説明

赤外線反射部材

【課題】複数の選択反射層を組み合わせて用いることにより、断熱効果に優れた赤外線反射部材を提供することを主目的とする。
【解決手段】透明基板と、上記透明基板上に形成され、コレステリック構造を形成する棒状化合物を含有し、赤外線を反射する選択反射層が少なくとも2層以上積層されてなる赤外線反射層と、を有する赤外線反射部材であって、上記選択反射層のうち、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層が、上記赤外線反射層の最外層となるように配置されることを特徴とする赤外線反射部材を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の波長領域の光を選択的に反射することができる選択反射層が2層以上積層された構成を有し、優れた断熱効果を発揮可能な赤外線反射部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可視光線ないし赤外線の波長領域において、所望の波長を選択的に反射できる部材として、コレステリック液晶を用いた選択反射部材が知られている。これら選択反射部材は、所望の光(電磁波)のみを選択的に反射することができるため、例えば可視光線は透過させて熱線のみを反射する熱線反射膜や透過性断熱膜としての利用が期待されている。
【0003】
コレステリック液晶を用いて電磁波を反射する電磁波反射フィルムについては、例えば以下の文献が知られている。特許文献1には、広帯域で近赤外線を反射する薄膜コーティングを施した透明基板と、近赤外線部に鋭い波長選択反射性を有するコレステリック液晶製のフィルタとからなる積層体が開示されている。この技術は、可視光の透過率を低下させることなく、近赤外線を高効率で反射させることを目的としている。また、特許文献2には、赤外線波長領域内において、入射する放射の少なくとも40%を反射する1種またはそれ以上のコレステリック層を含む断熱コーティングが開示されている。この技術は、コレステリック層を用いることで、所望の断熱効果を得ることを目的としている。
【0004】
さらに、特許文献3には、特定の方法により光反射率が向上された高分子液晶層と、この高分子液晶層を支持する支持体とを備える高分子液晶層構造体であって、特定波長の光に対して反射率が35%以上である高分子液晶層構造体が開示されている。この技術は、主に液晶ディスプレイ(LCD)に用いられるものであり、フッ素系非イオン性界面活性剤を用いることで、高分子液晶層の反射率を向上させるものである。また、特許文献4には、可視光を透過させ、かつ特定波長領域の近赤外線を選択的に反射させる、コレステリック液晶構造を有する高分子固化体層からなる選択反射層Aを有する近赤外線遮蔽層を備えた近赤外線遮蔽用の両面粘着フィルムが開示されている。この技術は、主にプラズマディスプレイパネル(PDP)に用いられるものであり、近赤外線遮蔽用の両面粘着フィルムにより、PDPが周囲に与える電磁波の影響を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−281403号公報
【特許文献2】特表2001−519317号公報
【特許文献3】特許第3419568号
【特許文献4】特開2008−209574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コレステリック液晶化合物が用いられた赤外線反射部材は、通常、選択反射層にコレステリック液晶化合物が含有され、そのコレステリック構造に依存して所定の波長領域の光を選択的に反射する機能を発現するものである。すなわち、選択反射層が赤外線反射部材に光の選択反射機能を付与するものである。そして、選択反射層が反射する光の波長領域はコレステリック構造に起因するものであることから、複数の選択反射層を用いることにより赤外線反射部材の選択反射特性を自在に制御することができるものであり、例えば、複数の波長領域の光を選択反射すること等が可能になる。
したがって、コレステリック液晶化合物が用いられた選択反射性の異なる複数の選択反射層を組み合わせて用いることにより、あらゆる用途に使用可能な赤外線反射部材が検討されている。
【0007】
本発明は、このように複数の選択反射層を組み合わせて用いることにより、断熱効果に優れた赤外線反射部材を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ところで、赤外光の中でも短波長側の波長を有する赤外光は、熱上昇の寄与度が大きく、高い加熱作用効果を有することが知られている。
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、赤外線反射層を構成する複数の選択反射層のうち、最も短波長側の波長領域の赤外線を反射可能な選択反射層を、赤外線反射層の最外層に配置することにより、加熱作用効果の高い短波長の赤外線を効果的に反射可能とすることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するために本発明は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、コレステリック構造を形成する棒状化合物を含有し、赤外線を反射する選択反射層が少なくとも2層以上積層されてなる赤外線反射層と、を有する赤外線反射部材であって、上記選択反射層のうち、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層が、上記赤外線反射層の最外層となるように配置されることを特徴とする赤外線反射部材を提供する。
【0010】
