説明

赤色に放射する蛍光体及びこの種の蛍光体を有する光源

新規蛍光体は公知のカルシンをベースとする。多くの特性の改善が、LiFの添加により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有利に光源において使用するための、請求項1の上位概念に記載の赤色に放射する蛍光体に関する。本発明は、請求項1の上位概念に記載のニトリドシリケートの種類からなる高効率の蛍光体に関する。さらに、本発明はそれを用いて製造された光源及びこの種の蛍光体の製造方法に関する。
【0002】
背景技術
EP-A 1 568 753及びEP-A 1 614 738は、赤色に放射しかつMSiAlN3:Zの組成を有する蛍光体を開示している。この場合Mは特にCaであり、付活剤Zは特にEuである。この蛍光体はここではカルシン(Calsine)といわれる。この蛍光体はUV及び青色波長領域において良好に励起可能である。この蛍光体はLEDのような光源のために適している。
【0003】
EP-A 1 153 101は、窒化物M2Si58:Eu(式中、Mは特にCaであることができ、付活剤はEuである)のタイプの赤色に放射する蛍光体を開示している。
【0004】
発明の開示
本発明の課題は、赤色に放射する狭帯域の温度安定性の蛍光体を提供することであった。この場合、主波長は610nmより大きくあるべきで、蛍光体はUV−LED及び青色LEDと共に使用するために適しているべきである。
【0005】
前記課題は、請求項1の特徴部分に記載されている構成によって解決される。
【0006】
特に有利な実施形態は引用形式請求項に示されている。
【0007】
この今まで公知の系は、窒化物の場合のように、極めて高い効率及び温度安定性を特徴とするが、広帯域の放射の欠点を有する。公知のカルシンは、窒化物よりも狭帯域で放射し、前記カルシンは青色においてより良好な吸収を示す。ただし、この蛍光の温度安定性は窒化物よりも悪い。さらに、特により高い視覚的効率を達成するために、所定の適用においてより短波長の放射が望ましい。
【0008】
本発明の場合には、カルシンの合成の際にフッ化物を融剤として添加する。これは前記蛍光体の相形成、結晶粒形状及び均質性を改善する。異種イオンによる汚染を受けないために、実際には大抵のフッ化物は、目的化合物中に存在するカチオンと共に使用される。CaSiAlN3:Euの場合に、これはCaF2、AlF3又はEuF3である。LiFは原則としては、融剤として、つまり典型的にこのために適当な少量において、同様に公知である。意外にも、LiFを有意な量で目的化合物中に組み込みかつこの場合に前記カルシンの特性を明らかに改善することが明らかになった。
【0009】
この新規蛍光体は、例えばカラーオンデマンドLEDのため又は白色LEDのため又は他の光源、例えばランプのためにも適している。多様な色温度及び高効率及び良好な演色での適用のために前記蛍光体をオーダーメイドすることができる。
【0010】
前記の格子中へのLiイオンの組み込みにより、前記蛍光体の温度安定性、いわゆる熱消光(thermal quenching)は、前記蛍光体の他の特性を不利に変更することなく明らかに改善される。前記発光の重点及びピークは、意外にも一定のEu含有量の場合により短波長方向へシフトする。これは、一般の傾向に従って効率を高める。理論的には、それに対してむしろ長波長へのシフトが期待される。この理由は、理論的により大きな結晶粒にあり、及びLiFの使用の場合に短波長の発光成分のより高い自己吸収にある。この考察は、しかしながら真実ではないことが明らかになった。
【0011】
それどころか、この量子効率及び放射安定性が改善される傾向が示された。
【0012】
以下では実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】フッ化物添加されたカルシン蛍光体の放射スペクトル及び反射スペクトルを示す。
【図2】LiF含有量の関数としてのフッ化物添加されたカルシン蛍光体の温度消光挙動を示す。
【図3】カルシン蛍光体の酸化安定性に関するLiF含有量の効果を示す。
【0014】
発明を実施するための形態
図1は、バッチ化学量論の範囲で名目上の組成Ca0.88Eu0.02Li0.1AlSi(N0.9670.0333を有するフッ化物添加されたカルシン蛍光体の発光スペクトル及び反射スペクトルを示す。この放射極大は約655nmである。
【0015】
図2は、温度の関数としての多様な割合のLiFについての温度消光挙動を示す。曲線1は、LiFを混合していないカルシンCa0.98Eu0.02AlSiNである。曲線2は、Mに対して1Mol%の割合のLiを有するカルシンの安定性を示し、この場合、M=Ca。曲線3は、Mに対して5Mol%の割合のリチウムを示し、及び曲線4はMに対して10Mol%の割合のLiを示す。この場合それぞれ、上記の式の範囲内で、同じモル量のFが同様にNの代わりに持ち込まれることを意味する。
【0016】
図3は、カルシン蛍光体の酸化安定性に関するLiF含有量の効果を示す。この場合、複雑な挙動パターンが示される。酸化試験前(波線)及び酸化試験後(実線)の相対的量子効率が示される。少量のLiFの使用は量子効率をむしろ悪化させるが、5Mol%のLiF含有量からは酸化安定性の測定可能な改善が示される。この改善は、LiFの含有量の増加と共に、LiFの割合が10Mol%までさらに増加する。より高い割合では、前記安定性は再び悪化する。15Mol%では、両方の曲線は同じになる。
【0017】
ベース蛍光体として、基本的にM−Al−Si−N系(カチオンMを有し、MはCa又はBa又はSr単独で又は混合した形で存在するか又は付加的にMg、Zn、Cdのグループからの少なくとも1種の他の元素と組み合わせられていてもよく、前記蛍光体はEuで付活されている)からなる赤色に発光する蛍光体が適している。
【0018】
前記のLiFの割合は、Mに対して最大で15Mol%であるのが好ましい。
【0019】
前記のLiFの割合は有利に、Mに対して少なくとも1Mol%であるのが好ましい。
【0020】
Mについては、有利にCa単独、又はほとんど、つまり70Mol%より多くのCaが使用されるのが好ましい。
【0021】
この新規の蛍光体の製造は、例えば次のように行うことができ、例えば(Ca,Eu)AlSiN3−LiF(2Mol%)を説明する:
出発物質のCa32(6.02g)、AlN(6.02g)、LiF(0.57g)、Si34(6.87g)及びEu23(0.52g)を、グローブボックス中で、ミキサーを用いて混合する。前記出発物質を、管型炉中で不活性雰囲気下で、有利にN2のもとで、FGを添加して、1450〜1680℃の温度で数時間冷却した。加熱速度及び冷却速度は、この場合、約150〜300K/hである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンMを有するM−Al−Si−N系からなり、Mは元素のCa又はBa又はSrの少なくとも1つを表し、場合により付加的にMg、Zn、Cdのグループからなる少なくとも1種の他の元素と組合せることができ、Mを部分的に置き換えるEuにより付活されている赤色に放射する蛍光体において、前記蛍光体はさらにLiFを含有することを特徴とする赤色に放射する蛍光体。
【請求項2】
LiFの割合は、Mに対して最大15mol%であることを特徴とする、請求項1記載の蛍光体。
【請求項3】
LiFの割合は、Mに対して少なくとも1mol%であることを特徴とする、請求項1記載の蛍光体。
【請求項4】
M=Ca単独か又は主に50mol%より多いことを特徴とする、請求項1記載の蛍光体。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の蛍光体を有する光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−525092(P2010−525092A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503468(P2010−503468)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054389
【国際公開番号】WO2008/125604
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(504458493)オスラム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (168)
【氏名又は名称原語表記】Osram Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, D−81543 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】