説明

走査型電子顕微鏡

【課題】イメージシフトによる電子線のビーム径増大の影響を抑えた高速かつ高精度な試料の観察、測定を行う方法、及び装置を提供する。
【解決手段】電子線が所定の走査幅よりも小さい領域を走査する場合には、試料上の電子線の照射対象位置が、イメージシフトを制御可能な第一の範囲よりも小さな第二の範囲内にあるときにはイメージシフトを用いた視野移動を行い、前記第二の範囲を超えるときにはステージ移動を行う。このような構成によれば、ビーム径の影響を受けない条件下においてステージ移動に対する相対的なイメージシフトによる視野移動量を増大させることができるため、高速かつ高精度に試料の観察、測定を行うことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型電子顕微鏡に関し、特にビームシフトによる視野移動を制御して試料の観察、及び測定を行うのに好適な方法、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:以下、SEM)は、電子源から放出された電子線を試料上に照射し、試料から発生する二次電子または反射電子等の二次信号電子を検出することで、試料の表面形状を反映した二次元信号(画像)を取得する。
【0003】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、光学顕微鏡に代わって、SEMがこれらを対象試料とする検査や計測等に使用されている。代表的な装置としては、微細な回路パターンを有する基板(ウェハ)のパターンを計測する測長SEM(Critical dimension SEM:以下、CD−SEM)や、ウェハ上の欠陥や異物を検査する欠陥レビューSEM(Defect Review SEM:以下、DR−SEM)などがある。半導体デバイスは、シリコン基板上にレジストを塗布し、フォトマスクを使って特定のパターンを転写するリソグラフィ工程とエッチング工程の繰り返しにより製造される。このような製造プロセスにおいては、歩留まりを向上するために製造プロセスの安定稼働が必須であり、インライン検査によって欠陥を早期に発見し、不良を解決することが必要である。CD−SEMにおいてはデバイスの微細化と共に測定の高精度化と安定性が求められ、DR−SEMのような検査装置においては、微細な欠陥を検査するために高分解能観察が重要になってきている。そして、このような半導体デバイスの検査、計測装置においては、測定対象となる特定パターンの位置へ電子線を照射するための移動における位置精度の向上、及びこれらの一連の動作の高速化(スループットの向上)が求められる。
【0004】
位置精度向上のための一つの手段としてはステージの移動、及び停止精度の向上が挙げられるが、検査・計測対象物の大きさが数10nmレベルの微細な構造を有するデバイスでは、測定場所への移動をステージの移動だけで実現することは困難である。また、高精度なステージを装置に搭載することによるコストの高騰や、測定点への視野移動のために機械的にステージを動かすことによるスループットの低下といった問題がある。そこで、このようなステージの問題点を補う移動方法として、電気的に電子線をビームシフトさせて視野移動させる制御(以下、イメージシフト)がある。
【0005】
特許文献1には、特にパターンのラインを測長する場合において電子線のビーム径の増大を補正する手段として、予め登録したイメージシフト位置とビーム径変化を関連づけるルックアップテーブルに基づいて、ビーム径の変化を補償するように画像処理を施すことで、実効的にイメージシフト使用時でも測定誤差を生じさせない寸法測定方法が示されている。
【0006】
特許文献2には、イメージシフト使用時の倍率誤差、寸法測定誤差に対する影響を抑制するため、複数の偏向器を用いて荷電粒子線を対物レンズの光軸に沿って試料に入射するように調整する軸調整方法が開示されている。
【0007】
特許文献3においては、例えば一定のピッチでパターンが配列されたウエハに対し、既知のピッチごとに誤差量を取得することで、イメージシフトの偏向位置によらず、正確な走査位置合わせを行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−175318号公報
【特許文献2】特開2011−9127号公報
【特許文献3】特開2008−84626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、処理の高速化のためにイメージシフトによって大きく視野移動するような場合、図3にて後述するように、発生する収差の増加による電子線のビーム径増大の影響が測定精度を劣化させる要因として問題になる。
【0010】
また、デバイスの微細化に伴って、これらを検査、計測するSEMの像分解能を向上させる技術として対物レンズの短焦点化が進んでいるが、この短焦点化によって更にイメージシフト使用時の収差が増大することが分かっている。このため、単に物理的に制御可能な範囲内においてイメージシフトを利用した場合、正確な測定結果が得られない場合がある。
【0011】
従って、スループットの向上とともに高い測定精度を実現するためには、試料上の測定位置に対する電子線の照射位置の移動において、ステージによる移動とイメージシフトによる視野移動を最適に組み合わせて制御することが重要である。すなわち、測定のために必要な全体の移動量のうち、ステージによる移動量に対するイメージシフトによる視野移動量の相対的な割合を大きくし、かつ、イメージシフト時に有効な像分解能と測長精度を維持できる条件下において制御することが重要となる。
