説明

赤外線減衰剤を含むスチレンアクリロニトリルコポリマーフォーム

スチレンアクリロニトリル及び1種又はそれ以上の赤外線減衰剤を含むポリマーフォームが高温において驚くほど高い寸法保全性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年12月6日に出願された米国仮特許出願第60/873,797号の利益を請求する。
【0002】
発明の分野
本発明は、スチレンアクリロニトリルコポリマー並びにカーボンブラック及びグラファイトのような1種又はそれ以上の赤外線減衰剤(infrared attenuating agent)を含むポリマーフォームに関する。本発明は、更に、このようなフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
塩素化発泡剤、特にクロロフルオロカーボン(CFC)及びヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)発泡剤は、歴史的には、絶縁ポリマーフォーム技術において発泡剤及びポリマーフォーム中の断熱成分としての2つの重要な役割を果たしてきた。しかし、CFC及びHCFC発泡剤が環境に影響を及ぼす程度に関する懸念が、それらの使用に対する規制につながった。これらの規制が、塩素化発泡剤以外の発泡剤を用いながらポリマーフォームの断熱性能を向上させる代替手段の導入の動機付けとなった。
【0004】
塩素化発泡剤のほかに、ポリマーフォーム中への赤外線減衰剤(IAA)の混入は、ポリマーフォームの断熱性能を向上させる1つのアプローチであった。IAAは、赤外線を吸収し、反射し又は吸収及び反射することによって、断熱性能を向上させることができる。IAAは、赤外線がIAAを含むフォームを透過するのを阻害する。例えば、多くの参考文献が、IAAとしてカーボンブラック及びグラファイトを含むポリスチレンフォームの例を開示している。
【0005】
特許文献1はカーボンブラックが、硬質発泡プラスチック材料中への混和によって、発泡プラスチック材料の断熱性を向上させるのに有用であることを教示している。特許文献1は、ポリイソシアヌレートフォームの具体例を示し、発明の最も広範な態様においてプラスチック材料がポリウレタン、ポリイソシアヌレート、ポリ尿素、ポリオレフィン、ポリスチレン、フェノール−ホルムアルデヒド、エポキシ及び他のポリマーフォームであることを教示している。
【0006】
特許文献2はスチレンポリマー及びコポリマーの独立気泡フォーム中へのカーボンブラックの混入がそれらのフォームの熱伝導性を低下できることを教示している。特許文献2はカーボンブラックを含むポリスチレンフォームの具体例を示している。
【0007】
特許文献3はポリマーフォーム中への分散に特に有益なカーボンブラックの形態を開示し、カーボンブラックを含むポリスチレンフォームの具体例を示している。
【0008】
特許文献4及び5はグラファイト粒子を含むスチレン系ポリマーフォームを開示している。特許文献6はカーボンブラック及びグラファイトのようなIAAを含むことができるスチレン系ポリマーフォームを開示している。
【0009】
これらの参考文献は、カーボンブラック及びグラファイトをポリマーフォーム中に混和した場合の熱伝導性低下の利益を開示しているが、これらは、いずれも、フォームの、特に高温における、寸法保全性(dimensional integrity)に対するIAAの効果は扱っていない。高温において高い寸法保全性を有することは、断熱フォームが高温断熱用途に使用する場合に寸法をほとんど変化させないことを保証するために重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4795763号
【特許文献2】欧州特許(EP)第0372343号
【特許文献3】国際出願公開第WO94/13721号
【特許文献4】欧州特許第1196486号
【特許文献5】欧州特許第1031600号
【特許文献6】欧州特許第1661939号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の発見につながった研究は、ポリスチレンフォームへのカーボンブラック又はグラファイトのようなIAAの添加が、フォームの高温における寸法保全性(dimension integrity)を低下させることを明らかにした。赤外線減衰剤(IAA)の断熱寄与の利益を享受できるが、高温における寸法保全性をポリスチレンよりもよく保持するポリマーフォーム、特に熱可塑性ポリマーフォームを見出すことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、高温において予想外に高い寸法保全性を有する、IAAを含むポリマーフォームを提供する。本発明はIAAとスチレンアクリロニトリルコポリマー(SAN)フォームとの併用を探索した結果である。実験から、同様なポリスチレンフォームから見て期待されるよりも高い温度でフォームの寸法保全性をもたらす、SANとIAAとの意外な相乗効果が明らかになった。意外なことに、SANフォームへのIAAの混和は、赤外線吸収IAAでさえ、高温において寸法保全性を増大させた。これは、IAAの混和時に寸法保全性の低下を示すPSフォームとは異なる。IAAとSANとの予想外の相乗作用によって、高温において特に望ましい寸法保全性を有する断熱ポリマーフォームが提供される。
【0013】
第1の態様において、本発明は、内部に規定された気泡(cell)を有する、スチレンアクリロニトリルポリマーと赤外線減衰剤を含むポリマー組成物を含んでなるポリマーフォームである。望ましい実施態様において、ポリマーフォームは、以下の特性の1つ又は任意の組合せを有する:赤外線減衰剤がカーボンブラック及びグラファイトから選ばれ、赤外線減衰剤の量が1〜20重量%であり、アクリロニトリルの量が1重量%又はそれ以上であって50重量%又はそれ以下(より望ましくは4重量%又はそれ以上であって20重量%又はそれ以下)であり、フォームが30%又はそれ以下の連続気泡(open cell)含量(ASTM方法D6226−05による)を有し、フォームが33kg/m3又はそれ以下の密度を有し、フォームにビーズスキン(bead skin)がなく、ポリマー組成物中の全ポリマーが1,000,000未満の重量平均分子量を有し、フォームが32ミリワット/メーター−ケルビン又はそれ以下の熱伝導率を有し、フォームが100キロパスカル又はそれ以上の垂直圧縮強度(vertical compressive strength)(試験法ISO 845−95による)を有する。重量%は、ポリマー組成物総重量を基準とする。
