説明

赤色蛍光体を用いたプラズマディスプレイ装置および赤色蛍光体を用いたプラズマディスプレイ装置の製造方法

【課題】本発明は、輝度飽和特性を改善し、輝度の高いプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】この目的を達成するために、本発明は、放電により発光する赤色蛍光体層、緑色蛍光体層、青色蛍光体層を有するプラズマディスプレイパネルを備えるプラズマディスプレイ装置であって、蛍光体層はGe元素が添加されたY23:Euよりなる赤色蛍光体を備えることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色蛍光体材料とその材料を用いたプラズマディスプレイ装置および赤色蛍光体を用いたプラズマディスプレイ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ装置(以下、「PDP装置」と記す)は、高精細化、大画面化の実現が可能な画像表示デバイスとして注目されている。
【0003】
プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と記す)は、PDP装置の画像を表示する部分であり、前面板と背面板とで構成されている。
【0004】
背面板は、ガラス基板上に形成されたストライプ状のアドレス電極と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された蛍光体層とで構成されている。
【0005】
PDPは、表示電極、維持電極、走査電極からなる電極群に印加された電圧で放電ガスが放電し、その放電によって発生する紫外線で蛍光体層が発光することで画像表示を行う。
【0006】
PDPは、いわゆる3原色(赤色、緑色、青色)を加法混色することにより、フルカラー表示を行う。このフルカラー表示を行うためにPDPは、赤色、緑色、青色に発光する蛍光体層を備えている。
【0007】
各色の蛍光体層は各色の蛍光体材料が積層されて構成されている。代表的な赤色の蛍光体材料であるY23:Euは、これまでのPDPで使用されていた赤色蛍光体(Y、Gd)BO3:Euよりも発光のメインピークが長波長側にあるため、深い色度の赤色を得ることができる。
【0008】
しかし、PDP駆動においては、放電時に印加する投入維持パルス数が増加するのに応じて輝度が線形に上昇しない「輝度飽和」という問題がある。つまり、輝度の飽和とは、輝度が投入維持パルスによる投入エネルギーに対して線形に増大しない状況のことをいう。この輝度の飽和は、PDPの輝度不足の原因となっている。輝度不足を改善するために、例えば特許文献1には、駆動制御で「輝度飽和」を改善する試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−171721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、PDPの連続点灯により蛍光体の輝度飽和特性自体が変化するなど、この駆動対応だけでは、輝度が不足するという課題は解決されていない。そこで、本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、輝度飽和特性を改善し、輝度の高いPDP装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のPDP装置は、赤色蛍光体層、緑色蛍光体層、青色蛍光体層を有するプラズマディスプレイパネルを備え、蛍光体層はGe元素が添加されたY23:Euよりなる赤色蛍光体を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このような構成によれば、維持パルス数増加に対して発生する輝度飽和特性を抑制し、高輝度なPDP装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態におけるPDPの電極の概略構成を示す平面図
【図2】本発明の実施の形態におけるPDPの画像表示領域における部分断面斜視図
【図3】本発明の実施の形態におけるPDP装置の構成を示す概略図
【図4】本発明の実施の形態におけるPDP装置の初期輝度とYOXに対するGe元素添加量との関係を示した特性図
【図5】本発明の実施の形態におけるPDP装置の輝度飽和特性とYOXに対するGe元素添加量との関係を示した特性図
