貯湯式電気温水器
【課題】小型且つ簡単な構造で、貯湯タンクから高温の湯を安定して押し出す性能を高めた貯湯式電気温水器を提供すること。
【解決手段】貯湯タンクは、入水部と、出湯部と、入水部と出湯部との間に形成された貯湯部と、貯湯部の厚さ方向に対して略垂直な方向に蛇行する蛇行流路を貯湯部の内部に形成するように貯湯部の内部を仕切る仕切り壁部と、を有する。
【解決手段】貯湯タンクは、入水部と、出湯部と、入水部と出湯部との間に形成された貯湯部と、貯湯部の厚さ方向に対して略垂直な方向に蛇行する蛇行流路を貯湯部の内部に形成するように貯湯部の内部を仕切る仕切り壁部と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式電気温水器に関し、特に扁平箱形の貯湯タンクを備えた貯湯式電気温水器に関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式電気温水器を高さが小さいスペースに設置するためには、貯湯タンクを薄くする必要がある。しかし、一般的な円筒形状のタンクと比較して、広い面を下にして設置した薄型タンク(寝かせ置きの薄型タンク)は、タンク内に給水を行ってタンク外に湯を押し出す際に、給水された比較的低温の水が高温の湯に混ざって出水されやすい。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、偏平箱形のタンク内に仕切りを設けて、タンクの厚み方向に沿って交互に流れが反転する流路をタンク内に形成することで、タンク内への給水時に、給水された水と、出湯される湯との混合を抑えんとする技術が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1では、扁平箱形のタンクの厚さ方向(上下方向)に方向が反転する流路が形成されており、幅方向(短手方向)全体にわたって流路が形成されているため流路面積が比較的大きくなりがちであり、流路断面積を小さくするには、特許文献1の図5に開示されるように、幅方向を分断するように長手方向に延在した仕切りをさらに設ける必要があり、コストアップや製造が困難になるという問題がある。また、特許文献1では、タンクの外部に、別途、加熱手段を設けており、装置全体の大型化及び構造の複雑化につながる。
【特許文献1】特開2002−89961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、小型且つ簡単な構造で、湯の「押し出し効率」すなわち高温の湯を安定して押し出す性能を高めた貯湯式電気温水器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、扁平箱形の貯湯タンクを備えた貯湯式電気温水器であって、前記貯湯タンクは、入水部と、出湯部と、前記入水部と前記出湯部との間に形成された貯湯部と、前記貯湯部の厚さ方向に対して略垂直な方向に蛇行する蛇行流路を前記貯湯部の内部に形成するように前記貯湯部の内部を仕切る仕切り壁部と、を有することを特徴とする貯湯式電気温水器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型且つ簡単な構造で、所望の温度の湯の押し出し効率を高めた貯湯式電気温水器が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る貯湯式電気温水器における貯湯タンク10の模式斜視図である。
図2は、同貯湯タンク10の内部を表す模式平面図である。
【0010】
貯湯タンク10は、6つの平面部10a〜10fを有する直方体状の扁平箱形を呈する。貯湯タンク10の内部には、複数の仕切り壁部4、5で仕切られた貯湯部6が形成されている。長手方向の両端に形成された2つの平面部10c、10dのうち、一方の平面部10cには、貯湯部6と、貯湯タンク10の外部に設けられる入水流路と、を連通させる入水部11が設けられている。他方の平面部10dには、貯湯部6と、貯湯タンク10の外部に設けられる出湯流路と、を連通させる出湯部12が設けられている。
【0011】
貯湯部6は、複数の仕切り壁部4、5によって、入水部11と出湯部12との間に形成された蛇行流路として設けられている。仕切り壁部4、5は、貯湯タンク10の最も広い平面部10e、10fに対して略垂直に厚さ方向に延在する矩形板状を呈する。そして、貯湯部6の内部には、貯湯部6の厚さ方向に対して略垂直な方向に蛇行する蛇行流路が形成される。ここで、貯湯部6の厚さ方向とは、貯湯タンク10の最も広い平面部10e、10fに対して垂直な方向をいうものとする。
【0012】
仕切り壁部4の4つの縁部のうち3つの縁部は、それぞれ、平面部10a、10e、10fに接して、それら平面部10a、10e、10fとの間に隙間を形成していない。仕切り壁部4は平面部10bには接しておらず、仕切り壁部4と平面部10bとの間には隙間が形成されている。仕切り壁部4は、長手方向にみた仕切り壁部4の両側の空間を仕切っているが、その仕切り壁部4の両側の空間は、仕切り壁部4と平面部10bとの間の隙間を通じて連通される。
【0013】
仕切り壁部5の4つの縁部のうち3つの縁部は、それぞれ、平面部10b、10e、10fに接して、それら平面部10b、10e、10fとの間に隙間を形成していない。仕切り壁部5は平面部10aには接しておらず、仕切り壁部5と平面部10aとの間には隙間が形成されている。仕切り壁部5は、長手方向にみた仕切り壁部5の両側の空間を仕切っているが、その仕切り壁部5の両側の空間は、仕切り壁部5と平面部10aとの間の隙間を通じて連通される。
【0014】
このような仕切り壁部4と、仕切り壁部5とが、長手方向に所定間隔を隔てて交互に設けられている。
【0015】
