説明

赤外線センサ

【課題】少なくとも3つの熱線センサの使用によりAND警戒モードとOR警戒モードを確実に得ることができて、各種形態の警戒エリアに適用できると共に高精度な警戒エリアが容易に得られる赤外線センサを提供する。
【解決手段】少なくとも3つの熱線センサの検知信号に基づき警戒エリアで検知された物体が人体か否かを判定して警報信号を出力する制御手段を備えた赤外線センサにおいて、制御手段は、各熱線センサの全てから検知信号が入力された場合に警報信号を出力するAND警戒モードと、各熱線センサのうち少なくとも1つから検知信号が入力された場合に警報信号を出力するOR警戒モードの両警戒モードに設定可能であることを特徴とする。前記制御手段は、切替え手段の切替え操作によりAND警戒モードとOR警戒モードに切替え可能であったり、操作手段の操作により切替え動作を可能もしくは不可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から放射される熱線を検知して警戒エリア内における人体の存否を検知する赤外線センサに係わり、特に、少なくとも3つの熱線センサの検知信号に基づきAND警戒モードとOR警戒モードに切替え可能な赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、警戒エリア内において人体から放射される熱線を検知する赤外線センサとしては、例えば特許文献1が知られている。この赤外線センサは、上下2段構成として90度回転可能で扇形の警戒エリアを形成する2つのセンサユニットと、これらのセンサユニットで検知された信号が入力される制御手段とを備えている。そして、2つのセンサユニットの両方から入力信号があった場合のAND動作(AND警戒モード)と、いずれか一方のセンサユニットから入力信号があった場合のOR動作(OR警戒モード)とが切替えられるようになっている。
【特許文献1】特開2005−201754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような赤外線センサにあっては、センサユニットが1つの場合には適用することが困難であり、また、上下2段のセンサユニットが90度回転可能であるものの、各センサユニットを左右異なる方向に90度回転させて警戒エリアを180度に設定した場合には、AND警戒モードに設定することが難しい等、適用される警戒エリアの形態が特定されて、各種形態の警戒エリアへの適用が困難であると共に高精度な警戒エリアを得ることが難しい。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、少なくとも3つの熱線センサの使用によりAND警戒モードとOR警戒モードを確実に得ることができて、各種形態の警戒エリアに適用できると共に高精度な警戒エリアが容易に得られる赤外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、赤外線検知素子と球面レンズをそれぞれ有する少なくとも3つの熱線センサと、該各熱線センサの検知信号に基づき警戒エリアで検知された物体を人体か否かを判定して警報信号を出力する制御手段とを備えた赤外線センサにおいて、前記制御手段は、前記各熱線センサの全てから検知信号が入力された場合に前記警報信号を出力するAND警戒モードと、前記各熱線センサのうち少なくとも1つから検知信号が入力された場合に前記警報信号を出力するOR警戒モードの両警戒モードに設定可能であることを特徴とする。
【0006】
この場合、前記制御手段は、請求項2に記載の発明のように、該制御手段に接続された切替え手段の切替え操作により前記AND警戒モードとOR警戒モードに切替え可能であることが好ましく、また、前記制御手段は、請求項3に記載の発明のように、該制御手段に接続された操作手段の操作により前記切替え動作を可能もしくは不可能にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、赤外線検知素子と球面レンズ等を有する少なくとも3つの熱線センサで検知された物体が人体か否かを判定する制御手段が、AND警戒モードとOR警戒モードの両警戒モードに設定可能であるため、各熱線センサによりAND警戒モードとOR警戒モードを確実に得ることができて、各種形態の警戒エリアに適用できると共に高精度な警戒エリアを容易に得ることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