説明

貸金庫システム及び貸金庫管理用プログラム

【課題】収納棚内に収納されている複数の金庫箱の重量分布及び収納棚の重量バランス情報を表示させることにより、収納棚の重量バランスを良好に保持し、収納棚の立設状態を安定化させるとともにシステム運用の安全性を向上させることが可能な貸金庫システム及び貸金庫管理用プログラムを提供する。
【解決手段】貸金庫システム10において、収納棚14内に収納されている全ての金庫箱13の重量を金庫箱13の収納位置と対応付けた金庫箱13の2次元マトリクス重量分布、及び、収納棚14の重量バランスを評価するための重量バランス情報を表示器24に表示させて、システムの管理者に重量バランスの状況等を認識させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貸金庫システム及び貸金庫管理用プログラムに関する。特に、収納棚内に収納されている複数の金庫箱の重量分布及び収納棚の重量バランス情報を表示させることにより、収納棚の重量バランスを良好に保持し、収納棚の立設状態を安定化させるとともにシステム運用の安全性を向上させることが可能な貸金庫システム及び貸金庫管理用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貴重品(被格納物)を格納した金庫箱を防盗・防火性に優れた金庫室に設置された収納棚に収納して保管し、利用者による貴重品の預入及び引出の際に、利用者が貴重品の預入及び引出を行う閲覧室内に設置された閲覧テーブルと金庫室の収納棚との間で金庫箱を搬送する、自動貸金庫システムやその運用方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0003】
例えば、金庫室の収納棚は、省スペースで多数の金庫箱を収納できるように、即ち、複数の段(m段)及び複数の列(n列)で構成された(m×n)個の金庫箱の収納できるようになっており、利用者による貴重品の預入及び引出の際に、利用者情報に対応付けられた金庫箱は、収納されている収納棚の収納位置と閲覧テーブルとの間をスタッカクレーン等の搬送機構によって搬送される。
【0004】
また、利用者が預け入れる貴重品は、契約書等の重要書類、機密データが記録されたCD,DVD等の記録媒体、貴金属や金塊等のように多種多様であり、その重量は収納する貴重品の種類により大きく異なる。そこで、従来の自動貸金庫システムでは、収納棚の耐荷重を考慮して、各金庫箱に収納可能な重量制限を予め設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−20610号公報
【特許文献2】特開2003−301664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、全ての金庫箱の総重量が収納棚の耐荷重を超えていない場合であっても、重量の大きい金庫箱が収納棚の一部分に集中して収納されていると、収納棚の耐久性を低下させてしまうという問題があった。例えば、ある一列に重量の大きい金庫箱を集中させた状態が長期間続いた場合、収納棚のフレームに歪みが生じ、金庫箱の収納棚への収納搬送または金庫箱の収納棚からの取り出し搬送において異常が発生してしまうという問題があった。また、収納棚の上部に重い金庫箱が集中すると、重量バランスが崩れて不安定になり易い。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、収納棚内に収納されている複数の金庫箱の重量分布及び収納棚の重量バランス情報を表示させることにより、収納棚の重量バランスを良好に保ち、収納棚の立設状態が安定化するように金庫箱を配置する等のシステム運用を可能とし、貸金庫システムの安全性を向上させることができる貸金庫システム及び貸金庫管理用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
本発明の第1の態様にかかる貸金庫システムは、金庫室に設置された複数の段(m段)及び複数の列(n列)を有する収納棚に、段数及び列数からなる収納位置情報より収納位置が特定される複数(m×n個)の金庫箱を収納した貸金庫システムであって、被格納物を格納した前記金庫箱の重量情報及び当該金庫箱の前記収納位置情報に基づき、前記収納棚内の前記金庫箱の重量の偏りを示す重量バランス情報を表示することを特徴とする。
【0009】