【0014】
第2の態様において、本発明は、スチレンアクリロニトリルコポリマー及び赤外線減衰剤を含むポリマー組成物を含む発泡性組成物を形成し、そして前記発泡性組成物をポリマーフォームに膨張させることを含んでなる、第1の態様のポリマーフォームの製造方法である。望ましい実施態様において、この方法は以下の特性の1つ又は任意の組合せを含む:赤外線減衰剤がカーボンブラック及びグラファイトから選ばれ、赤外線減衰剤の量が1〜20重量%であり、アクリロニトリルの量が1重量%又はそれ以上であって50重量%又はそれ以下(より望ましくは4重量%又はそれ以上であって20重量%又はそれ以下)であり、前記方法が押出プロセスであり、前記発泡性組成物が二酸化炭素を含む発泡剤を含む。
【0015】
第3の態様において、本発明は、ポリマーフォームを温度が異なる可能性がある2つの領域の間にポリマーフォームを配置することを含んでなる、前記の第1の態様のポリマーフォームの使用方法である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ポリマーフォーム
一態様において、本発明は内部に規定された気泡を有するポリマー組成物を含むポリマーフォームである。このポリマー組成物はポリマー組成物を含まない空間(気泡)の周囲において連続ポリマー網状構造の役割をする。気泡を規定する気泡壁はこのポリマー組成物によって占められる。
【0017】
ポリマー組成物はスチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)を含む。SANは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであることができる。ポリマー組成物は、SAN以外の追加のポリマーを含むこともできるし、SANから本質的になることもできるし、又はSANからなることもできる。SANが、ポリマー組成物中の全ポリマーの総重量(即ち総ポリマー組成物重量)に基づいて、90重量%(wt%)又はそれ以上、好ましくは95重量%又はそれ以上存在する場合には、ポリマー組成物は「SANから本質的になる」ものとする。ポリマー組成物は、SANと別のポリマー、典型的には、アルケニル芳香族ポリマー若しくはコポリマー、例えばポリスチレン(PS)ホモポリマー、コポリマー又は両者とのブレンドを含むことができる。望ましくは、ポリマーの95重量%超(総ポリマー重量基準)、より望ましくはポリマー組成物中の全ポリマーが熱可塑性ポリマーである。
【0018】
ポリマー組成物がSANを単独で含むにせよ、他のポリマーと共に含むにせよ、SANのアクリロニトリル(AN)成分は、ポリマー組成物中の全ポリマーの重量に基づいて、1重量%又はそれ以上、好ましくは4重量%又はそれ以上、より好ましくは10重量%又はそれ以上の濃度で存在する。SANのAN成分は、ポリマー組成物の全ポリマーの重量に基づいて、50重量%若しくはそれ以下、典型的には30重量%若しくはそれ以下、更には20重量%若しくはそれ以下、又は15重量%若しくはそれ以下の濃度で存在するのが望ましい。AN成分が1重量%未満の濃度で存在する場合には、SANとカーボンブラックとの寸法保全性に対する相乗効果は、検出できたとしても最小である。ANが50重量%より高い濃度で存在する場合には、ポリマー組成物は、高いポリマー粘度のため、望ましい生産速度でポリマーフォームにするのは困難である。
【0019】
典型的には、ポリマーフォーム中のSAN及び望ましくは任意の追加ポリマーの重量平均分子量(Mw)は40,000又はそれ以上、好ましくは60,000又はそれ以上、より好ましくは75,000又はそれ以上である。ポリマーフォーム中のSAN及び望ましくは任意の追加ポリマーのMwは一般に300,000又はそれ以下、好ましくは250,000又はそれ以下、より好ましくは150,000又はそれ以下である。更に、ポリマーフォーム中のポリマーの90%又はそれ以上、好ましくは全てが1,000,000未満のMwを有するのが望ましい。SANのMwが低すぎる場合には、SANは、フォーム保全性を提供するには不充分な物理的強度を有する。SANのMwが高すぎる場合には、SANのゲル粘度が高すぎるので、特に経済的に魅力的な速度では発泡させるのが困難である。同じ理由から、任意の他のポリマーのMwは、望ましくは特定のMw範囲内に入る。
【0020】
ポリマーフォームは連続気泡(open celled)又は独立気泡(close celled)であることができる。連続気泡フォームは少なくとも30%の連続気泡含量を有する。望ましくは、ポリマーフォームは独立気泡フォーム(連続気泡含量30%未満)、好ましくは20%又はそれ以下、より好ましくは10%又はそれ以下、更に好ましくは5%又はそれ以下、更に好ましくは1%又はそれ以下の連続気泡含量を有する独立気泡フォームである。本発明のフォームは0%の連続気泡含量を有することができる。連続気泡含量は、American Society for Testing and Materials(ASTM)方法D6226−05に従って測定する。独立気泡フォームは、連続気泡フォームよりも、優れた断熱材であるのでより望ましい。しかし、おそらくは気泡中の圧力上昇がフォーム中の寸法変化を助長するため、独立気泡フォームは典型的には連続気泡フォームよりも高温における寸法保全性が低い(例えば米国特許第5557896号参照)。意外なことに、本発明のフォームは独立気泡フォームであっても、低い熱伝導性と共に高温において魅力的な寸法保全性を示す。
【0021】
ポリマーフォームは本質的に任意の密度を有することができる。より低い密度はポリマーフォームの所定の断面中のより少ないコポリマー組成物質量に相当し、それが典型的にはポリマーフォーム中のより低い熱伝導性に相当するので、より低い密度が望ましい。従って、ポリマーフォームは64kg/m3又はそれ以下、好ましくは40kg/m3又はそれ以下、より好ましくは36kg/m3又はそれ以下、更に好ましくは33kg/m3又はそれ以下の密度を有するのが望ましい。ポリマーフォームが確実に機械的強度を有するようにするためには、ポリマーフォームは一般に10kg/m3又はそれ以上、より典型的には16kg/m3又はそれ以上の密度を有するであろう。ポリマーフォームの密度はISO法845−85を用いて測定する。