【0012】
特許文献1に開示された方法によれば、結果として得られる測長値の誤差を画像処理によって補正できるものの、イメージシフトによる視野移動とステージ移動を組み合わせて制御することについては具体的な開示がない。
【0013】
また、特許文献2に開示された方法によれば、偏向器の作用によって荷電粒子線を対物レンズの光軸に沿って適正に試料に入射することができるが、ステージ移動との最適な組み合わせを思考するものではない。
【0014】
特許文献3に開示された方法によれば、イメージシフトによる偏向を行って既知のピッチごとに誤差量を取得する間に、ステージのドリフト量を測定し、補正することができるが、全体の移動量に対するステージ移動とイメージシフトによる視野移動との関係については言及されていない。
【0015】
本発明の目的は、試料上の測定位置に対する電子線の照射位置の移動において、ステージによる移動とイメージシフトによる視野移動を最適に組み合わせて制御することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための一態様として、試料上の電子線の照射目的位置が、前記試料の第一の範囲内にあるときには前記偏向器に偏向信号を与え、前記第一の範囲を超えるときには前記試料ステージを移動して前記電子線の照射位置を制御する方法、及び装置において、電子線が所定の走査幅よりも小さい領域を走査する場合には、前記試料上の電子線の照射目的位置が、前記試料の第一の範囲よりも小さい第二の範囲内にあるときには前記偏向器に偏向信号を与え、前記第二の範囲を超えるときには前記試料ステージを移動する方法、及び当該制御を実現する装置を提案する。
【発明の効果】
【0017】
以上のような構成によれば、電子線のビーム径の増大による影響が少ない条件下においてイメージシフトを実行することができ、高速で測定精度の高い試料の観察、計測が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】SEMの概略構成を示す図。
【図2】偏向コイルの制御と電子線の走査領域、及びイメージシフトによる電子線の偏向の関係を示す図。
【図3】SEMの分解能、及び種々の収差(回折収差、球面収差、色収差)、光源径の関係を示す図。
【図4】イメージシフト制御範囲に基づく試料上の電子線の照射位置の移動方法の一例を説明する図。
【図5】イメージシフト制御範囲に基づく試料上の電子線の照射位置の移動方法の一例を示すフロー図。
【図6】電子線の走査幅(観察倍率)ごとの画素分解能とビーム径の関係の一例を示す図。
【図7】イメージシフト有効制御範囲に基づく試料上の電子線の照射位置の移動方法の一例を示すフロー図。
【図8】光学条件ごとのイメージシフト量とビーム径の関係を示す図。
【図9】光学条件ごとのイメージシフト量と像シャープネス値の関係を示す図。
【図10】光学条件ごとのイメージシフト量とライン測長値の関係を示す図。
【図11】イメージシフト量とビーム径に関する値の変化量に基づく参照データ(制御テーブル)の調整方法の一例を示すフロー図。
【図12】イメージシフトの制御範囲、有効制御範囲及び制御テーブルの一例を示す図。
【図13】イメージシフト制御条件を設定するGUIを示す図。
【図14】ビーム径が最小となる位置がイメージシフトの量がゼロとなる位置ではない場合の例を示す図。
【図15】ビーム径増大を抑制するための偏向コイルの配置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に説明する実施の形態は一例であり、これに限られるものではない。例えば、以下の説明ではSEMを例に採って説明するが、これに限られることはなく、コンピュータプログラムによって処理を実行する汎用の演算装置を用いて、後述するような処理を行うようにしても良い。
【実施例1】
【0020】
実施例1では、電子線のビーム径の増大による影響が少ない条件下においてイメージシフトを実行することができる実施の形態について説明する。
【0021】
図1はSEMの概略構成を示す図である。陰極1と第一陽極2の間には制御演算装置40(制御プロセッサ)で制御される高電圧制御電源30により電圧が印加され、所定のエミッション電流が陰極1から引き出される。陰極1と第二陽極3の間には制御演算装置40で制御される高電圧制御電源30により加速電圧が印加されるため、陰極1から放出された電子線4は加速されて後段レンズ系に進行する。電子線4は、集束レンズ5で集束され、絞り板8で電子線4の不要な領域が除去された後に、集束レンズ制御電源32で制御された集束レンズ6および対物レンズ制御電源36で制御された対物レンズ7により、試料ステージ11上に載せられた試料10に微小スポットとして集束される。本図に示す対物レンズ7の磁界中に加速電極電源38によって正の電圧を印加した加速電極19を用いたブースティング方式を備えた構成を持つ。試料ステージ11は半導体ウエハをSEMで観察できる高精度なXYステージであり、その停止精度は数百nm〜数μmの精度をもつ。また、この試料ステージ11には、電子線4の低エネルギー照射による高分解能化のためのリターディング方式として、試料印加電源37により負の電圧を印加することができる。
【0022】
電子線4は、制御演算装置40によって制御される偏向コイル制御電源33によって信号が与えられる走査用の上下段の偏向コイル13、14が発生する偏向磁場によって試料10上を二次元的に走査される。なお、偏向コイルは偏向電極としても置き換えることができる。この場合、電子線4は電界によって偏向作用を受ける。また、このとき偏向コイルまたは偏向電極に与えられる信号は、電流、あるいは電圧である。
