貴金属系コロイド溶液およびその製造方法
【課題】粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散している、保存性に優れた貴金属系コロイド溶液を提供すること。
【解決手段】貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子と、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有する貴金属系コロイド溶液であり、
該コロイド溶液のpHが2.5〜6.0であり、
該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜10.0nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、
ことを特徴とする貴金属系コロイド溶液。
【解決手段】貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子と、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有する貴金属系コロイド溶液であり、
該コロイド溶液のpHが2.5〜6.0であり、
該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜10.0nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、
ことを特徴とする貴金属系コロイド溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属系コロイド溶液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属微粒子や貴金属合金微粒子などの貴金属系微粒子は、通常、担体などに担持され、触媒など様々な用途に用いられている。このような貴金属系微粒子は、従来、貴金属系微粒子の原料である貴金属錯体と、酸化物または複合酸化物で構成される数ミクロンの凝集粉末である担体とを混合した後、あるいは酸化物または複合酸化物で構成される数ミクロンの凝集粉末である担体に貴金属錯体を含浸させた後、粒子を形成させることにより担体に担持されていた。しかしながら、この方法では、貴金属錯体が、一次粒子が凝集して形成された担体の表面近傍に吸着されるため、形成される貴金属系微粒子も近接して配置されて分散性が低くなり、使用時に貴金属系微粒子の粒成長が起こりやすく、触媒活性が低下するという問題があった。
【0003】
また、担体に貴金属系微粒子を担持させる方法としては、貴金属系微粒子を含有するコロイド溶液を担体に吸着させる方法が開示されている。この方法によれば、貴金属系微粒子を含有するコロイド溶液を一次粒子が凝集して形成された担体に、撹拌しながら加熱して担持させるため、十分に均一に担持させることが困難であった。一方、適切な高分子分散剤を吸着させた水中分散性の高い酸化物または複合酸化物を含有するコロイド溶液と貴金属系微粒子を含有するコロイド溶液とを均一に混合した後、pH調整により高分子分散剤を脱離させて均一に配置された貴金属系微粒子を固定化する方法によって担体に貴金属系微粒子を担持させることができる。しかしながら、貴金属系微粒子などのナノ粒子は水などの溶媒中で凝集しやすく、貴金属系微粒子が高度に分散したコロイド溶液を得ることは容易ではなかった。
【0004】
例えば、特開2004−261735号公報(特許文献1)には、水などの溶媒と、貴金属のクラスター粒子と、ポリエチレンイミンなどの高分子分散剤と、からなる貴金属コロイド溶液が開示されている。この貴金属コロイド溶液は水溶性が良好で、使用時に速やかな沈殿は起こらないものの、コロイド溶液中の貴金属微粒子は液中で凝集したものであり、その凝集粒子は貴金属の結晶が高分子分散剤を介して多数集まって形成されたものであり、単分散性は低いものであった。
【0005】
また、特開2006−183092号公報(特許文献2)には、2種以上の金属イオンを、カルボキシル基を有し且つ分子量が4000〜30000の高分子分散剤の存在下、液相の反応系中で還元剤の作用によって還元させて合金微粒子を析出させる方法が開示されている。この方法によれば、合金微粒子およびそれを含む金属コロイド溶液を効率よく得ることができる。しかしながら、この方法により得られた金属コロイド溶液においても、上記特許文献1に記載の貴金属コロイド溶液に比べて貴金属微粒子の液中分散性は向上するものの、未だ十分なものではなかった。
【0006】
さらに、特開2009−144250号公報(特許文献3)には、近接・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する反応装置を用いて、高分子分散剤および金属化合物を含む水溶液を上記の薄膜中で還元剤水溶液と合流させ、薄膜中で均一混合しながら還元反応を行うことにより得られた金属微粒子およびそれを含む金属コロイドが開示されている。この方法によれば、粒子径が均一な金属微粒子を含む金属コロイド溶液を得ることができる。しかしながら、この金属コロイド溶液においても、金属微粒子は液中で凝集しており、その液中分散性は十分なものではなかった。
【0007】
このように、従来のコロイド溶液においては、貴金属微粒子の液中分散性が未だ十分なものではなく、このような貴金属コロイド溶液を用いて貴金属微粒子担体に担持させても、貴金属系微粒子が高度に分散した触媒などを得ることは困難であった。
【0008】
また、特開2005−133135号公報(特許文献4)には、反応液を瞬時に混合し、配管内で反応を進行させて金属微粒子を形成させる方法が開示されており、この方法は、特に、界面活性剤を用いた逆ミセル法による金属微粒子形成に好適な方法であることが開示されている。そして、上記特許文献4には、混合方法として、高速撹拌混合方式、微小ギャップ混合方式、高圧混合方式が開示されている。しかしながら、前記高速撹拌混合方式に用いられる混合装置においては、反応液は反応場に滴下した後、混合されており、高い剪断力が付与された反応場に直接導入されて混合されるものではない。また、前記微小ギャップ混合方式に用いられる混合装置においては、狭小な反応場で剪断力を付与しながら反応液が供給されて混合されているが、反応液の供給口が離れており、瞬時の混合という観点においては十分なものではなかった。さらに、上記特許文献4には、高圧混合方式に用いられる混合装置としてY字型やT字型のものが開示されているが、これらにおいては反応液を配管内で衝突させて混合するものであり、剪断力を考慮したものではない。このため、上記特許文献4に記載の方法では、粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散している貴金属系コロイド溶液を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−261735号公報
【特許文献2】特開2006−183092号公報
【特許文献3】特開2009−144250号公報
【特許文献4】特開2005−133135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散している、保存性に優れた貴金属系コロイド溶液およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンおよび所定の分子量のポリアルキレンイミンを含有する2種類以上の原料溶液を、所定の剪断力が付与された反応場で均質混合することにより、粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散しているコロイド溶液が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の貴金属系コロイド溶液は、貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子と、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有する貴金属系コロイド溶液であり、該コロイド溶液のpHが2.5〜6.0であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜10.0nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、ことを特徴とするものである。また、本発明の貴金属系コロイド溶液としては、以下のような本発明の貴金属系コロイド溶液の製造方法により製造されたものが好ましい。
【0013】
すなわち、本発明の貴金属系コロイド溶液の製造方法は、2種類以上の原料溶液を混合して、貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子を含有する貴金属系コロイド溶液を製造する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンを含有するものであり、1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合し、溶液のpHを2.5〜6.0に調整することを特徴とする方法である。
【0014】
このような貴金属系コロイド溶液の製造方法において、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記貴金属イオンを含有するものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものであることが好ましく、前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液が還元剤をさらに含むものであることがより好ましい。また、前記貴金属イオンを含有する原料溶液の陽イオン濃度としては0.0001〜0.5mol/Lが好ましい。
【0015】
なお、本発明によって、粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散しているコロイド溶液が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、貴金属系微粒子などのナノ粒子は水などの水性溶液中では凝集しやすく、通常、高分子分散剤を添加してナノ粒子に吸着させて凝集を抑制している。本発明に用いられるポリアルキレンイミンもナノ粒子に吸着して凝集を抑制するものと推察される。このとき、剪断速度が7500sec−1を超えるような非常に高い剪断力を反応場に付与すると粒子径の大きな凝集体が形成される傾向にある。これは、過剰な剪断力によってポリアルキレンイミンが破壊されるため、破壊されたポリアルキレンイミンがナノ粒子に吸着しても液中で十分な斥力を付与することができず、ナノ粒子やその凝集体が凝集するためであると推察される。
【0016】
また、ジエタノールアミンとポリエチレングリコールを添加した場合にも粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。これは、ポリエチレングリコールのみを添加した場合でも液中で凝集体が形成するが、ジエタノールアミンとポリエチレングリコールを添加すると貴金属系微粒子を生成させるために添加したジエタノールアミンが、生成した貴金属系微粒子に吸着してポリエチレングリコールの吸着を阻害するため、ポリエチレングリコールによる凝集抑制効果がさらに劣るものとなり、また、ジエタノールアミンが貴金属系微粒子に吸着しても液中で十分な立体障害斥力が作用せず、ジエタノールアミンによる凝集抑制効果も十分に発揮されないためであると推察される。また、ポリエチレングリコールの斥力発現作用が小さい上に吸着量が少ないため、斥力の作用が小さくなり、貴金属系コロイド溶液の保存中に凝集体がさらに凝集して液中での分散性が低下するものと推察される。
【0017】
一方、本発明の製造方法においては、所定の分子量のポリアルキレンイミンを添加し、剪断速度が所定の値となるように反応場に剪断力を付与しているため、ポリアルキレンイミンが破壊されずに貴金属系微粒子に吸着し、液中で貴金属系微粒子に十分な斥力が付与され、貴金属系コロイド溶液中において貴金属系微粒子は均一に分散した状態で存在するものと推察される。また、ポリアルキレンイミンは貴金属系コロイド溶液中で安定に存在するため、粒子径が大きな凝集体が形成されにくく、貴金属系微粒子はそのままの状態、または粒子径が比較的小さい凝集体の状態で貴金属系コロイド溶液中で安定に分散しているものと推察される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散している、保存性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に用いられる貴金属系コロイド溶液の製造装置の好適な一実施形態を示す模式縦断面図である。
【図2】図1に示すホモジナイザー10の先端部(攪拌部)を示す拡大縦断面図である。
【図3】図1に示す内側ステータ13の側面図である。
【図4】図1に示す内側ステータ13の横断面図である。
【図5A】実施例1で得られた貴金属系微粒子の高角度散乱暗視野像(HAADF像)を示す高分解能走査透過型電子顕微鏡写真(高分解能STEM写真)である。
【図5B】実施例1で得られた貴金属系微粒子の電子線回折像を示す透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)である。
【図6A】実施例2で得られた貴金属系微粒子の高角度散乱暗視野像(HAADF像)を示す高分解能走査透過型電子顕微鏡写真(高分解能STEM写真)である。
【図6B】実施例2で得られた貴金属系微粒子の電子線回折像を示す透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)である。
【図7A】実施例3で得られた貴金属系微粒子の高角度散乱暗視野像(HAADF像)を示す高分解能走査透過型電子顕微鏡写真(高分解能STEM写真)である。
【図7B】実施例3で得られた貴金属系微粒子の電子線回折像を示す透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)である。
【図8A】実施例4で得られた貴金属系微粒子の高角度散乱暗視野像(HAADF像)を示す高分解能走査透過型電子顕微鏡写真(高分解能STEM写真)である。
【図8B】実施例4で得られた貴金属系微粒子の電子線回折像を示す透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)である。
【図9A】実施例5で得られた貴金属系微粒子の高角度散乱暗視野像(HAADF像)を示す高分解能走査透過型電子顕微鏡写真(高分解能STEM写真)である。
【図9B】実施例5で得られた貴金属系微粒子の電子線回折像を示す透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