貯湯タンク10の長手方向の略中央における貯湯部6内には、仕切り壁部4、5に対して略平行に設けられ、矩形板状を呈するヒータhが設けられている。ヒータhとしては、例えば、セラミックヒータ、あるいは、真鍮、鉄、アルミニウムなどにシーズヒータを鋳込み板状に加工した鋳込みヒータなどを用いることができる。
【0016】
ヒータhは、例えば、仕切り壁部4に挟まれるように、且つこれら仕切り壁部4に対して離間して設けられている。そして、ヒータhは、長手方向にみたヒータhの両側の空間を仕切っているが、そのヒータhの両側の空間は、ヒータhと平面部10aとの間の隙間を通じて連通される。ヒータhは、貯湯部6内の水を加熱する機能を有し、さらに、仕切り壁部4、5と共に蛇行流路の壁部としても機能する。
【0017】
図3は、貯湯タンク10の分解斜視図である。
図4(a)は、仕切り壁部5を正面から見た模式図であり、図4(b)は、仕切り壁部4を正面から見た模式図である。
【0018】
貯湯タンク10は、例えば、厚さ方向の半分の位置で分割した2つの分割体20a、20bを組み合わせて扁平箱形にされる。図4(a)に表されるように、仕切り壁部5は、平面部10b側に寄せられて設けられ、仕切り壁部5と平面部10aとの間には隙間が形成される。図4(b)に表されるように、仕切り壁部4は、平面部10a側に寄せられて設けられ、仕切り壁部4と平面部10bとの間には隙間が形成される。
【0019】
貯湯タンク10および仕切り壁部4、5は、樹脂であっても、金属であってもよい。貯湯タンク10および仕切り壁部4、5を樹脂から構成した場合、一体成形が可能で製造性がよい。貯湯タンク10および仕切り壁部4、5を金属により構成した場合、熱伝導率が高いため、沸き上げ効率が向上する。またこの場合、ヒータhは、仕切り壁部5と同じように取り付けることがきる。すなわち、ヒータhの4つの縁部のうち3つの縁部は、それぞれ、平面部10b、10e、10fに接して、それら平面部10b、10e、10fとの間に隙間を形成していない(図1参照)。そして、ヒータhは、平面部10aには接しておらず、ヒータhと平面部10aとの間には隙間が形成されている。ヒータhが金属製の貯湯タンク10と接触することで、熱伝導により、「沸き上げ効率」すなわち均一に沸き上がる効率が増す。
【0020】
貯湯タンク10および仕切り壁部4、5に用いられる樹脂材料としては、例えば、PPS(polyphenylene sulfide)樹脂が挙げられる。また、貯湯タンク10および仕切り壁部4、5に用いられる金属材料としては、ステンレス、銅などが挙げられる。
【0021】
入水部11を通じて貯湯部6内に入水された水は、ヒータhによって例えば85℃程度に加熱され貯湯部6内に貯められる。そして、湯の使用時には、入水部11から水が入水され、これにより貯湯部6における出湯部12近傍の湯が出湯部12から押し出されて、図示しない配管等を介して使用者の元に出湯される。
【0022】
このとき、入水部11から貯湯部6内に入水した水は、仕切り壁部4、5およびヒータhによって形成された蛇行流路を進む。すなわち、入水部11から入水した水は、仕切り壁部4、5、ヒータhにガイドされて、貯湯タンク10の短手方向に進みつつ、仕切り壁部4と平面部10bとの間の隙間、仕切り壁部5と平面部10aとの隙間、ヒータhと平面部10aとの隙間を介して隣のレーン(仕切り空間)に移り、貯湯タンク10の厚さ方向に対して略垂直な方向を蛇行しながら進む。
【0023】
このように、入水部11から貯湯部6内に入水した水が、流路断面積が比較的小さい蛇行流路を蛇行しながら出湯部12側に向けて進むため、入水部11から入水された比較的低温の水が、出湯部12近傍の湯と混ざりにくくでき、出湯部12から出湯される湯の温度低下を防げる。すなわち、出湯部12からの湯の押し出し効率の低下を防げる。
【0024】
また、入水部11から貯湯部6内に入水した水が蛇行する方向を、貯湯タンク10の厚さ方向に対して略垂直な方向とすることで、厚さ方向に蛇行させる特許文献1に比べて、より少ない仕切り壁部の数で流路断面積を小さくすることが可能になり、コスト低減や生産性向上が図れる。
【0025】
またさらに、貯湯タンク10を寝かせ置きした場合、すなわち、平面部10e、10fが略水平方向となるように配置した場合、貯湯タンク10内の水は、仕切り壁部4、5により形成される蛇行流路に沿って、略水平方向に蛇行しながら貯湯タンク10の中を進む。つまり、貯湯タンク10の中の水は、鉛直方向に沿った流れ成分が少ない。このため、流れ方向の断面積が小さいことにより、湯と水とが混ざり合うことを抑制する効果に加え、自然対流の影響を受けにくく、安定して湯を押し出すことができる。
【0026】
一方、特許文献1に開示されたタンクの場合、寝かせ置きにすると、本実施例と比較して流れ方向の断面積が大きいことに加え、鉛直方向に沿って上下に反転する流路がタンク内に形成される。しかしこの場合、鉛直下方に流れる時に、冷水のほうが温水よりも先に進む現象が生じやすい。その結果として、温水はタンク内に取り残されたまま冷水が先に流出するという傾向がある。
これに対して、本実施形態によれば、貯湯タンク10を寝かせ置きした場合に、タンク内の水は鉛直方向には蛇行せず、水平方向に蛇行する。従って、温水と冷水の逆転は生じにくい。
【0027】
また、貯湯タンク10を、例えば、平面部10eまたは平面部10fを下にして寝かせ置き設置した場合、板状のヒータhが、設置面から上方に延在する構成となるので、貯湯部6内の水を設置面から加熱することができ、高温流体の自然対流により低温になりがちな設置面近傍領域の温度低下を抑制でき、ヒータhによる水の沸き上げ効率が向上する。さらに、特許文献1に開示されたタンクの場合、寝かせ置きにすると、板状のヒータにより、設置面から加熱しても、仕切りが高温流体の自然対流を塞き止める形状となっているため、均一に沸き上げることはできないのに対して、本実施例の場合、仕切り壁が自然対流を塞き止めることがなく、均一に沸き上げることが可能となる。また、そのヒータhは、貯湯部6内で蛇行流路の壁部の一部として設けられていることで、コンパクト且つ簡単な構造となる。