【0023】
試料10から発生した二次電子、反射電子等の二次信号電子12は、対物レンズ7による引き上げ磁界、あるいは試料10に印加されたリターディング電位や加速電極19に印加したブースティング電位によって引き上げ電界の作用を受けて対物レンズ7の上方に進行した後、反射板9によって変換二次電子15に変換される。変換二次電子15は電磁界直交型偏向器16(ExB)によって信号検出器17の方向に進行し検出され信号増幅器18で増幅された後、画像メモリ41に転送されて、像表示装置42にSEM像として表示される。また、入力装置44を通して外部から種々の条件、情報などを入力することもできる。
【0024】
ここで、偏向コイル(上段)13、偏向コイル(下段)14に流す電流は、電子線4が対物レンズ7の軸中心(偏向支点)を通るように上下段の比率が制御される。このように制御することで偏向支点を一定に制御しつつ偏向振幅を変化させ、対物レンズの軸中心を通し、収差の小さい状態で観察倍率を変えることができる。また、偏向コイル(上段)13、偏向コイル(下段)14は、試料上を走査しながら試料の観察位置を視野移動するためのイメージシフトとして機能する。
【0025】
偏向コイルの具体的な制御イメージについて、図2を用いて説明する。図2(a)は、偏向コイルの制御と電子線の走査領域の関係を示す図である。観察領域を変更する場合には、図2(a)に示すように偏向コイル制御電源33によって偏向コイル(上段)13、偏向コイル(下段)14に流す電流の振幅を変えて、試料10上のL1やL2のように走査領域を変える。一方、図2(b)は、偏向コイルの制御とイメージシフトによる電子線の偏向の関係を示す図である。イメージシフトとして使用する場合には、偏向コイル(上段)13、偏向コイル(下段)14に流す電流にオフセット電流を与えることで図2(b)に示すように視野移動(L3)させることができる。イメージシフトした状態で走査のための偏向振幅(走査幅)を変えれば視野移動した位置で走査領域、すなわち観察倍率(L1、L2)を変えることができる。
【0026】
図3は、SEMの分解能と種々の収差(回折収差、球面収差、色収差)、光源径の大きさの関係を示す図である。ここで、横軸は試料に対し照射される電子線の拡がりを半角で示した開き角αであり、縦軸は電子線のビーム径の大きさを示す。試料にフォーカスする電子線のビーム径の大きさは、図3に示すように、一般的には回折収差、球面収差、色収差、試料上における縮小された光源径の大きさによって決まるが、イメージシフトによって視野移動することにより、更に像面湾曲、非点収差、コマ収差、偏向色収差などが発生しビーム径が増大する。
【0027】
次に、図4を用いて、ステージ移動とイメージシフトによる視野移動との関係について説明する。図4は、イメージシフト制御範囲に基づく試料上の電子線の照射位置の移動方法の一例を示す図である。
【0028】
試料上の特定パターンを電子線の照射対象位置(測定点)とするとき、測定点までの電子線の照射位置の移動はSEM像で表示される特定パターンの位置を画像処理によって認識し(以下、パターンマッチング)、必要な視野移動量(距離)を算出して行う。視野移動量ΔLの算出はパターンマッチングで求めた画面上の画素ずれ量Δlに対して、観察時の倍率MからΔL=M×Δlの関係式によって求める。通常、イメージシフトはステージの停止精度を補う目的として数μm〜数10μmの視野移動が可能になるように制御される。このイメージシフトによる視野移動可能範囲をイメージシフト制御範囲と呼ぶ。本実施の形態では、図4にて図示するひし形と三角形状の2つの特定パターンを高倍率観察するための方法について説明する。図4(a)は、ひし形パターンを対象とする場合、図4(b)は、三角形状のパターンを対象とする場合を示す。
【0029】
図4(a)では、ひし形パターンの高倍率観察をしたい場合、低倍率観察においてひし形パターンの位置はイメージシフト制御範囲内にあるため、パターンマッチングで算出した視野移動量をイメージシフトで視野移動した後、観察倍率を高くすることで高倍率観察が可能になる。図4(b)では、三角パターンの高倍率観察をしたい場合、低倍率観察において三角パターンの位置はイメージシフト制御範囲外であるため、パターンマッチングによって算出した視野移動量に対して、まず三角パターンが画面中心となるようにステージを移動させる。ただし、ステージの停止精度には一定精度のばらつきがあるため、画面の中央の所望の位置に移動しないことがある。ここで、再度パターンマッチングを実施し、イメージシフト制御範囲内に三角パターンがあるかを判定する。イメージシフト制御範囲内に三角パターンがある場合にはイメージシフトによって視野移動した後、観察倍率を高くして三角パターンの高倍率観察が可能になる。
【0030】