先ず、本発明の貴金属系コロイド溶液について説明する。本発明の貴金属系コロイド溶液は、貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子と、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有する貴金属系コロイド溶液であり、該コロイド溶液のpHが2.5〜6.0であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜10.0nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、ことを特徴とするものである。
【0022】
本発明にかかる貴金属系微粒子は、貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子である。このような貴金属系微粒子を形成する貴金属としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)が挙げられる。これらの貴金属は、1種を単独で貴金属微粒子を形成していてもよいし、2種以上で貴金属合金微粒子を形成していてもよい。これらの貴金属系微粒子の中でも、優れた触媒活性を示すという観点から、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、またはこれらの合金からなる微粒子が好ましい。
【0023】
また、本発明の貴金属系コロイド溶液においては、前記貴金属と貴金属以外の金属との貴金属合金の微粒子を貴金属系微粒子として使用することも可能である。この貴金属以外の金属としては、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、クロム、亜鉛、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステンなどが挙げられる。これらの金属は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0024】
さらに、本発明にかかる貴金属系微粒子としては、前記貴金属の酸化物、水酸化物、塩、炭化物、窒化物、硫化物などの貴金属化合物の微粒子;前記貴金属合金の酸化物、水酸化物、塩、炭化物、窒化物、硫化物などの貴金属合金化合物の微粒子も使用することができる。なお、貴金属合金化合物とは、少なくとも1種の貴金属を含有する複合金属酸化物などの複合金属化合物を意味する。
【0025】
本発明の貴金属系コロイド溶液は、このような貴金属系微粒子が分散したものである。この貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。本発明のコロイド溶液中の微粒子は、このようにして測定された粒度分布において累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜10.0nm(好ましくは0.8〜5.0nm、より好ましくは0.8〜3.0nm)であり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下(好ましくは2.0倍以下)のものである。このような粒子径D50およびD90を有する貴金属系微粒子はコロイド溶液中において均一に分散している。このような貴金属系コロイド溶液を用いることにより、粒子径が小さく均一な貴金属系触媒粒子を得ることができ、しかも、この貴金属系触媒粒子は触媒として使用する際に粒成長しにくく、触媒活性の低下を抑制することが可能となる。また、前記貴金属系微粒子をアルミナ骨格を有する複合酸化物凝集粒子に担持させた場合、アルミナ骨格を有する複合酸化物凝集粒子の細孔径を変化させることによって、前記複合酸化物凝集粒子(触媒担体)の細孔径分布を任意に制御することが可能となる。したがって、触媒の調製の際に本発明の貴金属系コロイド溶液を用いることによって、触媒の使用温度領域に応じて理想的な形状の触媒を設計することが可能となり、例えば、ガス拡散性に最適な細孔径を有し、貴金属系微粒子が均一に触媒担体の細孔内に配置され、拡散律速領域で理想的な触媒活性を有する高耐熱性の触媒を得ることが可能となる。
【0026】
本発明の貴金属系コロイド溶液は所定の分子量のポリアルキレンイミンを含むものである。コロイド溶液中にこのようなポリアルキレンイミンが存在することによって、前記貴金属系微粒子は、その表面が正に帯電するため、凝集しにくくなり、均一な状態で安定してコロイド溶液中に分散することが可能となる。また、貴金属系微粒子の表面が正に帯電することによって、負に帯電した担体との間では静電引力が作用し、正に帯電した担体との間では斥力が作用することから、所定の担体に貴金属系微粒子を吸着させることが可能となる。例えば、アルミナとセリアとの複合酸化物担体に貴金属を吸着させる場合、従来の方法では、アルミナに吸着した貴金属が表面移動しやすいため、貴金属の粒成長により触媒活性が低下する傾向にあったが、本発明の貴金属系コロイド溶液を用いると、ポリアルキレンイミンの作用により貴金属系微粒子の表面が正に帯電するため、セリア微粒子の表面を負に帯電させ且つアルミナ微粒子の表面を正に帯電させることにより貴金属系微粒子を選択的にセリア微粒子に吸着させることができ、貴金属の粒成長が起こりにくくなり、触媒活性の低下が抑制される。
【0027】
このようなポリアルキレンイミンの重量平均分子量は3000〜15000である。ポリアルキレンイミンの重量平均分子量が前記範囲にあると貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくく、均一に分散しており、しかも保存安定性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ることができる。一方、ポリアルキレンイミンの重量平均分子量が前記下限未満になるとポリアルキレンイミンが貴金属系微粒子に吸着しても立体障害による斥力が十分に発現せず、貴金属系微粒子が凝集し、他方、前記上限を超えるとポリアルキレンイミンが架橋構造を形成し、貴金属系微粒子が凝集して大きな凝集体が形成する。したがって、このような観点から、ポリアルキレンイミンの重量平均分子量としては、8000〜12000が好ましい。なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定され、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0028】
本発明のコロイド溶液において、ポリアルキレンイミンの含有量としては、前記貴金属系微粒子の単位表面積に対して0.5〜30mg/m2が好ましく、2〜20mg/m2がより好ましい。ポリアルキレンイミンの含有量が前記範囲にあると貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくく、均一に分散しており、しかも保存安定性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ることができる。一方、前記ポリアルキレンイミンの含有量が前記下限未満になると貴金属系微粒子の表面をポリアルキレンイミンが十分に被覆することができず、貴金属系微粒子が凝集してより大きな凝集体が形成される傾向にあり、他方、前記上限を超えると貴金属系コロイド溶液中に遊離のポリアルキレンイミンが多く存在するため、ポリアルキレンイミンの架橋反応が著しく進行し、貴金属系微粒子が凝集して粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。
【0029】
また、本発明のコロイド溶液のpHは2.5〜6.0である。前記コロイド溶液のpHが前記範囲にあるとポリアルキレンイミンは解離してNH3+基が形成され、貴金属系微粒子の負に帯電したサイトまたはニュートラルなサイトに吸着して分散効果を付与する。その結果、貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくく、均一に分散しており、しかも保存安定性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ることができる。一方、pHが前記下限未満になると還元反応速度が低下し、反応途中の中間生成物にポリアルキレンイミンが吸着し、その後、逐次反応が生ずるため、凝集が進行する。他方、前記上限を超えると、ポリアルキレンイミンの解離度が小さく、貴金属系微粒子へのポリアルキレンイミンの吸着量が減少し、貴金属系微粒子間に十分な斥力が発現せず、貴金属系微粒子が凝集する。
【0030】
本発明のコロイド溶液に用いられる溶媒としては、水、水溶性有機溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトンなど)、水と前記水溶性有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。本発明にかかるポリアルキレンイミンはこのような溶媒を用いた場合に優れた分散効果を発揮する傾向にある。
【0031】
このような貴金属系コロイド溶液は、例えば、前記貴金属イオンを含有する原料溶液と前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液とを、剪断速度が1100sec−1以上となるような剪断力が付与された反応場で均質混合することによって製造することができる。本発明のコロイド溶液は、2種類以上の原料溶液を混合する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記貴金属イオンを含有するものを使用し、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記ポリアルキレンイミンを含有するものを使用し、これら原料溶液を1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に独立に直接導入して均質混合する方法によって製造することが可能である。特に、許容剪断速度の中で比較的高い範囲(1800sec−1以上7500sec−1以下)においてコロイド溶液を作製すれば、水などの貴金属系微粒子が凝集しやすい溶媒においても、貴金属系微粒子を凝集させずに、均一に分散させることが可能となる。
【0032】
このような製造方法に用いられる装置としては、例えば、図1に示すものが挙げられる。以下、図面を参照しながら、本発明の貴金属系コロイド溶液を製造するための好適な装置ついて詳細に説明する。なお、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。
【0033】
図1に示す製造装置は、攪拌装置としてホモジナイザー10を備えており、ホモジナイザー10の先端部(攪拌部)が反応容器20内に配置されている。ホモジナイザー10の先端部は、図2に示すように、凹型のローター11と、ローター11の外周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された凹型の外側ステータ12と、ローター11の内周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された凸型の内側ステータ13とを備えている。さらに、ローター11は、回転シャフト14を介してモーター15に接続されており、回転することが可能な構造となっている。
【0034】
そして、図1に示す製造装置においては、複数のノズル、すなわち、原料溶液Aを導入するためのノズル16Aと原料溶液Bを導入するためのノズル16Bとが、それぞれ内側ステータ13におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられている。また、ノズル16Aには流路17Aを介して原料溶液Aの供給装置(図示せず)が、ノズル16Bには流路17Bを介して原料溶液Bの供給装置(図示せず)がそれぞれ接続されており、ローター11と内側ステータ13との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能な構造となっている。
【0035】
さらに、図1に示す製造装置においては、図3および図4に示すように、ノズル16Aおよびノズル16Bが、内側ステータ13におけるローター11に対向する面において、ローター11の回転軸Xに対して直交する所定の面Yの外周方向に交互に設けられている。
【0036】
なお、図3および図4においては、ノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ12個ずつ設けられているが(24孔タイプ)、ノズル16Aおよびノズル16Bの数は特に限定されるものではない。したがって、ノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ1個ずつ設けられていればよいが(2孔タイプ)、原料溶液Aおよび原料溶液Bが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間をより短縮できるという観点から、ノズル16Aおよびノズル16Bの数はそれぞれ10個以上であることが好ましく、20個以上であることがより好ましい。一方、ノズル16Aおよびノズル16Bのそれぞれの数の上限は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、ノズルの詰まりをより確実に防止するという観点から、交互に配置されたノズル16Aおよびノズル16Bの開口部の直径が0.1mm程度以上の寸法を取り得るようにすることが好ましい。このようにノズルの開口部の直径は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、ノズルの詰まりをより確実に防止するという観点から、0.1〜1mm程度であることが好ましい。
【0037】
また、図3および図4においては、ノズル16Aおよびノズル16Bが、ローター11の回転軸Xに対して直交する一つの面Yの外周方向に一列に交互に設けられているが、複数の面の外周方向に複数の列において交互に設けられていてもよい。
【0038】
以上説明した図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとから原料溶液Aおよび原料溶液Bがそれぞれ導入される領域、すなわち図1および図2においてはローター11の内周と内側ステータ13の外周との間の領域において、剪断速度が1100sec−1以上であることが好ましく、1800sec−1以上であることがより好ましい。この領域の剪断速度が前記下限未満になると反応場に十分な剪断力が付与されず、凝集した貴金属系微粒子が分離されず、大きな凝集体が形成する傾向にある。また、前記領域の剪断速度が7500sec−1以下であることが好ましく、6500sec−1以下であることがより好ましい。前記剪断速度が前記上限を超えるとポリアルキレンイミンが破壊されて、前記貴金属系微粒子に十分な斥力を付与することができず、より大きな凝集体が形成する傾向にある。
【0039】
このような範囲の剪断速度を達成するための条件としては、ローターの回転速度およびローターとステータとの間のギャップの大きさが影響するため、前記領域の剪断速度が前記条件を満たすようにそれらを設定する必要がある。具体的なローター11の回転速度は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、例えば、内側ステータ13の外径10mm、ローター11と外側ステータ12との間のギャップ0.2mm、およびローター11と内側ステータ13との間のギャップ0.2mmの場合にはローター11の回転速度を好ましくは600〜4000rpm、より好ましくは1000〜3500rpmに設定することによって前記剪断速度を達成することが可能となる。
