説明

貯湯式電気温水器

【課題】例えば洗面空間の手洗い器カウンタの裏やキッチンキャビネットのケコミ部などに設置できる設置性に優れタンク内の水の排水性に優れた高さの低い薄型の貯湯式電気温水器を提供することにある。
【解決手段】
貯湯タンク100と貯湯タンク100内の水を循環させる循環流路20とポンプ30と水抜き栓40を備えた貯湯式電気温水器において、貯湯タンク100は入水延長部11aを備える入水部11と出湯延長部12aを備える出湯部12、循環入口部13を有し、水抜き栓40が循環流路20内でかつポンプの下流側に設けられ、前記循環入口部13が一端が循環流路20に連接し、他端に貯湯タンク内100で開口した循環入口開口部13bを有する循環入口延長部13aをさらに備え、循環入口延長部13aは貯湯タンク内100の底面に向かって延長され前記循環入口開口部13bは循環流路延長部13aと循環流路20との連接部よりも下方にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、例えば洗面空間の手洗い器カウンタの裏やキッチンキャビネットのケコミ部などに設置できる設置性に優れ、タンクの耐圧性及びタンク内の水を均一に沸きあげる沸きあげ性を確保した上で、タンク内の水の排水性に優れた高さの低い薄型の貯湯式電気温水器を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
貯湯式電気温水器は、長期間使用していると貯湯タンク内が水垢などで汚れることがあるので、三ヶ月に1回程度水抜きを行い、貯湯タンク内を清潔に保つ必要がある。この時、底面に沈殿した水垢などのよどみを取り除くために、底面近傍まで十分な水抜き行う必要がある。また、長期間使用しないと貯湯タンクの水が凍結してしまう恐れがあり、機器が破損してしまうという問題点がある。そこで、貯湯式電気温水器は長期間使用しない場合に貯湯タンクの水を抜く必要がある。従来の貯湯式電気温水器の水抜き栓は、底面までの十分な水抜きを行うために重力の作用方向で見て貯湯タンクの底面もしくは側面の最下部に設置されている。(例えば特許文献1参照)
【0003】
一方、貯湯式電気温水器は公共の洗面空間などで蛇口から湯を供給するために用いられる。従来の貯湯式電気温水器は、カウンターの下の床など目に付く場所に設置されている。そのように設置されると洗面空間の美観や統一感を損なうという問題点がある。
【0004】
近年、貯湯式電気温水器を従来のようにカウンター下の床面に直接設置する代わりに、高さを低くしてカウンター裏などの洗面空間を使用する際に目に付かない場所に設置できるような薄型の貯湯式電気温水器が望まれている。なお、このような薄型の貯湯式電気温水器は、洗面空間のカウンター裏だけでなく、キッチンキャビネットのケコミ部やレストルーム内のカウンター裏などにも設置することができる。このように高さを低くした薄型の貯湯式電気温水器は様々な水周り空間の美観やインテリア性を向上できるため、世間に広く望まれている。
【0005】
ところで、貯湯式電気温水器は水道から貯湯タンク内に貯められた水を、貯湯タンク内に設置されたシースヒータなどのヒーターを用いて沸かしあげる。ヒーターより上側の貯湯タンク内の水は湯水の密度差で対流することにより、均一に沸きあげることができる。しかし、ヒーターより下側の貯湯タンク内の水は十分に沸きあげることができずに湯として有効に利用できない。このように十分沸きあがらない領域を死に水領域と言う。
【0006】
貯湯量を変えずに高さを低くした薄型の貯湯式電気温水器は高さの高い貯湯式電気温水器に比べ、床面と平行な貯湯タンクの断面積が大きいため、死に水領域が多くなる。
【0007】
このような理由から、薄型の貯湯式電気温水器は、高さの高い貯湯式電気温水器に比べ、取り出せる湯の量が少なくなってしまうという問題点があげられる。
【0008】
そこで、死に水領域を少なくするため、貯湯タンク外側に貯湯タンク内の水を循環させるための循環流路を形成し、その循環流路内にあるポンプで貯湯タンク内の水を循環しながら水を沸き上げる機構が考えられている。(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−355920号公報(図2)
