説明

貯湯式温水器

【課題】 高温の膨張水の熱エネルギーを、給水した低温の水を再び沸き上げる際のエネルギーに有効利用することができる貯湯式温水器を提供する。
【解決手段】 本発明では、貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の水を加熱するための加熱手段と、貯湯タンクの底部と給水口を連通連結する給水管と、貯湯タンクの上部と出湯口を連通連結する出湯管と、貯湯タンクの上部と膨張水排出口を連通連結する膨張水排出管と、給水管の途中に設けられ、貯湯タンクに流入する水圧を略一定にするための減圧弁と、膨張水排出管の途中に設けられ、加熱手段により体積膨張した貯湯タンク内の膨張水を排出して前記貯湯タンク内の圧力を略一定にするための逃し弁とを備えた貯湯式温水器において、貯湯タンクの上部から逃し弁に至る間の膨張水排出管と減圧弁から貯湯タンクの底部に至る間の給水管との間で熱交換をさせるための熱交換手段を備えた貯湯式温水器とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯機器に係り、特に貯湯タンクから排出される膨張水の熱交換に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貯湯式温水器では、貯湯タンク内の水を加熱し温水にする過程で水が体積膨張し、その結果、貯湯タンク内の圧力が上昇する。従来の貯湯式温水器では、予め定められた圧力以上になると、貯湯タンクを保護する為に内部圧力を外部に逃す機構として、弁が解放される逃し弁を設けることによって膨張水を外部に排出する構造としている(例えば、特許文献1の図1参照。)。
【0003】
しかも逃し弁は、水道水などに含まれる溶存酸素が揮発して貯湯タンクの上部に溜まったこの気体を排出する目的もある為、出湯側と同じ経路に設けられることが多く、従って排出される膨張水の温度は極めて高温である。
【0004】
例えば、35Lの貯湯タンクに蓄えられた5℃の水を75℃まで加熱すると、前記35Lの水は、約36Lの温水となり、前記貯湯タンクに入りきらない約1Lの温水が利用されずに排出されることとなり、電力に換算すると約85Wを捨てていることとなる。このように、膨張水を外部へ排出すると言うことは、わざわざ加熱した水を捨てることになり、昨今のエコロジーの観点から反する機構である。
【0005】
この問題を解決するために、特許文献2の図1に見られるように、排出した膨張水を一時貯湯しておき、それをポンプなどで吸出しで出湯経路に戻すものがある。このような場合、本来の目的を果たす為に必要な、膨張水を貯湯しておく機構と、その貯湯しておいた膨張水を出湯経路に戻す為の機構とは別に、出湯経路から膨張水貯湯タンクへの逆流防止機構、減圧弁が故障した時の逃し弁からの膨張水貯湯タンクとは別の排水機構など様々な機構が必要となり、装置が複雑化しすぎるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−372313号公報(第4頁、第1図)
【特許文献2】特開2007−333229号公報(第6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、高温の膨張水の熱エネルギーを、給水した低温の水を再び沸き上げる際のエネルギーに有効利用することができる貯湯式温水器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の水を加熱するための加熱手段と、前記貯湯タンクの底部と給水口を連通連結する給水管と、前記貯湯タンクの上部と出湯口を連通連結する出湯管と、前記貯湯タンクの上部と膨張水排出口を連通連結する膨張水排出管と、前記給水管の途中に設けられ、前記貯湯タンクに流入する水圧を略一定にするための減圧弁と、前記膨張水排出管の途中に設けられ、前記加熱手段により体積膨張した前記貯湯タンク内の膨張水を排出して前記貯湯タンク内の圧力を略一定にするための逃し弁とを備えた貯湯式温水器において、前記貯湯タンクの上部から前記逃し弁に至る間の膨張水排出管と前記減圧弁から前記貯湯タンクの底部に至る間の給水管との間で熱交換をさせるための熱交換手段を備えたことを特徴とする貯湯式温水器とした。この構成により、熱交換器で膨張水の熱を給水に伝えて温度を上昇させることで、膨張水に蓄えられている熱エネルギーを捨てることなく給水のエネルギーとして温水器内に戻すことができる。
