走行車両
【課題】 乗員搭載部を任意の姿勢に制御する走行車両を提供する。
【解決手段】 車体2と、車体2に回転可能に支持し、一軸上に配置された車輪5と、車体2に支持し乗員Mを搭載する乗員搭載部と、を有する走行車両1において、車体2の姿勢を検出する車体姿勢検出手段121,122と、車体姿勢検出手段121,122の検出した検出値により、車体姿勢を制御する車体姿勢制御手段120と、車体姿勢検出手段121,122の検出した検出値に対応して乗員搭載部3の姿勢を制御する乗員姿勢制御手段130と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】 車体2と、車体2に回転可能に支持し、一軸上に配置された車輪5と、車体2に支持し乗員Mを搭載する乗員搭載部と、を有する走行車両1において、車体2の姿勢を検出する車体姿勢検出手段121,122と、車体姿勢検出手段121,122の検出した検出値により、車体姿勢を制御する車体姿勢制御手段120と、車体姿勢検出手段121,122の検出した検出値に対応して乗員搭載部3の姿勢を制御する乗員姿勢制御手段130と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一軸上に車輪を配置された車両の搭乗者の姿勢を自由に変更できるようにした走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右に配置された2個の車輪を有する台車に搭載されるサドルとして、搭乗者の荷重が付加される可動永久磁石と、この可動永久磁石に反発磁極を対向させて配置されるとともに台車に固定される浮上用固定永久磁石を有し、可動永久磁石と浮上用固定永久磁石で構成される磁性バネにより可動永久磁石を浮上用固定永久磁石から浮上させて支持する構造の車両装置がある(特許文献1)。
【0003】
また、図13(a)及び図13(b)は、従来の加速時における走行車両1及び乗員Mの状態を示す概念図である。図中、1は走行車両、2は車体、3は搭載手段の一例としてのシート、4は車軸、5は車輪、G1は全体の重心、G2は乗員の重心、gは重力、Fiは慣性力、Ffは前方への力、Vは鉛直軸、Eは平衡軸、Bは車体軸、Sは搭乗軸、Pは接地点である。
【0004】
図13(a)において、走行車両1は、車体2に、車軸4及び車輪5を連結し、シート3を載置したものである。この走行車両1が加速するときには、車体2及び乗員Mには慣性力Fiが作用するので、このまま加速すると、車体2及び乗員Mは、その慣性力Fiの影響で後方に転倒してしまう。そこで、平衡軸E上に全体の重心G1を置き、転倒を防止する必要がある。
【0005】
次に、図14(a)及び図14(b)は、従来の旋回時における走行車両1及び乗員Mの状態を示す図である。図中、1は走行車両、2は車体、3は搭載手段の一例としてのシート、4は車軸、5は車輪、G1は全体の重心、G2は乗員の重心、gは重力、Fcは遠心力、Vは鉛直軸、Eは平衡軸、Bは車体軸、Sは搭乗軸、Tはトレッドである。
【0006】
図14(a)において、走行車両1は、車体2に、車軸4及び車輪5を連結し、シート3を載置したものである。この走行車両1が旋回するときには、車体2及び乗員Mには遠心力Fcが作用するので、このまま加速すると、車体2及び乗員Mは、その遠心力Fcの影響で外側に転倒しまう。そこで、車体2を鉛直軸Vよりも大きく内側に傾斜させ、平衡軸E上に全体の重心G1を置くことで、転倒を防止し、釣り合いを保持しなければならない。
【特許文献1】特開2005−145296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図13(b)で示すように、車体2を平衡軸Eよりも大きく前方に傾斜させ釣り合いを保持した場合、乗員には前方への力Ffが働くことになる。この場合、加速しているにもかかわらず、前方への力Ffを感じることとなり、乗員には、前方への力Ffは不自然なので、乗り心地が悪いものである。
【0008】
また、旋回時における乗員Mの状態は、図14(b)のようになる。乗員の重心G2は、車体2を鉛直軸Vよりも大きく内側に傾斜させたことで、トレッドTの外側に位置することとなり、障害物と接触する場合がある。また、乗員の視界が傾斜することや、乗員の旋回している感覚が鈍ることで、速度及び操舵等の操作に影響を及ぼす恐れがある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであって、乗員搭載部を任意の姿勢に制御する走行車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために本発明は、車体と、前記車体に回転可能に支持し、一軸上に配置された車輪と、前記車体に支持し乗員を搭載する乗員搭載部と、を有する走行車両において、前記車体の姿勢を検出する車体姿勢検出手段と、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値により、車体姿勢を制御する車体姿勢制御手段と、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値に対応して前記乗員搭載部の姿勢を制御する乗員姿勢制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記走行車両は、前記乗員搭載部の姿勢を検出する乗員姿勢検出手段と、を備え、前記乗員姿勢制御手段は、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値及び前記乗員姿勢検出手段の検出した乗員姿勢に対応して、前記乗員搭載部の姿勢を制御することを特徴とする。
【0012】
また、前記車体姿勢検出手段は、前記車体の加減速を検出する加速度検出手段を含み、前記乗員姿勢制御手段は、前記加速度検出手段の検出した加減速に対応して前記乗員搭載部の姿勢を制御することを特徴とする。
【0013】
また、前記走行車両は、前記乗員搭載部の姿勢を検出する乗員姿勢検出手段と、を備え、前記乗員姿勢制御手段は、前記加速度検出手段の検出した加減速及び前記乗員姿勢検出手段の検出した乗員姿勢に対応して、前記乗員搭載部の姿勢を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
