説明

貯湯式給湯装置

【課題】 一次側循環流路から加熱用熱交換器、貯湯タンクの順に蓄熱用流体を充填するように構成することで、エアーロック現象の発生がなくかつ蓄熱用流体の充填作業が容易にできる貯湯式給湯装置を実現する。
【解決手段】 一次側循環流路11、11aには、貯湯タンク10内に蓄熱用流体を充填するときに、給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60の上流部に蓄熱用流体を供給して、給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60側に圧送させた後に、貯湯タンク10側に充填するように構成された。エアーロック現象の発生がなくかつ充填作業が容易にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱用流体を貯える貯湯タンクと、この貯湯タンク内の蓄熱用流体と被加熱流体とを熱交換する加熱用熱交換器とを備える貯湯式給湯装置に関するものであり、特に、一次側循環流路内に発生するのエアーロック現象の防止に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者は、蓄熱用流体を内部に貯える貯湯タンクと、この貯湯タンク内の最下部の蓄熱用流体を貯湯タンクの上方部に送る流体加熱用流路と、この流体加熱用流路内に配設され、この流路内に流れる蓄熱用流体を加熱する加熱手段と、対向流式からなり貯湯タンク内の蓄熱用流体と給湯用水とが熱交換する給湯用熱交換器とを備え、上記流体加熱用流路には蓄熱用流体を供給する供給口を設けて、貯湯タンク内に蓄熱用流体を充填する施工作業のときに、その供給口より蓄熱用流体を供給して、加熱手段側に圧送させた後に貯湯タンク側に充填するように構成したことを特徴とする貯湯式給湯装置を出願している(特願2004−043311号)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記装置によれば、加熱手段が配設される流体加熱用流路側には空気が滞留するエアーロック現象をなくすることができたが、その後の発明者の研究によると、特に、一次側循環流路内の空気を排出する前に、流体加熱用流路側から蓄熱用流体を貯湯タンク内に充填してしまうと、給湯用熱交換器を配設する一次側循環流路側にも空気が滞留するエアーロック現象が発生することを見出した。
【0004】
この空気の滞留をなくすためには、一次側循環流路内の空気を貯湯タンクに形成された空気孔に向けて空気抜きが可能な循環流路を形成するとか、または循環流路の中途で空気が溜まってしまう閉塞箇所には、その箇所の空気を外部に排出するための空気抜き弁などを設けて空気が滞留させないように設計施工している。これらの設計施工は専門的な技術力を有する技術者が必要となることで装置施工のための施工コストが割高となる問題がある。また、空気抜きのための部品類が用いられると、さらに施工コストが増加してしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記点を鑑みたものであり、一次側循環流路から加熱用熱交換器、貯湯タンクの順に蓄熱用流体を充填するように構成することで、エアーロック現象の発生がなくかつ蓄熱用流体の充填作業が容易にできる貯湯式給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記、目的を達成するために、請求項1ないし請求項8に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、ヒートポンプサイクルからなる加熱手段(20)によって加熱される蓄熱用流体を内部に貯える貯湯タンク(10)と、この貯湯タンク(10)内の蓄熱用流体が流通する第1流通部(30a、60a)と被加熱流体が流通する第2流通部(30b、60b)とを隣接して設け、かつ蓄熱用流体と被加熱流体とが対向流となるように構成され、両者間で熱交換を行なう加熱用熱交換器(30、60)と、第1流通部(30a、60a)の下流端が貯湯タンク(10)の下方部に連通するように構成され、かつ加熱手段(20)で加熱された貯湯タンク(10)内に貯えられた蓄熱流体のうち、高温の蓄熱流体および中温の蓄熱流体の少なくとも一方が第1流通部(30a、60a)側に流通するように構成された一次側循環流路(11、11a)とを備える貯湯式給湯装置において、
一次側循環流路(11、11a)には、貯湯タンク(10)内に蓄熱用流体を充填するときに、加熱用熱交換器(30、60)の上流部もしくは下流部のいずれか一方より蓄熱用流体を供給して、加熱用熱交換器(30、60)側に圧送させた後に、貯湯タンク(10)側に充填するように構成されたことを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、例えば、水道圧またはポンプなどの圧送手段で蓄熱用流体を加熱用熱交換器(30、60)側から圧送させることで、一次側循環流路(11、11a)内の空気が貯湯タンク(10)側に送り込まれるので配管経路内のエアーロック現象の発生がなくかつ蓄熱用流体の充填作業が容易にできる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、一次側循環流路(11、11a)には、蓄熱用流体を供給する蓄熱用流体供給手段(81、82)が設けられ、この蓄熱用流体供給手段(81、82)は、貯湯タンク(10)内に蓄熱用流体を充填するときに、蓄熱用流体を加熱用熱交換器(30、60)側に供給するように構成されたことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、具体的には、蓄熱用流体を加熱用熱交換器(30、60)側に供給するように構成されたことにより、蓄熱用流体が加熱用熱交換器(30、60)側の配管経路内の空気を送り出すように貯湯タンク(10)内に送り込まれるので配管経路内のエアーロック現象の発生がなくかつ充填作業が容易にできる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、蓄熱用流体供給手段(81、82)は、蓄熱用流体を供給する供給流路(81)と流れ方向を切り換える切換弁(82)とから構成されていることを特徴としている。請求項3に記載の発明によれば、より具体的には、切換弁(82)により加熱用熱交換器(30、60)側に容易に切り換えることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、蓄熱用流体供給手段(81、82)は、供給流路(81)の上流端が給水源に接続されていることを特徴としている。請求項4に記載の発明によれば、水道圧を用いれば容易に配管内の空気を押し出すことができる。