【0022】
本発明のポリマーフォームに使用する赤外線減衰剤(IAA)は、フォームの赤外線透過を、典型的には赤外線の吸収、反射又は吸収及び反射の両方によって減衰させる任意の添加剤を含む。適当なIAAの例には、カーボンブラック(全ての種類)、グラファイト、二酸化チタン並びに金属フレック(fleck)及びフレークがある。赤外線吸収IAA(例えばカーボンブラック及びグラファイト)は、赤外線の吸収時にフォームの温度を上昇させ、それによってポリマーフォームの寸法の不安定さを助長する。従って、赤外線吸収IAAは、ポリマーフォーム中において高温では(又は一般に赤外線の存在下では)問題となるおそれがある。
【0023】
意外なことに、本発明のフォームは、赤外線吸収IAAを含む場合であっても、高温において寸法保全性を示す。カーボンブラック及びグラファイトは本発明に使用するのに最も望ましいIAAである。グラファイトは、天然及び合成の、膨張した及び膨張性のグラファイトを含む任意の型のものであることができる。カーボンブラックもファーネスブラック、サーマルブラック及びランプブラックを含む任意の型のものであることができる。カーボンブラックとグラファイトはポリマーフォーム中に一緒に存在できる。或いは、ポリマーフォームはカーボンブラック又はグラファイトのいずれか一方を含む。本発明に使用するカーボンブラック及びグラファイトの適当な型としては以下のものが挙げられる。
【0024】
【表1】

【0025】
IAAは一般的に0.1〜20重量%、好ましくは0.2重量%又はそれ以上、より好ましくは0.5重量%又はそれ以上、更に好ましくは1重量%又はそれ以上であって、典型的には15重量%又はそれ以下、より典型的には10重量%又はそれ以下の濃度で存在し、5重量%又はそれ以下の濃度で存在できる。IAAの重量%はフォーム中の総ポリマー重量に基づいて測定する。
【0026】
追加の添加剤もポリマーフォーム中に存在できる。追加の添加剤としては、天然吸収性クレイ(例えばカオリナイト及びモンモリロナイト)及び合成クレイのようなクレイ;成核剤(例えばタルク及び珪酸マグネシウム);難燃剤(例えばヘキサブロモシクロドデカンのような臭素化難燃剤及びトリフェニルホスフェートのような燐含有難燃剤、並びに例えばジクミル及びポリクミルのような相乗剤を含むことができる難燃剤パッケージ);滑剤(例えばステアリン酸カルシウム及びステアリン酸バリウム);並びに酸掃去剤(例えば酸化マグネシウム及びピロリン酸四ナトリウム)が挙げられる。好ましい難燃剤パッケージは、ヘキサハロシクロドデカン(例えばヘキサブロモシクロドデカン)とテトラブロモビスフェノールAビス2,3−ジブロモプロピルエーテルとの組合せを含む。追加の添加剤はフォームの総重量の最大で10重量%を占めることができる。
【0027】
本発明のポリマーフォームは熱伝導率が低く、そのため断熱材として特に有用である。本発明のフォームは32ミリワット/メーター−ケルビン(mW/m*K)又はそれ以下、好ましくは31mW/m*K又はそれ以下、更に好ましくは30mW/m*K又はそれ以下の熱伝導率値を示すことができる。熱伝導率は方法EN8301に従って測定する。
【0028】
断熱フォームは、熱(即ち熱エネルギー)がそれを伝って移動するのを阻害する。従って、それらは、2つの領域の間のバリヤーとして2つの領域の一方から他方への熱移動を阻害するのに有用である。場合によっては、温かい方の領域(より大きい熱エネルギーを有する領域)はほぼ100℃又はそれ以上の温度であることができる。ポリマーフォームの機械的性質を犠牲にすることなくこのような領域を他の領域から断熱するようにポリマーフォームを使用できるのが望ましい。高温において悪化する傾向があるポリマーフォームの1つの機械的性質は寸法保全性である。本発明のポリマーフォームは、予想外に高い温度において、100℃まで及び100℃超の温度であっても、寸法保全性を保持する。
【0029】
寸法保全性は、フォームの寸法変化がどの程度広範囲かの尺度である。ポリマーフォームは3つの互いに直交する寸法:長さ、幅及び厚さを有する。長さ及び幅は、最大平面面積(planar surface area)を有する面であるフォームの主面を規定する。平面面積は、平面上に投影された面積(即ち、その面積内のピーク及び谷を考慮に入れずにフォームの長さ及び幅によって規定される面積)である。フォームの主面は、等しい平面面積を有する(即ち主面としても適格である)か又はより小さい平面面積を有する対向面を有する。望ましくは、主面と主面に対向する面とはほぼ平行であるか、又は平行である。フォームの厚さは、主面からその対向面までの、主面から垂直に伸びる距離に相当する。厚さは、主面の異なる点では異なり得る。望ましくは、フォームの厚さは、主面上の任意の点において10%又はそれ以下、好ましくは5%又はそれ以下異なる。
【0030】
寸法保全性を、Dimensional Integritiy Test(DIT)の間に体積変化の指標として測定する。DITは、フォームサンプル(厚さ12.7cm(5インチ)、幅10.2cm(4インチ)及び厚さ約2.54cm(1インチ))を切り取り、前記フォームサンプルを特定温度のオーブン中に1〜3時間入れ、次いでそれをオーブンから取り出すことによって実施する。フォームサンプルの高さ、幅及び厚さを、オーブンに入れる前とオーブンから取り出した後にもう一度測定して、オーブンに入る前後のフォームサンプルの体積を計算する。(オーブン処理後の体積)÷(オーブン処理前の体積)×100%によって体積変化を求める。各オーブン温度について新しいフォームサンプルを使用する。高温における寸法保全性が望ましい。従って、フォームサンプル中の体積変化、特にオーブンの温度がより高温になった際の体積変化は小さいことが望ましい。
【0031】
