説明

走査型プローブ顕微鏡

【課題】改善された走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【解決手段】走査型プローブ顕微鏡は、プローブと試料との相互作用の変化を検出又は誘起する。画像化モードでは、プローブ20が試料12と接触する距離にもっていかれ、プローブ20と試料の表面とが相対的に走査されるときに、相互作用の強度が測定される。画像の収集は、試料12とプローブ20との何れか一方をその共振周波数又はその共振周波数付近で振動させながら、試料12とプローブ20とを相対的に並進移動させることによって、迅速に実施される。好ましい実施形態では、金属プローブと試料との間の界面に形成されるキャパシタンスによって、相互作用が監視される。リソグラフィ・モードでは、原子間力顕微鏡が、試料の表面に情報を書き込むように適合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡の分野及びこのような顕微鏡の走査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡の分野は、1981年の走査型トンネル顕微鏡の開発から始まった。そのときから、様々なプローブ顕微鏡が開発されてきたが、それらはすべて同じ基本的動作原理に基づいている。即ち、試料空間の「相互作用マップ(interaction map)」を取得するために、ナノメートル・スケールのプローブが試料の表面にわたって機械的に走査される。異なるタイプの走査型プローブ顕微鏡(SPM)はそれぞれ、局所プローブの特性及びこの局所プローブと試料表面との相互作用によって特徴づけられる。
【0003】
ある種のプローブ技術、走査型近接場光学顕微鏡(SNOM)及びフォトン走査型トンネル顕微鏡(PSTM)では、照明された試料とのプローブの相互作用の結果として生成されるフォトンを検出する。他の技術は、プローブと試料との相互作用力の変化を検出することに基づいている。この後者のグループの技術は、総称的に、走査型フォース顕微鏡(SFM)として知られている。この相互作用フォース(力)は、とりわけ、例えば、磁気的な力、剪断力、又は熱的な力であり得る。
【0004】
原子間力顕微鏡(AFM)は、最も一般的に使用されている走査型プローブ顕微鏡技術である。この場合のプローブは、カンチレバー端部の先端である。このカンチレバーは、先端と試料との間の力に応答して曲がる。カンチレバーの曲がりを測定するには、通常、光てこ技術が用いられる。カンチレバーは、変位が小さい場合にはフックの法則に従うので、先端と試料との間の相互作用力が導き出され得る。AFMは、一般に、2つのモードの一方で動作される。一定力モードでは、フィードバックにより、検出される相互作用力の変化に応答して位置決め用の圧電ドライバが試料(又は先端)を上下に移動するこが可能にされる。このようにして、相互作用力が比較的安定に保持され、かなり忠実な試料の形態の像が得られる。或いは、AFMは、一定高モードで動作され得る。この場合、形態的な変化と相互作用力の変化とが見分けられなくなり、そのため、この動作モードは、極めて平坦な試料を高分解能で画像化するのに最も有用である。
【0005】
全ての走査型プローブ顕微鏡の欠点は、データ収集時間である。典型的には、画像は256ラインで構成され、各ラインは256個の点(画素)からなる。必然的に小さくなるプローブで行う全画像走査は時間がかかる。局所プローブ技術は、従来型の光記憶媒体のλ/2限界を超えるデータの読み出しおよび書き込みにますます用いられてきており、そして、データ処理のスピードは、情報が読み書きされ得るスピードによって制限されることが、急速に明らかになりつつある。更に、多くの科学的、工業的、および生理学的なプロセスがあまりにも短い時間尺度で行われるため、現在の局所プローブ技術を用いてこれらのプロセスを追跡できない。従って、認識されている必要性は、走査型プローブ顕微法において画像収集時間を改善することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、試料とプローブとの相互作用をより迅速に収集して、情報の読出し又は書込みの速度を向上させ、より多くの科学的、工業的、および生理学的なプロセスに、走査型プローブ顕微法によるリアルタイム検査への道を開くことができるシステムを提供することである。
【0007】
本発明は、試料とプローブとの間の相互作用に応じて試料を画像化する走査型プローブ顕微鏡を提供する。この顕微鏡は、プローブと試料表面とを相対的に動かすように構成され、且つ試料とプローブとの間で検出可能な相互作用が確立されるのに十分に近接した状態に試料とプローブとをもっていくことができる駆動手段と、プローブ又は試料の何れかを振動させて、表面を横切ってのプローブの相対的な振動運動を実現する振動手段と、プローブと試料との間の相互作用の強度を示す少なくとも1つのパラメータを測定するように構成されたプローブ検出機構と、少なくとも1つのパラメータのうちの1つのパラメータの平均値が、所定の設定値から離れるように変化することに応答して、駆動手段の動作を介して、プローブと試料との分離を調整するように構成されたフィードバック機構とを備える。この顕微鏡は、動作時に、試料面の走査を実行するように構成され、走査範囲は走査ラインの配列によってカバーされ、各走査ラインは、プローブ又は試料の何れかを、その共振周波数又はその共振周波数付近で振動させることによって収集されるものであり、振動の振幅が最大走査ライン長を決め、これらの構成が駆動手段の動作によって形成されるように構成されることを特徴とする。
【0008】
共振点又は共振点付近で振動する物体は極めて安定な動きを示し、その動きは高速であることも多い。各走査ラインは、プローブが試料の表面を横切って振動するか、或いは、表面がプローブの下で振動するにつれて、連続(アナログ)画像として集められる。同時にプローブと試料表面とを相対的に並進移動させることによって、連続した走査ラインが、表面の異なる部分から情報を収集することになる。表面の或る範囲がカバーされた後に、走査ライン情報が収集され、適切な置換えによって再構築されて、2次元走査範囲の画像が形成される。上記で述べたように、共振振動運動は高い安定性を示す。そのため、この運動が、プローブ又は試料の何れによって実行されるかにかかわらず、画像の収集に影響を及ぼすノイズは低減される。フィードバック機構は、プローブと試料との間の相互作用の平均強度に応じて調整を行うことによって、表面の上のプローブの高さをある程度維持するように働く。従って、振動の時間尺度の範囲内でのパラメータの測定値の変化は、「相互作用」画像を構成し、且つ、真の表面形状から生じるものと解釈される。こうすることにより、相互作用画像情報を収集するのに、従来技術で使用可能なものよりもはるかに高速な技術が得られる。