図5は上述したイメージシフト制御範囲に基づく電子線の照射位置の移動方法の一例を示すフロー図である。予め測定条件が登録されたレシピを実行すると(ステップ501)、半導体ウエハが試料ステージ11に搬送された後、パターンの座標登録情報に基づき測定点にステージを移動する(ステップ502)。測定点において低倍率観察像を取得し(ステップ503)、測定する特定パターンについて画像処理によるパターンマッチングでSEM画面中心からの位置ずれ量を計算する(ステップ504)。この時、SEM像のフォーカスが合っていない場合があるが、この場合は自動焦点補正をレシピの中で設定できるようにすることで対応が可能である。または、ウエハの高さ(焦点位置)が測定できるZセンサのような測定器を備え、測定された高さ情報を対物レンズのフォーカス電流にフィードバックして焦点調整してもよい。低倍率観察像で取得した画像中心(基準位置)からの位置ずれ量(=視野移動量)がイメージシフト制御範囲内であるかを判断する(ステップ505)。特定パターンがイメージシフト制御範囲外であれば、SEM画面中心に移動するようにステージを微小に移動させる(ステップ506)。このステージの移動によって特定パターンは画面中心付近に移動するが、その際の中心から位置ずれ量はステージの停止精度内で一定にばらつく。(ステップ504)、(ステップ505)、(ステップ506)の手順をイメージシフト制御範囲内に入るまで繰り返す。特定パターンが、イメージシフト制御範囲内に入れば、視野移動量をイメージシフトの偏向量として設定し、高倍率観察像を取得する(ステップ508)。イメージシフト時には、像面湾曲による焦点ずれ、非点収差の増加が発生することから、高倍率像において、自動焦点補正、自動非点補正を実施し(ステップ509)、観察画像を取得する。またはその取得した画像を用いて特定パターンの寸法計測を実施する(ステップ510)。以上の処理を測定レシピに登録された測定点の数だけ実施する(ステップ511)。
【0031】
次に、図6を用いて、本実施の形態におけるイメージシフトによる視野移動とステージ移動の制御を実行するときの電子線の走査幅(観察倍率)の設定について説明する。一般的にSEM像における像分解能は、ビーム径と観察倍率に応じた画素分解能(ある倍率で観察する時の1画素当たりのサイズ)との兼ね合いで決まる。図6は、電子線の走査幅(観察倍率)ごとの画素分解能とビーム径の関係の一例を示す図である。ビーム径は観察倍率が変化しても変わらないが、観察倍率が大きくなると画素分解能は小さくなる。従って、この画素分解能がビーム径よりも小さくなる場合に、像分解能に対してビーム径の影響が大きくなる。図6では100k倍を境にして画素分解能がビーム径よりも小さくなる例を示しており、100k倍以上の高倍率で使用する場合にはビーム径の変化が像分解能に対して影響を与える。つまりイメージシフトによるビーム径増大の影響は、観察倍率100k倍以上において顕著に現れる。一方、100k倍以下の観察倍率であれば、イメージシフトによるビーム径増大の影響は像分解能に対して大きく影響を与えない。従って、本実施の形態を適用する場合には特定パターンの観察、測定倍率に応じて、電子線の照射位置の移動を制御することが有効な手段となる。自動、あるいはユーザーがレシピで設定した特定パターンの観察・測定倍率が像分解能に影響を与えない場合には、図4にて説明したイメージシフト制御範囲内においてイメージシフトの振り幅を大きく取ることができるので、視野移動時にステージの移動量、移動頻度を少なくすることができ、測定処理の高速化が可能になる。ここで、電子線の照射位置の移動の制御を有効にする倍率を、後述する図11に示す入力欄(1105)にユーザーが入力することによって設定することもできる。
【0032】
図7を用いて、上述の観察倍率を考慮した、試料上の電子線の照射位置の移動方法について説明する。図7は、イメージシフト有効制御範囲に基づく試料上の電子線の照射位置の移動方法の一例を示すフロー図である。予め測定条件が登録されたレシピを実行すると(ステップ701)、半導体ウエハが試料ステージ11に搬送された後、パターンの座標登録情報に基づき測定点にステージを移動する(ステップ702)。ここで、観察倍率が予め定めた閾値、すなわち像分解能に対するビーム径の影響が大きくなる倍率よりも低倍率の場合には、図5のステップ503−507へ進みイメージシフト制御範囲に基づく視野移動を行う(ステップ705)。一方、観察倍率が閾値よりも高倍率の場合には、測定点において画像を取得し(ステップ704)、測定する特定パターンについて画像処理によるパターンマッチングでSEM画面中心からの位置ずれ量を計算する(ステップ706)。次に、取得した画像中心(基準位置)からの位置ずれ量(=視野移動量)がイメージシフト有効制御範囲内であるかを判断する(ステップ707)。ここで、イメージシフト有効制御範囲とは、有効な測定精度を維持できる条件下において制御可能なイメージシフト範囲をいう。この範囲は、図8−図14にて後述するイメージシフト量とビーム径に関する値の変化量を関係づけるデータに基づいて設定しても良く、またユーザーが任意で設定しても良い。また、レシピに登録することで自動的に実行することも可能である。但し、ここで説明するイメージシフト有効制御範囲は、図4及び図5にて示したイメージシフトによる視野移動が装置上実現可能な範囲であるイメージシフト制御範囲よりも小さな範囲の領域となることはいうまでもない。特定パターンがイメージシフト有効制御範囲外である場合にはSEM画面中心に移動するようにステージを微小に移動させる(ステップ708)。(ステップ706)、(ステップ707)、(ステップ708)の手順をイメージシフト有効制御範囲内に入るまで繰り返す。特定パターンは、イメージシフト有効制御範囲内に入れば、視野移動量をイメージシフトの偏向量として設定、移動し(ステップ709)、撮像を行う(ステップ710)。自動焦点補正、自動非点補正を実施し(ステップ711)、観察画像を取得する。またはその後取得した画像を用いて特定パターンの寸法計測を実施する(ステップ712)。以上の処理を測定レシピに登録された測定点の数だけ実施する(ステップ713)。
【0033】