【0012】
請求項5に記載の発明では、蓄熱用流体供給手段(81、82)には、供給流路(81)の上流端が給水源に接続されるとともに、供給流路(81)に蓄熱剤を供給する蓄熱剤供給手段(80)が設けられていることを特徴としている。請求項5に記載の発明によれば、例えば、エチレングリコール水溶液やプロピレングリコール水溶液などの水溶性の蓄熱剤を用いれば、水道圧により容易に圧送できる。これにより、蓄熱用流体の充填作業が容易にできる。
【0013】
請求項6に記載の発明では、蓄熱用流体供給手段(81、82)は、供給流路(81)に、蓄熱用流体を貯蔵する貯蔵容器(80a)と、この貯蔵容器(80a)内の蓄熱用流体を外部に圧送する圧送手段(84)とが設けられていることを特徴としている。請求項6に記載の発明によれば、上述の請求項5では水道圧で圧送させたが、例えば、ポンプなどの圧送手段(84)でも充填時に加熱手段(20)側に圧送させることが容易にできる。
【0014】
請求項7に記載の発明では、貯湯タンク(10)は、大気圧もしくは極低圧となるように構成されていることを特徴としている。請求項7に記載の発明によれば、従来の高圧(例えば、170kPa)タンクのような耐圧設計が不要となるため、貯湯タンク自体を樹脂により成形することができる。この場合、一般的に用いられるステンレス鋼加工に必要なプレス工程、溶接工程が不要となって、従来よりも製造コストを低く抑えることができる。さらに、高圧タンクのように、耐圧上から円筒形状とする必要がなくタンク形状の設計自由度を高くできる。
【0015】
請求項8に記載の発明では、加熱手段(20)は、冷媒の高圧側圧力が臨界圧力以上となる超臨界ヒートポンプサイクルであり、臨界圧力以上に昇圧された冷媒により蓄熱用流体を加熱することを特徴としている。
【0016】
請求項8に記載の発明によれば、二酸化炭素などの冷媒を用いた超臨界ヒートポンプ方式の加熱手段(20)においては、沸き上げ温度が約90〜95℃程度と高くなることで蓄熱用流体側からの気泡の発生度が高いため、まれに、加熱用熱交換器(30、60)内に気泡が溜まりエアーロック現象が発生したとしても、本発明によれば容易に気泡を貯湯タンク(10)側に追い出すことができ、好適である。
【0017】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による貯湯式給湯装置を図1ないし図3に基づいて説明する。図1は本発明を適用させた貯湯式給湯装置の全体構成を示す模式図であり、図2は貯湯タンク10内に畜熱用流体を充填するときの畜熱用流体の導水形態を示す形態図である。また、図3は本発明の第1実施形態の変形例における貯湯式給湯装置の全体構成を示す模式図である。
【0019】
本実施形態の貯湯式給湯装置は、一般家庭用として使用されるものであり、貯湯タンク10内に貯えられた蓄熱用流体を熱源として、給湯用水と熱交換させて台所、洗面所、浴室などへの給湯機能の他に、浴槽へのお湯張りおよびお湯張りされた浴水を追い焚きする機能を有するものである。
【0020】
まず、給湯機能は、図1に示すように、蓄熱用流体を内部に貯える貯湯タンク10と、この貯湯タンク10内の蓄熱用流体を加熱する加熱手段であるヒートポンプユニット20と、貯湯タンク10内の蓄熱用流体と給湯用水とを熱交換する加熱用熱交換器である給湯用熱交換器30と、給湯用配管32、33と、本給湯システムの作動を制御する制御装置(給湯制御部41、熱源制御部42)などから構成されている。
【0021】
そして、浴槽へのお湯張りおよび追い焚き機能は、貯湯タンク10内の蓄熱用流体と浴水とを熱交換する加熱用熱交換器である追い焚き用熱交換器60と、浴槽へのお湯張りのための給湯用配管32a、33aとから構成している。本実施形態の貯湯タンク10は、空気孔10aを通じて大気に開放され、貯湯タンク10内部が大気圧に保たれている。この貯湯タンク10は、例えば、樹脂材料で形成され直方体形状に設けられている。
【0022】
また、貯湯タンク10内の蓄熱用流体に蓄えられた熱が貯湯タンク10の壁面より大気中へ放出されることを低減するために、貯湯タンク10の外周をグラスウールやウレタン等の断熱材で覆っても良い。なお、ここでは、貯湯タンク10を大気圧に開放するように構成したが、これに限らず、極低圧(例えば、10kPa)となるように構成しても良い。
【0023】
また、使用される蓄熱用流体は主成分が水であり、防腐剤、凍結防止剤等が必要に応じて添加されている。また、これらの他に高比熱を有する蓄熱材料をマイクロカプセルなどの手法にて封入し、それを水に分散混合させるか、またはスリラー化させて流動可能な蓄熱材を用いても良い。本実施形態では、防腐剤、凍結防止剤などの蓄熱剤を添加せずに水道水のみを蓄熱用流体として充填している。ただし、水道水のみのときは、冬季における凍結による不具合のないように凍結防止運転などの処置を講ずる必要がある。
【0024】
また、貯湯タンク10の外壁面には、蓄熱用流体の貯湯量、もしくは貯湯温度を検出するための水温センサである複数(本例では7つ)の貯湯サーミスタ55が縦方向(貯湯タンク10の高さ方向)にほぼ等間隔に配置され、貯湯タンク10内に満たされた蓄熱用流体の各水位レベルでの温度情報を後述する給湯制御部41に出力するようになっている。
【0025】