、制御手段に接続された切替え手段の切替え操作によりAND警戒モードとOR警戒モードに切替え可能であるため、各警戒モードへの切替えを切替え手段で簡単かつ確実に行うことができて、赤外線センサ自体の操作性と使い勝手を向上させることができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、制御手段に接続された操作手段の操作により切替え動作が可能もしくは不可能に設定されるため、切替え動作の可能・不可能を操作手段で行うことができて、赤外線センサ自体の操作性等を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は、本発明に係わる赤外線センサの一実施形態を示し、図1がその斜視図、図2が縦断面図、図3が制御系のブロック図、図4がその制御回路のブロック図、図5が警戒エリアの一例を示す図、図6が動作の一例を示すフローチャートである。
【0011】
図1及び図2に示すように、赤外線センサ1は、建物の外壁等に取付けられ、幅方向の両側に前方に突出したホルダ2aを有すると共に上端部に前方に水平状態で突出した上カバー部2bを有するベース2と、このベース2の前面に回転可能に取付けられる外形形状が略円筒形状のセンサユニット3と、このセンサユニット3の下面を覆う下カバー5等を有している。
【0012】
前記センサユニット3は、ベース2形状に略対応した縦長形状のプリント基板6上に実装された3個の赤外線検知素子7a〜9aと、この各赤外線検知素子7a〜9aの前方にそれぞれ配置された集光光学系としての球面レンズ7b〜9bを有し、各赤外線検知素子7a〜9aと各球面レンズ7b〜9bとにより3個の熱線センサ7〜9が形成されている。そして、この各熱線センサ7〜9は、赤外線検知素子7a〜9aの前方に形成される所定形態の検知エリア内の赤外線(熱線)を赤外線検知素子7a〜9aで検知(受光)し、その検知信号を後述する信号処理回路21に出力するようになっている。なお、前記赤外線検知素子7a〜9aとしては、2つの焦電素子を互いに逆極性に直列に差動接続し、プラス(+)極性の焦電素子の出力信号と、マイナス(−)極性の焦電素子の出力信号との合成出力が得られるツイン素子が使用される。
【0013】
また、センサユニット3は、内部に前記プリント基板6等が内蔵される断面略半円形状の前ケース11a及び後ケース11bを有し、前ケース11aの前記球面レンズ7b〜9bに対応する部位には、球面レンズ7b〜9bを外部に露出させるための開口12が3個設けられている。また、センサユニット3のプリント基板6には、例えば赤外線センサ1のテストモード時に所定の形態で点灯する2個のLED13が上下方向に所定間隔を有して実装されており、このLED13の前方の前ケース11aには、LED13の点灯、点滅や消灯等をセンサユニット3の前方から視認可能な透光部14が設けられている。
【0014】
そして、センサユニット3は、前ケース11aと後ケース11bが一体化されて外形形状が略円筒形状に形成され、この状態において、その上下面に形成された軸部が、前記ベース2の上カバー部2bと下カバー5に水平面内で所定角度(例えば90度)回転可能で、かつ所定位置で図示しないロック機構によりロック可能に取付けられている。これにより、3個の熱線センサ7〜9の後述する警戒エリアがセンサユニット3の回転動作により調整可能となっている。なお、図1の符号10は、センサユニット3の回転角度(回転位置)を示す下カバー5に設けられた目盛である。
【0015】
図3及び図4は、前記赤外線センサ1の制御系のブロック図を示している。以下、これについて説明する。図3に示すように、赤外線センサ1は制御手段としての制御回路15を有し、この制御回路15には、その入力側に前記3個の熱線センサ7〜9と、赤外線センサ1をAND警戒モードとOR警戒モードに設定する設定スイッチ16と、赤外線センサ1の設置場所の外気温を検知する温度センサ18と、前記設定スイッチ16による機能を使用もしくは未使用に設定するモードスイッチ23等が接続されると共に、例えば電池等の電源19に接続された電源回路20が接続されている。また、制御回路15の出力側には前記LED13が接続されると共に、制御回路15の所定の出力端子からは、検知出力が出力されるようになっている。
【0016】