本発明のポリマーフォーム(SANを含んでなり且つIAAを含む)は、意外にも、IAAを含まない同様なフォームに比べて、80℃又はそれ以上の温度においてより高い寸法保全性(より少ない体積変化)を示し、90℃又はそれ以上、更には95℃又はそれ以上の温度においてより高い寸法安定性を示すことができる。詳細には、本発明のポリマーフォームは、望ましくは80℃又はそれ以上の温度において、好ましくは85℃又はそれ以上において、より好ましくは90℃又はそれ以上の温度において、更に好ましくは100℃又はそれ以上において、5%又はそれ以下の体積変化を示す。本発明のポリマーフォームの更に望ましい実施態様は、30%未満、好ましくは20%又はそれ以下、より好ましくは10%又はそれ以下、更に好ましくは5%又はそれ以下、最も好ましくは1%又はそれ以下の連続気泡含量を有し、80℃又はそれ以上の温度において、好ましくは85℃又はそれ以上において、より好ましくは90℃又はそれ以上において、更に好ましくは100℃又はそれ以上において、5%又はそれ以下の体積変化を示す。体積変化はDITに従って測定する。
【0032】
本発明のフォームとは異なり、ポリスチレンフォームへのIAAの添加は実のところフォームの寸法保全性を失わせる傾向があるか、又は高温における寸法保全性がせいぜい未変化のままである傾向がある(以下の比較例A及びBを参照)。
【0033】
本発明のフォームの望ましい実施態様は、更に100キロパスカル(kPa)又はそれ以上、好ましくは200kPa又はそれ以上、より好ましくは300kPa又はそれ以上、更に好ましくは400kPa又はそれ以上の垂直圧縮強度(vertical compressive strength)を示す。垂直圧縮強度は方法ISO845−95に従って測定する。垂直圧縮強度は、ポリマーフォームがその主面、若しくは主面に対向する面又は両者にかかる圧力を受ける可能性がある用途において望ましい。このような用途には、屋根材料及び道路基礎構造用途がある。より高い垂直圧縮強度は、ポリマーフォームが変形前により大きい圧力に耐えられることを示す。
【0034】
本発明のフォームは一般に0.5ミリメーター(mm)又はそれ以下、好ましくは0.3mm又はそれ以下、より好ましくは0.25mm又はそれ以下であって、0.05mm又はそれ以上、好ましくは0.1mm又はそれ以上、より好ましくは0.2mm又はそれ以上の平均気泡サイズを有する。平均気泡サイズはASTM方法D−3576に従って測定する。本発明のフォームは、更に一峰性(monomodal)(即ち、単峰性)気泡サイズ分布又は多峰性気泡サイズ分布(二峰性を含む)を有することができる。気泡数対気泡サイズ(0.01mm未満は四捨五入)のプロットが1つより多いピーク(2つ又はそれ以上の極大点)を示すならば、フォームは多峰性気泡サイズ分布を有する。このようなプロットがピークを1つだけ示す場合には、フォームは一峰性又は単峰性気泡サイズ分布を有する。フォームが多峰性か否かを判定するためのプロットを作成するためには、少なくとも100個の気泡を測定する。
【0035】
プロセス
熱可塑性フォームの製造に適当なほとんど全ての方法が、本発明のフォームの製造に適当である。一般に、本発明のフォームは、SAN及びIAA(SAN及びIAAはポリマーフォームに関して前述した通りである)を含んでなるポリマー組成物、好ましくは熱可塑性ポリマー組成物を含む発泡性組成物を形成し、前記発泡性組成物を、ポリマーフォームに膨張させることによって製造する。発泡性組成物は典型的にはポリマー組成物及び発泡剤を予備膨張圧において一緒に含む。発泡性組成物は、予備膨張圧より低い圧力に暴露することによって膨張させる。適当な具体的発泡法には、膨張性ビーズフォーム法、蓄積発泡法(accumulative foaming process)及び押出法がある。
【0036】
膨張性フォームビーズ法においては、ポリマー組成物のグラニュール中に発泡剤を混和する(例えばポリマー組成物のグラニュールを加圧下において発泡剤を含ませる)ことによって、発泡性組成物を製造する。ポリマー組成物はSAN及びIAAを含む。続いて、グラニュールを金型中で膨張させて、互いに付着して「ビーズフォーム」を形成する多数の膨張したフォームビーズ(グラニュール)を含むフォーム組成物を得る。グラニュールは、金型内での膨張前にある程度発泡させて、「ビーズフォーム」を形成できる。ビーズフォームは、フォーム全体に広がるそれぞれの個別ビーズの表面に相当するポリマースキンの特徴的な連続網状構造を有する。
【0037】
蓄積発泡法は、1)熱可塑性材料と発泡剤組成物とを混合して、発泡性ポリマー組成物を形成し;2)前記発泡性ポリマー組成物を、前記発泡性ポリマー組成物を発泡させない温度及び圧力に保持された保持ゾーンに押出し(前記保持ゾーンは、前記発泡性ポリマー組成物が発泡するより低圧のゾーンへのオリフィス開口部を規定するダイと前記ダイオリフィスを閉じる開閉式ゲートを有する);3)可動ラムによって前記発泡性ポリマー組成物に機械的圧力を実質的に同時に適用しながら、前記ゲートを定期的に開放して、前記発泡性ポリマー組成物を前記保持ゾーンから前記ダイオリフィスを経てより低圧のゾーンに突き出し;そして4)突き出された発泡性ポリマー組成物を膨張させて、フォームを形成することを含んでなる。米国特許第4,323,528号(引用することによって本明細書中に組み入れる)は、ポリオレフィンフォームの製造との関連においてこのような方法を開示している。
【0038】
押出法が最も望ましい。押出法は、蓄積発泡の場合のような半連続法又は回分法ではなく、連続法である。連続法は、ポリマーフォームのより効率的な製造手段である。押出法は、また、膨張性ビーズフォーム法からのフォーム中に存在するような、フォーム全体にわたる連続スキン網状構造を有することのないフォームを生成する。膨張性フォームビーズ法から製造されるフォームは、気泡の集まりをフォーム内に規定するポリマースキンの網状構造(ビーズスキン)を有する。このようなスキンは、膨張してフォームを形成した各フォームビーズからの残留スキンである。ビーズスキンは融合して、複数の膨張フォームビーズを含むフォーム構造を形成する。ビーズフォームは、ビーズスキン網状構造に沿って壊れる可能性があるので、押出フォームよりも脆い傾向がある。押出フォームは、膨張ビーズフォームに特徴的なビーズスキンの網状構造を有することがない。
【0039】