ここで、収納棚の重量バランスとは、収納棚の立設状態の安定性を保持するための収納棚の段方向及び列方向の重量バランスのことである。また、収納棚の重量の偏りを示す重量バランス情報とは、例えば、収納棚の列毎の総重量、収納棚の段毎の総重量、所定の数の段及び列の区画毎の総重量等であり、収納棚のフレームを歪ませる要因となる重量の偏りを管理者等に客観的に教示させる情報である。また、金庫箱の重量情報は、金庫箱に格納されている格納物の重量であっても、金庫箱自体の重量と金庫箱に格納されている格納物の重量の合計の重量であっても良い。
【0010】
これにより、利用対象となる新規の金庫箱を管理者が選択するときに、表示された金庫箱の重量分布及び収納棚の重量バランス情報から収納棚の重量バランスを良好に保持できる最適な収納位置にある金庫箱を管理者が選択することができる。また、収納棚内の金庫箱の収納位置の入替え作業時において、収納棚の重量バランスを良好に保持できるような収納位置に金庫箱を入れ替えるように管理者が指示することができる。
【0011】
従って、収納棚の重量バランスを良好に保持して、収納棚の立設状態を安定化させることができるため、システム運用の安全性を向上させることができる。
【0012】
本発明の第2の態様にかかる貸金庫システムは、本発明の第1の態様にかかる貸金庫システムにおいて、各種情報を記憶する記憶部と、被格納物を格納した前記金庫箱の前記重量情報を、当該金庫箱の前記収納位置情報に対応付けて、前記記憶部に記憶する重量情報管理部と、前記記憶部に記憶された前記金庫箱の前記重量情報及び前記収納位置情報に基づいて、前記収納棚の同一列に収納されている前記金庫箱の総重量を表す列重量を前記収納棚の列毎に算出し、算出した各列の前記列重量を前記重量バランス情報として、前記記憶部に記憶する重量バランス情報算出部と、前記記憶部に記憶された前記重量バランス情報を外部の表示器に表示させる表示制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
これにより、収納棚内に収納されている全ての金庫箱の重量を金庫箱の収納位置と対応付けた金庫箱の重量分布、及び、収納棚にかかる列毎の重量負荷を表示器に表示させて、システムの管理者に視覚的に認識させることにより、例えば、利用対象となる新規の金庫箱を管理者が選択するときに、表示された金庫箱の重量分布及び収納棚の重量バランス情報から収納棚の重量バランスを良好に保持できる最適な収納位置にある金庫箱を管理者が選択することができる。また、収納棚内の金庫箱の収納位置の入替え作業時において、収納棚の重量バランスを良好に保持できるような収納位置に金庫箱を入れ替えるように管理者が指示することができる。
【0014】
従って、収納棚の重量バランスを良好に保持して、収納棚の立設状態を安定化させることができるため、システム運用の安全性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第3の態様にかかる貸金庫システムは、本発明の第2の態様にかかる貸金庫システムにおいて、更に、前記収納棚に収納された前記金庫箱の利用登録の有無を前記金庫箱の前記収納位置情報に対応付けて前記記憶部に記憶する利用状況管理部を有し、前記表示制御部は、前記記憶部に記憶された前記金庫箱の前記利用登録の有無及び前記収納位置情報に基づき、前記収納棚の段及び列に対応する行及び列で表された2次元マトリクス上に前記利用登録の有無を視覚的に識別させて前記表示器に表示させるとともに、前記重量バランス情報算出部によって列毎に算出された前記列重量を、前記2次元マトリクスの列に対応させて前記表示器に表示させることを特徴とする。
【0016】
これにより、収納棚内に収納されている全ての金庫箱の重量を金庫箱の収納位置と対応付けた金庫箱の重量分布、及び、収納棚にかかる列毎の重量負荷を表示器に表示させて、システムの管理者に視覚的に認識させることにより、例えば、利用対象となる新規の金庫箱を管理者が選択するときに、表示された金庫箱の2次元マトリクス重量分布及び収納棚の重量バランス情報から収納棚の重量バランスを良好に保持できる最適な収納位置にある金庫箱を管理者が選択することができる。また、収納棚内の金庫箱の収納位置の入替え作業時において、収納棚の重量バランスを良好に保持できるような収納位置に金庫箱を入れ替えるように管理者が指示することができる。
【0017】
従って、収納棚の重量バランスを良好に保持して、収納棚の立設状態を安定化させることができるため、システム運用の安全性を向上させることができる。