【図6】本発明の実施の形態におけるPDP装置の1000時間連続点灯後の輝度飽和特性の維持率を示した特性図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施の形態>
1、プラズマディスプレイパネル(PDP100)
図1は、PDPの電極の概略構成を示す平面図であり、前面板(図示せず)を取り除いた状態を示している。
【0015】
PDP100は、前面ガラス基板101と、背面ガラス基板102と、を備えている。ガラス製等から構成される前面板上には、維持電極103と、走査電極104と、からなる表示電極対が互いに平行に複数対形成されている。そして、走査電極104と維持電極103を覆うように誘電体ガラス層105が形成され、その誘電体ガラス層105上にMgO保護層106が形成されている。このMgO保護層106は、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)ガスを封入した場合に2次電子放出係数が大きく耐久性が優れるため、放電セルにおける放電開始電圧が下がる。背面ガラス基板102上にはアドレス電極107が複数形成され、アドレス電極107を覆うように下地誘電体ガラス層108が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁109が形成されている。そして、隔壁109の側面および誘電体ガラス層105上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層が設けられている。これら前面板と背面板とは、微小な放電空間122を挟んで表示電極対とアドレス電極107とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして、内部の放電空間には、ネオン(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスが放電ガスとして封入されている。なお、本実施の形態では、発光効率を向上させるためにキセノン分圧を約10%とした放電ガスを用いている。放電空間122は、隔壁109によって複数の区画に仕切られており、表示電極対とアドレス電極107とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
【0016】
なお、PDP100の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁109を備えたものであってもよい。また、放電ガスの混合比率も上述した数値に限られるわけではなく、その他の混合比率であってもよい。
【0017】
PDP100には、行方向に長いn本の走査電極104およびn本の維持電極103が配列され、列方向に長いm本のアドレス電極107が配列されている。そして、1対の走査電極および維持電極と1つのアドレス電極とが交差した部分に放電セルが形成される。つまり、維持電極103と走査電極104とアドレス電極107とは3電極構造の電極マトリックスを有しており、走査電極104とアドレス電極107との交点に放電セルが形成されている。したがって、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
【0018】
図2は、PDP100の画像表示領域における部分断面斜視図である。PDP100は、前面パネル130と背面パネル140とで構成されている。前面パネル130の前面ガラス基板101上には維持電極103と走査電極104と誘電体ガラス層105とMgO保護層106とが形成されている。背面パネル140の背面ガラス基板102上にはアドレス電極107と下地誘電体ガラス層108と隔壁109と蛍光体層110R、110G、110Bとが形成されている。前面パネル130と背面パネル140とを貼り合わせ、前面パネル130と背面パネル140との間に形成される放電空間122内に放電ガスを封入してPDP100が完成する。
【0019】
図3は、PDP100を用いたPDP装置の構成を示す概略図である。PDP100は、駆動装置150と接続されることでPDP装置を構成している。PDP100には表示ドライバ回路153、表示スキャンドライバ回路154、アドレスドライバ回路155が接続されている。コントローラ152はこれらの電圧印加を制御する。点灯させる放電セルに対応する走査電極104とアドレス電極107へ所定電圧を印加することでアドレス放電を行う。コントローラ152はこの電圧印加を制御する。その後、維持電極103と走査電極104との間にパルス電圧を印加して維持放電を行う。この維持放電によって、アドレス放電が行われた放電セルにおいて紫外線が発生する。この紫外線で励起された蛍光体層が発光することで放電セルが点灯する。各色セルの点灯、非点灯の組み合わせによって画像が表示される。