次に、図8を用いてSEMの光学条件ごとにビーム径の増大量の影響を考慮したイメージシフトの有効制御範囲を設定する例について説明する。なお、ここでは加速電圧の条件を変更した場合の例を示すが、本実施の形態はこれに限られるものではなく、例えばSEMにおける種々の電極やコイルに与える電流若しくは電圧など、その他の光学条件を変更させた場合においても適用できる。
【実施例2】
【0034】
実施例1では、電子線のビーム径の増大による影響が少ない条件下においてイメージシフトを実行する実施の形態について説明したが、実施例2では、光学条件ごとにイメージシフト有効制御範囲を設定することにより、より信頼性の高い制御を行う例について説明する。
【0035】
図8は、光学条件ごとのイメージシフト量とビーム径の関係を示す図である。
【0036】
図8(a)では加速電圧を500V、1000V、1500Vに変えた時のイメージシフフトとビーム径の関係を示してある。また、図8(a)に基づき、ビーム径最小値からのビーム径増大量Δを算出した、イメージシフトとビーム径増大量との関係を図8(b)に示す。一般的にイメージシフト量に応じて偏向色収差、コマ収差等の影響によりビーム径は増大するが、低加速電圧ほどその影響が大きい。ここで、後述するように予めビーム径増大量を測定したデータを記録し、ビーム径増大量の許容値を設定することで、イメージシフト有効制御範囲を加速電圧毎に設定できるようにする。図6(b)の例では、イメージシフトゼロ位置からビーム径増大量の許容値を5%とした場合を示しているが、これを満足するイメージシフト有効制御範囲は加速電圧毎に異なりΔr(300)、Δr(1000)、Δr(1500)のように表される。このように制御することで、ビーム径増大による影響を抑えたSEM画像を取得することができる。例えば測長SEMのような寸法測定を行うような装置の場合、このビーム径の増大が測長値に対して寸法変化として影響するが、例えば0.1nmビーム径が変化した場合、0.1nmの測長値変化として現れる。従って、測長再現性を0.2nm以下で管理することが求められるような半導体デバイスの計測においてはこのビーム径増大を抑えたイメージシフトによる視野移動制御は、測定精度を向上する有効な手段となる。装置が提供する加速電圧条件、高分解能モードや焦点深度モードなどのような光学条件に応じてビーム径増大量は異なるため、それぞれの条件に合わせてイメージシフト制御範囲を設定できるようにすることで、種々の条件においても計測精度を向上させることができる。また、ビーム径の増大量の影響度は、測定対象となるパターンサイズを観察するための観察倍率条件や、ユーザー毎に違うデバイスの管理状況に応じて決定されるべきパラメータである。従って、このビーム径増大量の許容値をユーザーが設定できるようにしておくことで、ロバスト性の高い計測を実現できる。
【実施例3】
【0037】
実施例3では、イメージシフト量とビーム径に関する値の変化量の関係を予め参照データとして取得する方法について説明する。本実施の形態にて予め取得した参照データを利用することで、イメージシフト有効範囲を設定することがより容易に可能となる。
【0038】
図9は、光学条件ごとのイメージシフト量と像シャープネス値の関係を示す図である。
【0039】
図9を用いて、ビーム径の増大量を測定する一例について説明する。図9(a)は一般的に像分解能を評価するために用いられるカーボン上に金粒子を蒸着したサンプルのSEM像を示す。このようなサンプルを使ってビーム径増大量を測定する手段としては、画像処理によってSEM像のシャープネスを評価するContrast-to-Gradient法(CG法)やDerivative-Method法などが適用できる。この場合、ビーム径増大量の許容値をΔ像シャープネス値として設定することができる。図9(b)は加速電圧を500V,1000V,1500Vに変えた時のイメージシフトと像シャープネス増大量の関係を示してある。イメージシフトによって偏向した状態でSEM像を取得し、像シャープネス値を求めることで、図9(b)に示したように像シャープネス値の最小値からの差分値、すなわち増大量を取得する。このような方法を使うことで、SEM像の分解能劣化という観点でビーム径増大量の影響を定量的に測定することが可能になり、ユーザーが設定した像シャープネス値の許容値に応じて、イメージシフト有効制御範囲を設定することができる。
【0040】
また、ビーム径増大量を測定する別の例を図10を用いて説明する。図10は、光学条件ごとのイメージシフト量とライン測長値の関係を示す図である。測長SEMのような装置の場合、ビーム径増大量が測長結果に影響するので、イメージシフト偏向量に対する寸法変化分を実測することで、ビーム径増大量の影響を測定することができる。ライン&スペースが面内に配置されている専用ウエハもしくは専用の試料において、イメージシフト使用時の測長値変化を実測する。ライン測長には、主にX測長のY測長があるので、それぞれにおいてライン測長値変化を取得できることも可能である。この場合、ユーザーは使用する管理基準として寸法値で指定し、イメージシフト制御範囲を設定することができる。もちろん、コンタクトホールのような穴径を測定するような場合にも同じような手法をとることで対応できる。
【0041】
ここで、図11は、上述の手法により測定したイメージシフト量とビーム径に関する値の変化量に基づく参照データ(イメージシフト制御テーブル)の調整方法の一例を示すフロー図を示す。ここでは、一例としてビーム径に関する値として像シャープネス値を用いた場合について説明するが、これに限られることはなく、条件に応じて上述のパターン寸法測定値その他のビーム径に関する値を用いても良い。