また、収納棚内の金庫箱の利用状態を管理者に視覚的に認識させることができる。
【0018】
本発明の第4の態様にかかる貸金庫システムは、本発明の第3の態様にかかる貸金庫システムにおいて、前記表示制御部は、所定の重量基準値以上の前記列重量と、前記重量基準値未満の前記列重量とを視覚的に識別させて前記表示器に表示させることを特徴する。
【0019】
これにより、収納棚にかかる列毎の重量負荷の大きい列をシステムの管理者に視覚的に認識させて、利用対象となる新規の金庫箱を管理者が選択するときや収納棚内の金庫箱の収納位置の入替え作業時における、管理者の作業の判断情報にさせることができる。
【0020】
本発明の第5の態様にかかる貸金庫システムは、本発明の第3または4の態様にかかる貸金庫システムにおいて、前記重量バランス情報算出部は、全ての前記列重量の中の最大値を最大列重量としたとき、列毎に、前記列重量と前記最大列重量との差分の絶対値を列重量差分として算出し、前記表示制御部は、前記収納棚の各列の前記列重量の内、他の前記列重量より所定の差分基準値以上小さい前記列重量を、前記他の列重量と視覚的に識別させて前記表示器に表示させることを特徴する。
【0021】
これにより、収納棚の重量バランスの良し悪し、即ち、収納棚の重量の偏りの有無を管理者に視覚的に認識させて、利用対象となる新規の金庫箱を管理者が選択するときや収納棚内の金庫箱の収納位置の入替え作業時における、管理者の作業の判断情報にさせることができる。
【0022】
本発明の第1の態様にかかる貸金庫管理用プログラムは、金庫室に設置された複数の段(m段)及び複数の列(n列)を有する収納棚に収納された、段数及び列数からなる収納位置情報より収納位置が特定される複数(m×n個)の金庫箱の重量情報を管理して表示する処理をコンピュータに実行させる貸金庫管理用プログラムであって、(a)被格納物を格納した前記金庫箱の重量情報を取得する処理と、(b)前記処理(a)によって取得した前記金庫箱の前記重量情報を、当該金庫箱の前記収納位置情報に対応付けて記憶部に記憶する処理と、(c)前記処理(b)によって前記記憶部に記憶された前記金庫箱の前記重量情報と、前記収納棚の同一列に収納されている前記金庫箱の総重量を表す列重量を前記収納棚の列毎に算出した各列の前記列重量とを、前記収納位置情報に基づいて、前記記憶部に記憶する処理と、(d)前記処理(c)によって前記記憶部に記憶された前記収納棚の各列の前記列重量を表示器に表示する処理と、を備えていることを特徴とする。
【0023】
このような構成であれば、コンピュータによってプログラムが読み取られ、読み取られたプログラムによって、コンピュータが処理を実行すると、上述した本発明の第1の態様にかかる貸金庫システムと同等の効果が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、収納棚内に収納されている全ての金庫箱の重量を金庫箱の収納位置と対応付けて管理し、収納棚の重量の偏りを示す重量バランス情報を表示器に表示させて、システムの管理者に認識させることにより、例えば、利用対象となる新規の金庫箱を管理者が選択するときに、表示された金庫箱の重量分布及び収納棚の重量バランス情報から収納棚の重量バランスを良好に保持できる最適な収納位置にある金庫箱を管理者が選択することができる。また、収納棚内の金庫箱の収納位置の入替え作業時において、収納棚の重量バランスを良好に保持できるような収納位置に金庫箱を入れ替えるように管理者が指示することができる。
【0025】
従って、収納棚の重量バランスを良好に保持して、収納棚の立設状態を安定化させることができるため、システム運用の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用可能な貸金庫システムの一例を説明するための全体概略構成図である。
【図2】閲覧テーブルの外観斜視図である。
【図3】閲覧テーブルの断面図である。
【図4】貸金庫システムのブロック構成図である。
【図5】重量表示処理を実現させる機能のブロック構成図である。
【図6】重量表示情報の1つの表示例を示した図である。
【図7】管理処理手順を説明するためのフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なもので置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0028】