【0020】
2、プラズマディスプレイパネルの製造方法
次に、PDP100の製造方法を図1と図2を参照しながら説明する。まず、前面パネル130の製造方法を説明する。前面ガラス基板101上に、各N本の維持電極103と走査電極104をストライプ状に形成する。その後維持電極103と走査電極104を誘電体ガラス層105でコートする。さらに誘電体ガラス層105の表面にMgO保護層106を形成する。
【0021】
維持電極103と走査電極104は、銀を主成分とする電極用の銀ペーストをスクリーン印刷により塗布した後、焼成することによって形成する。誘電体ガラス層105は、酸化ビスマス系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷で塗布した後、焼成して形成する。上記ガラス材料を含むペーストは、例えば、30重量%の酸化ビスマス(Bi23)と28重量%の酸化亜鉛(ZnO)と23重量%の酸化硼素(B23)と2.4重量%の酸化硅素(SiO2)と2.6重量%の酸化アルミニウム(Al23)を含む。さらに、10重量%の酸化カルシウム(CaO)と4重量%の酸化タングステン(WO3)と有機バインダ(α−ターピネオールに10%のエチルセルロースを溶解したもの)とを混合して形成する。ここで、有機バインダとは樹脂を有機溶媒に溶解したものであり、樹脂としてエチルセルロース以外にアクリル樹脂、有機溶媒としてブチルカービトールなども使用することができる。さらに、こうした有機バインダに分散剤(例えば、グリセルトリオレエート)を混入させてもよい。
【0022】
誘電体ガラス層105は所定の厚み(約40μm)となるように塗布厚みを調整する。MgO保護層106は酸化マグネシウム(MgO)から成るものであり、例えばスパッタリング法やイオンプレーティング法によって所定の厚み(約0.5μm)となるように形成する。
【0023】
次に、背面パネル140の製造方法を説明する。背面ガラス基板102上に、電極用の銀ペーストをスクリーン印刷し、焼成することによってM本のアドレス電極107をストライプ状に形成する。アドレス電極107の上に酸化ビスマス系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷法で塗布した後、焼成して下地誘電体ガラス層108を形成する。同じく酸化ビスマス系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷法により所定のピッチで繰り返し塗布した後に焼成して隔壁109を形成する。放電空間122はこの隔壁109によって区画され、放電セルが形成される。隔壁109の間隔寸法は42インチ〜65インチのフルHDテレビやHDテレビに合わせて130μm〜240μm程度に規定されている。
【0024】
隣接する2本の隔壁109の間の溝に、赤色蛍光体層110R、緑色蛍光体層110G、青色蛍光体層110Bを形成する。赤色蛍光体層110Rは例えばY23:Euの赤色蛍光体材料からなる。緑色蛍光体層110Gは例えばZn2SiO4:Mnの緑色蛍光体材料からなる。青色蛍光体層110Bは例えばBaMgAl1017:Euの青色蛍光体材料からなる。
【0025】
このようにして作製された前面パネル130と背面パネル140を、前面パネル130の走査電極104と背面パネル140のアドレス電極107とが直交するように対向して重ね合わせる。封着用ガラスを周辺部に塗布し、450℃程度で10分〜20分間焼成する。図1に示すように、気密シール層121の形成により、前面パネル130と背面パネル140とを封着する。そして、一旦放電空間122内を高真空に排気したのち、放電ガス(例えば、ヘリウム−キセノン系、ネオン−キセノン系の不活性ガス)を所定の圧力で封入することによってPDP100が完成する。
【0026】
3、蛍光体材料の製造方法
次に、各色の蛍光体材料の製造方法について説明する。本実施の形態において、蛍光体材料は、固相反応法により製造されたものを用いている。
【0027】