従って、給湯制御部41は複数の貯湯サーミスタ55からの温度情報に基づいて、貯湯タンク10内上方の沸き上げられた湯温と貯湯タンク10内下方の沸き上げられる前の低温の蓄熱用流体との境界位置を検出できるとともに、各水位レベルでの蓄熱用流体の湯温を検出できる。なお、複数の貯湯サーミスタ55のうち、最上部に設けられた貯湯サーミスタ55は高温の蓄熱用流体を出湯する出湯温度を検出する機能を有している。
【0026】
蓄熱用流体を加熱するヒートポンプユニット20は、例えば、炭酸ガスを冷媒として使用することにより、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界ヒートポンプサイクルを使用している。このヒートポンプサイクルは、周知のように図示しない圧縮機、蓄熱用熱交換器、膨張弁、蒸発器、およびアキュムレータ等の冷凍サイクル機能部品より構成されている。因みに、圧縮機(図示しない)は、内蔵する電動モータ(図示しない)によって駆動され、アキュムレータより吸引した気相冷媒を臨界圧力以上まで圧縮して吐出する。
【0027】
蓄熱用熱交換器(図示しない)は、冷媒と蓄熱用流体とを熱交換するもので、例えば、冷媒が流れる冷媒通路(図示しない)と蓄熱用流体が流れる蓄熱用流体通路(図示しない)とが二重管構造に設けられ、かつ冷媒の流れ方向と蓄熱用流体の流れ方向とが対向するように構成された対向流式の蓄熱用熱交換器(図示しない)である。膨張弁(図示しない)は、蓄熱用熱交換器から流出する冷媒を減圧して蒸発器(図示しない)に供給する。蒸発器(図示しない)は、膨張弁(図示しない)で減圧された冷媒を大気との熱交換によって蒸発させる。アキュムレータ(図示しない)は、蒸発器より流出する冷媒を気液分離して、気相冷媒のみ圧縮機に吸引させるとともに、サイクル中の余剰冷媒を蓄えている。
【0028】
また、蓄熱用熱交換器の蓄熱用流体通路(図示しない)は、流体加熱用流路21を介して貯湯タンク10に接続され、図示しない電動ポンプが作動することで、貯湯タンク10内の蓄熱用流体が循環する。なお、流体加熱用流路21の上流端が貯湯タンク10の底部10bに接続され、流体加熱用流路21の下流端が貯湯タンク10の上部10cに接続されている。これにより、蓄熱用熱交換器(図示せず)で冷媒との熱交換により加熱された蓄熱用流体が貯湯タンク10の上部10cへ送り込まれるため、貯湯タンク10内の上部側から下部側へ向かって順次蓄熱用流体に蓄熱されていく。
【0029】
なお、ヒートポンプユニット20は後述する熱源制御部42からの制御信号により作動するとともに、作動状態を熱源制御部42に出力するようになっている。また、これらの動力源として交流電力を用い、主に料金設定の最も安い深夜時間帯における深夜電力を用いて、貯湯タンク10内の蓄熱用流体を沸き上げる蓄熱運転を行なっているが、昼間時間帯においても蓄熱用流体の湯温が低下してくると沸き上げ運転を行なうよう制御される。因みに、超臨界ヒートポンプサイクルによれば、一般的なヒートポンプサイクルよりも高温(例えば、85〜90℃)の蓄熱用流体を内部に貯えることができる。
【0030】
次に、一次側循環流路11は、貯湯タンク10内の蓄熱用流体を後述する給湯用熱交換器30の第1流通部30aに流通させ、第2流通部30bを流通する給湯用水と熱交換された蓄熱用流体を貯湯タンク10内の下方部10eに戻すための熱源側の循環流路である。この一次側循環流路11は、高温取り出し管12、中温取り出し管13、往き管14、戻し管15、流量比調節手段である高中温混合弁16、および第1循環ポンプ17とから構成されている。
【0031】
高温取り出し管12は、貯湯タンク10内に貯えられる蓄熱用流体のうち、高温の蓄熱用流体を取り出すための配管であり、貯湯タンク10内の上方部10dに上流端が接続されている。中温取り出し管13は、貯湯タンク10内に貯えられる蓄熱用流体のうち、高温の蓄熱用流体よりも湯温の低い中温の蓄熱用流体を取り出すための配管であり、貯湯タンク10内の上方部10dと下方部10eとの間に上流端が接続されている。
【0032】
往き管14は上流端が後述する高中温混合弁16の出口側に接続され、下流端が給湯用熱交換器30の第1流通部30aの上流端に接続されている。戻し管15は上流端が第1流通部30aの上流端に接続され、下流端が貯湯タンク10内の下方部10eに接続されている。なお、往き管14には、給湯用熱交換器30の第1流通部30aに流通させる蓄熱用流体の湯温を検出する熱交換前水温センサである熱交換前サーミスタ54が設けられ、往き管14内の温度情報を後述する給湯制御部41に出力するようにしている。
【0033】
次に、高中温混合弁16は、高温取り出し管12と中温取り出し管13との下流側合流部位に設けられ、給湯用熱交換器30の第1流通部30aに流通させる蓄熱用流体の湯温を調節する温度調節弁であり、それぞれの開口面積比を調節することで、高温取り出し管12から取り出した高温の蓄熱用流体と中温取り出し管13から取り出した中温の蓄熱用流体との混合比を調節するようにしている。
【0034】
そして、この高中温混合弁16は、後述する給湯制御部41に電気的に接続されており、上記、貯湯サーミスタ55および熱交換前サーミスタ54により検出される蓄熱用流体の温度情報に基づいて制御される。因みに、本実施形態では、貯湯サーミスタ55(中温取り出し配管13の近傍)により検出された蓄熱用流体の湯温が所定温度(例えば、30℃)未満のときに、高温取り出し配管12から取り出される高温の蓄熱用流体を第1流通部30aに流通するように制御される。
【0035】
一方、貯湯サーミスタ55(中温取り出し配管13の近傍)により検出された蓄熱用流体の湯温が所定温度(例えば、30℃)以上のときに中温取り出し配管13から取り出される中温の蓄熱用流体、もしくは中温取り出し配管13から取り出される中温の蓄熱用流体と高温取り出し配管12から取り出される高温の蓄熱用流体との両方から混合させて第1流通部30aに流通するように制御される。
【0036】