まず、図1乃至図4を参照して、本発明を適用可能な貸金庫システムの全体概要を簡単に説明する。図1は、本発明を適用可能な貸金庫システムの一例を説明するための全体概略構成図である。図2は、図1に示す貸金庫システムの閲覧テーブルの一例を示す外観斜視図であり、図3は、図2に示す閲覧テーブル17のシャッタ20部分における縦断面図である。また、図4は、図1乃至図3に示す貸金庫システムのブロック構成図である。
【0029】
図1乃至図4に示したように、貸金庫システム10は、防盗・防火性に優れた金庫室11と、金庫室11とは物理的に隔離されており、利用者が貴重品(被格納物)の預入や引出を行う閲覧室12と、貸金庫システム10の運用管理をするコンピュータ23を備えている。また、金庫室11と閲覧室12との間の金庫箱13の搬送は、搬送機構によって実行される。
【0030】
金庫室11には、省スペースで多数の金庫箱13を収納できるように、複数の段(m段)及び複数の列(n列)からなり、(m×n)個の金庫箱13を収納可能な収納棚14が複数個(k個)設置され、各収納棚14には、(m×n)個の金庫箱13が収納されている。各金庫箱13は、各収納棚14の番号及び各収納棚において該金庫箱13が配置されている段数及び列数によって収納位置が特定される。ここで、収納棚14の同一段は矢印26に示す横方向(水平方向)のことであり、同一列は矢印25に示す縦方向(鉛直方向)のことである。図1の例では、金庫室11には、16段(m=16)及び6列(n=6)のからなる(16×6)個の金庫箱13を収納している収納棚14が2個(k=2:収納棚14a及び14b)設置されている。
【0031】
コンピュータ23は、利用者を特定する利用者情報と、利用者が使用する金庫箱13の収納位置を特定する収納位置情報と、を対応付けて管理する。
【0032】
また、金庫室11内の収納棚14aと収納棚14bの間には、金庫箱13を収納棚14から取り出したり、収納棚14に収納したりする搬送機構の一部であるスタッカクレーン16が配置されている。また、コンピュータ23からの命令に従って貸金庫システム10を構成する各装置の動作制御を実行する動作制御装置15も、金庫室11内に配置されている。スタッカクレーン16は、動作制御装置15からの搬送指示に従って、指定された収納位置の金庫箱13を収納棚14から取り出したり、収納棚14に収納したりする。
【0033】
閲覧室12のドア27の近傍には、閲覧室12への利用者の入室可否を確認するための認証装置22が設置されている。認証装置22で読み取られた情報は、コンピュータ23に送信され、該情報に基づいてコンピュータ23によって入室可否が判定され、判定された結果に基づいて、動作制御装置15の制御によりドア27の開閉が実行される。
【0034】
また、閲覧室12には、利用者が金庫箱13の預入や取出しを行うための閲覧テーブル17が備えられている。閲覧テーブル17には、利用者の本人確認をするための認証装置18、利用者が操作するタッチパネル19、金庫箱13の取出し口に設けられたシャッタ20が設置されている。また、閲覧テーブル17の内部には、金庫箱13の重量を測定する重量センサ21が設置されている。
【0035】
認証装置18で読み取られた情報に基づいて、コンピュータ23によって利用者の利用操作可否が判定され、判定された結果に基づいて、タッチパネル19による利用者の操作が許可される。タッチパネル19より入力された情報(入力情報)は、コンピュータ23に送信されて処理判定がなされ、入力情報に基づいた処理が実行される。
【0036】
例えば、認証装置22及び認証装置18にて利用者確認を経た後、貴重品の預入や取出し要求がタッチパネル19より入力されると、収納棚14に収納されている金庫箱13のうち、利用者の利用者情報に対応付けられた収納位置にある金庫箱13がスタッカクレーン16により収納棚14から取り出され、搬送機構により金庫室11から閲覧テーブル17まで搬送され、シャッタ20が開いて、利用者が貴重品を金庫箱13に預入たり、金庫箱13から取り出したりできる状態となる。
【0037】
また、貴重品の預入や取出しの終了要求がタッチパネル19より入力されると、シャッタ20が閉じて、重量センサ21によって金庫箱13の重量が測定され、測定された重量情報はコンピュータ23に送信される。その後、金庫箱13は、搬送機構により閲覧テーブル17から金庫室11まで搬送され、スタッカクレーン16により金庫箱13に対応付けられた収納棚13の収納位置に収納される。これらの一連の処理の動作は、コンピュータ23からの命令に従って動作制御装置15が、スタッカクレーン16を含む搬送機構、シャッタ20、及び重量センサ21を制御して実行される。