青色蛍光体材料であるBaMgAl1017:Euは以下の方法で作製される。炭酸バリウム(BaCO3)と炭酸マグネシウム(MgCO3)と酸化アルミニウム(Al23)と酸化ユーロピウム(Eu23)とを蛍光体組成に合うように混合する。この混合された混合物を空気中において800℃〜1200℃で焼成し、さらに水素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1200℃〜1400℃で焼成して作製する。青色蛍光体には、BaMgAl1017:Euの他に、CaMgSi26:Eu2+等が挙げられる。
【0028】
緑色蛍光体材料であるZnSi24:Mnは以下の方法で作製する。酸化亜鉛(ZnO)と酸化珪素(SiO2)と二酸化マンガン(MnO2)とを蛍光体組成に合うように混合する。この混合された混合物を空気中にて600℃〜900℃で焼成し、さらに窒素中、あるいは窒素と水素の混合雰囲気中で1000℃〜1350℃で焼成して作製する。緑色蛍光体には、ZnSi24:Mnの他にY3Al512:Ce3+やBaMg2Al1627:Eu2+,Mn2+等が挙げられる。
【0029】
次に赤色蛍光体材料について説明する。本発明の実施の形態では、赤色蛍光体としてGeが添加されたY23:Euを用いる。Geが添加されたY23:Euは以下の方法で作製する。酸化イットリウム(Y23)と酸化ユーロピウム(Eu23)を蛍光体組成に合うように混合する。そこに、酸化ゲルマニウム(GeO2)を1molのY23:Euに対して50ppmから10000ppmの範囲で調合し、混合する。この混合物を空気中にて1200℃で焼成して作製する。
【0030】
4、実施例
本実施例では、赤色蛍光体層110RとしてGeを添加したY23:Eu(以下、YOXと記載する)を、緑色蛍光体層110GとしてZn2SiO4:Mnを、青色蛍光体層110BとしてBaMgAl1017:Euを、積層した背面パネル140でPDP100を作製する。
【0031】
このPDP100に駆動装置150を接続し、PDP装置を作製する。このPDP装置において赤色の蛍光体層のみを発光させ、全画面を赤色画面として表示する。この時の、PDP装置におけるPDP100の初期輝度の相対値、輝度飽和係数(%)と、1000時間後の輝度飽和係数(%)と、輝度飽和維持比とを測定する。
【0032】
4−1、初期輝度の相対値
本実施の形態において、赤色の蛍光体層のみを発光させ、全画面を赤色画面として表示を開始したときの輝度である。この初期輝度(%)の相対値を次のように求める。Geを添加しないYOXを用いたPDPの初期輝度を100と設定し、100を基準とする。この基準に基づいて、各Geの添加量における初期輝度(%)が相対的に求められる。
【0033】
4−2、輝度飽和係数
また、本実施の形態において、PDP100の輝度飽和係数(%)は、以下のように求める。つまり、維持期間における維持パルスを100発続けて印加した際の輝度を100で割り、その値を基準値100とする。この基準値に基づいて、1000発続けて印加した際の輝度を1000で割った値を相対的に求めた値が輝度飽和係数(%)である。これは、維持パルス数1発あたりの輝度を、100発、1000発で相対的に比較することに相当する。この求められた輝度飽和係数(%)から、輝度飽和特性がわかる。つまり、輝度飽和係数(%)が大きいほど、維持パルスを100発から1000発にしても輝度が飽和しておらず、PDPの輝度飽和特性が良好と判断できる。
【0034】
また、本実施の形態における1000時間後の輝度飽和係数(%)は、PDP装置の維持電極103と走査電極104とに電圧185Vかつ周波数100kHzの投入維持パルスを交互に1000時間連続して印加する。1000時間点灯後のPDP装置において赤色蛍光体層のみを発光させ、上述した方法と同様に輝度飽和係数(%)を求める。
【0035】
4−3、飽和維持比
さらに、PDP装置におけるPDPの飽和維持比は、1000時間連続点灯した後の輝度飽和係数(%)がPDPの初期点灯の輝度飽和係数(%)よりも劣っているか否かを表す係数である。よって、この飽和維持比の値が1又は1に極めて近いほど、パネルの初期点灯における発光輝度から1000時間点灯した後においても、輝度飽和係数(%)の低下が抑制されていることを示す。この飽和維持比は、各々のGe添加量におけるPDPの1000時間点灯後の輝度飽和係数(%)の値を、点灯初期の輝度飽和係数(%)で割った値である。
【0036】
なお、初期輝度および発光輝度は、全てコニカミノルタ CS2000により測定を行った。
【0037】
4−4、実験結果
表1は、種々の量のGeを添加したYOXを蛍光体として用いたPDP装置におけるPDPの初期輝度の相対値、輝度飽和係数(%)、1000時間経過後の輝度飽和係数(%)、飽和維持比を示している。