それによって、本発明は、車体と、前記車体に回転可能に支持し、一軸上に配置された車輪と、前記車体に支持し乗員を搭載する乗員搭載部と、を有する走行車両において、前記車体の姿勢を検出する車体姿勢検出手段と、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値により、車体姿勢を制御する車体姿勢制御手段と、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値に対応して前記乗員搭載部の姿勢を制御する乗員姿勢制御手段と、を備えるので、乗員搭載部の姿勢を変更することによって、走行車両の加速度が変化するときに、乗員が体感する加速度を任意に設定することが可能となるので、乗員を滑らかに動かすことが可能となると共に、乗員の姿勢を自由に設定することができる。また、乗員姿勢制御手段は、既存の車体姿勢制御手段に連結可能なので、コスト面で有利である。
【0015】
また、前記走行車両は、前記乗員搭載部の姿勢を検出する乗員姿勢検出手段と、を備え、前記乗員姿勢制御手段は、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値及び前記乗員姿勢検出手段の検出した乗員姿勢に対応して、前記乗員搭載部の姿勢を制御するので、より精度の良い制御が可能となる。
【0016】
また、前記車体姿勢検出手段は、前記車体の加減速を検出する加速度検出手段を含み、前記乗員姿勢制御手段は、前記加速度検出手段の検出した加減速に対応して前記乗員搭載部の姿勢を制御するので、加速度計のみを使用する簡単な構造で、制御が可能となる。
【0017】
また、前記走行車両は、前記乗員搭載部の姿勢を検出する乗員姿勢検出手段と、を備え、前記乗員姿勢制御手段は、前記加速度検出手段の検出した加減速及び前記乗員姿勢検出手段の検出した乗員姿勢に対応して、前記乗員搭載部の姿勢を制御するので、より精度の良い制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一例としての実施形態を図面に基づいて説明する。
図1又は図2は本実施形態の概念図である。図1は本実施形態の加速時における制御後の乗員の状態を示す図、図2は本実施形態の旋回時における制御後の乗員の状態を示す図である。図中の符号については、従来の技術である図13及び図14で示したものと同じものを使用する。
【0019】
この場合、走行車両1は、車体の姿勢を検出する車体姿勢検出手段の一例としての角速度計121及び加速度計122と、角速度計121及び加速度計122の検出した車体姿勢を制御する車体姿勢制御手段120により、走行可能に制御されている。また、乗員姿勢制御手段の一例としてのシート姿勢制御手段130は、乗員姿勢検出手段の一例としてのシート相対傾斜角測定装置131の検出した傾斜角、前記車体姿勢検出手段120の検出した車体姿勢、特に加速度計120の検出した加減速、又はジョイスティック等の操作手段123の操作に対応して乗員搭載部の一例としてのシート3の姿勢を制御する。
【0020】
図1は、加速時における制御後の乗員Mの状態を示す図である。図中、1は走行車両、2は車体、3は乗員搭載部の一例としてのシート、G2は乗員の重心、Eは平衡軸、Bは車体軸、Sは搭乗軸である。図1に示すように、搭乗軸Sが平衡軸Eと同じ傾斜角度となるように、シートを後方に傾斜させる。
【0021】
このように制御することで、乗員Mに慣性力が加わることがなくなり、静止状態のように感じることとなる。また、シート3を更に後方に傾斜させるように制御すると、後ろ向きの力を感じ、加速度を体感することができる。すなわち、乗員Mのシート3の姿勢を変更することによって、走行車両1の加速度が変化するときに、乗員Mを滑らかに動かすことが可能となると共に、乗員Mの姿勢を自由に設定することができ、乗員Mが体感する加速度を任意に設定することが可能となる。
【0022】
図2は、旋回時における制御後の乗員Mの状態を示している。シート3を側方に回動させ、正面から見て乗員Mの姿勢が鉛直方向となるように車体軸Bを制御する。
【0023】
このように制御することで、乗員Mが常に直立した状態で旋回することが可能となり、乗員MがトレッドTの外側に出ることはない。また、ある程度の遠心力を感じるように旋回することが可能となり、旋回中であることを実感することができる。すなわち、乗員Mのシート3の姿勢を変更することによって、走行車両1の旋回半径や速度の変化に対して、乗員Mを滑らかに動かすことが可能となると共に、乗員Mの姿勢を自由に設定することができる。
【0024】
次に、このような走行車両の制御システム構成を図3により説明する。図3は、本実施形態の制御システム構成である。図中、110は走行車両姿勢制御システム、120は車体姿勢制御手段、121は車体姿勢検出手段の一例としての角速度計、122は車体姿勢検出手段の一例としての加速度計、123は操作手段、124は車体ECU、125は車体姿勢制御用アクチュエータ、130は乗員姿勢制御手段の一例としてのシート姿勢制御手段、131はシート相対傾斜角測定装置、132はシートECU、133はシート傾斜角調整用アクチュエータである。
【0025】
車体姿勢制御手段120は、2軸の角速度計121が検出した車体傾斜角速度及び3軸の加速度計122が検出した加速度若しくはジョイスティック等の操作手段123からの操作情報を車体ECU124で演算して、指令値を車体姿勢制御用アクチュエータ125に出力することで車体2を制御するものである。また、車体姿勢制御手段120は、シート姿勢制御手段130を連結し、車体ECU124から車体傾斜角及び加速度をシートECU132に出力し、シート姿勢制御手段130から車体傾斜角・位置目標修正量を車体ECU124に出力することで、シート3の相対傾斜角を考慮した車体の姿勢制御を実行することができる。
【0026】
シート姿勢制御手段130は、既存の車体姿勢制御手段120に連結可能であり、乗員姿勢検出手段の一例としての2軸のシート相対傾斜角測定装置131が検出した車体とのシート相対傾斜角並びに車体姿勢制御手段120の車体ECU124からの車体傾斜角及び加速度をシートECU132で演算して、車体傾斜角目標修正量を車体ECU124に出力すると共に指令値をシート傾斜角調整用アクチュエータ133に出力することでシート傾斜角を制御するものである。なお、車体ECU124への入力としては、角速度計121、加速度計122又は操作手段123を独立で使用してもよいし、様々な組み合わせで使用してもよい。
【0027】
次に、このような制御システムのフローチャートについて説明する。図4は、本実施形態の制御フローチャートである。まず、ステップ1で、車体搭載の加速度計122で加速度の向きを測定する(S1)。次に、ステップ2で、車体傾斜角の目標値(釣り合い角度)を算出する(S2)。次に、ステップ3で、車体搭載の加速度計122と角速度計121の測定値から車体傾斜角を算出する(S3)。次に、ステップ4で、後述するシート傾斜角調整処理を実行する(S4)。次に、ステップ5で、車体傾斜角の測定値と修正目標値が等しいかどうか及び各々の時間変化率が等しいかどうかを判断する(S5)。判断の結果、車体傾斜角の測定値と修正目標値が等しく、各々の時間変化率も等しい場合、スタートに戻る。判断の結果、車体傾斜角の測定値と修正目標値が等しくないか、又は、各々の時間変化率が等しくない場合、ステップ6へ進む。ステップ6では、車体傾斜角の目標値に近づけるのに必要なアクチュエータ出力値の算出を実行する(S6)。最後に、ステップ6で算出した結果をもとに、ステップ7で、車体姿勢制御用アクチュエータに出力する(S7)。