【0038】
コンピュータ23は、このとき取得した重量情報に基づき、収納棚14に収納されている金庫箱13の各々の重量情報と、該金庫箱13の収納位置情報とを対応付けて管理する。
【0039】
また、コンピュータ23には表示器24が接続されており、表示器24は、コンピュータ23で重量表示処理された収納棚14に収納されている金庫箱13の2次元マトリクス重量分布や収納棚14の重量バランスを評価するための重量バランス情報(例えば、列毎に合計された金庫箱13の総重量である列重量など)などの重量表示情報を表示する。
【0040】
貸金庫システム10の管理者は、表示器24に表示された収納棚14に収納されている金庫箱13のそれぞれの重量や収納棚14の重量バランスを示す重量バランス情報を考慮して、利用者が新しい金庫箱13を利用する場合に、未使用の金庫箱13の中から収納棚14の重量バランスを良好に保持できる金庫箱13を選択したり、貸金庫システム10の保守作業の一環である金庫箱13の入替え作業における入替え対象となる金庫箱13の選択をしたりすることができる。
【0041】
尚、上述した貸金庫システム10においては、重量センサ21を閲覧テーブル17の内部に設置しているが、閲覧テーブル17から収納棚14の間の搬送過程の途中で、金庫箱13の重量を測定可能な場所であれば、どこの場所であっても良い。
【0042】
次に、重量表示処理を実現させる機能についての詳細を説明する。図5は、重量表示処理を実現させる機能のブロック構成図である。なお、以下に説明する重量表示、利用状況管理、重量バランス情報の算出などの各種処理を行うための各部はコンピュータ23により実現することができる。
【0043】
図5に示すように、重量表示処理に関連するコンピュータ23の機能として、本発明の利用状況管理部に対応する利用状況管理部30、本発明の重量情報管理部に対応する重量情報管理部31、本発明の重量バランス情報算出部に対応する重量バランス情報算出部32、及び、本発明の表示制御部に対応する表示制御部33を備えている。
【0044】
記憶部34には、金庫箱13毎に、収納棚14に収納される金庫箱13の収納位置(段数及び列数)を示す収納位置情報が、金庫箱13の識別番号に対応付けられて記憶されている。
【0045】
利用状況管理部30は、コンピュータ23が備えるキーボードまたは外部接続されたカードリーダ等から入力(登録)された利用者情報と、コンピュータ23が備えるキーボードやマウス等によって指定された収納棚14内の未使用の金庫箱13の収納位置情報とを対応付けて、コンピュータ23の記憶部34に記憶する。また、同時に、該収納位置情報に対応する利用情報を「使用済み」にセットして、コンピュータ23の記憶部34に記憶する。ここで、利用情報とは、収納棚14の各収納位置に収納されている各金庫箱13が利用登録されているものであるか否か、即ち、利用者に使用されている使用済みの金庫箱13であるか、利用者に使用されていない未使用の金庫箱13であるかを判定するための情報である。
【0046】
また、利用登録されている利用者情報を解除する指示が入力されると、その利用者情報に対応付けられた金庫箱13の収納位置情報をコンピュータ23の記憶部34より検索して、検索した該収納位置情報に対応する利用情報を「未使用」にセットして、コンピュータ23の記憶部34に記憶するとともに、該利用者情報を削除する。
【0047】
重量情報管理部31は、重量センサ21によって測定された金庫箱13の重量情報を取得し、取得した金庫箱13の重量情報を金庫箱13の収納位置情報と対応付けて、コンピュータ23の記憶部34に記憶する。ここで、記憶される金庫箱13の重量情報は、金庫箱13に格納されている貴重品の重量であっても、貴重品を含んだ金庫箱13の全体の重量であっても良い。以降は、金庫箱13に格納されている貴重品の重量を金庫箱13の重量情報とした場合を例に挙げて説明する。
【0048】