本発明によれば、赤外線反射層の最外層が、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層となるように配置されることから、加熱作用効果の高い、短波長側の波長領域を有する赤外線を最先に反射、遮断することが可能となる。そのため、他の選択反射層が最外層となるように配置される場合に比べ、赤外線反射部材を介して吸収される熱量を抑制することが可能となり、断熱効果に優れた赤外線反射部材とすることができる。
また、最も短波長側の波長領域を有する赤外線を反射可能な選択反射層は、他の選択反射層に比べて薄膜形成が可能であり、膜厚の厚い選択反射層に比べて配向性を維持しやすいものである。複数の選択反射層を直接積層させる場合、透明基板との距離が離れた位置となるように配置された選択反射層ほど、液晶の配向制御が困難(配向規制力の低下)となることから、膜厚の厚い選択反射層を最外層となるように配置する場合と比べて、薄膜形成が可能である最も短波長側の波長領域を有する赤外線を反射可能な選択反射層を最外層となるように配置することにより、配向規制力の低下を防ぎ、液晶の配向性に優れた赤外線反射部材とすることができる。
【0011】
本発明においては、上記赤外線反射層の最外層となる選択反射層が反射可能な赤外線の波長領域が650nm〜1500nmの範囲内であることが好ましい。加熱作用効果の高い短波長側の赤外線を効率良く反射することができるからである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、所定の波長領域の光を選択的に反射することができる選択反射層が2層以上積層された構成を有した場合に、より優れた断熱効果を発揮できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の赤外線反射部材の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の赤外線反射部材の他の例を示す概略断面図である。
【図3】赤外線反射層における波長および反射率の関係を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の赤外線反射部材について詳細に説明する。
【0015】
本発明の赤外線反射部材は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、コレステリック構造を形成する棒状化合物を含有し、赤外線を反射する選択反射層が少なくとも2層以上積層されてなる赤外線反射層と、を有する赤外線反射部材であって、上記選択反射層のうち、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層が、上記赤外線反射層の最外層となるように配置されることを特徴とするものである。
なお、本発明における赤外線とは、波長が650nm以上の光(電磁波)をいう。
【0016】
このような本発明の赤外線反射部材について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の赤外線反射部材の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本発明の赤外線反射部材10は、透明基板1と、透明基板1上に形成され、コレステリック構造を形成する棒状化合物を含有し、赤外線11を反射する2層の選択反射層2a、2bが積層されてなる赤外線反射層3と、を有するものである。
また、選択反射層2のうち、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層2aが、赤外線反射層3の最外層となるように配置されるものである。
【0017】
また、図2(a)、(b)は、本発明の赤外線反射部材の他の例を示す概略断面図である。図2(a)、(b)に例示するように、本発明の赤外線反射部材10における赤外線反射層3は、3層の選択反射層2a、2b、2cを有するものであっても良い。なお、上記選択反射層2a、2b、2cが反射可能な赤外線の波長領域は、2a、2b、2cの順に短波長側から長波長側へとなるものとする。このとき、赤外線反射層3の最外層に、3層の選択反射層2a、2b、2cのうち、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層2aが配置されるものである。
なお、図2において説明していない符号については、図1と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0018】
本発明によれば、上記赤外線反射層の最外層が、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層となるように配置されることにより、熱上昇の寄与度が大きい短波長側の波長領域を有する赤外線を最先に反射、遮断することが可能となる。したがって、最も短波長側の波長領域を有する赤外線を、他の選択反射層を通過することなく反射することが可能となるため、他の選択反射層が赤外線を吸収して加熱することを防止できる。これにより、上記赤外線反射層の最外層が、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層となるように配置されることによって、赤外線反射部材を介して吸収される熱量を抑制することができる。
なお、上記最外層とは、赤外線反射層を構成する選択反射層のうち、最も透明基板から離れた位置に配置される選択反射層のことをいうものである。ここで、本発明の赤外線反射部材は、透明基板が屋内側となるように配置されて用いられるものであることから、上記最外層が、外光を最先に受ける選択反射層となる。
【0019】
さらに本発明によれば、選択反射層が発揮する選択反射性は、含有される棒状化合物が形成するコレステリック構造の周期(ピッチ)により反射可能な波長領域が変化する。すなわち、コレステリック構造のピッチと反射可能な波長とが対応する。具体的には、反射可能な波長が短いほど、コレステリック構造のピッチが短くなることから、上述したような最も短波長側の波長領域を有する赤外線を反射可能な選択反射層は、他の選択反射層に比べて薄膜形成が可能である。