【0009】
また、請求項2記載の発明によれば、前記熱交換手段は、前記給水管より供給された水をタンク状の容器に蓄積し、その中に膨張水排出管を通過させることとした。これにより、沸き上げ時に、給水管に滞留している給水の容量を、沸き上げが完了するまで排出される膨張水により加熱される熱量に対して適性な量にすることができるため、給水温度が過度に上昇することを防ぐことができる。
【0010】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項2の貯湯式温水器において、前記熱交換手段の中に位置する膨張水排出管は螺旋形状とした。これにより、タンク状の容器の中を通過する膨張水排出管の熱交換面積は変えずに、熱交換器としての全体のサイズをコンパクトにすることが可能となる。
【0011】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項2又は請求項3の貯湯式温水器において、前記熱交換手段の中に位置する膨張水排出管は蛇腹形状とした。これにより、膨張水の熱交換面積はより増加する為、熱交換器としての全体のサイズを更にコンパクトにすることが可能となる。
【0012】
また、請求項5記載の発明によれば、貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の水を加熱するための加熱手段と、前記貯湯タンクの底部と給水口を連通連結する給水管と、前記貯湯タンクの上部と出湯口を連通連結する出湯管と、前記貯湯タンクの上部と膨張水排出口を連通連結する膨張水排出管と、前記給水管の途中に設けられ、前記貯湯タンクに流入する水圧を略一定にするための減圧弁と、前記膨張水排出管の途中に設けられ、前記加熱手段により体積膨張した前記貯湯タンク内の膨張水を排出して前記貯湯タンク内の圧力を略一定にするための逃し弁とを備えた貯湯式温水器において、前記逃し弁から前記膨張水排出口に至る間の膨張水排出管と前記減圧弁から前記貯湯タンクの底部に至る間の給水管との間で熱交換をさせるための熱交換手段を備えたことを特徴とする貯湯式温水器とした。これにより、熱交換器で膨張水の熱を給水に伝えて温度を上昇させることで、膨張水に蓄えられている熱エネルギーを捨てることなく給水のエネルギーとして温水器内に戻すことができる。しかも、逃し弁以降の膨張水排水管は大気開放されている為、耐圧構造をとる必要が無く、熱交換手段を簡易な構造とすることが可能となる。
【0013】
また、請求項6記載の発明によれば、請求項4に記載の貯湯式温水器において、前記熱交換手段は、前記膨張水排出管より供給された膨張水をタンク状の容器に蓄積し、その中に前記給水管より供給させる水を通過させることを特徴とするとした。これにより、大気圧において熱交換のために膨張水をタンク状の容器に蓄積することができる為、タンク状容器を簡易な構造で製作することができる。
【0014】
また、請求項7記載の発明によれば、請求項5に記載の貯湯式温水器において、前記熱交換手段の中に位置する給水管は螺旋形状であることを特徴とするとした。これにより、タンク状の容器の中を通過する給水管の熱交換面積は変えずに、熱交換器としての全体のサイズをコンパクトにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本発明の目的は、高温の膨張水の熱エネルギーを、給水した低温の水を再び沸き上げる際のエネルギーに有効利用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一の実施例を示す構成図である。
【図2】第一の実施例に組み込まれる熱交換部を示す断面図である。
【図3】本発明の第二の実施例を示す構成図である。
【図4】第二の実施例に組み込まれる熱交換部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面により詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の第一の実施例を示す貯湯式温水器の構成図である。また、図2は、第一の実施例に組み込まれる熱交換部を示す断面図である。
【0019】