重量バランス情報算出部32は、コンピュータ23の記憶部34に記憶された金庫箱13の重量情報及び収納位置情報に基づいて、収納棚14の重量バランスを評価するための重量バランス情報を算出し、記憶部34に記憶する。ここで、収納棚14の重量バランスとは、収納棚の立設状態の安定性を保持するための収納棚14の段方向及び列方向の重量バランスのことである。従って、収納棚14の重量バランスを評価するための重量バランス情報とは、例えば、収納棚14の列毎の総重量、収納棚14の段毎の総重量、所定の数の段及び列の区画毎の総重量等であり、収納棚14を歪ませる要因となる重量の偏りを管理者等に客観的に教示させる情報である。以降は、重量バランス情報として、収納棚14の列毎の総重量を示す列重量を例に挙げて説明する。
【0049】
具体的に重量バランス情報算出部32では、収納棚14の同一列に収納されている金庫箱13の重量の合計を列重量として、収納棚14の全ての列について算出し、記憶部34に記憶する。また、同一の収納棚14内の全ての列重量の中から最大値となる最大列重量を検索し、最大列重量と列重量との差分の絶対値(列重量差分)を全ての列について算出し、記憶部34に記憶する。
【0050】
表示制御部33は、コンピュータ23の記憶部34に記憶されている金庫箱13の重量情報、収納位置情報及び利用情報に基づいて、収納棚14の段及び列を2次元マトリクスの行及び列に対応させた、収納棚14の各収納位置にある金庫箱13が使用済みであるか未使用であるか、及び該金庫箱13の重量を表す2次元マトリクス重量分布を、表示器24に表示させるための重量分布表示情報を生成する。また、記憶部34に記憶されている重量バランス情報(列重量及び列重量差分)に基づいて、表示器24に表示させるための重量バランス表示情報を生成する。ここで、重量分布表示情報と重量バランス表示情報とをまとめて重量表示情報とする。表示制御部33は、生成した重量表示情報を表示器24に表示させる。
【0051】
図6は、重量表示情報の1つの表示例を示した図である。図6に示すように、収納棚14の段及び列を2次元マトリクスの行及び列に対応させた表の各セルに、対応する収納位置の各金庫箱13の重量を表示したものを2次元マトリクス重量分布として表示する。また、この2次元マトリクスの表の各セルには、未使用の金庫箱13であるか使用済みの金庫箱13であるかを視覚的に判別できる情報が含まれており、2次元マトリクス重量分布の表示においては、未使用の金庫箱13の重量が「0」と表示されるとともに、未使用の金庫箱13の重量と使用済みの金庫箱13の重量とが色分け表示されている。
【0052】
また、2次元マトリクス重量分布の各列の下に、各列に対応する列重量を表示したものを、重量バランス情報として表示する。重量バランス表示情報には、予め設定してある重量基準値より大きい列重量となっている列を管理者に認識させるための色分け表示(重量オーバー警告表示)情報が含まれている。また、重量バランス表示情報には、予め設定してある差分基準値より大きい列重量差分となっている列を管理者に認識させるための色分け表示(重量バランス異常警告表示)情報も含まれている。ここで、重量基準値とは、収納棚14の立設状態の安定性を保持するために、列重量が超えないほうが良い値である。また、差分基準値は、収納棚14の重量の偏りがあるか否かを判断する値である。
【0053】
従って、例えば、重量基準値として100kgを、差分基準値として30kgを、予め設定していた場合、図6に示すように、2列目の列重量が重量基準値を超えていることを警告するための色分け表示が2列目の列重量になされ、2列目に対して4列目の列重量差分が差分基準値を超えていて重量バランスが悪くなっていることを警告するための色分け表示が2列目と4列目の列重量になされる。この例では、重量基準値の超過警告表示が優先されるため、4列目の列重量のみに差分基準値の超過警告表示がなされている。
【0054】
これにより、図6に示すような表示の場合、新規の利用者に対する管理者による金庫箱13の選択において、さらなる重量バランスの悪化を防ぐために、2列目にある金庫箱13を避け、4列目にある未使用の金庫箱13を選択する参考にすることができる。
【0055】
次に、重量表示情報を活用して、管理者が新規に金庫箱13の利用登録を行うためのコンピュータ23の管理処理手順について説明する。図7は、管理処理手順を説明するためのフローチャートの一例である。尚、貸金庫システム10は、既に運用中であり、コンピュータ23には、収納位置情報、1以上の利用者情報等が登録されているものとする。
【0056】