【特許文献2】特開2002−89961号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に示されたような、薄型の貯湯式電気温水器に水抜き栓を設けようとすると、従来のように水抜き栓を貯湯タンクの底面もしくは側面の最下部に設置することが考えられる。しかしながら、底面に水抜き栓を設けると、水抜き栓の分だけ貯湯式電気温水器が高さ方向に厚くなってしまうため、薄型の貯湯式電気温水器がもつ空間の美観やインテリア性を向上するという特徴を損ねてしまう。さらに、高さ方向に厚くなるとキッチンキャビネットのケコミ部に収納することができなくなる。また、側面の最下部に水抜き栓を設けることも考えられるが、貯湯式電気温水器にはすべての面と面の間の角に耐圧性を考慮した曲率(以後、曲率部)が設けられており、側面の最下部にもこの曲率部が設けられている。曲率の付いた部分に水抜き栓を溶接することは難しく、耐圧面での信頼性が低下する。
【0010】
次に考えられるのが、特許文献2にあるように貯湯式電気温水器に備えられている循環流路とポンプを利用し、水抜き栓を循環流路中に設置することにより、ポンプによって水を吸い出し水抜きを行うという方法である。しかしながら、そのまま循環流路中に水抜き栓を設置しても、貯湯タンクの循環流路への入口より低いところでは、水が残ってしまい貯湯タンク内の水を十分に抜くことができない。
【0011】
本発明の目的は、例えば洗面空間の手洗い器カウンタの裏やキッチンキャビネットのケコミ部などに設置できる設置性に優れ、タンクの耐圧性及びタンク内の水を均一に沸きあげる沸きあげ性を確保した上で、タンク内の水の排水性に優れた高さの低い薄型の貯湯式電気温水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明にかかる貯湯式電気温水器は、貯湯タンクと、
前記貯湯タンク内の水を循環させる循環流路と、
ポンプと、
水抜き栓と、を備えた貯湯式電気温水器において、
前記貯湯タンクは、入水部と、
出湯部と、
当該側面に設置され循環流路へ連接された循環入口部と、
当該側面に設置され循環流路へ連接された循環出口部を備え、
前記入水部は、前記貯湯タンクの外側側面に設けられた入水連接部と、
前記貯湯タンク内で開口した入水開口部と、を有し、
前記出湯部は、前記貯湯タンクの外側側面に設けられた出湯連接部と、
前記貯湯タンク内で開口した出湯開口部と、を有し、
前記循環出口部は、前記貯湯タンク内に開口した循環出口開口部を有し、
前記ポンプは、前記循環流路中に設けられ、
前記水抜き栓は、前記循環流路中でかつ前記ポンプの下流側に設けられ、
前記循環入口部は、一端が前記循環流路に連接し、他端に貯湯タンク内で開口した循環入口開口部を有する循環入口延長部をさらに備え、
前記循環入口延長部は前記貯湯タンク内の底面に向かって延長され、前記循環入口開口部は前記循環流路延長部と循環流路との連接部よりも下方にあることを特徴としている。
【0013】
本発明による貯湯式電気温水器は、循環入口延長部によりタンク底面近郊まで循環入口開口部を近づけることができるため、ポンプを利用し水抜きを行うことで、貯湯タンク内の水を底面近傍まで十分に抜くことができる。そのため、本発明による貯湯式電気温水器は薄型であり洗面空間の手洗い器カウンタの下面やキッチンキャビネットのケコミ部などに設置できる設置性に優れるという特徴を残した上で、水抜き時に貯湯タンク内の水を十分に抜くことができる。また、曲率部にかからない部分に循環入口部を設けることができるため、耐圧性を確保することができる。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1に記載の貯湯式電気温水器において、
吸気栓が備えられ、前記吸気栓が前記出湯連接部、前記入水連接部、前記水抜き栓と前記循環出口部との間の循環流路、の少なくともいづれか1つの部分に設けられたことを特徴としている。