【0040】
また、ローター11と内側ステータ13との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましい。さらに、ローター11と外側ステータ12との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましい。このギャップの大きさの変化に対応してローター11の回転速度を調整することにより前記範囲の剪断速度を達成することが可能となる。これらのギャップが前記下限未満になるとギャップの詰まりが発生し易くなる傾向にあり、前記上限を超えると効果的な剪断力を付与できない傾向にある。
【0041】
また、図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとからそれぞれ供給された原料溶液Aおよび原料溶液Bが、前記領域に導入されてから1msec以内(特に好ましくは0.5msec以内)に均質混合されるようにノズル16Aおよびノズル16Bが配置されていることが好ましい。なお、ここでいう原料溶液が前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間とは、ノズル16A(またはノズル16B)から導入された原料溶液A(または原料溶液B)が隣接するノズル16B(またはノズル16A)の位置に到達し、ノズル16B(またはノズル16A)から導入された原料溶液B(または原料溶液A)と混合されるまでの時間をいう。
【0042】
以上、本発明の貴金属系コロイド溶液の製造に好適に用いられる装置について説明したが、本発明のコロイド溶液の製造方法は、図1に示す製造装置を用いる方法に限定されるものではない。例えば、図1に示す製造装置においては、2種類の原料溶液が導入できるように構成されているが、3種類以上の原料溶液が導入できるようにノズルや原料溶液供給装置等を構成してもよい。
【0043】
また、図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとがそれぞれ内側ステータ13におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられているが、ノズル16Aとノズル16Bとがそれぞれ外側ステータ12におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられていてもよい。そのように構成すれば、ローター11と外側ステータ12との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能となる。なお、その領域における剪断速度は前記条件を満たすように設定する必要がある。
【0044】
さらに、上述したように、剪断速度が所定の値となるような剪断力が反応場に付与できる方法であれば、例えば、攪拌子などを用いて2種類以上の原料溶液を均質混合してもよい。
【0045】
次に、本発明の貴金属系コロイド溶液の製造方法の好適な一実施形態について説明する。本発明の貴金属系コロイド溶液の製造方法においては、原料溶液を導入する領域の剪断速度を前記範囲に設定し、前記各原料溶液を前記領域に独立して直接的に導入することが好ましい。例えば、図1に示す製造装置を用いる場合には、ノズル16Aとノズル16Bとから原料溶液Aおよび原料溶液Bがそれぞれ導入される領域、すなわち図1および図2においてはローター11と内側ステータ13との間の領域の剪断速度が前記範囲となるようにローター11を回転させ、原料溶液Aおよび原料溶液Bをそれぞれノズル16Aおよびノズル16Bから前記領域に独立して直接的に導入する。このように剪断速度が所定の値となっている領域に直接導入された各原料溶液は、極めて短時間の間に均質混合されて反応が終了し、前記原料溶液中の原料に由来する貴金属系微粒子が得られる。このような方法により得られた貴金属系微粒子は、粒子径がより小さく且つ粒度分布がより狭いものとなる。
【0046】
また、各原料溶液の送液速度としては特に制限はないが、1.0〜30ml/minが好ましい。原料溶液の送液速度が前記下限未満になると貴金属系微粒子の製造効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると貴金属系微粒子の液中における凝集粒子径が大きくなる傾向にある。
【0047】
本発明のコロイド溶液の製造方法においては、貴金属系コロイド溶液のpHを2.5〜6.0に調整する。コロイド溶液のpHを前記範囲にするとポリアルキレンイミンは解離してNH3+基が形成され、貴金属系微粒子の負に帯電したサイトまたはニュートラルなサイトに吸着して分散効果を付与する。その結果、貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくく、均一に分散しており、しかも保存安定性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ることができる。一方、pHが前記下限未満になると還元反応速度が低下し、反応途中の中間生成物にポリアルキレンイミンが吸着し、その後、逐次反応が生ずるため、凝集が進行する。他方、前記上限を超えると、ポリアルキレンイミンの解離度が小さく、貴金属系微粒子へのポリアルキレンイミンの吸着量が減少し、貴金属系微粒子間に十分な斥力が発現せず、貴金属系微粒子が凝集する。
【0048】
本発明の貴金属系コロイド溶液を製造する場合、前記貴金属イオンと前記ポリアルキレンイミンは、同じ原料溶液に含まれていてもよいし、各々別の原料溶液に含まれていてもよいが、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記貴金属イオンを含むものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含むものであることが好ましい。さらに、ヒドラジンおよび水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤は貴金属イオンと同一の原料溶液には含まれず、ポリアルキレンイミンと同一の原料溶液には含まれていてもよい。例えば、図1に示す製造装置を用いる場合には、前記貴金属イオンと前記ポリアルキレンイミンがともに原料溶液Aに含まれていてもよいし、原料溶液Aに前記貴金属イオンが含まれ、原料溶液Bに前記ポリアルキレンイミンが含まれていてもよいが、後者が好ましい。
【0049】
また、前記貴金属イオンを含む原料溶液(例えば前記原料溶液A)の陽イオン濃度としては0.0001〜0.5mol/Lが好ましく、0.0001〜0.2mol/Lがより好ましい。陽イオン濃度が前記範囲にあると貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくく、均一に分散しており、しかも保存安定性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ることができる。一方、陽イオン濃度が前記下限未満になると貴金属系微粒子の収率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとコロイド溶液中の貴金属系微粒子間の距離が短くなるため、ポリアルキレンイミンが効果的な形態で貴金属系微粒子に吸着できず、貴金属系微粒子が凝集する傾向にある。
【0050】
このような本発明の貴金属系コロイド溶液を製造する場合に適用できる反応系は特に制限されず、アルコキシドの加水分解反応や貧溶媒を用いた溶解度変化を利用する析出反応などが挙げられるが、中和反応や酸化還元反応といった核生成速度や反応速度が極めて早い反応においても前記製造方法によれば貴金属系微粒子は粒子径が小さく均一なものとなり、分散性および保存安定性に優れた貴金属系コロイド溶液が得られるため、本発明の製造方法はこのような核生成速度や反応速度が極めて早い反応系に対して特に有用である。
【0051】
このような中和反応、酸化還元反応などにおける具体的な反応系は特に制限されるものではないが、酸化還元反応系が好ましく、例えば、2種類の原料溶液を用いる場合には以下のような原料溶液AおよびBを用いる酸化還元反応系がより好ましい。
原料溶液A(貴金属イオン含有溶液):硝酸銀、硝酸パラジウム、塩化白金酸、硝酸ロジウム、ジニトロジアンミン白金硝酸(以下、「硝酸白金」という)などを含有する溶液。
原料溶液B(還元剤):アセトアルデヒド溶液、水素化ホウ素ナトリウム溶液、ヒドラジン、エタノールなど。
【0052】
なお、ポリアルキレンイミンは、上記いずれの反応においても原料溶液Aおよび原料溶液Bの少なくとも一方に含まれていればよいが、原料溶液Bに含まれていることが好ましい。例えば、前記酸化還元反応においては、貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンを含有する原料溶液Aと、還元剤とポリアルキレンイミンとを含有する原料溶液Bとを用いることが好ましい。
【0053】
このような原料溶液の組成や組み合わせは、目的とする貴金属系コロイド溶液の種類や使用する原料の種類などに応じて適宜設定することができる。
【0054】
本発明のコロイド溶液の製造方法によって得られる貴金属系コロイド溶液の組成は特に限定されず、様々な原料溶液を用いることによって、貴金属、貴金属合金、貴金属化合物、貴金属合金化合物といった種々の組成の貴金属系コロイド溶液を得ることが可能となる。
【0055】
また、本発明の貴金属系コロイド溶液は液中で非常に分散性が高く、高分散性の触媒担体コロイド溶液と均質混合することによって高度に分散した状態で貴金属系微粒子を触媒担体に担持させることができる。さらに、本発明の貴金属系コロイド溶液においては、pH調整を行うことによって貴金属微粒子からポリアルキレンイミンを瞬時に脱着させることができるため、触媒担体へ貴金属系微粒子を均一に配置した状態で容易に担持させることが可能となる。また、本発明の貴金属系コロイド溶液と同様にして調製した金属酸化物または複合金属酸化物のコロイド溶液を用いて前記触媒担体を調製した場合には、触媒担体である金属酸化物粒子または複合金属酸化物粒子からポリアルキレンイミンを瞬時に脱着させることができるため、さらに均一な状態で貴金属系微粒子を担持させることが可能となる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
先ず、Pt含有量が4.565質量%の硝酸白金溶液4.85gにイオン交換水を添加して、陽イオン(Ptイオン)濃度が0.0025mol/Lの貴金属イオン含有原料水溶液(原料溶液A)125mlを調製した。また、ヒドラジン一水和物0.95gおよび下記式(1):
【0058】
【化1】
【0059】
で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン0.2gの混合物にイオン交換水を添加してこれらを溶解させ、ポリエチレンイミン水溶液(原料溶液B)125mlを調製した。このポリエチレンイミン水溶液には、前記貴金属イオン含有原料水溶液と混合した後のpHが3.0となるように微量の硝酸を添加した。
【0060】
次に、図1に示す製造装置(スーパーアジテーションリアクター)を用いて貴金属系コロイド溶液を作製した。なお、ステータ13としてはノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ24個ずつ設けられている48孔タイプのものを使用した。
【0061】
図1に示すように、ホモジナイザー10の先端を100mlビーカー20の中に浸るようにセットし、ホモジナイザー10におけるローター11を3200rpmの回転速度で回転させながら、前記原料溶液Aと前記原料溶液Bとをそれぞれ2.5ml/minの供給速度でチューブポンプ(図示せず)を用いてノズル16Aおよびノズル16Bからローター11と内側ステータ13との間の領域に送液して混合し、貴金属系コロイド溶液を作製した。
【0062】
なお、ローター11の外径は17.8mm、ローター11と外側ステータ12との間のギャップは0.5mmであり、それらの間の領域における剪断速度は6000sec−1であった。また、内側ステータ13の外径は12.2mm、ローター11と内側ステータ13との間のギャップは0.2mmであり、それらの間の領域における剪断速度は6000sec−1であった。さらに、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は0.394msecであった。ここで、均質混合されるまでの時間とは、ノズル16Aまたはノズル16Bから吐出された原料溶液Aまたは原料溶液Bがローター11の回転によって隣接するノズル16Bまたはノズル16Aに到達するまでの時間と定義されるものである。
【0063】
ビーカー20からあふれて出てくる貴金属系コロイド溶液を、上記ビーカー20のさらに下に1Lビーカー(図示せず)をセットして受け止めた。
【0064】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、貴金属系コロイド溶液を数滴、カーボン支持膜に滴下して高分解能走査透過型電子顕微鏡(高分解能STEM、日本電子(株)製「JEM2100F−Csコレクター」)による観察を行なった。その結果を図5Aに示す。また、透過型電子顕微鏡を用いて電子線回折パターンを測定した。図5Bには貴金属系微粒子の電子線回折像を示す。hkl面間距離について、この電子線回折像から求められる測定値を理論値と比較したところ、前記貴金属系コロイド溶液に含まれる微粒子は白金微粒子であることが確認された(表2参照)。
【0065】
次に、この貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を動的光散乱法(日機装(株)製「Nanotrac250」を使用)により測定した。この貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布から累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置した貴金属系コロイド溶液について上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0066】
(実施例2)
先ず、Pd含有量が8.2質量%の硝酸パラジウム溶液2.71gにイオン交換水を添加して、陽イオン(Pdイオン)濃度が0.0025mol/Lの貴金属イオン含有原料水溶液125mlを調製した。また、水素化ホウ素ナトリウム0.95gおよび前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン0.2gの混合物にイオン交換水を添加してこれらを溶解させ、ポリエチレンイミン水溶液125mlを調製した。このポリエチレンイミン水溶液には、前記貴金属イオン含有原料水溶液と混合した後のpHが5.5となるように微量の硝酸を添加した。
【0067】
次に、原料溶液AおよびBとして、それぞれ前記貴金属イオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして図1に示す製造装置を用いて貴金属系コロイド溶液を作製した。