【0028】
また、仕切り壁部4、5は、薄型扁平状の貯湯タンク10の強度を高める補強リブとしても機能し、耐水圧性も向上できる。
【0029】
貯湯タンク10の設置形態としては、例えば、平面部10eまたは平面部10fを、上または下にした寝かせ置きが考えられる。この寝かせ置きの場合、例えば、公共の洗面施設における洗面カウンターの裏に、外部に露出させずに設置することができ、公共空間における意匠性が高まる。また、貯湯タンク10を、例えば家庭における洗面台やキッチンの下の収納スペースに設置する場合には、薄型化により、洗面台下やキッチン下の収納スペースを圧迫せず、収納性が向上する。
【0030】
また、図5に表されるように、入水部11を下に、出湯部12を上にして、貯湯タンク10を縦置きに設置してもよい。この場合、高温流体の自然対流による上昇により、出湯部12近傍の湯の温度低下を抑制できるので、出湯部12からの湯の押し出し効率がより高まる。
【0031】
この縦置きの場合、例えば、洗面施設における鏡の裏に設置することで、貯湯タンク10からの熱を利用して鏡の曇り止めが期待できる。
【0032】
図10は、貯湯部6の蛇行流路の第1レーン(入水部11からの水が最初に入水される流路)に、水抜き口25を設けた具体例を表す。その水抜き口25には、水抜き栓23によって開閉される水抜き管24が接続されている。
【0033】
水抜き口25を、貯湯部6の蛇行流路の第1レーンに設けることで、貯湯タンク10を、図10に表されるように寝かせ置きに設置した場合でも、図11に表されるように縦置きに設置した場合でも、いずれの場合でも、重力の作用により、貯湯部6内の水を抜くことができるため、寝かせ置きおよび縦置きの両方の設置形態の併用が可能になる。
【0034】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前述したものと同様の要素については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0035】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態に係る貯湯式電気温水器における貯湯タンク21の模式斜視図である。
【0036】
本実施形態では、ヒータhを、入水部11の近傍に設けている。具体的には、入水部11からの水が最初に入水される流路(第1レーン)の壁部に相当する位置に、ヒータhを設けている。
【0037】
入水部11の近傍にヒータhがあることで、貯湯部6への入水後に入水部11近傍に貯まった比較的低温の水から沸き上げることができ、効率がよい。
【0038】
また、図7は、貯湯タンク21を縦置きに設置した状態を表す模式斜視図である。
この場合も、貯湯部6への入水後に入水部11近傍に貯まった比較的低温の水から沸き上げることができ効率がよく、さらに、高温流体の自然対流による上昇によって、貯湯部6の大部分を占めるヒータhの上方を効率よく加温することができる。
【0039】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態に係る貯湯式電気温水器における貯湯タンク31の模式斜視図である。
図9は、同貯湯タンク31を縦置きに設置した状態を表す模式斜視図である。
【0040】
本実施形態では、複数のヒータhを、入水部11と出湯部12とを結ぶ方向に分散配置して設けている。具体的には、3つのヒータhを、それぞれ、入水部11の近傍、出湯部12の近傍、貯湯タンク31の長手方向(入水部11と出湯部12とを結ぶ方向)の略中央に設けている。
【0041】
入水部11の近傍に設けたヒータhは、例えば、入水部11から数えて1番目のレーンの壁部に相当する位置に設けられている。
【0042】
一方、出湯部12の近傍、および貯湯タンク31の長手方向の略中央に設けたヒータhは、例えば、出湯部12から数えて2番目のレーンと6番目のレーンの壁部に相当する位置に設けられている。
【0043】
このように、複数のヒータhを分散配置することで、貯湯部6全体が均等に沸き上がり、沸き上げ効率のさらなる向上が図れる。また、複数のヒータhを分散配置した場合、各ヒータhの発熱量も分散させれば、すなわち1つのヒータhで貯湯部6全体を所望の温度に加熱する場合におけるそのヒータhの発熱量に対して、3つの各ヒータhの発熱量を例えば1/3にすることで、貯湯部6の過度の昇温を抑えられ、貯湯タンクの耐熱性や、装置の安全性が高まる。
【0044】
また、複数のヒータhを分散配置した場合、図9に表されるように、貯湯部6内における各ヒータhの近傍に、その近傍の温度を測定する温度センサ22を設け、この温度センサ22の温度測定結果を受けて、例えば、所望の温度より低い測定温度であったセンサ近傍のヒータhのみを動作させる制御を行えば、無駄な電力消費を抑えて効率のよい加熱・保温を行える。
【0045】
次に、図12は、厚さ60mm、長手方向長さ250mm、短手方向長さ200mmの扁平直方体状の貯湯タンク内の3リットルの水を85℃まで沸き上げた後、入水部から1.43リットル/分で給水したときの、出湯部から出湯された湯の出湯温度の時間変化を表すグラフ図である。横軸は時間(秒)を、縦軸は出湯部からの出湯温度(℃)を表す。
【0046】
