説明

質量測定装置

【課題】物品が移動中であっても、その物品の質量を測定することのできる質量測定装置を提供する。
【解決手段】質量測定装置100は、ロボットハンド23と、ロボットアーム11と、ロードセル21と、加速度センサ22と、制御部40とを備えている。ロボットハンド23は、物品Qを保持する。ロボットアーム11は、ロボットハンド23を移動させる。ロードセル21は、ロボットハンド23とロボットアーム11との間に設けられて、移動時の物品Qに作用する力を測定する。加速度センサ22は、移動時の物品Qに作用する加速度を測定する。制御部40は、ロボットハンド23およびロボットアーム11を運転制御し、移動時の物品Qに作用する力および加速度に基づいて物品Qの質量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量測定装置に関し、特に移動している物品の質量をその移動時に測定する質量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ばね秤や電子秤では、重力加速度以外の加速度の影響を排除するために、静止状態で使用することを前提としている。しかし、近年、揺れる物体上に据え付けられ、揺動による計量誤差を除去した質量を測定する質量測定装置が普及している。例えば、特許文献1(特開平8−110261号公報)に開示されている質量測定装置では、通常の計量用ロードセルとは別に、分銅を載荷したダミー用ロードセルで床の上下動成分を検出し、検出した上下動成分を、計量用ロードセルの出力信号から減算することによって、床の上下動成分を含まない計量信号を出力するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の質量測定装置も、物品に作用する重力によってロードセルが垂直方向へ変位することを利用しているので、ロードセルが重力によっては、変位しない状態になる場合、物品の質量を検出することができなくなる。
【0004】
それゆえ、例えば、マニピュレータやロボットハンドのように、物品を持ち上げて移動させる先端部にロードセルを取り付けて、持ち上げた物品を移動している最中に、その物品の質量を測定しようとしても、従来技術では困難である。
【0005】
本発明の課題は、物品が移動中であっても、その物品の質量を測定することのできる質量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る質量測定装置は、物品を移動させながらその物品の質量を測定する質量測定装置であって、保持機構と、移動機構と、力測定部と、加速度測定部と、制御部とを備えている。保持機構は、物品を保持する。移動機構は、保持機構を移動させる。力測定部は、保持機構と移動機構との間に設けられて、移動時の物品に作用する力を測定する。加速度測定部は、移動時の物品に作用する加速度を測定する。制御部は、保持機構および移動機構を運転制御し、移動時の物品に作用する力および加速度に基づいて物品の質量を算出する。
【0007】
この質量測定装置では、物品が移動中であっても、その物品の質量を測定することができるので、例えば、この質量測定装置をロボットハンドの先端部に取り付ければ、物品の搬送を兼ねて移動させながらその質量を測定することができる。
【0008】
例えば、製造ラインから次々と送られてくる商品をロボットハンドで掴んで箱詰めする既設のラインでは、その前段に商品の内容量をチェックするウェイトチェッカーと、内容量が不足するものをラインから排除する振り分け装置とを設けなければならない。
【0009】
しかし、この質量測定装置が組み込まれたロボットハンドを使用すれば、商品を掴んで移動させている最中に当該商品の質量を測定して内容量の適正をチェックすることができるので、これまで使用していたウェイトチェッカーや振り分け装置等を既設のラインから撤去することができる。
【0010】
この他、商品の質量に応じて商品のランク選別を行う仕分けラインでは、まず商品をラインに投入する装置があり、次に投入された商品の質量を測定するウェイトチェッカーなどがあり、最後に測定された質量に応じて仕分けを行う装置がある。本発明に係る質量測定装置が組み込まれたロボットハンドを用いれば、商品の投入装置・ウェイトチェッカー・仕分け装置で行うすべての処理を1台で行うことができる。
【0011】
また、重力加速度の影響を排除して物品の質量を測定することができるので、例えば、日本のように地域毎に重力が異なるために行っている秤の地区別重力補正が不要となる
本発明の第2観点に係る質量測定装置は、第1観点に係る質量測定装置であって、制御部が、移動時の物品に作用する力を、移動時の物品に作用する加速度で除算して物品の質量を算出する。
【0012】
