説明

質量流量計

【課題】人工心臓などに適用する質量流量計には、小型・軽量で圧損が少なく可動部のない簡易の流量計測が可能な曲がり管を用いた質量流量計を提供する。
【解決手段】曲がり管を用いた質量流量計において、曲がり管の流路外周部に静圧検出用の圧力センサを設け、対応する流路内周部に静圧検出用の圧力センサを設け、両圧力センサの出力差から差圧を求め、当該差圧から流量を求めることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量流量計に関し、特に曲がり管を用いた質量流量計に関するものである。小型・軽量で簡易の流量計測が必要な機器、例えば、石油、石油化学、化学などのプラントの配管を流れる流体やガス、ビンの洗浄水、ウェハや基板の洗浄液、薬剤などの流量計測に好適な質量流量計を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、曲がり管を用いた質量流量計としては、出願人が先に出願した特許文献1〜3や、特許文献4などが知られている。これらは、いずれも曲がり管部での流体の遠心力に起因する管路の歪みを計測することによる。
また、曲がり管部での流体の濃度差を計測することによるもの(特許文献5)や、管に振動を与えコリオリ力による影響を計測するもの(特許文献6)なども知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−218775号公報
【特許文献2】特開2009−150671号公報
【特許文献3】特開2010−66184号公報
【特許文献4】特開平4−76519号公報
【特許文献5】特開平9−79881号公報
【特許文献6】特開平8−114476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、人工心臓などに適用する質量流量計には、小型・軽量で圧損が少なく可動部のない簡易の流量計測が必要とされ、従来の濃度差によるものやコリオリ力を利用するものは、装置が大型化する点や、可動部が存在する点などで問題があった。
さらに、曲がり管外周面の管路歪を用いる方法では、外力が加わった時に、管路面が歪むことで計測誤差が生じるという問題があった。また、管路表面の歪を用いる方法では、管路の材質により歪量が小さくなり、計測感度が低下してしまうという問題もあった。また、曲がり管の2箇所にそれぞれひずみゲージを貼り付ける必要があるため、予め静圧に対する計測感度を計測し、計測感度を合わせる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、曲がり管を用いた質量流量計において、曲がり管の流路外周部に静圧検出用の圧力センサを設け、対応する流路内周部に静圧検出用の圧力センサを設け、両圧力センサの出力差から差圧を求め、当該差圧から流量を求めることを特徴とする。
また、本発明は、曲がり管を用いた質量流量計において、曲がり管の流路外周部に静圧検出用の圧力導入管を取り付け、対応する流路内周部に静圧検出用の圧力導入管を取り付け、両圧力導入管を差圧計に接続して差圧を求め、当該差圧から流量を求めることを特徴とする。
また、本発明は、曲がり管を用いた質量流量計において、曲がり管の流路外周部に静圧検出用の圧力センサを設け、直管部に静圧検出用の圧力センサを設け、両センサの出力差から差圧を求め、当該差圧から流量を求めることを特徴とする。
また、本発明は、曲がり管を用いた質量流量計において、曲がり管の流路外周部に静圧検出用の圧力導入管を取り付け、直管部に静圧検出用の圧力導入管を取り付け、両圧力導入管を差圧計に接続して差圧を求め、当該差圧から流量を求めることを特徴とする。
また、本発明は、曲がり管を用いた質量流量計において、曲がり管の流路外周部に静圧検出用の圧力導入管を取り付け、対応する流路内周部に静圧検出用の圧力導入管を取り付け、両圧力導入管を連結して連通管とし、差圧により生じた連通管内に生じた流れの、流量を測定して流量から差圧を求め、当該差圧から曲がり管の流量を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の質量流量計は、本質量流量計では、遠心力により増加する静圧を利用しているため、圧損を利用したオリフィスプレートを用いた差圧式流量計よも圧損が少ない。また、センサは圧力計のみなので可動部も存在しない。
また、2つの圧力センサの差をとるので、静圧や温度変化の影響を補償出来る。