【0042】
イメージシフト偏向量ゼロにした後(ステップ1102)、調整倍率に設定し、自動焦点補正、自動非点補正を実施し(ステップ1103)、SEM画像を取得する(ステップ1104)。画像処理により像シャープネス値を算出し(ステップ1105)、その値を記憶装置43に記憶する。イメージシフトを調整で決められた範囲、ステップ幅で変化させて(ここでは、範囲:±10μm、ステップ幅:5μm)視野移動をしながら、上記(ステップ1103)、(ステップ1104)、(ステップ1105)を繰り返す。全ての測定点が終了した後、像シャープネス値の最小値と各点で取得した値の差分値(Δ像シャープネス値)を求め、参照データとしてイメージシフト制御テーブルに記憶する。後述するように、この制御テーブルに基づいてイメージシフト有効制御範囲を設定することができる。
【実施例4】
【0043】
実施例4では、上述の参照データを表示する例について説明する。
【0044】
図12は、イメージシフトの制御範囲、有効制御範囲及びイメージシフト制御テーブルの一例を示す図である。図12(a)は本実施の形態を適用したイメージシフト制御範囲及びイメージシフト有効制御範囲の調整結果を示す。ここでは5×5=25点のマトリクス位置にイメージシフトでビーム偏向し、各々の点で像シャープネス値を取得する場合のイメージシフト制御テーブルを示してある。図12(a)で示すNo.1〜25で求めたΔ像シャープネス値が図12(b)に示すイメージシフト制御テーブルの例には記憶されており、このΔ像シャープネス値をイメージシフト有効制御範囲の設定に使用する。実際には更にイメージシフトを細かく偏向してN×Nのデータを取得すればより精度の高い調整が可能になる。また、例えば複数点のデータを取得した後に、図12(c)の制御テーブル例に示すような二次曲面近似をすることで、測定点を少なくし、調整精度を上げることは有効な手段である。また、この調整は種々の加速電圧や光学モードに対応するように図12(b)に示したイメージシフト制御テーブルを各々の条件で持つことで対応できる。本実施の形態による表示の手法によれば、イメージシフト制御範囲及びイメージシフト有効制御範囲をより明確に認識することができる。
【0045】
図13を用いて、本発明を適用した場合に、ビーム径増大量の許容値をユーザーが設定できるユーザーインターフェース(Graphical User Interface:以下、GUI)を用いた例について説明する。図13は、イメージシフト制御条件を設定するGUIを示す図である。この場合、分解能の管理値としてユーザーが許容値、すなわちイメージシフト有効制御範囲を入力欄(1304)に入力することができる。予め測定されたイメージシフト制御テーブルを参照し、この入力値以下になるようにイメージシフト有効制御範囲を設定する。その結果をイメージシフト有効制御範囲(1304)に表示することで、ユーザーが確認し、またマウスや他の入力装置を用いて画面上から情報の入力、修整などを行うことも可能である。また、この許容値は、加速電圧(1301)や光学モード(1302)などの光学条件毎に、本実施の形態における制御を実行する有効な観察倍率(1305)とともに設定することができる。
【0046】
図14では、イメージシフトとビーム径との関係を示している。理想的にはイメージシフトの偏向量ゼロの場合にビーム径は最小となるが、実際に用いられるSEMにおいては、多数の集束レンズ群や偏向器、補正器で構成されており、機械的な公差、光軸調整時の調整誤差などによって、電子線は必ずしも理想的な軌道を通らない。このような場合、ビーム傾斜、非対称な収差などが発生し、イメージシフト偏向量がゼロの状態においてビーム径は最小とならない場合もある。図14は、ビーム径が最小となる位置がイメージシフトの量がゼロとなる位置ではない場合の例を示す図である。この具体的な例として、イメージシフトによる偏向量とビーム径最小位置との関係を二次元的なマップで表示したものを図14(a)に、また、イメージシフトによる偏向量とビーム径増大量との関係を三次元なマップで表示したものを図14(b)に示している。この場合では、ビーム径に関する値、すなわち分解能が最小となる場所が、イメージシフト偏向量ゼロ(X0、Y0)位置ではなく、イメージシフトで偏向した(X1、Y1)の位置にある。このような場合には図14に示すようにイメージシフト偏向量に対するビーム径増大量の変化についてのマップを取得しておくことで対応することができる。ビーム径最小となるイメージシフトの偏向位置を(X1、Y1)とし、イメージシフト有効制御範囲の設定を、(X1、Y1)を中心としてビーム径増大の許容値に対して求まるイメージシフト量rをイメージシフト有効制御範囲とする。イメージシフト有効制御範囲となる半径r内に特定パターンが入っていれば、イメージシフトによる視野移動を実行し、特定パターンがイメージシフト有効制御範囲に入っていない場合には、特定パターンが(X1、Y1)に移動するようにステージを微小に移動させた後、再度イメージシフト有効制御範囲内に特定パターンが入っているかを判定する。パターンマッチングで求められた特定パターンの位置を(Xi、Yi)とすると、イメージシフトによる視野移動を行うかどうかの判定条件としては、以下を満足するかどうかで判定することができる。
(X1−X02+(Y1−Y02≦r2 …(1)
【0047】
