説明

走行型刈取機

【課題】機械的にも大型化することなく中山間地域等の狭い畦においても、左右バランスを良好に保ちながら機体側方で傾斜面の刈取作業を行うことができる走行型刈取機を提供することを課題とする。
【解決手段】左右に走行部1L,1Rを有する走行機体2と、走行機体2の側方で除草又は収穫のための刈取作業を行う作業機6とを備えた走行型刈取機において、走行機体2の左右側方の一方で刈取作業を行う際に他方で走行機体2の左右バランスを保持するバランス部材3を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、傾斜面上の雑草又は作物の刈取作業を行うことが可能な走行型刈取機に関する。
【背景技術】
【0002】
中山間地域等におけるのり面(傾斜面)での雑草の刈取作業は農業生産基盤の維持、景観保持、作物栽培等の観点から必要不可欠なものである。このため、一般に動力刈り払い機による半人力的な刈り取り作業が行われるが、足場が不安定な場所での刈取作業は重労働であり、高齢化が進む中山間地域ではこの問題がさらに深刻化している。この他の手段としては、除草剤を散布する手段、火炎放射機等によりのり面の雑草等を焼き払う手段、草食動物を傾斜地で飼育する手段、ほふく性植物によってのり面を被膜する手段等が従来公知である。
【0003】
また、走行部を有する走行機体と、走行機体の側方で除草又は収穫のための刈取作業を行う作業機とを備え、畦(管理道)等を走行しながら走行機体の側方で傾斜面の刈取作業を行う特許文献1及び2に示す走行型刈取機が公知となっている。
【特許文献1】特開平7−87824号公報
【特許文献2】特開2000−197407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、除草剤を散布する手段はのり面に生えた雑草の根までを枯らしてしまい、のり面自体が崩壊し易くなってしまうという欠点が、火炎放射機等によりのり面の雑草等を焼き払う手段は山林火災の危険性があるという欠点が、草食動物を傾斜地で飼育する手段は草食動物が雑草だけでなく作物も食べてしまうという欠点が、ほふく性植物によってのり面を被膜する手段は上記ほふく性植物がのり面に優先種として定着するとは限らないうえに初期コストが高くなるという欠点がある。
【0005】
また、特許文献1及び2に示す走行型刈取機は、上記欠点が是正される一方で、走行機体の一方の側部で傾斜面の刈取作業を行う場合に、走行機体の左右バランスが偏ることが多くなり、場合によっては走行機体の左右バランスを保持することが困難になることがあり、課題が残る。
本発明は、上記課題を解決し、機械的にも大型化することなく中山間地域等の狭い畦においても、左右バランスを良好に保ちながら機体側方で傾斜面の刈取作業を行うことができる走行型刈取機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明の走行型刈取機は、第1に左右に走行部1L,1Rを有する走行機体2と、走行機体2の側方で除草又は収穫のための刈取作業を行う作業機6とを備えた走行型刈取機において、走行機体2の左右側方の一方で刈取作業を行う際に他方で走行機体2の左右バランスを保持するバランス部材3を設けたことを特徴とする。
【0007】
第2に、バランス部材3が走行機体2に対して移動可能に支持されたバランスウェイトであることを特徴とする。
【0008】
第3に、走行部1L,1Rをクローラによって構成し、左右の走行部1L,1Rの駆動スピード差により走行機体2の左右及び前後バランスを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように構成される走行型刈取機によれば、傾斜地等で走行機体の側方を下降又は上昇傾斜面側に向けて傾斜面の雑草等の刈取作業を行う場合に、走行機体の左右バランスを良好に保持して畦上の狭い通路での走行性を向上させることにより、傾斜地における刈取作業を安定して行うことができる。
【0010】
また、左右の走行部をクローラによって構成し、該左右の走行部よって走行機体のバランス制御を行うことにより、走行機体のバランスをさらに良好に保持することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1,2及び3は本発明を適用した走行型刈取機の正面図、側面図及び平面図である。走行型刈取機は、走行部1L,1Rと、走行部1L,1Rによって支持される走行機体2と、走行機体2に設けられたバランス部材3と、走行機体2の前方において刈取作業を行う左右方向の前方作業機4と、走行機体2の側方において刈取作業を行う側方作業機6(作業機)と、左右一対のガイドローラ7,7と、各種制御を行う制御装置8(図4参照)とを備えており、畦9(管理道)に沿って走行しながら、畦9及び畦9の側方ののり面11(下降傾斜面,上昇傾斜面,傾斜面)に生えた作物又は雑草の刈取作業を行うように構成されている(図1ではのり面が下降傾斜面)。
