説明

赤外線式ガスセンサ

【課題】光源から赤外線検知素子に入射する赤外線のオン・オフを切り換える場合に、従来の構成に簡易な構成を付加するのみで、精度良く好適に特定成分の検出が可能な赤外線式ガスセンサを提供すること。
【解決手段】スイッチ59によって、白色光源5の電源のオン・オフを切り換える場合には、同じスイッチ59の動作によって、演算増幅器47の反転入力端子43に対する入力オフセット電圧の印加状態も切り換えて、非反転増幅器51の出力電圧Voのオフセット電圧の印加・非印加を切り換える。これにより、光源のオン・オフに伴ってオフセット電圧も変化するので、光源off時のセンサ出力と光源on時のセンサ出力との差ΔVoから、特定成分の濃度を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空調管理、工業プロセスの雰囲気の管理、種々の気体の漏洩検知などに適用できるガスセンサ、詳しくは、赤外線の吸収状態から特定のガス成分を検出する赤外線式ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、白色電源と波長選択フィルタと赤外線検知素子からなる非分散型赤外線吸収式(NDIR)のガスセンサである赤外線式ガスセンサが知られている(特許文献1参照)。
この種の赤外線式ガスセンサは、通常、離間して配置された白色光源及び赤外線検知素子と、両者の間に配置された波長選択フィルタによって形成されており、波長選択フィルタとしては、測定の対象である特定成分(対象ガス)が吸収する特定吸収帯域の波長を通過させるバンドパスフィルタ等のフィルタが用いられる。
【0003】
この赤外線式ガスセンサでは、白色光源と波長選択フィルタとの間に、特定成分を含む被測定ガスを導入し、白色光源から発生される広範なスペクトルをもつ電磁波のうち、波長選択フィルタを透過した特定波長域(即ち特定成分の特定吸収帯域)の赤外線のみが、赤外線検知素子に入射するように構成されている。
【0004】
以下、従来の赤外線式ガスセンサの原理や構成等について詳しく説明する。
赤外線検知素子に入射する赤外線の強度(I)は、近似的に下記の式(X)で表される。なお、この式(X)は、よく知られているランバート・ベールの方式から派生したものである。

I=I0{(1−x)+x・exp(−a・CgL)}・・(X)
I :入射強度
0:特定成分が存在していないときの入射強度
x :特定成分が含まれていない状態で、
入射光のうち特定成分に吸収される波長の光の割合
a :特定成分のモル吸収係数
g:特定成分の濃度
L :光路長さ

従って、この赤外線式ガスセンサでは、波長選択フィルタを通過する赤外線の帯域が、事実上特定成分によってのみ吸収される帯域と概ね一致するので、赤外線検知素子の出力を適宜演算することにより、白色光源と赤外線検知素子(詳しくは波長選択フィルタ)との間の空間に存在する特定成分の濃度を求めることができる。
【0005】
また、従来の赤外線式ガスセンサでは、光源以外の物体に由来する赤外線の影響を補償するために、一般的に、赤外線が赤外線検知素子に断続的に入射するように構成される。この赤外線を断続的入射させる方法としては、光源と赤外線検知素子との間に、風車状の機械的なチョッパーを配置したり、回路制御によって光源を周期的に点滅させるのが一般的である。
【0006】
ところで、赤外線検知素子の出力は、一般的に小さいため、出力を倍増する必要がある。つまり、検知対象である特定成分や光学系の構成、赤外線検知素子の特性により必要な利得(ゲイン)は異なるが、数百倍〜数千倍の利得が必要となることも珍しくない。
【0007】
この赤外線検知素子の出力を増幅するために、演算増幅器を用いた一般的な増幅回路(例えば非反転増幅回路)を用いる場合、想定し得る素子出力の最大値が入力されたときに、演算増幅器の出力が飽和しないように、利得を設定する。
【0008】
しかしながら、赤外線式ガスセンサの出力変化率、即ち、前記式(X)の(I0−I)/I0の変化が小さい場合があり、出力飽和を回避できる程度の利得値では、分解能が不十分である場合がある。その場合は、高ビット数のマイコンでデータを処理することも考えられるが、高ビット数のマイコンは高価である。
【0009】
この対策として、周知のオフセット増幅を行うことが考えられる(特許文献2、非特許文献1参照)。このオフセット増幅の技術では、非反転増幅回路の演算増幅器の反転入力端子に、所定の電圧(入力オフセット電圧)を印加することにより、出力電圧に(出力電圧をオフセット量だけマイナス側にシフトさせる)オフセット電圧を設定している。つまり、この非反転増幅回路の出力電圧は、(オフセット電圧が設定されていない場合に比べて)オフセット電圧だけ低くなるので、大きな利得を設定した場合でも出力飽和に到ることがなく、十分な分解能が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭61−020840号公報
【特許文献2】特開2003−121559号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】続OPアンプ回路の設計:CQ出版株式会社、昭和54年発行(第41頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述した赤外線式ガスセンサにおいては、周囲環境に由来する赤外線の影響を避けるために、また、測定環境の変化を補償するために、光が入射している状態(光源on(オン)時)と光が入射していない状態(光源off(オフ)時)とのそれぞれの状態において、赤外線検知素子の出力(従って増幅後の出力)を測定する必要がある。
【0013】
