説明

走行車両

【課題】ピッチングアクチュエータの耐久性を向上でき、ピッチングアクチュエータをコンパクトに配置でき、走行機体等を簡単に構成できるようにしたコンバインを提供する。
【解決手段】左右の走行部としての走行クローラ2を有する走行機体1と、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を修正するローリングアクチュエータ38と、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を修正するピッチングアクチュエータ177を備えた走行車両において、ローリングアクチュエータ38と、ピッチングアクチュエータ177を、平面視で一列状に配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に植立した穀稈を刈取って穀粒を収集するコンバイン、又は飼料用穀稈を刈取って飼料として収集する飼料コンバイン、又は不整地を走行する運搬車等の走行車両に係り、より詳しくは、左右一対の走行クローラ等の走行部を備えた走行車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイン等の走行車両は、エンジンを搭載した走行機体を備え、走行機体に左右一対の走行クローラを装設し、左右一対の走行クローラを駆動制御して圃場等を移動するように構成している。また、コンバインは、圃場に植立した未刈り穀稈の株元を刈刃装置によって切断し、穀稈搬送手段としての穀稈搬送装置によって脱穀装置にその穀稈を搬送し、脱穀装置によってその穀稈を脱穀して、穀粒を収集するように構成している。(例えば、特許文献1参照)また、従来、走行機体の左右方向の傾斜姿勢を修正するローリングアクチュエータと、走行機体の前後方向の傾斜姿勢を修正するピッチングアクチュエータを備え、走行クローラを装着するトラックフレームを備え、平行リンク状の前側アーム及び後側アームを介して走行機体にトラックフレームを連結させ、前後の左右傾動アームを介して前側アーム及び後側アームに連結ロッドを介してローリングアクチュエータを連結させ、ローリングアクチュエータの作動によって走行機体の左右方向の傾斜姿勢を変更させるように構成していた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−28387号公報
【特許文献2】特開2000−106740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術(特許文献1)は、前後の左右傾動アームの連結途中にピッチングアクチュエータを設け、ピッチングアクチュエータの作動によって走行機体の前後方向の傾斜姿勢を変更させるように構成していたから、ピッチングアクチュエータの作動ストロークに比べ、前後の左右傾動アームの連結長さが相当長くなり、ピッチングアクチュエータに伸縮方向以外のこじれ力が作用しやすい等の耐久性の問題がある。また、従来技術(特許文献1)では、ローリングアクチュエータよりも下方の走行機体の下面側にピッチングアクチュエータが配置されていたから、左右の走行クローラの間にピッチングアクチュエータ又は油圧配管等が支持されるように構成され、左右走行クローラ間の走行機体の下面側空間が狭くなり、湿田作業等において泥土等が溜まりやすい等の取扱い上の問題がある。ピッチングアクチュエータによって、後側アームと後方の左右傾動アームを上下動させて、走行機体の前後方向の傾斜姿勢を変更させるように構成していたから、走行機体の上面側にピッチングアクチュエータが支持されることになり、走行機体の上面側構造又はピッチングアクチュエータの支持位置が互いに制限される等の構造上の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、ピッチングアクチュエータの耐久性を向上でき、ピッチングアクチュエータをコンパクトに配置でき、走行機体等を簡単に構成できるようにした走行車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明の走行車両は、左右の走行部を有する走行機体と、前記走行機体の左右方向の傾斜姿勢を修正するローリングアクチュエータと、前記走行機体の前後方向の傾斜姿勢を修正するピッチングアクチュエータを備えた走行車両において、前記ローリングアクチュエータと、前記ピッチングアクチュエータを、平面視で一列状に配置したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の走行車両において、前記ローリングアクチュエータと、前記ピッチングアクチュエータを、側面視で一列状に配置したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の走行車両において、前記ローリングアクチュエータに連結する左右傾動アームと、前記ピッチングアクチュエータに連結する前後傾動アームを、同一支点軸上に配置したものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の走行車両において、前記ローリングアクチュエータによって作動させる平行リンク状の前側アーム及び後側アームを設けた構造であって、前記前側アーム又は後側アームのいずれか一方に前記前後傾動アームを連結したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、左右の走行部を有する走行機体と、前記走行機体の左右方向の傾斜姿勢を修正するローリングアクチュエータと、前記走行機体の前後方向の傾斜姿勢を修正するピッチングアクチュエータを備えた走行車両において、前記ローリングアクチュエータと、前記ピッチングアクチュエータを、平面視で一列状に配置したものであるから、前記ピッチングアクチュエータの設置長さ(連結支持長さ)を従来よりも短縮でき、前記ピッチングアクチュエータに作用する伸縮方向以外のこじれ力を低減でき、耐久性を向上できる。