【0012】
上記走行部1L,1Rは、左右にそれぞれ各別に設けられている。各走行部1L,1Rは、前後方向に延びる左右一対の走行フレーム12,12と、該左右の走行フレーム12,12の後端部間に後輪軸13を介して前後回動自在に軸支された後輪14及び前端部間に前輪軸16を介して前後回転自在に軸支された前輪17と、上記前輪17と後輪14とに巻き掛けられるクローラ18とにより構成されている。なお後輪14の径は前輪17の径に対して大きくなるように形成されている。
【0013】
上記走行機体2は、機体フレーム19によって主な部分が構成されている。機体フレーム19は、側面視への字形に形成された左右のサイドフレーム21と、左右のサイドフレーム21,21を連結固定する左右方向の横フレーム22と、各サイドフレーム21の後端部から上方に突設固定された板状の支柱23と、左右の支柱23,23の上端面及び横フレーム22の上面に溶接等で固着された略水平な載置プレート24とにより構成されている。
【0014】
各サイドフレーム21は基端から先端に向けて前方斜め上方に延びるサイドケース26と基端から先端に向けて後方斜め上方に延びるサイドプレート27とを先端部同士で連結固定することにより構成されている。
【0015】
横フレーム22は、内部に回転動力を発生させる図示しない動力発生装置(本実施例はエンジン)を備えたパワーボックス28と、横方向の左右の横筒29,29とにより構成されている。パワーボックス28は左右方向に延びる略直方体形状に成形され、上面が略フラットになるように形成されている。各横筒29は、一端部がパワーボックス28の対応する側面に溶着等で一体的に取付固定される一方で、他端部が対応する左右のサイドフレーム21のサイドケース26とサイドプレート27との連結部分に溶着等で一体的に取付固定されている。横フレーム22の上記構成によって、左右のサイドフレーム21,21が所定間隔を保持して略平行な状態で対向するように連結固定される。
【0016】
機体フレーム19の各サイドケース26の基端部が対応する走行部1L,1Rの外側の走行フレーム12後端部に固定されるとともに、各サイドプレート27の基端部が対応する走行部1L,1Rの外側の走行フレーム12前端部に固定されることにより、走行フレーム12、サイドケース26及び支持フレーム27が固定連鎖を構成し、機体フレーム19が走行部1L,1Rに対して固定される。
【0017】
また、エンジンで発生させた回転動力は左右の横筒29,29内にそれぞれ回転自在に支持された伝動軸(図示しない)に各別に伝えられる。そして、各伝動軸の動力は各サイドケース26内に設けられたチェーン又はベルト等の動力伝動機構(図示しない)を介して左右の後輪軸13,13に伝動され、各走行部1L,1Rを走行駆動させる。
【0018】
そして、エンジンから左走行部1Lへの動力伝動の入切を行うクラッチ機構を設けることにより左走行部駆動手段31Lを構成し、エンジンから右走行部1Rへの動力伝動の入切を行うクラッチ機構を設けることにより右走行部駆動手段31Rを構成している。一方、左走行部1Lに設けられたブレーキによって左走行部制動手段32Lを構成し、右走行部1Rに設けられたブレーキによって右走行部制動手段32Rを構成している。
【0019】
上記バランス部材4として、各種機器に電力を供給するバッテリー(バランスウェイト)を用いる。載置プレート24上に左右方向のガイドレール33を設置し、該ガイドレール33の軸方向に摺動自在に移動台34を支持し、該移動台上34にバッテリー4を載置固定している。
【0020】
ガイドレール33が載置プレート24中央付近から右走行部1Rの外方(左方)に突出する位置に亘り形成されており、バッテリー4を走行機体2に対して左右移動させることにより、走行機体2の重心制御を行う。移動台34は、載置プレート24上に設けられたバランスウェイト移動アクチュエータである電動モータ36によって、ガイドレール33に対して左右摺動駆動される。
【0021】
上記前方作業機4は左右の支持アーム37,37を介して走行部1L,1Rの前方に固設され、走行機体2の左右幅略全体に亘り形成された刈取部4aを備えている。該刈取部4aは2つの刃の一方が他方に対して移動することにより雑草又は作物等を切断処理するレシプロ式の切断刃であり、前方作業機4上に設置された前方刈取部アクチュエータである電動モータ38によって駆動され、走行機体2に前方において刈取作業を行う。
【0022】