この図12の結果より、貯湯部に仕切り壁部を設けた場合には、寝かせ置き設置および縦置き設置の両方とも約90秒程度の間、85℃の出湯温度が持続する。これに対して、仕切り壁部を設けなかった場合には、仕切り壁部を設けた場合よりも、85℃の湯の出湯時間が短い。特に、仕切り壁部を設けずに寝かせ置き設置した場合には、30〜35秒程度しか85℃の出湯時間が続かない。
【0047】
[第4の実施形態]
図13は、本発明の第4の実施形態に係る貯湯タンクの内部を表す模式平面図である。
【0048】
仕切り壁部はおよびヒータは、図13に表されるように、貯湯タンクの長手方向に沿って延在させてもよい。すなわち、貯湯タンクにおける長手方向の両端の平面部10c、10dの一方の平面部10cから、仕切り壁部34が、他方の平面部10dに向けて延在し、仕切り壁部34と他方の平面部10dとの間には隙間が形成されている。仕切り壁部35は、仕切り壁部34が接する一方の平面部10cに対向する他方の平面部10dから一方の平面部10cに向けて延在し、仕切り壁部35とその一方の平面部10cとの間には隙間が形成されている。これら仕切り壁部34、35が、貯湯タンクの短手方向に交互に配設されている。
【0049】
ヒータhは、貯湯タンクの短手方向の略中央に配設され、例えば、入水部11から数えて7番目のレーンの壁部に相当する位置に設けられている。
【0050】
[第5の実施形態]
図14は、本発明の第5の実施形態に係る貯湯タンクの分解斜視図である。
本実施形態においては、ヒータhは、貯湯タンク10の外側に設けられている。より具体的には、板状のヒータhは、貯湯部6の厚さ方向に対して垂直な側面、すなわち貯湯タンク10の最も広い平面部10fに隣接している。例えば、ハンダや熱伝導性のよい接着剤などにより板状のヒータhを金属製の貯湯タンク10の側面に接着することで、ヒータhの熱を貯湯タンク10に伝えることができる。そして、この場合、貯湯タンク10内に設けられた壁部4が熱伝導フィンとしての役割を果たし、タンク内の水を均一に高い効率で沸き上げることができる。また、図14に例示した如く、ヒータhを鉛直下方にして貯湯タンク10を寝かせ置きした場合、ヒータhから上方に向かう熱流を効率的に貯湯タンク10に伝えることができ、さらに効率よく沸き上げることができる。
【0051】
なお、本実施形態において、ヒータhは貯湯タンク10の平面部10fの全体に隣接させてもよいが、その代わりに、例えば、入水部11の近傍において隣接させたり、平面部10fの複数の部分に分けて隣接させてもよい。
【0052】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る貯湯式電気温水器における貯湯タンクの模式斜視図である。
【図2】同貯湯タンクの内部を表す模式平面図である。
【図3】同貯湯タンクの分解斜視図である。
【図4】(a)は、仕切り壁部5を正面から見た模式図であり、(b)は、仕切り壁部4を正面から見た模式図である。
【図5】同貯湯タンクを縦置きにした設置形態を表す模式斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る貯湯式電気温水器における貯湯タンクの模式斜視図である。
【図7】同貯湯タンクを縦置きにした設置形態を表す模式斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る貯湯式電気温水器における貯湯タンクの模式斜視図である。
【図9】同貯湯タンクを縦置きにした設置形態を表す模式斜視図である。
【図10】水抜き機構を設けた貯湯タンクを寝かせ置きに設置した状態を表す模式斜視図である。
【図11】水抜き機構を設けた貯湯タンクを縦置きに設置した状態を表す模式斜視図である。
【図12】出湯温度の時間変化を表すグラフ図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る貯湯タンクの内部を表す模式平面図である。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る貯湯タンクの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
4,5…仕切り壁部、6…貯湯部、10…貯湯タンク、11…入水部、12…出湯部、22…温度センサ、23…水抜き栓、34,35…仕切り壁部、h…ヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式電気温水器に関し、特に扁平箱形の貯湯タンクを備えた貯湯式電気温水器に関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式電気温水器を高さが小さいスペースに設置するためには、貯湯タンクを薄くする必要がある。しかし、一般的な円筒形状のタンクと比較して、広い面を下にして設置した薄型タンク(寝かせ置きの薄型タンク)は、タンク内に給水を行ってタンク外に湯を押し出す際に、給水された比較的低温の水が高温の湯に混ざって出水されやすい。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、偏平箱形のタンク内に仕切りを設けて、タンクの厚み方向に沿って交互に流れが反転する流路をタンク内に形成することで、タンク内への給水時に、給水された水と、出湯される湯との混合を抑えんとする技術が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1では、扁平箱形のタンクの厚さ方向(上下方向)に方向が反転する流路が形成されており、幅方向(短手方向)全体にわたって流路が形成されているため流路面積が比較的大きくなりがちであり、流路断面積を小さくするには、特許文献1の図5に開示されるように、幅方向を分断するように長手方向に延在した仕切りをさらに設ける必要があり、コストアップや製造が困難になるという問題がある。また、特許文献1では、タンクの外部に、別途、加熱手段を設けており、装置全体の大型化及び構造の複雑化につながる。