本発明の第3観点に係る質量測定装置は、第1観点または第2観点に係る質量測定装置であって、力測定部および加速度測定部それぞれの検出方向が、重力の作用しない方向であり、且つその方向が一致している。
【0013】
本発明の第4観点に係る質量測定装置は、第1観点または第2観点に係る質量測定装置であって、力測定部および加速度測定部それぞれの検出方向が、重力の作用する方向であり、且つその方向が一致している。
【0014】
本発明の第5観点に係る質量測定装置は、第1観点または第2観点に係る質量測定装置であって、力測定部および加速度測定部が少なくとも二組設けられている。また、組ごとに力測定部および加速度測定部それぞれの検出方向が一致し、且つ、組ごとの検出方向が交差している。
【0015】
本発明の第6観点に係る質量測定装置は、第1観点または第2観点に係る質量測定装置であって、加速度測定部が、制御部から移動機構に出力される運転指令に基づいて物品に作用する加速度を算出する。
【0016】
この質量測定装置は物理的な加速度検出器を備える必要がないので、装置の小型および軽量化を図ることができる。
【0017】
本発明の第7観点に係る質量測定装置は、第1観点または第2観点に係る質量測定装置であって、外部監視装置をさらに備えている。外部監視装置は、移動しない位置に固定され、物品または保持機構もしくは移動機構の動作を監視する。加速度測定部は、外部監視装置から得られるデータに基づいて物品に作用する加速度を算出する。
【0018】
この質量測定装置では、物品に作用する加速度が、静止した外部監視装置のデータから求められるので、加速度センサの設置による配線等の影響がなく、使い勝手がよい。
【0019】
本発明の第8観点に係る質量測定装置は、第7観点に係る質量測定装置であって、外部監視装置がレーザー変位計である。
【0020】
本発明の第9観点に係る質量測定装置は、第7観点に係る質量測定装置であって、外部監視装置がカメラである。
【0021】
本発明の第10観点に係る質量測定装置は、第1観点または第2観点に係る質量測定装置であって、保持機構に取り付けられるカメラをさらに備えている。加速度測定部は、外部に予め設けられる所定の基準点と、カメラから得られる画像データとに基づいて物品に作用する加速度を算出する。
【0022】
従来、物品の搬送工程では、物品を取る或いは物品を置く手段として、カメラを装着した保持機構(例えば、ロボットハンド)によって掴みにいく構成が多い。それゆえ、この質量測定装置では、そのカメラからの画像データを基に保持機構が所定の基準点から他の所定の基準点まで移動した距離データを得ることができるので、その距離データから加速度も求めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る質量測定装置では、物品が移動中であっても、その物品の質量を測定することができるので、例えば、この質量測定装置をロボットハンドの先端部に取り付ければ、物品の搬送を兼ねて移動させながらその質量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】質量測定装置の概略構成図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る質量測定装置の正面図。
【図3】エアー吸着機構の斜視図。
【図4】ロードセルおよび加速度センサによって検出された信号を処理する信号処理回路図。
【図5】ロードセルおよび加速度センサから得られた検出信号を示すグラフ。
【図6】ロードセルおよび加速度センサから得られた検出信号を基に除算演算により質量を算出した結果を示すグラフ。
【図7】本発明の第2実施形態に係る質量測定装置の正面図。
【図8】ロードセルおよび加速度センサから得られた検出信号を示すグラフ。
【図9】ロードセルおよび加速度センサから得られた検出信号を基に、除算演算により算出した質量結果を示すグラフ。
【図10】第1変形例に係る質量測定装置の制御ブロック図。
【図11】第2変形例に係る質量測定装置の斜視図。
【図12】第3変形例に係る質量測定装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0026】
<第1実施形態>
(1)質量測定の原理
図1は、質量測定装置の概略構成図である。図1において、力検出器1は移動中の物品に作用する力を検出する。保持機構2は、物品Qを保持する。移動機構3は、保持機構2を三次元的に移動させる。加速度検出器4は、物品Qに作用する加速度を検出する。なお、力検出器1は保持機構2と移動機構3との間に設けられ、加速度検出器4は保持機構2に近接して設けられる。
【0027】