【0038】
より具体的には、サンプル番号No.1に示しているように、GeがYOXに添加されていない赤色蛍光体を用いた場合のPDPの初期輝度(%)を100、輝度飽和係数(%)を100とし、この値を基準とする。
【0039】
サンプル番号No.2〜9は、50ppm〜10000ppmにおける種々の量のGeを添加したYOXを蛍光体として用いた場合の結果である。
【0040】
例えば、サンプル番号No.7では、以下のようになった。
【0041】
GeをYOXに対して2500ppm添加した赤色蛍光体材料を用いた場合におけるPDPの初期輝度の相対値は105.1、輝度飽和係数は110%、1000時間後の輝度飽和係数は110%、飽和維持比は1であった。
【0042】
【表1】

【0043】
上記表1に基づいてグラフ化したものを図4、図5、図6に示した。
【0044】
図4は、上記表1のPDP初期輝度の相対値の結果に基づいてグラフ化したものである。横軸をYOXに対するGeの添加量(ppm)を示し、縦軸をPDP装置におけるPDPの初期輝度の相対値を示した。PDP装置におけるPDPの初期輝度とYOXに対するGe添加量の関係を相対的に示した。
【0045】
図4に示すように、YOXに対するGeの添加量が100ppm以上5000ppm以下の範囲では、Geを添加しないYOXのみを蛍光体として用いた場合におけるPDPの初期輝度(%)に比べて初期輝度が高い。しかし、YOXに対するGeの添加量が5000ppmを超える範囲では、PDPの初期輝度が、Geを添加していないYOXのみを蛍光体として用いた場合におけるPDPの初期輝度(%)を下回った。
【0046】
それは、Geを過剰に添加したことによる粉体初期輝度の低下、およびパネル作製工程での輝度低下が大きくなることが影響したためであると考えられる。
【0047】
図5は、表1の結果に基づいて、パネル輝度飽和係数(%)とYOXに対するGe添加量(ppm)の関係を示すためにプロットした輝度飽和特性図である。▲で示したグラフが1000発維持パルスを印加したときのパネル初期点灯の発光輝度をもとに求めた輝度飽和係数(%)である。そして、●で示したグラフが、画面表示開始から1000時間経過した後における輝度飽和係数(%)である。
【0048】
横軸にYOXに対するGeの添加量(ppm)を示し、縦軸にPDPの輝度飽和係数(%)を示す。
【0049】
図5に示すように、Geの添加量が100ppm以上の範囲では、Geを添加しないYOXの場合に比べて良好な輝度飽和特性を得ることができる。しかし、約2500ppm以上のGeをYPO4:Euに添加したとしても、輝度飽和係数が大きくならず、飽和状態となる。1000時間経過後における輝度飽和係数においても同様に、Geの添加量が100ppm以上の場合、Geを添加しないYOXの場合に比べて良好な輝度飽和特性を得ることができる。つまり、Geの添加量が100ppm以上の場合、1000時間点灯し続けたとしても、輝度飽和係数が維持される。
【0050】
図6は、PDPの飽和維持比とYOXに対するGe添加量の関係を示した特性図である。横軸にGeの添加量(ppm)、縦軸にPDPの飽和維持比係数を示す。
【0051】
図6に示すように、YOXに対するGeの添加量が100ppm以上の範囲では、Geを添加しないYPVの場合よりも飽和維持比を改善することができる。つまり、Geの添加量が100ppm以上の場合、1000時間点灯し続けたとしても、輝度飽和係数が維持される。これは、図5からも、起動飽和係数が維持されていることがわかる。つまり、図5に示すように、100ppm以上のGeをYOXに添加した場合、1000発維持パルスを印加したときの輝度飽和係数(%)と、1000時間経過後の輝度飽和係数(%)とはほぼ等しい値である。したがって、1000時間持続して印加し続けても、輝度飽和係数が小さくならない。つまり、PDPの輝度飽和特性が良好なまま維持されていることを示している。
【0052】
4−5、実験結果まとめ
以上、まとめると、より、YOXに対するGeを100ppm〜5000ppm添加したYOXを蛍光体として用いることで、輝度飽和特性を改善し、高い初期輝度を得ることができることがわかる。
【0053】
Geの添加量の下限を100ppmとしたのは、パネルの初期輝度が基準よりも大きく、かつ輝度飽和係数が基準よりも大きく、1000時間経過しても輝度飽和係数が劣らない最低限の数値レベルとしたからである。さらに、上限を5000ppmとしたのは、飽和維持係数が基準よりも大きい値を維持しているが、パネルの初期輝度が5000ppmを超えると急激に低下するためである。