また、このような選択反射層としては、膜厚が薄いほど隣接する棒状化合物との距離が短くなることから配向性を維持しやすくなる。そのため、膜厚の厚い選択反射層に比べて優れた配向性を発揮できる。
本発明の赤外線反射部材に用いられる複数の選択反射層が直接積層される場合、透明基板との距離が離れた位置となるように配置された選択反射層ほど、上述した棒状化合物の配向性が乱れやすくなる。そのため、最外層が他の選択反射層となるように配置される場合と比べて、上述したように薄膜形成が可能な最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層を最外層となるように配置することにより、配向規制力の低下を抑制し、液晶の配向性に優れた赤外線反射部材とすることができる。
【0020】
本発明の赤外線反射部材は、透明基板と、赤外線反射層とを有するものであり、必要に応じて他の構成層を有していても良いものである。
以下、本発明の赤外線反射部材の各構成について順に説明する。
【0021】
1.赤外線反射層
まず、本発明に用いられる赤外線反射層について説明する。本発明における赤外線反射層は、透明基板上に形成され、コレステリック構造を形成する棒状化合物を含有し、赤外線を反射する選択反射層が少なくとも2層以上積層されてなるものである。
【0022】
このような赤外線反射層としては、少なくとも2層以上の選択反射層を有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも、3層〜6層の範囲内となる選択反射層を有するものであることが好ましい。上記赤外線反射層の有する選択反射層の数が上記範囲内である場合、優れた赤外線反射機能を有する赤外線反射部材とすることができるからである。
【0023】
また、本発明における赤外線反射層は、上述したように2層以上の選択反射層を有するものであり、上記選択反射層のうち、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層が、最外層となるように配置されるものである。
上述したように赤外線反射層の最外層が、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層となるように配置されることにより、加熱作用効果の高い短波長の赤外線を最先に反射、遮断することが可能となる。そのため、他の選択反射層が最外層となるように配置される場合に比べ、赤外線反射層を介して吸収される熱量を抑制することが可能となり、断熱効果に優れた赤外線反射部材を形成することができる。
また、最も短波長側の波長領域を有する赤外線を反射可能な選択反射層は、他の選択反射層に比べて薄膜形成が可能である。また選択反射層は、上述したように薄膜であるほど配向性に優れる。そのため、複数の選択反射層を直接積層させて赤外線反射層を形成する場合、最外層、すなわち透明基板との距離が離れた位置となるように配置された選択反射層ほど、液晶の配向制御が困難となることから、薄膜形成が可能であり、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層を最外層となるように配置することにより、配向規制力の低下を防ぎ、液晶の配向性に優れた赤外線反射層とすることができる。
【0024】
このような赤外線反射層としては、上述したように、最も短波長側の波長領域を反射可能な選択反射層が、最外層となるように配置されるものであれば特に限定されるものではない。
具体的には、図2において、赤外線反射層3が、選択反射層2a、2b、2cの順に反射可能な波長領域が短波長から長波長となる選択反射層を有する場合、赤外線反射層3は、図2(a)に例示するように、最外層側から、選択反射層2a、2b、2cの順に積層されているものであっても良く、図2(b)に例示するように、選択反射層2a、2c、2bの順に積層されるものであっても良い。
【0025】
この例において、上記赤外線反射層としては、なかでも最外層側から順に、配置される選択反射層の反射可能な波長領域が短波長側から長波長側へとなるように積層されるものが好ましい(図2(a)参照)。熱上昇の寄与度の高い短波長側の赤外線から先に反射できることから、赤外線反射層を介して吸収される熱量を抑制することができるからである。
また、選択反射層が反射可能な赤外線の波長と選択反射層に含有される棒状化合物のコレステリック構造のピッチとが対応することから、上述したように選択反射層が配置される場合、透明基板から離れるほど薄い選択反射層となるように配置することで配向規制力の低下を抑制することができるからである。
したがって、断熱効果および液晶の配向性により優れた赤外線反射層とすることができるからである。
以下、本発明に用いられる選択反射層について詳細に説明する。
【0026】
(1)選択反射層
本発明に用いられる選択反射層は、コレステリック構造を形成する棒状化合物を含有し、赤外線を反射するものである。
また、このような選択反射層としては、棒状化合物の形成するコレステリック構造のピッチに依存して、選択反射される光の波長領域が決定されることになる。
【0027】
(i)棒状化合物
本発明に用いられる棒状化合物について説明する。本発明に用いられる棒状化合物は、選択反射層においてコレステリック構造を形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、通常、屈折率異方性を有するものであり、分子内に重合性官能基を有するものが好適に用いられ、さらに3次元架橋可能な重合性官能基を有するものがより好適に用いられる。上記棒状化合物が重合性官能基を有することにより、上記棒状化合物を重合して固定することが可能となるため、経時変化が生じにくいものとすることができるからである。また、上記重合性官能基を有する棒状化合物と、上記重合性官能基を有さない棒状化合物とを混合して用いても良い。