【特許文献1】特開2002−89961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、小型且つ簡単な構造で、湯の「押し出し効率」すなわち高温の湯を安定して押し出す性能を高めた貯湯式電気温水器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、扁平箱形の貯湯タンクを備えた貯湯式電気温水器であって、前記貯湯タンクは、入水部と、出湯部と、前記入水部と前記出湯部との間に形成された貯湯部と、前記貯湯部の厚さ方向に対して略垂直な方向に蛇行する蛇行流路を前記貯湯部の内部に形成するように前記貯湯部の内部を仕切る仕切り壁部と、を有することを特徴とする貯湯式電気温水器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型且つ簡単な構造で、所望の温度の湯の押し出し効率を高めた貯湯式電気温水器が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る貯湯式電気温水器における貯湯タンク10の模式斜視図である。
図2は、同貯湯タンク10の内部を表す模式平面図である。
【0010】
貯湯タンク10は、6つの平面部10a〜10fを有する直方体状の扁平箱形を呈する。貯湯タンク10の内部には、複数の仕切り壁部4、5で仕切られた貯湯部6が形成されている。長手方向の両端に形成された2つの平面部10c、10dのうち、一方の平面部10cには、貯湯部6と、貯湯タンク10の外部に設けられる入水流路と、を連通させる入水部11が設けられている。他方の平面部10dには、貯湯部6と、貯湯タンク10の外部に設けられる出湯流路と、を連通させる出湯部12が設けられている。
【0011】
貯湯部6は、複数の仕切り壁部4、5によって、入水部11と出湯部12との間に形成された蛇行流路として設けられている。仕切り壁部4、5は、貯湯タンク10の最も広い平面部10e、10fに対して略垂直に厚さ方向に延在する矩形板状を呈する。そして、貯湯部6の内部には、貯湯部6の厚さ方向に対して略垂直な方向に蛇行する蛇行流路が形成される。ここで、貯湯部6の厚さ方向とは、貯湯タンク10の最も広い平面部10e、10fに対して垂直な方向をいうものとする。
【0012】
仕切り壁部4の4つの縁部のうち3つの縁部は、それぞれ、平面部10a、10e、10fに接して、それら平面部10a、10e、10fとの間に隙間を形成していない。仕切り壁部4は平面部10bには接しておらず、仕切り壁部4と平面部10bとの間には隙間が形成されている。仕切り壁部4は、長手方向にみた仕切り壁部4の両側の空間を仕切っているが、その仕切り壁部4の両側の空間は、仕切り壁部4と平面部10bとの間の隙間を通じて連通される。
【0013】
仕切り壁部5の4つの縁部のうち3つの縁部は、それぞれ、平面部10b、10e、10fに接して、それら平面部10b、10e、10fとの間に隙間を形成していない。仕切り壁部5は平面部10aには接しておらず、仕切り壁部5と平面部10aとの間には隙間が形成されている。仕切り壁部5は、長手方向にみた仕切り壁部5の両側の空間を仕切っているが、その仕切り壁部5の両側の空間は、仕切り壁部5と平面部10aとの間の隙間を通じて連通される。
【0014】
このような仕切り壁部4と、仕切り壁部5とが、長手方向に所定間隔を隔てて交互に設けられている。
【0015】
貯湯タンク10の長手方向の略中央における貯湯部6内には、仕切り壁部4、5に対して略平行に設けられ、矩形板状を呈するヒータhが設けられている。ヒータhとしては、例えば、セラミックヒータ、あるいは、真鍮、鉄、アルミニウムなどにシーズヒータを鋳込み板状に加工した鋳込みヒータなどを用いることができる。
【0016】
ヒータhは、例えば、仕切り壁部4に挟まれるように、且つこれら仕切り壁部4に対して離間して設けられている。そして、ヒータhは、長手方向にみたヒータhの両側の空間を仕切っているが、そのヒータhの両側の空間は、ヒータhと平面部10aとの間の隙間を通じて連通される。ヒータhは、貯湯部6内の水を加熱する機能を有し、さらに、仕切り壁部4、5と共に蛇行流路の壁部としても機能する。
【0017】
図3は、貯湯タンク10の分解斜視図である。
図4(a)は、仕切り壁部5を正面から見た模式図であり、図4(b)は、仕切り壁部4を正面から見た模式図である。
【0018】
貯湯タンク10は、例えば、厚さ方向の半分の位置で分割した2つの分割体20a、20bを組み合わせて扁平箱形にされる。図4(a)に表されるように、仕切り壁部5は、平面部10b側に寄せられて設けられ、仕切り壁部5と平面部10aとの間には隙間が形成される。図4(b)に表されるように、仕切り壁部4は、平面部10a側に寄せられて設けられ、仕切り壁部4と平面部10bとの間には隙間が形成される。
【0019】
貯湯タンク10および仕切り壁部4、5は、樹脂であっても、金属であってもよい。貯湯タンク10および仕切り壁部4、5を樹脂から構成した場合、一体成形が可能で製造性がよい。貯湯タンク10および仕切り壁部4、5を金属により構成した場合、熱伝導率が高いため、沸き上げ効率が向上する。またこの場合、ヒータhは、仕切り壁部5と同じように取り付けることがきる。すなわち、ヒータhの4つの縁部のうち3つの縁部は、それぞれ、平面部10b、10e、10fに接して、それら平面部10b、10e、10fとの間に隙間を形成していない(図1参照)。そして、ヒータhは、平面部10aには接しておらず、ヒータhと平面部10aとの間には隙間が形成されている。ヒータhが金属製の貯湯タンク10と接触することで、熱伝導により、「沸き上げ効率」すなわち均一に沸き上がる効率が増す。