図7に示すように、金庫箱13を閲覧テーブル17から金庫室11へ搬入する際に、重量センサ21によって金庫箱13の重量を測定し、コンピュータ23は、この測定された重量情報を取得し、取得した金庫箱13の重量情報を金庫箱13の収納位置情報に対応付けて、記憶部34に記憶する(S101)。
【0057】
次に、コンピュータ23の記憶部34に記憶された金庫箱13の重量情報及び収納位置情報に基づいて、収納棚14の重量バランスを評価するための重量バランス情報を算出し、記憶部34に記憶する(S103、S105)。具体的には、収納棚14の全ての列について列重量を算出し、記憶部34に記憶する(S103)。次に、同一の収納棚14内の全ての列重量の中から最大列重量を検索し、列重量差分を全ての列について算出し、記憶部34に記憶する(S105)。上記ステップS101〜S105の処理は、金庫箱13の重量測定が行なわれる度に行う。尚、ステップS103及びS105の処理については、下記ステップS107の後に行うようにしても良い。
【0058】
管理者は、新たに金庫箱13の利用登録を行う際、コンピュータ23のキーボードやマウス等の操作手段を操作して、コンピュータ23を登録モードに設定する(S107)。コンピュータ23は、登録モードに設定されると、以下の重量表示情報の表示処理(S109〜S113)を実行する。
【0059】
コンピュータ23は、収納棚14内の金庫箱13の2次元マトリクス重量分布を、表示器24に表示させるための重量分布表示情報を生成する(S109)。具体的には、収納棚14の段及び列を2次元マトリクスの行及び列に対応させた、収納棚14内の金庫箱13の2次元マトリクス重量分布となるように表示情報を生成する(図6を参照)。また、未使用の金庫箱13は、重量を「0」と表示されるように表示情報を生成するとともに、未使用の金庫箱13の重量と使用済みの金庫箱13の重量とを色分け表示されるように表示情報を生成する。
【0060】
次に、表示器24に重量バランスの偏りを示す情報を表示させるための重量バランス表示情報を生成する(S111)。具体的には、収納棚14内の金庫箱13の2次元マトリクス重量分布の各列の下に、列重量が表示されるように表示情報を生成する(図6を参照)。また、重量基準値以上の列重量、即ち、重量オーバーの列を検索して、検索した列の列重量を色分け表示されるように表示情報を生成する。また、差分基準値以上の列重量差分、即ち、重量に偏りのある列を検索して、検索した列の列重量を色分け表示されるように表示情報を生成する。
【0061】
そして、生成した重量分布表示情報と重量バランス表示情報とからなる重量表示情報を表示器24に表示させる(S113)。
【0062】
管理者は、表示器24に表示された重量表示情報を参考にして、新たに利用登録する金庫箱13を選択する。具体的には、コンピュータ23のキーボードやマウス等の操作手段を操作して、重量表示情報として表示される2次元マトリクスの表のうち未使用として表示されたセルを選択するとともに、登録する利用者に関する情報を入力する。
【0063】
コンピュータ23は、管理者による入力情報に基づき、金庫箱13の利用登録を行う(S115)。具体的には、コンピュータ23は、入力された利用者に関する情報から利用者情報を生成するとともに、選択されたセルに対応する収納位置情報を抽出して、この収納位置情報と利用者情報とを対応付けて記憶部34に記憶する。また、この収納位置情報に対応する利用者情報を「使用済み」にセットする。このようにして、新規に金庫箱13の利用登録を行った後、管理者はコンピュータ23の登録モードを終了させ、通常の運用を再開させる。
【0064】
上述したような貸金庫システム10によれば、収納棚14内に収納されている全ての金庫箱13の重量を金庫箱13の収納位置と対応付けた金庫箱13の2次元マトリクス重量分布、及び、収納棚14の重量バランスを評価するための重量バランス情報を表示器24に表示させ、システムの管理者に重量バランスの状況等を認識させることができる。よって、利用対象となる新規の金庫箱13を管理者が選択するときに、表示された金庫箱13の2次元マトリクス重量分布及び収納棚14の重量バランス情報から収納棚14の重量バランスを良好に保持できる最適な金庫箱13を管理者が選択することができる。また、収納棚14内の金庫箱13の収納位置の入替え作業時において、収納棚14の重量バランスを良好に保持できるような収納位置に金庫箱13を入れ替えるように管理者が指示することができる。
【0065】