なお、上記「3次元架橋」とは、棒状化合物を互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることを意味する。
【0028】
ここで、上記重合性官能基としては、例えば、紫外線、電子線等の電離放射線、あるいは熱の作用によって重合する重合性官能基を挙げることができる。これら重合性官能基の代表例としては、ラジカル重合性官能基、あるいはカチオン重合性官能基等が挙げられる。さらにラジカル重合性官能基の代表例としては、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が挙げられ、具体例としては、置換基を有するもしくは有さないビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等が挙げられる。また、上記カチオン重合性官能基の具体例としては、エポキシ基等が挙げられる。その他、重合性官能基としては、例えば、イソシアネート基、不飽和3重結合等が挙げられる。これらの中でもプロセス上の点から、エチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が好適に用いられる。
【0029】
また、棒状化合物は、液晶性を示す液晶性材料であることが好ましく、中でもネマチック液晶性材料であることが好ましい。棒状化合物の具体例としては、下記化学式(1)〜(6)で表される化合物を例示することができる。
【0030】
【化1】

【0031】
ここで、化学式(1)、(2)、(5)および(6)で示される液晶性材料は、D.J.Broerら、Makromol.Chem.190,3201−3215(1989)、またはD.J.Broerら、Makromol.Chem.190,2255−2268(1989)に開示された方法に従い、あるいはそれに類似して調製することができる。また、化学式(3)および(4)で示される液晶性材料の調製は、DE195,04,224に開示されている。
【0032】
また、末端にアクリレート基を有するネマチック液晶性材料の具体例としては、下記化
学式(7)〜(17)に示すものも挙げられる。
【0033】
【化2】

【0034】
さらに、棒状化合物として、SID 06 DIGEST 1673−1676に開示された下記化学式(18)に表わされる化合物を例示することができる。
【0035】
【化3】

【0036】
なお、上記棒状化合物は、1種類のみを用いてもよく、または、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、上記棒状化合物として、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料と、片末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料とを混合して用いると、両者の配合比の調整により重合密度(架橋密度)及び光学特性を任意に調整できる点から好ましい。
【0037】
(ii)カイラル剤
本発明における選択反射層には、上記棒状化合物のコレステリック構造を形成するためにカイラル剤が含有されていても良い。本発明における選択反射層には、通常、このようなカイラル剤が併用されており、上記カイラル剤を含有することにより、カイラルネマチック結晶を固定化されることが可能となる。
【0038】
本発明に用いられるカイラル剤としては、棒状化合物に右旋回性を付与するものであっても良く、または左旋回性を付与するものであっても良い。
【0039】
上記カイラル剤としては、上記棒状化合物を所定のコレステリック配列させることができるものであれば特に限定されるものではない。カイラル剤としては、例えば、下記の一般式(19)、(20)又は(21)で表されるような、分子内に軸不斉を有する低分子化合物を用いることが好ましい。
【0040】
【化4】

【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
上記一般式(19)又は(20)において、Rは水素又はメチル基を示す。Yは上記に示す式(i)〜(xxiv)の任意の一つであるが、中でも、式(i)、(ii)、(iii)、(v)及び(vii)のいずれか一つであることが好ましい。また、アルキレン基の鎖長を示すc及びdは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。
【0044】
また、カイラル剤として、以下のような化学式で表わされるものも用いることができる。
【0045】
【化7】

本発明におけるカイラル剤の含有量としては、棒状化合物および上記カイラル剤の合計に対して、通常1.0質量%〜10.0質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも2.0質量%〜4.0質量%の範囲内であることが好ましい。上記カイラル剤の含有量を上記範囲とすることによって、選択反射層が反射する光の波長を調整することができるからである。
【0046】
(iii)選択反射層
本発明における選択反射層の厚みとしては、選択反射層に所望の選択反射機能を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。このため、選択反射層の厚みは、本発明の赤外線反射部材の用途等に応じて適宜決定されるものであるが、通常は0.1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜20μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜10μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0047】
また、上記選択反射層としては、含有される棒状化合物のコレステリック構造が右旋回性を有するものであっても良く、左旋回性を有するものであっても良く、また両旋回性を有するものが積層されたものであっても良い。