上記側方作業機6は、支持フレーム39と、支持フレーム39の先端部に基端部が支持されたアーム41と、走行機体2の走行駆動に伴って回転作動する補助輪42と、アーム41の軸方向略全体亘り設置された刈取部6aとを備えている。
【0023】
支持フレーム39は、左右方向の基端部に対して中途部及び先端部が下方に屈曲した略L字形に形成され、基端部が左側のサイドケース26の外側面に溶接等で固着され、中途部及び先端部が左走行部1Lの外側面に沿って下方に延びている。
【0024】
アーム41は、正面視円弧状の軌跡を描く方向に上下揺動自在に支持フレーム39に支持されている。自重による下方揺動する上記アーム39は、ワイヤー43によって吊り支えられている。そして、走行機体2に設けられたアーム揺動アクチュエータである電動モータ44によってワイヤー43を巻き上げることによりアーム41を上方揺動駆動させる一方で、上記ワイヤー43を緩めることによりアーム41を下方揺動作動させる。
【0025】
補助輪42はアーム41の先端部に設けられており、状況に応じて地表面に接地させることによりアーム41の下方揺動を規制し、側方作業機6の姿勢を安定させる。
【0026】
刈取作業時においては、走行機体2の側方作業機6設置側の側部(左側部)が傾斜面11側に向けられ、上記アーム41が上記傾斜面11に沿うように斜め下方に向けられた状態で固定される。なお、傾斜面11が上昇傾斜面である場合には傾斜面11に沿うように斜め上方に向けられた状態で固定される。そして、走行機体2を前進駆動させるとともにアーム41の下面(傾斜面11との対向面)側に設けられた刈取部6aを駆動させることによって、傾斜面11の刈取作業機を行う。
【0027】
該刈取部6aはレシプロ式の切断刃であり、左走行部1Lの内側の走行フレーム12に設置された側方刈取部アクチュエータである電動モータ46によって駆動される。該電動モータ46から刈取部6aへの動力伝動は、フレキシブルワイヤー(図示しない)及びアーム41の基端部に設置された駆動部47を介して、行われる。
【0028】
上記ガイドローラ7は、左右の走行部1L,1Rの外側面前端部にそれぞれ設けられる左右一対の部材であり、走行機体2が畦9を走行している際に畦9の両側部を左右のガイドローラ7,7で挟持することにより、走行機体2の左右バランスを保持するバランス部材となり、走行中に機体の畦9からずれることを防止している。
【0029】
上記制御装置8は制御部48を備えている。制御部48はマイコン等から構成されており、前述した移動台34上に載置固定されている。
【0030】
次に、制御装置8について詳述する。
図4は制御装置の構成を示すブロック図である。制御装置8の制御部48の入力側には、左走行部1Lの駆動方向及び駆動スピードを検知する左エンコーダ49(左走行部速度検知手段)と、右走行部1Rの駆動方向及び駆動スピードを検知する右エンコーダ51(右走行部速度検知手段)と、バランスウェイト4の走行機体2に対しての位置を検知するバランスウェイトポテンショ52(バランスウェイト位置検知手段)と、アーム41の基端部に設けられアーム41の揺動角を検知するアームポテンショ53(アーム揺動角検知手段)と、左側のサイドフレーム21と左走行部1L前端部との間に設けられ機体の前部左側にかかる荷重を検知する左前荷重センサ54(左前荷重検知手段,歪ゲージ)と、左側のサイドフレーム21と左走行部1L後端部との間に設けられ機体の後部左側にかかる荷重を検知する左後荷重センサ56(左後荷重検知手段,歪ゲージ)と、右側のサイドフレーム21と右走行部1R前端部との間に設けられ機体の前部右側にかかる荷重を検知する右前荷重センサ57(右前荷重検知手段,歪ゲージ)と、右側のサイドフレーム21と右走行部1R後端部との間に設けられ機体の後部右側にかかる荷重を検知する右後荷重センサ58(右後荷重検知手段,歪ゲージ)と、走行機体2の水平方向に対する前後傾斜角を検知する前後傾斜角検知手段59と、走行機体2の水平方向に対する左右傾斜角を検知する左右傾斜角検知手段61と、走行機体の向いている方位を検知する機体向き検知手段62と、走行機体の絶対位置を検出するGPS(Global Positioning System)やGIS(Geographic Information System)等の機体位置検知手段63と、側方作業機6の刈取面(傾斜面11)を検知する刈取面検知手段64と、機体周辺の状態を検知する周辺状態検知手段66と、地表面に生えた雑草と作物との識別を画像処理による行うためにパワーボックス28の下面に下方を向けた状態で設置されたカメラ67とが接続されている。
【0031】