力検出器1には、例えば、歪みゲージ式ロードセルが採用される。歪みゲージ式ロードセルは、移動によって自由端側が固定端側に対して相対的に変位し、それによって自由端側に作用する力を検出することができる。保持機構2は、ロボットハンド、エアー吸着機構、或いは、エアーチャック機構であってもよい。
【0028】
移動機構3としては、三次元的に移動可能なロボットアームが好ましく、例えば、水平多関節ロボットや垂直多関節ロボット、あるいは、パラレルリンクロボット等が適切である。
【0029】
加速度検出器4としては、例えば、歪みゲージ式ロードセル、MEMS型の小型加速度センサ、及び一般的な市販の加速度センサのいずれかが適宜採用される。
【0030】
なお、移動機構3がX,Y,Z軸方向に移動することにより、物品Qには加速度が作用する。そのときの運動方程式は、次式のように表わされる。
(m+M)d2X/dt2=KxX ・・・(1)
(m+M)d2Y/dt2=KyY ・・・(2)
(m+M)d2Z/dt2=KzZ ・・・(3)
【0031】
ここで、mは物品Qの質量、Mは力検出器1に負荷される風袋質量、すなわち、力検出器1に負荷される風袋の質量と保持機構2の質量と加速度検出器4の質量との和である。また、Kx、Ky、Kzは、力検出器1のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向のそれぞれのばね定数である。また、X、Y,Zは、力検出器1の静的平衡状態、すなわち、加速、減速をしていないときの状態からの変位量である。
【0032】
計算式(1)、(2)及び(3)から明らかなように、X軸、Y軸、Z軸のいずれかの方向、例えば、X軸方向だけの運動方程式に着目したとき、上記(1)式から、物品Qの質量mは、下記の計算式から求めることができる。
m=KxX/(d2X/dt2)−M ・・・(4)
【0033】
つまり、KxXは力検出器1が検出するX軸方向の力であり、(d2X/dt2)は加速度検出器4が検出するX軸方向の加速度であり、Mは既知質量であるので、求めたい物品Qの質量mは力検出器1の出力(KxX)を加速度検出器4の出力(d2X/dt2)で除算しその結果から風袋質量Mを減算することによって求めることができる。
【0034】
同様に、Y軸方向の力と加速度とを検出しても、物品Qの質量を求めることができる。また、Z軸方向(垂直方向)では、その場所における重力が検出結果に影響するが、静的平衡状態からの運動を考えるとばねの復元力と重力は釣り合うので、上記(3)式のようになり、重力加速度に影響されずに上記(4)式同様に物品の質量mを求めることができる。
【0035】
(2)質量測定装置100の具体的構成
(2−1)駆動系
図2は、本発明の第1実施形態に係る質量測定装置100の正面図である。図2において、質量測定装置100は、ロボットアーム11と、歪みゲージ式のロードセル21と、加速度センサ22と、ロボットハンド23とを備えている。
【0036】
ロボットアーム11は移動機構であり、DENSO製水平多関節ロボットHM−40703E2/Jを採用している。ロボットアーム11の先端ベース部12には、ロードセル21の一端が固定されている。
【0037】
ロードセル21は力検出器であり、定格荷重80kgf、定格出力2mV/Vの歪みゲージ式ロードセルを採用している。また、加速度センサ22とロボットハンド23とがロードセル21の自由端側に設けられている。なお、加速度センサ22とロボットハンド23とは、加速度検出器と保持機構として機能する。また、加速度センサ22には、定格荷重80kgf、定格出力2mV/Vの歪みゲージ式ロードセルが採用されており、その自由端には374gの金属製の錘が固定されている。
【0038】
ロボットハンド23は保持機構であるが、フィンガー機構、又はエアー吸着機構(或いは、エアーチャック機構)で代用されてもよい。図2に示すロボットハンド23は、フィンガー機構であり、物品Qが固形物である場合に適しており、以後、ロボットハンド23aとよぶ。また、エアー吸着機構やエアーチャック機構は、例えば袋詰商品のように、形状が一定しない場合に適している。
【0039】
図3は、エアー吸着機構式のロボットハンド23の斜視図を示す。ロボットハンド23は、アルミニウム製の箱にシリコンゴムで形成された直径40mmの吸盤4個を備えたエアー吸着機構であり、このアルミニウム製の箱からエアーを吸引することにより、その4個の吸盤にて測定対象となる物品Qを吸着する。なお、第1実施形態では、エアー吸着機構式のロボットハンド23を用い、以後、エアー吸着機構式のロボットハンドをロボットハンド23bとよぶ。また、フィンガー機構式およびエアー吸着機構式のいずれでもよい場合は、ロボットハンド23とよぶ。
【0040】
また、エアーの吸引には、CKD製真空発生器VPR2−10LSVEGを採用し、真空発生器には、0.5MPaのドライエアーを供給する。さらに、測定する物品Qとして、187gの金属製ブロックを使用する。