【0009】
走査範囲をカバーするために、様々な向きの振動とプローブ及び表面の相対的な並進移動とが用いられ得る。振動軸が静止している場合、振動の掃引に実質的に直交する方向に直線並進移動が適用され、それによって、実質的に矩形の走査範囲を画定する。相対的な並進移動が連続的に行われる場合、走査範囲は、単一の連続したジグザグのラインによって高速にカバーされる。或いは、プローブと試料とを相対的に回転させることによって円形の配列がなされ得る。更に、表面に対して相対的に、プローブによってリサージュ図形が描かれるように、振動と並進移動とが構成され得る。
【0010】
好ましくは、相互作用を示すパラメータは、プローブと試料との界面のキャパシタンスであり、そのため、金属プローブも好ましい。この技術は、半導体材料中の電荷分布をマッピングするのに極めて有用である。本発明によって走査スピードの向上が容易になり、それによって、内部半導体プロセスに、プローブ顕微法によるリアルタイム検査への道が開かれる。
【0011】
或いは、相互作用を示すパラメータは、振動の振幅とすることができる。振動の振幅も、フィードバック機構の基礎となる監視パラメータとなり得る。
好ましくは、プローブ検出機構は、プローブと試料との間の界面の両端間に、その特性を調節して電気容量に影響を及ぼすために、変調電圧を印加するように構成された変調信号生成器と、プローブ及び試料を組み込んだ回路における共振電界を確立するように構成された共振器と、この電界の共振周波数を測定して、変調電圧が印加されるときの界面のキャパシタンスの変化が測定されるように構成された検出器とを備える。本発明のこの実施形態の利点は、この実施形態が、走査型キャパシタンス顕微鏡においてキャパシタンスを測定するための極めて感度のよい技術を提供することである。
【0012】
或いは、この顕微鏡は、磁界と相互作用するように適合されたプローブと、プローブと試料との間の磁気相互作用を示すパラメータを測定するように構成されたプローブ検出機構とを備えた磁気力顕微鏡とすることができる。
【0013】
別の代替形態として、このプローブは、カンチレバーと、このカンチレバーを「タッピング」モードで駆動するように構成されたアクチュエータとを備え得る。この場合、相互作用の強度を示すパラメータは、このカンチレバーが試料をたたく(タップする)ときのカンチレバーの曲がりとすることができる。或いは、このパラメータは振動の振幅とすることができる。これらの実施形態により、本発明が原子間力顕微鏡において実施され、それによって、一般にAFMが使用される用途に、より高速な走査がもたらされる。
【0014】
AFMの実施形態では、プローブ検出機構によって測定され、フィードバック機構によって用いられる相互作用の強度を示す少なくとも1つのパラメータの1つは、プローブの先端が表面に接触するときのカンチレバーの曲がりである。このプローブ検出機構は、画像の情報及びフィードバックの情報の両方を提供するために、プローブの曲がりを測定するように構成され得る。オプションとして、プローブと試料との相互作用の強度を示す別のパラメータを用いて画像情報を提供することができる。或いは、プローブ検出機構は2つの構成要素を備えることとができ、それらは、プローブと試料との間の相互作用の1つの特性、例えばキャパシタンス、を測定するように構成された第1構成要素と、フィードバック機構にリンクされ且つプローブの曲がりを測定するように構成された第2構成要素である。
【0015】
プローブ又は試料の何れかが振動される。更に、このプローブは、振動によりプローブが試料表面を実質的にリニアに掃引されるという条件で、垂直又は水平に、或いは実際にはその中間の角度で取り付けられる。試料が振動される場合、試料を音叉上に取り付けることによって、この振動を実現することが好ましい。試料(又はプローブ)の振動と並進移動とが同時に行われるとき、共振モード間の結合において問題が生じることがある。この音叉は、機械的な異方性が大きくなるように設計され、それによってこのような結合を防止する。こうすると走査の安定性が向上する。類似の異方性を有するという条件では、音叉の代替手段、例えば圧電バイモルフを使用することができる。音叉又はバイモルフによってプローブを振動させることもできる。
【0016】
好ましくは、フィードバック機構は、プローブの振動の1サイクルよりも長く且つ走査を実施するのにかかる総時間よりもかなり短い時定数で動作する。
第2の態様では、本発明は、ナノメートル・スケールの形状を有する試料の走査範囲から画像データを迅速に収集する方法を提供する。この方法は、
(a)サブナノメートルの寸法の先端を持つプローブを、プローブと試料との間で相互作用が確立されるように、試料の近傍に移動させるステップと、
(b)プローブを、試料の表面を横切って、その共振周波数又はその共振周波数付近で振動させるか、或いは、プローブの下の試料を、その共振周波数又はその共振周波数付近で振動させて、振動の振幅により最大長が決まる或る走査ラインの配列が走査範囲をカバーするように、プローブと表面とを相対的に移動させるステップと、
(c)相互作用の強度を示すパラメータを測定するステップと、
(d)ステップ(c)で測定されるパラメータ、或いは、これもまたプローブと試料との間の相互作用を示すものである第2パラメータを監視し、この監視パラメータの値が、所定の設定値よりも小さくなるか或いは大きくなる場合、プローブと試料との分離間隔を調整して、この監視パラメータの値を設定値へ向かって戻すステップと、
(e)ステップ(c)で取得された測定値を処理して、試料のナノメートル・スケールの構造に関係する情報を抽出するステップと
を含む。
【0017】
第3の態様では、本発明のAFMの実施形態は、試料の表面を画像化するためではなく、プローブが位置する試料表面に影響を及ぼすために使用され得る。従って、表面特性の局所的変化として情報が試料上に記憶され、それによって、本発明はナノリソグラフィ技術に適用することができる。
【0018】
次に、添付の図面を参照して、単なる例として本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明を走査型キャパシタンス顕微鏡において実施したものを概略的に示す。
【図2】図2は、図1の顕微鏡で使用するのに適したプローブ検出機構を概略的に示す。