さらに、高中温混合弁16は、熱交換前サーミスタ54により検出された第1流通部30aに流通する蓄熱用流体の湯温を所定温度以上となるように温度調節することで第2流通部30bを流れる給湯用水を所定温度(例えば、設定温度+5℃程度)以下とならないようにしている。これにより、高温の蓄熱用流体よりも所定温度(例えば、30℃)近傍の中温の蓄熱用流体をより多く第1流通部30aに流通するようにしている。また、高中温混合弁16は熱交換前サーミスタ54により検出された熱交換前の蓄熱用流体の湯温に基づいてフィードバック制御を行なうようにしている。
【0037】
第1循環ポンプ17は戻し管15の中途に配置されており、貯湯タンク10内の蓄熱用流体を給湯用熱交換器30に流通させるポンプである。そして、後述する熱交換後サーミスタ52により検出された給湯用熱交換器30の第2流通部30bより熱交換された給湯用水の湯温に基づいて回転数が制御されるように後述する給湯制御部41に電気的に接続されている。
【0038】
なお、戻り管15に熱交換後の蓄熱用流体の湯温を検出する1次熱交換後サーミスタ56を設けて、熱交換後の蓄熱用流体の湯温に基づいて、一次側循環流路11を循環する流量を第1循環ポンプ17により制御しても良い。つまり、貯湯タンク10内の下方部10eに戻される湯温が所定温度以上とならないように第1循環ポンプ17の回転数に規制値を設けることで、所定温度以下の湯温を貯湯タンク10内の下方部10eに戻すことができる。また、一次側循環流路11および流体加熱用流路21には排水栓18が設けられており、必要に応じて貯湯タンク10内および一次側循環流路11内の蓄熱用流体を手動により排水することができるようにしている。
【0039】
次に、給湯用熱交換器30は、一次側循環流路11に接続されて貯湯タンク10内の蓄熱用流体が流れる第1流通部30aと、給水用配管31および給湯用配管32に接続された第2流通部30bとを有して、貯湯タンク10の外部に上下方向に配置されている。そして、第1流通部30aの下流端が貯湯タンク10の下方部10eと連通するように戻し管15に接続され、第1流通部30aの上流端が往き管14に接続されている。
【0040】
一方、第2流通部30bは、その上流端が給水用配管31に接続され、下流端が給湯用配管32に接続されている。従って、給湯用熱交換器30は、図1に矢印で示すように、第1流通部30aを上から下へ向かって流れる蓄熱用流体の流れ方向と、第2流通部30bを下から上へ向かって流れる給湯用水の流れ方向とが対向する対向流式の熱交換器である。
【0041】
また、給水用配管31の上流は水道配管に接続されて水道水が第2流通部30bに導水されるようにしている。なお、給水用配管31には給水サーミスタ51が設けられており、水道水の温度情報を後述する給湯制御部41に出力するようにしている。また、給湯用配管32には、第2流通部30bにて熱交換された給湯用水の流量を調節する流量調節弁34と、給湯用配管32の下流端と給水用配管31の合流部位において給湯温度調節手段である給湯用混合弁35が設けられている。そして、この給湯用混合弁35の出口側に給湯用配管33が接続されている。
【0042】
給湯用配管33は台所、洗面所、浴室などの図示しない給湯水栓に通ずる給湯配管である。そして、その中途に給湯サーミスタ53および流量カウンタ58が設けられ、給湯サーミスタ53は給湯用配管33内の温度情報を、流量カウンタ58は給湯用配管33内の流量情報を後述する給湯制御部41に出力するようにしている。なお、給湯用配管32には、給湯用熱交換器30により熱交換された蓄熱用流体の湯温を検出する熱交換後サーミスタ52が設けられ、給湯用配管33内の温度情報を後述する給湯制御部41に出力するようにしている。
【0043】
流量調節弁34は、第2流通部30bを流通する流量を調節する弁であり、第2流通部30bを流通する流量が所定流量以下となるように後述する給湯制御部41により制御される。つまり、給水される水道圧および給湯経路の圧力損失のばらつきにより流量が過大とならないように熱交換後サーミスタ52により検出される給湯用水の湯温に基づいて制御される。
【0044】
給湯用混合弁35は、給湯用配管33に出湯させる給湯用水の湯温を調節する温度調節弁であり、それぞれの開口面積比を調節することで、内側管30bで熱交換された給湯用水と水道水との混合比を調節して設定温度に調節するように制御される。そして、給湯用混合弁35は、後述する給湯制御部41に電気的に接続されており、上記、給水サーミスタ51、熱交換後サーミスタ52、および給湯サーミスタ53により検出される給湯用水の温度情報に基づいて制御される。
【0045】
因みに、給湯用混合弁35に流通される第2流通部30bで熱交換された給湯用水の湯温は、例えば、設定温度+5℃程度となるようにしている。つまり、一次側循環流路11を循環する流量とその熱交換前サーミスタ54により検出される蓄熱用流体の湯温を制御させている。なお、給湯用混合弁35は、給湯サーミスタ53により検出される給湯用水の湯温に基づいてフィードバック制御を行なうようにしている。
【0046】
次に、浴水の追い焚き機能側の構成部品について説明する。一次側循環流路11aは、貯湯タンク10内の蓄熱用流体を後述する加熱用熱交換器である追い焚き用熱交換器60の第1流通部60aに流通させ、第2流通部60bを流通する浴水と熱交換された蓄熱用流体を貯湯タンク10の上方部10dと下方部10eとの間に戻すための循環流路である。この一次側循環流路11aは、上述した高温取り出し管12、往き管14a、戻し管15aおよび第2循環ポンプ17aとから構成されている。
【0047】
往き管14aは上流端が高温取り出し管12の中途に接続され、下流端が追い焚き用熱交換器60の第1流通部60aの上流端に接続されている。戻し管15aは上流端が第1流通部60aの上流端に接続され、その下流端が貯湯タンク10内の高さ方向に対して中央部10fに接続されている。また、第2循環ポンプ17aは戻し管15aの中途に配置されており、貯湯タンク10内の蓄熱用流体を追い焚き用熱交換器60に流通させるポンプである。
【0048】