しかしながら、赤外線検知素子の出力は、光源on時と光源off時とでは出力電圧が大きく異なる。例えば図14に示す様に、赤外線検知素子における、光源on時の出力(Vr on)と光源off時の出力(Vr off)の出力とは大きく異なる。なお、同図のΔVrは、光源on時の出力と光源off時の出力との差であり、通常は、このΔVrに基づいて濃度算出を行う。
【0014】
よって、光源on時及び光源off時の両方とも、(増幅後の)出力電圧を所定の出力範囲(例えば0V〜演算増幅器の電源電圧)内に収まるようにすると、出力変化を読み取るのに十分な利得値を設定できない場合がある。
【0015】
そのため、光源on時と光源off時との両方で、十分な利得で出力変化を読み取るには、光源on時と光源off時とで、例えば同じ利得で且つ異なるオフセット電圧(例えば出力電圧をマイナス側にシフトさせるオフセット電圧)を設定することが必要である場合がある。
【0016】
例えば出力電圧に上述したオフセット電圧を設定する場合には、周知の演算増幅器の反転入力端子に入力オフセット電圧をかければよく、光源on時と光源off時とで異なる入力オフセット電圧をかけるには、光源のオン・オフに連動して、入力オフセット電圧を変化させればよい。
【0017】
しかしながら、入力オフセット電圧の電源を新たに設けたり、更には、光源のオン・オフに同期させて入力オフセット電圧を変化させる回路を組み込むことは、コストの増大を招くという問題がある。
【0018】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、光源から赤外線検知素子に入射する赤外線のオン(入射)・オフ(入射停止)を切り換える場合に、従来の構成に簡易な構成を付加するのみで、精度良く好適に特定成分の検出が可能な赤外線式ガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(1)本発明は、第1態様として、赤外線を放射する光源と、被測定ガス中の測定対象である特定成分が吸収する特定吸収帯域の波長を通過させる赤外線選択手段と、前記光源から放射され、前記被測定ガス及び前記赤外線選択手段を透過した赤外線が入射する赤外線検知素子と、前記光源の電源をオン・オフするスイッチと、前記赤外線検知素子の出力電圧を増幅する増幅回路と、を備え、前記増幅された出力電圧に基づいて、前記特定成分を検出する赤外線式ガスセンサであって、前記増幅回路は、前記増幅を行うとともに、外部からの入力オフセット電圧の印加によって、自身の出力電圧を所定のオフセット量分低下させるオフセット増幅回路であり、前記光源の電源電圧を用いて前記オフセット増幅回路に入力オフセット電圧を印加する電圧印加回路を備えるとともに、前記スイッチは、前記電圧印加回路をオン・オフするように接続されており、前記スイッチによって、前記光源の電源のオン・オフを切り換えるとともに、前記電圧印加回路をオン・オフして前記オフセット増幅回路に対する前記入力オフセット電圧の印加状態を切り換えて、前記オフセット増幅回路の出力電圧のオフセット量を調節し、前記スイッチの切り換えに伴う前記出力電圧の変化に基づいて、前記特定成分を検出することを特徴とする。
【0020】
本第1態様では、スイッチによって、光源の電源のオン・オフを切り換える場合には、同じスイッチの動作によって、オフセット増幅回路に対する入力オフセット電圧の印加状態も切り換えて、オフセット増幅回路の出力電圧のオフセット量を変更する。
【0021】
つまり、本第1態様では、1つのスイッチという簡易な構成を用いて、電源のオン・オフとオフセット量の変更(例えばオフセット電圧の設定・非設定)とを同時に行うことができ、しかも、その光源のオン・オフに伴ってオフセット量も変化するので、これらの変更によって変化するセンサ出力から、容易に特定成分の検出を行うことができる。
【0022】
なお、特定成分の検出には、特定成分の有無だけはなく、その濃度の検出も含まれる。
(2)本発明は、第2態様として、赤外線を放射する光源と、被測定ガス中の測定対象である特定成分が吸収する特定吸収帯域の波長を通過させる赤外線選択手段と、前記光源から放射され、前記被測定ガス及び前記赤外線選択手段を透過した赤外線が入射する赤外線検知素子と、前記赤外線の前記赤外線検知素子への入射状態を、入射と遮断とに切り換える切換手段と、前記切換手段を駆動する電源をオン・オフするスイッチと、前記赤外線検知素子の出力電圧を増幅する増幅回路と、を備え、前記増幅された出力電圧に基づいて、前記特定成分を検出する赤外線式ガスセンサであって、前記増幅回路は、前記増幅を行うとともに、外部からの入力オフセット電圧の印加によって、自身の出力電圧を所定のオフセット量分低下させるオフセット増幅回路であり、前記切換手段を駆動する電源電圧を用いて前記オフセット増幅回路に入力オフセット電圧を印加する電圧印加回路を備えるとともに、前記スイッチは、前記電圧印加回路をオン・オフするように接続されており、前記スイッチによって、前記切換手段の電源のオン・オフを切り換えるとともに、前記電圧印加回路をオン・オフして前記オフセット増幅回路に対する前記入力オフセット電圧の印加状態を切り換えて、前記オフセット増幅回路の出力電圧のオフセット量を調節し、前記スイッチの切り換えに伴う前記出力電圧の変化に基づいて、前記特定成分を検出することを特徴とする。
【0023】
本第2態様では、スイッチによって、切換手段(例えばシャッタ)を駆動する電源のオン・オフを切り換える場合には、同じスイッチの動作によって、オフセット増幅回路に対する入力オフセット電圧の印加状態も切り換えて、オフセット増幅回路の出力電圧のオフセット量を変更する。
【0024】
つまり、本第2態様では、1つのスイッチという簡易な構成を用いて、切換手段の電源のオン・オフとオフセット量の変更(例えばオフセット電圧の設定・非設定)とを同時に行うことができ、しかも、その電源のオン・オフに伴ってオフセット量も変化するので、これらの変更によって変化するセンサ出力から、容易に特定成分の検出を行うことができる。