【図3】図3は、原子間力顕微鏡に基づく本発明の代替実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、本発明の走査型キャパシタンス顕微鏡(SCM)の実施形態を示す。従来技術のSCMが、T.Tranその他による「”Zeptofarad”(10−21) resolution capacitance sensor for scanning capacitance microscopy」、Rev. Sci. Inst.、72(6)、2618頁、2001年、に記載されており、これは、半導体デバイスのキャリアの2次元プロフィールを測定するのに特に有用であることがわかっている。T.Tranその他によって述べられた顕微鏡と同様に、図1に示す装置10は、電気的に接地され、料12を受け取るように適合されたプレート14を備える。プレート14は、圧電トランスデューサ16及び粗動用駆動手段18に接続される。金属プローブ20は、第2圧電駆動手段22に接続される。この駆動手段は、従来技術のSCM駆動手段と異なり、プローブ20を共振点又は共振点付近で振動するように構成される。第1圧電トランスデューサ16又は第2圧電トランスデューサ22の何れかが、プローブ20と試料12とを相対的に垂直な方向に移動させる。この実施形態では、これは、試料12に取り付けられた圧電素子16である。この装置は、プローブ検出機構24を含む。プローブ検出機構の特定の細部は、プローブ20と試料12との測定される相互作用の指標によって決まり、SCMとともに使用するのに適した実施形態は後に詳細に説明する。フィードバック機構26は、プローブ検出機構24から受け取った信号に応答して第1圧電素子16を駆動して、プローブ20と試料12との相対的な高さを制御するように構成される。収集されたデータは解析され、ディスプレイ28へ出力される。
【0021】
この分野での慣行と同様に、直交座標系のz軸を、試料12が占める面に直交する軸とする。即ち、プローブ20と試料12の相互作用は、試料12全体を通してのプローブ20のxy位置(プローブが画像化を行っている画素)と、試料の上のプローブの高さとによって決まる。
【0022】
図1に示す装置の動作を考察する前に、相互作用と測定、従って、プローブ検出機構24の機能の基礎となる物理的現象を説明することが助けになる。走査型キャパシタンス顕微鏡は、生物学的試料を含めた多くのタイプの試料を画像化するのに使用され得る。しかしながら、キャパシタンスの発生及び測定は、半導体画像化に関連して最も容易に理解される。金属プローブが半導体材料に接触すると、これら2つのバンド構造内でのフェルミ・エネルギーが等しくなる結果として、境界の両端間で電位降下が形成される。この降下により、境界領域の外へ電荷キャリアが掃き出され、空乏層が形成される。この現象はよく知られており、ショットキ・バリア・ダイオードの基礎になっている。SCMによって半導体中で測定されるのは、この空乏層(又はショットキ・バリア)の両端間のキャパシタンスである。
【0023】
生物学的材料のバンド構造(従って、有効ドーピング)は、半導体のものよりもかなり複雑であり、上記で概略を示した空乏層理論は概して適切ではない。生物学的試料では、双極子の再配向(又は誘導)が、界面のところでキャパシタンスが生じる機構であり得ると考えられている。しかしながら、実際の機構の如何にかかわらず、プローブと試料の界面でキャパシタンスが形成されることは事実であり、これは、半導体材料の場合と同じ方法で、走査型キャパシタンス顕微鏡によって検出され測定され得る。
【0024】
図2に、本発明のSCMの実施形態で使用するプローブ検出機構24が示されている。機構24は、電圧制御型発振器40、結合型伝送ライン共振器42、増幅器44、ピーク電圧検出器46、及び変調信号生成器48を備える。変調信号生成器48は、プローブ20へ、直流バイアスされた交流正弦波電圧を印加する。試料12自体は、プレート14を介して接地されており、そのため、こうすると、プローブ20と試料12の界面の両端間に変調電圧が効果的に印加される。この電圧は、半導体中の空乏層の幅、従って、バリアのキャパシタンスを変調する。生物学的試料では、この変調電圧は、同様にキャパシタンスを変調するように作用するが、おそらくは、誘電率の変調を介して作用するものである。界面のキャパシタンスを測定するために、発振器40によって共振器48の回路において振動電界が励起される。この電界の共振周波数は、回路の負荷(この場合には、プローブと試料とを通る電気的な経路)によって決まる。この共振信号は、共振器48内で検出され、ピーク検出器46へ渡される前に増幅器44によって増幅される。界面におけるキャパシタンス(従って、回路の負荷)の変化は、ピーク検出器46によって検出される共振ピークの周波数のシフトの形で反映される。キャパシタンスの変動を引き起こす変調信号は既知であるので、ピーク位置の変化を求めると、変調周波数における界面のキャパシタンスの電圧導関数(dC/dV)を求めることができる。
【0025】
図1に戻ると、装置10を使用して画像を取得する際、まず粗動用駆動手段18を使用して、試料12がプローブ20に近づけられる。第1圧電駆動部16によって精密な高さ及び初期開始位置の調整が行われ、その間に、プローブ検出機構24が、プローブ20と試料12の相互作用に起因するキャパシタンスを測定する。キャパシタンスの測定値が所望のレベルに達すると、試料12の表面のラスタ走査が開始される。試料12の上をプローブ20が走査する際に、第1圧電素子16は、y方向(図1に示す視点で紙面に向かう)の動きを制御する。第2圧電素子22は、xz面(即ち、図の面)においてz軸についてプローブ20をほぼ共振振動で駆動させる。プローブの振動は、比較的振幅が大きく、数ミクロンのオーダーである。走査中、プローブ検出機構24によって、プローブ20と試料12の間に形成されたキャパシタンスの読取り値が連続的に取得される。
【0026】
プローブ20が振動すると、連続する走査ラインが集められる。従って、各ラインの長さは振動の振幅の2倍に等しく、この長さは画像の最大幅に相当する。当然のことながら、画像の最大長は、第1圧電素子16によって試料12がy方向に並進移動する距離によって決まる。ほぼ共振点で振動させると、所与の駆動力に対してほぼ最大の走査幅が得られる可能性がある。このようにして、従来技術の走査型キャパシタンス顕微鏡又は何れの走査型力顕微鏡によって実現されるものよりもはるかに高速なスピードで、画像化される範囲からデータが収集される。SCMでは、プローブが共振点で振動される場合、明らかに最大走査幅が実現され得る。
【0027】
