説明

貯水施設の被覆構造

【課題】貯水施設の水面全体を合成樹脂製シートで覆う従来の技術においては、合成樹脂製シートは水面ばかりではなく貯水施設内面の周囲も覆う構造であるために、広大な面積のシートが必要であり、しかもそれを貯水施設の上端周囲に取り付けるという施工が要求される問題がある。さらに、通常時、貯水施設内面の周囲を覆っている合成樹脂製シートは風の影響を受けてあおられるという問題があるので、その解決を図る。
【解決手段】 水面に浮くことができる扁平な浮力体1の周囲の少なくとも1側に、水中に垂下する垂下体3を取り付け、この垂下体3に錘2を設けて天蓋ブロック5とし、この天蓋ブロック5を水面上に連続させて浮設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用水や工業用水等の貯水施設における水面の被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
貯水施設においては、落ち葉や粉塵等による水質汚染、さらにはアオコ等の藻の発生を抑制し、また、用水の蒸発を防ぐと共に取水、散水設備の目詰まり等を防ぐ等の目的から上面を覆うことが行われている。
このような被覆構造の従来の技術として、水面上に載置される合成樹脂製浮体と、この浮体の上面に配置される合成樹脂製シートとの組み合わせの技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−19087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の技術においては、合成樹脂製シートは水面ばかりではなく貯水施設内面の周囲も覆う構造であるために、広大な面積のシートが必要であり、しかもそれを貯水施設の上端周囲に取り付けるという施工が要求される問題がある。
さらに、通常時、貯水施設内面の周囲を覆っている合成樹脂製シートは風の影響を受けてばたばたとあおられることになり、その対策が必要となるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、水面に天蓋ブロックを直接浮設する手段を提供して被覆することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、水面に浮くことができる扁平な浮力体の周囲の少なくとも1側に、水中に垂下する垂下体を取り付け、この垂下体に錘を設けて天蓋ブロックとし、この天蓋ブロックを連続させて浮設したことを特徴とする。
さらに、前記浮力体を、独立気泡による発泡体の下部に連続気泡による発泡体を一体に取り付けた構造としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
これにより、本発明は、水面に浮く浮力体の少なくとも1側に水中に垂下する錘を設けた天蓋ブロックを連続させて浮設したことにより、水中に錘を垂下させて安定した水面被覆となると共に施工の容易な被覆構造とすることができる。
また、被覆構造の内側に風が吹き込むことがなく、それによるまくれあがりの発生がないという効果がある。万一、設計条件を超す風が吹いたり、低気圧となって上方に揚力が作用した場合には、浮力体の下部の連続気泡体の発泡体部が水面と接触しているためにその粘着効果によって揚力に対抗することができる効果を有する。
【0007】
さらに、ブロック体として連結させたことにより部分交換が可能であり、耐久性のある被覆構造を構築することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本発明による実施例について説明する。
図1は実施例を示す説明図である。
図において、1は所定の大きさの平板状の多角形、おもに四角形に形成した浮力体であり、発泡スチロール等の発泡樹脂体や気体を封入したゴム製や合成樹脂製の扁平風船体等の水より比重の小さい材料製もしくは水に浮く構造体で、耐久性のあるものであればどのようなものでもよい。
【0009】
本実施例では、独立気泡による発泡体101の下部に連続気泡による発泡体102を一体に取り付けた構造としてある。この構造によると、台風のような低気圧の直撃があった場合、大気圧より低い状態の個所が発生することが考えられる。その場合の揚圧力による浮き上がり対策として、連続気泡による水面との接触面積の増大をはかり、粘着効果を得ることができるものである。
【0010】
2はこの浮力体1の周囲に取り付けて垂下させた垂下体であり、ゴムや合成樹脂製の幕状体や暖簾状体等の垂下体2の下端に錘3を取り付けた構造である。図面では垂下体2は幕状体を示している。
上記垂下体2は、周囲側面全てから垂下させてもよく、また、浮力体1の形状が四角形の場合にはその直交する2側面から垂下させた状態でもよい。
【0011】
このようにして所定の大きさの天蓋ブロック5を構成し、この天蓋ブロック5には、天蓋ブロック同士を連続させる連結側部を接続具6によって接続する。
この連結は、貯水施設水面上を覆う全ての天蓋ブロック5の縦横両方向をそれぞれ連結させることが原則であるが、必ずしも両方向でなくてもよく、例えば縦方向だけ、もしくは横方向だけを連結させるような構造でもよい。その連結構造によって上記接続具6の設置位置が決定される。
【0012】
この接続具6は例えば、ファスナーや面ファスナーであったり、ロープ等のひも状体によって結び付けたり、さらには連結具によって係止するようにしたりする構造等その他どのような構造でもよく、簡単に操作ができしかも耐久性のある構造であればよい。
また、この接続具6の天蓋ブロック5への取り付けは、接続具の構造によって適宜に選択すればよく、例えば、図2に示す如く面ファスナーの場合には面ファスナーの一側を天蓋ブロックの側端に接着、鋲打ち、ミシン等で取り付ければよく、さらには、取り付け片を介して接続具6を天蓋ブロック5に取り付けてもよい。
【0013】