給水源(図示せず)からの水は、給水口1より貯湯式温水器100に入り、給水管2を経由して減圧弁3で減圧される。減圧弁3を通過した後、出水管4と給水管5に分岐され、出水管4を通過後、出水口23を経て混合水栓(図示せず)の水側に給水される。また、給水管5は、熱交換部101内の熱交換タンク15のタンク下部17に接続され、熱交換部101の熱交換タンク15内部を通過する。その後、熱交換タンク15のタンク上部18に接続された給水管6を通り貯湯タンク7に供給され、貯湯タンク7に内蔵された加熱ヒータ8により貯湯タンク7に蓄えられた水は加熱されてお湯となる。そのお湯は出湯管9を通過し、出湯口10を経て混合水栓(図示せず)のお湯側に給湯される。
【0020】
熱交換部101の熱交換タンク15の周囲は保温材21で囲われており、熱交換タンク15で交換された熱量が外部へ放出するのを最小限に抑えるようにされている。
【0021】
貯湯タンク7に蓄えられた水が加熱される際には、混合水栓(図示せず)は閉止されており水の流れは無い状態である。この時、貯湯タンク7に蓄えれられた水は、加熱されて体積膨張して高温膨張水となる。この高温膨張水は、出湯管9から分岐された膨張水排出管11を通り、熱交換部101の熱交換タンク15の内部に設置されている螺旋状の熱交換コイル16のコイル上部19から入り、熱交換コイル16内部を通過し、コイル下部20に接続されている膨張水排出管12を経て、逃し弁13を通り、大気圧に開放されて膨張水排水口14から外部の排水口(図示せず)に排水される。
【0022】
沸き上げ時に膨張水は流動しているが、給水は停止した状態である。この為、熱交換部101の水側は膨張水が連続して流れてきて供給する熱量を吸収できるだけの容量が必要となる。前述した35Lの貯湯タンクに蓄えられた5℃の水を75℃まで加熱する場合を考えると、約1Lの膨張水が排出される訳であるが、完全に熱交換されたと考えると理論上熱交換タンク15の容量は膨張水と同じ量の約1L必要で、その時の熱交換タンク15内の温度は5℃から75℃となる。しかしながらこの計算は全くエネルギーロスが無く、完全に熱交換された場合であって、実際には熱交換タンク15の容量はもう少し小さくても良い。
【0023】
また、螺旋状の熱交換コイル16の表面は、熱交換時の表面積を大きくする為に蛇腹形状としたり、ストレート管でも表面をディンプル状とすることが望ましい。
【0024】
図3は、本発明の第二の実施例を示す貯湯式温水器の構成図である。また、図4は、第二の実施例に組み込まれる熱交換部を示す断面図である。
【0025】
給水源(図示せず)からの水は、給水口1より貯湯式温水器100Aに入り、給水管2を経由して減圧弁3で減圧される。減圧弁3を通過した後、出水管4と給水管5に分岐され、出水管4を通過後、出水口23を経て混合水栓(図示せず)の水側に給水される。また、給水管5は、熱交換部101A内の熱交換コイル16Aのコイル下部17Aに接続され、熱交換部101Aの熱交換コイル16A内部を通過する。その後、熱交換コイル16Aのコイル上部18Aに接続された給水管6を通り貯湯タンク7に供給され、貯湯タンク7に内蔵された加熱ヒータ8により貯湯タンク7に蓄えられた水は加熱されてお湯となる。そのお湯は出湯管9を通過し、出湯口10を経て混合水栓(図示せず)のお湯側に給湯される。
【0026】
熱交換部101Aの熱交換タンク15Aは保温材21Aで囲われており、熱交換タンク15Aで交換された熱量が外部へ放出するのを最小限に抑えるようにされている。
【0027】
貯湯タンク7に蓄えられた水が加熱される際には、混合水栓(図示せず)は閉止されており水の流れは無い状態である。この時、貯湯タンク7に蓄えれられた水は、加熱されて体積膨張して高温膨張水となる。この高温膨張水は、出湯管9から分岐された膨張水排出管22A、逃し弁13を経由した後大気開放され、膨張水排出管11Aを通り熱交換部101Aの熱交換タンク15Aのタンク上部19Aに接続され、熱交換部101の熱交換タンク15A内部に蓄積される。その後、熱交換タンク15Aのタンク下部20Aに接続された膨張水排水管12Aを通り膨張水排水口14Aから外部の排水口(図示せず)に排水される。
【0028】