【0068】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、貴金属系コロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして高分解能STEMによる観察と電子線回折パターンによる同定を行なった。その結果を図6A〜6Bに示す。実施例1と同様にしてhkl面間距離の測定値と理論値を比較したところ、前記貴金属系コロイド溶液に含まれる微粒子はパラジウム微粒子であることが確認された(表3参照)。
【0069】
さらに、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。また、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
先ず、Rh含有量が2.75質量%の硝酸ロジウム溶液8.07gにイオン交換水を添加して、陽イオン(Rhイオン)濃度が0.0025mol/Lの貴金属イオン含有原料水溶液125mlを調製した。また、水素化ホウ素ナトリウム0.95gおよび前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン0.2gの混合物にイオン交換水を添加してこれらを溶解させ、ポリエチレンイミン水溶液125mlを調製した。このポリエチレンイミン水溶液には、前記貴金属イオン含有原料水溶液と混合した後のpHが5.5となるように微量の硝酸を添加した。
【0071】
次に、原料溶液AおよびBとして、それぞれ前記貴金属イオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして図1に示す製造装置を用いて貴金属系コロイド溶液を作製した。
【0072】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、貴金属系コロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして高分解能STEMによる観察と電子線回折パターンによる同定を行なった。その結果を図7A〜7Bに示す。実施例1と同様にしてhkl面間距離の測定値と理論値を比較したところ、前記貴金属系コロイド溶液に含まれる微粒子はロジウム微粒子であることが確認された(表4参照)。
【0073】
さらに、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。また、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0074】
(実施例4)
先ず、硝酸銀0.106gに硝酸とイオン交換水を添加して、陽イオン(Agイオン)濃度が0.0025mol/Lの貴金属イオン含有原料水溶液125mlを調製した。また、水素化ホウ素ナトリウム0.95gおよび前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン0.2gの混合物にイオン交換水を添加してこれらを溶解させ、ポリエチレンイミン水溶液125mlを調製した。このポリエチレンイミン水溶液には、前記貴金属イオン含有原料水溶液と混合した後のpHが5.5となるように微量の硝酸を添加した。
【0075】
次に、原料溶液AおよびBとして、それぞれ前記貴金属イオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして図1に示す製造装置を用いて貴金属系コロイド溶液を作製した。
【0076】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、貴金属系コロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして高分解能STEMによる観察と電子線回折パターンによる同定を行なった。その結果を図8A〜8Bに示す。実施例1と同様にしてhkl面間距離の測定値と理論値を比較したところ、前記貴金属系コロイド溶液に含まれる微粒子は酸化銀微粒子であることが確認された(表5参照)。
【0077】
さらに、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。また、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0078】
(実施例5)
先ず、Pt含有量が4.565質量%の硝酸白金溶液4.86gおよびRh含有量が2.75質量%の硝酸ロジウム溶液1.61gの混合物にイオン交換水を添加して、陽イオン(Ptイオン/Rhイオン=5:1)濃度が0.0030mol/Lの貴金属イオン含有原料水溶液125mlを調製した。また、水素化ホウ素ナトリウム0.95gおよび前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン0.2gの混合物にイオン交換水を添加してこれらを溶解させ、ポリエチレンイミン水溶液125mlを調製した。このポリエチレンイミン水溶液には、前記貴金属イオン含有原料水溶液と混合した後のpHが5.5となるように微量の硝酸を添加した。
【0079】
次に、原料溶液AおよびBとして、それぞれ前記貴金属イオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして図1に示す製造装置を用いて貴金属合金コロイド溶液を作製した。
【0080】
得られた貴金属合金コロイド溶液のpHを表1に示す。また、貴金属合金コロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして高分解能STEMによる観察と電子線回折パターンによる同定を行なった。その結果を図9A〜9Bに示す。実施例1と同様にしてhkl面間距離の測定値と理論値を比較したところ、前記貴金属合金コロイド溶液に含まれる微粒子は白金/ロジウム合金微粒子であることが確認された(表6参照)。
【0081】
さらに、実施例1と同様にして、貴金属合金コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。また、30日間静置した貴金属合金コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0082】
(実施例6)
ローター11の回転速度を600rpmに変更した以外は実施例1と同様にして貴金属系コロイド溶液を作製した。この場合、ローター11と外側ステータ12との間の領域における剪断速度は1100sec−1であり、ローター11と内側ステータ13との間の領域における剪断速度は1100sec−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は2.1msecであった。
【0083】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0084】
(比較例1)
Pt含有量が4.565質量%の硝酸白金溶液4.85g、ヒドラジン一水和物0.95g、および前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリビニルピロリドン3.2gをイオン交換水250mlに添加し、プロペラ撹拌を300rpmで12時間行ない、貴金属系コロイド溶液を作製した。なお、硝酸白金溶液の添加量はコロイド形成前の陽イオン(Ptイオン)濃度が0.0025mol/Lとなる量である。
【0085】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0086】
(比較例2)
ポリビニルピロリドンを使用しなかった以外は比較例1と同様にして貴金属系コロイド溶液を作製した。得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0087】
(比較例3)
重量平均分子量10000のポリエチレンイミンの代わりに重量平均分子量1800のポリエチレンイミン0.2gを用いた以外は実施例1と同様にして貴金属系コロイド溶液を作製した。得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0088】
(比較例4)
ローター11の回転速度を300rpmに変更した以外は実施例1と同様にして貴金属系コロイド溶液を作製した。この場合、ローター11と外側ステータ12との間の領域における剪断速度は550sec−1であり、ローター11と内側ステータ13との間の領域における剪断速度は550sec−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は4.2msecであった。
【0089】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
表1に示した結果から明らかなように、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンを添加し、1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に原料溶液を独立に直接導入して均質混合して得られた本発明の貴金属系コロイド溶液(実施例1〜6)においては、平均粒子径がナノオーダーで粒径分布も狭い貴金属系微粒子が分散していることが確認された。また、この貴金属系コロイド溶液は、30日間保存しても前記貴金属系微粒子の平均粒子径に変化は見られず、保存性に優れたものであった。
【0097】
一方、重量平均分子量が3000未満のポリアルキレンイミンを添加した場合(比較例3)には平均粒子径がミクロンオーダーとなった。これは、貴金属系微粒子が水中での凝集力が大きいため、凝集しやすく、さらに、液中で十分な斥力が作用しなかったためと推察される。
【0098】
また、本発明にかかるポリアルキレンイミンを添加しない場合(比較例1)、ポリアルキレンイミンの代わりにポリビニルピロリドンを用いた場合(比較例2)、および剪断速度が1100sec−1未満となっている領域で原料溶液を独立に直接導入して均質混合した場合(比較例4)においては、平均粒子径がナノオーダーではあるが大きく、しかも粒径分布が広い貴金属系微粒子が形成されることが分かった。さらに、30日間保存した場合には貴金属系微粒子の平均粒子径が大きくなり、保存性に劣るものであった。これは、貴金属系微粒子が水中での凝集力が大きいため、凝集しやすく、さらに、比較例2の場合には、このような微粒子にポリビニルピロリドンが効果的な形態で吸着しないためであると推察され、比較例4の場合には、還元反応後に凝集し、凝集体が破壊される程の十分な機械的・物理的応力が付与されなかったためと推察される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明によれば、粒子径が小さく粒度分布が狭い貴金属系微粒子が均一に分散している、保存性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ること可能となる。
【0100】
したがって、本発明の貴金属系コロイド溶液は、貴金属系微粒子がナノサイズで高度に分散したものであるため、例えば、このような貴金属系コロイド溶液を用いて貴金属系微粒子を触媒担体に担持させることによって、貴金属系微粒子が高度に分散した状態で担持された貴金属系触媒を得ることができる。このような貴金属系微粒子が高度に分散した触媒は、ナノサイズ効果の発現が期待され、触媒活性に優れた貴金属系触媒などとして有用である。
【符号の説明】
【0101】
10…ホモジナイザー、11…ローター、12…外側ステータ、13…内側ステータ、14…回転シャフト、15…モーター、16A,16B…ノズル、17A,17B…流路(供給管)、20…反応容器、A,B…反応溶液、X…回転軸、Y…回転軸Xに対して直交する面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属系コロイド溶液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属微粒子や貴金属合金微粒子などの貴金属系微粒子は、通常、担体などに担持され、触媒など様々な用途に用いられている。このような貴金属系微粒子は、従来、貴金属系微粒子の原料である貴金属錯体と、酸化物または複合酸化物で構成される数ミクロンの凝集粉末である担体とを混合した後、あるいは酸化物または複合酸化物で構成される数ミクロンの凝集粉末である担体に貴金属錯体を含浸させた後、粒子を形成させることにより担体に担持されていた。しかしながら、この方法では、貴金属錯体が、一次粒子が凝集して形成された担体の表面近傍に吸着されるため、形成される貴金属系微粒子も近接して配置されて分散性が低くなり、使用時に貴金属系微粒子の粒成長が起こりやすく、触媒活性が低下するという問題があった。
【0003】
また、担体に貴金属系微粒子を担持させる方法としては、貴金属系微粒子を含有するコロイド溶液を担体に吸着させる方法が開示されている。この方法によれば、貴金属系微粒子を含有するコロイド溶液を一次粒子が凝集して形成された担体に、撹拌しながら加熱して担持させるため、十分に均一に担持させることが困難であった。一方、適切な高分子分散剤を吸着させた水中分散性の高い酸化物または複合酸化物を含有するコロイド溶液と貴金属系微粒子を含有するコロイド溶液とを均一に混合した後、pH調整により高分子分散剤を脱離させて均一に配置された貴金属系微粒子を固定化する方法によって担体に貴金属系微粒子を担持させることができる。しかしながら、貴金属系微粒子などのナノ粒子は水などの溶媒中で凝集しやすく、貴金属系微粒子が高度に分散したコロイド溶液を得ることは容易ではなかった。
【0004】
例えば、特開2004−261735号公報(特許文献1)には、水などの溶媒と、貴金属のクラスター粒子と、ポリエチレンイミンなどの高分子分散剤と、からなる貴金属コロイド溶液が開示されている。この貴金属コロイド溶液は水溶性が良好で、使用時に速やかな沈殿は起こらないものの、コロイド溶液中の貴金属微粒子は液中で凝集したものであり、その凝集粒子は貴金属の結晶が高分子分散剤を介して多数集まって形成されたものであり、単分散性は低いものであった。
【0005】
また、特開2006−183092号公報(特許文献2)には、2種以上の金属イオンを、カルボキシル基を有し且つ分子量が4000〜30000の高分子分散剤の存在下、液相の反応系中で還元剤の作用によって還元させて合金微粒子を析出させる方法が開示されている。この方法によれば、合金微粒子およびそれを含む金属コロイド溶液を効率よく得ることができる。しかしながら、この方法により得られた金属コロイド溶液においても、上記特許文献1に記載の貴金属コロイド溶液に比べて貴金属微粒子の液中分散性は向上するものの、未だ十分なものではなかった。
【0006】
さらに、特開2009−144250号公報(特許文献3)には、近接・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する反応装置を用いて、高分子分散剤および金属化合物を含む水溶液を上記の薄膜中で還元剤水溶液と合流させ、薄膜中で均一混合しながら還元反応を行うことにより得られた金属微粒子およびそれを含む金属コロイドが開示されている。この方法によれば、粒子径が均一な金属微粒子を含む金属コロイド溶液を得ることができる。しかしながら、この金属コロイド溶液においても、金属微粒子は液中で凝集しており、その液中分散性は十分なものではなかった。