【0048】
(2)任意の構成層
本発明における赤外線反射層は、上述した選択反射層が少なくとも2層以上積層されてなるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の赤外線反射部材の用途等に応じて、他の構成層を形成するものであっても良い。例えば、紫外線吸収層、赤外線吸収層、断熱層、低放射層、配向膜、ガスバリア層、接着層等を挙げることができる。
【0049】
(紫外線吸収層)
本発明に用いられる紫外線吸収層としては、一般的な赤外線反射部材に用いられるものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂等のフィルム中に、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物等を有する紫外線吸収剤を添加して成膜したもの等を挙げることができる。
【0050】
このような紫外線吸収層の形成される位置としては、赤外線反射層における赤外線の反射を阻害しない位置であれば特に限定されるものではないが、例えば、上述した選択反射層より外層となるような位置となることが好ましく、なかでも本発明における赤外線反射層内の最外層となる位置となることが好ましい。紫外線が照射されることによる選択反射層の劣化を抑制することができるからである。
【0051】
(赤外線吸収層)
本発明に用いられる赤外線吸収層としては、所望の赤外線吸収性を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル樹脂等のフィルム基材上に赤外線吸収層を塗工法等により形成したもの等を挙げることができる。
また、本発明に用いられる赤外線反射層がガラス板に挟持される場合、強い衝撃が加わった際にも高い接着性を維持することができる点から、ガラス板と赤外線反射層との間に形成されるポリビニルブチラール(PVB)等の中間層を形成することが好ましく、このようなPVB層内に赤外線吸収剤を含有させたもの等を赤外線吸収層として用いても良い。
【0052】
このような赤外線吸収層に用いられる赤外線吸収剤としては、例えば、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物等を挙げることができる。
また、上記赤外線吸収剤を添加するバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0053】
(断熱層)
本発明に用いられる断熱層としては、本発明の赤外線反射部材を介して外部から内部または内部から外部への熱の伝導を防ぐことができるものであれば特に限定されるものではない。
このような断熱層の形成材料としては、例えば、多孔質材料等の空気を含むことができる材料、中空シリカ、シリカ殻からなるナノ中空粒子等をあげることができる。
【0054】
本発明に用いられる断熱層の形成される位置としては、本発明の赤外線反射部材を使用する際に、上述した選択反射層より外光側とならない位置であれば特に限定されるものではない。選択反射層が、断熱層を介して赤外線を反射すると反射効率が良好とならないためである。
【0055】
(配向膜)
本発明における赤外線反射層としては、配向膜を有していても良い。
本発明に用いられる配向膜としては、本発明における選択反射層内の棒状化合物を所定の方向に安定的に配列されるためのものである。
【0056】
このような配向膜の形成材料としては、公知の配向膜を用いることができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂を用いて形成した配向膜は、ラビング処理等を施しても良い。なお、上記配向膜としては、延伸した樹脂シート等を基板等に接着して形成しても良い。
また、後述する透明基板として配向性を有するものを用いることで、配向膜の機能を兼ねることもできる。
【0057】
(ガスバリア層)
本発明に用いられる赤外線反射層としては、上記赤外線反射層をガラス等のリジット材により挟持されているものでない場合、例えば、上記赤外性反射層の片面のみに透明基板としてガラス等のリジット材が形成される場合等、上記リジット材が形成されていない側にガスバリア層を有していても良い。
【0058】
本発明に用いられるガスバリア層としては、一般的な赤外線反射部材に用いられるものを使用することができる。
【0059】
(接着層)
本発明に用いられる赤外線反射層としては、本発明の赤外線反射部材の製造方法として後述する転写法を用いる場合等に接着層を有していても良い。
このような接着層としては、本発明の赤外線反射部材を構成する各層間を接着できるものであれば特に限定されるものではなく、公知の接着層と同様のものを用いることができる。
【0060】
(3)赤外線反射層
次に、本発明における赤外線反射層について説明する。このような赤外線反射層の反射帯域について図面を参照して説明する。図3は、赤外線反射層による波長と反射率との関係を例示するグラフである。なお、図3に示された「地上での太陽光スペクトル」は、温帯における地上での平均的太陽光の輻射エネルギー(Wm−2/nm)の分布を示すものである(AM1.5G)。また、地球軌道上での太陽光スペクトル(AM0)では、輻射エネルギーの分布はなだらかになるが、輻射エネルギーは大気中での反射、散乱、吸収等により減衰する。その結果、地上では、図3に示すような太陽光スペクトルが得られる。なお、本明細書においては、「地上での太陽光スペクトル」を単に「太陽光スペクトル」と称する場合がある。
【0061】
また本発明における赤外線反射層は、太陽光スペクトルの赤外領域(λ=800nm以上の領域)で最も短波長側に位置する領域を選択反射する選択反射層を有することが好ましい。図3に例示するように、太陽光スペクトルの赤外領域においては、短波長側であるほど輻射エネルギーが高い、すなわち加熱作用効果が高い傾向にあることから、最も短波長側に位置する領域を選択反射できることにより、断熱効果をより向上させることができるからである。