温水器101の熱交換部101は、熱交換コイル16は減圧弁3で減圧後の圧力が負荷されているがパイプ状であるため耐圧力性には優れている一方、熱交換タンク15は容器状であるため耐圧力性を確保するには構造が複雑となる。しかしながら、温水器101Aの構造では、熱交換部101Aが大気開放されている為、熱交換タンク15Aは圧力容器の構造とする必要が無く、安価な製造方法で製作することか可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、貯湯式温水器に係り、特に貯湯タンクから排出される膨張水の熱エネルギーに際し、給水される水と熱交換することでエネルギーを有効利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1…給水口
2…給水管
3…減圧弁
4…出水管
5…給水管
6…給水管
7…貯湯タンク
8…加熱ヒータ
9…出湯管
10…出湯口
11…膨張水排出管
11A…膨張水排出管
12…膨張水排出管
12A…膨張水排水管
13…逃し弁
14…膨張水排水口
14A…膨張水排水口
15…熱交換タンク
15A…熱交換タンク
16…熱交換コイル
16A…熱交換コイル
17…タンク下部
17A…コイル下部
18…タンク上部
18A…コイル上部
19…コイル上部
19A…タンク上部
20…コイル下部
20A…タンク下部
21…保温材
21A…保温材
22A…膨張水排出管
23…出水口
100…貯湯式温水器
100A…温水器
101…熱交換部
101A…熱交換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、
前記貯湯タンク内の水を加熱するための加熱手段と、
前記貯湯タンクの底部と給水口を連通連結する給水管と、
前記貯湯タンクの上部と出湯口を連通連結する出湯管と、
前記貯湯タンクの上部と膨張水排出口を連通連結する膨張水排出管と、
前記給水管の途中に設けられ、前記貯湯タンクに流入する水圧を略一定にするための減圧弁と、
前記膨張水排出管の途中に設けられ、前記加熱手段により体積膨張した前記貯湯タンク内の膨張水を排出して前記貯湯タンク内の圧力を略一定にするための逃し弁とを、備えた貯湯式温水器において、
前記貯湯タンクの上部から前記逃し弁に至る間の膨張水排出管と前記減圧弁から前記貯湯タンクの底部に至る間の給水管との間で熱交換をさせるための熱交換手段を備えたことを特徴とする貯湯式温水器。
【請求項2】
前記熱交換手段は、前記給水管より供給された水をタンク状の容器に蓄積し、その中に膨張水排出管を通過させることを特徴とする請求項1に記載の貯湯式温水器。
【請求項3】
前記熱交換手段の中に位置する膨張水排出管は螺旋形状であることを特徴とする請求項2に記載の貯湯式温水器。
【請求項4】
前記熱交換手段の中に位置する膨張水排出管は蛇腹形状であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の貯湯式温水器。
【請求項5】
貯湯タンクと、
前記貯湯タンク内の水を加熱するための加熱手段と、
前記貯湯タンクの底部と給水口を連通連結する給水管と、
前記貯湯タンクの上部と出湯口を連通連結する出湯管と、
前記貯湯タンクの上部と膨張水排出口を連通連結する膨張水排出管と、
前記給水管の途中に設けられ、前記貯湯タンクに流入する水圧を略一定にするための減圧弁と、
前記膨張水排出管の途中に設けられ、前記加熱手段により体積膨張した前記貯湯タンク内の膨張水を排出して前記貯湯タンク内の圧力を略一定にするための逃し弁とを備えた貯湯式温水器において、
前記逃し弁から前記膨張水排出口に至る間の膨張水排出管と前記減圧弁から前記貯湯タンクの底部に至る間の給水管との間で熱交換をさせるための熱交換手段を備えたことを特徴とする貯湯式温水器。
【請求項6】
前記熱交換手段は、前記膨張水排出管より供給された膨張水をタンク状の容器に蓄積し、その中に前記給水管より供給させる水を通過させることを特徴とする請求項5に記載の貯湯式温水器。
【請求項7】
前記熱交換手段の中に位置する給水管は螺旋形状であることを特徴とする請求項6に記載の貯湯式温水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−223502(P2010−223502A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71377(P2009−71377)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】