説明

貯湯式給湯機

【課題】簡単な構成を用いて貯湯式給湯機の構成部品から排出される流体の経路を構成することのできる貯湯式給湯機を提供する。
【解決手段】湯を貯える貯湯タンク2と、貯湯タンク2の周囲を覆う成形断熱材3(3a、3b、3c、3d)とを備える。成形断熱材3a、3b、3dに、貯湯式給湯機10の構成部品(例えば、貯湯タンク2内の湯の圧力が所定値以上である時に開くように設定された圧力逃がし弁)5から排出される水(流体)が流れる排水通路(流体通路)4a、4b、4cが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯タンクを備える貯湯式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の貯湯式給湯機は、貯湯タンク(貯湯缶体)と、当該貯湯タンクの周囲を覆う複数の成形断熱材とを備えている。この従来の成形断熱材には、貯湯タンクに接続された配管を収めるための配管用溝部が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−310511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の貯湯式給湯機では、上方に配置された構成部品から排出される流体を、貯湯タンクよりも下方に設けられるドレンパンに導いたり若しくは貯湯タンクの下方から外部に導いたりするためには、給湯機と同等長さの配管(例えば、ゴムホースや銅パイプ)が必要となる。このため、配管の長さが長くなってしまい、配管の引き回し、固定、組立等が困難となるという問題点があった。また、そのような配管を備える構成では、部品点数などの削減も難しく、不経済という問題点もあった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、簡単な構成を用いて貯湯式給湯機の構成部品から排出される流体の経路を構成することのできる貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る貯湯式給湯機は、湯を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクの周囲を覆う成形断熱材と、を備える貯湯式給湯機であって、前記成形断熱材に、前記貯湯式給湯機の構成部品から排出される流体が流れる流体通路が形成されているものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、簡単な構成を用いて貯湯式給湯機の構成部品から排出される流体の経路を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る貯湯式給湯機の正面図(A)、側面図(B)、および分解斜視図(C)である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る貯湯式給湯機の発泡断熱材の排水通路中を示す平面図(A)、正面図(B)、および、貯湯式給湯機10を図2(A)中の切断線X−Xで切断した断面図(C)である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る貯湯式給湯機の発泡断熱材の排水通路を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る貯湯式給湯機の発泡断熱材の分解斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る、排水通路の合わせ部分を示す概略図(A)、および排水通路の上端側の端部受け部形状を示す概略図(B)である。
【図6】本発明の実施の形態1の変形例における中部断熱材(左側部断熱材)が備える流体通路構成用断熱材の構成を示す平面図(A)および側面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る貯湯式給湯機の正面図(A)、側面図(B)、および分解斜視図(C)である。より具体的には、図1(C)は、貯湯タンク、外装ケース、および発泡断熱材の構成を示している。
【0010】
図1中の各図に示すように、貯湯式給湯機10は、外装ケース1内に、図示省略する加熱手段により沸き上げられる湯を貯える貯湯タンク2を備えている。貯湯タンク2の周囲(外周)は、成形発泡断熱材3によって覆われている。成形発泡断熱材3としては、例えば、発泡ポリスチレンを用いることができる。
【0011】
外装ケース1は、前面ケース1a、側面ケース(右)1b、側面ケース(左)1c、背面ケース1d、上面ケース1e、および底面ケース1fによって構成されている。貯湯タンク2よりも下方に配置された底面ケース1fは、貯湯式給湯機10の構成部品からの排水を受けるドレンパンとしても機能するものである。底面ケース1fには、給湯機本体外部に通ずる排水口1gと、底面ケース1f上で集められた水を排出するドレン排水口1hとが設けられている。
【0012】
図2は、本発明の実施の形態1に係る貯湯式給湯機の発泡断熱材の排水通路を示す平面図(A)、正面図(B)、および、貯湯式給湯機10を図2(A)中の切断線X−Xで切断した断面図(C)である。図3は、本発明の実施の形態1に係る貯湯式給湯機の発泡断熱材の排水通路を示す斜視図である。図4は、本発明の実施の形態1に係る貯湯式給湯機の発泡断熱材の分解斜視図である。
【0013】