【0054】
また、500ppm〜5000ppmのGeを添加したYOXを赤色蛍光体として用いることでより、高い初期輝度を得ることができ、輝度飽和特性がさらに改善される。
【0055】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態において特徴的な部分を以下に列記する。なお、上記実施形態に含まれる発明は、以下に限定されるものではない。なお、各構成の後ろに括弧で記載したものは、各構成の具体例である。各構成はこれらの具体例に限定されるものではない。
(1)
本発明のプラズマディスプレイ装置は、赤色蛍光体層(110R)、緑色蛍光体層(110G)、青色蛍光体層(110B)を有するプラズマディスプレイパネル(PDP100)であって、赤色蛍光体層(110R)はGe元素が添加されたY23:Euよりなる赤色蛍光体を備えることを特徴とする。これにより、輝度飽和特性が改善され、かつ、初期輝度の高いプラズマディスプレイパネルを得ることができる。
(2)
(1)に記載のプラズマディスプレイ装置において、赤色蛍光体は、Y23:Euに対してGe元素が100ppm以上5000ppm以下添加されていることを特徴とする。これにより、より輝度飽和特性が改善されることで連続的に点灯しても輝度の高いPDP装置を提供することが可能となる。
(3)
本発明のプラズマディスプレイ装置の製造方法は、赤色蛍光体層(110R)、緑色蛍光体層(110G)、青色蛍光体層(110B)を有するプラズマディスプレイパネル(PDP100)を備えるプラズマディスプレイ装置の製造方法であって、酸化イットリウムと、酸化ユーロピウムと、酸化ゲルマニウムと、を混合して混合物を作製するステップと、混合物を空気中で焼成してGe元素が添加されたY23:Euよりなる赤色蛍光体を作製するステップと、を備えることを特徴とする。これにより、輝度飽和特性が改善され、かつ、初期輝度の高いPDPパネルを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、パルス数に対する輝度飽和特性を抑制し、初期輝度を改良したPDP装置を実現することができ、大画面の表示デバイスなどに有用である。
【符号の説明】
【0057】
100 PDP
101 前面ガラス基板
102 背面ガラス基板
103 維持電極
104 走査電極
105 誘電体ガラス層
106 MgO保護層
107 アドレス電極
108 下地誘電体ガラス層
109 隔壁
110R 蛍光体層(赤色蛍光体層)
110G 蛍光体層(緑色蛍光体層)
110B 蛍光体層(青色蛍光体層)
121 気密シール層
122 放電空間
130 前面パネル
140 背面パネル
150 駆動装置
152 コントローラ
153 表示ドライバ回路
154 表示スキャンドライバ回路
155 アドレスドライバ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色蛍光体層、緑色蛍光体層、青色蛍光体層を有するプラズマディスプレイ装置であって、前記蛍光体層はGe元素が添加されたY23:Euよりなる赤色蛍光体を備えることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
前記赤色蛍光体は、前記Y23:Eu1molに対してGe元素が100ppm以上5000ppm以下添加されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
赤色蛍光体層、緑色蛍光体層、青色蛍光体層を有するプラズマディスプレイ装置の製造方法であって、酸化イットリウム化合物と、酸化ユーロピウム化合物と、酸化ゲルマニウムと、を混合して混合物を作製するステップと、前記混合物を空気中で焼成してGe元素がY23:Eu1molに対して100ppm以上5000ppm以下添加されたY23:Euよりなる赤色蛍光体を作製するステップとを備えることを特徴とするプラズマディスプレイ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−38444(P2012−38444A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175024(P2010−175024)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】