【0025】
ここで、電源をオンした場合に、赤外線の入射を遮断するように切換手段を駆動するように構成してもよく、或いはその逆に、電源をオフした場合に、赤外線の入射を遮断するように切換手段を駆動するように構成してもよい。
【0026】
なお、特定成分の検出には、特定成分の有無だけはなく、その濃度の検出も含まれる。
(3)本発明は、第3態様として、前記オフセット増幅回路は、前記赤外線検知素子の出力側が非反転入力端子に接続されるとともに、前記電圧印加回路が反転入力端子に接続された演算増幅器を備えた非反転増幅回路であることを特徴とする。
【0027】
本発明は、オフセット増幅回路を例示したものである。このオフセット増幅回路の演算増幅器では、赤外線検知素子の出力側が非反転入力端子に接続されるとともに、電圧印加回路が反転入力端子に接続されている。
【0028】
従って、赤外線検知素子の出力が所定の増幅率で増幅されるとともに、電圧印加回路によって加えられた入力オフセット電圧によりオフセット量が設定されるので、増幅された出力電圧は、オフセット量だけオフセットすることになる。
【0029】
例えばオフセットがない場合の(増幅された)出力電圧が4Vの場合に、オフセット量が−1Vに設定された時には、実際の出力電圧は(4−1)の3Vとなる。
(4)本発明では、第4態様として、前記電源をオンした場合の前記オフセット増幅回路の出力電圧と前記電源をオフした場合の前記オフセット増幅回路の出力電圧との差に基づいて、前記特定成分の濃度を求めることを特徴とする。
【0030】
これにより、バックグラウンドの影響を除去して、精度良く特定成分の濃度を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の赤外線式ガスセンサの電気的な構成例を示す回路図である。
【図2】(a)はオフセット増幅無しの場合のセンサ出力を示すグラフ、(b)はオフセット増幅有りの場合のセンサ出力を示すグラフである。
【図3】(a)は実施例1の赤外線式ガスセンサを軸方向に沿って破断して示す説明図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図4】実施例1の赤外線式ガスセンサの電気的な構成例を示す回路図である。
【図5】特定成分の濃度を検出する濃度測定処理を示すフローチャートである。
【図6】赤外線式ガスセンサの電気的信号を示すタイミングチャートである。
【図7】実施例2の赤外線式ガスセンサの電気的な構成例を示す回路図である。
【図8】実験例における実施例1の赤外線式ガスセンサのセンサ出力を示すグラフである。
【図9】実験例における実施例2の赤外線式ガスセンサのセンサ出力を示すグラフである。
【図10】(a)は実施例3の赤外線式ガスセンサを軸方向に沿って破断して示す説明図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図11】実施例3の赤外線式ガスセンサの電気的な構成例を示す回路図である。
【図12】実施例4の赤外線式ガスセンサを軸方向に沿って破断して示す説明図である。
【図13】実施例4の赤外線式ガスセンサの電気的な構成例を示す回路図である。
【図14】従来の赤外線式ガスセンサのセンサ出力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
まず、本発明の赤外線式ガスセンサの原理及び電気的な構成例について説明する。
なお、ここでは、光源の電源を利用してオフセット電圧を設定する場合を例に挙げるが、他のシャッタ等の様に光路を遮る切換手段を駆動する電源でも同様である。
【0033】
例えば図1に示す様に、赤外線式ガスセンサは、反転入力端子及び非反転入力端子を有する増幅回路と帰還抵抗R2(抵抗値R2)とから構成された非反転増幅回路を有するセンサ回路を備えている。なお、帰還抵抗R2には接続点P1を介して直列に抵抗R3(抵抗値R3)が接続されている。
【0034】
このセンサ回路では、(光源の電源電圧VLを有する光源電源の)光源電源端子T1が、スイッチSと接続点P2と抵抗R1(抵抗値R1)と接続点P1とを介して反転入力端子に接続されている。
【0035】
また、光源の負側端子T2の電圧(ベース電圧)がVCとなるように、負側端子T2には、定電圧電源が接続されている。
更に、スイッチSは、光源(点灯時の抵抗Rs、消灯時の抵抗RL)と接続点P3とを介して負側端子T2に接続されており、前記抵抗R3は、両接続点P1、P3に接続されている。なお、負側端子T2を接地して、VC=0Vとしてもよい。
【0036】
ここで、図1に示すセンサ回路の出力Vo等を計算すると、下記式(1)〜(6)の様になる。
【式1】
【0037】

【0038】
なお、Vi :(増幅前の)赤外線検知素子の出力
Vooff:(増幅後の)光源off時のセンサ出力
Voon :(増幅後の)光源on時のセンサ出力
ΔVoff:光源off時のオフセット電圧
off :光源off時の利得(ゲイン)
ΔVon :光源on時のオフセット電圧
on :光源on時の利得(ゲイン)
Rs :光源on時の光源の抵抗
L :光源off時の光源の抵抗
L :光源への印加電圧
C :負側端子に常時印加される定電源電圧のベース電圧

ここで、光源off時の抵抗RLと光源への印加電圧VLは、光源の選択と必要な光量によって決められる値であり、自由度はそれほど高くない。
【0039】
一方、常時印加される定電源電圧のベース電圧VC、演算増幅器に接続される抵抗R1、R2、R3の自由度は比較的高い。従って、抵抗R1、R2、R3を適切な値に設定することにより、オフセット電圧とゲインを適宜調整することができる。
【0040】
なお、光源off時と光源on時とのゲインは、演算の容易化のために、同じ値に設定することが望ましい。ここで、上記各式において、R1>>Rsであれば、実質的にGon=Goffと見なすことができ、Rsは、通常、数十Ωであるので、R1>>Rsの条件は、容易に達せられる。