【0062】
また本発明における赤外線反射層は、上述した選択反射層のうち、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層が最外層となるように配置されるものであれば特に限定されるものではない。
このような赤外線反射層の最外層となる選択反射層が反射可能な赤外線の波長領域としては、650nm〜1500nmの範囲内であることが好ましく、中でも650nm〜1000nmの範囲内であることがより好ましく、750nm〜900nmの範囲内であることが特に好ましい。
上記波長領域が上記範囲に満たない場合、可視光線の波長領域の光を反射する可能性を有し、赤外線反射部材が赤みがかり、赤外線反射部材を介した視認性が低下する可能性を有するからである。また一方、上記波長領域が上記範囲より大きい場合、赤外線反射機能が低下してしまう可能性を有するからである。
【0063】
なお、本発明に用いられる赤外線反射層としては、上述したように、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層が最外層となるように配置されるものであれば特に限定されるものではないが、上記赤外線反射層を構成する選択反射層が赤外領域に反射ピークを有することが特に好ましい。反射ピークを赤外領域外に有する選択反射層は、反射可能な波長領域として可視光領域を含む可能性を有するからである。その場合、本発明の赤外線反射部材が赤みがかり、赤外線反射部材を介した視認性が低下する恐れがあるからである。
【0064】
さらに本発明に用いられる赤外線反射層としては、太陽光スペクトルの赤外領域で最も短波長側に位置するピークを含む第一輻射エネルギー帯域の赤外線を反射可能な選択反射層を有することが好ましい。ここで、図3に示すように、第一輻射エネルギー帯域21は、通常、波長1010nm付近にピークを有し、その波長領域は950nm〜1150nmの範囲内となるものである。なお、上記選択反射層の反射可能な波長領域(以下、第一反射帯域として説明する場合がある。)としては、第一反射帯域内における最大反射率を与える波長が、第一輻射エネルギー帯域の波長領域内にあるものが好ましく、第一輻射エネルギー帯域のピーク波長の近傍であることがより好ましい。
【0065】
上述したような第一反射帯域としては、上記第一輻射エネルギー帯域の赤外線を反射できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、上記最大反射率の半値の反射率を与える短波長側の波長が900nm〜1010nmの範囲内となり、同様に上記最大反射率の半値の反射率を与える長波長側の波長が、1010nm〜1210nmの範囲内となるもの等を挙げることができる。第一輻射エネルギー帯域に含まれる赤外線を効率良く反射することができるからである。
【0066】
さらに、本発明に用いられる赤外線反射層としては、上述した第一反射帯域を有する選択反射層に加えて、太陽光スペクトルの赤外領域で二番目に短波長側に位置するピークを含む第二輻射エネルギー帯域の赤外線を反射可能な選択反射層を有するものであっても良い。なお、上記選択反射層の反射可能な波長領域を第二反射帯域とする。
ここで、図3に例示するように、第二輻射エネルギー帯域22は、通常、波長1250nm付近にピークを有し、その波長領域は1150nm〜1370nmとなるものである。また、第二反射領域としては、第二反射帯域内における最大反射率を与える波長が、第二輻射エネルギー帯域の波長領域内にあるものが好ましく、第二輻射エネルギー帯域のピークの波長の近傍であることがより好ましい。
【0067】
2.透明基板
次に、本発明に用いられる透明基板について説明する。本発明に用いられる透明基板は、上述した赤外線反射層を支持できるものであれば特に限定されるものではない。中でも本発明に用いられる透明基板は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基板の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0068】
上記透明基板としては、所望の透明性を具備するものであれば、可撓性を有するフレキシブル材であっても良く、可撓性のないリジッド材であっても良い。このような透明基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂からなるものを挙げることができる。なかでも本発明においては、ポリエチレンテレフタレートからなる透明基板を用いられることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートは汎用性が高く、入手が容易であるからである。
また、上記透明基板としてガラス等のリジット材を用い、選択反射層の片面または両面にリジット材を配置しても良い。
【0069】
また本発明に用いられる透明基板としては、配向性を有するものであることが好ましい。透明基板が配向性を有することにより、上述した赤外線反射層を構成する選択反射層の配向性を維持することができるからである。
このような配向性を有する透明基板としては、例えば、高分子延伸フィルム等を挙げることができ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂からなる延伸フィルム等を好適に用いることができる。
【0070】
なお、上記透明基板の厚みについては、赤外線反射部材の用途および透明基板を構成する材料等に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではない。
【0071】
3.赤外線反射部材