【0015】
本発明による貯湯式電気温水器は、新たに貯湯タンクに吸気栓を設ける必要がなくなり、量産の際の製造コストを削減することができる。また、貯湯タンクへの溶接部位が少なくなるため貯湯タンクの強度を増加させることにつながり、貯湯タンクの耐圧への信頼性を増すことができる。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1乃至請求項2に記載の貯湯式電気温水器において、
前記吸気栓の開閉動作と前記水抜き栓の開閉動作が連動していることを特徴としている。
【0017】
本発明による貯湯式電気温水器は、例えば水抜き栓を開けることにより吸気栓も連動して開くため、水抜き時に吸気栓と水抜き栓の両者の栓を個別に開ける必要がなくなり、水抜きの操作性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の貯湯式電気温水器において、
前記出湯部は一端が前記出湯連接部に連接し、他端に前記出湯開口部を有する出湯延長部をさらに備え、
前記出湯延長部は前記貯湯タンク内の上方にむかって延長され、前記出湯開口部は前記出湯連接部よりも上方にあることを特徴としている。
【0019】
貯湯式電気温水器では入水される密度の大きい水で、密度の小さい湯を上方に向かって押し出している。ここで、入水される水と湯がなるべく混ざり合わずに、高温の湯を長時間、出湯部から出湯させることが望ましい。この性能を押し出し性能と呼ぶ。
【0020】
押し出し性能を向上させるには出湯部をなるべく上方に取り付ける必要がある。しかし、タンクの上方には曲率部があり、ここに出湯部を設けると耐圧性が低下してしまう。そこで、曲率部にかからない貯湯タンクの側面に出湯部を設置すると、出湯部の位置が低くなるので押し出し性能が低下する。
【0021】
本発明による貯湯式電気温水器は出湯延長部によりタンクの耐圧性を低下させずに、タンク上面近郊まで出湯開口部を近づけることができるため、上方に湯が残りづらくなり、押し出し性能を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の請求項5に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1乃至請求項4に記載の貯湯式電気温水器において、
前記入水部は一端が前記入水連接部に連接し、他端に前記入水開口部を有する入水延長部をさらに備え、
前記入水延長部は前記貯湯タンク内の下方にむかって延長され、前記入水開口部は前記入水連接部よりも下方にあることを特徴としている。
【0023】
押し出し性能を向上させるには入水部をなるべく下方に取り付ける必要がある。しかし、タンク側面の下方には曲率部があり、ここに入水部を設けると耐圧性が低下してしまう。そこで、曲率部にかからない貯湯タンクの側面に入水部を設置すると、入水部の位置が高くなるので押し出し性能が低下する。
【0024】
本発明による貯湯式電気温水器は、入水延長部により耐圧性を低下させずに、タンク底面近傍まで入水開口部を近づけることができるため、湯水の密度差を利用して貯湯タンク内の湯を均一に押し出すことができ、押し出し性能を向上させることができる。
【0025】
また、本発明の請求項6に記載の貯湯式電気温水器は、請求項1乃至請求項5に記載の貯湯式電気温水器において、
前記貯湯タンク内の残水量を検出する残水検知手段と、前記吸気栓と前記水抜き栓の開閉状態を検出し、開閉状態を制御する開閉制御手段を備え、前記残水検知手段と、前記開閉制御手段の検知結果に基づき、前記ポンプの運転を制御するポンプ制御手段を有することを特徴としている。
【0026】
本発明による貯湯式電気温水器は、残水検知手段と、開閉制御手段とポンプ制御手段を有しているので、検知された信号でポンプの始動及び停止や水抜き栓の開閉などを関連付けて制御することができる。そのため、水抜き作業の一部を自動で行うことができ、水抜きの作業性が向上する。また、水抜き作業を自動で行うのでヒューマンエラーを防ぐことができ安全性も向上することができる。
