説明

走査型プローブ顕微鏡用探針

【課題】電子放出源を備えた走査型プローブ顕微鏡用探針を提供する。
【解決手段】円錐状の針部101aを備えたカンチレバー状の基部101と、基部101の上に形成された絶縁層102と、絶縁層102の上に形成された電子放出層103とを備える。この探針は、これらの積層構造からなる探針部110と片持ちの梁部111とから構成されている。探針部110は、針部101aの上に設けられた絶縁層102及び電子放出層103から構成され、この先端部に行くほど細くなるように形成されている。また、探針部110における電子放出層103の針部110の上面(探針部110の先端部上面)は、平坦に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy;AFM)などの走査型プローブ顕微鏡に用いられる走査型プローブ顕微鏡用探針に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡は、針状のチップを有するカンチレバー状の探針を用いて物質表面の凹凸を原子レベルで検出する顕微鏡である。また、酸化や放電現象を利用して、走査型プローブ顕微鏡により物質の加工を行う装置も市販されている。この加工によれば、原子レベルの物質を観測しながら加工できる。しかしながら、走査型プローブ顕微鏡を用いた酸化は、加工の精度が大気圧力や湿度などに敏感であり、また材料も限定される。また、放電現象を用いた加工では、探針及び試料が配置される空間を高い真空状態(低い圧力状態)にする必要があり、また高電圧の印加が必要となるので装置の構成が大がかりで複雑なものとなる。また、高電圧を印加するために、加工対象の物質や探針部に破損が発生しやすいという問題がある。また、いずれの加工においても、加工領域は探針の部分よりも広い範囲となり、加工領域の選択性があまりよくない。
【0003】
一方、近年では、電子線を用いた表面処理などの加工技術が注目されている。電子線は、高いエネルギー利用効率,透過性,及びこれらの高い制御性を持ち、熱を伴わない常温処理などの優れた特徴が得られる。ここで、上述した走査型プローブ顕微鏡の探針の部分に、電子放出源を組み合わせることで、より微細な範囲の加工が可能になるなど、新たな加工技術の開発が期待できる。しかしながら、従来よりある熱電子放出や電界放出による電子源では、微細な探針部に同時に設けることができない。
【0004】
【非特許文献1】C.A.Mead, "Operation of Tunnel-Emission Device", Journal of Applied Physics, Vol.32, No.4, pp.646-652,1961.
【非特許文献2】K. Nishiguchi, et ul., "Multilevel memory using an electrically formed single-electron box", Applied Physics Letters, Vol.85, No.7, pp.1277-1279, 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の技術では、走査型プローブ顕微鏡を利用することで、ある程度微細な加工などが可能となるが、制御性に乏しく、また、装置が大がかりとなるなどの問題があった。また、電子線を用いることで、より多くの様々な加工が可能となるが、従来の技術では、走査型プローブ顕微鏡の探針部に電子放出源を組み合わせることが容易ではなかった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、電子放出源を備えた走査型プローブ顕微鏡用探針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用探針は、基部の上に設けられた探針部及び基部の上に設けられた電子放出部を備え、電子放出部は、所定の第1電圧が印加される電極層と、電極層の上に絶縁層を介して形成されて第1電圧より大きい第2電圧が印加される電子放出層とから構成されているものである。第1電圧と第2電圧の印加により、電極層の電子が絶縁層をトンネルして通過し、通過した一部の電子が電子放出層より放出される。
【0008】
上記走査型プローブ顕微鏡用探針において、電子放出部は、探針部に設けられているものであればよい。この場合、電子放出部の先端部の上面は、平坦に形成されているとよい。また、基部は、探針部と探針部に続く梁部とから構成し、梁部に配置された電荷センサーを備えるようにしてもよい。
【0009】
また、上記走査型プローブ顕微鏡用探針において、基部は、探針部と探針部に続く梁部とから構成され、電子放出部は、梁部に設けられているようにしてもよい。なお、上記走査型プローブ顕微鏡用探針において、基部が電極層であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、基部の上に、探針部とともに、所定の第1電圧が印加される電極層と、電極層の上に絶縁層を介して形成されて第1電圧より大きい第2電圧が印加される電子放出層とから構成された電子放出部を備えるようにしたので、電子放出源を備えた走査型プローブ顕微鏡用探針が提供できるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