本発明の赤外線反射部材の用途としては、太陽光に含まれる赤外線(熱線)を効率良く反射することができることから、例えば、車両用の熱線反射ガラス、建築用の熱線反射ガラス、太陽電池用の熱線反射フィルム等を挙げることができる。
【0072】
また、本発明の赤外線反射部材としては、ガラス等のリジット材が、上述した赤外線反射層の両面または片面に配置されたものであっても良い。なお、上記赤外線反射層の片面のみに配置される場合、上記リジット材を配置していない側に上述したガスバリア層を形成しても良い。
【0073】
本発明における赤外線反射部材の製造方法は、上述した赤外線反射部材を得られる方法であれば特に限定されるものではない。このような赤外線反射部材の製造方法としては、例えば、棒状化合物およびカイラル剤を含有する選択反射層形成用塗工液を調製し、順次塗布し、必要に応じて紫外線照射等の硬化処理を施すことにより、透明基材上または下層となる他の選択反射層上に直接積層して形成する方法(直接積層法)であっても良く、予め別途他の支持体上に形成した選択反射層を、接着層等を介して、透明基材上または下層となる選択反射層上に積層して形成する方法(転写法)であっても良いが、工程数を減少させる等の生産性向上の観点、および接着層等を介さないことから薄膜化が可能となる観点から直接積層法を好適に用いることができる。
【0074】
ここで、透明基材上または下層となる他の選択反射層上に、選択反射層形成用塗工液を塗布する方法としては、一般的な塗布法を用いることができ、具体的にはバーコート法、スピンコート法、ブレードコート法等を挙げることができる。また、通常は、透明基板上に塗布した選択反射層形成用塗工液を乾燥し、溶媒を除去することにより、選択反射層形成用塗工液からなる塗膜を得る。
【0075】
選択反射層形成用塗工液からなる塗膜に照射するエネルギーの種類は、棒状化合物の分子内に含まれる重合性官能基の種類によって異なるものであるが、例えば、紫外線、電子線等の電離放射線、および熱等を挙げることができる。エネルギー照射の強度は、塗膜を実質的に硬化できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、棒状化合物の種類等に応じて適宜決定されるものである。上記エネルギーとして紫外線が用いられる場合、通常、照射強度は400mJ/cm以上であることが好ましく、600mJ/cm以上であることがより好ましく、800mJ/cm以上であることがさらに好ましい。
【0076】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0078】
[実施例1]
(シクロヘキサノン溶液の調製)
棒状化合物として、上記化学式(15)で示される化合物95.3部と、カイラル剤(CNL−715、ADEKA社製)4.7部とを溶解させたシクロヘキサノン溶液を準備した。なお、上記シクロヘキサノン溶液には、棒状化合物に対して、5.0重量%の光重合開始剤(イルガキュア184)、および0.03重量%のレベリング剤(BYK361N、ビックケミー・ジャパン社製)を添加した(固形分20重量%)。この溶液をシクロヘキサノン溶液Aとした。
【0079】
棒状化合物として、上記化学式(15)で示される化合物95.81部と、カイラル剤(CNL−715、ADEKA社製)4.19部とを溶解させたシクロヘキサノン溶液を準備した。なお、上記シクロヘキサノン溶液には、棒状化合物に対して、5.0重量%の光重合開始剤(イルガキュア184)、および0.03重量%のレベリング剤(BYK361N、ビックケミー・ジャパン社製)を添加した(固形分20重量%)。この溶液をシクロヘキサノン溶液Bとした。
【0080】
(赤外線反射部材の作製)
透明基板として、ポリエチレンテレフタレートからなる二軸延伸フィルムを準備した。上記二軸延伸フィルムに、配向膜を介さずにバーコーターにて、上記シクロヘキサノン溶液Bを塗布した。次いで、80℃で2分間保持し、シクロヘキサノン溶液中のシクロヘキサノンを蒸発させて、棒状化合物を配向させ塗膜を形成した。そして得られた塗膜に、紫外線を照射し(400mJ/cm)、二軸延伸フィルム上にコレステリック構造を固定化することにより、1層目の選択反射層を形成した。次に、同様に、上記1層目の選択反射層上に、上記シクロヘキサノン溶液Aを塗布して2層目の選択反射層を形成した。これにより、2層の選択反射層が積層されてなる赤外線反射層を有する赤外線反射部材を得た。
【0081】
[実施例2]
(シクロヘキサノン溶液の調製)
棒状化合物として、上記化学式(15)で示される化合物95.3部と、カイラル剤(CNL−716、ADEKA社製)4.7部とを溶解させたシクロヘキサノン溶液を準備した。なお、上記シクロヘキサノン溶液には、棒状化合物に対して、5.0重量%の光重合開始剤(イルガキュア184)、および0.03重量%のレベリング剤(BYK361N、ビックケミー・ジャパン社製)を添加した(固形分20重量%)。この溶液をシクロヘキサノン溶液Cとした。また、実施例1と同様に、シクロヘキサノン溶液AおよびBを調製した。
【0082】
(赤外線反射部材の作製)
透明基板として、ポリエチレンテレフタレートからなる二軸延伸フィルムを準備した。上記二軸延伸フィルム上に、ポリイミド材料をバーコーターにて成膜し、一定方向にラビング処理を行い、配向膜を形成した。次に、二軸延伸フィルムに形成された配向膜を介してバーコーターにて、上記シクロヘキサノン溶液Cを塗布した。次いで、80℃で2分間保持し、シクロヘキサノン溶液中のシクロヘキサノンを蒸発させて、棒状化合物を配向させ塗膜を形成した。そして得られた塗膜に、紫外線を照射し(400mJ/cm)、二軸延伸フィルム上にコレステリック構造を固定化することにより、1層目の選択反射層を形成した。次に、同様に、上記1層目の選択反射層上に、上記シクロヘキサノン溶液Bを塗布して2層目の選択反射層を形成した。さらに、2層目の選択反射層上に、シクロヘキサノン溶液Aを塗布して同様に、3層目の選択反射層を形成した。これにより、3層の選択反射層が積層されてなる赤外線反射層を有する赤外線反射部材を得た。