【0027】
また、本発明の請求項7に記載の貯湯式電気温水器は、請求項6に記載の貯湯式電気温水器において、
前記ポンプ制御手段は、前記残水検知手段で前記貯湯タンクに残水があることを検知し、且つ前記開閉手段で前記吸気栓と前記水抜き栓が開の状態であることを検知すると、前記ポンプの運転を開始することを特徴としている。
【0028】
本発明による貯湯式電気温水器は、残水を検知してからポンプが始動するため、ポンプに空気が巻き込まれポンプが壊れること防ぐことができ、安全面での信頼性が向上する。また、水抜き作業の一部を自動で行うため、水抜きの作業性が向上する。
【0029】
また、本発明の請求項8に記載の貯湯式電気温水器は、請求項6乃至請求項7に記載の貯湯式電気温水器において、
前記ポンプ制御手段は、前記残水検知手段が前記貯湯タンクに残水がないことを検知すると前記ポンプの運転を停止し、前記開閉手段は、前記ポンプの運転の停止に連動して前記吸気栓と前記水抜き栓を閉の状態とすることを特徴としている。
【0030】
本発明による貯湯式電気温水器は、残水がなくなるとポンプが停止するため、貯湯タンク内の水を十分に抜くことができる。さらに、ポンプに空気が巻き込まれポンプが壊れること防ぐことができる。また、水抜き栓と吸気栓を自動で開閉するため、閉め忘れを防止することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明による貯湯式電気温水器は、タンク側面に循環口(入口、出口)を設けているので、電気温水器を薄型にできる。また,循環入口延長部によりタンク底面近郊まで循環入口開口部を近づけることができるため、ポンプを利用し水抜きを行うことで、貯湯タンク内の水を底面近傍まで十分に抜くことができる。さらに,水抜き栓はポンプの下流側にあるのでエアかみ等がおこらずに、スムーズに貯湯タンク内の水を抜くことができる.
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態にかかる貯湯式電気温水器について図面に基づいて説明する。図1aは、本発明の一実施形態にかかる貯湯式電気温水器に備わった貯湯タンク100及び循環流路20及びポンプ30および水抜き栓40の概略斜視図である。また、図1bは入水部11と出湯部12を示した切断図である。
【0033】
貯湯式電気温水器は、ヒータhを備えた貯湯タンク100と、貯湯タンク100の水を循環させる循環流路20とポンプ30と水抜き栓40と、ここでは詳細には図示しないリモコン又は操作パネルと、リモコン又は操作パネルからの信号で貯湯タンク100のヒータhおよびポンプ30を作動させる制御部を備えている。そして、貯湯タンク100は、図1に示すように、直方体状の扁平箱形をなしている。また、貯湯タンク100はすべての平面と平面との間の角に曲率が設けられている。
【0034】
貯湯タンク100の長手方向両端に形成された2つの平面部10c,10dのうち、一端側の平面部10cには、曲率部にかからないように入水部11が設けられている。入水部11は、貯湯タンク100の内側に連接された入水延長部11aと入水開口部11bと、入水連接部11cを有しており、入水連接部11cは貯湯タンク100の外部に設けられる図示しない入水流路と連接しており、入水開口部11bは入水部で最も下方にあり、かつ貯湯タンク100の底面近傍にある。また、他端側の平面部10dには、曲率部にかからないように出湯部12が設けられている。出湯部12は、貯湯タンク100の内側に連接された出湯延長部12aと出湯開口部12bと、出湯連接部12cを有しており、出湯連接部12cは貯湯タンク100の外部に設けられる図示しない出湯流路と連接しており、出湯開口部12bは出湯部12で最も上方にあり、かつ貯湯タンク100の上面近傍にある。また、平面部10cに吸気栓50が設けられている。
【0035】