【0041】
特に、本発明では、(説明を容易にするために、VC=0Vの場合を例に挙げるが)光源の電源をオン・オフするスイッチSと演算増幅器の反転入力端子とを接続し、スイッチSをオン・オフすることにより、光源をオン・オフするとともに、光源の電源電圧VL(詳しくは電源電圧VLによる入力オフセット電圧)の演算増幅器の反転入力端子への印加状態を、入力オフセット電圧の印加又は非印加の状態に切り換えている。
【0042】
これにより、例えば図2(a)に(VC=0Vの場合を)示す様に、スイッチSをオフしている場合には、光源からは赤外線は放射されず、よって、赤外線検知素子の出力電圧Viは小さな値となる。そして、このスイッチSのオフのときには、光源の電源電圧VLは演算増幅器の反転入力端子へ入力されないので、非反転増幅回路における出力電圧Voには、オフセット電圧が印加されない。
【0043】
従って、出力電圧Voは、(小さな)赤外線検知素子の出力電圧Viを、所定の増幅率で増幅した値Vooffとなる。
一方、例えば図2(b)に(VC=0Vの場合を)示す様に、スイッチSをオンした場合には、光源からは赤外線が放射されるので、赤外線検知素子の出力電圧Viは(スイッチSのオフに比べて)大きな値となる。そして、このスイッチSのオンのときには、光源の電源電圧VLは演算増幅器の反転入力端子へ入力されるので、非反転増幅回路における出力電圧Voには、(マイナスの)オフセット電圧が印加されることになる。
【0044】
従って、出力電圧Voは、(大きな)赤外線検知素子の出力電圧Viを、所定の増幅率で増幅した(スイッチSのオフに比べて)大きな値となるが、この場合には、前記オフセット電圧が設定されているので、出力電圧Voの値自体は、単に所定の増幅率で増幅した場合に比べて小さな値Voonとなり、出力の飽和(上限値に到ること)を避けることができる。
【0045】
つまり、本発明では、スイッチSをオン・オフすることにより、光源のオン・オフとオフセット電圧のオン・オフとを連動させることにより、赤外線検知素子の出力を同様な増幅率で増幅しても、出力が飽和することなく、好適にセンサ出力(Vooff、Voon)を得ることができる。なお、センサ出力とは、非反転増幅回路における出力電圧を指すものである。
【0046】
よって、スイッチSのオン・オフに伴うセンサ出力の変化に基づいて、バックグラウンドを消去し、大きな増幅率にて、精度良く好適に特定成分の有無や濃度等を求めることができる。
【実施例1】
【0047】
次に、本発明の赤外線式ガスセンサの具体例について説明する。
a)まず、本実施例の赤外線式センサの構成等について説明する。
図3に示す様に、本実施例の赤外線式ガスセンサ1は、非分散型赤外線吸収式(NDIR)ガスセンサである。
【0048】
この赤外線式ガスセンサ1は、先端側(図3(a)左側)が閉塞された円筒形状の容器3と、容器3の先端側に配置された白色光源5と、容器3の後端側に容器3を閉塞するように配置された基部7とを備えている。以下、詳細に説明する。
【0049】
前記容器3は、測定対象である特定成分を含む被測定ガスを充填する非透光性の材質(例えばアルミニウム合金)からなる容器3であり、その側壁9には、被測定ガスの導入や排出を行う複数の通気孔11、13が形成されている。
【0050】
前記基部7は、非透光性の例えばステンレスからなるキャップ15と、TOパッケージ17とから構成されており、その内部空間19が密閉されている。なお、TOパッケージ17以外に、セラミックパッケージを使用することもできる。
【0051】
このうち、キャップ15は、容器3の軸中心に垂直の円盤部21と、円盤部21の外周端から後端側に伸びる筒状部23とから構成されている。この円盤部21の中央に開けられた開口部25には、該開口部25を覆う様に、後述する特定の帯域の赤外線のみを透過させる波長選択フィルタ27が配置されている。なお、波長選択フィルタ27の種類としては、特に制限はなく、サファイア、石英ガラス、シリコン、ゲルマニウム、セレン化亜鉛などの赤外線透過材料からなる基板の表面に、複数の透明膜を積層したものを採用できる。
【0052】
また、TOパッケージ17の先端側の表面の中央には、入射する赤外線の強度に応じた電圧を出力する赤外線検知素子29が配置されている。なお、赤外線検知素子29の種類としては、特に制限はなく、焦電センサ、サーモパイルセンサ、フォトダイオード等、一般に用いられる赤外線センサを使用できる。
【0053】
なお、白色光源5にも特に制限はなく、電球や発熱抵抗体を使用できる。
本実施例の赤外線式ガスセンサ1では、白色光源5と波長選択フィルタ27と赤外線検知素子19とは、容器3の軸中心に沿って配置されている。つまり、白色光源5から照射された赤外線が、容器3内に導入された被測定ガス中を透過し、波長選択フィルタ27を介して、赤外線検知素子29に入射するように配置される。
【0054】
この波長選択フィルタ27を通過できる光(即ち赤外線)の帯域(通過帯域)は、濃度を測定する対象である特定成分(例えばCO2)の吸収帯に概ね合致するものが使用されており、この通過帯域に合致する波長の光のみが透過し、それ以外の波長は透過できない。
【0055】
つまり、赤外線は特定成分に吸収されるが、この吸収される赤外線のみを透過可能なように、波長選択フィルタ29の材質が選択されている。
従って、波長選択フィルタ27を透過する光の強度、よって、赤外線検知素子29の出力は、容器3内の測定空間31内のガス種の濃度に依存する。つまり、後に詳述する様に、赤外線検知素子29の出力(詳しくは素子出力を増幅したセンサ出力)より、測定空間31内の特定成分の濃度を測定することができる。
【0056】
b)次に、赤外線式ガスセンサ1の電気的構成等について説明する。