【0028】
ここで、ステップ4におけるシート傾斜角調整処理について説明する。まず、ステップ41で、車体の加速度の向きと車体傾斜角からシート傾斜角の目標値を算出する(S41)。次に、ステップ42で、車体とシートの間に設置されたシート相対傾斜角測定装置でシート傾斜角を測定する(S42)。次に、ステップ43で、シート傾斜に伴う重心移動に対する車体傾斜角目標値の修正量を算出する(S43)。次に、ステップ44で、シート傾斜角の測定値と目標値は等しいかどうか、及び、各々の時間変化率も等しいかどうかを判断する(S44)。判断の結果、シート傾斜角の測定値と目標値、及び、各々の時間変化率も等しい場合、シート傾斜角調整処理を終了する。シート傾斜角の測定値と目標値が等しくないか、又は、各々の時間変化率が等しくない場合、ステップ45で、シート傾斜角の目標値に近づけるのに必要なアクチュエータ出力値の算出を実行する(S45)。最後に、ステップ45で算出した結果をもとに、ステップ46でシート傾斜角制御用アクチュエータに出力する(S46)。
【0029】
続いて、このような実施形態の具体的構造について図5乃至図12で様々な実施例を示す。まず、第一実施例について説明する。図5及び図6は、ロッド型アクチュエータを適用した例を示す。図5は、乗員を搭載した状態の概略図、図6(a)は、シート駆動部分の拡大図、図6(b)は、図6(a)の平面図である。
【0030】
図中、1は走行車両、12は車体、12aはメインフレーム、12bはシート取付フレーム、13は乗員搭載部の一例としてのシート、14は車軸、15は車輪、16はアクチュエータ、17はバネ、18はジョイントである。
【0031】
車体12は、メインフレーム12a及びシート取付フレーム12bからなる。シート取付フレーム12bは、シート13の下部に対角線上に配設し、メインフレーム12aは、シート取付フレーム12bの対角線の交点と車軸14とをユニバーサルジョイント等のジョイント18を介して連結している。また、アクチュエータ16は、ボールネジ又は電磁アクチュエータ等を用い、メインフレーム12aの略中間部とシート取付フレーム12bの進行方向側一端とをジョイント18を介して連結している。さらに、バネ17は、メインフレーム12aの略中間部とシート取付フレーム12bの進行方向後側一端とをジョイント18を介して連結している。
【0032】
このような構造とすることで、アクチュエータ16を伸縮させることにより、シート13を任意の傾斜角に制御することが可能となる。また、バネ17を設置することにより、停止時及び一定速度走行時の直立姿勢保持にエネルギーが不要となると共に、アクチュエータ16故障時に後方に転倒することを防止することができる。
【0033】
次に、第二実施例について説明する。図7及び図8は、電磁力を適用した例を示す。図7は乗員を搭載した状態の概略図、図8(a)は、シート駆動部分の拡大図、図8(b)は、図8(a)の平面図である。
【0034】
図中、1は走行車両、22は車体、22aは上端面、22bは止め部、22cはコイル取付部、23は乗員搭載部の一例としてのシート、23aは底面、23bはバネ取付部、24は車軸、25は車輪、26はコイル、27は永久磁石、28は球体の一例としてのボール、29はバネである。
【0035】
車体22は、上部に球面状の上端面22a及び上端面の縁に止め部22bを、該上端面22aの下方に複数のコイル26を設置したコイル取付部22cを有し、バネ29によりシート23と連結されている。シート23は、球面状の底面23aを有し、該底面23aには永久磁石27を、車体22のコイル取付部22aに取り付けたコイル26に対向して設置する。車体22の上端面22aとシート23の底面23aとの間には、非磁性体のボール28を介在させる。車体22の上端面22aには、止め部22bを設け、該止め部22bとシート23のバネ取付部23bとの間に径方向にバネ29を配設する。
【0036】
このような構造とすることで、車体22のコイル取付部22cに取り付けたコイル26の電流配分を制御することにより、シート23を任意の傾斜角に制御することができる。また、車体22の上端面22aには、止め部22bを設けるので、車体22の上端面22aとシート23の底面23aとの間の空間から該ボール28が飛び出さない。さらに、該止め部22bとシート23のバネ取付部23bとの間に径方向にバネ29を配設するので、車体22とシート23とを連結することができる。そして、車体22の上端面22aとシート23の底面23aとの間には、非磁性体のボール28を介在させるので、両面間の摩擦を減らすことができる。さらに、停止時及び一定速度走行時の直立姿勢保持にエネルギーが不要となる。
【0037】
次に、第三実施例について説明する。図9及び図10は、スライドアクチュエータを適用した例を示す。図9は乗員を搭載した状態の概略図、図10(a)は、シート駆動部分の拡大図、図10(b)は、図10(a)の平面図である。
【0038】
図中、1は走行車両、32は車体、32aは上端部、32bは中間部32cは下部、32dはレール、33は乗員搭載部の一例としてのシート、34は車軸、35は車輪、36はアクチュエータ、36aは棒状部、36bは台状部、37は移動体、38はバネ、39はジョイントである。
【0039】
車体32は、四角形状の上端部32aと、車軸34と連結する下部32cと、上端部32aの四角形の頂点と、下部32cとを連結する中間部32bとを有し、該上端部32aの各辺上面には、レール32dが配設されている。各レール32d上には、各移動体37を設置し、各移動体37はアクチュエータ36と結合されている。アクチュエータ36は、ボールねじ型又は電磁型のものを適用し、対向する二辺上の移動体37と結合される直交する2本の棒状部36aと、それぞれの棒状部36aと相対移動可能に連結させる台状部36bとを有する。バネ38は、車体32の中間部32bと下部32cとの交点と、アクチュエータ36の台状部36bとの間に、ボールジョイント又はユニバーサルジョイント等のジョイント39を介して設けられ、アクチュエータ36の台状部36bが車体32の下部32cの延長線上にあるように付勢されている。
【0040】