また、前記左右走行部間の前記走行機体の下面側空間を広く形成でき、前記走行機体の下面側に泥土が溜まるのを低減でき、湿田作業性等を向上できる。また、前記走行機体の上面側構造又は前記ピッチングアクチュエータの支持位置が互いに制限されるのを防止でき、前記走行機体等を簡単に構成できる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、前記ローリングアクチュエータと、前記ピッチングアクチュエータを、側面視で一列状に配置したものであるから、前記ピッチングアクチュエータの設置長さ(連結支持長さ)を従来よりも短縮でき、前記ピッチングアクチュエータに作用する伸縮方向以外のこじれ力を低減でき、耐久性を向上できる。また、前記左右走行部間の前記走行機体の下面側空間を広く形成でき、前記走行機体の下面側に泥土が溜まるのを低減でき、湿田作業性等を向上できる。また、前記走行機体の上面側構造又は前記ピッチングアクチュエータの支持位置が互いに制限されるのを防止でき、前記走行機体等を簡単に構成できる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、前記ローリングアクチュエータに連結する左右傾動アームと、前記ピッチングアクチュエータに連結する前後傾動アームを、同一支点軸上に配置したものであるから、前記ピッチングアクチュエータ等の前後傾斜機構の有無に関係なく、同一仕様の走行機体を使用できる。前記走行機体等を低コストに構成できる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、前記ローリングアクチュエータによって作動させる平行リンク状の前側アーム及び後側アームを設けた構造であって、前記前側アーム又は後側アームのいずれか一方に前記前後傾動アームを連結したものであるから、左右傾斜姿勢の前記走行機体の車高を維持しながら、前記走行機体を前後傾動できる。前記走行機体の左右方向の傾斜姿勢を修正する前記ローリングアクチュエータの制御性能を維持でき、且つ前記走行機体の前後方向の傾斜姿勢を修正する前記ピッチングアクチュエータの制御性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の6条刈り用コンバインの側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】刈取装置の側面説明図である。
【図4】刈取装置の平面説明図である。
【図5】図1のコンバインの駆動系統図である。
【図6】ミッションケース等の駆動系統図である。
【図7】カウンタケース等の駆動系統図である。
【図8】図1のコンバインの油圧回路図である。
【図9】走行機体及び走行クローラ部の側面図である。
【図10】同平面図である。
【図11】走行機体を上動させた側面説明図である。
【図12】走行機体を上動させて前傾させた前下り側面説明図である。
【図13】走行機体を前傾させた前下り側面説明図である。
【図14】走行機体を上動させて後傾させた後下り側面説明図である。
【図15】走行機体を後傾させた後下り側面説明図である。
【図16】走行クローラ部の背面視斜視図である。
【図17】走行機体の対地高さと走行機体の前後傾斜角度の関係を示す線図である。
【図18】姿勢制御手段の制御回路の機能ブロック図である。
【図19】姿勢制御のフローチャートである。
【図20】穀稈刈取高さ制御のフローチャートである。
【図21】左右方向及び前後方向の傾斜制御のフローチャートである。
【図22】走行機体とトラックフレームとミッションケースを示す側面説明図である。
【図23】車高調節油圧シリンダと前後傾斜用油圧シリンダとローリングリンク機構とピッチングリンク機構を示す側面説明図である。
【図24】図23の上面視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図である。図1及び図2を参照して、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。図1及び図2に示す如く、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備える。走行機体1の前部には、穀稈を刈取りながら取込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着される。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、該脱穀装置5から取出された穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載される。なお、脱穀装置5が走行機体1の前進方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の前進方向右側に配置される。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられ、穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