図4に示す様に、赤外線式ガスセンサ1は、そのセンサ回路41として、反転入力端子43及び非反転入力端子45を有する増幅回路47と、帰還抵抗である第2抵抗49(抵抗値R2)とを備えた非反転増幅回路51を備えている。なお、第2抵抗49には接続点53を介して直列に第3抵抗55(抵抗値R3)が接続されている。
【0057】
また、このセンサ回路41では、(電源電圧VLを有する光源電源57(図3参照)の)光源電源端子57が、スイッチ59と接続点61と第1抵抗63(抵抗値R1)と接続点53とを介して反転入力端子43に接続されている。
【0058】
更に、スイッチ59は、白色光源5(光源on時の抵抗Rs、光源off時の抵抗RL)を介して接続点65に接続されている。
なお、前記第3抵抗55は、両接続点53、65に接続されており、接続点65は接地されている。
【0059】
本実施例では、例えば演算増幅器47の電源電圧を5Vとした場合に、光源off時の出力Vooff、光源on時の出力Voonとも出力飽和が起こらないように、ゲインとオフセット電圧、ひいては、回路中の抵抗値R1、R2、R3、Vcが設定してある。なお、光源の電源電圧は5V、光源off時の抵抗RLは4Ω、光源on時の抵抗Rsは40Ωである。
【0060】
なお、本発明の(オフセット電圧を設定するための)電圧印加回路は、光源端子57から、スイッチ59、第1抵抗63を介して、反転入力端子43に到る回路によって構成されている。
【0061】
そして、このセンサ回路41において、スイッチ59がオフのときには、白色光源5は消灯しており、その光源off時に、赤外線検知素子29の(バックグラウンドを示す)出力電圧Viが、増幅回路47の非反転入力端子45に入力する場合には、前記式(1)で示されるセンサ出力Vooffが得られる。なお、この場合のオフセット電圧は、前記式(2)で示されるΔVoffであり、ゲインは式(3)で示されるGoffである。
【0062】
一方、スイッチ59がオンのときには、白色光源5は点灯しており、その光源on時に、赤外線検知素子29の(バックグラウンドを含む特定成分の濃度に対応した値を示す)出力電圧Viが、増幅回路47の非反転入力端子45に入力する場合には、前記式(4)で示されるセンサ出力Voonが得られる。なお、この場合のオフセット電圧は、前記式(5)で示されるΔVonであり、ゲインは式(6)で示されるGonである。
【0063】
従って、スイッチ59がオフの時のバックグラウンドを示す出力電圧Vooffと、スイッチ59がオンの時のバックグラウンドを含む特定成分の濃度に対応した値を示す出力電圧Voonとから、後述する様にして、特定成分の濃度を求めることができる。
【0064】
c)次に、赤外線式ガスセンサ1における濃度測定の手順について説明する。
図5に示す様に、赤外線式ガスセンサ1が始動すると、まず、ステップ(S)100にて、初期動作として、白色光源5を例えば10秒間点灯(オン)する。
【0065】
続くステップ110では、白色光源5をオフする。
続くステップ120では、所定のタイミングで光源off時のセンサ出力Vooffを求める。具体的には、図6に示す様に、光源電圧の印加を停止した時点から所定のサンプリングタイミング(例えば1.33秒後)におけるセンサ出力を取得する。
【0066】
続くステップ130では、白色光源5をオンする。
続くステップ140では、所定のタイミングで光源on時のセンサ出力Voonを求める。具体的には、図6に示す様に、光源電圧の印加を開始した時点から所定のサンプリングタイミング(例えば0.63秒後)におけるセンサ出力を取得する。
【0067】
続くステップ150では、白色光源5をオフする。
続くステップ160では、得られた両センサ出力(Vooff、Voon)から特定成分の濃度を算出する。
【0068】
具体的には、光源on時のセンサ出力Voonと光源off時のセンサ出力Vooffとの差ΔVoを求める。即ち、センサ出力からバックグランドの出力を除去して、特定成分の濃度のみを示すセンサ出力の差ΔVoを求める。このセンサ出力の差ΔVoとは、特定成分の濃度に対応したものであるので、予め実験等によって求めたセンサ出力の差ΔVoと特定成分の濃度との関係を示すマップ等を用いて、センサ出力の差ΔVoから特定成分の濃度を求めることができる。
【0069】
続くステップ170では、算出されたガス濃度を、図示しないディスプレイ等の表示装置や外部に出力し、その後、前記ステップ120に戻って、同様な処理を繰り返す。
d)次に、赤外線式ガスセンサ1による効果について説明する。
【0070】
本実施例では、スイッチ59によって、白色光源5の電源のオン・オフを切り換える場合には、同じスイッチ59の動作によって、演算増幅器47の反転入力端子43に対する入力オフセット電圧の印加状態(印加・非印加)も切り換えて、非反転増幅器51の出力電圧Voのオフセット電圧の設定状態(設定(オン)・非設定(オフ))を切り換えている。
【0071】
つまり、本実施例では、1つのスイッチ59という簡易な構成を用いて、電源のオン・オフとオフセット電圧のオン・オフとを同時に行うことができる。
これにより、光源のオン・オフに伴ってオフセット電圧も変化するので、光源off時のセンサ出力Vooffと光源on時のセンサ出力Voonとの差ΔVoをとることによりバックグラウンドの影響を除去し、この差ΔVoから、マップ等に用いて容易に、且つ、精度良く特定成分の濃度を検出することができる。
【0072】
また、従来の回路構成に簡易な構成(スイッチ59により白色光源5の電源電圧VLを利用して入力オフセット電圧を加える構成)を付加するだけで、本実施例で使用する回路構成を実現できるという利点がある。
【実施例2】
【0073】
次に、実施例2について説明するが、実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例では、光源の負側端子に所定の電圧VCを加える点が、前記実施例1と異なるので、異なる点のみを説明する。