【0020】
貯湯タンク10および仕切り壁部4、5に用いられる樹脂材料としては、例えば、PPS(polyphenylene sulfide)樹脂が挙げられる。また、貯湯タンク10および仕切り壁部4、5に用いられる金属材料としては、ステンレス、銅などが挙げられる。
【0021】
入水部11を通じて貯湯部6内に入水された水は、ヒータhによって例えば85℃程度に加熱され貯湯部6内に貯められる。そして、湯の使用時には、入水部11から水が入水され、これにより貯湯部6における出湯部12近傍の湯が出湯部12から押し出されて、図示しない配管等を介して使用者の元に出湯される。
【0022】
このとき、入水部11から貯湯部6内に入水した水は、仕切り壁部4、5およびヒータhによって形成された蛇行流路を進む。すなわち、入水部11から入水した水は、仕切り壁部4、5、ヒータhにガイドされて、貯湯タンク10の短手方向に進みつつ、仕切り壁部4と平面部10bとの間の隙間、仕切り壁部5と平面部10aとの隙間、ヒータhと平面部10aとの隙間を介して隣のレーン(仕切り空間)に移り、貯湯タンク10の厚さ方向に対して略垂直な方向を蛇行しながら進む。
【0023】
このように、入水部11から貯湯部6内に入水した水が、流路断面積が比較的小さい蛇行流路を蛇行しながら出湯部12側に向けて進むため、入水部11から入水された比較的低温の水が、出湯部12近傍の湯と混ざりにくくでき、出湯部12から出湯される湯の温度低下を防げる。すなわち、出湯部12からの湯の押し出し効率の低下を防げる。
【0024】
また、入水部11から貯湯部6内に入水した水が蛇行する方向を、貯湯タンク10の厚さ方向に対して略垂直な方向とすることで、厚さ方向に蛇行させる特許文献1に比べて、より少ない仕切り壁部の数で流路断面積を小さくすることが可能になり、コスト低減や生産性向上が図れる。
【0025】
またさらに、貯湯タンク10を寝かせ置きした場合、すなわち、平面部10e、10fが略水平方向となるように配置した場合、貯湯タンク10内の水は、仕切り壁部4、5により形成される蛇行流路に沿って、略水平方向に蛇行しながら貯湯タンク10の中を進む。つまり、貯湯タンク10の中の水は、鉛直方向に沿った流れ成分が少ない。このため、流れ方向の断面積が小さいことにより、湯と水とが混ざり合うことを抑制する効果に加え、自然対流の影響を受けにくく、安定して湯を押し出すことができる。
【0026】
一方、特許文献1に開示されたタンクの場合、寝かせ置きにすると、本実施例と比較して流れ方向の断面積が大きいことに加え、鉛直方向に沿って上下に反転する流路がタンク内に形成される。しかしこの場合、鉛直下方に流れる時に、冷水のほうが温水よりも先に進む現象が生じやすい。その結果として、温水はタンク内に取り残されたまま冷水が先に流出するという傾向がある。
これに対して、本実施形態によれば、貯湯タンク10を寝かせ置きした場合に、タンク内の水は鉛直方向には蛇行せず、水平方向に蛇行する。従って、温水と冷水の逆転は生じにくい。
【0027】
また、貯湯タンク10を、例えば、平面部10eまたは平面部10fを下にして寝かせ置き設置した場合、板状のヒータhが、設置面から上方に延在する構成となるので、貯湯部6内の水を設置面から加熱することができ、高温流体の自然対流により低温になりがちな設置面近傍領域の温度低下を抑制でき、ヒータhによる水の沸き上げ効率が向上する。さらに、特許文献1に開示されたタンクの場合、寝かせ置きにすると、板状のヒータにより、設置面から加熱しても、仕切りが高温流体の自然対流を塞き止める形状となっているため、均一に沸き上げることはできないのに対して、本実施例の場合、仕切り壁が自然対流を塞き止めることがなく、均一に沸き上げることが可能となる。また、そのヒータhは、貯湯部6内で蛇行流路の壁部の一部として設けられていることで、コンパクト且つ簡単な構造となる。
【0028】
また、仕切り壁部4、5は、薄型扁平状の貯湯タンク10の強度を高める補強リブとしても機能し、耐水圧性も向上できる。
【0029】
貯湯タンク10の設置形態としては、例えば、平面部10eまたは平面部10fを、上または下にした寝かせ置きが考えられる。この寝かせ置きの場合、例えば、公共の洗面施設における洗面カウンターの裏に、外部に露出させずに設置することができ、公共空間における意匠性が高まる。また、貯湯タンク10を、例えば家庭における洗面台やキッチンの下の収納スペースに設置する場合には、薄型化により、洗面台下やキッチン下の収納スペースを圧迫せず、収納性が向上する。
【0030】
また、図5に表されるように、入水部11を下に、出湯部12を上にして、貯湯タンク10を縦置きに設置してもよい。この場合、高温流体の自然対流による上昇により、出湯部12近傍の湯の温度低下を抑制できるので、出湯部12からの湯の押し出し効率がより高まる。
【0031】
この縦置きの場合、例えば、洗面施設における鏡の裏に設置することで、貯湯タンク10からの熱を利用して鏡の曇り止めが期待できる。
【0032】
図10は、貯湯部6の蛇行流路の第1レーン(入水部11からの水が最初に入水される流路)に、水抜き口25を設けた具体例を表す。その水抜き口25には、水抜き栓23によって開閉される水抜き管24が接続されている。
【0033】
水抜き口25を、貯湯部6の蛇行流路の第1レーンに設けることで、貯湯タンク10を、図10に表されるように寝かせ置きに設置した場合でも、図11に表されるように縦置きに設置した場合でも、いずれの場合でも、重力の作用により、貯湯部6内の水を抜くことができるため、寝かせ置きおよび縦置きの両方の設置形態の併用が可能になる。