[実施の形態1]
はじめに、本発明における第1の実施の形態について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1における走査型プローブ顕微鏡用探針の構成を示す平面図(a),断面図(b),(c)である。実施の形態1における探針は、円錐状の針部101aを備えたカンチレバー状の基部101と、基部101の上に形成された絶縁層102と、絶縁層102の上に形成された電子放出層103とを備える。この探針は、これらの積層構造からなる探針部110と片持ちの梁部111とから構成されている。
【0012】
基部101は、例えば、リンなどの不純物が高濃度に導入された導電性を備えた単結晶シリコンから構成されたものである。また、絶縁層102は、例えば基部101の表面を熱酸化することで形成された酸化シリコンから構成され、膜厚が18nm程度に形成されたものである。また、電子放出層103は、高濃度に不純物が導入されたポリシリコンから構成され、膜厚16nm程度に形成されたものである。
【0013】
探針部110は、針部101aの上に設けられた絶縁層102及び電子放出層103から構成され、この先端部に行くほど細くなるように形成されている。また、探針部110における電子放出層103の針部110の上面(探針部110の先端部上面)は、平坦に形成され、電子が上面より垂直に放出されて広がらないようにしている。なお、先端部が平坦である必要はない。また、探針部110の先端部(電子放出部)においては、絶縁層102が薄く形成された薄層領域102aを設け、探針部110の先端部のみから電子が放出されやすいようにしている。なお、薄層領域102aは、なくても良い。
【0014】
例えば、探針部110の先端の先に所定距離離間して導電性を有するステージを配置し、このステージの上に試料となる物質を配置し、ステージに所定の電圧を印加した状態で、基部101と電子放出層103との間に電圧を印加することで、探針部110の先端より試料に向けて電子が放出されるようになる。
【0015】
以下、上述した探針部110における電子放出についてより詳細に説明する。まず、図2に示すような、絶縁体層202を導電体層201と導電体層203で挾み、導電体層203に対して真空204を挟んで導電体層205が対向配置された構造について考える。ここで、導電体層201に電圧V1,導電体層203に電圧V2を印加すると(V2>V1)、導電体層203の表面から真空204の側に電子が放出され、放出された電子が導電体層205に到達する。
【0016】
この原理を図2(b)に示したエネルギーバンド図で説明する。導電体層201に印加するV1に対して導電体層203に印加するV2の電圧を大きくすると、導電体層203のエネルギーポテンシャルが導電体層201に対して下がることで、絶縁体層202に電界がかかり、絶縁体層202のポテンシャルが斜めに傾く。これにより、導電体層201の電子211は、e(V2−V1)分のエネルギーを与えられて絶縁体層202をトンネルして通り抜けることができる。なおeは素電荷である。電子211は、絶縁体層202の中を非弾性散乱でエネルギーを失いながら通過し、導電体層203に達する。
【0017】
この中で、エネルギーを大きく失った電子212は、導電体層203に流れ込み通常のトンネル電流となる。これに対し、エネルギーを失いながらも導電体層203の仕事関数φよりも大きなエネルギーを持って導電体層203の表面に達した電子213は、真空204中に放出される。従って、導電体層203より電子を放出させるためには、e(V2−V1)>φとなるように電圧を印加して散乱しても十分なエネルギーを与え、さらに散乱を減らして失うエネルギーを小さくすれば良い。
【0018】
φは高くても6eV程度であることから、V2−V1を6V程度に小さくすることができるので、既存の電子放出素子よりも低電源化が可能となる。また、一度、導電体層203の表面から電子が放出してしまえば、放出された電子は簡単に導電体層205まで達することができるので、導電体層205に印加するV3も、V2程度に小さくすることができる。また、V3は、大きくすることも可能なので、放出電子のエネルギーを広い範囲で簡単に制御できる。
【0019】
放出された電子は、電界に沿って放出されるので、導電体層203の表面に対して垂直に放出される。これにより、放出電子が広がる(拡散する)ことを防ぐことが可能となり、導電体層203の形状通りに電子が放出されるので電子レンズを省くことができる。また、大面積や小面積の電子放出も容易であるといえる。駆動電圧が小さいことや発熱しないことから、導電体層203と導電体層205の間の空間は104Pa程度の真空度でもよく、真空を維持するシステムも劇的に簡素化できる。これらのことから、図2の構造を利用した電子放出素子は、低電圧化,低真空度化,及びシステム簡素化が可能となる。