このような構造とすることにより、アクチュエータ36を制御することにより、シート33を車体32の上端部32a内の任意の位置に移動可能に制御することができる。また、バネ38を取り付けることにより、停止時及び一定速度走行時の直立姿勢保持にエネルギーが不要となると共に、アクチュエータ36が故障した場合に、姿勢の保持を助けることができる。
【0041】
次に、第四実施例について説明する。図11及び図12は、上方から吊り下げたシートにロッド型アクチュエータを適用した例を示す。図11は乗員を搭載した状態の概略図、図12(a)は、乗員搭載部分の拡大図、図12(b)は、図12(a)の平面図である。
【0042】
図中、1は走行車両、42は車体、42aは上部、42bは中間部、42cは下部、42dは第一吊り下げ部、42eは第二吊り下げ部、43は搭載手段の一例としてのシート、44は車軸、45は車輪、46はアクチュエータ、47はジョイントである。
【0043】
車体42は、上部42a、中間部42b、下部42c、第一吊り下げ部42d及び第二吊り下げ部42eを有する。
【0044】
上部42aは、シート43の上方から後方にシート43の背もたれ43bを迂回するように湾曲して設け、上端を第一吊り下げ部42d及び第二吊り下げ部42eとジョイント47を介して連結し、下端をシート43の後方において中間部42b及びアクチュエータ46とジョイント47を介して連結する。第一吊り下げ部42d及び第二吊り下げ部42eとの連結点である上端はシート43の回転中心となる。
【0045】
中間部42bは、湾曲部42b1と放射状部42b2とを有し、湾曲部42b1は、シート43のわずかに下方において、シート座面43cを迂回するように一方の側部から後方を経て他方の側部へ湾曲して延びる形状のもので、放射状部42b2は、下部42cの上端と湾曲部42b1とを結ぶものである。本例の放射状部42b1において、一本は、下部42cの上端から上部42aと湾曲部42b1との交点へ延び、残りの二本は下部42cの上端から湾曲部42b1の端部へ延び、それぞれジョイント47を介して結合されている。中間部42bとシート43とは、アクチュエータ46とジョイント47を介して連結する。本例では、一本は、上部42aと湾曲部42b1との交点と、シート座面43cとの間に連結し、残りの二本は湾曲部42b1の端部と、シート座面43cの左右前方とを連結する。
【0046】
下部42cは、上端が中間部42bの放射状部42b2の中心に位置し、下端は車軸44を支持している。第一吊り下げ部42dは、上部42aの上端とシート43のヘッドレスト43aとをジョイントを介して連結するもので、これにより、シート43が上部43aの上端から吊された状態となる。第二吊り下げ部42eは、上部42aの上端と中間部42bの湾曲部42b1端部とを連結する。
【0047】
このような構造とすることにより、アクチュエータ46を制御することにより、シート43を任意の傾斜角に制御することができる。さらに、停止時及び一定速度走行時の直立姿勢保持にエネルギーが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第一実施形態の概念図
【図2】第一実施形態の概念図
【図3】第一実施形態の制御システム構成を示す図
【図4】第一実施形態の制御フローチャートを示す図
【図5】第一実施形態の第1実施例を示す図
【図6】第一実施形態の第1実施例を示す図
【図7】第一実施形態の第2実施例を示す図
【図8】第一実施形態の第2実施例を示す図
【図9】第一実施形態の第3実施例を示す図
【図10】第一実施形態の第3実施例を示す図
【図11】第一実施形態の第4実施例を示す図
【図12】第一実施形態の第4実施例を示す図
【図13】従来の技術を示す図
【図14】従来の技術を示す図
【符号の説明】
【0049】
1…走行車両、2…車体、3…搭載手段の一例としてのシート、4…車軸、5…車輪、12…車体、12a…メインフレーム、12b…シート取付フレーム、13…乗員搭載部の一例としてのシート、14…車軸、15…車輪、16…アクチュエータ、17…バネ、18…ジョイント、22…車体、22a…上端面、22b…止め部、22c…コイル取付部、23…乗員搭載部の一例としてのシート、23a…底面、23b…バネ取付部、24…車軸、25…車輪、26…コイル、27…永久磁石、28…球体の一例としてのボール、29…バネ、32…車体、32a…上端部、32b…中間部32c…下部、32d…レール、33…乗員搭載部の一例としてのシート、34…車軸、35…車輪、36…アクチュエータ、36a…棒状部、36b…台状部、37…移動体、38…バネ、39…ジョイント、42…車体、42a…上部、42b…中間部、42c…下部、42d…第一吊り下げ部、42e…第二吊り下げ部、43…搭載手段の一例としてのシート、44…車軸、45…車輪、46…アクチュエータ、47…ジョイント、110…走行車両姿勢制御システム、120…車体姿勢制御手段、121…車体姿勢検出手段の一例としての角速度計、122…車体姿勢検出手段の一例としての加速度計、123…操作手段、124…車体ECU、125…車体姿勢制御用アクチュエータ、130…乗員姿勢制御手段の一例としてのシート姿勢制御手段、131…シート相対傾斜角測定装置、132…シートECU、133…シート傾斜角調整用アクチュエータ、G1…全体の重心、G2…乗員の重心、g…重力、Fi…慣性力、Ff…前方への力、V…鉛直軸、E…平衡軸、B…車体軸、P…接地点、Fc…遠心力、T…トレッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、一軸上に車輪を配置された車両の搭乗者の姿勢を自由に変更できるようにした走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右に配置された2個の車輪を有する台車に搭載されるサドルとして、搭乗者の荷重が付加される可動永久磁石と、この可動永久磁石に反発磁極を対向させて配置されるとともに台車に固定される浮上用固定永久磁石を有し、可動永久磁石と浮上用固定永久磁石で構成される磁性バネにより可動永久磁石を浮上用固定永久磁石から浮上させて支持する構造の車両装置がある(特許文献1)。
【0003】
また、図13(a)及び図13(b)は、従来の加速時における走行車両1及び乗員Mの状態を示す概念図である。図中、1は走行車両、2は車体、3は搭載手段の一例としてのシート、4は車軸、5は車輪、G1は全体の重心、G2は乗員の重心、gは重力、Fiは慣性力、Ffは前方への力、Vは鉛直軸、Eは平衡軸、Bは車体軸、Sは搭乗軸、Pは接地点である。
【0004】
図13(a)において、走行車両1は、車体2に、車軸4及び車輪5を連結し、シート3を載置したものである。この走行車両1が加速するときには、車体2及び乗員Mには慣性力Fiが作用するので、このまま加速すると、車体2及び乗員Mは、その慣性力Fiの影響で後方に転倒してしまう。そこで、平衡軸E上に全体の重心G1を置き、転倒を防止する必要がある。