【0016】
運転キャビン10内には、操縦ハンドル11と、運転座席12と、主変速レバー43と、副変速スイッチ44と、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入り切りする作業クラッチレバー45とを配置している。なお、運転キャビン10には、オペレータが搭乗するステップ(図示省略)と、操縦ハンドル11を設けたハンドルコラム46と、前記各レバー43,45及びスイッチ44等を設けたレバーコラム47とが配置されている。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのエンジン14が配置されている。
【0017】
図1に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン14の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。
【0018】
図1、図2に示す如く、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場に植立した未刈り穀稈(穀稈)の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置される。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。エンジン14にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3によって圃場に植立した未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0019】
次に、図3及び図4を参照して刈取装置3の構造を説明する。図3及び図4に示す如く、刈取フレーム221は、走行機体1の前端側の軸受台15に回動可能に支持した刈取入力ケース16と、刈取入力ケース16から前方に向けて延長する縦伝動ケース18と、縦伝動ケース18の前端側で左右方向に向けて延長する横伝動ケース19と、横伝動ケース19に連結する6条分の分草フレーム20とによって形成されている。分草フレーム20の前端側に6条分の分草体225が配置されている。機体左右方向に水平に横架した刈取入力ケース16内には、エンジン14からの動力が伝達される刈取り入力軸17が組込まれている。
【0020】
穀稈引起装置223は、分草板225によって分草された未刈穀稈を起立させる複数の引起タイン128を有する6条分の引起ケース129を有する。穀稈搬送装置224は、右側2条分の引起ケース129から導入される右側2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の右スターホイル130R及び左右の右掻込ベルト131Rと、左側2つの引起ケース129から導入される左側2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の左スターホイル130L及び左右の左掻込ベルト131Lと、中央2つの引起ケース129から導入される中央2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の中央スターホイル130C及び左右の中央掻込ベルト131Cとを有する。
【0021】
刈刃装置222は、右スターホイル130R及び左右の右掻込ベルト131R、左スターホイル130L及び左右の左掻込ベルト131L、中央スターホイル130C及び左右の中央掻込ベルト131Cによって掻込まれた6条分の穀稈の株元を切断するバリカン形の左右の刈刃132を有する。
【0022】
また、穀稈搬送装置224は、右側2条分のスターホイル130R及び掻込ベルト131Rによって掻込まれた右側2条分の刈取穀稈の株元側を後方に搬送する右株元搬送チェン133Rと、左側2条分のスターホイル130L及び掻込ベルト131Lによって掻込まれた左側2条分の刈取穀稈の株元側を右株元搬送チェン133Rの搬送終端部に合流させる左株元搬送チェン133Lと、中央2条分のスターホイル130C及び掻込ベルト131Cによって掻込まれた中央2条分の刈取穀稈の株元側を後方に搬送して右株元搬送チェン133Rの搬送途中に合流させる中央株元搬送チェン133Cを有する。左右及び中央の株元搬送チェン133R,133L,133Cによって、右株元搬送チェン133Rの搬送終端部に、6条分の刈取穀稈の株元側を合流させる。
穀稈搬送装置224は、右株元搬送チェン133Rから6条分の刈取穀稈の株元側を受継ぐ穀稈搬送手段としての縦搬送チェン134と、縦搬送チェン134の搬送終端部からフィードチェン6の搬送始端部に6条分の刈取穀稈の株元側を搬送する補助搬送手段としての補助株元搬送チェン135,136とを有する。縦搬送チェン134から、補助株元搬送チェン135,136を介して、フィードチェン6の搬送始端部に、6条分の刈取穀稈の株元側を搬送する。
【0023】