【0020】
また、電子放出をより効率よく行うためには、絶縁体層202及び導電体層203を電子が伝導するときの散乱によるエネルギーの損失を小さくした方がよい。このためには、絶縁層202及び導電体層203の厚さを、10nm程度とすればよい。前述した実施の形態1における探針では、基部101が図2の導電体層201に相当し、絶縁層102が図2の絶縁体層202に相当し、電子放出層103が図2の導電体層203に相当する。また、本実施の形態1における走査型プローブ顕微鏡用探針を用いた走査型プローブ顕微鏡では、前述したステージが、図2の導電体層205に相当する。
【0021】
なお、前述した実施の形態1では、基部101を単結晶シリコンから構成したが、これに限るものではない、基部101は、例えばアルミニウムなどの金属から構成しても良い。また、絶縁層102は、酸化シリコンに限らず、窒化シリコンや酸化アルミニウムなどの絶縁材料から構成しても良い。また、電子放出層103も、ポリシリコンに限らず、アルミニウムなどの金属から構成することが可能である。なお、電子放出層103(導電体層203)にシリコンを用いれば、金属に比べて散乱確率が低いので、より多くの電子を放出することが可能となるだけでなく、金属に比べて薄くしやすいということも散乱をさらに下げることに貢献する。また、素子の作製に、シリコンLSIの加工技術が利用できるので、集積化や素子の縮小化が容易である。
【0022】
次に、本実施の形態1における探針による電子放出特性について説明する。まず、基部101に0V、電子放出層103に電圧15V(V2)を印加し、図2の導電体層205である上記ステージに電圧V3を印加したときの、印加した電圧差と放出電子数との関係を図3(a)に示す。図3(a)から分かるように、電子放出層103に印加する電圧が15V程度と小さくても電子が放出されており、また、電子放出層103とステージとの間の電圧差がなくても電子が放出されており、小さな電圧で電子放出動作が可能である。従って、探針をより多くの条件の設計寸法で作製することができる。
【0023】
また、真空度と電子放出特性との関係について示すと、図3(b)に示すように、真空度が104Pa程度であれば電子放出が得られるので、高真空な環境が必要なく、走査型プローブ顕微鏡に容易に適用可能であることが分かる。また、このことより、様々なガスが存在する雰囲気において電子の放出が可能であることが分かり、様々なガス雰囲気での電子照射効果の検討が可能となる。なお、図3(b)では、基部101に0V,電子放出層103に20Vの電圧を印加した状態で、ステージに40Vの電圧を印加した場合を白丸で示し、ステージに100Vの電圧を印加した場合を黒丸で示している。
【0024】
[実施の形態2]
次に、本発明における第2の実施の形態について、図4を用いて説明する。図4は、実施の形態2における走査型プローブ顕微鏡用探針の構成を示す平面図(a),断面図(b),(c)である。実施の形態2における探針は、まず、円錐状の針部401aを備えたカンチレバー状の基部401を備えている。なお、基部401の針部401a形成領域を探針部410とし、これに続く部分を梁部411とする。本実施の形態2においては、基部401の梁部411の領域において、絶縁層402と、絶縁層402の上に形成された電子放出層403とを備えるようにしたものである。
【0025】
実施例2における探針は、探針部410以外の梁部411に、基部401,絶縁層402,及び電子放出層403から構成された電子放出部を備えるようにしたものである。実施例2における探針では、図4(b)に示すように、電子放出部を構成する絶縁層402の針部401aに近い先端部の膜厚を、他の領域の絶縁層402より薄く形成している。このように構成することで、薄く形成している領域において、より電子が放出されやすい状態となり、当該領域より選択的に電子が放出されるようになる。例えば、厚い部分の絶縁層402の膜厚を、薄い部分の絶縁層402の膜厚の2倍にすれば、絶縁層402の厚い領域における電子放出層403からは、薄い部分に比較して電子放出が桁違いに発生しにくい状態となる。
【0026】
本実施の形態2における走査型プローブ顕微鏡用探針では、探針部410とは異なる箇所から電子が放出される。例えば、探針部410の先端の先に所定距離離間して導電性のステージを配置し、このステージの上に試料となる物質を配置し、ステージに所定の電圧を印加した状態で、基部401と電子放出層403との間に電圧を印加することで、絶縁層402が薄くされた電子放出層403より試料に向けて電子が放出されるようになる。探針部410を用いて試料の表面を観察した後、この観察結果をもとに、所望の箇所に本実施例2の探針の上記電子放出部が配置されるように移動させれば、所望とする箇所に電子を照射することができる。本実施の形態2の探針によれば、実施の形態2の探針に比較して、電子放出部の形成がより容易である。また、電子放出部を、より平らで小さな構造とすることができるので、形状に依存する電子放出の広がりを抑制することができ、より微細な領域に電子放出をすることが可能となる。