さらに、貯湯タンク100の長手方向両端に形成された2つの平面部10c,10dのうち、一端側の平面部10cには、循環入口部13が曲率部にかからないように設けられている。また、他端側の平面部10dには、循環出口部14が曲率部にかからないように設けられている。循環入口部13は、貯湯タンク内に連接された循環入口延長部13aと、循環入口開口部13bを有しており、循環入口開口部13bが循環入口部13で最も下方にあり、かつ貯湯タンク100の底面近傍にある。
貯湯タンク100の水を循環させる循環流路20は貯湯タンクの循環入口部13と循環出口部14を連通させるように設けられている。
ポンプ30は図1のように循環流路20に備えられている。
水抜き栓40は循環流路20に備えられている。ポンプ30の上流側に水抜き栓40があると、水抜きの際に空気を巻き込み正常に動作しない。そのため水抜き栓40はポンプ30の下流に設けられている。また、水抜き栓40は三方弁であっても良い。水抜き栓40は通常使用時にはポンプ30と循環出口部14を連通し、水抜き時にはポンプ30と大気が連通すると同時に循環出口部14
につながる循環流路20が閉止される。また、水抜き栓40を三方弁にする代わりに二つの閉止弁と一つの分岐で構成することができる。具体的は、ポンプ30の下流側循環路20に分岐を設けその先端に閉止弁を設け、さらに分岐より下流側循環流路20に閉止弁を設ける。通常使用時には分岐先端の閉止弁を閉めて、循環流路20内の閉止弁を開ける。水抜きの際には分岐先端の閉止弁を開けて、循環流路20内の閉止弁を閉める。
【0036】
この貯湯式電気温水器は、平面10e,10fが鉛直方向上下面をそれぞれなすように寝かせた状態で図示しないブラケット等の取付け具やねじ等の締結具を介して、例えばキッチンのケコミ部や洗面空間のカウンタ裏面に取り付けられるようになっている。
【0037】
貯湯タンク内には、図1に示すように、平面10fに対して略平行に設けられたヒータhが設けられている。
【0038】
続いて、以上の構成を有する貯湯式電気温水器の作用について説明する。まず、上述した構成を有する貯湯式電気温水器を例えば洗面空間のカウンタ裏面等に設置する。この場合、循環流路と貯湯タンクが略水平に設置されている。このように薄型の貯湯式電気温水器を取り付けることで、洗面空間のカウンタの裏面等、目立たない所に設置でき、洗面空間の美観やインテリア性を損なうことがない。また、貯湯式電気温水器をキッチンカウンタの裏やキッチンキャビネットのケコミ部等に設置しても良い。この場合、貯湯式電気温水器が薄型のため、カウンタ下面の調理用備品や食材等の収容スペースを十分確保したまま設置できる。また、キッチンの壁面に貯湯式電気温水器を直接設置させずに済むのでキッチン廻りをすっきりさせ、インテリア性を向上させることができる。
【0039】
このような構成を有した貯湯式電気温水器を上述した所定の場所に設置し、入水部11に図示しない水道の配管を接続し、出湯部12に図示しない混合栓等に通じる配管を接続し、図示しないリモコン又は操作パネルを操作して貯湯式電気温水器を作動させる。これによって、入水部11を介して貯湯タンク100に貯められる水はポンプによって循環しながらヒータhによって例えば85℃程度に加熱され、貯湯タンク100に貯められる。ヒーターhより上方の部分なら循環しなくても沸きあがりやすいため、ポンプ30で循環させずに沸きあげても良い。また使用状態に応じて沸きあげ時のポンプ30による循環を間欠的に行っても良い。そして、湯の使用時には混合栓の後ろにある図示しない蛇口を開くことで入水部11から水が入水されると共に貯湯タンク100の出湯部12付近の湯が出湯部12から押し出され、図示しない配管及び混合栓を経由しつつ、かつ適宜、別途水道から分岐された図示しない配管を介して混合栓に供給される水と混合され、蛇口から使用者の元に出湯される。
【0040】
