ね返す作用があり、カバー材背面に付着する跳ね上げ物の量を極力少なくする作用が生じる。
【0096】
さらに、車輌走行状態では、カバー材18が風圧を受けることにより該カバー材の中間領域18eが前後に弾性変形する(風圧の変化で撓み量が変化する)一方、走行車輌の振動によりカバー材18も共振して振動するようになる。即ち、カバー材18の中間領域18eが図6の矢印Dのように前後に振動する。従って、カバー材背面に跳ね上げ物が一時的に付着(図6の符号Ra)しても、カバー材18の弾性変形作用と振動作用によって、その付着跳ね上げ物Raを振るい落とす作用が生じる。
【0097】
又、車輌運搬車の走行中には、テールランプ装置17を被覆しているカバー材18の背面に風圧を受けるが、カバー材18の中間領域18eを前方に突出する曲面部としていると、図6に矢印E,Eで示すようにカバー材18に衝突した跳ね上げ物混じりの気流が該曲面部に沿って上下に逃げ易くなり、その気流E,Eに含まれる跳ね上げ物がカバー材背面に接触する量を少なくできる。
【0098】
さらに、カバー材18の中間領域18eを曲面部としていると、該カバー材の中間領域18eに弾性変形時の撓み代を十分に確保でき、該カバー材18が一層撓み易くなる。
【0099】
この第1実施例の跳ね上げ物付着防護構造では、カバー材18に有する上記各機能により、雪道のような条件の悪い状況下での走行時でも、テールランプ装置17の背面側に跳ね上げ物(泥や雪)が付着しにくくなり、従来のように跳ね上げ物が大塊状に固着した場合の各種問題点を未然に解消できる。
【0100】
又、この第1実施例で使用している車輌運搬車において、図7又は図8(図9に拡大図示)に示すように車輌載せ降ろし可能状態では、傾斜フレーム3が後傾して支持脚9が接地することにより、テールランプ装置17が路面にかなり近づくが、カバー材18によりテールランプ装置17の背面付近に跳ね上げ物が付着しにくい構造となっているので、支持脚9が接地しても何ら支障がない。即ち、テールランプ装置背面側に大塊状の跳ね上げ物が固着しないので、大塊状固着跳ね上げ物の下部が路面に押付けられてテールランプ装置を損傷させるというトラブルは発生しない。
【0101】
尚、この第1実施例で使用している車輌運搬車では、支持脚9として前後に揺動させて傾斜フレーム3の傾斜角度を変更させ得るものを採用しているが、他の実施例では、支持脚9を傾斜フレーム3の後端部に揺動不能に固定したものを採用してもよい。又、この第1実施例では、テールランプ装置17を支持脚9に取付けた後部バンパー16上に設置しているが、他の実施例では、後部バンパー16がないものでもよく、その場合はテールランプ装置17を支持脚9に直接取付ければよい。
【0102】
[図10の第2実施例]
図10の第2実施例の跳ね上げ物付着防護構造は、上記第1実施例の変形例を示したものであり、カバー材18の取付対象となる貨物自動車は第1実施例の車輌運搬車である。尚、図10は第1実施例の図6相当図である。
【0103】
この第2実施例の跳ね上げ物付着防護構造でも、第1実施例と同様に支持脚に取付けた後部バンパー16の上部にテールランプ装置17を設置し、該テールランプ装置17の背面側をカバー材18で被覆している。
【0104】
又、図10の第2実施例で使用されているカバー材18も、第1実施例のものと同様に可撓性のある弾性板が用いられている。そして、このカバー材18は、横長平面状のものをテールランプ装置17の背面から若干間隔をもって上下向きに配置し、その上辺部18a及び下辺部18bをそれぞれ止具(固定ボルト)19,19で固定して、カバー材の上下中間領域18eが前後に弾性変形(矢印D)し得る状態で取付けている。尚、カバー材18の上辺部18aはテールランプ装置17の上面部から前方に突出させた取付板17aの前端部に固定し、カバー材18の下辺部18bは後部バンパー16の背面に取付けた取付板16aに固定している。
【0105】
この第2実施例のカバー材18では、第1実施例の曲面部を有したカバー材より前後の撓み代が少ないが、この第2実施例のカバー材18でも中間領域18eが前後に弾性力を有しているので、矢印Cで示すように跳ね上げ物がカバー材18の背面に衝突したときに撥ね返し作用が発生するとともに、走行時に受ける風圧によっても中間領域18eが前後に振動(矢印D)する作用が発生する。
【0106】
従って、この第2実施例のものでは、上記第1実施例の形態のカバー材(前方に突出する曲面部がある)より跳ね上げ物付着防護機能が若干劣るものの、カバー材18の背面に跳ね上げ物が付着・堆積するのを防護し得る機能がある。又、この第2実施例のカバー材18は、平面形状であるので取付けが比較的簡単となる。
【0107】
[図11〜図12の第3実施例]