押出法においては、発泡性組成物は、SAN及びIAA(好ましくはカーボンブラック、グラファイト又は両者)を含むポリマー組成物を押出機中で、前記ポリマー組成物を軟化させるのに充分に高い温度において混合し、次いでポリマー組成物の感知できるほどの膨張を妨げるのに充分な付加圧において発泡剤を混ぜ込むことによって製造する。IAAは、押出機中に直接供給するか、又はポリマーと混合してから押出機に加える(即ち、それを配合するか又はマスターバッチを作成する)ことが許容可能である。次に前記発泡性組成物を発泡温度まで冷却し、次いで前記発泡性組成物をダイを通して付加圧より低い圧力の環境中に放出するのが望ましい。発泡性組成物はより低圧の環境に入ると、膨張してポリマーフォームになる。
【0040】
発泡剤は、典型的には、0.001〜0.5モル/ポリマー100gの総合濃度で存在する。押出発泡法に使用するのに適当な発泡剤は、以下:無機ガス、例えば二酸化炭素、アルゴン、窒素及び空気;有機発泡剤、例えば水、炭素数1〜9の脂肪族及び環状炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロブタン及びシクロペンタン;炭素数1〜5の完全にハロゲン化された脂肪族炭化水素又は部分的にハロゲン化された脂肪族炭化水素、好ましくは塩素を含まないもの(例えばジフルオロメタン(HFC−32)、ペルフルオロメタン、フッ化エチル(HFC−161)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、ペルフルオロエタン、2,2−ジフルオロプロパン(HFC−272fb)、1,1,1−トリフルオロプロパン(HFC−263fb)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc));炭素数1〜5の脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノール;カルボニル含有化合物、例えばアセトン、2−ブタノン及びアセトアルデヒド;エーテル含有化合物、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル。メチルエチルエーテル;カルボキシレート化合物、例えば蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル;カルボン酸及び化学発泡剤、例えばアゾジカルボンアミド、アゾジイソブチロニトリル、ベンゼンスルホヒドラジド、4,4−オキシベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、トリヒドラジノトリアジン及び炭酸水素ナトリウムのうち1種又はそれ以上を含む。
【0041】
発泡剤は、望ましくはCFC及びHCFC発泡剤を含まず、好ましくは塩素化発泡剤を含まない。発泡剤は、フッ素化発泡剤を含まないこともでき、また、ハロゲン化発泡剤を含まないこともできる。本発明の方法は、発泡剤として二酸化炭素を単独で又は別の発泡剤と組合せて使用するのに特に適している。
【0042】
発泡性組成物中のポリマー組成物及びIAAは、ポリマーフォームについて前述した通りである。同様に、発泡性組成物は、更に本発明のフォームに関して記載した1種又はそれ以上の追加の添加剤を含むことができる。本発明のポリマーフォームに関するポリマー組成物、IAA及び追加の添加剤の濃度範囲及び種類を、本発明のフォームを得るための本発明の方法に適用する(例えばフォーム中の総ポリマー重量を基準とする濃度はこの方法の発泡性組成物中の総ポリマー重量に相当し、総フォーム重量を基準とする濃度はこの方法の総発泡性組成物重量に相当する)。
【0043】
高温における本発明のポリマーフォームの寸法保全性により、水蒸気を使用して、フォームを潰すことなくフォームの密度を低下させる二次膨張を行うことが可能になる。フォームを水蒸気膨張させるために、フォームを一定期間水蒸気に暴露する。水蒸気膨張は、直接押出によって容易に達成できるよりも低い密度を達成するのに有益である(即ち23kg/m3又はそれ以下、20kg/m3又はそれ以下、更には19kg/m3又はそれ以下)。このような低密度であっても、本発明のフォームは33mW/m*k又はそれ以下の熱伝導率を達成できる。
【0044】
使用
本発明のポリマーフォームは、断熱材としての使用に特に適している。それに関連して、本発明のポリマーフォームは、温度の異なる可能性がある2つの領域の間に配置する。本発明のポリマーフォームはこれら2つの領域の間で断熱バリヤーの役目をする。本発明のポリマーフォームは、断熱材が85℃若しくはそれ以上、更には90℃若しくはそれ以上、更には95℃若しくはそれ以上又は100℃若しくはそれ以上の温度(例えば使用又は稼働温度)を受ける場合に、断熱材として特に適している。これらの温度における本発明のポリマーフォームの寸法保全性により、フォームはこのような高い使用温度又は稼働温度において機械的に堅固であり続けることができる。
【実施例】
【0045】
比較例(Comp Ex)A0〜A2:ファーネスブラックを含むPSフォーム
ポリスチレン(Mw192,000,多分散度約2.3)100重量部;カーボンブラック濃縮物(ポリスチレン中30%のファーネスブラック;例えばColumbian Chemicals Company製のRaven(登録商標)430(RavenはColumbian Chemicals Companyの登録商標である));ヘキサブロモシクロドデカン0.7重量部;タルク0.1重量部;及びステアリン酸カルシウム0.1重量部をドライブレンドすることによって、ポリマーブレンドを製造する。
【0046】
表Iは、比較例A0〜A2のそれぞれにおけるカーボンブラックの量を特定している。適切なカーボンブラック濃度を得るのに充分なカーボンブラック濃縮物を加える。
【0047】
ポリマーブレンドを一軸スクリュー押出機中に計量供給し、それを200〜220℃の温度において混合し、溶融させる。この混合し且つ溶融させたポリマーに、HCFC−142b 70〜73重量%、塩化エチル20重量%及び二酸化炭素7〜10重量%(重量%は発泡剤組成物重量基準)からなる発泡剤組成物12.3〜12.8重量部を加える。発泡剤組成物は、発泡性ゲルの膨張を妨げるように大気圧より高い充分な圧力下で加える。発泡性ゲルを115〜125℃に冷却し、スリットダイを通して大気圧中に押出して、長方形のフォームボード(発泡ボード)を形成する。
【0048】
比較例A2の場合には、7重量%のカーボンブラックを含むサンプルを水蒸気膨張させて、34.6kg/m3の密度を達成する。