なお、薄型の貯湯式電気温水器を設置し、耐圧性からの制約から側面の曲率にかからない部分に入水部11と出湯部12が備えられると、高い位置から入水し、低い位置から出湯することになるため押し出し性能が低下する。しかし、本発明の貯湯式電気温水器は、入水部11に貯湯タンク100内に連接された入水延長部11aと入水開口部11bを有しており、入水開口部11bが入水部11で最も下方にあり、かつ貯湯タンク10の底面近傍にある。また、出湯部12に、貯湯タンク内に連接された出湯延長部12aと出湯開口部12bを有しており、出湯開口部12bが出湯部12で最も上方にあり、かつ貯湯タンク10の上面近傍にある。そのため寝かせた状態で設置され、入水部11と出湯部12を貯湯タンクの曲率部にかからない側面に備えていても、耐圧性を確保した上で、低い位置から入水し、高い位置から出湯することができる。そのため押し出し効率は、従来の縦長に設置される貯湯式電気温水器と同程度の性能を発揮することができる。
【0041】
以上のように貯湯タンク100に貯められた水を基準温度まで循環しながら沸き上げた後、入水部11から貯湯タンク100に水を流入させ、その水で沸き上がった湯を押し出す。そして、流入した水によって温度がある程度低下すると貯湯タンク100の水を基準温度まで沸き上げるというように貯湯式電気温水器は運転される。
【0042】
次に、水抜き作業について説明する。水抜きの際には貯湯式電気温水器のヒーターの電源を切り、貯湯タンク100の湯や事前に冷ましておいた水を水抜き栓40と吸気栓50を開放して、リモコンまたは作動パネルを操作し制御部でポンプ30を作動させることで、水抜き栓40から貯湯タンク100の水を抜く。本発明による貯湯式電気温水器は、側面の曲率部にかからない部分に循環入口部13があり、貯湯タンク100内に連接された循環入口延長部13aと循環入口開口部13bを有しており、循環入口開口部13bが循環入口部13で最も下方にある。そして、ポンプ30で水を吸い込むように抜くため、底面近傍まで十分な水抜きを行うことができる。
【0043】
続いて、上述の実施形態の各変形例について説明する。なお、上述の実施形態と同等の構成については対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
最初に、上述の実施形態の第1変形例について説明する。図2は、この第1変形例にかかる貯湯式電気温水器の貯湯タンク101及び循環流路20及びポンプ30および水抜き栓40を模式的に示す斜視図である。
【0045】
本変形例は入水部11が貯湯タンク101の外側に有する入水連接部11cに設けられた吸気栓51を備えている。これらはT字配管などで分岐して接続されている。なお、吸気栓51は出湯部12が貯湯タンク101の外側に有する出湯連接部12cや、前記水抜き栓40と前記循環出口部14との間の循環流路に、設けてもよい。
【0046】
本変形例のように吸気栓51を設けると、新たに貯湯タンクに吸気栓を設ける必要がなくなり、量産の際の製造コストを削減することができる。また、貯湯タンクへの溶接部位が少なくなるため貯湯タンクの強度を増加させることにつながり、貯湯タンクの耐圧への信頼性を増すことができる。
【0047】
続いて、上述の実施形態の第2変形例について説明する。図3はこの第2変形例にかかる貯湯式電気温水器における貯湯タンク102及び循環流路20及びポンプ30および水抜き栓40aを模式的に示した斜視図である。
【0048】
ここでは電動で開閉できる水抜き栓40aと、入水部11が貯湯タンク102の外側に有する入水連結部11cに設けられた電動で開閉できる吸気栓51aと、水抜き栓40aと吸気栓51aを開閉する図示しない制御部とそれらを作動させる図示しないリモコンまたは操作パネルを備えている。
【0049】
水抜き栓40aと吸気栓51aは電気的に連動しており、リモコンまたは操作パネルの一つのスイッチを押すことによって、水抜き栓40aと吸気栓51aの両者が開く。このように電気的に水抜き栓40aと吸気栓51aを連動させることによって、水抜き時に吸気栓と水抜き栓の両者の栓を個別に開ける必要がなるため、水抜きの作業性を向上させることができる。
【0050】
続いて、上述の実施形態の第3変形例について説明する。図4はこの第3変形例にかかる貯湯式電気温水器における貯湯タンク103及び循環流路20及びポンプ30および四方弁60を模式的に示した斜視図である。また図5、図6は四方弁60を模式的に示した概略図である。
【0051】