【0041】
図2及び図3において、物品Qの質量は、ロボットハンド23に保持された物品Qがロボットアーム11によって移動している最中に、ロードセル21及び加速度センサ22の出力に基づいて物品Qの質量が測定できるように構成されている。
【0042】
(2−2)制御系
図4は、ロードセル21及び加速度センサ22によって検出された信号を処理する信号処理回路図である。図4において、ロードセル21と加速度センサ22には、それぞれ増幅器31a、31bが接続されており、これらの増幅器31a、31bは、ロードセル21及び加速度センサ22から入力された検出信号を増幅する。また、各増幅器31a、31bには、それぞれローパスフィルタ32a、32bが接続されている。このローパスフィルタ32a、32bは、入力された検出信号から一定周波数以上のノイズ成分を除去する。また、各ローパスフィルタ32a、32bには、それぞれA/D変換器33a、33bが接続されており、そのA/D変換器33a、33bは、入力されたアナログ信号をディジタル信号に変換する。また、各A/D変換器33a、33bは、制御部40に接続されている。
【0043】
制御部40は、入力された検出信号に基づいて各種の処理を実行する。先ず、両検出信号に含まれるノイズ周波数成分をローパスフィルタにより除去する処理を行う。そして、そのノイズ周波数成分が除去された両検出信号を用いて、ロードセル21の検出信号を加速度センサ22の検出信号で除算する処理を行い、その除算結果から風袋質量を減算して質量mを算出する処理を行う。なお、風袋質量とは、ロードセル21に負荷される風袋質量とロボットハンド23の質量と加速度センサ22の質量との和である。
【0044】
制御部40としては、DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)やマイコン等を使用することができる。
【0045】
(3)動作
ロードセル21及び加速度センサ22は、重力が作用する方向に対して90度傾けた状態で配置されており、ロードセル21及び加速度センサ22それぞれの検出方向は重力が作用しない方向であり、且つその方向が一致している。
【0046】
先ず、重力が作用する鉛直方向下向きに距離150mmだけロボットアーム11の最大能力にて移動させ(所要時間は0.25秒)、そこでロボットハンド23bにより物品Qを吸着させて保持し、その後、鉛直方向上向きに距離150mmだけロボットアーム11の最大能力にて移動させる(所要時間は0.25秒)。
【0047】
次に、水平方向へ距離640mmだけロボットの最大能力にて移動させる(所要時間は0.35秒)。そして、再度、鉛直方向下向きに距離150mmだけロボットの最大能力にて移動させ(所要時間は0.25秒)、その後にロボットハンド23bのエアー吸引を止めて物品を放す。実験では、上記動作を60回繰り返した。
【0048】
図5は、ロードセル21及び加速度センサ22から得られた検出信号を示すグラフである。図5において、グラフ中の実線で示すデータはロードセル21の検出信号である、破線で示すデータが加速度センサ22の検出信号である。
【0049】
両検出信号は、ロボットハンド23bにより、物品Qを吸着した時を基点にデータ収集を行っている。このグラフを見て分かるように、重力の作用しない方向にロードセル21及び加速度センサ22が配置されているので、鉛直方向の移動の際には、検出信号にはその移動の影響は現れず、水平方向の移動区間にその移動による影響が現れている。
【0050】
水平方向移動時に作用している力は、最大で約3kgf、加速度は、最大で約1.5Gとなっている。このグラフから見て分かるように、水平移動中のロードセル21の検出信号だけでは、質量を測定することはできないことが分かる。
【0051】
図6は、ロードセル21及び加速度センサ22から得られた検出信号を基に除算演算により質量を算出した結果を示すグラフである。図6において、グラフ中の実線で示すデータが質量の算出結果である。また、上記の式(4)からも分かるように、質量測定装置100では、加速度センサ22の検出信号で除算演算するが、加速度検出信号が0Gの時点については、除算演算が不可能である。そこで本実験では、加速度検出信号が0G付近については、演算を行わずに0g表示としている。
【0052】
このグラフから分かるように、物品Qが重力の作用しない水平方向に移動している間は、質量が測定出来ていることが分かる。物品Qの質量は、グラフ中の時間で0.473秒のポイントのデータを使用し算出した結果、187.1gとなった。物品の移動動作を60回繰り返し行ったときの平均値は、187.5g、標準偏差が0.35gであった。
【0053】
(4)特徴
(4−1)