上記前後傾斜角検知手段59、左右傾斜角検知手段61及び機体向き検知手段62は単一のジャイロセンサによって構成される。また、上記刈取面検知手段64が上記傾斜面11の検知、傾斜面11における側方作業機6の前方に形成された凹凸の検知、傾斜面11の側方作業機6の前方に生えた雑草等(主に雑草、場合によっては作物も含む)の高さの検知等を行うことが可能な超音波センサ又は赤外線センサ等の光電センサにより構成されている。また、上記周辺状態検知手段66は前方作業機4の左右両側部にそれぞれ前方を向けられた状態で設けられた超音波センサ又は光電センサにより構成され、畦9の検知、走行面の凹凸の検知、走行機体2の前方に生えた雑草又は作物の高さの検知等を行う。
【0032】
制御部48の出力側には前述した左走行部駆動手段31L、右走行部駆動手段31R、左走行部制動手段32L、右走行部制動手段32R、バランスウェイト移動アクチュエータ36、アーム揺動アクチュエータ44、前方刈取部アクチュエータ38及び後方刈取部アクチュエータ46が接続されている。
【0033】
くわえて、制御部48には記憶部68及び通信部69が接続されている。記憶部68には制御部48に入力されてくる各種データが記憶されている他、複数の作業ポイントが記憶されている。
【0034】
上記作業ポイントは本走行型刈取機の予定走行路上に所定間隔で設定される予定通過ポイントであり、グローバルな座標データで表され、機体位置検出手段63としてGPSを用いる場合にはGPS座標、GISを用いる場合にはGIS座標になる。走行型刈取機は所定の作業ポイントを通過すると次の作業ポイントに向かって自律走行できるように構成されている。
【0035】
上記通信部69によって本走行型刈取機を遠隔操作手段である外部コントローラ71により操作できる。具体的には、上記通信部69と外部コントローラ71に設けられた通信部72とが無線通信可能に構成されており、オペレータが外部コントローラ71の操作具73を操作すると制御部48にその操作信号が入力され、該操作信号に従って走行型刈取機が動作する。走行型刈取機が以上のように遠隔操作可能に構成されることによって、機体が転倒したような場合でも、オペレータは機体から離れた位置にいるため、機体と接触する可能性が低くなる。
【0036】
なお、上記カメラ67による画像処理について説明すると、まず、図5(A)に示すようにカメラ67によって地表面の画像を撮影する。次に、同図(B)に示すように、植物の緑色を基準として取得した画像の2値化を行う。次に、同図(C)に示すように、2値化した画像を複数のブロックに区画(同図に示す例では32×32に区画)する。
【0037】
ここで、撮影した部分は本走行型刈取機によって日常的に刈取作業が行われている部分であると仮定すると、雑草が写っているブロック中にはまばらに緑色が含まれるのみであるのに対して、作物が写っているブロックには高割合で緑色が含まれていることが予想される。このため、各ブロックにおいて全体に占める緑の部分の面積比が85パーセント以上であるブロックを作物ブロック74aとして識別し、20パーセント以上85パーセント未満であるブロックを雑草ブロック74bとして識別し、20パーセント未満であるブロックを土壌ブロック74cとして識別する。
【0038】
次に、同図(D)に示すように、作物ブロック74aが少なく雑草ブロック74bが多いエリアを検出し、検出されたエリアを刈取作業が可能な刈取アリア76として識別する。以上のようにして刈取エリア76の検知を行うことにより、作物の条列方向の株間に生えた雑草の刈取作業が可能になる。
【0039】
次に、制御装置8の処理フローについて説明する。
図6は制御装置の処理フロー図である。まず処理が開始されるステップS1に進む。ステップS1では機体が自律走行モードであるか否かの検出を行い、自律走行モードであればステップS2に進む。ステップS2では、機体位置検知手段63からのグローバル座標データを利用するモードであるか否かの検出を行い、利用するモードであればステップS3に進む。
【0040】
ステップS3では、記憶部68に記憶されている作業ポイントから算出される作業エリア内に機体がいるか否かの検出を行い、作業エリア内にいない場合にはステップS4に進み、作業エリア内にいる場合にはステップS5に進む。ステップS4では、機体を作業ポイントまで移動させ、ステップS5に進む。また、ステップS2において、機体位置検知手段63からのグローバル座標データを利用しないモードであることが検出された場合にも、ステップS5に進む。
【0041】