図1〜4に示すように、成形発泡断熱材3は、貯湯タンク2の上部を覆う上部断熱材3aと、貯湯タンク2の胴体部分を覆う中部断熱材(左側部断熱材3bと右側部断熱材3c)と、貯湯タンク2の下部を覆う下部断熱材3dとにより構成されている。成形発泡断熱材3には、上部断熱材3a、左側部断熱材3b、および下部断熱材3dを連通するように排水通路4が形成されている。
【0014】
貯湯タンク2の上部には、貯湯式給湯機10の構成部品5が配設されている。このような構成部品5としては、例えば、貯湯タンク2内の湯の圧力が所定値以上である時に開くように設定された圧力逃がし弁が相当する。このような圧力逃がし弁5が規定通りに開くと、貯湯タンク2内から湯が排水されるので、貯湯タンク2内の圧力を下げることができる。また、圧力逃がし弁5に異常が生じた場合(例えば、異物等の混入により圧力逃がし弁5が開いた状態で保持された状態となった場合)にも、圧力逃がし弁5を介して貯湯タンク2内の湯が排出されるようになる。
【0015】
上記排水通路4は、上記構成部品(圧力逃がし弁)5が規定通りに作動した場合若しくは上記異常が生じた場合に当該構成部品5から排出される水が流れる通路として構成されている。排水通路4は、上部断熱材3aに形成された排水通路上部4aと、左側部断熱材3bの内部に中空状に形成された排水通路中部4bと、下部断熱材3dに中空状に形成された排水通路下部4cとにより構成されている。このような構成により、上記構成部品5からの排水が排水通路4(4a、4b、4c)を通って、ドレンパンとして機能する底面ケース1f上に導かれるようになっている。底面ケース1f上に集められた上記排水は、ドレン排水口1hを介して排出されるようになっている。尚、このようなドレン排水口1hを介して排出されるものに限らず、例えば、上記構成部品5からの排水が排水通路4を通った後に、外部に通ずる排水口1gを介して、ドレンパンを介さずに貯湯タンク2の下方から外部に排出されるように構成されたものであってもよい。
【0016】
また、上記構成部品5からの排水が底面ケース1fに設けられたドレン排水口1hに導かれるようにするため、上記構成部品5の排水ドレン部(排水口)5aには、図2(B)に示すように、排水配管6の一端が接続されている。排水配管6の他端は、上部断熱材3aに形成された排水通路上部4a内に位置するように取り付けられている。
【0017】
図5は、本発明の実施の形態1に係る、排水通路の合わせ部分を示す概略図(A)、および排水通路の上端側の端部受け部形状を示す概略図(B)である。図5(A)に示すように、上部断熱材3aにおける排水通路上部4aの通路幅は、排水配管6の外径よりも大きな寸法となるように形成されている。これにより、上記構成部品5の排水ドレン部5aから排水配管6を容易に導けるようになる。
【0018】
また、図5(A)に示すように、上部断熱材3aと左側部断熱材3bとの間での排水通路上部4aと排水通路中部4bの合わせ部分において、上側となる上部断熱材3aの排水通路上部4aの流路断面が、下側となる左側部断熱材3bの排水通路中部4bの流路断面内に収まるように、両排水通路4a、4bの寸法が規定されている。更に、左側部断熱材3bと下部断熱材3dとの間での排水通路中部4bと排水通路下部4cの合わせ部分において、上側となる左側部断熱材3bの排水通路中部4bの流路断面が、下側となる下部断熱材3dの排水通路下部4cの流路断面内に収まるように、両排水通路4b、4cの寸法が規定されている。このような構成によれば、貯湯タンク2の上部から貯湯タンク2の下方に向けて排水を確実に導くことが可能となる。
【0019】
更に、図5(B)に示すように、上部断熱材3aに形成された排水通路上部4aの上端部が、上端側に広がるラッパ形状となるように形成されている。このような構成によれば、排水通路上部4aに対して排水配管6からの排水をより容易に導くことが可能となる。
【0020】
以上説明したように、本実施形態の貯湯式給湯機10は、成形発泡断熱材3における上部断熱材3a、中部断熱材(左側部断熱材3b)、および下部断熱材3dを連通するように形成された排水通路4を備え、貯湯タンク2の上部(給湯機本体上部)に設置された構成部品5の排水ドレン部5aから排水通路上部4aに排水配管6を導く構成を備えている。このような構成によれば、排水配管としては上記排水配管6を備えておくだけでよくなる。このため、給湯機本体上部に設置された構成部品のドレン部から給湯機本体下部まで排水配管を利用して排水を導くようにしていた従来の構成と比べ、排水経路の配管の短尺化が可能となる。また、排水経路を構成するために、給湯機上部から下部に至るまで発泡断熱材で覆われた貯湯タンクの外周に排水配管を引き回す必要がなくなり、組立作業性が容易となり、また部品コストの削減も可能となる。
【0021】
ところで、上述した実施の形態1においては、成形発泡断熱材3の中部断熱材(左側部断熱材3b)に対して直に形成された中空状の排水通路中部4bを備えるようにしている。しかしながら、本発明における流体通路(排水通路)の構成は、これに限定されるものではなく、例えば、以下の図6に示すような構成であってもよい。図6は、本発明の実施の形態1の変形例における中部断熱材(左側部断熱材)が備える流体通路構成用断熱材の構成を示す平面図(A)および側面図(B)である。
【0022】