例えば、製造ラインから次々と送られてくる商品をロボットハンドで掴んで箱詰めする既設のラインでは、その前段に商品の内容量をチェックするウェイトチェッカーと、内容量が不足するものをラインから排除する振り分け装置とを設けなければならない。
【0054】
しかし、この質量測定装置100では、ロボットハンド23bが商品を保持して移動させている最中に当該商品の質量を測定して内容量の適正をチェックすることができるので、これまで使用していたウェイトチェッカーや振り分け装置等を既設のラインから撤去することができる。
【0055】
(4−2)
また、商品の質量に応じて商品のランク選別を行う仕分けラインでは、まず商品をラインに投入する装置があり、次に投入された商品の質量を測定するウェイトチェッカーなどがあり、最後に測定された質量に応じて仕分けを行う装置がある。
【0056】
しかし、この質量測定装置100では、商品の投入装置・ウェイトチェッカー・仕分け装置で行うすべての処理を1台で行うことができる。
【0057】
また、水平方向に加速するときに物品の質量を測定するので、重力加速度の影響を排除して物品の質量を測定することができる。それゆえ、日本のように地域毎に重力が異なるために行っている秤の地区別重力補正が不要となる。
【0058】
<第2実施形態>
(1)質量測定装置200の全体構成
上記第1実施形態では、ロードセル21及び加速度センサ22それぞれの検出方向が重力の作用しない方向となるように配置されているが、それに限定されるものではなく、以下に、ロードセル21及び加速度センサ22それぞれの検出方向が重力の作用する方向となるように配置されている場合について説明する。
【0059】
図7は、本発明の第2実施形態に係る質量測定装置200の正面図である。図7において、質量測定装置200は、加振器51、ロードセル21、加速度センサ22、ロボットハンド23を備えている。
【0060】
加振器51は移動機構であり、IMV製EV50が採用されている。加振器51の加振ベース部52にはロードセル21が固定されている。ロードセル21には、定格荷重80kgf、定格出力2mV/Vの歪みゲージ式ロードセルが採用されている。
【0061】
加速度センサ22とロボットハンド23とはロードセル21の先端に取り付けられている。なお、この第2実施形態では、ロボットハンド23にはフィンガー機構式のロボットハンド23aが採用され、加速度センサ22にはKIONIX製加速度センサKXR94−2050が採用されている。また、ロードセル21と加速度センサ22それぞれの検出方向は、重力の作用する方向であり鉛直方向に変位する。
【0062】
物品Qの質量は、ロードセル21及び加速度センサ22とロボットハンド23aによって保持された物品Qが、加振器51によって移動している最中に、物品Qの質量が測定される構成である。
【0063】
(2)動作
ロボットハンド23aで物品Qが固定された状態で、加振器51は加速度振幅0.5G、周波数10Hzにて動作し、この動作中で質量の算出を行った。なお、質量を測定する物品Qとしては、187gの金属製ブロックを使用する。
【0064】
図8は、ロードセル21及び加速度センサ22から得られた検出信号を示すグラフである。図8において、グラフ中の実線で示すデータがロードセル21の検出信号、破線で示すデータが加速度センサ22の検出信号となる。移動時に作用している力は、最大で約1kgf、加速度は、最大で約0.5Gとなっている。
【0065】
図9は、ロードセル21及び加速度センサ22から得られた検出信号を基に、除算演算により算出した質量結果を示すグラフである。グラフ中の実線で示すデータが質量の算出結果となる。また、この場合、上記第1実施形態と同様に、加速度検出信号が0G付近については、演算を行わずに0g表示としている。
【0066】
図9のグラフに示すように、重力の作用する鉛直方向に移動している最中でも質量が測定出来ていることが分かる。物品Qの質量は、図8のグラフ中の波形で最大値をとるポイントのデータを使用して算出した。100回測定した時の平均値は、187.2g、標準偏差が0.12gであった。
【0067】
以上の実験結果を総合すると、ロボットハンド23aによって、例えば物品が鉛直方向に対して斜めに加減速する場合であっても、移動中の水平方向の分力について、あるいは、鉛直方向の分力について、力と加速度とをそれぞれ検出して演算すれば、物品の質量が求まることが解る。
【0068】
<第3実施形態>
(1)質量測定装置300の全体構成
ここでは、図2においてロードセル21及び加速度センサ22が、X,Y,Z軸の三次元の各方向に対して検出可能な場合について説明する。
【0069】