【0005】
次に、図14(a)及び図14(b)は、従来の旋回時における走行車両1及び乗員Mの状態を示す図である。図中、1は走行車両、2は車体、3は搭載手段の一例としてのシート、4は車軸、5は車輪、G1は全体の重心、G2は乗員の重心、gは重力、Fcは遠心力、Vは鉛直軸、Eは平衡軸、Bは車体軸、Sは搭乗軸、Tはトレッドである。
【0006】
図14(a)において、走行車両1は、車体2に、車軸4及び車輪5を連結し、シート3を載置したものである。この走行車両1が旋回するときには、車体2及び乗員Mには遠心力Fcが作用するので、このまま加速すると、車体2及び乗員Mは、その遠心力Fcの影響で外側に転倒しまう。そこで、車体2を鉛直軸Vよりも大きく内側に傾斜させ、平衡軸E上に全体の重心G1を置くことで、転倒を防止し、釣り合いを保持しなければならない。
【特許文献1】特開2005−145296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図13(b)で示すように、車体2を平衡軸Eよりも大きく前方に傾斜させ釣り合いを保持した場合、乗員には前方への力Ffが働くことになる。この場合、加速しているにもかかわらず、前方への力Ffを感じることとなり、乗員には、前方への力Ffは不自然なので、乗り心地が悪いものである。
【0008】
また、旋回時における乗員Mの状態は、図14(b)のようになる。乗員の重心G2は、車体2を鉛直軸Vよりも大きく内側に傾斜させたことで、トレッドTの外側に位置することとなり、障害物と接触する場合がある。また、乗員の視界が傾斜することや、乗員の旋回している感覚が鈍ることで、速度及び操舵等の操作に影響を及ぼす恐れがある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであって、乗員搭載部を任意の姿勢に制御する走行車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために本発明は、車体と、前記車体に回転可能に支持し、一軸上に配置された車輪と、前記車体に支持し乗員を搭載する乗員搭載部と、を有する走行車両において、前記車体の姿勢を検出する車体姿勢検出手段と、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値により、車体姿勢を制御する車体姿勢制御手段と、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値に対応して前記乗員搭載部の姿勢を制御する乗員姿勢制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記走行車両は、前記乗員搭載部の姿勢を検出する乗員姿勢検出手段と、を備え、前記乗員姿勢制御手段は、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値及び前記乗員姿勢検出手段の検出した乗員姿勢に対応して、前記乗員搭載部の姿勢を制御することを特徴とする。
【0012】
また、前記車体姿勢検出手段は、前記車体の加減速を検出する加速度検出手段を含み、前記乗員姿勢制御手段は、前記加速度検出手段の検出した加減速に対応して前記乗員搭載部の姿勢を制御することを特徴とする。
【0013】
また、前記走行車両は、前記乗員搭載部の姿勢を検出する乗員姿勢検出手段と、を備え、前記乗員姿勢制御手段は、前記加速度検出手段の検出した加減速及び前記乗員姿勢検出手段の検出した乗員姿勢に対応して、前記乗員搭載部の姿勢を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
それによって、本発明は、車体と、前記車体に回転可能に支持し、一軸上に配置された車輪と、前記車体に支持し乗員を搭載する乗員搭載部と、を有する走行車両において、前記車体の姿勢を検出する車体姿勢検出手段と、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値により、車体姿勢を制御する車体姿勢制御手段と、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値に対応して前記乗員搭載部の姿勢を制御する乗員姿勢制御手段と、を備えるので、乗員搭載部の姿勢を変更することによって、走行車両の加速度が変化するときに、乗員が体感する加速度を任意に設定することが可能となるので、乗員を滑らかに動かすことが可能となると共に、乗員の姿勢を自由に設定することができる。また、乗員姿勢制御手段は、既存の車体姿勢制御手段に連結可能なので、コスト面で有利である。
【0015】
また、前記走行車両は、前記乗員搭載部の姿勢を検出する乗員姿勢検出手段と、を備え、前記乗員姿勢制御手段は、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値及び前記乗員姿勢検出手段の検出した乗員姿勢に対応して、前記乗員搭載部の姿勢を制御するので、より精度の良い制御が可能となる。
【0016】
また、前記車体姿勢検出手段は、前記車体の加減速を検出する加速度検出手段を含み、前記乗員姿勢制御手段は、前記加速度検出手段の検出した加減速に対応して前記乗員搭載部の姿勢を制御するので、加速度計のみを使用する簡単な構造で、制御が可能となる。
【0017】
また、前記走行車両は、前記乗員搭載部の姿勢を検出する乗員姿勢検出手段と、を備え、前記乗員姿勢制御手段は、前記加速度検出手段の検出した加減速及び前記乗員姿勢検出手段の検出した乗員姿勢に対応して、前記乗員搭載部の姿勢を制御するので、より精度の良い制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一例としての実施形態を図面に基づいて説明する。
図1又は図2は本実施形態の概念図である。図1は本実施形態の加速時における制御後の乗員の状態を示す図、図2は本実施形態の旋回時における制御後の乗員の状態を示す図である。図中の符号については、従来の技術である図13及び図14で示したものと同じものを使用する。
【0019】
この場合、走行車両1は、車体の姿勢を検出する車体姿勢検出手段の一例としての角速度計121及び加速度計122と、角速度計121及び加速度計122の検出した車体姿勢を制御する車体姿勢制御手段120により、走行可能に制御されている。また、乗員姿勢制御手段の一例としてのシート姿勢制御手段130は、乗員姿勢検出手段の一例としてのシート相対傾斜角測定装置131の検出した傾斜角、前記車体姿勢検出手段120の検出した車体姿勢、特に加速度計120の検出した加減速、又はジョイスティック等の操作手段123の操作に対応して乗員搭載部の一例としてのシート3の姿勢を制御する。