ステップS5では畦9の検出を行いステップS6に進む。また、ステップS5では、走行面の凹凸、機体前方に生えた雑草や作物の高さの検知も行う。ステップS6では刈取面検知手段64等を利用して傾斜面11の検知を行いステップS7に進む。また、ステップS6では、傾斜面11の凹凸、傾斜面11に生えた雑草等の高さの検知も行う。ステップS7では、ステップS6において検知した傾斜面に沿うように側方作業機6を下方揺動させる。また、この際、ステップS6において、傾斜面11の凹凸が少なく、生えている雑草等もそれほど高くない場合は、アーム41を補助輪42が傾斜面に接地する位置まで下降させ、側方作業機6を安定姿勢に切り換える。そして、ステップS8に進む。
【0042】
ステップS8では、4つの荷重センサ54,56,57,58及びジャイロセンサ59,61,62を用いて走行機体2の重心計測を行い、ステップS9に進む。ステップS9では、ステップS8で計測したデータに基づいて走行機体2の重心が左右均等になるようにバランスウェイト3を走行機体2に対して移動駆動させ、ステップS10,S11に進む。ステップS10、S11では、前方作業機4の刈取部4a及び側方作業機6の刈取部6aを駆動させ、ステップS12に進む。
【0043】
ステップS12では、機体を畦に沿って走行駆動させ畦9及びのり面11の刈取作業を開始する。また、この際、機体前方に凹凸がある場合や、機体の重心制御がバランスウェイト3の走行機体2に対する移動のみでは不足している場合には、左右の走行部1L,1Rの一方に対して他方を高速又は低速で駆動させることにより走行機体2の左右及び前後バランスを保持し、設定走行路を安定して走行するように重心制御を行う。そして、ステップS13に進む。ステップS13では、機体が作業終了位置に到着したが否かの検出を行い、作業終了位置に到着していれば処理を終了し、到着していなければステップS2に処理を戻す。
【0044】
また、ステップS1において、自律走行モードでないことが検出されると、ステップS14に進む。ステップS14では、外部コントローラ71からの操作信号に応じて、走行型刈取機を動作させ、ステップS1に処理を戻す。なお、外部コントローラ71によって、自律走行モードへの切換を行うことも可能である。
【0045】
なお、本走行型刈取機では動力発生装置としてエンジンを用いたが、高出力の電動モータを用いてもよい。この場合には、左走行部駆動用のモータと右走行部駆動用のモータを各別に設けることにより、左走行部駆動手段31L及び右走行部駆動手段31Rを構成する。
【0046】
また、本走行型刈取機ではガイドレール33を走行機体に固定しているが、ガイドレール33を走行機体2に対して水平回動可能に支持してもよい。この場合には、ガイドレール33をアクチュエータにより水平回動駆動するとともに、バランスウェイト移動アクチュエータ36によりバランスウェイト3を移動駆動させることにより、走行機体2の左右バランスの調整にくわえて、前後バランスの調整が可能になる。
【0047】
また、本走行型刈取機に用いたガイドレール33をボールネジ(図示しない)により構成してもよい。この場合には、移動台34にナット部(図示しない)を設け、ボールネジと移動台34のナット部とを係合させ、バランスウェイト移動アクチュエータ36によってボールネジを回転駆動させることにより、バランスウェイト4の移動させる。
【0048】
また、本走行型刈取機では、前方作業機4及び側方作業機6の刈取部4a,6aにレシプロ式の刈取刃を用いたが、円盤状の刈取刃を用いてもよい。
【0049】
さらに、本走行型刈取機に遺伝的アルゴリズム、ニューラルネットワーク等の学習アルゴリズムを搭載し、複雑な地形や環境への対応力を向上させるようにしてもよい。
【0050】
以上、畦9を走行しながら走行面及びのり面11に生えた雑草又は作物の刈取作業を行う走行型刈取機について説明したが、以下、条列方向の株間除草に特化した走行型刈取機について、前述の実施形態に係る走行型刈取機と異なる構成について説明する。図7、8及び9は他の実施例である走行型刈取機の正面図、側面図及び平面図である。
【0051】
本走行型刈取機では、機体を構成する部材のうち、左右の走行部1L,1Rと、左右のガイドローラ7,7と、左右のサイドケース26,26と、左右のサイドプレート27,28と、横フレーム22と、バッテリー3と、制御部48とを前述の走行面及びのり面11に生えた雑草又は作物の刈取作業を行う走行型刈取機のものと兼用し、これらの部材の取付位置や固定位置等を変更する。
【0052】
具体的には、各走行部1L,1Rの前端部から上方に突出するようにサイドプレート27を取付固定し、後端部から上方に突出するようにサイドケース26を取付固定している。そして、左右のサイドプレート27の上端部間を横フレーム22により連結固定し、平面視略直方体形状に枠組された上部フレーム77を左右のサイドプレート27,27の上端面及びパワーボックス28の前面に溶接等で固着している。制御部48はパワーボックス28の上面に固定し、バッテリー3は上部フレーム77の後部右隅に固設している。また、各サイドプレート27の下端部にガイドローラ7を内側に向けて設けている。