【0027】
[実施の形態3]
次に、本発明における第3の実施の形態について、図5を用いて説明する。図5は、実施の形態1における走査型プローブ顕微鏡用探針の構成を示す平面図(a),断面図(b),(c)である。実施の形態3における探針は、円錐状の針部501aを備えたカンチレバー状の基部501と、基部501の上に形成された電極層502と、電極層502の上に形成された絶縁層503と、絶縁層503の上に形成された電子放出層504とを備える。この探針は、これらの積層構造からなる探針部510と片持ちの梁部511とから構成されている。
【0028】
本実施の形態3の探針では、電極層502は、例えば、リンなどの不純物が高濃度に導入された導電性を備えたポリシリコンから構成されたものである。例えば、基部501の上に、よく知られたCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより導電性ポリシリコンを堆積することで、電極層502が形成可能である。また、電極層502は、アルミニウムなどの金属から構成しても良い。例えば、基部501の上に、よく知られたスパッタ法によりアルミニウムを堆積することで、電極層502が形成可能である。
【0029】
また、絶縁層503は、例えばシリコンよりなる電極層502の表面を熱酸化することで形成された酸化シリコンから構成されたものであればよい。また、絶縁層503は、よく知られたCVD法により堆積された酸化シリコンより構成されたものであっても良い。また、電子放出層504は、高濃度に不純物が導入されたポリシリコンから構成され、膜厚16nm程度に形成されたものである。また、電子放出層504は、電極層502と同様に、アルミニウムなどの金属から構成することも可能である。
【0030】
探針部510は、針部501aの上に設けられた電極層502,絶縁層503,及び電子放出層504から構成されている。なお、電子放出層504の針部510の上面を平坦に形成することで、電子が上面より垂直に放出されて広がらないようにすることができる。また、探針部510の先端部(電子放出部)においては、絶縁層503が薄く形成された薄層領域503aを備え、探針部510の先端部のみから電子が放出されやすいようにしている。なお、薄層領域503aは、設けなくても良い。本実施の形態3における探針によれば、カンチレバーとなる基部501を、任意の材料から構成することが可能となる。例えば、基部501は、導電性を備えない単結晶シリコンから構成することが可能である。
【0031】
本実施の形態3においても、例えば、探針部510の先端の先に所定距離離間して導電性のステージを配置し、このステージの上に試料となる物質を配置し、ステージに所定の電圧を印加した状態で、電極層502と電子放出層504との間に電圧を印加することで、探針部510の先端より試料に向けて電子が放出されるようになる。
【0032】
[実施の形態4]
次に、本発明における第4の実施の形態について、図6を用いて説明する。図6は、実施の形態4における走査型プローブ顕微鏡用探針の構成を示す平面図(a),断面図(b),(c),(d)である。実施の形態4における探針は、円錐状の針部601aを備えたカンチレバー状の基部601と、基部601の上に形成された絶縁層602と、絶縁層602の上に形成された電子放出層603とを備える。この探針は、これらの積層構造からなる探針部610の部分と、片持ちの梁部611の部分とから構成されている。梁部611において、絶縁層602の上に、電子放出層603に続く電子放出層配線603aが配置されている。また、探針部610の先端部(電子放出部)においては、絶縁層602が薄く形成された薄層領域602aを設け、探針部610の先端部のみから電子が放出されやすいようにしている。
【0033】
基部601は、例えば、リンなどの不純物が高濃度に導入された導電性を備えた単結晶シリコンから構成されたものである。また、絶縁層602は、例えば基部601の表面を熱酸化することで形成された酸化シリコンから構成され、膜厚が18nm程度に形成されたものである。また、電子放出層603は、高濃度に不純物が導入されたポリシリコンから構成され、膜厚16nm程度に形成されたものである。なお、実施の形態1と同様に、他の材料から構成されていても良い。探針部610は、針部601aの上に設けられた絶縁層602及び電子放出層603から構成されている。なお、電子放出層603の針部610の上面を平坦に形成することで、電子が上面より垂直に放出されて広がらないようにすることができる。
【0034】