フィードバック機構26は、プローブ20と試料12の相互作用の平均キャパシタンス(多数回の振動周期にわたって平均されたもの)をほぼ一定に保つように構成される。そのために、ピーク検出器46(図2)の出力が、フィードバック機構へ供給される。従って、走査の任意の点で、平均キャパシタンスの減少が観測される場合、これは、プローブ20と試料12の相互作用が小さくなり、従って、分離間隔が広がったことを示している。従って、フィードバック機構26は、試料12及びプレート14をプローブ20へ向かって移動させるように第1圧電トランスデューサ16を駆動するように構成される。逆に、キャパシタンス信号がより大きくなることは、プローブ20と試料12との分離が狭くなったことを示しており、この場合には試料12が下げられる。実際には、平均キャパシタンスは、その設定値付近で変動することになる。この変動には、幾つかの寄与要因がある。それらは、高さ調整におけるオーバーシュート、フィードバック・ループの時定数はプローブの振動周期よりも大きくなければならないという事実、及びプローブが相互作用の変化に対して調整を行うのにかかる時間の長さ(整定時間)が有限であることである。プローブの振動周期よりも短い時間尺度でのキャパシタンスの変化が像を構成する。
【0028】
プローブの振動周期よりも大きくなければならないフィードバック・ループの時定数と、プローブの応答時間とを、全走査を完了するのにかかる時間よりも短くしなければならないことも重要である。
【0029】
プローブ検出機構24(ピーク検出器46)からの出力信号は、フィードバック機構26を介してプロセッサ及びディスプレイ28へ供給される。デジタル・データ処理を可能にするために、集められた走査ラインは、プロセッサによって人為的に画素化され得る。
【0030】
もちろん、プローブと試料の物理的な走査によってカバーされる範囲全体にわたって画像データを収集する必要もないし、それを処理する必要もない。ある種の応用例では、プローブの振幅がよりリニアな部分において収集されたデータだけを処理することが好ましいことがある。物理的な走査範囲は、単に1回の走査サイクルで画像化できる最大範囲を画定するだけである。
【0031】
走査スピードを最大にするために、各走査ラインは、プローブが半分振動するごとに集められる。各ラインごとに複数回振動させることによって、明らかにより良好な画像が得られるはずであるが、同じラインを複数回往復させるために圧電駆動部16、22のステップ動作及び停止動作を行うと、プローブのリンギングが生じることになる。また、こうすると、明らかに全体的な走査スピードが遅くなる。しかしながら、試料用の圧電トランスデューサ16のスピードは、1回の振動サイクル当たり約1Åという低速で試料を移動させるように設定することができる。従って、このスピードでは、処理画像における各ラインが例えば5本の振動ラインの平均になるように連続したラインを合わせて加算することによる積分と類似のことを実施することが可能である。この「積分」によって信号対雑音比が向上すると、ある種の状況では、分解能の低下が補償されることがある。
【0032】
本発明のこの実施形態では、y方向の線形的移動を提供する圧電素子16を組み込んでいるが、明らかに他の多くの幾何的な走査形状を用いることができる。或る範囲を画像化するときの唯一の要件は、試料(或いは等価のものとしてプローブ)の並進移動とプローブ(或いは等価のものとして試料)の振動との組合せが、画像化すべき範囲をカバーすることである。そのため、プローブが振動している間に試料を回転させて、中心点を通る一連の円形走査ラインを含む走査配列を作り出すことができるはずである。或いは、直交する2つの方向に振動するようにプローブを設定することができる。次いで、両方向に同時に振動が行われると、数字の8の形などのような非線形的振動が生じることになる。この場合、8の字形の振動の軸が回転すると、プローブの動きは、中心点を通る一連の8の字形で走査範囲をカバーすることになる。
【0033】
SCMは、半導体デバイス中のキャリア・プロフィールを求めるのに極めて有用である。局所的なキャリア濃度を求めるために、dC/dVの大きさ(較正されたとき)が用いられ、その符号によりキャリアのタイプがわかる。本発明によって走査がより高速になるという利点により、SCM技術を用いて、特に半導体デバイス中で生じるプロセスをリアルタイムで監視することができる。
【0034】
光学SPM技術を用いて試料の表面を画像化するために、共振点で振動するプローブを用いることが、本出願人の同時係属特許出願の第WO 02/063368号に記載されている。この中に記載されている一実施例では、表面から上の高さを維持するためにプローブの振動の振幅を監視する。プローブが試料に近づけられると、幾つかの異なる方法でプローブと試料との分離又は相互作用が測定され得る。図1に示す本発明の実施形態に関連して上記で説明したように、キャパシタンスの形成は電気的な相互作用に起因する。別の相互作用は、いわゆる「剪断力」の減衰機構である。垂直に取り付けられたプローブが、その共振周波数に近い周波数で試料表面に対して水平に振動する場合、試料とプローブの相互作用は、この振動の振幅を減衰させるように働くことになる。環境条件下での減衰機構は、一般に、試料表面に閉じ込められた水の層によるものと考えられているが、他の減衰相互作用も可能である。プローブが表面に近づくと減衰が増加し、それに従って振動の振幅が小さくなる。
【0035】
従って、図1に示す本発明の実施形態の代替形態は、プローブが走査ラインを集めるときのプローブの振動の振幅を監視し、且つ前の場合と同様に共振器42及び電圧変調器48を使用して接触によるキャパシタンスを測定するように、プローブ検出機構24を適合させることである。プローブの振動の振幅は、幾つかの周知の手段によって監視でき、例えば、光ビーム中でのプローブ先端の振動する影の光起電力測定を行うことによって監視できる。次いで、振動の振幅からのフィードバックに基づいて、試料12とプローブ20の相対的な分離が維持される。平均(何本かの走査ラインにわたっての平均)の振幅が設定値より下になる場合、試料12はプローブ20から離れるように移動されなければならず、また、平均振幅がこの設定値を超える場合には、試料12とプローブ20は互いに更に近づけられるべきである。本発明のこの実施形態では、プローブの共振振動を2重に用いるものであり、それらは、走査ラインを集めることと、試料の上での高さを維持することとである。これと同時に、試料12のキャパシタンス画像が取り込まれる。
【0036】
