説明

走査型電子顕微鏡

【課題】本発明は走査型電子顕微鏡に関し、1次ビーム電流が小さい場合や試料の2次電子放出効率が小さくてもコントラストの良い画像を得ることができる走査型電子顕微鏡を提供することを目的としている。
【解決手段】少なくとも1チャンネルの検出信号を増幅してディジタルデータに変換し、ディジタルデータに変換した検出信号をフレーム間で無相関なノイズを低減させるためのフレーム積算器8に入力し、その出力を観察画像表示器13に表示するようにした走査型電子顕微鏡において、前記フレーム積算器8の出力とある係数を乗算させる乗算手段を設け、該乗算手段の出力を前記観察画像表示器13に表示させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走査型電子顕微鏡に関し、更に詳しくは1次ビーム電流や試料の2次電子放出効率が小さくてもコントラストのよい画像が得られるようにした走査型電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は従来装置の信号検出系の構成例を示す図である。ここでいう従来装置とは、走査型電子顕微鏡(SEM)である。図はAチャンネル、Bチャンネルの2系統の入力があることを示している。1はAチャンネルの信号を検出する検出器、4はBチャンネルの信号を検出する検出器である。これら検出器1,4としては、2次電子や反射電子検出器が用いられる。2は検出器1の出力を増幅する増幅器、5は検出器4の出力を増幅する増幅器である。
【0003】
3は増幅器2の出力を受けてディジタルデータに変換するA/D変換器、6は増幅器5の出力を受けてディジタルデータに変換するA/D変換器である。7は2チャンネルの信号の合成を行なうチャンネル合成器である。具体的には、Aチャンネルの信号とBチャンネルの信号を交互に出力するものである。8はディジタル信号のフレーム間演算を行なってフレーム間で無相関なノイズを低減させるフレーム積算器である。
【0004】
該フレーム積算器8は、乗算器9,10と、加算器11とフレームメモリ12から構成されている。即ち、チャンネル合成器7の出力は乗算器9に入り、所定の係数、例えば0.2と乗算された後加算器11の一方の入力に入る。加算器11の他方には乗算器10の出力が入っている。加算器11の出力はフレームメモリ12に入って記憶されると共に、その出力が前記乗算器10に入り、所定の係数、例えば0.8と乗算され、前記加算器11に入るようになっている。13は該フレーム積算器8の出力を観察像として表示される観察画像表示器である。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0005】
1次電子ビームで試料(図示せず)上を走査し、試料が発生する2次電子や反射電子を検出器1,4で電気信号に変換する。この検出信号は、続く増幅器2,5で増幅され、A/D変換器3,6でディジタルデータに変換される。この複数のチャンネルのディジタル信号はチャンネル合成器7で時分割合成され、AチャンネルとBチャンネルの信号が交互に出力される。
【0006】
フレーム積算器8では、チャンネル合成器7から出力されるディジタル信号のフレーム間演算を行なってフレーム間で無相関なノイズを低減させる。ここで、フレーム積算器8はその内部に前述した乗算器9,10、加算器11及びフレームメモリ12から構成されており、フレーム間積算を実行する。フレーム積算器8は、ディジタル化された直流信号の飽和を防ぐため、その直流利得は1倍となっている。前記乗算器9,10の係数、0.2,0.8は加算すると1となり、フレーム積算器8の直流利得は1となっていることが分かる。観察画像表示器13では、フレーム積算器8でノイズが低減されたディジタル信号を画像として表示する。
【0007】
従来のこの種の装置としては、スリミング(基材の電子線照射による体積減少)に対して影響が少ないプローブ電流量を大きくして、試料から発せられる2次電子量を多く検出することにより、フレーム積算数を低減しても、従来方法で得た試料像と同等の画質を得るようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0008】
また、入力画像のうち、任意に指定された特定領域について、階調値の分布状況を評価する階調分布評価部と、階調分布評価部の評価結果に基づいて、特定領域内の入力画像に階調歪が生じないように、特定領域の入力画像のみを階調変換する階調変換部を有する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−174555号公報(段落0020〜0031、図1,図3,図4)