そして、後述する追い焚きサーミスタ71により検出された追い焚き温度に基づいて回転数が制御されるように後述する給湯制御部41に電気的に接続されている。因みに、上記追い焚き温度が異常高温(例えば、60℃)を超えないように第2循環ポンプ17aの回転数を制御して追い焚き用熱交換器60に流通させる高温の蓄熱流体の流量を調整している。
【0049】
次に、追い焚き用熱交換器60は、上述した給湯用熱交換器30と同様な構成となっており、一次側循環流路11aに接続されて貯湯タンク10内の蓄熱用流体が流れる第1流通部60aと、浴水循環回路61に接続された第2流通部30bとを有して、貯湯タンク10の外部に上下方向に配置されている。そして、第1流通部60aの下流端が貯湯タンク10の中央部10fに連通するように戻し管15aに接続され、第1流通部30aの上流端が往き管14aに接続されている。
【0050】
一方、第2流通部30bは、その上流端および下流端が浴水循環回路61に接続されている。これにより、追い焚き用熱交換器60は、給湯用熱交換器30と同様に、図1に矢印で示すように、第1流通部60aを上から下へ向かって流れる蓄熱用流体の流れ方向と、第2流通部60bを下から上へ向かって流れる浴水の流れ方向とが対向する対向流式の熱交換器である。
【0051】
次に、浴水循環回路61は、浴槽内の浴水を第2流通部60bの上流端に導く往き管62、第2流通部60bで熱交換された浴水を浴槽内に導く戻り管63およびバイパス管64から構成されている。その往き管62には、上流側から順に、水圧センサ65、開閉弁66、第3循環ポンプ67、浴水温サーミスタ68、流水スイッチ69、および追い焚き三方弁70が設けられている。また、戻り管63には、下流側に追い焚きサーミスタ71が設けられている。
【0052】
水圧センサ65は、浴槽内にお湯張りされた浴水の湯量、言い換えれば浴槽内の水位レベルを求めるための水圧を検出するセンサである。開閉弁66は浴水循環回路61を開閉する電磁弁であり、第3循環ポンプ67は浴槽内の浴水を追い焚き用熱交換器60に圧送する電動ポンプである。浴水温サーミスタ68は、往き管62を流通する浴水の湯温を検出する水温センサである。
【0053】
流水スイッチ69は、追い焚き三方弁70側の方向に浴水および後述する給湯用水が流通しているか否かを検出するための流水センサである。追い焚き三方弁70は、浴水を追い焚き用熱交換器60に流通させるか、追い焚き用熱交換器60を迂回するバイパス管64のいずれか一方に流通方向を切り換えるための切換弁である。追い焚きサーミスタ71は、戻り管63を流通する浴水の湯温を検出する水温センサであり、浴槽内に戻される浴水温度である。
【0054】
なお、水圧センサ65、流水スイッチ69、浴水温サーミスタ68および追い焚きサーミスタ71は、それぞれの容積情報、流水情報および温度情報を後述する給湯制御部41に出力するようにされ、開閉弁66、第3循環ポンプ67および追い焚き三方弁70は後述する給湯制御部41により制御される。また、お湯張り後に浴槽内の浴水の温度を検出するときは、追い焚き三方弁70をバイパス管64側に流れ方向を切り換えるとともに、第3循環ポンプ67を作動させることで、浴槽内の浴水が往き管62、バイパス管64、戻り管63、浴槽内の順に循環されて浴水温サーミスタ68により浴水の湯温を検出するようにしている。
【0055】
また、追い焚きするときは、追い焚き三方弁70の流れ方向を追い焚き用熱交換器60側に切り換えることで、浴槽内の浴水が往き管62、追い焚き用熱交換器60、戻り管63、浴槽内の順に循環されて、浴水温サーミスタ68により検出された浴水の湯温が所定温度になるまで循環させるように制御される。
【0056】
次に、浴槽へのお湯張り機能における構成部品について説明する。このお湯張り機能は給湯用配管32a、33aを介して給湯用水と水道水とを混合させて浴槽へ出湯するものであり、お湯張りを含めて差し湯およびたし湯することができるようにしている。具体的には、給湯用配管32から分岐した給湯用配管32a、33aを浴水循環回路61に設けられた分岐点62aに接続している。
【0057】
そして、給湯用配管32aの下流端と給水用配管31の合流部位において給湯温度調節手段であるお湯張り用混合弁35aが設けられ、そのお湯張り用混合弁35aの出口側に給湯用配管33aが接続されている。そして、その給湯用配管33aには、上流側から順に、お湯張り用給湯サーミスタ53a、お湯張り用開閉弁57、お湯張り用流量カウンタ58a、逆止弁59が設けられている。
【0058】
お湯張り用混合弁35aは、上述した給湯用混合弁35と同じように、給湯用配管33aに出湯させる給湯用水の湯温を調節する温度調節弁であり、それぞれの開口面積比を調節することで、内側管30bで熱交換された給湯用水と水道水との混合比を調節して設定温度に調節するように制御される。さらに、お湯張り用混合弁3aは、後述する給湯制御部41に電気的に接続されており、上述した給水サーミスタ51、熱交換後サーミスタ52、およびお湯張り用給湯サーミスタ53aにより検出される給湯用水の温度情報に基づいて制御される。
【0059】
また、お湯張り用開閉弁57は、後述する給湯制御部41により制御され、給湯用配管33aに流れる混合湯を開閉する電磁弁である。お湯張り用流量カウンタ58aは給湯用配管33a内に流れる混合湯流量を検出するものであり、このお湯張り用流量カウンタ58aにより検出された流量情報を後述する給湯制御部41に出力するようにしている。そして、逆止弁59は浴水循環回路61内の浴水が給湯用配管33a内に流通させないための弁である。
【0060】
なお、お湯張り用開閉弁57を開弁させて浴槽にお湯張り、差し湯、たし湯をするときは、開閉弁66も開弁するように制御されるとともに、水圧センサ65により検出された水位レベルが所定レベルに達したときに、お湯張り用開閉弁57および開閉弁66が閉弁されて設定流量の混合湯が浴槽内にお湯張りされることになる。また、差し湯、たし湯は、お湯張り用流量カウンタ58aにより検出された流量情報に基づいて所定の流量の混合湯が出湯されるように制御される。
【0061】