【0074】
図7に示す様に、本実施例の赤外線式ガスセンサ71は、そのセンサ回路73として、前記実施例1と同様に、反転入力端子75及び非反転入力端子77を有する増幅回路79と、帰還抵抗である第2抵抗81(抵抗値R2)とを備えた非反転増幅回路83を備えている。なお、第2抵抗81には、接続点85を介して直列に第3抵抗87(抵抗値R3)が接続されている。
【0075】
また、このセンサ回路73では、光源電源端子89が、スイッチ91と接続点93と第1抵抗95(抵抗値R1)と接続点85とを介して反転入力端子75に接続されている。
更に、スイッチ91は、白色光源97(光源on時の抵抗Rs、光源off時の抵抗RL)を介して接続点99に接続されている。
【0076】
なお、前記第3抵抗87は、両接続点85、99に接続されている。
特に本実施例では、白色光源97の負側端子101は、図示しない定電圧回路に接続されており、これにより負側端子101には、ベース電圧VCが印加されている。
【0077】
本実施例によっても、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、負側端子101には、ベース電圧VCが印加されているので、必要に応じて、光源がoffのときの出力に対しても、適宜オフセットを設けることができるという利点がある。
【0078】
<実験例>
次に、実際に各抵抗の抵抗値等を設定して作製した前記実施例1、2の赤外線式ガスセンサのセンサ出力を確認した実験例について説明する。
【0079】
この実験例では、各抵抗値等を下記表1に示す値とした。
【0080】
【表1】

【0081】
この実験例では、被測定ガスとして、N2のベースガス中にCO2の添加量を0〜5000ppmの範囲で段階的に増していき、その際のセンサ出力を測定した。
その測定の際の実施例1、2の赤外線式ガスセンサによるセンサ出力を、図8及び図9に示すが、光源on時の出力電圧Voonと光源off時の出力電圧Vooffとも、飽和することがなく、十分な電圧が得られた。
【実施例3】
【0082】
次に、実施例3について説明するが、実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例の赤外線式ガスセンサは、一対の波長選択フィルタ及び赤外線検知素子を備え、2種の特定成分の濃度を検出可能なセンサである。
【0083】
a)まず、本実施例の赤外線式ガスセンサの構成について説明する。
図10に示す様に、本実施例の赤外線式ガスセンサ111は、前記実施例1と同様に、先端側(図10(a)左側)が閉塞された円筒形状の容器113と、容器113の先端側に配置された白色光源115と、容器113の後端側に配置された基部117とを備えている。
【0084】
前記基部117は、キャップ119とTOパッケージ121とから構成されており、キャップ119は、円盤部123と筒状部125とから構成されている。
円盤部123には、2箇所に開口部127、129が設けられており、各開口部127、129にはそれぞれ第1、第2波長選択フィルタ131、133が配置されている。
【0085】
また、TOパッケージ121の内側表面には、第1、第2波長選択フィルタ131、133と対応して、その後端側に、それぞれ第1、第2赤外線検知素子135、137が配置されている。
【0086】
そして、本実施例の赤外線式ガスセンサ111では、白色光源115と第1波長選択フィルタ131と第1赤外線検知素子135とは、同一直線L1上に配置され、同様に、白色光源115と第2波長選択フィルタ133と第2赤外線検知素子137とは、他の同一直線L2上に配置されている。 なお、一対の直線L1、L2は、軸中心Oを中心として線対称に配置されている。
【0087】
また、前記第1、第2波長変換フィルタ131、133を構成する材料としては、検出したい2つの特定成分(例えばCO2とCO)に対応して、同特定成分の吸収帯と自身の通過帯域が同じものが選択されている。
【0088】
b)次に、本実施例の赤外線式ガスセンサ111の電気的構成について説明する。
図11に示す様に、赤外線式ガスセンサ111のセンサ回路141は、2種の特定成分の濃度を測定できるように、第1、第2赤外線検出素子135、137の出力電圧V1i、V2iに対応して、それぞれ出力電圧V1o、V2oが得られるように構成されている。
【0089】
具体的には、センサ回路141は、反転入力端子143及び非反転入力端子145を有する第1増幅回路147と、帰還抵抗である第2抵抗149(抵抗値R2)とを備えた第1非反転増幅回路151を備えている。なお、第2抵抗149には接続点153を介して直列に第3抵抗155(抵抗値R3)が接続されている。
【0090】
また、(電源電圧VLを有する光源電源157(図10参照)の)光源電源端子157が、スイッチ159と接続点161と第1抵抗163(抵抗値R1)と接続点153とを介して反転入力端子143に接続されている。
【0091】
更に、スイッチ159は、白色光源115(光源on時の抵抗Rs、光源off時の抵抗RL)を介して接続点165に接続されている。
なお、前記第3抵抗155は、両接続点153、165に接続されており、負側端子167には、図示しない定電圧回路からベース電圧VCが印加されている。
【0092】
同様に、このセンサ回路141は、反転入力端子173及び非反転入力端子175を有する第2増幅回路177と、帰還抵抗である第5抵抗179(抵抗値R5)とを備えた第2非反転増幅回路181を備えている。なお、第5抵抗149には接続点183を介して直列に第6抵抗185(抵抗値R6)が接続されている。
【0093】
また、このセンサ回路141では、スイッチ159と接続点161と第4抵抗187(抵抗値R4)と接続点183とを介して反転入力端子173に接続されている。