質量測定装置300は、ロボットアーム11の先端ベース部12にロードセル21の一端が固定され、それと反対側の自由端側に加速度センサ22とロボットハンド23とが設けられている。物品Qの質量は、ロードセル21、加速度センサ22、及びロボットハンド23により保持された物品Qが、ロボットアーム11によって移動している最中に、物品Qの質量が測定されるように構成されている。
【0070】
(2)動作
ロードセル21及び加速度センサ22が、X,Y,Z軸の三次元の方向に対してそれぞれ検出可能なため、物品Qの質量を測定する際には、それぞれの検出信号を合成する必要がある。
【0071】
上記(1)、(2)、(3)式を合成すると、次式のように表すことができる。
(m+M){(d2X/dt22+(d2Y/dt22+(d2Z/dt220.5={(KxX)2+(KyY)2+(KzZ)20.5 ・・・(5)
【0072】
上記(5)式から、物品Qの質量mは、下記の計算式から求めることができる。
m={(KxX)2+(KyY)2+(KzZ)20.5/{(d2X/dt22+(d2Y/dt22+(d2Z/dt220.5−M ・・・(6)
【0073】
したがって、三次元の各方向に対してそれぞれ検出可能な検出器を使用し、(6)式を使用することで、三次元的に移動している最中でも移動方向を問わずに物品Qの質量が求まることが解る。
【0074】
<変形例>
(1)第1変形例
上記第1〜第3実施形態に係る質量測定装置では、加速度センサによって加速度が測定されているが、これに限定されるものではない。
【0075】
汎用のロボットアームなどの制御系は、関節を駆動するモータを制御するために、位置および速度のフィードバックループを有しており、さらに、モータへの動作指令値から加速度と慣性とを算出している。
【0076】
例えば、図10は第1変形例に係る質量測定装置の制御ブロック図を示しており、図10において、制御部40には、ロボット制御部46及び加速度測定部47が含まれている。加速度測定部47は、ロボット制御部46からロボットアーム11に対して出力される動作指令値Vfgを取り込み、加速度を算出する。
【0077】
それゆえ、第1変形例に係る質量測定装置では、物理的な加速度センサを備える必要がないので、装置の小型および軽量化を図ることができる。
【0078】
(2)第2変形例
上記第1〜第3実施形態に係る質量測定装置では、加速度センサが物品とともに移動しているが、これに限定されるものではなく、別の加速度検知手段を所定の静止位置に配置してもよい。
【0079】
例えば、図11は第2変形例に係る質量測定装置の斜視図である。図11において、A位置はロボットハンド23が物品Qを取る位置であり、D位置はロボットハンド23が物品Qを置く位置である。ロボットアーム11は、物品Qを「A位置からB位置まで鉛直上昇させた後、B位置からC位置まで水平移動させ、その後、C位置からD位置まで鉛直降下させる」という定形動作を行う。
【0080】
また、外部監視装置122は、B位置からC位置まで移動する物品Qの移動距離を監視する。外部監視装置122は、物品Qの単位時間当たりの変位量を測定できる機器であり、レーザー変位計、又はカメラが好ましい。
【0081】
第2変形例に係る質量測定装置では、外部監視装置122と制御部40とによって加速度測定部が構成されており、制御部40は、外部監視装置122から送られてくるデータに基づいて物品Qに作用する加速度を算出する。なお、ロードセル21は第1実施形態と同様に先端ベース部12に固定されている。
【0082】
この第2変形例によれば、物品Qに作用する加速度を静止姿勢の外部監視装置122のデータから求められるので、加速度センサの設置による配線等の影響がなく、使い勝手がよい。
【0083】
なお、外部監視装置122は、物品Qの移動距離を監視することに限定されるものではなく、ロボットアーム11の所定位置の移動距離、若しくはロボットハンド23の移動距離を監視してもよい。
【0084】
(3)第3変形例
物品の搬送工程では、物品を取る或いは物品を置く手段として、カメラを装着したロボットハンドによって掴みにいく構成が広く普及しており、そのカメラからの画像データを基に、ロボットハンドが所定の基準点から単位時間当たりに移動した距離のデータを得ることができるので、それから加速度も求めることができる。
【0085】
例えば、図12は第3変形例に係る質量測定装置の斜視図である。図12において、図12において、カメラ222がロボットアーム11の先端ベース部12の上部に設置されている。通常、カメラ222は、ロボットハンド23が物品Qを取る或いは物品を置くときの位置を検知するカメラである。
【0086】
第3変形例に係る質量測定装置では、このカメラ222と制御部40とによって加速度測定部を構成している。図12に示すように、物品QのA位置及びB位置において、カメラ222のレンズ222aの前方には測定基準点となる第1物体401が配置されている。また、物品QのC位置及びD位置において、カメラ222のレンズ222aの前方には測定基準点となる第2物体402が配置されている。