【0034】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前述したものと同様の要素については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0035】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態に係る貯湯式電気温水器における貯湯タンク21の模式斜視図である。
【0036】
本実施形態では、ヒータhを、入水部11の近傍に設けている。具体的には、入水部11からの水が最初に入水される流路(第1レーン)の壁部に相当する位置に、ヒータhを設けている。
【0037】
入水部11の近傍にヒータhがあることで、貯湯部6への入水後に入水部11近傍に貯まった比較的低温の水から沸き上げることができ、効率がよい。
【0038】
また、図7は、貯湯タンク21を縦置きに設置した状態を表す模式斜視図である。
この場合も、貯湯部6への入水後に入水部11近傍に貯まった比較的低温の水から沸き上げることができ効率がよく、さらに、高温流体の自然対流による上昇によって、貯湯部6の大部分を占めるヒータhの上方を効率よく加温することができる。
【0039】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態に係る貯湯式電気温水器における貯湯タンク31の模式斜視図である。
図9は、同貯湯タンク31を縦置きに設置した状態を表す模式斜視図である。
【0040】
本実施形態では、複数のヒータhを、入水部11と出湯部12とを結ぶ方向に分散配置して設けている。具体的には、3つのヒータhを、それぞれ、入水部11の近傍、出湯部12の近傍、貯湯タンク31の長手方向(入水部11と出湯部12とを結ぶ方向)の略中央に設けている。
【0041】
入水部11の近傍に設けたヒータhは、例えば、入水部11から数えて1番目のレーンの壁部に相当する位置に設けられている。
【0042】
一方、出湯部12の近傍、および貯湯タンク31の長手方向の略中央に設けたヒータhは、例えば、出湯部12から数えて2番目のレーンと6番目のレーンの壁部に相当する位置に設けられている。
【0043】
このように、複数のヒータhを分散配置することで、貯湯部6全体が均等に沸き上がり、沸き上げ効率のさらなる向上が図れる。また、複数のヒータhを分散配置した場合、各ヒータhの発熱量も分散させれば、すなわち1つのヒータhで貯湯部6全体を所望の温度に加熱する場合におけるそのヒータhの発熱量に対して、3つの各ヒータhの発熱量を例えば1/3にすることで、貯湯部6の過度の昇温を抑えられ、貯湯タンクの耐熱性や、装置の安全性が高まる。
【0044】
また、複数のヒータhを分散配置した場合、図9に表されるように、貯湯部6内における各ヒータhの近傍に、その近傍の温度を測定する温度センサ22を設け、この温度センサ22の温度測定結果を受けて、例えば、所望の温度より低い測定温度であったセンサ近傍のヒータhのみを動作させる制御を行えば、無駄な電力消費を抑えて効率のよい加熱・保温を行える。
【0045】
次に、図12は、厚さ60mm、長手方向長さ250mm、短手方向長さ200mmの扁平直方体状の貯湯タンク内の3リットルの水を85℃まで沸き上げた後、入水部から1.43リットル/分で給水したときの、出湯部から出湯された湯の出湯温度の時間変化を表すグラフ図である。横軸は時間(秒)を、縦軸は出湯部からの出湯温度(℃)を表す。
【0046】
この図12の結果より、貯湯部に仕切り壁部を設けた場合には、寝かせ置き設置および縦置き設置の両方とも約90秒程度の間、85℃の出湯温度が持続する。これに対して、仕切り壁部を設けなかった場合には、仕切り壁部を設けた場合よりも、85℃の湯の出湯時間が短い。特に、仕切り壁部を設けずに寝かせ置き設置した場合には、30〜35秒程度しか85℃の出湯時間が続かない。
【0047】
[第4の実施形態]
図13は、本発明の第4の実施形態に係る貯湯タンクの内部を表す模式平面図である。
【0048】
仕切り壁部はおよびヒータは、図13に表されるように、貯湯タンクの長手方向に沿って延在させてもよい。すなわち、貯湯タンクにおける長手方向の両端の平面部10c、10dの一方の平面部10cから、仕切り壁部34が、他方の平面部10dに向けて延在し、仕切り壁部34と他方の平面部10dとの間には隙間が形成されている。仕切り壁部35は、仕切り壁部34が接する一方の平面部10cに対向する他方の平面部10dから一方の平面部10cに向けて延在し、仕切り壁部35とその一方の平面部10cとの間には隙間が形成されている。これら仕切り壁部34、35が、貯湯タンクの短手方向に交互に配設されている。
【0049】
ヒータhは、貯湯タンクの短手方向の略中央に配設され、例えば、入水部11から数えて7番目のレーンの壁部に相当する位置に設けられている。
【0050】
[第5の実施形態]
図14は、本発明の第5の実施形態に係る貯湯タンクの分解斜視図である。
本実施形態においては、ヒータhは、貯湯タンク10の外側に設けられている。より具体的には、板状のヒータhは、貯湯部6の厚さ方向に対して垂直な側面、すなわち貯湯タンク10の最も広い平面部10fに隣接している。例えば、ハンダや熱伝導性のよい接着剤などにより板状のヒータhを金属製の貯湯タンク10の側面に接着することで、ヒータhの熱を貯湯タンク10に伝えることができる。そして、この場合、貯湯タンク10内に設けられた壁部4が熱伝導フィンとしての役割を果たし、タンク内の水を均一に高い効率で沸き上げることができる。また、図14に例示した如く、ヒータhを鉛直下方にして貯湯タンク10を寝かせ置きした場合、ヒータhから上方に向かう熱流を効率的に貯湯タンク10に伝えることができ、さらに効率よく沸き上げることができる。