次に、給湯制御部41は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵のROM(図示せず)には、予め設定された制御プログラムが設けられており、各サーミスタ51〜55、53a、68、71からの温度情報、各流量カウンタ58、58aからの流量情報および図示しない操作盤に設けられた操作スイッチからの操作信号等に基づいて、一次側循環流路11、11a内、浴水循環回路61内、給湯用配管32、32a、33、33a内の各種アクチュエータ類を制御するように構成されている。
【0062】
また、熱源制御部42は、給湯制御部41と同じように、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵のROM(図示せず)には、予め設定された制御プログラムが設けられており、図示しない各種サーミスタからの温度情報などに基づいてヒートポンプユニット20内のアクチュエータ類を制御する。この熱源制御部42では、蓄熱用熱交換器(図示しない)で加熱された蓄熱用流体の湯温を一定温度に保つために、加熱後の蓄熱用流体温度を検出する貯湯サーミスタ(最上部)55の検出温度に基づいて電動ポンプ(図示しない)の回転数制御を行っている。
【0063】
ここで、本発明の要部である本装置の施工後における貯湯タンク10内に蓄熱用流体を充填する充填作業を行なうときに必要となる構成部品について説明する。なお、本実施形態では、蓄熱用流体として水道水を用いることで、一次側循環流路11、11a内に水道水を導水するように構成している。具体的には、図1に示すように、蓄熱用流体を供給するための供給流路81、流れ方向を切り換える切換弁82から構成している。
【0064】
そして、供給流路81は給水用配管31と一次側循環流路11、11aの高温取り出し管12とを繋ぐように設けられ、その上流側に逆止弁83が設けられている。また、切換弁82は、給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60の上流部である高温取り出し管12の上流側中途に設けられ、一方が供給流路81の下流端に接続されている。
【0065】
この切換弁82は給湯制御部41により、通常時には貯湯タンク10と給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器30が連通するように流れ方向が制御され、充填作業のときは供給流路81と一次側循環流路11、11aとが連通するように制御される。従って、言い換えれば、この切換弁82は畜熱用流体の供給口である言える。
【0066】
なお、本実施形態では、切換弁82と供給流路81とを請求項で称する蓄熱用流体供給手段と称する。ところで、高中温混合弁16は通常時には、上述したように、高温取り出し管12から取り出した高温の蓄熱用流体と中温取り出し管13から取り出した中温の蓄熱用流体との混合比を調節する温度調節弁であるが、充填作業のときは、図示しない切換スイッチを操作すると、高温側100%開度、または中温側100%開度のいずれか一方側が100%開口するように設定している。
【0067】
次に、以上の構成による本装置の施工後における貯湯タンク10内への蓄熱用流体の充填作業について図2に基づいて説明する。まず、図示しない試運転スイッチを操作すると、給湯制御部41により切換弁82が供給流路81と一次側循環流路11、11aとが連通する流れ方向に切り換えられる。そして、高中温混合弁16を高温側が100%開度となるように切換スイッチを操作すると、給水用配管31から水道水が一次側循環流路11、11a内に導水される。
【0068】
より具体的には、図2に示すように、給水用配管31から水道水を図中に示す矢印a→矢印b→矢印c→追い焚き用熱交換器60→矢印d→貯湯タンク10と、矢印a→矢印b→矢印c1→矢印c2→給湯用熱交換器30→矢印d2→貯湯タンク10との順に圧送して、貯湯タンク10内に水道水を満タンに充填するようにしている。これにより、この間の流路内の空気が水道圧により圧送されることで貯湯タンク10側に送り込まれ空気孔10aから外部に排出される。従って、一次側循環流路11、11a内の空気抜けが行なわれることになる。
【0069】
なお、高中温混合弁16が中温側100%開度のときは、図中に示す矢印c1が閉塞するので、給湯用熱交換器30側には畜熱用流体が流通せず、追い焚き用熱交換器60側のみに圧送される。そして、貯湯タンク10内に満タンになるまで水道水を供給して、満タンを検出したら試運転スイッチを操作することで切換弁82の流れ方向が通常時側に切り換えられて充填作業を終了する。その後、ヒートポンプユニット20を作動させて、貯湯タンク10内の蓄熱用流体の沸き上げ運転を実行することにより、高温(例えば、85℃)の蓄熱用流体が貯えられる。
【0070】
そして、貯えられた高温の蓄熱用流体を熱源として、第1循環ポンプ17および第2循環ポンプ17aを作動させて給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60に蓄熱用流体を循環させるときに、一次側循環流路11、11a内に空気が滞留するエアーロック現象の発生なく循環流路が形成できる。そして、給湯用熱交換器30で熱交換された給湯用水と水道水とを混合させて台所、洗面所、浴槽などの給湯対象個所に給湯するとともに、追い焚き用熱交換器60により浴水を追い焚きすることができる。
【0071】
なお、本実施形態では、畜熱用流体を水道水のみとしたが、これに限らず、具体的に、図3に示すように、供給流路81に蓄熱剤供給手段80を設けて水道水に蓄熱剤を添加するように構成しても良い。この蓄熱剤供給手段60は上述したように防腐剤、凍結防止剤等のうち、いずれか一つの畜熱剤が収容されており、貯湯タンク10内に蓄熱用流体を充填するときに、供給流路81を流れる水道水に所定量の蓄熱剤が供給するように構成したものである。これにより、容易に畜熱剤を水道水に供給できる。なお、防腐剤、凍結防止剤のほかに、例えば、エチレングリコール水溶液やプロピレングリコール水溶液などの水溶性の蓄熱剤を用いても良い。
【0072】