【0020】
図1は、加速時における制御後の乗員Mの状態を示す図である。図中、1は走行車両、2は車体、3は乗員搭載部の一例としてのシート、G2は乗員の重心、Eは平衡軸、Bは車体軸、Sは搭乗軸である。図1に示すように、搭乗軸Sが平衡軸Eと同じ傾斜角度となるように、シートを後方に傾斜させる。
【0021】
このように制御することで、乗員Mに慣性力が加わることがなくなり、静止状態のように感じることとなる。また、シート3を更に後方に傾斜させるように制御すると、後ろ向きの力を感じ、加速度を体感することができる。すなわち、乗員Mのシート3の姿勢を変更することによって、走行車両1の加速度が変化するときに、乗員Mを滑らかに動かすことが可能となると共に、乗員Mの姿勢を自由に設定することができ、乗員Mが体感する加速度を任意に設定することが可能となる。
【0022】
図2は、旋回時における制御後の乗員Mの状態を示している。シート3を側方に回動させ、正面から見て乗員Mの姿勢が鉛直方向となるように車体軸Bを制御する。
【0023】
このように制御することで、乗員Mが常に直立した状態で旋回することが可能となり、乗員MがトレッドTの外側に出ることはない。また、ある程度の遠心力を感じるように旋回することが可能となり、旋回中であることを実感することができる。すなわち、乗員Mのシート3の姿勢を変更することによって、走行車両1の旋回半径や速度の変化に対して、乗員Mを滑らかに動かすことが可能となると共に、乗員Mの姿勢を自由に設定することができる。
【0024】
次に、このような走行車両の制御システム構成を図3により説明する。図3は、本実施形態の制御システム構成である。図中、110は走行車両姿勢制御システム、120は車体姿勢制御手段、121は車体姿勢検出手段の一例としての角速度計、122は車体姿勢検出手段の一例としての加速度計、123は操作手段、124は車体ECU、125は車体姿勢制御用アクチュエータ、130は乗員姿勢制御手段の一例としてのシート姿勢制御手段、131はシート相対傾斜角測定装置、132はシートECU、133はシート傾斜角調整用アクチュエータである。
【0025】
車体姿勢制御手段120は、2軸の角速度計121が検出した車体傾斜角速度及び3軸の加速度計122が検出した加速度若しくはジョイスティック等の操作手段123からの操作情報を車体ECU124で演算して、指令値を車体姿勢制御用アクチュエータ125に出力することで車体2を制御するものである。また、車体姿勢制御手段120は、シート姿勢制御手段130を連結し、車体ECU124から車体傾斜角及び加速度をシートECU132に出力し、シート姿勢制御手段130から車体傾斜角・位置目標修正量を車体ECU124に出力することで、シート3の相対傾斜角を考慮した車体の姿勢制御を実行することができる。
【0026】
シート姿勢制御手段130は、既存の車体姿勢制御手段120に連結可能であり、乗員姿勢検出手段の一例としての2軸のシート相対傾斜角測定装置131が検出した車体とのシート相対傾斜角並びに車体姿勢制御手段120の車体ECU124からの車体傾斜角及び加速度をシートECU132で演算して、車体傾斜角目標修正量を車体ECU124に出力すると共に指令値をシート傾斜角調整用アクチュエータ133に出力することでシート傾斜角を制御するものである。なお、車体ECU124への入力としては、角速度計121、加速度計122又は操作手段123を独立で使用してもよいし、様々な組み合わせで使用してもよい。
【0027】
次に、このような制御システムのフローチャートについて説明する。図4は、本実施形態の制御フローチャートである。まず、ステップ1で、車体搭載の加速度計122で加速度の向きを測定する(S1)。次に、ステップ2で、車体傾斜角の目標値(釣り合い角度)を算出する(S2)。次に、ステップ3で、車体搭載の加速度計122と角速度計121の測定値から車体傾斜角を算出する(S3)。次に、ステップ4で、後述するシート傾斜角調整処理を実行する(S4)。次に、ステップ5で、車体傾斜角の測定値と修正目標値が等しいかどうか及び各々の時間変化率が等しいかどうかを判断する(S5)。判断の結果、車体傾斜角の測定値と修正目標値が等しく、各々の時間変化率も等しい場合、スタートに戻る。判断の結果、車体傾斜角の測定値と修正目標値が等しくないか、又は、各々の時間変化率が等しくない場合、ステップ6へ進む。ステップ6では、車体傾斜角の目標値に近づけるのに必要なアクチュエータ出力値の算出を実行する(S6)。最後に、ステップ6で算出した結果をもとに、ステップ7で、車体姿勢制御用アクチュエータに出力する(S7)。
【0028】
ここで、ステップ4におけるシート傾斜角調整処理について説明する。まず、ステップ41で、車体の加速度の向きと車体傾斜角からシート傾斜角の目標値を算出する(S41)。次に、ステップ42で、車体とシートの間に設置されたシート相対傾斜角測定装置でシート傾斜角を測定する(S42)。次に、ステップ43で、シート傾斜に伴う重心移動に対する車体傾斜角目標値の修正量を算出する(S43)。次に、ステップ44で、シート傾斜角の測定値と目標値は等しいかどうか、及び、各々の時間変化率も等しいかどうかを判断する(S44)。判断の結果、シート傾斜角の測定値と目標値、及び、各々の時間変化率も等しい場合、シート傾斜角調整処理を終了する。シート傾斜角の測定値と目標値が等しくないか、又は、各々の時間変化率が等しくない場合、ステップ45で、シート傾斜角の目標値に近づけるのに必要なアクチュエータ出力値の算出を実行する(S45)。最後に、ステップ45で算出した結果をもとに、ステップ46でシート傾斜角制御用アクチュエータに出力する(S46)。
【0029】
続いて、このような実施形態の具体的構造について図5乃至図12で様々な実施例を示す。まず、第一実施例について説明する。図5及び図6は、ロッド型アクチュエータを適用した例を示す。図5は、乗員を搭載した状態の概略図、図6(a)は、シート駆動部分の拡大図、図6(b)は、図6(a)の平面図である。
【0030】
図中、1は走行車両、12は車体、12aはメインフレーム、12bはシート取付フレーム、13は乗員搭載部の一例としてのシート、14は車軸、15は車輪、16はアクチュエータ、17はバネ、18はジョイントである。
【0031】