【0007】
このように、従来のコロイド溶液においては、貴金属微粒子の液中分散性が未だ十分なものではなく、このような貴金属コロイド溶液を用いて貴金属微粒子担体に担持させても、貴金属系微粒子が高度に分散した触媒などを得ることは困難であった。
【0008】
また、特開2005−133135号公報(特許文献4)には、反応液を瞬時に混合し、配管内で反応を進行させて金属微粒子を形成させる方法が開示されており、この方法は、特に、界面活性剤を用いた逆ミセル法による金属微粒子形成に好適な方法であることが開示されている。そして、上記特許文献4には、混合方法として、高速撹拌混合方式、微小ギャップ混合方式、高圧混合方式が開示されている。しかしながら、前記高速撹拌混合方式に用いられる混合装置においては、反応液は反応場に滴下した後、混合されており、高い剪断力が付与された反応場に直接導入されて混合されるものではない。また、前記微小ギャップ混合方式に用いられる混合装置においては、狭小な反応場で剪断力を付与しながら反応液が供給されて混合されているが、反応液の供給口が離れており、瞬時の混合という観点においては十分なものではなかった。さらに、上記特許文献4には、高圧混合方式に用いられる混合装置としてY字型やT字型のものが開示されているが、これらにおいては反応液を配管内で衝突させて混合するものであり、剪断力を考慮したものではない。このため、上記特許文献4に記載の方法では、粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散している貴金属系コロイド溶液を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−261735号公報
【特許文献2】特開2006−183092号公報
【特許文献3】特開2009−144250号公報
【特許文献4】特開2005−133135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散している、保存性に優れた貴金属系コロイド溶液およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンおよび所定の分子量のポリアルキレンイミンを含有する2種類以上の原料溶液を、所定の剪断力が付与された反応場で均質混合することにより、粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散しているコロイド溶液が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の貴金属系コロイド溶液は、貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子と、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有する貴金属系コロイド溶液であり、該コロイド溶液のpHが2.5〜6.0であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜10.0nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、ことを特徴とするものである。また、本発明の貴金属系コロイド溶液としては、以下のような本発明の貴金属系コロイド溶液の製造方法により製造されたものが好ましい。
【0013】
すなわち、本発明の貴金属系コロイド溶液の製造方法は、2種類以上の原料溶液を混合して、貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子を含有する貴金属系コロイド溶液を製造する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンを含有するものであり、1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合し、溶液のpHを2.5〜6.0に調整することを特徴とする方法である。
【0014】
このような貴金属系コロイド溶液の製造方法において、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記貴金属イオンを含有するものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものであることが好ましく、前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液が還元剤をさらに含むものであることがより好ましい。また、前記貴金属イオンを含有する原料溶液の陽イオン濃度としては0.0001〜0.5mol/Lが好ましい。
【0015】
なお、本発明によって、粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散しているコロイド溶液が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、貴金属系微粒子などのナノ粒子は水などの水性溶液中では凝集しやすく、通常、高分子分散剤を添加してナノ粒子に吸着させて凝集を抑制している。本発明に用いられるポリアルキレンイミンもナノ粒子に吸着して凝集を抑制するものと推察される。このとき、剪断速度が7500sec−1を超えるような非常に高い剪断力を反応場に付与すると粒子径の大きな凝集体が形成される傾向にある。これは、過剰な剪断力によってポリアルキレンイミンが破壊されるため、破壊されたポリアルキレンイミンがナノ粒子に吸着しても液中で十分な斥力を付与することができず、ナノ粒子やその凝集体が凝集するためであると推察される。
【0016】
また、ジエタノールアミンとポリエチレングリコールを添加した場合にも粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。これは、ポリエチレングリコールのみを添加した場合でも液中で凝集体が形成するが、ジエタノールアミンとポリエチレングリコールを添加すると貴金属系微粒子を生成させるために添加したジエタノールアミンが、生成した貴金属系微粒子に吸着してポリエチレングリコールの吸着を阻害するため、ポリエチレングリコールによる凝集抑制効果がさらに劣るものとなり、また、ジエタノールアミンが貴金属系微粒子に吸着しても液中で十分な立体障害斥力が作用せず、ジエタノールアミンによる凝集抑制効果も十分に発揮されないためであると推察される。また、ポリエチレングリコールの斥力発現作用が小さい上に吸着量が少ないため、斥力の作用が小さくなり、貴金属系コロイド溶液の保存中に凝集体がさらに凝集して液中での分散性が低下するものと推察される。
【0017】
一方、本発明の製造方法においては、所定の分子量のポリアルキレンイミンを添加し、剪断速度が所定の値となるように反応場に剪断力を付与しているため、ポリアルキレンイミンが破壊されずに貴金属系微粒子に吸着し、液中で貴金属系微粒子に十分な斥力が付与され、貴金属系コロイド溶液中において貴金属系微粒子は均一に分散した状態で存在するものと推察される。また、ポリアルキレンイミンは貴金属系コロイド溶液中で安定に存在するため、粒子径が大きな凝集体が形成されにくく、貴金属系微粒子はそのままの状態、または粒子径が比較的小さい凝集体の状態で貴金属系コロイド溶液中で安定に分散しているものと推察される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粒子径が小さく均一な貴金属系微粒子が均一に分散している、保存性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に用いられる貴金属系コロイド溶液の製造装置の好適な一実施形態を示す模式縦断面図である。
【図2】図1に示すホモジナイザー10の先端部(攪拌部)を示す拡大縦断面図である。
【図3】図1に示す内側ステータ13の側面図である。
【図4】図1に示す内側ステータ13の横断面図である。
【図5A】実施例1で得られた貴金属系微粒子の高角度散乱暗視野像(HAADF像)を示す高分解能走査透過型電子顕微鏡写真(高分解能STEM写真)である。
【図5B】実施例1で得られた貴金属系微粒子の電子線回折像を示す透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)である。
【図6A】実施例2で得られた貴金属系微粒子の高角度散乱暗視野像(HAADF像)を示す高分解能走査透過型電子顕微鏡写真(高分解能STEM写真)である。
【図6B】実施例2で得られた貴金属系微粒子の電子線回折像を示す透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)である。
【図7A】実施例3で得られた貴金属系微粒子の高角度散乱暗視野像(HAADF像)を示す高分解能走査透過型電子顕微鏡写真(高分解能STEM写真)である。
【図7B】実施例3で得られた貴金属系微粒子の電子線回折像を示す透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)である。
【図8A】実施例4で得られた貴金属系微粒子の高角度散乱暗視野像(HAADF像)を示す高分解能走査透過型電子顕微鏡写真(高分解能STEM写真)である。
【図8B】実施例4で得られた貴金属系微粒子の電子線回折像を示す透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)である。
【図9A】実施例5で得られた貴金属系微粒子の高角度散乱暗視野像(HAADF像)を示す高分解能走査透過型電子顕微鏡写真(高分解能STEM写真)である。
【図9B】実施例5で得られた貴金属系微粒子の電子線回折像を示す透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
先ず、本発明の貴金属系コロイド溶液について説明する。本発明の貴金属系コロイド溶液は、貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子と、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有する貴金属系コロイド溶液であり、該コロイド溶液のpHが2.5〜6.0であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜10.0nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、ことを特徴とするものである。
【0022】
本発明にかかる貴金属系微粒子は、貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の微粒子である。このような貴金属系微粒子を形成する貴金属としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)が挙げられる。これらの貴金属は、1種を単独で貴金属微粒子を形成していてもよいし、2種以上で貴金属合金微粒子を形成していてもよい。これらの貴金属系微粒子の中でも、優れた触媒活性を示すという観点から、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、またはこれらの合金からなる微粒子が好ましい。
【0023】
また、本発明の貴金属系コロイド溶液においては、前記貴金属と貴金属以外の金属との貴金属合金の微粒子を貴金属系微粒子として使用することも可能である。この貴金属以外の金属としては、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、クロム、亜鉛、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステンなどが挙げられる。これらの金属は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0024】
さらに、本発明にかかる貴金属系微粒子としては、前記貴金属の酸化物、水酸化物、塩、炭化物、窒化物、硫化物などの貴金属化合物の微粒子;前記貴金属合金の酸化物、水酸化物、塩、炭化物、窒化物、硫化物などの貴金属合金化合物の微粒子も使用することができる。なお、貴金属合金化合物とは、少なくとも1種の貴金属を含有する複合金属酸化物などの複合金属化合物を意味する。
【0025】
本発明の貴金属系コロイド溶液は、このような貴金属系微粒子が分散したものである。この貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。本発明のコロイド溶液中の微粒子は、このようにして測定された粒度分布において累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜10.0nm(好ましくは0.8〜5.0nm、より好ましくは0.8〜3.0nm)であり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下(好ましくは2.0倍以下)のものである。このような粒子径D50およびD90を有する貴金属系微粒子はコロイド溶液中において均一に分散している。このような貴金属系コロイド溶液を用いることにより、粒子径が小さく均一な貴金属系触媒粒子を得ることができ、しかも、この貴金属系触媒粒子は触媒として使用する際に粒成長しにくく、触媒活性の低下を抑制することが可能となる。また、前記貴金属系微粒子をアルミナ骨格を有する複合酸化物凝集粒子に担持させた場合、アルミナ骨格を有する複合酸化物凝集粒子の細孔径を変化させることによって、前記複合酸化物凝集粒子(触媒担体)の細孔径分布を任意に制御することが可能となる。したがって、触媒の調製の際に本発明の貴金属系コロイド溶液を用いることによって、触媒の使用温度領域に応じて理想的な形状の触媒を設計することが可能となり、例えば、ガス拡散性に最適な細孔径を有し、貴金属系微粒子が均一に触媒担体の細孔内に配置され、拡散律速領域で理想的な触媒活性を有する高耐熱性の触媒を得ることが可能となる。
【0026】
本発明の貴金属系コロイド溶液は所定の分子量のポリアルキレンイミンを含むものである。コロイド溶液中にこのようなポリアルキレンイミンが存在することによって、前記貴金属系微粒子は、その表面が正に帯電するため、凝集しにくくなり、均一な状態で安定してコロイド溶液中に分散することが可能となる。また、貴金属系微粒子の表面が正に帯電することによって、負に帯電した担体との間では静電引力が作用し、正に帯電した担体との間では斥力が作用することから、所定の担体に貴金属系微粒子を吸着させることが可能となる。例えば、アルミナとセリアとの複合酸化物担体に貴金属を吸着させる場合、従来の方法では、アルミナに吸着した貴金属が表面移動しやすいため、貴金属の粒成長により触媒活性が低下する傾向にあったが、本発明の貴金属系コロイド溶液を用いると、ポリアルキレンイミンの作用により貴金属系微粒子の表面が正に帯電するため、セリア微粒子の表面を負に帯電させ且つアルミナ微粒子の表面を正に帯電させることにより貴金属系微粒子を選択的にセリア微粒子に吸着させることができ、貴金属の粒成長が起こりにくくなり、触媒活性の低下が抑制される。