前記制御回路15は、図4に示すように、3個の熱線センサ7〜9にそれぞれ接続された3個の信号処理回路21を有し、この各信号処理回路21は、各熱線センサ7〜9で検知された信号を増幅する増幅器21aと、人体に関する周波数を透過させる帯域フィルタ21bと、該帯域フィルタ21bを透過した信号と予め設定した閾値とを比較する比較器21c等によって構成されている。そして、各比較器21cがマイコン等からなる判定部22に接続されており、3個の比較器21cの比較結果、つまり信号処理回路21の出力に基づいて、判定部22により例えば各熱線センサ7〜9の出力信号がAND論理(もしくはOR論理)の際に、各熱線センサ7〜9で検知された物体が例えば人体であると判定して、前記検知出力を出力するようになっている。
【0017】
そして、この赤外線センサ1は、各熱線センサ7〜9によって所定の警戒エリアが得られるようになっている。図5は、前記熱線センサ7の警戒エリアの平面図及び側面図を示しており、水平面内においては、図5(a)に示すようにA〜Iの検知ゾーンが形成され、また、垂直面内においては、図5(b)に示すようなA〜D、E〜H及びIの検知ゾーンが形成されている。
【0018】
なお、図5は、赤外線センサ1の最も高い位置にある熱線センサ7による検知ゾーンを示すが、中間位置にある熱線センサ8や最も低い位置にある熱線センサ9の検知ゾーンは、水平面内や垂直面内において他の熱線センサ7〜9の検知ゾーンと同一とならないように設定されており、これにより、水平面及び垂直面において3つの熱線センサ7〜9により所定形態の警戒エリアが形成されるようになっている。
【0019】
次に、この赤外線センサ1の動作の一例を図6のフローチャートに基づいて説明する。なお、図6に示すフローチャートは、前記判定部22の記憶部に予め記憶されたプログラムにしたがい自動的に実行される。先ず、赤外線センサ1の電源を投入するとプログラムが開始(S100)され、前記モードスイッチ23が使用か否か、すなわち、AND警戒モードとOR警戒モードの切替え機能を使用可能とするか未使用(不可能)とするかが判断(S101)される。モードスイッチ23の操作により判断S101で「YES」になると、設定スイッチ16がANDか否か(S101)、すなわち、赤外線センサ1を前記AND警戒モードで使用するかOR警戒モードで使用するかが判断(S102)される。
【0020】
そして、前記設定スイッチ16がAND警戒モード側に設定されて判断S102で「YES」になると、全ての熱線センサ7〜9が検知か否かが判断(S103)され、また、設定スイッチ16がOR警戒モード側に設定されて判断S102で「NO」になると、3つの熱線センサ7〜9のうちのいずれか一つの熱線センサ7〜9が検知か否かが判断(S104)される。判断S103で「YES」の場合、すなわち3つの熱線センサ7〜9の全てから検知出力があってAND論理が成立した場合は、警報信号を出力(S105)して、一連のプログラムが終了(S106)する。
【0021】
また、判断S104で「YES」の場合、すなわち3つの熱線センサ7〜9のうちの少なくとも一つの熱線センサ7〜9から検知出力があってOR論理が成立した場合も、警報信号を出力(S105)して終了(S106)する。一方、判断S103及び判断S104で「NO」の場合は、ステップS102に戻り該ステップS102以降を繰り返す。さらに、前記判断S101で「NO」の場合、すなわち、設定スイッチ16によるモード切替えを使用しない場合は、ステップS103に移り、AND警戒モードが実行される。
【0022】
つまり、制御回路15に接続されたモードスイッチ23が使用に設定され、設定スイッチ16がAND側に設定されると、赤外線センサ1がAND警戒モードで動作可能となり、また、設定スイッチ16がOR側に設定されると、赤外線センサ1がOR警戒モードで動作可能となる。なお、以上のフローチャートは一例であって、例えばモードスイッチ23によりAND警戒モードとOR警戒モードの切替え機能が未使用に設定された場合に、ステップS104に移りOR警戒モードを実行したり、あるいは両モードとも実行しないフローチャートとすることも可能である。また、以上の説明においては、設定スイッチ16とモードスイッチ23をそれぞれ設けたが、例えば3つの接点を有する1つのロータリースイッチを使用し、このスイッチの3つの接点を「AND警戒モード」と「OR警戒モード」及び「未使用」に対応させることもできる。
【0023】