図6に示す中部断熱材(左側部断熱材)7には、中空状の排水通路は形成されておらず、その代わりに、中部断熱材7の内周には、当該中部断熱材7の上端から下端に及ぶように溝状の切欠部7aが形成されている。そして、当該切欠部7aには、内部に中空状の排水通路中部4bが形成されるように流体通路構成用断熱材8が嵌め込まれている。このように、本発明における流体通路は、その周囲の断熱材(中部断熱材に限らない)と別部品で形成されたものであってもよい。また、このような図6に示す構成によれば、中部断熱材7の成形加工性を容易にすることができる。また、上述の構成を上部や下部の断熱材へ適用することもできる。
【0023】
また、排水通路上部4aの上端部、或いは排水通路下部4cの下端部に、排水配管6などの配管を接続するための接続部(図示省略)を備えるようにしてもよい。これにより、排水配管6などの接続を容易にすることができる。
【0024】
また、貯湯タンク2の上部に配置された上記構成部品5の排水ドレン部5aを、上部断熱材3aに形成された排水通路上部4aの上端部の直上に配置するようにしてもよい。このような構成によって、上記排水ドレン部5aを排水通路上部4aの上端部に直接導けるようにすることで、排水配管6を廃止することが可能となる。また、同様に下部断熱材3dの排水通路下部4cの排水口を排水口1gの上になるように構成し、排水を排水口1gに直接排水するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 外装ケース
1f 底面ケース(ドレンパン)
1g 排水口
1h ドレン排水口
2 貯湯タンク
3 成形発泡断熱材
3a 上部断熱材
3b 左側部断熱材(中部断熱材)
3c 右側部断熱材(中部断熱材)
3d 下部断熱材
4 排水通路
4a 排水通路上部
4b 排水通路中部
4c 排水通路下部
5 構成部品(圧力逃がし弁)
5a 排水ドレン部
6 排水配管
7 中部断熱材
7a 切欠部
8 流体通路構成用断熱材
10 貯湯式給湯機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯を貯える貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの周囲を覆う成形断熱材と、を備える貯湯式給湯機であって、
前記成形断熱材に、前記貯湯式給湯機の構成部品から排出される流体が流れる流体通路が形成されていることを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記流体は、前記貯湯式給湯機の上部に配置された前記構成部品からの排水であり、
前記貯湯式給湯機は、前記貯湯タンクよりも下方に、前記構成部品からの排水を受けるドレンパンを更に備え、
前記成形断熱材は、前記貯湯タンクの上部を覆う上部断熱材と、前記貯湯タンクの胴体部分を覆う中部断熱材と、前記貯湯タンクの下部を覆う下部断熱材とを含み、
前記流体通路は、前記上部断熱材、前記中部断熱材、および前記下部断熱材を連通するように形成された通路であり、
前記構成部品からの排水が前記流体通路を通って前記ドレンパンに導かれるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記流体は、前記貯湯式給湯機の上部に配置された前記構成部品からの排水であり、
前記成形断熱材は、前記貯湯タンクの上部を覆う上部断熱材と、前記貯湯タンクの胴体部分を覆う中部断熱材と、前記貯湯タンクの下部を覆う下部断熱材とを含み、
前記流体通路は、前記上部断熱材、前記中部断熱材、および前記下部断熱材を連通するように形成された通路であり、
前記構成部品からの排水が前記流体通路を通って前記貯湯タンクの下方から外部に排出されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記上部断熱材と前記中部断熱材との間での前記流体通路の合わせ部分、および前記中部断熱材と前記下部断熱材との間での前記流体通路の合わせ部分のうちの少なくとも一方において、上側となる断熱材の流体通路断面が下側となる断熱材の流体通路断面内に収まるように、前記流体通路の寸法が規定されていることを特徴とする請求項2または3記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記上部断熱材に形成された前記流体通路の上端部が、上端側に広がるラッパ形状になっていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の貯湯式給湯機。
【請求項6】
前記上部断熱材および前記下部断熱材のうちの少なくとも一方に形成された前記流体通路の端部に、排水配管を接続するための接続部が設けられていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の貯湯式給湯機。
【請求項7】
前記構成部品の排水部が、前記上部断熱材に形成された前記流体通路の上端部の直上に配置されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の貯湯式給湯機。
【請求項8】
前記流体通路は、その周囲の断熱材と別部品で形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の貯湯式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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