車体12は、メインフレーム12a及びシート取付フレーム12bからなる。シート取付フレーム12bは、シート13の下部に対角線上に配設し、メインフレーム12aは、シート取付フレーム12bの対角線の交点と車軸14とをユニバーサルジョイント等のジョイント18を介して連結している。また、アクチュエータ16は、ボールネジ又は電磁アクチュエータ等を用い、メインフレーム12aの略中間部とシート取付フレーム12bの進行方向側一端とをジョイント18を介して連結している。さらに、バネ17は、メインフレーム12aの略中間部とシート取付フレーム12bの進行方向後側一端とをジョイント18を介して連結している。
【0032】
このような構造とすることで、アクチュエータ16を伸縮させることにより、シート13を任意の傾斜角に制御することが可能となる。また、バネ17を設置することにより、停止時及び一定速度走行時の直立姿勢保持にエネルギーが不要となると共に、アクチュエータ16故障時に後方に転倒することを防止することができる。
【0033】
次に、第二実施例について説明する。図7及び図8は、電磁力を適用した例を示す。図7は乗員を搭載した状態の概略図、図8(a)は、シート駆動部分の拡大図、図8(b)は、図8(a)の平面図である。
【0034】
図中、1は走行車両、22は車体、22aは上端面、22bは止め部、22cはコイル取付部、23は乗員搭載部の一例としてのシート、23aは底面、23bはバネ取付部、24は車軸、25は車輪、26はコイル、27は永久磁石、28は球体の一例としてのボール、29はバネである。
【0035】
車体22は、上部に球面状の上端面22a及び上端面の縁に止め部22bを、該上端面22aの下方に複数のコイル26を設置したコイル取付部22cを有し、バネ29によりシート23と連結されている。シート23は、球面状の底面23aを有し、該底面23aには永久磁石27を、車体22のコイル取付部22aに取り付けたコイル26に対向して設置する。車体22の上端面22aとシート23の底面23aとの間には、非磁性体のボール28を介在させる。車体22の上端面22aには、止め部22bを設け、該止め部22bとシート23のバネ取付部23bとの間に径方向にバネ29を配設する。
【0036】
このような構造とすることで、車体22のコイル取付部22cに取り付けたコイル26の電流配分を制御することにより、シート23を任意の傾斜角に制御することができる。また、車体22の上端面22aには、止め部22bを設けるので、車体22の上端面22aとシート23の底面23aとの間の空間から該ボール28が飛び出さない。さらに、該止め部22bとシート23のバネ取付部23bとの間に径方向にバネ29を配設するので、車体22とシート23とを連結することができる。そして、車体22の上端面22aとシート23の底面23aとの間には、非磁性体のボール28を介在させるので、両面間の摩擦を減らすことができる。さらに、停止時及び一定速度走行時の直立姿勢保持にエネルギーが不要となる。
【0037】
次に、第三実施例について説明する。図9及び図10は、スライドアクチュエータを適用した例を示す。図9は乗員を搭載した状態の概略図、図10(a)は、シート駆動部分の拡大図、図10(b)は、図10(a)の平面図である。
【0038】
図中、1は走行車両、32は車体、32aは上端部、32bは中間部32cは下部、32dはレール、33は乗員搭載部の一例としてのシート、34は車軸、35は車輪、36はアクチュエータ、36aは棒状部、36bは台状部、37は移動体、38はバネ、39はジョイントである。
【0039】
車体32は、四角形状の上端部32aと、車軸34と連結する下部32cと、上端部32aの四角形の頂点と、下部32cとを連結する中間部32bとを有し、該上端部32aの各辺上面には、レール32dが配設されている。各レール32d上には、各移動体37を設置し、各移動体37はアクチュエータ36と結合されている。アクチュエータ36は、ボールねじ型又は電磁型のものを適用し、対向する二辺上の移動体37と結合される直交する2本の棒状部36aと、それぞれの棒状部36aと相対移動可能に連結させる台状部36bとを有する。バネ38は、車体32の中間部32bと下部32cとの交点と、アクチュエータ36の台状部36bとの間に、ボールジョイント又はユニバーサルジョイント等のジョイント39を介して設けられ、アクチュエータ36の台状部36bが車体32の下部32cの延長線上にあるように付勢されている。
【0040】
このような構造とすることにより、アクチュエータ36を制御することにより、シート33を車体32の上端部32a内の任意の位置に移動可能に制御することができる。また、バネ38を取り付けることにより、停止時及び一定速度走行時の直立姿勢保持にエネルギーが不要となると共に、アクチュエータ36が故障した場合に、姿勢の保持を助けることができる。
【0041】
次に、第四実施例について説明する。図11及び図12は、上方から吊り下げたシートにロッド型アクチュエータを適用した例を示す。図11は乗員を搭載した状態の概略図、図12(a)は、乗員搭載部分の拡大図、図12(b)は、図12(a)の平面図である。
【0042】
図中、1は走行車両、42は車体、42aは上部、42bは中間部、42cは下部、42dは第一吊り下げ部、42eは第二吊り下げ部、43は搭載手段の一例としてのシート、44は車軸、45は車輪、46はアクチュエータ、47はジョイントである。
【0043】
車体42は、上部42a、中間部42b、下部42c、第一吊り下げ部42d及び第二吊り下げ部42eを有する。
【0044】
上部42aは、シート43の上方から後方にシート43の背もたれ43bを迂回するように湾曲して設け、上端を第一吊り下げ部42d及び第二吊り下げ部42eとジョイント47を介して連結し、下端をシート43の後方において中間部42b及びアクチュエータ46とジョイント47を介して連結する。第一吊り下げ部42d及び第二吊り下げ部42eとの連結点である上端はシート43の回転中心となる。
【0045】
中間部42bは、湾曲部42b1と放射状部42b2とを有し、湾曲部42b1は、シート43のわずかに下方において、シート座面43cを迂回するように一方の側部から後方を経て他方の側部へ湾曲して延びる形状のもので、放射状部42b2は、下部42cの上端と湾曲部42b1とを結ぶものである。本例の放射状部42b1において、一本は、下部42cの上端から上部42aと湾曲部42b1との交点へ延び、残りの二本は下部42cの上端から湾曲部42b1の端部へ延び、それぞれジョイント47を介して結合されている。中間部42bとシート43とは、アクチュエータ46とジョイント47を介して連結する。本例では、一本は、上部42aと湾曲部42b1との交点と、シート座面43cとの間に連結し、残りの二本は湾曲部42b1の端部と、シート座面43cの左右前方とを連結する。
【0046】