【0027】
このようなポリアルキレンイミンの重量平均分子量は3000〜15000である。ポリアルキレンイミンの重量平均分子量が前記範囲にあると貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくく、均一に分散しており、しかも保存安定性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ることができる。一方、ポリアルキレンイミンの重量平均分子量が前記下限未満になるとポリアルキレンイミンが貴金属系微粒子に吸着しても立体障害による斥力が十分に発現せず、貴金属系微粒子が凝集し、他方、前記上限を超えるとポリアルキレンイミンが架橋構造を形成し、貴金属系微粒子が凝集して大きな凝集体が形成する。したがって、このような観点から、ポリアルキレンイミンの重量平均分子量としては、8000〜12000が好ましい。なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定され、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0028】
本発明のコロイド溶液において、ポリアルキレンイミンの含有量としては、前記貴金属系微粒子の単位表面積に対して0.5〜30mg/m2が好ましく、2〜20mg/m2がより好ましい。ポリアルキレンイミンの含有量が前記範囲にあると貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくく、均一に分散しており、しかも保存安定性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ることができる。一方、前記ポリアルキレンイミンの含有量が前記下限未満になると貴金属系微粒子の表面をポリアルキレンイミンが十分に被覆することができず、貴金属系微粒子が凝集してより大きな凝集体が形成される傾向にあり、他方、前記上限を超えると貴金属系コロイド溶液中に遊離のポリアルキレンイミンが多く存在するため、ポリアルキレンイミンの架橋反応が著しく進行し、貴金属系微粒子が凝集して粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。
【0029】
また、本発明のコロイド溶液のpHは2.5〜6.0である。前記コロイド溶液のpHが前記範囲にあるとポリアルキレンイミンは解離してNH3+基が形成され、貴金属系微粒子の負に帯電したサイトまたはニュートラルなサイトに吸着して分散効果を付与する。その結果、貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくく、均一に分散しており、しかも保存安定性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ることができる。一方、pHが前記下限未満になると還元反応速度が低下し、反応途中の中間生成物にポリアルキレンイミンが吸着し、その後、逐次反応が生ずるため、凝集が進行する。他方、前記上限を超えると、ポリアルキレンイミンの解離度が小さく、貴金属系微粒子へのポリアルキレンイミンの吸着量が減少し、貴金属系微粒子間に十分な斥力が発現せず、貴金属系微粒子が凝集する。
【0030】
本発明のコロイド溶液に用いられる溶媒としては、水、水溶性有機溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトンなど)、水と前記水溶性有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。本発明にかかるポリアルキレンイミンはこのような溶媒を用いた場合に優れた分散効果を発揮する傾向にある。
【0031】
このような貴金属系コロイド溶液は、例えば、前記貴金属イオンを含有する原料溶液と前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液とを、剪断速度が1100sec−1以上となるような剪断力が付与された反応場で均質混合することによって製造することができる。本発明のコロイド溶液は、2種類以上の原料溶液を混合する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記貴金属イオンを含有するものを使用し、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記ポリアルキレンイミンを含有するものを使用し、これら原料溶液を1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に独立に直接導入して均質混合する方法によって製造することが可能である。特に、許容剪断速度の中で比較的高い範囲(1800sec−1以上7500sec−1以下)においてコロイド溶液を作製すれば、水などの貴金属系微粒子が凝集しやすい溶媒においても、貴金属系微粒子を凝集させずに、均一に分散させることが可能となる。
【0032】
このような製造方法に用いられる装置としては、例えば、図1に示すものが挙げられる。以下、図面を参照しながら、本発明の貴金属系コロイド溶液を製造するための好適な装置ついて詳細に説明する。なお、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。
【0033】
図1に示す製造装置は、攪拌装置としてホモジナイザー10を備えており、ホモジナイザー10の先端部(攪拌部)が反応容器20内に配置されている。ホモジナイザー10の先端部は、図2に示すように、凹型のローター11と、ローター11の外周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された凹型の外側ステータ12と、ローター11の内周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された凸型の内側ステータ13とを備えている。さらに、ローター11は、回転シャフト14を介してモーター15に接続されており、回転することが可能な構造となっている。
【0034】
そして、図1に示す製造装置においては、複数のノズル、すなわち、原料溶液Aを導入するためのノズル16Aと原料溶液Bを導入するためのノズル16Bとが、それぞれ内側ステータ13におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられている。また、ノズル16Aには流路17Aを介して原料溶液Aの供給装置(図示せず)が、ノズル16Bには流路17Bを介して原料溶液Bの供給装置(図示せず)がそれぞれ接続されており、ローター11と内側ステータ13との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能な構造となっている。
【0035】
さらに、図1に示す製造装置においては、図3および図4に示すように、ノズル16Aおよびノズル16Bが、内側ステータ13におけるローター11に対向する面において、ローター11の回転軸Xに対して直交する所定の面Yの外周方向に交互に設けられている。
【0036】
なお、図3および図4においては、ノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ12個ずつ設けられているが(24孔タイプ)、ノズル16Aおよびノズル16Bの数は特に限定されるものではない。したがって、ノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ1個ずつ設けられていればよいが(2孔タイプ)、原料溶液Aおよび原料溶液Bが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間をより短縮できるという観点から、ノズル16Aおよびノズル16Bの数はそれぞれ10個以上であることが好ましく、20個以上であることがより好ましい。一方、ノズル16Aおよびノズル16Bのそれぞれの数の上限は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、ノズルの詰まりをより確実に防止するという観点から、交互に配置されたノズル16Aおよびノズル16Bの開口部の直径が0.1mm程度以上の寸法を取り得るようにすることが好ましい。このようにノズルの開口部の直径は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、ノズルの詰まりをより確実に防止するという観点から、0.1〜1mm程度であることが好ましい。
【0037】
また、図3および図4においては、ノズル16Aおよびノズル16Bが、ローター11の回転軸Xに対して直交する一つの面Yの外周方向に一列に交互に設けられているが、複数の面の外周方向に複数の列において交互に設けられていてもよい。
【0038】
以上説明した図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとから原料溶液Aおよび原料溶液Bがそれぞれ導入される領域、すなわち図1および図2においてはローター11の内周と内側ステータ13の外周との間の領域において、剪断速度が1100sec−1以上であることが好ましく、1800sec−1以上であることがより好ましい。この領域の剪断速度が前記下限未満になると反応場に十分な剪断力が付与されず、凝集した貴金属系微粒子が分離されず、大きな凝集体が形成する傾向にある。また、前記領域の剪断速度が7500sec−1以下であることが好ましく、6500sec−1以下であることがより好ましい。前記剪断速度が前記上限を超えるとポリアルキレンイミンが破壊されて、前記貴金属系微粒子に十分な斥力を付与することができず、より大きな凝集体が形成する傾向にある。
【0039】
このような範囲の剪断速度を達成するための条件としては、ローターの回転速度およびローターとステータとの間のギャップの大きさが影響するため、前記領域の剪断速度が前記条件を満たすようにそれらを設定する必要がある。具体的なローター11の回転速度は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、例えば、内側ステータ13の外径10mm、ローター11と外側ステータ12との間のギャップ0.2mm、およびローター11と内側ステータ13との間のギャップ0.2mmの場合にはローター11の回転速度を好ましくは600〜4000rpm、より好ましくは1000〜3500rpmに設定することによって前記剪断速度を達成することが可能となる。
【0040】
また、ローター11と内側ステータ13との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましい。さらに、ローター11と外側ステータ12との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましい。このギャップの大きさの変化に対応してローター11の回転速度を調整することにより前記範囲の剪断速度を達成することが可能となる。これらのギャップが前記下限未満になるとギャップの詰まりが発生し易くなる傾向にあり、前記上限を超えると効果的な剪断力を付与できない傾向にある。
【0041】
また、図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとからそれぞれ供給された原料溶液Aおよび原料溶液Bが、前記領域に導入されてから1msec以内(特に好ましくは0.5msec以内)に均質混合されるようにノズル16Aおよびノズル16Bが配置されていることが好ましい。なお、ここでいう原料溶液が前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間とは、ノズル16A(またはノズル16B)から導入された原料溶液A(または原料溶液B)が隣接するノズル16B(またはノズル16A)の位置に到達し、ノズル16B(またはノズル16A)から導入された原料溶液B(または原料溶液A)と混合されるまでの時間をいう。
【0042】
以上、本発明の貴金属系コロイド溶液の製造に好適に用いられる装置について説明したが、本発明のコロイド溶液の製造方法は、図1に示す製造装置を用いる方法に限定されるものではない。例えば、図1に示す製造装置においては、2種類の原料溶液が導入できるように構成されているが、3種類以上の原料溶液が導入できるようにノズルや原料溶液供給装置等を構成してもよい。
【0043】
また、図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとがそれぞれ内側ステータ13におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられているが、ノズル16Aとノズル16Bとがそれぞれ外側ステータ12におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられていてもよい。そのように構成すれば、ローター11と外側ステータ12との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能となる。なお、その領域における剪断速度は前記条件を満たすように設定する必要がある。
【0044】
さらに、上述したように、剪断速度が所定の値となるような剪断力が反応場に付与できる方法であれば、例えば、攪拌子などを用いて2種類以上の原料溶液を均質混合してもよい。
【0045】
次に、本発明の貴金属系コロイド溶液の製造方法の好適な一実施形態について説明する。本発明の貴金属系コロイド溶液の製造方法においては、原料溶液を導入する領域の剪断速度を前記範囲に設定し、前記各原料溶液を前記領域に独立して直接的に導入することが好ましい。例えば、図1に示す製造装置を用いる場合には、ノズル16Aとノズル16Bとから原料溶液Aおよび原料溶液Bがそれぞれ導入される領域、すなわち図1および図2においてはローター11と内側ステータ13との間の領域の剪断速度が前記範囲となるようにローター11を回転させ、原料溶液Aおよび原料溶液Bをそれぞれノズル16Aおよびノズル16Bから前記領域に独立して直接的に導入する。このように剪断速度が所定の値となっている領域に直接導入された各原料溶液は、極めて短時間の間に均質混合されて反応が終了し、前記原料溶液中の原料に由来する貴金属系微粒子が得られる。このような方法により得られた貴金属系微粒子は、粒子径がより小さく且つ粒度分布がより狭いものとなる。
【0046】
また、各原料溶液の送液速度としては特に制限はないが、1.0〜30ml/minが好ましい。原料溶液の送液速度が前記下限未満になると貴金属系微粒子の製造効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると貴金属系微粒子の液中における凝集粒子径が大きくなる傾向にある。
【0047】