このように、上記実施形態の赤外線センサ1にあっては、制御回路15に赤外線検知素子7a〜9aを有する3つの熱線センサ7〜9が接続されると共に、設定スイッチ16やモードスイッチ23が接続され、各スイッチ16、23の操作により、赤外線センサ1をAND警戒モードとOR警戒モードの両警戒モードに設定可能であるため、各熱線センサ7〜9によりAND警戒モードとOR警戒モードを確実に得ることができて、各種形態の警戒エリアに適用できると共に高精度な警戒エリアを容易に得ることができる。
【0024】
また、熱線センサ7〜9が3つの赤外線検知素子7a〜9aとレンズとして3つの球面レンズ7b〜9bとで構成されているため、3つの赤外線検知素子7a〜9aにより、虫等の小動物による誤報を減少できると共に、球面レンズ7b〜9bの使用により扇形の精度良い警戒エリアが形成されて、近い警戒エリアにおける小動物による誤報を減少できる等、一層高精度な警戒エリアを得ることが可能となる。
【0025】
また、警戒モードの切替えが設定スイッチ16やモードスイッチ23の切替え操作によって行われるため、各警戒モードへの切替えを簡単かつ確実に行うことができて、赤外線センサ1自体の操作性や使い勝手を向上させることができる。さらに、1台の赤外線センサ1が3つの熱線センサ7〜9を有して、制御回路15の制御でAND警戒モードとOR警戒モードに設定可能であるため、例えば従来の1つの熱線センサを有する赤外線センサを3台設置する場合に比較して、設置作業やメンテナンス作業を容易に行うことができると共に、効率的な設置スペースが得られ、赤外線センサ1をコスト安価に形成することができる。
【0026】
なお、上記実施形態における、赤外線センサ1の全体及びセンサユニット3等の各部の形状、制御系のブロック図や制御回路自体のブロック図、及びこれらの動作は一例であって、制御回路15を他のブロック構成としたり、上記したフローチャートと同様の作用効果が得られる他のフローチャートを採用する等、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、3つの熱線センサを有する赤外線センサに限らず、AND警戒モードとOR警戒モードに設定可能な4つ以上の熱線センサを有する全ての赤外線センサにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係わる赤外線センサの一実施形態を示す斜視図
【図2】同その縦断面図
【図3】同制御系のブロック
【図4】同その制御回路のブロック図
【図5】同警戒エリアの一例を示す図
【図6】同動作の一例を示すフローチャート
【符号の説明】
【0029】
1・・・赤外線センサ、2・・・ベース、2a・・・ホルダ、2b・・・上カバー部、3・・・センサユニット、5・・・下カバー、6・・・プリント基板、7〜9・・・熱線センサ、7a〜9a・・・赤外線検知素子、7b〜9b・・・球面レンズ、11a・・・前ケース、11b・・・後ケース、12・・・開口、13・・・LED、14・・・透光部、15・・・制御回路、16・・・設定スイッチ、18・・・温度センサ、19・・・電源、20・・・電源回路、21・・・信号処理回路、21a・・・増幅器、21b・・・帯域フィルタ、21c・・・比較器、22・・・判定部、23・・・モードスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線検知素子と球面レンズをそれぞれ有する少なくとも3つの熱線センサと、該各熱線センサの検知信号に基づき警戒エリアで検知された物体が人体か否かを判定して警報信号を出力する制御手段とを備えた赤外線センサにおいて、
前記制御手段は、前記各熱線センサの全てから検知信号が入力された場合に前記警報信号を出力するAND警戒モードと、前記各熱線センサのうち少なくとも1つから検知信号が入力された場合に前記警報信号を出力するOR警戒モードの両警戒モードに設定可能であることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
前記制御手段は、該制御手段に接続された切替え手段の切替え操作により前記AND警戒モードとOR警戒モードに切替え可能であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記制御手段は、該制御手段に接続された操作手段の操作により前記切替え動作を可能もしくは不可能にすることを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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