図11〜図12の第3実施例の跳ね上げ物付着防護構造も、上記第1実施例の変形例を示したものであり、カバー材18の取付対象となる貨物自動車は第1実施例の車輌運搬車である。尚、図11は第1実施例の図4相当図であり、図12は同図5相当図である。
【0108】
この第3実施例の跳ね上げ物付着防護構造でも、第1実施例と同様に支持脚9に取付けた後部バンパー16の上部にテールランプ装置17を設置し、該テールランプ装置17の背面側をカバー材18で被覆している。
【0109】
又、図11〜図12の第3実施例で使用されているカバー材18も、第1実施例のものと同様に可撓性のある弾性板が用いられている。そして、この第3実施例では、カバー材18をテールランプ装置17の背面から若干間隔を持たせた状態で、該カバー材18の左右各側辺部18c,18dをそれぞれテールランプ装置17の左右側面部に止具(固定ボルト)19,19で固定して、カバー材の左右中間領域18eが前後に弾性変形(符号D)し得る状態で取付けている。
【0110】
又、この第3実施例のカバー材18は、その左右中間領域18eを平面視(図11)において車輌前方側に突出する曲面部としている。尚、カバー材18は、左右幅の方が上下幅より長いので、カバー材18の左右各側辺部18c,18dを固定したものでは前後の撓み代を大きくとれる。
【0111】
この第3実施例のカバー材18でも、その左右中間領域18eが前後に弾性力を有しているので、矢印Cで示すように跳ね上げ物がカバー材18の背面に衝突したときに撥ね返し作用が発生するとともに、走行時に受ける風圧によっても中間領域18eが前後に振動(矢印D)する作用が発生する。
【0112】
又、車輌運搬車の走行中には、テールランプ装置17を被覆しているカバー材18の背面に風圧を受けるが、カバー材18の中間領域18eを前方に突出する曲面部としているので、、図11に矢印E,Eで示すようにカバー材18に衝突した跳ね上げ物混じりの気流が該曲面部に沿って左右に逃げ易くなり、その気流E,Eに含まれる跳ね上げ物がカバー材背面に接触する量を少なくできる。
【0113】
従って、この第3実施例の跳ね上げ物付着防護構造でも、上記第1実施例のものと同様にカバー材18の背面に跳ね上げ物が付着・堆積するのを防護し得る機能がある。
【0114】
[図13〜図15の第4実施例]
図13〜図15の第4実施例では、貨物自動車として一般的な荷台固定型のものを採用している。
【0115】
この第4実施例の貨物自動車では、左右のテールランプ装置17が左右のシャシフレーム11の外面からそれぞれ支持台11a(図15)を介して外側に突出する状態で取付けられている。尚、この場合、テールランプ装置17の下方は大きく開放されているとともに、テールランプ装置17の上面と荷台4の下面との間に隙間を有している。
【0116】
そして、この第4実施例の跳ね上げ物付着防護構造でも、テールランプ装置17の背面を可撓性のある弾性板からなるカバー材18で被覆している。尚、第4実施例のカバー材18の第1実施例のものと同じ材質である。
【0117】
このカバー材18は、その上辺部18a及び下辺部18bをそれぞれテールランプ装置17の上面と下面にそれぞれ止具(固定ボルト)19,19で固定して、その上下中間領域18eが前後に弾性変形し得る状態で取付けている。又、カバー材18の上下中間領域18eは、第1実施例のものと同様に前方側に突出する曲面部としている。
【0118】
尚、この第4実施例の跳ね上げ物付着防護構造は、上記第1実施例のものに比してカバー材18の取付車種が異なるものの、基本的構成は第1実施例のものと同じである。
【0119】
この第4実施例の跳ね上げ物付着防護構造でも、雪道走行時に後輪14で跳ね上げた跳ね上げ物(矢印B)がテールランプ装置17の背面付近に飛散して、その一部がカバー材18に接触するが、カバー材18に可撓性と弾性力があるので、第1実施例のカバー材と同様な機能を発揮する。
【0120】
即ち、跳ね上げた跳ね上げ物の一部がカバー材18の背面に衝突した際に、該跳ね上げ物を図14に矢印Cで示すように撥ね返す作用がある。又、車輌走行中には、カバー材18が風圧を受けることにより該カバー材の中間領域18eが前後に弾性変形する(風圧の変化で撓み量が変化する)一方、走行車輌の振動によりカバー材18も共振して振動(図14の矢印D)し、付着跳ね上げ物Raを振るい落とす作用が生じる。又、車輌走行中には、テールランプ装置17を被覆しているカバー材18の背面に風圧を受けるが、カバー材18の中間領域18eを前方に突出する曲面部としていると、図14に矢印E,Eで示すようにカバー材18に衝突した跳ね上げ物混じりの気流が該曲面部に沿って上下に逃げ易くなる(その気流E,Eに含まれる跳ね上げ物がカバー材背面に接触する量を少なくできる)。さらに、カバー材18の中間領域18eを曲面部としていると、該カバー材の中間領域18eに弾性変形時の撓み代を十分に確保でき、該カバー材18が一層撓み易くなる。