本変形例は図4で示されるように循環流路20のポンプ30の下流側に四方弁60が設置されている。四方弁60は図5で示されるように水抜き栓として用いられる流路61、吸気栓として用いられる流路62、循環用として循環流路につながるポンプ側の流路63、循環出口側の流路64を有している。通常使用時は図5のようにポンプ側の流路63と循環出口側の流路64をが連通され、水抜き時はバルブ65をひねることで図6のようにポンプ側の流路63と水抜き栓として用いられる流路61が連通され、かつ、循環出口側の流路64と吸気栓として用いられる流路62が連通される。
【0052】
このように四方弁を用いると、1つのバルブ65をひねるだけで水抜き栓として用いる流路61と吸気栓として用いる流路62を開くことでき、両者を機械的に連動させて動かすことができる。これにより、吸気栓と水抜き栓の両者を個別に開閉する必要がなくなり、水抜き時の作業性が向上する。
【0053】
続いて、上述の実施形態の第4変形例について説明する。図7はこの第4変形例にかかる貯湯式電気温水器における貯湯タンク104及び循環流路20及びポンプ30及び水抜き栓40aを模式的に示した斜視図である。
【0054】
本変形例は、貯湯タンク104の残水量を検出する残水検知手段71と、吸気口51aと水抜き栓40aの開閉状態を検出し開閉状態を制御する図示しない開閉制御手段と、残水検知手段71と、開閉制御手段の信号に基づき、ポンプ30の運転を制御する図示しないポンプ制御手段と、を備えている。ここで残水検知手段71には貯まっている水によって加えられる圧力を検知する圧力センサや、フロートセンサや、水が存在すると通電する電極を用いたセンサ、などを用いる。
【0055】
これらを備えることで水抜き操作を自動で安全に行うことができる。具体的には、ポンプ制御手段はまず残水検知手段71で貯湯タンク104に残水があることを検知し、吸気口51aと水抜き栓40aを開閉手段で開の状態にした後、ポンプ30の運転を開始する。その後、残水検知手段71で貯湯タンクに残水がないことを検知すると、運転を停止し、吸気口51aと水抜き栓40aを開閉手段で閉の状態とする。
【0056】
このように、ポンプ制御手段は、残水検知手段71で貯湯タンク104に残水があることを検知しないと作動しない。この場合、貯湯式電気温水器は図示しないアラームなどで使用者にポンプ30が作動させるために十分な水位を得る必要があることを知らせ、給水を促すことができる。
【0057】
本変形例は自動で水抜きやポンプの作動を行うことができるため、作業が簡単になり、さらに、キッチンルームのケコミ部などの場所でも作業しやすくなることから、作業性が向上する。さらに、水抜き栓40aの閉め忘れ、空気を巻き込むポンプ30の運転などを防止することができ、事故に対する信頼性を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1aは発明の一実施形態にかかる貯湯式電気温水器を模式的に示す斜視図であり、図1b入水部と出湯部の切断図を示す模式図である。
【図2】図1に示した貯湯式電気温水器の第1変形例を模式的に示す斜視図である。
【図3】図1に示した貯湯式電気温水器の第2変形例を模式的に示す斜視図である。
【図4】図1に示した貯湯式電気温水器の第3変形例を模式的に示す斜視図である。
【図5】図4に示した貯湯式電気温水器の四方弁を模式的に示す図である。
【図6】図5に示した四方弁が動いた時の状態を模式的に示す図である。
【図7】図1に示した貯湯式電気温水器の第4変形例を模式的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
10c〜10f タンク壁面
11 入水部
11a 入水延長部
11b 入水開口部
11c 入水連接部
12 出湯部
12a 出湯延長部
12b 出湯開口部
12c 出湯連接部
13 循環入口部
13a 循環入口延長部
13b 循環入口開口部
14 循環出口部
20 循環流路
30 ポンプ
40 40a 水抜き栓
50 51 51a 吸気栓
60 四方弁
71 残水検知手段