本発明のこの実施形態では、プローブが共振点ではなく共振点付近で振動され、それによって走査幅が最大になる。これは、共振点からわずかにずれると、共振ピークの位置のシフトに対しての振幅の変化による、より大きい応答があるからである。この実施形態でプローブと試料の相互作用の変化を示すものとして測定するのはこの振幅の変化なので、共振点付近で振動させると信号対雑音比が効果的に改善される。
【0037】
プローブと試料の相互作用を測定する第1パラメータと、プローブと試料の分離を監視する第2パラメータとの2つの異なるパラメータを用いると、相互作用画像は、相対的画像ではなく「絶対的」画像になる。即ち、SCMのこの実施形態では、絶対値からキャパシタンス画像が形成される。分離を制御するのに平均キャパシタンス測定値が用いられる前の実施形態では、得られるキャパシタンス画像は、この平均値からの変動のマップである。
【0038】
図1に示す一般化したプローブ検出機構24は、プローブと試料の画像化対象となる相互作用の特質に応じて、幾つかの異なる測定ツールを備えることができる。
図3に、本発明によるSPMの代替実施形態が示されている。この実施形態は、プローブと試料の分離が、1つのパラメータを監視することによって制御され、相互作用が、別のパラメータを用いて測定される態様の1つである。これは、原子間力顕微鏡(AFM)に基づくものであり、単一のパラメータのみを画像及びフィードバックに適合させていることが当業者には明らかであろう。
【0039】
生物学的試料の画像化に適した従来技術の原子間力顕微鏡が、Toshio Andoその他による「A high−speed atomic force microscope for studying biological macromolecules」、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、98(22)、12468頁〜12472頁、2001年に記載されている。この装置は、共振による画像走査とともに使用するように適合され得る。AFMとSCMの大きな違い(本発明に関して)は、前者が、プローブとして、アクチュエータ(一般的には一体化される)を持つ小型のカンチレバーを使用し、相互作用の強度を示すためにこのカンチレバーの曲がりが用いられることである。
【0040】
図3にAFM顕微鏡50を示す。図では、図1のSCMと共通な構成要素は同じ参照数字で示されている。AFM装置50は、試料12を受けるように適合され、音叉52の1つのプロングの上に取り付けられたプレート14を備える。音叉52は、圧電トランスデューサ16及び粗動用駆動手段18に接続される。圧電トランスデューサ16は、(プレート14及び音叉52とともに)試料12を、図1に関連して設定した表記を用いると、x、y、及びz方向の3次元で駆動するために使用される。音叉制御部(図示しない)は、音叉52へ正弦波電圧を印加して、xy面内で共振点又は共振点付近の振動を励起するように構成される。この実施形態では、AFMのカンチレバー・プローブ54と試料表面との間で相互作用が形成される。相互作用検出機構56及び偏差検出機構58の2つのプローブ検出機構が存在する。前者の56は、プローブ20と試料12の相互作用を示す1つのパラメータを測定するように適合され、従って、このパラメータがキャパシタンスである場合には図1及び図2のプローブ検出機構24と同じものとすることができる。偏差検出機構58は、プローブのヘッドの変位、即ち、カンチレバー52の曲がりを測定するように構成され、この検出されるものはやはり相互作用の強度を示す。フィードバック機構26は、偏差検出機構58から受け取った信号に応答して圧電素子16を駆動して、プローブ54と試料12との相対的な高さを制御するように構成される。相互作用検出機構56によって収集されたデータは、解析され、ディスプレイ28へ出力される。
【0041】
装置50を使用して画像を取得する際、まず粗動用駆動手段18を使用して、試料12がカンチレバー・プローブ54へ近づけられる。圧電駆動部16によって精密な高さ及び初期開始位置の調整が行われるが、その間に、偏差検出機構58が、プローブ54と試料12の相互作用の結果として生じるカンチレバーの曲がりを測定する。曲がりの測定値が所望のレベルに達すると、プローブ54の下で試料表面が走査される。プローブ54の下で試料12を走査する際、音叉52は、図の面(y軸)に出入りして振動するように設定される。こうすると、試料が取り付けられたステージが振動する。同時に、圧電素子16が、直交する方向(x)に試料12を並進移動させる。試料の振動は、比較的大きく、数ミクロンのオーダーの振幅である。走査中、相互作用検出機構56及び偏差検出機構58によって、読取り値が連続的に取得される。
【0042】
前の場合と同様に、ラスタ走査の一方の構成要素を容易にするために、プローブ54ではなく試料12を振動させるが、共振振動を用いることによって、従来技術の走査型フォース顕微鏡によって実現しされ得るよりもはるかに高速なスピードで、画像化される範囲からデータが収集される。
【0043】
フィードバック機構26は、試料12を適宜上下させることによって、カンチレバーの曲がりの平均値(試料の多数回の振動周期にわたって平均されたもの)をほぼ一定に保つように設定される。相互作用検出機構56からの出力信号は、プロセッサ及びディスプレイ28へ直接に供給される。デジタル・データ処理を可能にするために、収集された走査ラインは、プロセッサによって人工的に画素化され得る。
【0044】
音叉54は、所望の周波数の振動をもたらす幾つかの市販の音叉の1つ又は特注設計のものとすることができる。適切な例は、共振周波数が32kHzのクオーツ・クリスタル製の音叉である。音叉は、高い異方性の機械的特性を持つように設計されているので、この用途によく適している。従って、その複数の共振はそれぞれ独立であり、個々に励起することができ、そのため、試料の面内の1つ(又は複数)にのみ制限される。重要なことは、音叉54は、モード間で結合が生じることなく、一方向に共振され、別方向に走査されることである。従って、プローブ54によって検査が行われるときに、試料12を安定且つ高速に動かすことができる。
【0045】
ある種の応用例では、図3に示す本発明の実施形態は、図1に示すものに比べて幾つかの利点を有することができる。偏差検出機構58は、カンチレバーの曲がりをプローブから反射されたレーザ光を用いて測定するAFM顕微法の技術分野では標準のタイプのものである。プローブの代わりに試料を共振させることによって、この偏差を測定する光学系を、走査プローブについて補償する必要がなくなる。こうすると、偏差データの抽出が簡素化され、この機構を固定ケーシング内に収容することが可能となる。