【0121】
従って、この第4実施例の跳ね上げ物付着防護構造では、カバー材18に有する上記各機能により、雪道のような条件の悪い状況下での走行時でも、テールランプ装置17の背面側に跳ね上げ物(泥や雪)が付着しにくくなる。
【0122】
[図16の第5実施例]
図16の第5実施例の跳ね上げ物付着防護構造は、第4実施例(図14)の取付変形例を示すものである。即ち、この図16の第5実施例では、テールランプ装置17を貨物自動車の荷台4の後端部下面に取付けたものである。この場合、荷台4の後端部下面に取付台4aを固定して、該取付台4aでテールランプ装置17を支持しているので、テールランプ装置17の上面と荷台4の下面との間は取付台4aで塞がれている。
【0123】
この図16の第5実施例でも、テールランプ装置17の背面をカバー材18で被覆しているが、このカバー材18は第4実施例(図13〜図15)のカバー材と同形態のものである。
【0124】
この第5実施例のものでは、車輌走行中にカバー材18に衝突した跳ね上げ物混じりの気流Eがカバー材18の上方側には逃げにくいが、その他の機能は上記第4実施例のものと同じである。
【0125】
従って、この第5実施例(図16)のものでも、カバー材背面への跳ね上げ物付着防護機能を十分に発揮するものである。
【符号の説明】
【0126】
1は貨物自動車(車輌運搬車)、2はガイドレール、3は傾斜フレーム、4は荷台、5は傾動装置、6は移動体、11はシャシフレーム、12はサブフレーム、14は後輪、16は後部バンパー、17はテールランプ装置、18はカバー材、18aは上辺部、18bは下辺部、18c,18dは側辺部、18eは中間領域、19は止具(固定ボルト)、51は伸縮シリンダである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌後部にテールランプ装置を設けた貨物自動車において、
前記テールランプ装置の背面を可撓性のある弾性板からなるカバー材で被覆しているとともに、
該カバー材は、その上下各辺部又は左右各辺部を固定してカバー材の上下又は左右の中間領域を車輌走行時の風圧又は/及び振動で前後に弾性変形し得る状態で取付けている、
ことを特徴とする貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記カバー材の前記中間領域を車輌前方側に突出する曲面部としている、
ことを特徴とする貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、
貨物自動車として、車輌のシャシフレームの後端部位置において傾動自在に支持された傾斜フレームと、該傾斜フレーム上に車輌前後方向に移動自在に支持された荷台と、前記傾斜フレームの後端部に設置された支持脚とを備え、さらに該支持脚部分に前記テールランプ装置を設けた車輌運搬車を採用している、
ことを特徴とする貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造。
【請求項1】
車輌後部にテールランプ装置を設けた貨物自動車において、
前記テールランプ装置の背面を可撓性のある弾性板からなるカバー材で被覆しているとともに、
該カバー材は、その上下各辺部又は左右各辺部を固定してカバー材の上下又は左右の中間領域を車輌走行時の風圧又は/及び振動で前後に弾性変形し得る状態で取付けている、
ことを特徴とする貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記カバー材の前記中間領域を車輌前方側に突出する曲面部としている、
ことを特徴とする貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、
貨物自動車として、車輌のシャシフレームの後端部位置において傾動自在に支持された傾斜フレームと、該傾斜フレーム上に車輌前後方向に移動自在に支持された荷台と、前記傾斜フレームの後端部に設置された支持脚とを備え、さらに該支持脚部分に前記テールランプ装置を設けた車輌運搬車を採用している、
ことを特徴とする貨物自動車後部の跳ね上げ物付着防護構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−189860(P2011−189860A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58599(P2010−58599)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】
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