この場合の制御シーケンスは図7で示したフローで対応することができる。具体的には、図7のステップ707に示したイメージシフト有効制御範囲に基づいた判定を上述の手法に基づいて行うことができる。本実施の形態により、イメージシフト偏向量に関わらず、実際に分解能が最小となる位置を中心として、イメージシフト有効制御範囲を設定することができ、より高精度な測定が可能となる。
【実施例5】
【0048】
実施例5では、ビーム直径増大量を抑制する別の手法について説明する。
【0049】
図15は、ビーム径増大を抑制するための偏向コイルの配置の一例を示す図である。上述したように、本実施の形態におけるSEMでは、集束レンズ6を使って電子線のクロスオーバー位置を制御することで最適な開き角で高分解能を実現する光学条件に設定したり、あるいは開き角を小さくして高焦点深度を実現する光学条件に設定することが可能である。通常は光学条件に関係なく2段で対となる偏向コイル(上段)13、偏向コイル(下段)14を使ってイメージシフトによる視野移動を実施することが一般的であるが、ここで複数の偏向器を備えることでイメージシフト時のビーム径増大を抑制することが可能になる。図15では集束レンズ6のクロスオーバー位置に偏向コイル23を配置し、偏向コイル23、偏向コイル(下段)14を用いてイメージシフトによる視野移動を実施する例を示している。偏向コイル23、偏向コイル(下段)14を用いたイメージシフト時の電子線軌道22に示されるように、偏向コイル23、偏向コイル(下段)14を用いたイメージシフトする場合、クロスオーバー位置で偏向するため、偏向コイル(上段)13、偏向コイル(下段)14を用いたイメージシフト時の電子線軌道21よりも、偏向コイルによる偏向色収差が少なくなる。これは、電子線のビーム径が最も細くなるクロスオーバー位置によって偏向コイルにより電子線を偏向することで、ビーム径が広がった位置において偏向する場合よりも偏向コイルによる偏向角度の精度が高くなるためである。従って、偏向コイル23、偏向コイル(下段)14を用いて偏向する場合、イメージシフトによるビーム径増大の影響は少なくなる。複数個の偏向コイルを備えることで、あらゆる光学条件のクロスオーバー位置に対応してイメージシフトによるビーム径増大の影響の少ない最適な偏向コイルを決定することも可能である。偏向コイルを決定する手段としては、図11で示した調整シーケンスを実施することで判断することができる。また、本構成は、偏向コイルの代わりに偏向電極でも対応可能である。このような偏向コイルの調整によるビーム径増大の抑制を、上述のビーム径の増大量が像分解能に対して大きく影響を与える観察倍率において実行することにより、スループットを低下させることなく有効な効果を得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0050】
1 陰極
2 第一陽極
3 第二陽極
4 電子線
5、6 集束レンズ
7 対物レンズ
8 絞り板
9 反射板
10 試料
11 試料ステージ
12 二次信号電子
13 偏向コイル(上段)
14 偏向コイル(下段)
15 変換二次電子
16 電磁界直交型偏向器(ExB偏向器)
17 信号検出器
18 信号増幅器
19 加速電極
21、22 イメージシフトの時の電子線軌道
23 偏向コイル
30 高電圧制御電源
31、32 集束レンズ制御電源
33 偏向コイル制御電源
36 対物レンズ制御電源
37 試料印加電源
38 加速電極電源
40 制御演算装置
41 画像メモリ
42 像表示装置
43 記憶装置
44 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源と、
前記電子源から放出される電子線を加速する加速電圧が印加される電源と、
前記電子線を偏向走査する偏向器と、
試料を搭載する試料ステージと、
前記電子線が照射された試料から発生する電子から得られる信号を検出する検出器と、
前記試料上における電子線の照射対象位置が、前記試料の第一の範囲内にあるときには前記偏向器に偏向信号を与え、前記第一の範囲を超えるときには前記試料ステージを移動して前記電子線の照射位置を前記照射対象位置に近づけるように移動させる制御コンピュータと、を備えた走査型電子顕微鏡において、
前記制御コンピュータは、
前記電子線が所定の走査幅よりも大きい領域を走査する場合には、前記第一の範囲内において前記偏向器に偏向信号を与え、
前記電子線が所定の走査幅よりも小さい領域を走査する場合には、
前記試料上の電子線の照射対象位置が、前記試料の第一の範囲よりも小さい第二の範囲内にあるときには前記偏向器に偏向信号を与え、前記第二の範囲を超えるときには前記試料ステージを移動することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御コンピュータは、
前記電子線の偏向位置と、前記電子線のビーム径に関する値の変化量とを関連付けたデータを記憶する記憶部を備え、
前記第二の範囲は、前記記憶部に記憶されたデータに基づいて設定されることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項2において、
前記第二の範囲は、前記電子線のビーム径に関する値の変化量が最も小さくなるときの前記試料上の偏向位置を中心位置として設定されることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項1において、
前記所定の走査幅は、
前記制御コンピュータが前記検出器に検出される信号に基づいて形成する画像における画素の大きさが、前記電子線のビーム径よりも小さくなるときの走査幅であることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項2において、