下部42cは、上端が中間部42bの放射状部42b2の中心に位置し、下端は車軸44を支持している。第一吊り下げ部42dは、上部42aの上端とシート43のヘッドレスト43aとをジョイントを介して連結するもので、これにより、シート43が上部43aの上端から吊された状態となる。第二吊り下げ部42eは、上部42aの上端と中間部42bの湾曲部42b1端部とを連結する。
【0047】
このような構造とすることにより、アクチュエータ46を制御することにより、シート43を任意の傾斜角に制御することができる。さらに、停止時及び一定速度走行時の直立姿勢保持にエネルギーが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第一実施形態の概念図
【図2】第一実施形態の概念図
【図3】第一実施形態の制御システム構成を示す図
【図4】第一実施形態の制御フローチャートを示す図
【図5】第一実施形態の第1実施例を示す図
【図6】第一実施形態の第1実施例を示す図
【図7】第一実施形態の第2実施例を示す図
【図8】第一実施形態の第2実施例を示す図
【図9】第一実施形態の第3実施例を示す図
【図10】第一実施形態の第3実施例を示す図
【図11】第一実施形態の第4実施例を示す図
【図12】第一実施形態の第4実施例を示す図
【図13】従来の技術を示す図
【図14】従来の技術を示す図
【符号の説明】
【0049】
1…走行車両、2…車体、3…搭載手段の一例としてのシート、4…車軸、5…車輪、12…車体、12a…メインフレーム、12b…シート取付フレーム、13…乗員搭載部の一例としてのシート、14…車軸、15…車輪、16…アクチュエータ、17…バネ、18…ジョイント、22…車体、22a…上端面、22b…止め部、22c…コイル取付部、23…乗員搭載部の一例としてのシート、23a…底面、23b…バネ取付部、24…車軸、25…車輪、26…コイル、27…永久磁石、28…球体の一例としてのボール、29…バネ、32…車体、32a…上端部、32b…中間部32c…下部、32d…レール、33…乗員搭載部の一例としてのシート、34…車軸、35…車輪、36…アクチュエータ、36a…棒状部、36b…台状部、37…移動体、38…バネ、39…ジョイント、42…車体、42a…上部、42b…中間部、42c…下部、42d…第一吊り下げ部、42e…第二吊り下げ部、43…搭載手段の一例としてのシート、44…車軸、45…車輪、46…アクチュエータ、47…ジョイント、110…走行車両姿勢制御システム、120…車体姿勢制御手段、121…車体姿勢検出手段の一例としての角速度計、122…車体姿勢検出手段の一例としての加速度計、123…操作手段、124…車体ECU、125…車体姿勢制御用アクチュエータ、130…乗員姿勢制御手段の一例としてのシート姿勢制御手段、131…シート相対傾斜角測定装置、132…シートECU、133…シート傾斜角調整用アクチュエータ、G1…全体の重心、G2…乗員の重心、g…重力、Fi…慣性力、Ff…前方への力、V…鉛直軸、E…平衡軸、B…車体軸、P…接地点、Fc…遠心力、T…トレッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に回転可能に支持し、一軸上に配置された車輪と、
前記車体に支持し乗員を搭載する乗員搭載部と、
を有する走行車両において、
前記車体の姿勢を検出する車体姿勢検出手段と、
前記車体姿勢検出手段の検出した検出値により、車体姿勢を制御する車体姿勢制御手段と、
前記車体姿勢検出手段の検出した検出値に対応して前記乗員搭載部の姿勢を制御する乗員姿勢制御手段と、
を備えることを特徴とする走行車両。
【請求項2】
前記走行車両は、前記乗員搭載部の姿勢を検出する乗員姿勢検出手段と、を備え、
前記乗員姿勢制御手段は、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値及び前記乗員姿勢検出手段の検出した乗員姿勢に対応して、前記乗員搭載部の姿勢を制御することを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
【請求項3】
前記車体姿勢検出手段は、前記車体の加減速を検出する加速度検出手段を含み、前記乗員姿勢制御手段は、前記加速度検出手段の検出した加減速に対応して前記乗員搭載部の姿勢を制御することを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
【請求項4】
前記走行車両は、前記乗員搭載部の姿勢を検出する乗員姿勢検出手段と、を備え、
前記乗員姿勢制御手段は、前記加速度検出手段の検出した加減速及び前記乗員姿勢検出手段の検出した乗員姿勢に対応して、前記乗員搭載部の姿勢を制御することを特徴とする請求項3に記載の走行車両。
【請求項1】
車体と、
前記車体に回転可能に支持し、一軸上に配置された車輪と、
前記車体に支持し乗員を搭載する乗員搭載部と、
を有する走行車両において、
前記車体の姿勢を検出する車体姿勢検出手段と、
前記車体姿勢検出手段の検出した検出値により、車体姿勢を制御する車体姿勢制御手段と、
前記車体姿勢検出手段の検出した検出値に対応して前記乗員搭載部の姿勢を制御する乗員姿勢制御手段と、
を備えることを特徴とする走行車両。
【請求項2】
前記走行車両は、前記乗員搭載部の姿勢を検出する乗員姿勢検出手段と、を備え、
前記乗員姿勢制御手段は、前記車体姿勢検出手段の検出した検出値及び前記乗員姿勢検出手段の検出した乗員姿勢に対応して、前記乗員搭載部の姿勢を制御することを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
【請求項3】
前記車体姿勢検出手段は、前記車体の加減速を検出する加速度検出手段を含み、前記乗員姿勢制御手段は、前記加速度検出手段の検出した加減速に対応して前記乗員搭載部の姿勢を制御することを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
【請求項4】
前記走行車両は、前記乗員搭載部の姿勢を検出する乗員姿勢検出手段と、を備え、
前記乗員姿勢制御手段は、前記加速度検出手段の検出した加減速及び前記乗員姿勢検出手段の検出した乗員姿勢に対応して、前記乗員搭載部の姿勢を制御することを特徴とする請求項3に記載の走行車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−176398(P2007−176398A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378952(P2005−378952)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】
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