【特許文献2】特開2006−26183号公報(段落0013〜0019、図1〜図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の2次電子検出器で2次電子を検出する場合において、発生2次電子の量が少ない場合、検出器の出力はパルス状になる。検出信号がパルス状の信号である場合、図9(a)に示すようにフレームメモリのある画素について、複数のフレームにわたってフルスケールに近い波高値のパルスが存在する場合について考える。図では、Nフレーム目のある画素のサンプリング時点フレーム積算器入力と、続く(N+1)フレーム目〜(N+3)フレーム目まで信号パルスは高くなっている。この場合、フレーム積算器8の直流利得は1倍だから、この場合フレーム積算器8の出力は図9の右に示すようにほぼフルスケールに近い値となる。この場合、画像の最大輝度は十分白レベルに達するので、コントラストの良い画像が得られる。
【0011】
しかしながら、1次ビーム電流が小さい場合や、試料の2次電子放出効率が小さい場合、連続する複数のフレームの同じ画素に信号パルスが稀にしか存在しなくなる。図9の(b)のように、フレーム積算器8にフルスケールに近い波高値がNフレーム目にあっても、この場合残りのフレームに信号パルスがない場合は、フレーム積算器8の出力は図9の(b)の右に示すようにその出力はフルスケールに対して小さな値となる。この結果、観察画像の最大輝度は白レベルに達せずコントラストの悪い画像になってしまう。
【0012】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、連続する複数のフレームの同じ画素に信号パルスが稀にしか存在しなくても、観察画像の最大輝度が白レベルに達するようにすることで、1次ビーム電流が小さい場合や試料の2次電子放出効率が小さくてもコントラストの良い画像を得ることができる走査型電子顕微鏡を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)請求項1記載の発明は、少なくとも1チャンネルの検出信号を増幅してディジタルデータに変換し、ディジタルデータに変換した検出信号をフレーム間で無相関なノイズを低減させるためのフレーム積算器に入力し、その出力を観察画像表示器に表示するようにした走査型電子顕微鏡において、前記フレーム積算器の出力とある係数を乗算させる乗算手段を設け、該乗算手段の出力を前記観察画像表示器に表示させるようにしたことを特徴とする。
【0014】
(2)請求項2記載の発明は、前記乗算器をシフト型演算器で構成したことを特徴とする。
(3)請求項3記載の発明は、前記乗算器又はシフト型演算器の入力段に入るディジタルデータの最大ビットを含む数ビットを入力して、オーバーフローを検出するオーバーフロー検出器と、該オーバーフロー検出器がオーバーフローを検出した場合にはその出力でディジタルデータ入力を全ビットを1になるようにした飽和演算器とを設けたことを特徴とする。
【0015】
(4)請求項4記載の発明は、検出器の信号チャンネル毎に前記フレーム積算器と前記乗算手段を設けたことを特徴とする。
(5)請求項5記載の発明は、前記乗算手段はソフトウェアにより実現することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
(1)請求項1記載の発明によれば、フレーム積算器の後に乗算手段を設けて、フレーム積算器の出力を必要に応じた倍率に設定することが可能となり、1次ビーム電流が小さい場合や試料の2次電子放出効率が小さくてもコントラストの良い画像を得ることができる。
【0017】
(2)請求項2記載の発明によれば、乗算器をシフト型演算器で実現できるので、演算はバスの結線だけで実現できるため、ハードウェアのゲート数を大幅に削減することが゛てきる。
【0018】
(3)請求項3記載の発明によれば、最大ビットを含む数ビットを入力して、最大ビットに“1”が立っていることを認識し、その時のディジタルデータを全て“1”にすることで、本来輝度が最大にならなければならないディジタルデータが“0”になり、コントラストが真っ黒になる不具合を除去することができる。
【0019】
(4)請求項4記載の発明によれば、検出器の信号チャンネルごとにフレーム積算器と乗算手段を設けることで、チャンネル毎に時分割で切り替えて信号処理するという手間を省くことができる。
【0020】