【0087】
加速度測定部の一部を構成している制御部40は、カメラ222から送られてくる画像データを基に、例えば、カメラ222が第1物体401を認識してから第2物体402を認識するまでの時間データを算出し、それを基に物品Qに作用する加速度を算出する。
【0088】
以上のように、第3変形例に係る質量測定装置によれば、加速度センサを新たに設けることなく、既存のカメラを利用して物品Qに作用する加速度を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上にように、本願発明によれば、物品を移動させながらその物品の質量を測定することができるので、アセンブリ製品の内部部品の欠品検査にも有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 力検出器(力検出部)
2 保持機構
3 移動機構
4 加速度検出器(加速度検出部)
11 ロボットアーム(移動機構)
12 先端ベース部
21 ロードセル(力検出部)
22 加速度センサ(加速度検出部)
23 ロボットハンド(保持機構)
31a 増幅器
31b 増幅器
32a ローパスフィルタ
32b ローパスフィルタ
33a A/D変換器
33b A/D変換器
40 制御部
41 除算器
42 減算器
51 加振器(移動機構)
52 加振ベース
122 外部監視装置
222 カメラ
Q 物品(被計量物)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開平8−110261号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を移動させながら前記物品の質量を測定する質量測定装置であって、
前記物品を保持する保持機構と、
前記保持機構を移動させる移動機構と、
前記保持機構と前記移動機構との間に設けられて、移動時の前記物品に作用する力を測定する力測定部と、
移動時の前記物品に作用する加速度を測定する加速度測定部と、
前記保持機構および前記移動機構を運転制御し、移動時の前記物品に作用する力および加速度に基づいて前記物品の質量を算出する制御部と、
を備える質量測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、移動時の前記物品に作用する力を、移動時の前記物品に作用する加速度で除算して前記物品の質量を算出する、
請求項1に記載の質量測定装置。
【請求項3】
前記力測定部および前記加速度測定部それぞれの検出方向は、重力の作用しない方向であり、且つ前記方向が一致している、
請求項1または請求項2に記載の質量測定装置。
【請求項4】
前記力測定部および前記加速度測定部それぞれの検出方向は、重力の作用する方向であり、且つ前記方向が一致している、
請求項1または請求項2に記載の質量測定装置。
【請求項5】
前記力測定部および前記加速度測定部が少なくとも二組設けられ、前記組ごとに前記力測定部および前記加速度測定部それぞれの検出方向が一致し、且つ、前記組ごとの前記検出方向が交差している、
請求項1または請求項2に記載の質量測定装置。
【請求項6】
前記加速度測定部は、前記制御部から前記移動機構に出力される運転指令に基づいて前記物品に作用する加速度を算出する、
請求項1または請求項2に記載の質量測定装置。
【請求項7】
移動しない位置に固定され、前記物品または前記保持機構もしくは前記移動機構の動作を監視する外部監視装置をさらに備え、
前記加速度測定部は、前記外部監視装置から得られるデータに基づいて前記物品に作用する加速度を算出する、
請求項1または請求項2に記載の質量測定装置。
【請求項8】
前記外部監視装置が、レーザー変位計である、
請求項7に記載の質量測定装置。
【請求項9】
前記外部監視装置が、カメラである、
請求項7に記載の質量測定装置。
【請求項10】
前記保持機構に取り付けられるカメラをさらに備え、
前記加速度測定部は、外部に予め設けられる所定の基準点と、前記カメラから得られる画像データとに基づいて前記物品に作用する加速度を算出する、
請求項1または請求項2に記載の質量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−79931(P2013−79931A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39107(P2012−39107)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)