なお、前記第6抵抗185は、両接続点163、183に接続されている。
【0094】
c)次に、この赤外線式ガスセンサ111の動作を説明する。
スイッチ159がオンの場合、白色光源115から放射された赤外線は、被測定ガス中を透過するとともに、第1、第2赤外線選択フィルタ131、133を透過し、第1、第2赤外線検知素子135、137に入射する。
【0095】
このとき、被測定ガス中では、2種の特定成分の濃度に応じて、所定の帯域の赤外線が吸収される。
従って、例えば第1赤外線選択フィルタ131の通過帯域がCO2の吸収帯と一致するように設定されている場合には、第1赤外線選択フィルタ131を透過して第1赤外線検知素子135に到る赤外線の強度(よって、強度に対応した出力電圧V1oon)は、CO2濃度に対応したものとなる。
【0096】
なお、この場合も、前記実施例1と同様に、この出力電圧V1oonには、スイッチ159のオンに伴う光源の電圧VLの印加よるオフセット電圧が設定されている。
同様に、例えば第2赤外線選択フィルタ133の通過帯域がCOの吸収帯と一致するように設定されている場合には、第2赤外線選択フィルタ133を透過して第2赤外線検知素子137に到る赤外線の強度(よって、強度に対応した出力電圧V2oon)は、CO濃度に対応したものとなる。
【0097】
なお、この場合も、前記実施例1と同様に、この出力電圧V2oonには、スイッチ159のオンに伴う光源の電圧VLの印加よるオフセット電圧が設定されている。
一方、スイッチ159がオフの場合には、バックグラウンドの赤外線が、第1、第2赤外線検知素子135、137に入射するので、それぞれ出力電圧V1ooff、V2ooffが得られる。なお、この場合には、光源の電圧VLの印加よるオフセット電圧は設定されていない。
【0098】
従って、前記実施例1と同様に、スイッチ159のオン時のそれぞれの出力電圧V1oon、V2oonとスイッチ159のオフ時のそれぞれの出力電圧V1ooff、V2ooffとのそれぞれの差分(V1oon−V1ooff、V2oon−V2ooff)から、2種の特定成分の濃度を算出することができる。
【0099】
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、2種の特定成分の濃度を同時に測定できるという利点がある。
また、第2赤外線選択フィルタ133の通過域を、被測定ガス中に存在することが想定される何れのガスの吸収帯にも相当しない波長域(例えば3.9μm前後)に設定することにより、第2赤外線検知素子137を言わば参照素子として用い、第1赤外線検知素子135の出力に対する外乱因子を補償させることも可能である。
【実施例4】
【0100】
次に、実施例4について説明するが、実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例の赤外線式ガスセンサは、光源を点滅するのではなく、光源の光を遮るシャッタをオン・オフするものである。
【0101】
a)まず、本実施例の赤外線式ガスセンサの構成について説明する。
図12に示す様に、本実施例の赤外線式ガスセンサ191は、前記実施例1と同様に、先端側(図12左側)が閉塞された円筒形状の容器193と、容器193の先端側に配置された白色光源195と、容器193の後端側に配置された基部197とを備えている。
【0102】
前記基部197は、キャップ199とTOパッケージ201とから構成されており、キャップ199は、円盤部203と筒状部205とから構成されている。
円盤部203には、中央に開口部207が設けられており、開口部207には波長選択フィルタ209が配置されている。
【0103】
また、TOパッケージ201の内側表面には、波長選択フィル209と対応して、その後端側に、赤外線検知素子211が配置されている。
特に、本実施例では、白色光源195より後端側に、白色光源195が波長変換フィルタ209に到達しないように(即ち光路を遮るように)シャッタ213が配置されている。
【0104】
このシャッタ213は、駆動電源215によって駆動されるものである。具体的には、(スイッチ217がオンされ)電源電圧がソレノイド219(図13参照)に印加されるとシャッタ213が開き、電源電圧が印加されない場合は、図示しないバネによってシャッタ213が閉じるように構成されている。
【0105】
なお、白色光源195へは、光源の電源221から電圧VLが印加され、それは、図示しないスイッチによりオン・オフされる。
b)次に、赤外線式ガスセンサ211の電気的構成について説明する。
【0106】
なお、本実施例の赤外線式ガスセンサ191の回路構成は、基本的に実施例1の回路構成とほぼ同様であるので、簡単に説明する。
図13に示す様に、赤外線式ガスセンサ191のセンサ回路223は、実施例1と同様に、演算増幅器225、非反転増幅回路227、第1〜第3抵抗229、231、233を備えている。
【0107】
また、駆動電源215(図12参照)の駆動端子235は、スイッチ217、ソレノイド219(オン時の抵抗Rs、オフ時の抵抗RL)を介して接地されるとともに、スイッチ217、第1抵抗229を介して、非反転増幅回路227に対してオフセット電圧を設定するように、反転入力端子237に接続されている。
【0108】
なお、本発明の(オフセット電圧を設定するための)電圧印加回路は、駆動端子235から、スイッチ217、第1抵抗229を介して、反転入力端子237に到る回路によって構成されている。
【0109】
c)次に、本実施例の赤外線式ガスセンサ191の動作について説明する。
白色電源195が点灯しているときに、スイッチ217がオンされてシャッタ213が開いている場合には、白色光源195から放射された赤外線は、被測定ガス中を透過するとともに、赤外線選択フィルタ209を透過し、赤外線検知素子211に入射する。