本発明のコロイド溶液の製造方法においては、貴金属系コロイド溶液のpHを2.5〜6.0に調整する。コロイド溶液のpHを前記範囲にするとポリアルキレンイミンは解離してNH3+基が形成され、貴金属系微粒子の負に帯電したサイトまたはニュートラルなサイトに吸着して分散効果を付与する。その結果、貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくく、均一に分散しており、しかも保存安定性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ることができる。一方、pHが前記下限未満になると還元反応速度が低下し、反応途中の中間生成物にポリアルキレンイミンが吸着し、その後、逐次反応が生ずるため、凝集が進行する。他方、前記上限を超えると、ポリアルキレンイミンの解離度が小さく、貴金属系微粒子へのポリアルキレンイミンの吸着量が減少し、貴金属系微粒子間に十分な斥力が発現せず、貴金属系微粒子が凝集する。
【0048】
本発明の貴金属系コロイド溶液を製造する場合、前記貴金属イオンと前記ポリアルキレンイミンは、同じ原料溶液に含まれていてもよいし、各々別の原料溶液に含まれていてもよいが、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記貴金属イオンを含むものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含むものであることが好ましい。さらに、ヒドラジンおよび水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤は貴金属イオンと同一の原料溶液には含まれず、ポリアルキレンイミンと同一の原料溶液には含まれていてもよい。例えば、図1に示す製造装置を用いる場合には、前記貴金属イオンと前記ポリアルキレンイミンがともに原料溶液Aに含まれていてもよいし、原料溶液Aに前記貴金属イオンが含まれ、原料溶液Bに前記ポリアルキレンイミンが含まれていてもよいが、後者が好ましい。
【0049】
また、前記貴金属イオンを含む原料溶液(例えば前記原料溶液A)の陽イオン濃度としては0.0001〜0.5mol/Lが好ましく、0.0001〜0.2mol/Lがより好ましい。陽イオン濃度が前記範囲にあると貴金属系微粒子は、粒子径が小さく均一で、凝集しにくく、均一に分散しており、しかも保存安定性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ることができる。一方、陽イオン濃度が前記下限未満になると貴金属系微粒子の収率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとコロイド溶液中の貴金属系微粒子間の距離が短くなるため、ポリアルキレンイミンが効果的な形態で貴金属系微粒子に吸着できず、貴金属系微粒子が凝集する傾向にある。
【0050】
このような本発明の貴金属系コロイド溶液を製造する場合に適用できる反応系は特に制限されず、アルコキシドの加水分解反応や貧溶媒を用いた溶解度変化を利用する析出反応などが挙げられるが、中和反応や酸化還元反応といった核生成速度や反応速度が極めて早い反応においても前記製造方法によれば貴金属系微粒子は粒子径が小さく均一なものとなり、分散性および保存安定性に優れた貴金属系コロイド溶液が得られるため、本発明の製造方法はこのような核生成速度や反応速度が極めて早い反応系に対して特に有用である。
【0051】
このような中和反応、酸化還元反応などにおける具体的な反応系は特に制限されるものではないが、酸化還元反応系が好ましく、例えば、2種類の原料溶液を用いる場合には以下のような原料溶液AおよびBを用いる酸化還元反応系がより好ましい。
原料溶液A(貴金属イオン含有溶液):硝酸銀、硝酸パラジウム、塩化白金酸、硝酸ロジウム、ジニトロジアンミン白金硝酸(以下、「硝酸白金」という)などを含有する溶液。
原料溶液B(還元剤):アセトアルデヒド溶液、水素化ホウ素ナトリウム溶液、ヒドラジン、エタノールなど。
【0052】
なお、ポリアルキレンイミンは、上記いずれの反応においても原料溶液Aおよび原料溶液Bの少なくとも一方に含まれていればよいが、原料溶液Bに含まれていることが好ましい。例えば、前記酸化還元反応においては、貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンを含有する原料溶液Aと、還元剤とポリアルキレンイミンとを含有する原料溶液Bとを用いることが好ましい。
【0053】
このような原料溶液の組成や組み合わせは、目的とする貴金属系コロイド溶液の種類や使用する原料の種類などに応じて適宜設定することができる。
【0054】
本発明のコロイド溶液の製造方法によって得られる貴金属系コロイド溶液の組成は特に限定されず、様々な原料溶液を用いることによって、貴金属、貴金属合金、貴金属化合物、貴金属合金化合物といった種々の組成の貴金属系コロイド溶液を得ることが可能となる。
【0055】
また、本発明の貴金属系コロイド溶液は液中で非常に分散性が高く、高分散性の触媒担体コロイド溶液と均質混合することによって高度に分散した状態で貴金属系微粒子を触媒担体に担持させることができる。さらに、本発明の貴金属系コロイド溶液においては、pH調整を行うことによって貴金属微粒子からポリアルキレンイミンを瞬時に脱着させることができるため、触媒担体へ貴金属系微粒子を均一に配置した状態で容易に担持させることが可能となる。また、本発明の貴金属系コロイド溶液と同様にして調製した金属酸化物または複合金属酸化物のコロイド溶液を用いて前記触媒担体を調製した場合には、触媒担体である金属酸化物粒子または複合金属酸化物粒子からポリアルキレンイミンを瞬時に脱着させることができるため、さらに均一な状態で貴金属系微粒子を担持させることが可能となる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
先ず、Pt含有量が4.565質量%の硝酸白金溶液4.85gにイオン交換水を添加して、陽イオン(Ptイオン)濃度が0.0025mol/Lの貴金属イオン含有原料水溶液(原料溶液A)125mlを調製した。また、ヒドラジン一水和物0.95gおよび下記式(1):
【0058】
【化1】
【0059】
で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン0.2gの混合物にイオン交換水を添加してこれらを溶解させ、ポリエチレンイミン水溶液(原料溶液B)125mlを調製した。このポリエチレンイミン水溶液には、前記貴金属イオン含有原料水溶液と混合した後のpHが3.0となるように微量の硝酸を添加した。
【0060】
次に、図1に示す製造装置(スーパーアジテーションリアクター)を用いて貴金属系コロイド溶液を作製した。なお、ステータ13としてはノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ24個ずつ設けられている48孔タイプのものを使用した。
【0061】
図1に示すように、ホモジナイザー10の先端を100mlビーカー20の中に浸るようにセットし、ホモジナイザー10におけるローター11を3200rpmの回転速度で回転させながら、前記原料溶液Aと前記原料溶液Bとをそれぞれ2.5ml/minの供給速度でチューブポンプ(図示せず)を用いてノズル16Aおよびノズル16Bからローター11と内側ステータ13との間の領域に送液して混合し、貴金属系コロイド溶液を作製した。
【0062】
なお、ローター11の外径は17.8mm、ローター11と外側ステータ12との間のギャップは0.5mmであり、それらの間の領域における剪断速度は6000sec−1であった。また、内側ステータ13の外径は12.2mm、ローター11と内側ステータ13との間のギャップは0.2mmであり、それらの間の領域における剪断速度は6000sec−1であった。さらに、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は0.394msecであった。ここで、均質混合されるまでの時間とは、ノズル16Aまたはノズル16Bから吐出された原料溶液Aまたは原料溶液Bがローター11の回転によって隣接するノズル16Bまたはノズル16Aに到達するまでの時間と定義されるものである。
【0063】
ビーカー20からあふれて出てくる貴金属系コロイド溶液を、上記ビーカー20のさらに下に1Lビーカー(図示せず)をセットして受け止めた。
【0064】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、貴金属系コロイド溶液を数滴、カーボン支持膜に滴下して高分解能走査透過型電子顕微鏡(高分解能STEM、日本電子(株)製「JEM2100F−Csコレクター」)による観察を行なった。その結果を図5Aに示す。また、透過型電子顕微鏡を用いて電子線回折パターンを測定した。図5Bには貴金属系微粒子の電子線回折像を示す。hkl面間距離について、この電子線回折像から求められる測定値を理論値と比較したところ、前記貴金属系コロイド溶液に含まれる微粒子は白金微粒子であることが確認された(表2参照)。
【0065】
次に、この貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を動的光散乱法(日機装(株)製「Nanotrac250」を使用)により測定した。この貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布から累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置した貴金属系コロイド溶液について上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0066】
(実施例2)
先ず、Pd含有量が8.2質量%の硝酸パラジウム溶液2.71gにイオン交換水を添加して、陽イオン(Pdイオン)濃度が0.0025mol/Lの貴金属イオン含有原料水溶液125mlを調製した。また、水素化ホウ素ナトリウム0.95gおよび前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン0.2gの混合物にイオン交換水を添加してこれらを溶解させ、ポリエチレンイミン水溶液125mlを調製した。このポリエチレンイミン水溶液には、前記貴金属イオン含有原料水溶液と混合した後のpHが5.5となるように微量の硝酸を添加した。
【0067】
次に、原料溶液AおよびBとして、それぞれ前記貴金属イオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして図1に示す製造装置を用いて貴金属系コロイド溶液を作製した。
【0068】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、貴金属系コロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして高分解能STEMによる観察と電子線回折パターンによる同定を行なった。その結果を図6A〜6Bに示す。実施例1と同様にしてhkl面間距離の測定値と理論値を比較したところ、前記貴金属系コロイド溶液に含まれる微粒子はパラジウム微粒子であることが確認された(表3参照)。
【0069】
さらに、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。また、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
先ず、Rh含有量が2.75質量%の硝酸ロジウム溶液8.07gにイオン交換水を添加して、陽イオン(Rhイオン)濃度が0.0025mol/Lの貴金属イオン含有原料水溶液125mlを調製した。また、水素化ホウ素ナトリウム0.95gおよび前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン0.2gの混合物にイオン交換水を添加してこれらを溶解させ、ポリエチレンイミン水溶液125mlを調製した。このポリエチレンイミン水溶液には、前記貴金属イオン含有原料水溶液と混合した後のpHが5.5となるように微量の硝酸を添加した。
【0071】
次に、原料溶液AおよびBとして、それぞれ前記貴金属イオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして図1に示す製造装置を用いて貴金属系コロイド溶液を作製した。
【0072】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、貴金属系コロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして高分解能STEMによる観察と電子線回折パターンによる同定を行なった。その結果を図7A〜7Bに示す。実施例1と同様にしてhkl面間距離の測定値と理論値を比較したところ、前記貴金属系コロイド溶液に含まれる微粒子はロジウム微粒子であることが確認された(表4参照)。
【0073】
さらに、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。また、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0074】
(実施例4)
先ず、硝酸銀0.106gに硝酸とイオン交換水を添加して、陽イオン(Agイオン)濃度が0.0025mol/Lの貴金属イオン含有原料水溶液125mlを調製した。また、水素化ホウ素ナトリウム0.95gおよび前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン0.2gの混合物にイオン交換水を添加してこれらを溶解させ、ポリエチレンイミン水溶液125mlを調製した。このポリエチレンイミン水溶液には、前記貴金属イオン含有原料水溶液と混合した後のpHが5.5となるように微量の硝酸を添加した。
【0075】
次に、原料溶液AおよびBとして、それぞれ前記貴金属イオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして図1に示す製造装置を用いて貴金属系コロイド溶液を作製した。
【0076】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、貴金属系コロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして高分解能STEMによる観察と電子線回折パターンによる同定を行なった。その結果を図8A〜8Bに示す。実施例1と同様にしてhkl面間距離の測定値と理論値を比較したところ、前記貴金属系コロイド溶液に含まれる微粒子は酸化銀微粒子であることが確認された(表5参照)。
【0077】
さらに、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。また、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0078】
(実施例5)
先ず、Pt含有量が4.565質量%の硝酸白金溶液4.86gおよびRh含有量が2.75質量%の硝酸ロジウム溶液1.61gの混合物にイオン交換水を添加して、陽イオン(Ptイオン/Rhイオン=5:1)濃度が0.0030mol/Lの貴金属イオン含有原料水溶液125mlを調製した。また、水素化ホウ素ナトリウム0.95gおよび前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン0.2gの混合物にイオン交換水を添加してこれらを溶解させ、ポリエチレンイミン水溶液125mlを調製した。このポリエチレンイミン水溶液には、前記貴金属イオン含有原料水溶液と混合した後のpHが5.5となるように微量の硝酸を添加した。