(5)請求項5記載の発明によれば、乗算手段をパソコン等のソフトウェアを用いて実現するので、ハードウェアが必要でなくなり、回路構成が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1の信号検出系の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の動作説明図である。
【図3】本発明の実施例2のシフト演算器の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例3の要部の構成例を示す図である。
【図5】飽和演算器の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例4の信号検出系の構成例を示す図である。
【図7】フレーム積算器の他の構成を示す図である。
【図8】従来装置の信号検出系の構成例を示す図である。
【図9】従来装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の信号検出系の構成を示す図である。図8と同一のものは、同一の符号を付して示す。図8に示す従来構成例と異なるのは、フレーム積算器8と観察画像表示器13との間に、フレーム積算器8の出力を大きくするための乗算手段を設けた点である。この乗算手段は、乗算器14とスケーリング係数設定器15とで構成されている。乗算器14は入力される2つの信号を乗算するものであり、スケーリング係数設定器15は、フレーム積算器8の出力の倍率を変えるための係数を設定するものである。つまり、乗算器14は、フレーム積算器8の出力とスケーリング係数設定器15による設定値とを乗算する。スケーリング係数としては、例えば×2,×4,×8等が用いられ、スケーリング係数は、時分割されたチャンネル毎に設定されるようになっている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0023】
図1の実施例1では、ディジタル化された直流信号の飽和を防ぐために、フレーム積算器8の直流利得は1倍としている。例えば、乗算器9の係数が0.2の場合、乗算器10の係数は0.8とする。これで、フレーム積算器8の直流利得は1倍となる。
【0024】
1次電子ビームで試料(図示せず)上を走査し、試料が発生する2次電子や反射電子を検出器1,4で電気信号に変換する。この検出信号は、続く増幅器2,5で増幅され、A/D変換器3,6でディジタルデータに変換される。この複数のチャンネルのディジタル信号はチャンネル合成器7で時分割合成され、AチャンネルとBチャンネルの信号が交互に出力される。
【0025】
フレーム積算器8では、チャンネル合成器7から出力されるディジタル信号のフレーム間演算を行なってフレーム間で無相関なノイズを低減させる。ここで、フレーム積算器8はその内部が前述した乗算器9,10、加算器11及びフレームメモリ12から構成されており、フレーム間積算を実行する。フレーム積算器8の出力は乗算器14の一方の入力に入る。該乗算器14の他方の入力にはスケーリング係数設定器15から乗算係数が与えられるようになっている。乗算器14はフレーム積算器8の出力とスケーリング係数設定器15の乗算係数とを乗算する。
【0026】
この場合、乗算器14によって、図2に示すようにフレーム積算後のディジタル画像輝度を増幅し、パルスの最大輝度がフルスケール近くになるようにする。図2は本発明の実施例1の動作説明図である。Nフレーム目は波高の高い信号パルスであるが、(N+1)〜(N+3)までは振幅の小さな信号パルスである。このような信号パルスの小さな信号であっても、スケーリング係数設定器15の値を例えば×8倍にすることにより、その出力値がフルスケール値になるようにすることができる。図2の右側は乗算器14の出力を示している。図より、ダイナミックレンジぎりぎりの値、つまりフルスケール値にまで乗算器14の出力が大きくなっていることが分かる。
【0027】
ここで、増幅の度合いはスケーリング係数設定器15に時分割されたチャンネル毎に最適な値を設定するようになっている。例えば、2倍から8倍程度増幅するスケーリングとすれば、パルスの数がサンプリング周期数回に数回に1回程度に小さくても、多くの場合は十分なパルス輝度が得られるようになる。
【0028】
このように実施例1によれば、フレーム積算器の後に乗算手段を設けて、フレーム積算器の出力を必要に応じた倍率に設定することが可能となり、1次ビーム電流が小さい場合や試料の2次電子放出効率が小さくてもコントラストの良い画像を得ることができる。
【0029】