ひも状体の場合には図3に示すように単にひも状体を通す係止孔を天蓋ブロックの側端に設けて結び付けるか締結具で締結するようにすればよい。この係止孔は、天蓋ブロックの端部に直接設けるかもしくは側端に取り付けた係止片に所定間隔にあけた構造としてもよい。
また、ひも状体による接続は、図4に示す如く、ひも状体の端部をそれぞれ天蓋ブロックの側端に係止リング等の係止具を設けてそれを介して接続してもよい。このような接続に用いるひも状体は、伸縮性のあるものが望ましい。例えば、図9に示す如く、天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂等の弾性体による支持体61中に金属製のチェーン62を、それを構成する各リングが接触しないように埋設したロープ状の材料で構成されているものや図示しないが、支持体中にチェーンでなくコイルばねを埋設した構造のもの等がある。
【0014】
このようにした天蓋ブロック5を貯水施設7の水面上全面を覆うように図5に示す如く、縦横に連続して配置し、それら天蓋ブロック5を接続部6によって接続して連結させるもので、上記した如く、全ての天蓋ブロック同士を連続させて貯水槽施設7の水面を覆う。
なお、水面下から発生するガスを抜くガス孔を設けておくとよく、ガス孔を天蓋ブロック5に形成してもよいが、接続部6の隙間を利用してガス抜き孔とするとよい。
【0015】
上記で説明した錘3は、浮力体1に取り付けた垂下体2に取り付けたが、この垂下体2は、図6に示す如く、浮力体1の全体を覆うシート体8の端部を垂下させて垂下体としてもよい。なお、この場合も周囲全周にわたって垂下させるものとし、錘は、少なくとも直交する2側面の下端に取り付ける。
この場合、シート体8は浮力体1上を移動しないように浮力体1の周囲に固着させておくとよい。これによって、風によってシート体があおられるようなことがなくなる。なお、接続具6は必ずしも必要ではないが、取り付ける場合はシート体8に取り付けてもよい。
【0016】
また、図7に示す如く、シート体8で複数の接続した浮力体1を覆うようにしてもよく、さらには全部の浮力体1を一枚のシート体8で覆うようにしてもよい。この場合、連続した浮力体1同士は、上記と同様に接続させておく。また、上記と同様に、シート体8の端部を垂下させて垂下体とする。
なお、このようにシート体8を用いる場合には、浮力体1は、必ずしも平板状である必要はなく、中央部があいている枠状体のような構造であってもよい。
【0017】
以上の説明において、浮設された天蓋ブロック5は、風による浮き上がりやまくれあがりさらには吹き寄せを防ぐために周囲の天蓋ブロック5の外周側に金属網やロープ等による係留索9を配置して貯水施設の周囲から所定間隔でおさえるように係止させておく。
上記各説明において、図1に示す如く、各天蓋ブロック5を接続具6で互いに接続して連続させたが、図8に示す如く、接続具を設けず各天蓋ブロックをそれぞれ独立させた状態で浮設させ、各天蓋ブロック5の錘3だけでそれぞれ独立して安定させることもできる。この場合は、天蓋ブロック5の錘3はできるだけ充分に設けたほうがよく、全側部に設けることが好ましいが、少なくとも対向する側部には設けておく。
【0018】
また、上記各説明では、すべての天蓋ブロック5に錘3を付けた場合で説明したが、天蓋ブロック5を接続具6で接続して1番外側になる、つまり貯水槽の内壁面側になる天蓋ブロック5だけに錘3を取り付けてその間の中間に位置する天蓋ブロックには錘をつけない構成でもよい。この場合、その錘をつける外側の天蓋ブロックの錘は天蓋ブロックの外側だけに取り付けたものでもよいが、その外側以外、例えばその外側と対向する側にも取り付けておくと安定がよく、さらには、周囲全体に取り付けておくとなおよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例を示す説明図
【図2】天蓋ブロックの接続状態例の説明図
【図3】天蓋ブロックの接続状態例の説明図
【図4】天蓋ブロックの接続状態例の説明図
【図5】天蓋ブロックの接続状態例の平面説明図
【図6】シート体で覆った天蓋ブロックの説明図
【図7】シート体で複数の天蓋ブロックを覆った説明図
【図8】各天蓋ブロックを独立状態で浮設した状態の説明図
【図9】接続具の例を示す拡大部分断面説明図
【符号の説明】
【0020】
1 浮力体
2 錘
3 垂下体
5 天蓋ブロック
6 接続具
7 貯水槽
8 シート体
9 係留索

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に浮くことができる扁平な浮力体の周囲の少なくとも1側に、水中に垂下する垂下体を取り付け、この垂下体に錘を設けて天蓋ブロックとし、この天蓋ブロックを水面上に連続させて浮設したことを特徴とする貯水施設の被覆構造。
【請求項2】
請求項1において、浮力体を、独立気泡による発泡体の下部に連続気泡による発泡体を一体に取り付けた構造としたことを特徴とする貯水施設の被覆構造。
【請求項3】
請求項1において、天蓋ブロックの側部を接続具によって天蓋ブロック同士を接続可能としたことを特徴とする貯水施設の被覆構造。
【請求項4】
請求項3において、接続具を弾性材により構成したことを特徴とする貯水施設の被覆構造。
【請求項5】
水面に浮くことができる扁平な浮力体をシート体で覆い、そのシート体の周囲端部を水中に垂下させ、この垂下体に錘を取り付けて天蓋ブロックとし、この天蓋ブロックを連続させて浮設したことを特徴とする貯水施設の被覆構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−77670(P2007−77670A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266806(P2005−266806)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(504145308)国立大学法人 琉球大学 (100)
【出願人】(000106955)シバタ工業株式会社 (81)
【Fターム(参考)】