以上の第1実施形態の貯湯式給湯装置によれば、貯湯タンク10内に蓄熱用流体を充填させるときに、一次側循環流路11、11aの給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60の上流部より蓄熱用流体を供給して、給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60側に圧送させた後に、貯湯タンク10側に充填するように構成されたことにより、水道圧で蓄熱用流体を給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60側から圧送させることで、一次側循環流路11、11a内の空気が貯湯タンク10側に送り込まれるので通常時における配管経路内のエアーロック現象の発生がなくかつ蓄熱用流体の充填作業が容易にできる。
【0073】
また、具体的には、一次側循環流路11、11aに、蓄熱用流体を供給する供給流路81と流れ方向を切り換える切換弁62とから構成したことにより、蓄熱用流体が給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60側の空気を送り出すように貯湯タンク10内に送り込まれるので配管経路内のエアーロック現象の発生がなくかつ充填作業が容易にできる。
【0074】
また、供給流路81の上流端が給水源に接続されるとともに、供給流路81に蓄熱剤を供給する蓄熱剤供給手段60が設けられていることにより、充填作業のときに、例えば、エチレングリコール水溶液やプロピレングリコール水溶液などの水溶性の蓄熱剤を用いれば、水道圧で給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60側に圧送させることが容易にできる。これにより、蓄熱用流体の充填作業が容易にできる。
【0075】
また、貯湯タンク10は、大気圧もしくは極低圧となるように構成したことにより、従来の高圧(例えば、170kPa)タンクのような耐圧設計が不要となるため、貯湯タンク自体を樹脂により成形することができる。この場合、一般的に用いられるステンレス鋼加工に必要なプレス工程、溶接工程が不要となって、従来よりも製造コストを低く抑えることができる。さらに、高圧タンクのように、耐圧上から円筒形状とする必要がなくタンク形状の設計自由度を高くできる。
【0076】
また、二酸化炭素などの冷媒を用いた超臨界ヒートポンプ方式のヒートポンプユニット20では、沸き上げ温度が約90〜95℃程度と高くなることで蓄熱用流体側からの気泡の発生度が高いため、まれに、給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60内に気泡が溜まりエアーロック現象が発生したとしても、本実施形態によれば容易に気泡を貯湯タンク10側に追い出すことができ、好適である。
【0077】
(第2実施形態)
以上の第1実施形態では、給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60の上流部である高温取り出し管12に蓄熱用流体供給手段である切換弁82および供給流路81および蓄熱剤供給手段60を設けたが、これに限らず、給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60の下流部である戻し管15、15aに設けても良い。
【0078】
具体的には、図4に示すように、供給流路81は給水用配管31と一次側循環流路11、11aの戻し管15、15aとを繋ぐように設けられている。また、切換弁82は、給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60の下流部である戻し管15、15aの中途に設けられ、一方が供給流路81の下流端に接続されている。そして、切換弁82は給湯制御部41により、通常時には貯湯タンク10と給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器30が連通するように流れ方向が制御され、充填作業のときは供給流路81と一次側循環流路11、11aとが連通するように制御される。
【0079】
以上の構成によれば、貯湯タンク10内に畜熱用流体を充填するときに、図4に示すように、給水用配管31から水道水を図中に示す矢印a→矢印b→給湯用熱交換器30→矢印c→矢印d→貯湯タンク10と、矢印a→矢印b1→追い焚き用熱交換器60→矢印d→貯湯タンク10との順に圧送して、貯湯タンク10内に水道水を満タンに充填するようにしている。これにより、この間の流路内の空気が水道圧により圧送されることで貯湯タンク10側に送り込まれ空気孔10aから外部に排出される。従って、一次側循環流路11、11a内の空気抜けが行なわれることになる。
【0080】
これにより、水道圧で蓄熱用流体を給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60側から圧送させることで、一次側循環流路11、11a内の空気が貯湯タンク10側に送り込まれるので通常時における配管経路内のエアーロック現象の発生がなくかつ蓄熱用流体の充填作業が容易にできる。
【0081】
(第3実施形態)
以上の実施形態では、供給流路81の上流端を給水用配管31に繋げるように構成したが、これに限らず、蓄熱剤が流動性蓄熱剤のときは、流動性蓄熱剤を収容する貯蔵容器80aを供給流路81の上流端に接続し、この貯蔵容器80a内の流動性蓄熱剤を蓄熱用流体として、一次側循環流路11、11a内に供給しても良い。
【0082】
ただし、本実施形態では、図5に示すように、貯蔵容器80aから流動性蓄熱剤を圧送するための圧送手段である圧送ポンプ84が供給流路81に設けられている。そして、貯湯タンク10内に蓄熱用流体を充填するときは、以上の実施形態と同じように切換弁62を給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60と供給流路81とが連通する流れ方向に切り換え、圧送ポンプ84を作動させることで、給湯用熱交換器30および追い焚き用熱交換器60側に圧送させた後に貯湯タンク10内に蓄熱用流体を充填することができる。これにより、第1、第2実施形態と同様の効果を奏するものである。