この増幅倍率を大きくすることは、信号系全体の直流利得を大きくすることであるから、検出器1や増幅器2の信号以外のノイズも増幅され、観察画像の妨げになることがある。よって、ノイズの大きな検出系チャンネルは増幅の度合いを小さく設定し、ノイズの小さな検出系チャンネルは増幅の度合いを大きく設定するとよい。このようにして、フレーム積算器8でノイズ低減されたディジタル信号が出力され、観察画像表示器13に表示されることになる。
【0030】
上述の実施の形態では、フレームをNフレームから(N+3)フレームまでの演算について説明したが、本発明はこれに限るものではないことは言うまでもなく、任意の数のフレームに適用することができる。
(実施例2)
図1の乗算器14の構成を2のべき乗演算するものであれば、図3に示すようなシフト演算器16で実現することができる。図3は利得4倍の場合である。シフト演算器16は、入力データを2ビット上シフト演算していることが分かる。即ち、2のべき乗の利得値に比例して入力バスの各ビットをそれぞれ上シフトして出力バスに接続する。ここで、データの重み付けの大きい方を上(D7)とする。乗算をシフト演算器で実施すると、演算はバスの結線だけで実現され、ハードウェアのゲート数を大幅に節約することができる。
(実施例3)
図4は本発明の実施例3の要部の構成例を示す図である。この実施例は、乗算手段部にオーバーフロー検出器17と飽和演算器(リミッタ)18を設けたものである。オーバーフロー検出器17は最上位ビットd7とd6のデータを受けてオーバーフローを検出する。飽和演算器18は、シフト演算器16の出力を受けてD0〜D7までの8ビットのデータを出力する。該飽和演算器18にはオーバーフロー検出器17の出力が与えられており、このオーバーフロー信号が“1”の時、飽和演算器18はD0〜D7までのビットを全て“1”にする。オーバーフロー検出器17の出力が“0”の場合、シフト演算器16の出力をそのまま出力する。
【0031】
シフト演算器16で大きい数値が入力された場合、出力に入力の大きい数値の下位ビットが巡回的に現れて小さい数値として出力される場合がある。例えば011111111ビットにあと1個入力されると、出力は100000000となり、MSBのみ1ビットとなり、シフト演算器16からは00000000のデータが出力される。最も輝度が強いはずの信号が真っ黒になってしまう。これを防ぐために、入力ビットの最上位ビットとそれより1ビット小さい2つのビットd6,d7のオアをとり、最大信号が入力されている場合には、その出力を“1”とし、飽和演算器18に“1”信号を与える。
【0032】
図5は飽和演算器の構成を示す図である。シフト演算器16の出力は、8個のオアゲートGに入っている。8個のオアゲートGの他方の入力には、共通にオーバーフロー検出器17からの信号が入力される。オーバーフロー検出器17からの“1”信号を受けた飽和演算器18はその出力が全て“1”になるビットデータを出力する。つまり、飽和演算器は8ビットのオアゲートとなっており、シフト演算器16の出力が各ゲートの一方の入力に入り、他方の入力にはオーバーフロー検出器17の出力が入っている。従って、オーバーフロー検出器17の出力が“1”の場合、飽和演算器の各ゲートは全て“1”になる。オーバーフロー検出器17の出力が“0”の場合、シフト演算器16の出力がそのまま出力される。
【0033】
この実施例によれば、最大ビットを含む数ビットを入力して、それらの少なくとも一つのビットに“1”が立っていることを認識し、その時のディジタルデータを全て“1”にすることで、本来輝度が最大にならなければならないディジタルデータが“0”になり、コントラストが真っ黒になる不具合を除去することができる。
(実施例4)
図6は本発明の実施例4の信号検出系の構成例を示す図である。この実施例は、図1に示すフレーム積算器8と乗算手段を入力チャンネルの数だけ設けたものである。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。Aチャンネルにはフレーム積算器8と乗算手段(14,15)が設けられ、Bチャンネルにはフレーム積算器19と乗算手段(24,25)が設けられている。フレーム積算器8とフレーム積算器19、及び乗算手段(14,15)と乗算手段(24,25)は対応しており、同じ構成のものである。
【0034】
このように信号検出系をチャンネル毎に設けると、図1に示したようなチャンネル合成器7は不要となる。更に、スケーリング係数設定器15と25も常時固定値を設定しておけばよい。観察画像表示器13には各チャンネルの信号が同時に2つ表示されることになる。実施例4によれば、検出器の信号チャンネルごとにフレーム積算器と乗算手段を設けることで、チャンネル毎に時分割で切り替えて信号処理するという手間を省くことができる。