100〜104 貯湯タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、
前記貯湯タンク内の水を循環させる循環流路と、
ポンプと、
水抜き栓と、を備えた貯湯式電気温水器において、
前記貯湯タンクは、入水部と、
出湯部と、
当該側面に設置され循環流路へ連接された循環入口部と、
当該側面に設置され循環流路へ連接された循環出口部を備え、
前記入水部は、前記貯湯タンクの外側側面に設けられた入水連接部と、
前記貯湯タンク内で開口した入水開口部と、を有し、
前記出湯部は、前記貯湯タンクの外側側面に設けられた出湯連接部と、
前記貯湯タンク内で開口した出湯開口部と、を有し、
前記循環出口部は、前記貯湯タンク内に開口した循環出口開口部を有し、
前記ポンプは、前記循環流路中に設けられ、
前記水抜き栓は、前記循環流路中でかつ前記ポンプの下流側に設けられ、
前記循環入口部は、一端が前記循環流路に連接し、他端に貯湯タンク内で開口した循環入口開口部を有する循環入口延長部をさらに備え、
前記循環入口延長部は前記貯湯タンク内の底面に向かって延長され、前記循環入口開口部は前記循環流路延長部と循環流路との連接部よりも下方にあることを特徴とする貯湯式電気温水器。
【請求項2】
吸気栓が備えられ、前記吸気栓が前記出湯連接部、前記入水連接部、前記水抜き栓と前記循環出口部との間の循環流路、の少なくともいづれか1つの部分に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の貯湯式電気温水器。
【請求項3】
前記吸気栓の開閉動作と前記水抜き栓の開閉動作が連動していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の貯湯式電気温水器。
【請求項4】
前記出湯部は一端が前記出湯連接部に連接し、他端に前記出湯開口部を有する出湯延長部をさらに備え、
前記出湯延長部は前記貯湯タンク内の上方にむかって延長され、前記出湯開口部は前記出湯連接部よりも上方にあることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかひとつに記載の貯湯式電気温水器。
【請求項5】
前記入水部は一端が前記入水連接部に連接し、他端に前記入水開口部を有する入水延長部をさらに備え、
前記入水延長部は前記貯湯タンク内の下方にむかって延長され、前記入水開口部は前記入水連接部よりも下方にあることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかひとつに記載の貯湯式電気温水器。
【請求項6】
前記貯湯タンク内の残水量を検出する残水検知手段と、前記吸気栓と前記水抜き栓の開閉状態を検出し、開閉状態を制御する開閉制御手段を備え、前記残水検知手段と、前記開閉制御手段の検知結果に基づき、前記ポンプの運転を制御するポンプ制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかひとつに記載の貯湯式電気温水器。
【請求項7】
前記ポンプ制御手段は、前記残水検知手段で前記貯湯タンクに残水があることを検知し、且つ前記開閉手段で前記吸気栓と前記水抜き栓が開の状態であることを検知すると、前記ポンプの運転を開始することを特徴とする請求項6に記載の貯湯式電気温水器。
【請求項8】
前記ポンプ制御手段は、前記残水検知手段が前記貯湯タンクに残水がないことを検知すると前記ポンプの運転を停止し、前記開閉手段は、前記ポンプの運転の停止に連動して前記吸気栓と前記水抜き栓を閉の状態とすることを特徴とする請求項6乃至請求項7のいづれかひとつに記載の貯湯式電器温水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−249316(P2008−249316A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95215(P2007−95215)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】