【0051】
なお、本実施形態において、ヒータhは貯湯タンク10の平面部10fの全体に隣接させてもよいが、その代わりに、例えば、入水部11の近傍において隣接させたり、平面部10fの複数の部分に分けて隣接させてもよい。
【0052】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る貯湯式電気温水器における貯湯タンクの模式斜視図である。
【図2】同貯湯タンクの内部を表す模式平面図である。
【図3】同貯湯タンクの分解斜視図である。
【図4】(a)は、仕切り壁部5を正面から見た模式図であり、(b)は、仕切り壁部4を正面から見た模式図である。
【図5】同貯湯タンクを縦置きにした設置形態を表す模式斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る貯湯式電気温水器における貯湯タンクの模式斜視図である。
【図7】同貯湯タンクを縦置きにした設置形態を表す模式斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る貯湯式電気温水器における貯湯タンクの模式斜視図である。
【図9】同貯湯タンクを縦置きにした設置形態を表す模式斜視図である。
【図10】水抜き機構を設けた貯湯タンクを寝かせ置きに設置した状態を表す模式斜視図である。
【図11】水抜き機構を設けた貯湯タンクを縦置きに設置した状態を表す模式斜視図である。
【図12】出湯温度の時間変化を表すグラフ図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る貯湯タンクの内部を表す模式平面図である。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る貯湯タンクの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
4,5…仕切り壁部、6…貯湯部、10…貯湯タンク、11…入水部、12…出湯部、22…温度センサ、23…水抜き栓、34,35…仕切り壁部、h…ヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平箱形の貯湯タンクを備えた貯湯式電気温水器であって、
前記貯湯タンクは、
入水部と、
出湯部と、
前記入水部と前記出湯部との間に形成された貯湯部と、
前記貯湯部の厚さ方向に対して略垂直な方向に蛇行する蛇行流路を前記貯湯部の内部に形成するように前記貯湯部の内部を仕切る仕切り壁部と、
を有することを特徴とする貯湯式電気温水器。
【請求項2】
前記貯湯タンクの内部に設けられたヒータをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式電気温水器。
【請求項3】
前記ヒータは、前記仕切り壁部と共に前記蛇行流路の壁部を形成する板状体であることを特徴とする請求項2記載の貯湯式電気温水器。
【請求項4】
前記貯湯タンクの側面のうちで、前記貯湯部の前記厚さ方向に対して垂直な側面に隣接して設けられたヒータをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式電気温水器。
【請求項5】
前記ヒータを、前記入水部の近傍に設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の貯湯式電気温水器。
【請求項6】
前記ヒータを、前記入水部と前記出湯部とを結ぶ方向に分散配置して複数設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の貯湯式電気温水器。
【請求項1】
扁平箱形の貯湯タンクを備えた貯湯式電気温水器であって、
前記貯湯タンクは、
入水部と、
出湯部と、
前記入水部と前記出湯部との間に形成された貯湯部と、
前記貯湯部の厚さ方向に対して略垂直な方向に蛇行する蛇行流路を前記貯湯部の内部に形成するように前記貯湯部の内部を仕切る仕切り壁部と、
を有することを特徴とする貯湯式電気温水器。
【請求項2】
前記貯湯タンクの内部に設けられたヒータをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式電気温水器。
【請求項3】
前記ヒータは、前記仕切り壁部と共に前記蛇行流路の壁部を形成する板状体であることを特徴とする請求項2記載の貯湯式電気温水器。
【請求項4】
前記貯湯タンクの側面のうちで、前記貯湯部の前記厚さ方向に対して垂直な側面に隣接して設けられたヒータをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式電気温水器。
【請求項5】
前記ヒータを、前記入水部の近傍に設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の貯湯式電気温水器。
【請求項6】
前記ヒータを、前記入水部と前記出湯部とを結ぶ方向に分散配置して複数設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の貯湯式電気温水器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−271228(P2007−271228A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100448(P2006−100448)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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