【0049】
各フォームを20日間老化させ、74℃(華氏165°(165°F))、77℃(170°F)、79℃(175°F)、82℃(180°F)及び85℃(185°F)の温度においてDimensional Integrity Testに供する。表Iは、比較例A0〜A2のそれぞれに関する体積変化を報告している。
【0050】
【表2】

【0051】
比較例(Comp Ex)B0〜B2:サーマルブラックを含むPSフォーム
ポリスチレン(Mw192,000,多分散度約2.3)100重量部;サーマルブラック濃縮物(ポリスチレン中50重量%のサーマルブラック;例えばDegussa製のArosperse 15);ヘキサブロモシクロドデカン0.9重量部;タルク0.1重量部;ステアリン酸カルシウム0.08重量部;及び線状低密度ポリエチレン0.3重量部をドライブレンドすることによって、ポリマーブレンドを製造する。
【0052】
表IIは、比較例B0〜B2のそれぞれにおけるサーマルブラックの量を特定している。適切なサーマルブラック濃度を得るのに充分なサーマルブラック濃縮物を加える。
【0053】
ポリマーブレンドを一軸スクリュー押出機中に計量供給し、それを200〜220℃の温度において混合し、溶融させる。この混合し且つ溶融させたポリマーに、HCFC−142b 71〜73重量%、塩化エチル20重量%及び二酸化炭素5〜9重量%(重量%は発泡剤組成物重量基準)からなる発泡剤組成物12.3〜12.8重量部を加える。発泡剤組成物は、発泡性ゲルの膨張を妨げるように大気圧より高い充分な圧力下で加える。発泡性ゲルを116〜120℃に冷却し、スリットダイを通して大気圧中に押出して、長方形のフォームボードを形成する。
【0054】
比較例B2の場合には、7重量%のカーボンブラックを含むサンプルを水蒸気膨張させて、27.7kg/m3の密度を達成する。
【0055】
各フォームを21日間老化させ、71℃(160°F)、77℃(170°F)及び82℃(180°F)の温度においてDimensional Integrity Testに供する。表IIに、比較例B0〜B2のそれぞれに関する体積変化を示す。
【0056】
【表3】

【0057】
比較例A及びBは、(1)IAAの添加が約80℃超の温度におけるPSフォームの寸法保全性を低下させ;そして(2)PSフォームが全て、80℃超の温度において5%より大きい体積変化を示すことを明らかにしている。
【0058】
比較例(Comp Ex)C−IAAを含まないSANフォーム
SAN A(AN 15重量%,Mw=158,000)70重量部及びSAN B(AN 15重量%,Mw=114,000)30重量部、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)0.1部及びステアリン酸バリウム0.24部並びにヘキサブロモシクロドデカン1.1重量部をドライブレンドすることによって、ポリマーブレンドを製造する。
【0059】
前記ポリマーブレンドを押出機に供給する。ポリマーブレンドを200〜220℃において溶融ブレンドする。SAN100重量部当たり6.0重量部の、二酸化炭素55重量%、水25重量%及びイソブタン20重量%からなる発泡剤組成物を加えて、発泡性ゲルを形成する。重量%は発泡剤組成物の総重量に基づく。発泡剤組成物は、発泡性ゲルの膨張を妨げるように大気圧より高い充分な圧力下で加える。発泡性ゲルを133℃に冷却し、スリットダイを通して大気圧中に押出して、長方形のボードを形成する(比較例C)。比較例Cは、IAAを含まないSANフォームである。比較例Cを30日間老化させ、次いで86℃、92℃、95℃、98℃及び101℃の温度においてDimensional Integrity Testに供する。
【0060】
表IIIは比較例Cの物理的性質及び比較例Cに関するDimensional Integrity Testの結果を開示している。
【0061】
実施例(Ex)1−グラファイトを含むSANフォーム
グラファイト濃縮物(ClariantからCesa−conductive SL90025506の名称で入手可能な、グラファイト50重量%及びスチレン50重量%のブレンド)4重量部をポリマーブレンド中に混入する以外は、比較例Cと同様にして実施例1を製造する。実施例1は、ポリマーブレンド重量に基づき2重量%のグラファイトを含んでいる。実施例1を、比較例Cと同様にしてDimensional Integrity Testに供する。
【0062】
表IIIは実施例1の物理的性質及び実施例1に関するDimensional Integrity Testの結果を開示している。
【0063】
実施例(Ex)2−カーボンブラックを含むSANフォーム
カーボンブラック濃縮物(サーマルブラック(例えばDegussa製のArosperse−15)50重量%及びポリエチレン(メルトインデックス1.8,例えばThe Dow Chemcial Companyから入手可能なPE−620i)50重量%)8重量部をポリマーブレンド中に混入する以外は、比較例Cと同様にして実施例2を製造する。実施例2は、ポリマーブレンド重量に基づいて4重量%のサーマルブラックを含んでいる。実施例2を、比較例Cと同様にしてDimensional Integrity Testに供する。
【0064】
表IIIは実施例2の物理的性質及び実施例2に関するDimensional Integrity Testの結果を開示している。
【0065】
実施例(Ex)3−グラファイトを含む水蒸気膨張SANフォーム
実施例1に等しいフォームを製造し、次いで前記フォームに水蒸気を当てて、フォームの密度を更に23.4kg/m3まで低下させる。表IIIは実施例3の物理的性質を開示している。
【0066】
【表4】

【0067】
比較例C、実施例1及び実施例2は、グラファイト又はカーボンブラックを混入すると、高温におけるSANフォームの寸法保全性が向上することを示している。実施例1及び実施例2は、Dimensional Integrity Testで各試験温度において、比較例Cよりも小さい体積変化を示している。実施例と比較例との主な違いはIAAの存在である。
【0068】
実施例1及び実施例2は、更に、IAAを含むSANフォームが、高温においてIAAを含む又は含まないPSフォームよりも著しく大きい寸法保全性を示すことを明らかにしている(表I、II及びIIIからのデータを比較)。