【0110】
このとき、被測定ガス中では、特定成分の濃度に応じて、所定の帯域の赤外線が吸収される。
従って、例えば赤外線選択フィルタ209の通過帯域がCO2の吸収帯と一致するように設定されている場合には、赤外線選択フィルタ209を透過して赤外線検知素子211に到る赤外線の強度(よって、強度に対応した出力電圧Voon)は、CO2濃度に対応したものとなる。
【0111】
なお、この場合も、前記実施例1と同様に、この出力電圧Voonには、スイッチ217のオンに伴う駆動電源215の電圧Vstの印加よるオフセット電圧が設定されている。
一方、スイッチ213がオフの場合には、白色光源195の点滅に関わらず、白色光源195の光路は遮断されているので、バックグラウンドの赤外線が、赤外線検知素子211に入射するので、その出力電圧Vooffが得られる。なお、この場合には、駆動電源215の電圧Vstの印加よるオフセット電圧は設定されていない。
【0112】
従って、前記実施例1と同様に、スイッチ217のオン時の出力電圧Voonとスイッチ217のオフ時の出力電圧Vooffとの差分から、特定成分の濃度を算出することができる。
【0113】
本実施例においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0114】
例えば、赤外線の透過率によって測定を行う、例えば水滴センサ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
1、71、111、191…赤外線式ガスセンサ
5、97、115、195…光源
27、131、133、209…赤外線選択フィルタ
29、135、137、211…赤外線検知素子
47、79、141、143、225…演算増幅器
51、83、151、181、227…非反転増幅回路
57、157、215…電源
59、91、159、217…スイッチ
213…シャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を放射する光源と、
被測定ガス中の測定対象である特定成分が吸収する特定吸収帯域の波長を通過させる赤外線選択手段と、
前記光源から放射され、前記被測定ガス及び前記赤外線選択手段を透過した赤外線が入射する赤外線検知素子と、
前記光源の電源をオン・オフするスイッチと、
前記赤外線検知素子の出力電圧を増幅する増幅回路と、
を備え、
前記増幅された出力電圧に基づいて、前記特定成分を検出する赤外線式ガスセンサであって、
前記増幅回路は、前記増幅を行うとともに、外部からの入力オフセット電圧の印加によって、自身の出力電圧を所定のオフセット量分低下させるオフセット増幅回路であり、
前記光源の電源電圧を用いて前記オフセット増幅回路に入力オフセット電圧を印加する電圧印加回路を備えるとともに、前記スイッチは、前記電圧印加回路をオン・オフするように接続されており、
前記スイッチによって、前記光源の電源のオン・オフを切り換えるとともに、前記電圧印加回路をオン・オフして前記オフセット増幅回路に対する前記入力オフセット電圧の印加状態を切り換えて、前記オフセット増幅回路の出力電圧のオフセット量を調節し、
前記スイッチの切り換えに伴う前記出力電圧の変化に基づいて、前記特定成分を検出することを特徴とする赤外線式ガスセンサ。
【請求項2】
赤外線を放射する光源と、
被測定ガス中の測定対象である特定成分が吸収する特定吸収帯域の波長を通過させる赤外線選択手段と、
前記光源から放射され、前記被測定ガス及び前記赤外線選択手段を透過した赤外線が入射する赤外線検知素子と、
前記赤外線の前記赤外線検知素子への入射状態を、入射と遮断とに切り換える切換手段と、
前記切換手段を駆動する電源をオン・オフするスイッチと、
前記赤外線検知素子の出力電圧を増幅する増幅回路と、
を備え、
前記増幅された出力電圧に基づいて、前記特定成分を検出する赤外線式ガスセンサであって、
前記増幅回路は、前記増幅を行うとともに、外部からの入力オフセット電圧の印加によって、自身の出力電圧を所定のオフセット量分低下させるオフセット増幅回路であり、
前記切換手段を駆動する電源電圧を用いて前記オフセット増幅回路に入力オフセット電圧を印加する電圧印加回路を備えるとともに、前記スイッチは、前記電圧印加回路をオン・オフするように接続されており、
前記スイッチによって、前記切換手段の電源のオン・オフを切り換えるとともに、前記電圧印加回路をオン・オフして前記オフセット増幅回路に対する前記入力オフセット電圧の印加状態を切り換えて、前記オフセット増幅回路の出力電圧のオフセット量を調節し、
前記スイッチの切り換えに伴う前記出力電圧の変化に基づいて、前記特定成分を検出することを特徴とする赤外線式ガスセンサ。
【請求項3】
前記オフセット増幅回路は、前記赤外線検知素子の出力側が非反転入力端子に接続されるとともに、前記電圧印加回路が反転入力端子に接続された演算増幅器を備えた非反転増幅回路であることを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線式ガスセンサ。
【請求項4】
前記電源をオンした場合の前記オフセット増幅回路の出力電圧と前記電源をオフした場合の前記オフセット増幅回路の出力電圧との差に基づいて、前記特定成分の濃度を求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の赤外線式ガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−64704(P2013−64704A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204914(P2011−204914)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】