また、管路内部の圧力を圧力導入孔を用いて直接計測するため、管路の材質の影響を受けず、計測感度が高い。また、曲がり管に加わる外力の影響を排除することが出来る。
また、圧力を1つの差圧計に導入する方式では、センサが一つで流量計測が可能となる。
また、差圧計に導入する代わりに、圧力導入管を連通させて連通管として、連通管の管壁外側から、例えば発熱体とその下流側に配置した温度検出器による熱式流量計で連通管の流量を計測することにより差圧を求めることもでき、この方式では、流体とセンサ部とは完全に非接触となり、血液などの流体にセンサ部材が触れることによる影響を除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の質量流量計の一実施例である曲がり部外周部での静圧と曲がり部内周部での静圧との静圧差による第1実施例を示す図である。
【図2】同第1実施例を検証した図。
【図3】本発明の第2実施例を示す図。
【図4】曲がり管の曲がり部外周面での静圧と直管部での静圧との静圧差による例を説明する図(その1)。
【図5】同図(その2)。
【図6】同図(その3)。
【図7】本発明の第3実施例を示す図。
【図8】同第4実施例を示す図。
【図9】導入管を連通させて連通管とした、本発明の第5実施例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
曲がり管の管路内の質量流量を求めるため、質量流量と管路内圧の関係を導出する。曲がり部での力の釣り合いを計算すると、角速度ωが曲がり部の曲率半径rに依存せず、曲がり管路の管路断面内でω一定であると仮定すると、曲がり部での静圧上昇と流量に相当する角速度の関係は以下のようになる。
Δp=p−p=(1/2)・ρω・(r−r
ここで、ρは密度、pは静圧で、pは遠心力で増加した曲がり部外周部での静圧、pは遠心力で減少した曲がり部内周部での静圧、rは曲がり管の外周曲率半径、rは曲がり管の内周曲率半径とする。
ゆえに、遠心力により増加する静圧差Δpから曲がり管内の流速に相当する角速度ωが求められることが示された。そして、角速度ωが求まれば、管路断面内でωは曲がり部の曲率半径rに依存せず一定と仮定したので、演算により流量Qを求めることができ、したがって、Δpを計測すれば質量流量Qを一義的に決定できる。実際測定する際には、Δpと流量Qとの関係を実測により予め校正式を求めておく。
【0009】
上記の説明では、曲がり部外周部での静圧と曲がり部内周部での静圧との静圧差を求めることによったが、以下に説明するように、曲がり部外周面での静圧と直管部での静圧との静圧差と、質量流量との間にも一義的な関係があることもわかったので、曲がり部外周面での静圧と直管部での静圧との静圧差から質量流量を求めることもできる。
図4に示す曲がり管において、Aの位置において曲がり部外周面での静圧を計測し、Bの位置において直管部の静圧を計測するものとして、数値流体解析により計算された曲がり管内の静圧分布を図4に、曲がり管の流路外周面の静圧を図5に、遠心力により増加した静圧を図6に示す。数値流体解析の境界条件として、流入側の流速を1.0m/sec、流出側の静圧を100mmHgに設定した。解析に使用した曲がり管は、管路内径12mm、途中にR30(管中心軸の曲がり部での曲率半径[mm])、120°の曲がり部を持つ流路である。作動流体として血液と等しい比重1.05、粘度3mPasの流体を設定した。
図4の曲がり管の曲がり部のグラデュエーションで示した圧力分布は、図左端に柱状に表した灰色濃度のと同じ圧力値であることを示している。図5は縦軸に静圧(static pressure)[kPa]、横軸に流入口からの管にそって図った距離(distance from inlet)[mm]を表した図であり、グラフ中にA、Bで示した位置は、図4のA、Bの位置に対応する。図6は縦軸にAとBの静圧差(static pressure)[Pa]、横軸に流量(flow rate)[L/min]を表したグラフであり、AとBの静圧差と流量とには一義的な関係があることがわかる。したがって、曲がり部外周面での静圧と直管部での静圧との静圧差Δpを計測すれば演算により流量を求めることができる。実際測定する際には、Δpと流量との関係を実測により予め校正式を求めておく。
【実施例】
【0010】
(実施例1)
図1は、本発明の一実施例である第1実施例を示したものである。圧力センサを2種類使用した質量流量計では、遠心力計測用の圧力センサを曲がり部外周と内周に取り付け、それぞれのセンサで計測された信号をアンプで増幅して、予め圧力差と流量の校正式を組み込んだ流量出力装置に入力することで、それぞれのセンサで計測された圧力の差から質量流量を計測することができる。