【0046】
図3に示す実施形態の代替形態では、別個の相互作用検出機構56をなくし、偏差検出機構58の出力を、画像データ及びフィードバックの双方を提供するために用いる。このプローブ検出機構は、従来技術のAFMで用いられる従来型のものである。
【0047】
別の代替形態では、プローブ20、試料12、プレート14、及び音叉52を液体に浸ける。理想的には、カンチレバー・プローブ20の品質(Q)因子は低いものであるべきであるが、実際には市販のほとんどのAFM用のカンチレバー(例えば、Si単結晶のもの)のQ因子は高い。カンチレバーのQが高い場合、変化に応答するのに長い時間がかかることになり、刺激が加えられるとその共振周波数で鳴ることになる。カンチレバーを特注設計するとQを低くすることができるが、代替の手法は、単に、液体中に浸けることによってQ因子を減衰させることである。
【0048】
AFMの可能な動作モードが他にも幾つかあり、何れも本発明で実施するように適合され得る。接触モードでは、プローブは恒久的に試料と接触した状態で保持される。カンチレバーの曲がりが測定され、フィードバックはその平均値に基づく。タッピング・モードでは、アクチュエータが、カンチレバーをその共振周波数で「タッピング」運動の形で駆動する。従って、カンチレバーは、その振動(タッピング)周期のうちの極めて短い間のみ表面と接触する。このように接触時間が極めて短くなると、試料に対する横方向の力が非常に減少され、従って、走査が行われているときにプローブが試料を破壊することが少なくなる。従って、敏感な生物学的試料の画像化に多く用いられることになる。間欠接触モードでは、カンチレバーは、共振点からずらして垂直方向に振動される。次いで、この振動の振幅又はカンチレバーの曲がり、或いはその両方が測定され、それによって画像が生成され、これら2つのパラメータの任意の組合せについてフィードバックが行われる。この間欠接触では横方向の力が減少するが、カンチレバーのQ因子が高い場合には共振点での動作に関連して応答時間が長くなることが避けられる。
【0049】
試料を走査する際、AFMのプローブは試料の表面と接触する。これは、試料が繊細なものである場合には欠点になるが、表面との相互作用により表面の特性に影響を及ぼすことが可能となり、それによって試料に情報を意図的に「書き込む」ことが可能になる。この技術は、ナノリソグラフィとして知られている。例えば、導電性カンチレバーに電圧を印加することによって、試料ウエハの金属層の或る領域が酸化され得る。2フォトン吸収及びフォトレジストの重合を用いる別の例が、Xiaobo Yinその他による「Near−field two−photon nanolithography using an apertureless optical probe」、Appl. Phys. Lett.、81(19)、3663、2002年、に記載されている。双方の例とも、極めて小さいサイズのプローブにより、極めて高密度での情報の書込みが可能とされる。
【0050】
本発明のAFMは、ナノリソグラフィで使用するようにも適合され得る。これは、プローブの安定的共振振動を用いることによって以前に実現されたものよりも書込み時間を高速にする可能性を提供するだけではなく、画像の分解能、即ち、書込み密度を増加する可能性も提供する。本発明のAFMの実施形態の画像分解能は、顕微鏡の安定性、即ち、高精度で隣接するポイントにアドレスする能力によって制限されるのではなく、相互作用の長さによって制限される。即ち、リソグラフィ・ツールとして、従来技術のリソグラフィ・システムによって実現される50〜100nmよりもかなり良好な書込み分解能を実現する可能性を有する。
【0051】
走査型プローブ顕微法の技術分野の技術者には、相互作用パラメータ、フィードバック・パラメータ、走査運動、及びプローブ設計の多くの変形形態が、本発明に従って実施され得ることが明らかであろう。例えば、図1に示す装置で使用される局所プローブ20の代わりに、AFMとともに使用するのに適するように適合されたカンチレバー・プローブ及び検出機構24を使用することができる。本発明のこの実施形態では、2つの共振モードが用いられる。タッピング・モードで使用する場合、カンチレバーの共振周波数又はその付近でタッピング動作が駆動される。他方、本発明によれば、走査振動は、プローブが振動される場合にはカンチレバー/アクチュエータ・アセンブリの共振周波数で、又は試料の共振周波数で、駆動される。何れの場合でも、アセンブリ又は試料は、より質量が大きいものであり、これにより、振動周波数がタッピング周波数よりも確実に低くなる。そのため、必然的に、各走査ライン内では幾つかの接触ポイントでサンプリングが行われる。プローブの偏差は、プローブ上の圧電コーティングを介して監視され得る。
【0052】
別の代替形態では、プローブ検出機構24は、SCMの実施形態に関連して上記で説明したように、共振振動の振幅を監視および測定するように適合され得る。プローブと試料の相互作用の指標としてキャパシタンスの測定値を抽出する代わりに、減衰した振動の非調和成分が解析され再構築されて画像が形成される。この実施形態では、共振(又はほぼ共振)状態のプローブ又は試料の振動が3重に用いられるものであり、第1に、従来技術のシステムで周知のものよりも高速な走査を提供するため、第2に、プローブと試料の相互作用の測定の基礎を提供するため、第3に、高さを維持するために用いられる。
【0053】
更に別の代替形態は、この場合も、フィードバックによって共振振動の振幅を制御することであるが、この実施形態では、プローブが傾けられ、その結果として、プローブが表面に直交しない。この傾けられたプローブ(又は平面状の試料)が共振点で振動され、それによって各走査ラインが集められ、第2検出システムが、この傾き角に直交するプローブの動きを検出するように設定される。このようにして、画像は、各振動サイクル中に第2検出システムによって測定される、この傾きに直交するプローブの動きの小さな偏差から形成され、その間に、主振動によって高さ制御が行われる。
【0054】
更に別の代替形態は、試料の磁界とのプローブの相互作用の変動を検出するように、プローブ20、54及び検出機構24、56、58をともに適合させることである。このために、プローブを導電ループの形態にし、検出機構を、プローブ又は試料が共振により走査されるときに誘起される電流を測定するように適合され得る。或いは、検出機構は、この導電ループの抵抗の変化を測定することができる。この後者の代替形態では、ハード・ディスク・ヘッドにおいて共振振動するプローブ上で形成されるものに類似の巨大な磁気抵抗を用いる。第3の可能性は、金属プローブを使用することである。この場合、うず電流が、プローブの調波振動に抵抗する力を提供し、この場合も、画像を形成するために、得られた非調和成分が用いられ得る。