【0069】
実施例3は水蒸気膨張させて本発明のより低密度のフォームの形成に成功した本発明の一例を示している。
【0070】
これらの実施例及び比較例は、ハロゲンを含まない発泡剤を用いた例を示している。
【0071】
比較例(Comp Ex)D−HFC−134aを用いたIAAを含まないSANフォーム
SAN A(AN 15重量%,Mw=144,000)50重量部及びSAN B(AN 15重量%,Mw=118,000)50重量部、ヘキサブロモシクロドデカン0.95重量部並びに添加剤パッケージ0.55重量部/100部(pph)(ステアリン酸バリウム0.15pph、ポリエチレン0.3pph及びタルク0.10pphを含む)をドライブレンドすることによって、ポリマーブレンドを製造する(pphはポリマー100重量部基準)。
【0072】
前記ポリマーブレンドを押出機に供給する。ポリマーブレンドを200〜220℃において溶融ブレンドする。ポリマーブレンド100重量部当たり9.5重量部の、二酸化炭素16重量%、水10重量%及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)74重量%からなる発泡剤組成物を加えて、発泡性ゲルを形成する。重量%は発泡剤組成物の総重量に基づく。発泡剤組成物は、発泡性ゲルの膨張を妨げるように大気圧より高い充分な圧力下で加える。発泡性ゲルを129℃に冷却し、スリットダイを通して大気圧中に押出して、膨張させて長方形のフォームボードにする(比較例D)。比較例Dは、IAAを含まないSANフォームである。比較例Dを21日間老化させ、次いで74℃、79℃、85℃、91℃及び96℃の温度においてDITに供する。
【0073】
表IVは比較例Dに関する物理的性質及DITからの結果を開示している。
【0074】
実施例(Ex)4−HFC−134aを用いたIAA(サーマルブラック)を含むSANフォーム
実施例4を得る為に、ポリマーブレンドを溶融ブレンドしながら押出機に8重量%のサーマルブラック濃縮物(例えばポリスチレン中50%のArosperse−15(Degussa製))を加える以外は、比較例Dを繰り返す。
【0075】
実施例4を比較例Dと同じDITに供する。表IVは実施例4に関する物理的性質及びDITの結果を開示している。
【0076】
【表5】

【0077】
比較例D及び実施例4に関する表IVのデータの比較は、高温におけるより高い寸法保全性の達成におけるIAAとSANの相乗効果のもう1つの例を示している。
【0078】
実施例(Ex)5−グラファイトを含むSAN/PSブレンドフォーム
SAN A(AN 15重量%)80重量部及びポリスチレン20重量部、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)0.1部及びステアリン酸バリウム0.24部並びにヘキサブロモシクロドデカン1.1重量部をドライブレンドすることによって、ポリマーブレンドを製造する。総AN濃度はポリマーの総重量の約12重量%である。このポリマーブレンドにグラファイト濃縮物(ClariantからCesa(登録商標)−conductive SL90025506の名称で入手可能な、グラファイト50重量%とポリスチレン50重量%のブレンド)0.6重量部を加えて、ポリマー重量に基づいて0.3重量%のグラファイト濃度を得る。
【0079】
前記ポリマーブレンドを押出機に供給する。ポリマーブレンドを200〜220℃において溶融ブレンドする。ポリマー100重量部当たり6.6重量部の、二酸化炭素52重量%、水18重量%及びイソブタン30重量%からなる発泡剤組成物を加えて、発泡性ゲルを形成する。重量%は発泡剤組成物の総重量に基づく。発泡剤組成物は、発泡性ゲルの膨張を妨げるように、大気圧より高い充分な圧力下で加える。発泡性ゲルを133℃に冷却し、スリットダイを通して大気圧中に押出して、長方形のボードを形成する(実施例5)。実施例5は、グラファイト0.3重量%を含むSAN/PSフォームである。実施例5を30日間老化させ、次いで82℃、91℃、94℃、97℃及び100℃の温度においてDimensional Integrity Testに供する。
【0080】
表Vは実施例5の物理的性質及び実施例5に関するDimensional Integrity Testの結果を開示している。
【0081】
実施例(Ex)6−グラファイトを含むSAN/PSブレンドフォーム
グラファイト濃縮物4重量%を用いて、ポリマー重量に基づいて、2重量%のグラファイトを含むフォームを得る以外は実施例5を繰り返す。表Vは実施例6の物理的性質及び実施例6に関するDimensional Integrity Testの結果を開示している。
【0082】
【表6】

【0083】
実施例4及び5は、ポリマー重量に基づいて、約12重量%のAN含量を有するSANとポリスチレンとのブレンドを含んでなり且つグラファイトを含む本発明のフォームを例示している。顕著なことは、実施例5及び6が、いずれも、80℃より高い温度において、100℃においてでさえ、DITにおける体積変化が5%未満であることである。
【0084】
比較例(Comp Ex)E−赤外線減衰剤を含まないAN 4.1重量%のフォーム
SAN(AN 27重量%,Mw=83,000)15重量部及びポリスチレン(Mw 145,000,多分散度3.4)85重量部、ステアリン酸バリウム0.24pph、銅青(copper blue)濃縮物0.4pph、線状低密度ポリエチレン0.4pph(pphはポリマー100重量部基準)をドライブレンドすることによって、ポリマーブレンドを製造する。
【0085】
前記ポリマーブレンドを押出機に供給する。ポリマーブレンドを200℃において溶融ブレンドする。ポリマーブレンド100重量部当たり5.9重量部の、二酸化炭素59重量%、イソブタン26重量%及び水15重量%からなる発泡剤組成物を加えて、発泡性ゲルを形成する。重量%は発泡剤組成物の総重量に基づく。発泡剤組成物は、発泡性ゲルの膨張を妨げるように大気圧より高い充分な圧力下で加える。発泡性ゲルを125℃に冷却し、スリットダイを通して大気圧中に押出して、膨張させて長方形のボードにする(比較例E)。比較例Eは、ポリマー重量を基準として、4.1重量%のANを含み、IAAを含まないSANフォームである。比較例Eを21日間老化させ、次いで83℃、86℃、89℃、92℃及び95℃の温度においてDITに供する。