従って、収納棚14の重量バランスを良好に保持して、収納棚14の立設状態を安定化させることができるため、システム運用の安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0066】
10 貸金庫システム
11 金庫室
12 閲覧室
13 金庫箱
14 収納棚
15 動作制御装置
16 タッカクレーン
17 閲覧テーブル
18、22 認証装置
21 重量センサ
23 コンピュータ
24 表示器
30 利用状況管理部
31 重量情報管理部
32 重量バランス情報算出部
33 表示制御部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
金庫室に設置された複数の段(m段)及び複数の列(n列)を有する収納棚に、段数及び列数からなる収納位置情報より収納位置が特定される複数(m×n個)の金庫箱を収納した貸金庫システムであって、
被格納物を格納した前記金庫箱の重量情報及び当該金庫箱の前記収納位置情報に基づき、前記収納棚内の前記金庫箱の重量の偏りを示す重量バランス情報を表示することを特徴とする貸金庫システム。
【請求項2】
各種情報を記憶する記憶部と、
前記被格納物を格納した前記金庫箱の前記重量情報を、当該金庫箱の前記収納位置情報に対応付けて、前記記憶部に記憶する重量情報管理部と、
前記記憶部に記憶された前記金庫箱の前記重量情報及び前記収納位置情報に基づいて、前記収納棚の同一列に収納されている前記金庫箱の総重量を表す列重量を前記収納棚の列毎に算出し、算出した各列の前記列重量を前記重量バランス情報として、前記記憶部に記憶する重量バランス情報算出部と、
前記記憶部に記憶された前記重量バランス情報を表示器に表示させる表示制御部と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の貸金庫システム。
【請求項3】
更に、前記収納棚に収納された前記金庫箱の利用登録の有無を前記金庫箱の前記収納位置情報に対応付けて前記記憶部に記憶する利用状況管理部を有し、
前記表示制御部は、前記記憶部に記憶された前記金庫箱の前記利用登録の有無及び前記収納位置情報に基づき、前記収納棚の段及び列に対応する行及び列で表された2次元マトリクス上に前記利用登録の有無を視覚的に識別させて前記表示器に表示させるとともに、前記重量バランス情報算出部によって列毎に算出された前記列重量を、前記2次元マトリクスの列に対応させて前記表示器に表示させることを特徴とする請求項2に記載の貸金庫システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、所定の重量基準値以上の前記列重量と、前記重量基準値未満の前記列重量とを視覚的に識別させて前記表示器に表示させることを特徴する請求項3に記載の貸金庫システム。
【請求項5】
前記重量バランス情報算出部は、全ての前記列重量の中の最大値を最大列重量としたとき、列毎に、前記列重量と前記最大列重量との差分の絶対値を列重量差分として算出し、
前記表示制御部は、前記収納棚の各列の前記列重量のうち、他の前記列重量より所定の差分基準値以上小さい前記列重量を、前記他の列重量と視覚的に識別させて前記表示器に表示させることを特徴する請求項3または4に記載の貸金庫システム。
【請求項6】
金庫室に設置された複数の段(m段)及び複数の列(n列)を有する収納棚に収納された、段数及び列数からなる収納位置情報より収納位置が特定される複数(m×n個)の金庫箱の重量情報を管理して表示する処理をコンピュータに実行させる貸金庫管理用プログラムであって、
(a)被格納物を格納した前記金庫箱の重量情報を取得する処理と、
(b)前記処理(a)によって取得した前記金庫箱の前記重量情報を、当該金庫箱の前記収納位置情報に対応付けて記憶部に記憶する処理と、
(c)前記処理(b)によって前記記憶部に記憶された前記金庫箱の前記重量情報及び前記収納位置情報に基づいて、前記収納棚の同一列に収納されている前記金庫箱の総重量を表す列重量を前記収納棚の列毎に算出し、算出した各列の前記列重量を前記記憶部に記憶する処理と、
(d)前記処理(c)によって前記記憶部に記憶された前記収納棚の各列の前記列重量を表示器に表示する処理と、
を備えていることを特徴とする貸金庫管理用プログラム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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