図2は縦軸に静圧差(Δpressure)[mmHg]、横軸に流量(flow)[L/min]をとり、市販流量計で計測された流量(曲線でプロット)と、本発明の第1実施例の質量流量計で計測された圧力差(点でプロット)を比較したものであり、図に示すように相関関係を有することが確認出来た。
【0011】
(実施例2)
図3は、本発明の第2実施例を示したものである。圧力センサを1種類使用した質量流量計では、遠心力計測用の圧力導入孔を曲がり部内周部と外周部に設け、それぞれの圧力導入孔から圧力導入管により内圧を差圧計まで導入する。そして、差圧計で計測された信号をアンプで増幅し、予め圧力差と流量の校正式を組み込んだ流量出力装置に入力することで、質量流量を計測することができる。
【0012】
(実施例3)
図7は、本発明の第3実施例を示したものである。圧力センサを2種類使用した質量流量計では、遠心力計測用の圧力センサ1つを曲がり部に、静圧・温度補償用の圧力センサを直管部に取り付け、それぞれのセンサで計測された信号をアンプで増幅して、予め圧力差と流量の校正式を組み込んだ流量出力装置に入力することで、それぞれのセンサで計測された圧力の差から質量流量を計測することができる。
【0013】
(実施例4)
図8は、本発明の第4実施例を示したものである。圧力センサを1種類使用した質量流量計では、遠心力計測用の圧力導入孔を曲がり部外周部に、静圧・温度補償用の圧力導入孔を直管部にそれぞれ設け、各圧力導入孔から圧力導入管により内圧を差圧計まで導入する。そして、差圧計で計測された信号をアンプで増幅し、予め圧力差と流量の校正式を組み込んだ流量出力装置に入力することで、質量流量を計測することができる。
【0014】
(実施例5)
図9は、本発明の第5実施例をしめしたものである。上記第2実施例では圧力導入管を差圧計に導入したが、この第5実施例では圧力導入管を連通させて連通管として差圧により流れを発生させ、連通管の管壁外側から、例えば発熱体とその下流側に配置した温度検出器による熱式流量計で連通管の流量を計測することにより差圧を求めるようにしたものである。
【産業上の利用可能性】
【0015】
従来、産業用に利用されているコリオリ式流量計や電磁流量計、超音波流量計と比べると、本発明の質量流量計は、圧倒的にコストが安い点、構造がシンプルで、計測応答性が高い点などの優位性を有するため、現在産業応用されている流量計をそのまま置き換えることが可能な技術である。具体的な適用例は、石油、石油化学、化学などのプラントの配管を流れる流体やガス、ビンの洗浄水、ウェハや基板の洗浄液、薬剤などの流量計測が考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲がり管を用いた質量流量計において、曲がり管の流路外周部に静圧検出用の圧力センサを設け、対応する流路内周部に静圧検出用の圧力センサを設け、両圧力センサの出力差から差圧を求め、当該差圧から流量を求めることを特徴とする質量流量計。
【請求項2】
曲がり管を用いた質量流量計において、曲がり管の流路外周部に静圧検出用の圧力導入管を取り付け、対応する流路内周部に静圧検出用の圧力導入管を取り付け、両圧力導入管を差圧計に接続して差圧を求め、当該差圧から流量を求めることを特徴とする質量流量計。
【請求項3】
曲がり管を用いた質量流量計において、曲がり管の流路外周部に静圧検出用の圧力センサを設け、直管部に静圧検出用の圧力センサを設け、両センサの出力差から差圧を求め、当該差圧から流量を求めることを特徴とする質量流量計。
【請求項4】
曲がり管を用いた質量流量計において、曲がり管の流路外周部に静圧検出用の圧力導入管を取り付け、直管部に静圧検出用の圧力導入管を取り付け、両圧力導入管を差圧計に接続して差圧を求め、当該差圧から流量を求めることを特徴とする質量流量計。
【請求項5】
曲がり管を用いた質量流量計において、曲がり管の流路外周部に静圧検出用の圧力導入管を取り付け、対応する流路内周部に静圧検出用の圧力導入管を取り付け、両圧力導入管を連結して連通管とし、差圧により生じた連通管内に生じた流れの、流量を測定して流量から差圧を求め、当該差圧から曲がり管の流量を求めることを特徴とする質量流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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