【0055】
当業者には明らかなように、プローブと試料の相互作用の情報を抽出するのに使用可能な技術が他にも多くあり、これらを、本発明による試料表面の高速共振ラスタ走査の実行と組み合わせることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(12)とプローブ(20、54)との間の相互作用に従って前記試料(12)を画像化する走査型プローブ顕微鏡(10、50)であって、
前記プローブ(20、54)と前記試料の表面とを相対的に移動させるように構成され、且つ前記試料(12)とプローブ(20、54)との間で検出可能な相互作用が確立されるのに十分な近接した状態に、前記試料(12)とプローブ(20、54)とをもっていくことができる駆動手段(16、18、22)と、
前記プローブ(20、54)又は前記試料(12)の何れかを振動させて、前記表面を横切る前記プローブ(20、54)の相対的な振動運動を提供する手段(22、52)と、
前記プローブ(20、54)と前記試料(12)との間の前記相互作用の強度を示す少なくとも1つのパラメータを測定するように構成されたプローブ検出機構(24、56、58)と、
前記少なくとも1つのパラメータのうちの1つのパラメータの平均値が、所定の設定値から離れるように変化することに応答して、前記駆動手段(16、22)の動作を介して、前記プローブと前記試料の分離を調整するように構成されたフィードバック機構(26)と
を備え、
前記顕微鏡(10、50)が、動作時に、前記試料の表面の走査を実行するように構成され、走査範囲は走査ラインの配列によりカバーされ、各走査ラインは、前記プローブ(20、54)又は前記試料(12)の何れかを、その共振周波数又はその共振周波数付近で振動させることによって集められ、振動の振幅が最大走査ライン長を決め、前記走査ラインの配列が前記駆動手段(16、22)の動作によって形成される、
ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の顕微鏡であって、前記プローブが金属であり、前記相互作用を示す前記パラメータが、前記プローブと前記試料との界面のキャパシタンスである、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項3】
請求項1に記載の顕微鏡であって、前記相互作用を示す前記パラメータが振動の振幅である、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項4】
請求項2に記載の顕微鏡であって、前記相互作用を示し且つ前記フィードバック機構(26)の動作の基となる第2パラメータが振動の振幅である、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項5】
請求項2又は4に記載の顕微鏡であって、前記プローブ検出機構(24、56、58)が、前記プローブ(20、54)と前記試料(12)との間の界面の両端間に、前記界面の特性を変調して前記界面の電気容量に影響を及ぼすために変調電圧を印加するように構成された変調信号生成器(48)と、前記プローブ(20、54)及び前記試料(12)を組み込んだ回路において共振電界を確立するように構成された共振器(42)と、前記電界の共振周波数を測定して、前記変調電圧が印加されるときに前記界面の前記キャパシタンスの変化が測定され得るように構成された検出器(46)とを備える、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項6】
請求項1に記載の顕微鏡であって、前記プローブ(20)が、磁界と相互作用するように適合され、前記プローブ検出機構(24、56、58)が、前記プローブ(20、52)と前記試料(12)との間の磁気的な相互作用を示すパラメータを測定するように構成される、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項7】
請求項1に記載の顕微鏡であって、前記プローブ(20)が、カンチレバーと、前記カンチレバーを「タッピング」モードで駆動するように構成されたアクチュエータとを備える、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項8】
請求項7に記載の顕微鏡であって、前記相互作用の強度を示す前記パラメータが、前記カンチレバーが前記試料(12)をたたくときの前記カンチレバーの曲がりである、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項9】
請求項1に記載の顕微鏡であって、前記プローブ(54)がAFMのカンチレバーであり、前記プローブ検出機構(24、56、58)によって測定され且つ前記フィードバック機構(26)によって用いられる前記相互作用の前記強度を示す前記少なくとも1つのパラメータのうちの前記1つのパラメータが、前記プローブ(54)の曲がりである、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項10】
請求項9に記載の顕微鏡であって、前記プローブ検出機構(24、56、58)が、前記プローブ(54)と前記試料(12)との間の前記相互作用の強度を示す少なくとも1つのパラメータを測定するように構成された相互作用検出機構(56)と、前記フィードバック機構(26)にリンクされ且つ前記プローブ(54)の曲がりを測定するように構成された偏差検出機構(58)とを備える、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の顕微鏡であって、前記プローブ(54)が、前記カンチレバーを「タッピング」モードで駆動するように構成されたアクチュエータを備える、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れかに記載の顕微鏡であって、前記駆動手段(22)が、前記プローブ(20)を振動させるように構成される、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項13】
請求項12に記載の顕微鏡であって、前記駆動手段(22)が音叉を含む、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項14】