【0053】
上部フレーム77の左側から右側に亘り左右方向の移動レール78が架設されている。該移動レール78は前後移動自在に上部フレーム77に支持され、前後移動アクチュエータである電動モータ79によって前後移動駆動される。移動レール78には、移動レール78の軸方向に移動可能な上下方向の刈取アーム81が支持されている。刈取アーム81は左右移動アクチュエータである電動モータ82によって刈取アーム81を移動レール78の軸方向に移動駆動される。くわえて、刈取アーム81は移動レール78に対して上下移動自在にも支持されており、上下移動アクチュエータである電動モータ83によって上下移動駆動される。上記刈取アーム81の中途部にはカメラ67が設けられ、下端部には除草ロータ等の刈取部84が設けられている。
【0054】
本走行型刈取機の作用について説明すると、圃場の作物の条列方向と機体の前後方向が一致するように機体を移動又は旋回駆動させ、左右の走行部1L,1R間に雑草及び作物を位置させる。なお、条列方向に盛土86が形成され且つ該盛土86に作物が植えられている場合には、左右のガイドローラ7,7によって盛土86の両側部を挟持することにより、機体の条列方向に沿った走行が容易になる。
【0055】
そして、条列方向に沿って機体を所定距離前進移動させた後、上記カメラ67を用いた前述の画像処理により、条列方向の株間において雑草が生えているエリアを刈取エリア76として検知する。そして、前後移動アクチュエータ79及び左右移動アクチュエータ82によって上記刈取エリア76の上方まで刈取部84を移動させた後、上下移動アクチュエータ83によって刈取部84を下降させ、刈取エリア76に生えた雑草の刈取作業を行う。刈取エリア76の刈取作業が完了すると、刈取部84を上昇させ、再び機体を所定距離前進移動させて前述の処理を繰り返す。以上にようにして、自動化が困難である条列方向の株間の除草作業を行うことができる。
【0056】
以上のようにして、目的が異なる2つの走行型刈取機を、構成部品の多くを共通にして製造することができるので、製造コスト等の面でメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明を適用した走行型刈取機の正面図である。
【図2】本発明を適用した走行型刈取機の側面図である。
【図3】本発明を適用した走行型刈取機の平面図である。
【図4】制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】カメラによる画像処理の処理を示す図面であり、(A)はカメラによって撮影した画像であり、(B)はカメラによって撮影した画像を2値化した画像であり、(C)は区画したブロックが作物ブロック、雑草ブロック、土壌ブロックの何れであるかを識別した画像であり、(D)は刈取エリアを識別した画像である。
【図6】制御装置の処理フロー図である。
【図7】他の実施例である走行型刈取機の正面図である。
【図8】他の実施例である走行型刈取機の側面図である。
【図9】他の実施例である走行型刈取機の平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1L 左走行部(走行部)
1R 右走行部(走行部)
2 走行機体
3 バランス部材(バランスウェイト,バッテリー)
6 側方作業機(作業機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に走行部(1L),(1R)を有する走行機体(2)と、走行機体(2)の側方で除草又は収穫のための刈取作業を行う作業機(6)とを備えた走行型刈取機において、走行機体(2)の左右側方の一方で刈取作業を行う際に他方で走行機体(2)の左右バランスを保持するバランス部材(3)を設けた走行型刈取機。
【請求項2】
バランス部材(3)が走行機体(2)に対して移動可能に支持されたバランスウェイトである請求項1の走行型刈取機。
【請求項3】
走行部(1L),(1R)をクローラによって構成し、左右の走行部(1L),(1R)の駆動スピード差により走行機体(2)の左右及び前後バランスを制御する請求項1又は2の走行型刈取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−27991(P2009−27991A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196769(P2007−196769)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)
【Fターム(参考)】