【0083】
[実施例3]
(シクロヘキサノン溶液の調製)
棒状化合物(Palicolor(登録商標) LC1057、BASF社製)96.0部と、カイラル剤(Palicolor(登録商標) LC756、BASF社製)4.0部とを溶解させたシクロヘキサノン溶液を準備した。なお、上記シクロヘキサノン溶液には、棒状化合物に対して、5.0重量%の光重合開始剤(イルガキュア184)、および0.03重量%のレベリング剤(BYK361N、ビックケミー・ジャパン社製)を添加した(固形分20重量%)。この溶液をシクロヘキサノン溶液Dとした。また、実施例1と同様に、シクロヘキサノン溶液Bを調製した。
【0084】
(赤外線反射部材の作製)
1層目の選択反射層形成時にシクロヘキサノン溶液Bを用い、2層目の選択反射層形成時にシクロヘキサノン溶液Dを用いた以外は、実施例1と同様に、赤外線反射部材を作製した。
【0085】
[実施例4]
(シクロヘキサノン溶液の調製)
棒状化合物として、上記化学式(15)で示される化合物97.0部と、カイラル剤(CNL−715、ADEKA社製)3.0部とを溶解させたシクロヘキサノン溶液を準備した。なお、上記シクロヘキサノン溶液には、棒状化合物に対して、5.0重量%の光重合開始剤(イルガキュア184)、および0.03重量%のレベリング剤(BYK361N、ビックケミー・ジャパン社製)を添加した(固形分20重量%)。この溶液をシクロヘキサノン溶液Eとした。また、実施例1と同様に、シクロヘキサノン溶液Aを調製した。
【0086】
(赤外線反射部材の作製)
1層目の選択反射層形成時にシクロヘキサノン溶液Eを用い、2層目の選択反射層形成時にシクロヘキサノン溶液Aを用いた以外は、実施例1と同様に、赤外線反射部材を作製した。
【0087】
[比較例]
1層目の選択反射層形成時にシクロヘキサノン溶液Aを用い、2層目の選択反射層形成時に、シクロヘキサノン溶液Bを用いた以外は、実施例1と同様に、赤外線反射部材を作製した。
【0088】
[評価]
実施例1〜実施例4、および比較例において作製された赤外線反射部材について、ISO13837に記載の測定方法に基づいて、太陽光直接透過率(TDS)および太陽光反射率(RDS)を測定した。具体的には、分光器による測定された値に重価係数を乗じて算出することができる。
各赤外線反射部材に含まれる上記太陽光直接透過率および上記太陽光反射率の測定結果から、下記式(A)を用いてTts値を求めた(風速4m/s)。
なお、Tts値とは、透過率および輻射熱の指標となるものである。ここで、輻射熱とは吸収された熱が放射される際に発生する熱であるため、Tts値が低いほど断熱効果は高くなると考えられる。
【0089】
【数1】

【0090】
実施例1〜実施例4、および比較例で作製された赤外線反射部材について、各赤外線反射部材が有する選択反射層の反射ピークを示す波長と、算出したTts値と、配向膜の有無とを表1に示す。なお、括弧内の表記は選択反射層の有する旋回性を示すものである。
【0091】
【表1】

【0092】
表1に示すように、複数の選択反射層のうち、最も短波長側に反射ピークを有するもの、すなわち、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層が最外層となる実施例1〜実施例4で作製された赤外線反射部材は、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層が最外層となっていない比較例に比べてTtsの値が低いことが確認できた。そのため、実施例1〜4で作製された赤外線反射部材では、比較例1で作製された赤外線反射部材と比較して、より高い加熱作用効果を有する短波長側の赤外線を効果的に反射可能であると考えられ、高い断熱効果を有することが示唆された。また、実施例1〜実施例4を比較すると、選択反射層が3層積層されてなる実施例2が最もTtsの値が低くなることが確認できた。そのため、実施例2がより高い断熱効果を有することが示唆された。
さらに、実施例1および実施例3を比較すると、1層目の選択反射層は同様のシクロヘキサノン溶液を用いて形成されるものであり、2層目の選択反射層は、異なるシクロヘキサノン溶液を用いて形成されたものである。実施例1および実施例3のTts値を比較すると、大きな差は認められなかった。これより、同様の反射ピークを示す選択反射層においては、棒状化合物およびカイラル剤の種類が、Tts値の変化に及ぼす影響は大きくないと考えられる。
【符号の説明】
【0093】
1 … 透明基板
2a、2b、2c … 選択反射層
3 … 赤外線反射層
10 … 赤外線反射部材
11 … 赤外線
21 … 第一輻射エネルギー帯域
22 … 第二輻射エネルギー帯域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板上に形成され、コレステリック構造を形成する棒状化合物を含有し、赤外線を反射する選択反射層が少なくとも2層以上積層されてなる赤外線反射層と、
を有する赤外線反射部材であって、
前記選択反射層のうち、最も短波長側の赤外線を反射可能な選択反射層が、前記赤外線反射層の最外層となるように配置されることを特徴とする赤外線反射部材。
【請求項2】
前記赤外線反射層の最外層となる選択反射層が反射可能な赤外線の波長領域が650nm〜1500nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線反射部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−76903(P2013−76903A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217507(P2011−217507)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】