(実施例5)
上述の実施例では、乗算器14及びスケーリング係数設定器15としてハードウェアで実現した場合について説明した。しかしながら、乗算器14及びスケーリング係数設定器15に相当する演算は、観察画像表示器13の中の例えばパーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、ディジタル信号処理プロセッサなどのソフトウェァ処理によって実現することもできる。このように実現すれば、ハードウェアが不要になり、回路構成が簡単になるという利点がある。
(実施例6)
図7は図1に示すフレーム積算器の他の構成を示す図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、30がフレーム積算器である。12はフレーム画像を蓄えるフレームメモリ、20,21は加算器、22は乗算器である。入力Xは加算器20と21に入力されている。乗算器には係数αが設定されている。加算器21の出力は、乗算器22でαと乗算され、加算器20でXと乗算器22の出力が加算されたものがYとなる。
【0035】
図1において、チャンネル合成器7の出力をX、フレームメモリ12の出力をYとすると、Y=(1−α)X+αY (1)
と表すことができる。一方、図7の出力Yを求めると、
Y=(Y−X)・α+X (2)
と表される。(2)式を変形すると、
Y=Yα−Xα+X
=(1−α)X+αYとなる。
【0036】
この式は(1)式と同じである。即ち、図7に示すフレーム積算器30の回路は、図1に示すフレーム積算器8と等価である。この実施例によれば、乗算器が1個ですむ。
以上詳細に説明したように、本発明によれば、SEMの信号検出系において、乗算器をフレーム積算器と観察画像表示器の間に設け、その乗算係数はスケーリング設定器で時分割されたチャンネル毎に設定するように構成したので、連続する複数のフレームの同じ画素に信号パルスが稀にしか存在しなくても、観察画像の最大輝度は白レベルに達するようになり、1次ビーム電流が小さい場合や試料の2次電子放出効率が小さくても、コントラストのよい画像を得ることができるようになった。
【符号の説明】
【0037】
1 検出器
2 増幅器
3 A/D変換器
4 検出器
5 増幅器
6 A/D変換器
7 チャンネル合成器
8 フレーム積算器
9 乗算器
10 乗算器
11 加算器
12 フレームメモリ
13 観察画像表示器
14 乗算器
15 スケーリング係数設定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1チャンネルの検出信号を増幅してディジタルデータに変換し、ディジタルデータに変換した検出信号をフレーム間で無相関なノイズを低減させるためのフレーム積算器に入力し、その出力を観察画像表示器に表示するようにした走査型電子顕微鏡において、
前記フレーム積算器の出力とある係数を乗算させる乗算手段を設け、
該乗算手段の出力を前記観察画像表示器に表示させるようにしたことを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項2】
前記乗算器をシフト型演算器で構成したことを特徴とする請求項1記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項3】
前記乗算器又はシフト型演算器の入力段に入るディジタルデータの最大ビットを含む数ビットを入力して、オーバーフローを検出するオーバーフロー検出器と、該オーバーフロー検出器がオーバーフローを検出した場合にはその出力でディジタルデータ入力を全ビットを1になるようにした飽和演算器とを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項4】
検出器の信号チャンネル毎に前記フレーム積算器と前記乗算手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項5】
前記乗算手段はソフトウェアにより実現することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の走査型電子顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−182573(P2010−182573A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26076(P2009−26076)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】