【0086】
表VIは、比較例Eに関する物理的性質及DITからの結果を開示している。
【0087】
【表7】

【0088】
実施例(Ex)7〜11:赤外線減衰剤を含むAN4%のフォーム
比較例Eと同様な方法で以下の変更を行って実施例7〜11を製造する。
【0089】
実施例7:二酸化炭素59重量%、イソブタン29重量%及び水12重量%からなる発泡剤5.1pphを使用し;ステアリン酸バリウム0.15pphを用いるが、銅青濃縮物は使用せず;赤外線減衰剤として、カーボンブラック(THERMAX(登録商標)N991(THERMAXはCancarb Limited Corporation Canadaの登録商標))2pphを混入する。
【0090】
実施例8:赤外線減衰剤としてカーボンブラック4pphを混入する以外は実施例7と同じ。
【0091】
実施例9:赤外線減衰剤としてカーボンブラック3pph及びグラファイト(Graphit Kropfmuehl Ag製のUF 198C)0.5pphを混入する以外は実施例7と同じ。
【0092】
実施例10:赤外線減衰剤としてカーボンブラック1pph及びグラファイト1.5pphを混入する以外は実施例9と同じ。
【0093】
実施例11:赤外線減衰剤としてグラファイト(TIMREX(登録商標)GA 98/10(TIMREXはTimcal SA Corporationの登録商標))2pphを混入する以外は実施例7と同じ。
【0094】
寸法保全性試験の結果を含むフォームの性質を、比較例Eのフォームの性質と共に表VIに示す。
【0095】
実施例7〜11は、アクリロニトリル(AN)の含量がわずか4.1重量%であるポリマーフォーム中への赤外線減衰剤の混入によって寸法安定性の意外に増加することを明らかにしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に規定された気泡を有する、スチレンアクリロニトリルポリマー及び赤外線減衰剤を含むポリマー組成物を含んでなり、前記ポリマー組成物中の重合アクリロニトリル量が、ポリマー組成物重量に基づいて、1重量%又はそれ以上であるポリマーフォーム。
【請求項2】
前記赤外線減衰剤がカーボンブラック及びグラファイトからなる群から選ばれる請求項1に記載のフォーム。
【請求項3】
前記断熱充填剤がカーボンブラックである請求項1に記載のフォーム。
【請求項4】
前記フォームが、ASTM方法D6226−05に従って、30%未満の連続気泡含量を有する請求項1に記載のフォーム。
【請求項5】
前記ポリマー組成物中のアクリロニトリル量が、ポリマー組成物重量に基づいて、50重量%又はそれ以下である請求項1に記載のフォーム。
【請求項6】
前記ポリマー組成物中のアクリロニトリル量が、ポリマー組成物重量に基づいて、4〜20重量%である請求項1に記載のフォーム。
【請求項7】
前記ポリマー組成物がスチレンアクリロニトリルとポリスチレンとのブレンドを含む請求項1に記載のフォーム。
【請求項8】
前記フォームが33kg/m3又はそれ以下の密度を有する請求項1に記載のフォーム。
【請求項9】
前記ポリマー組成物中の全てのポリマーが1,000,000未満の重量平均分子量を有する請求項1に記載のポリマーフォーム。
【請求項10】
前記ポリマーフォームが32ミリワット/メーター−ケルビン又はそれ以下の熱伝導率を有する請求項1に記載のポリマーフォーム。
【請求項11】
前記ポリマーフォームが、試験方法ISO845−95に従って、100キロパスカル又はそれ以上の垂直圧縮強度を有する請求項1に記載のポリマーフォーム。
【請求項12】
アクリロニトリルが4重量%又はそれ以上であって、総ポリマー重量に基づいて、20重量%又はそれ以下の量で存在し、前記赤外線減衰剤がカーボンブラック及びグラファイトから選ばれ且つ、総ポリマー重量に基づいて、1重量%又はそれ以上であって10重量%又はそれ以下の濃度で存在する請求項1に記載のポリマーフォーム。
【請求項13】
スチレンアクリロニトリルコポリマー及び赤外線減衰剤を含むポリマー組成物を含む発泡性組成物を形成せしめ、そして前記発泡性組成物をポリマーフォームに膨張させることを含んでなり、前記ポリマー組成物中の重合アクリロニトリル量が、ポリマー組成物重量に基づいて、1重量%又はそれ以上である請求項1に記載のポリマーフォームの製造方法。
【請求項14】
前記赤外線減衰剤がカーボンブラック及びグラファイトから選ばれる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記赤外線減衰剤がカーボンブラックである請求項13に記載の方法。
【請求項16】
アクリロニトリル量が、ポリマー組成物総重量に基づいて、50重量%又はそれ以下である請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、ポリマー組成物が押出機内では押出圧を、そして押出機からの押出時には押出圧より低い圧力を受けて、押出機からの発泡性組成物の押出時に発泡性組成物の膨張が起こる押出プロセスである請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記発泡性組成物が二酸化炭素を含む発泡剤を含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記発泡性組成物が水を含む発泡剤を含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項20】
ポリマーフォームを、温度を異ならせることができる2つの領域の間に配置することを含んでなる、請求項1に記載のポリマーフォームの使用方法。

【公表番号】特表2010−511773(P2010−511773A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540225(P2009−540225)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/021954
【国際公開番号】WO2008/069865
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】