【0079】
次に、原料溶液AおよびBとして、それぞれ前記貴金属イオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして図1に示す製造装置を用いて貴金属合金コロイド溶液を作製した。
【0080】
得られた貴金属合金コロイド溶液のpHを表1に示す。また、貴金属合金コロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして高分解能STEMによる観察と電子線回折パターンによる同定を行なった。その結果を図9A〜9Bに示す。実施例1と同様にしてhkl面間距離の測定値と理論値を比較したところ、前記貴金属合金コロイド溶液に含まれる微粒子は白金/ロジウム合金微粒子であることが確認された(表6参照)。
【0081】
さらに、実施例1と同様にして、貴金属合金コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。また、30日間静置した貴金属合金コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0082】
(実施例6)
ローター11の回転速度を600rpmに変更した以外は実施例1と同様にして貴金属系コロイド溶液を作製した。この場合、ローター11と外側ステータ12との間の領域における剪断速度は1100sec−1であり、ローター11と内側ステータ13との間の領域における剪断速度は1100sec−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は2.1msecであった。
【0083】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0084】
(比較例1)
Pt含有量が4.565質量%の硝酸白金溶液4.85g、ヒドラジン一水和物0.95g、および前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリビニルピロリドン3.2gをイオン交換水250mlに添加し、プロペラ撹拌を300rpmで12時間行ない、貴金属系コロイド溶液を作製した。なお、硝酸白金溶液の添加量はコロイド形成前の陽イオン(Ptイオン)濃度が0.0025mol/Lとなる量である。
【0085】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0086】
(比較例2)
ポリビニルピロリドンを使用しなかった以外は比較例1と同様にして貴金属系コロイド溶液を作製した。得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0087】
(比較例3)
重量平均分子量10000のポリエチレンイミンの代わりに重量平均分子量1800のポリエチレンイミン0.2gを用いた以外は実施例1と同様にして貴金属系コロイド溶液を作製した。得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0088】
(比較例4)
ローター11の回転速度を300rpmに変更した以外は実施例1と同様にして貴金属系コロイド溶液を作製した。この場合、ローター11と外側ステータ12との間の領域における剪断速度は550sec−1であり、ローター11と内側ステータ13との間の領域における剪断速度は550sec−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は4.2msecであった。
【0089】
得られた貴金属系コロイド溶液のpHを表1に示す。また、実施例1と同様にして、貴金属系コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50(平均粒子径)および累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置した貴金属系コロイド溶液についても上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
表1に示した結果から明らかなように、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンを添加し、1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に原料溶液を独立に直接導入して均質混合して得られた本発明の貴金属系コロイド溶液(実施例1〜6)においては、平均粒子径がナノオーダーで粒径分布も狭い貴金属系微粒子が分散していることが確認された。また、この貴金属系コロイド溶液は、30日間保存しても前記貴金属系微粒子の平均粒子径に変化は見られず、保存性に優れたものであった。
【0097】
一方、重量平均分子量が3000未満のポリアルキレンイミンを添加した場合(比較例3)には平均粒子径がミクロンオーダーとなった。これは、貴金属系微粒子が水中での凝集力が大きいため、凝集しやすく、さらに、液中で十分な斥力が作用しなかったためと推察される。
【0098】
また、本発明にかかるポリアルキレンイミンを添加しない場合(比較例1)、ポリアルキレンイミンの代わりにポリビニルピロリドンを用いた場合(比較例2)、および剪断速度が1100sec−1未満となっている領域で原料溶液を独立に直接導入して均質混合した場合(比較例4)においては、平均粒子径がナノオーダーではあるが大きく、しかも粒径分布が広い貴金属系微粒子が形成されることが分かった。さらに、30日間保存した場合には貴金属系微粒子の平均粒子径が大きくなり、保存性に劣るものであった。これは、貴金属系微粒子が水中での凝集力が大きいため、凝集しやすく、さらに、比較例2の場合には、このような微粒子にポリビニルピロリドンが効果的な形態で吸着しないためであると推察され、比較例4の場合には、還元反応後に凝集し、凝集体が破壊される程の十分な機械的・物理的応力が付与されなかったためと推察される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明によれば、粒子径が小さく粒度分布が狭い貴金属系微粒子が均一に分散している、保存性に優れた貴金属系コロイド溶液を得ること可能となる。
【0100】
したがって、本発明の貴金属系コロイド溶液は、貴金属系微粒子がナノサイズで高度に分散したものであるため、例えば、このような貴金属系コロイド溶液を用いて貴金属系微粒子を触媒担体に担持させることによって、貴金属系微粒子が高度に分散した状態で担持された貴金属系触媒を得ることができる。このような貴金属系微粒子が高度に分散した触媒は、ナノサイズ効果の発現が期待され、触媒活性に優れた貴金属系触媒などとして有用である。
【符号の説明】
【0101】
10…ホモジナイザー、11…ローター、12…外側ステータ、13…内側ステータ、14…回転シャフト、15…モーター、16A,16B…ノズル、17A,17B…流路(供給管)、20…反応容器、A,B…反応溶液、X…回転軸、Y…回転軸Xに対して直交する面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子と、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有する貴金属系コロイド溶液であり、
該コロイド溶液のpHが2.5〜6.0であり、
該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜10.0nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、
ことを特徴とする貴金属系コロイド溶液。
【請求項2】
2種類以上の原料溶液を混合することにより製造された前記貴金属系微粒子を含有する貴金属系コロイド溶液であり、
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記ポリアルキレンイミンを含有するものであり、
1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することにより得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の貴金属系コロイド溶液。
【請求項3】
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記貴金属イオンを含有するものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものであることを特徴とする請求項2に記載の貴金属系コロイド溶液。
【請求項4】
前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液が還元剤をさらに含むものであることを特徴とする請求項3に記載の貴金属系コロイド溶液。
【請求項5】
前記貴金属イオンを含有する原料溶液の陽イオン濃度が0.0001〜0.5mol/Lであることを特徴とする請求項2〜4のうちのいずれか一項に記載の貴金属系コロイド溶液。
【請求項6】
2種類以上の原料溶液を混合して、貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子を含有する貴金属系コロイド溶液を製造する方法であって、
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンを含有するものであり、
1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合し、溶液のpHを2.5〜6.0に調整することを特徴とする貴金属系コロイド溶液の製造方法。
【請求項7】
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記貴金属イオンを含有するものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものであることを特徴とする請求項6に記載の貴金属系コロイド溶液の製造方法。
【請求項8】
前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液が還元剤をさらに含むものであることを特徴とする請求項7に記載の貴金属系コロイド溶液の製造方法。
【請求項9】
前記貴金属イオンを含有する原料溶液の陽イオン濃度が0.0001〜0.5mol/Lであることを特徴とする請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の貴金属系コロイド溶液の製造方法。
【請求項1】
貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子と、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有する貴金属系コロイド溶液であり、
該コロイド溶液のpHが2.5〜6.0であり、
該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜10.0nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.5倍以下である前記貴金属系微粒子である、
ことを特徴とする貴金属系コロイド溶液。
【請求項2】
2種類以上の原料溶液を混合することにより製造された前記貴金属系微粒子を含有する貴金属系コロイド溶液であり、
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記ポリアルキレンイミンを含有するものであり、
1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することにより得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の貴金属系コロイド溶液。
【請求項3】
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記貴金属イオンを含有するものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものであることを特徴とする請求項2に記載の貴金属系コロイド溶液。
【請求項4】
前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液が還元剤をさらに含むものであることを特徴とする請求項3に記載の貴金属系コロイド溶液。
【請求項5】
前記貴金属イオンを含有する原料溶液の陽イオン濃度が0.0001〜0.5mol/Lであることを特徴とする請求項2〜4のうちのいずれか一項に記載の貴金属系コロイド溶液。
【請求項6】
2種類以上の原料溶液を混合して、貴金属微粒子、貴金属合金微粒子、貴金属化合物微粒子および貴金属合金化合物微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の貴金属系微粒子を含有する貴金属系コロイド溶液を製造する方法であって、
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記貴金属系微粒子の原料である貴金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンを含有するものであり、
1100sec−1以上7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合し、溶液のpHを2.5〜6.0に調整することを特徴とする貴金属系コロイド溶液の製造方法。
【請求項7】
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記貴金属イオンを含有するものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものであることを特徴とする請求項6に記載の貴金属系コロイド溶液の製造方法。
【請求項8】
前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液が還元剤をさらに含むものであることを特徴とする請求項7に記載の貴金属系コロイド溶液の製造方法。
【請求項9】
前記貴金属イオンを含有する原料溶液の陽イオン濃度が0.0001〜0.5mol/Lであることを特徴とする請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の貴金属系コロイド溶液の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【公開番号】特開2011−144420(P2011−144420A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5616(P2010−5616)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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