請求項1ないし11の何れかに記載の顕微鏡であって、前記プローブ又は前記試料の何れかを振動させる前記手段(22、52)が、前記試料(12)を振動させるように構成される、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項15】
請求項14に記載の顕微鏡であって、前記試料を振動させる前記手段が音叉(52)であり、前記試料(12)が前記音叉に取り付けられる、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れかに記載の顕微鏡であって、前記フィードバック機構(26)は、時定数を用いて動作するものであり、該時定数は、プローブの振動の1サイクルよりも長く、走査を実施するのにかかる総時間よりもかなり短いものである、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項17】
請求項12又は13に記載の顕微鏡であって、前記プローブが実質的に垂直に向けられ、前記駆動手段(16、22)が、前記プローブ(20)と前記試料(12)とを、前記プローブが振動する面に実質的に直交する方向に、相対的に線形的に並進移動させ、それによって実質的に矩形の走査範囲を画定するように構成される、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項18】
請求項12又は13に記載の顕微鏡であって、前記プローブが実質的に水平に向けられ、前記駆動手段(16、22)が、前記プローブ(20)と前記試料(12)とを、前記振動の軸に実質的に平行な方向に相対的に線形的に並進移動させ、それによって実質的に矩形の走査範囲を画定するように構成される、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項19】
請求項12又は13に記載の顕微鏡であって、前記プローブが実質的に垂直に向けられ、前記駆動手段(16、22)が、前記プローブ(20)と前記試料(12)とを、前記プローブ(20)が振動する軸と実質的に一致する軸について相対的に回転させ、それによって円形配列の走査ラインで前記走査範囲をカバーするように構成される、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項20】
請求項1ないし19の何れかに記載の顕微鏡であって、前記顕微鏡は、半導体デバイスの電荷分布を監視するように適合される、ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項21】
ナノメートル・スケールの形状を有する試料(12)の走査範囲から画像データを迅速に収集する方法であって、
(a)サブナノメートルの寸法の先端を有するプローブ(20、54)を、前記プローブ(20、54)と試料(12)との間で相互作用が確立され得るように、前記試料(12)の近傍に移動させるステップと、
(b)前記試料(12)の表面を横切って前記プローブ(20、54)を、その共振周波数又はその共振周波数付近で振動させるか、或いは、前記プローブ(20、54)の下の前記試料(12)を、その共振周波数又はその共振周波数付近で振動させ、前記プローブ(20、54)と表面との間での相対的な運動を提供し、振動の振幅によって最大長が決まる走査ラインの配列が前記走査範囲をカバーするようにするステップと、
(c)前記相互作用の強度を示すパラメータを測定するステップと、
(d)前記ステップ(c)で測定される前記パラメータ、或いは、やはり前記プローブ(20、54)と前記試料(12)との間の相互作用を示す第2パラメータを監視し、監視した前記パラメータの値が、所定の設定値よりも小さくなるか又は大きくなる場合に、前記プローブ(20、54)と前記試料(12)との分離間隔を調整して、監視した前記パラメータの値を前記設定値に向かって戻すステップと、
(e)前記ステップ(c)で取得された測定値を処理して、前記試料の前記ナノメートル・スケールの構造に関係する情報を抽出するステップと
を備える方法。
【請求項22】
試料とAFMのカンチレバー・プローブとの間の相互作用によって前記試料に情報を書き込む走査型プローブ顕微鏡であって、
前記プローブと前記試料の表面との間の相対的運動を提供し、且つ前記試料と前記プローブとを近づけることができるように構成される駆動手段と、
前記プローブ又は前記試料の何れかを振動させて、前記表面を横切る前記プローブの相対的な振動運動を提供する手段と、
プローブ又は試料の振動の1周期よりも短い時間尺度で、前記プローブと前記試料との間の前記相互作用の強度を間欠的に変えて、前記プローブが位置する前記試料の表面の特性を間欠的に変化させるように構成される、プローブによる書込み機構と
を備える走査型プローブ顕微鏡において、
前記顕微鏡が、動作時に、前記試料の表面の書込み走査を実行するように構成され、走査範囲は、書込みラインの配列によってカバーされ、各書込みラインは、前記プローブ又は前記試料の何れかを、その共振周波数又はその共振周波数付近で振動させることによって集められ、振動の振幅が最大走査ライン長を決め、前記走査ラインの配列は前記駆動手段の動作によって与えられる、
ことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
【請求項23】
請求項22に記載の、試料に情報を書き込む走査型プローブ顕微鏡であって、前記プローブと前記試料との間の前記相互作用の強度を示す少なくとも1つのパラメータを測定するように構成されたプローブ検出機構と、前記少なくとも1つのパラメータのうちの1つのパラメータの平均値が所定の設定値から離れるように変化することに応答して、前記駆動手段の動作を介して、前記プローブと前記試料との分離を調整するように構成されたフィードバック機構とを更に含み、前記平均値は、前記プローブ又は前記試料の振動の1周期の時間間隔よりも長い時間間隔にわたって取得される、ことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−210636(P2010−210636A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106324(P2010−106324)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2004−518977(P2004−518977)の分割
【原出願日】平成15年7月4日(2003.7.4)
【出願人】(301046765)ユニバーシティ・オブ・ブリストル (3)