【0083】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、貯湯タンク10は、必ずしも樹脂材料を使用する必要はなく、金属材料で成形しても良い。また、貯湯タンク10の形状は、直方体形状でなくても、例えば円筒形状でも良い。また、貯湯タンク10を大気開放形に形成したが、密閉タイプ構造の貯湯タンクでも良い。ただしこの場合には、減圧弁、圧力逃がし弁などのタンクを保護するための部品が必要となる。
【0084】
また、以上の実施形態では、冷媒に二酸化炭素を用いたヒートポンプユニット20を熱源装置として説明したが、これに限らず、フロン、代替フロンなどの冷媒を用いる一般的なヒートポンプサイクルでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1実施形態における貯湯式給湯装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態における貯湯タンク10内に畜熱用流体を充填するときの畜熱用流体の導水形態を示す形態図である。
【図3】本発明の第1実施形態の変形例における貯湯式給湯装置の全体構成を示す模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態における貯湯式給湯装置の全体構成を示す模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態の変形例における貯湯式給湯装置の全体構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0086】
10…貯湯タンク
11、11a…一次側循環流路
20…ヒートポンプユニット(加熱手段)
30…給湯用熱交換器(加熱用熱交換器)
30a、60a…第1流通部
30b、60b…第2流通部
60…追い焚き用熱交換器(加熱用熱交換器)
80…蓄熱剤供給手段
80a…貯蔵容器
81…供給流路(蓄熱用流体供給手段)
82…切換弁(蓄熱用流体供給手段)
84…圧送ポンプ(圧送手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプサイクルからなる加熱手段(20)によって加熱される蓄熱用流体を内部に貯える貯湯タンク(10)と、
前記貯湯タンク(10)内の蓄熱用流体が流通する第1流通部(30a、60a)と被加熱流体が流通する第2流通部(30b、60b)とを隣接して設け、かつ蓄熱用流体と被加熱流体とが対向流となるように構成され、両者間で熱交換を行なう加熱用熱交換器(30、60)と、
前記第1流通部(30a、60a)の下流端が前記貯湯タンク(10)の下方部に連通するように構成され、かつ前記加熱手段(20)で加熱された前記貯湯タンク(10)内に貯えられた蓄熱流体のうち、高温の蓄熱流体および中温の蓄熱流体の少なくとも一方が前記第1流通部(30a、60a)側に流通するように構成された一次側循環流路(11、11a)とを備える貯湯式給湯装置において、
前記一次側循環流路(11、11a)には、前記貯湯タンク(10)内に蓄熱用流体を充填するときに、前記加熱用熱交換器(30、60)の上流部もしくは下流部のいずれか一方より蓄熱用流体を供給して、前記加熱用熱交換器(30、60)側に圧送させた後に、前記貯湯タンク(10)側に充填するように構成されたことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記一次側循環流路(11、11a)には、蓄熱用流体を供給する蓄熱用流体供給手段(81、82)が設けられ、
前記蓄熱用流体供給手段(81、82)は、前記貯湯タンク(10)内に蓄熱用流体を充填するときに、蓄熱用流体を前記加熱用熱交換器(30、60)側に供給するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記蓄熱用流体供給手段(81、82)は、蓄熱用流体を供給する供給流路(81)と流れ方向を切り換える切換弁(82)とから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項4】
前記蓄熱用流体供給手段(81、82)は、前記供給流路(81)の上流端が給水源に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項5】
前記蓄熱用流体供給手段(81、82)には、前記供給流路(81)の上流端が給水源に接続されるとともに、前記供給流路(81)に蓄熱剤を供給する蓄熱剤供給手段(80)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項6】
前記蓄熱用流体供給手段(81、82)は、前記供給流路(81)に、蓄熱用流体を貯蔵する貯蔵容器(80a)と、前記貯蔵容器(80a)内の蓄熱用流体を外部に圧送する圧送手段(84)とが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項7】
前記貯湯タンク(10)は、大気圧もしくは極低圧となるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項8】
前記加熱手段(20)は、冷媒の高圧側圧力が臨界圧力以上となる超臨界ヒートポンプサイクルであり、前記臨界圧力以上に昇圧された冷媒により蓄熱用流体を加熱することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−17363(P2006−17363A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194436(P2004−194436)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】