上述の構成は、前述した実施の形態1の探針にほぼ同様である。本実施の形態4の探針では、梁部611の絶縁層602の上に、新たに電荷センサー623を備えるようにしたものである。本実施の形態4においては、絶縁層602の上に制御配線層621を設け、制御配線層621の先端部の上に、絶縁層622を介して電荷センサー623を配置している。電荷センサー623は、電子が放出される探針部610から、所定領域離間して配置する。電荷センサー623の配置箇所は、探針部610から放出される電子が、照射されない領域が好ましい。また、電荷センサー623より発生する電界により、探針部610から放出される電子の方向が乱されないように、電荷センサー623を配置した方がよい。
【0035】
電荷センサー623は、フォトダイオードやフォトトランジスタ及びファラデーカップなどであればよい。これらであれば、探針部610から放出された電子照射により対象物から発生した電子(2次電子など)を検出することが可能となる。また、電子照射した対象物の表面状態を観察可能とするためには、電荷センサー623が電位降下トランジスタから構成されていればよい。本実施の形態4の探針のように、電子を局所的に照射する場合、この照射によって発生する電子や電荷量は小さいものと考えられ、高感度な電荷センサーが必要になる場合がある。このような場合、微小電界トランジスタを用いればよい(非特許文献2参照)。この微小電界トランジスタを用いることで、単一の電子の検出が可能となる。
【0036】
また、2次電子などを検出する場合、2次電子は無秩序に放出されるので、これを電荷センサー623に集める必要がある。本実施の形態4では、図6に示すように、制御配線層621の先端部の上に絶縁層622を介して電荷センサー623を配置しているので、制御配線層621に正の電圧を印加することで、電荷センサー623に効率的に2次電子を集めることが可能となり、集めた2次電子を電荷センサー623により検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1における走査型プローブ顕微鏡用探針の構成を示す平面図(a),断面図(b),(c)である。
【図2】電子放出について説明するための説明図である。
【図3】印加した電圧の状態と放出電子数との関係を示す特性図である。
【図4】本発明の実施の形態2における走査型プローブ顕微鏡用探針の構成を示す平面図(a),断面図(b),(c)である。
【図5】本発明の実施の形態3における走査型プローブ顕微鏡用探針の構成を示す平面図(a),断面図(b),(c)である。
【図6】本発明の実施の形態4における走査型プローブ顕微鏡用探針の構成を示す平面図(a),断面図(b),(c),(d)である。
【符号の説明】
【0038】
101…基部、101a…針部、102…絶縁層、102a…薄層領域、103…電子放出層、110…探針部、111…梁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部の上に設けられた探針部及び前記基部の上に設けられた電子放出部を備え、
前記電子放出部は、
所定の第1電圧が印加される電極層と、
前記電極層の上に絶縁層を介して形成されて前記第1電圧より大きい第2電圧が印加される電子放出層と
から構成されていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用探針。
【請求項2】
請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡用探針において、
前記電子放出部は、前記探針部に設けられている
ことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用探針。
【請求項3】
請求項2記載の走査型プローブ顕微鏡用探針において、
前記電子放出部の先端部の上面は、平坦に形成されている
ことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用探針。
【請求項4】
請求項2又は3記載の走査型プローブ顕微鏡用探針において、
前記基部は、前記探針部と前記探針部に続く梁部とから構成され、
前記梁部に配置された電荷センサーを備える
ことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用探針。
【請求項5】
請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡用探針において、
前記基部は、前記探針部と前記探針部に続く梁部とから構成され、
前記電子放出部は、前記梁部に設けられている
ことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用探針。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の走査型プローブ顕微鏡用探針において、
前記基部が前記電極層である
ことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用探針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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