前記電子線のビーム径に関する値は、
当該検出器が検出した信号に基づいて形成される画像のコントラストの変化によって求められる特徴量であることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項5において、
前記特徴量は、
像シャープネス値であることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項7】
請求項2において、
前記電子線のビーム径に関する値は、
当該検出器が検出した信号に基づいて形成されるラインプロファイルに基づいて求められる寸法値であることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項8】
請求項2において、
前記記憶部は、前記制御コンピュータによって制御される光学条件ごとに、
前記電子線の偏向位置と、前記電子線のビーム径に関する値の変化量とを関連付けたデータを記憶することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項9】
請求項8において、
前記光学条件は、
前記電源に印加する電圧、対物レンズに与える信号、或いは電子線のビーム開き角のうち、少なくとも1つ以上であることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項10】
請求項2において、
前記制御コンピュータは、
前記記憶部に記憶させるデータに関する情報を入力する入力部を備えることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項11】
請求項10において、
前記制御コンピュータは、
前記入力部に入力する情報、及び入力結果を画面上に表示するユーザインターフェースを備えたことを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項12】
電子源と、
前記電子源から放出される電子線を集束する集束レンズと、
前記電子線を偏向する複数の偏向器と、
試料を搭載する試料ステージと、
前記電子線が照射された試料から発生する電子から得られる信号を検出する検出器と、
前記試料上の電子線の照射目的位置が、前記試料の所定の範囲内にあるときには前記偏向器に偏向信号を与え、前記所定の範囲を超えるときには前記試料ステージを移動して前記電子線の照射位置を制御する制御コンピュータと、を備えた走査型電子顕微鏡において、
前記制御コンピュータは、
前記電子線が所定の走査幅よりも小さい領域を走査するとき、
前記複数の偏向器のうち、少なくとも1つ以上の偏向器に選択的に偏向信号を与えることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項13】
請求項11において、
前記所定の走査幅は、
前記制御コンピュータが前記検出器に検出される信号に基づいて形成する画像における画素の大きさが、前記電子線のビーム径よりも小さくなるときの走査幅であることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項14】
請求項11において、
前記制御コンピュータは、
前記電子線のビーム径に関する値の変化量が最も小さくなるように、
前記複数の偏向器のうち、
少なくとも1つ以上の偏向器に選択的に信号を与えることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項15】
請求項13において、
当該選択的に信号が与えられる偏向器には、
前記集束レンズのクロスオーバーが存在する位置に配置された偏向器が含まれることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項16】
試料上における電子線の照射対象位置が、前記試料の第一の範囲内にあるときには偏向器を制御して前記電子線を偏向し、前記第一の範囲を超えるときには前記試料を搭載する試料ステージを移動して前記電子線の照射位置を移動する電子線の照射方法において、
前記電子線が所定の走査幅よりも大きい領域を走査する場合には、前記第一の範囲内において前記偏向器に偏向信号を与え、
前記電子線が所定の走査幅よりも小さい領域を走査する場合には、
前記試料上の電子線の照射対象位置が、前記試料の第一の範囲よりも小さい第二の範囲内にあるときには前記偏向器に偏向信号を与え、前記第二の範囲を超えるときには前記試料ステージを移動することを特徴とする電子線の移動方法。
【請求項17】
請求項16において、
前記電子線の偏向位置と、前記電子線のビーム径に関する値の変化量とを関連付けたデータを記憶し、
前記第二の範囲は、当該記憶されたデータに基づいて設定されることを特徴とする電子線の移動方法。
【請求項18】
請求項16において、
前記所定の走査幅は、
前記制御コンピュータが前記検出器に検出される信号に基づいて形成する画像における画素の大きさが、前記電子線のビーム径よりも小さくなるときの走査幅であることを特徴とする電子線の移動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−54908(P2013−54908A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192266(P2011−192266)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】