穀稈搬送装置224は、右株元搬送チェン133Rにて搬送される右側2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する右穂先搬送タイン137Rと、左株元搬送チェン133Lにて搬送される左側2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する左穂先搬送タイン137Lと、中央株元搬送チェン133Cにて搬送される中央2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する中央穂先搬送タイン137Cと、縦搬送チェン134にて搬送される6条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する後穂先搬送タイン138とを有する。脱穀装置5の扱胴226設置室内に、刈取装置3で刈取った6条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する。
【0024】
次に、図5を参照してコンバインの駆動構造を説明する。図5に示す如く、刈取り入力軸17に、縦伝動軸140及び横伝動軸141及び左搬送駆動軸142を介して引起横伝動軸143を連結する。引起横伝動軸143は、6条分の各引起ケース29の引起タイン駆動軸144にそれぞれ連結している。分草体225の後方で分草フレーム20の上方に引起ケース129が立設され、引起ケース129の上端側の背面から引起タイン駆動軸144を突出している。引起タイン駆動軸144及び引起横伝動軸143を介して、複数の引起タイン128を設けた引起タインチェン128aが駆動される。
【0025】
図5に示す如く、横伝動軸141に左右のクランク軸145を介して左右の刈刃132を連結する。横伝動軸141を介して左右の刈刃132を同期させて駆動するように構成している。なお、刈刃装置222は、6条分の刈幅の中央部で分割して左右の刈刃132を形成し、左右の刈刃132を相反する方向に往復移動させ、往復移動によって発生する左右の刈刃132の振動(慣性力)を相殺可能に構成している。
【0026】
図5に示す如く、刈取り入力軸17に縦伝動ケース18内の縦伝動軸140の一端側を連結する。縦伝動軸140の他端側に横伝動ケース19内の横伝動軸141を連結する。縦伝動軸140及び横伝動軸141から穀稈搬送装置224の各駆動部に刈取り入力軸17の回転力を伝える。即ち、縦伝動軸140には、右搬送駆動軸146を連結している。縦伝動軸140及び右搬送駆動軸146を介して、右株元搬送チェン133R及び右穂先搬送タイン137Rと、右スターホイル130R及び右掻込ベルト131Rとを駆動するように構成している。また、縦伝動軸140及び後搬送駆動軸147を介して、補助株元搬送チェン135,136及び後穂先搬送タイン138を駆動するように構成している。
【0027】
また、横伝動軸141の左端側に左搬送駆動軸142を連結している。左搬送駆動軸142を介して、左株元搬送チェン133L及び左穂先搬送タイン137Lと、左スターホイル130L及び左掻込ベルト131Lとを駆動するように構成している。また、横伝動軸141に中央搬送駆動軸148を連結し、中央搬送駆動軸148を介して、中央株元搬送チェン133C及び中央穂先搬送タイン137Cと、中央スターホイル130C及び中央掻込ベルト131Cとを駆動するように構成している。
【0028】
次に、図1及び図2を参照して、脱穀装置5の構造を説明する。図1及び図2に示す如く、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230を備えている。なお、扱胴226の回転軸芯線は、フィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側は、フィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀される。
【0029】
図1に示す如く、揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
【0030】
図1に示す如く、揺動選別盤227は、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱穀物が、フィードパン238及びチャフシーブ239によって揺動選別(比重選別)されるように構成している。揺動選別盤227から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下することになる。一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀コンベヤ233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ233を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集される。
【0031】
また、図1に示す如く、揺動選別盤227は、揺動選別(比重選別)によってチャフシーブ239から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。チャフシーブ239の下方に落下する二番物を風選する選別ファン241を備える。チャフシーブ239から落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が選別ファン241からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下する。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、還元コンベヤ236を介して、フィードパン238の後部(チャフシーブ239の前部)の上面側に連通接続され、二番物を揺動選別盤227の上面側に戻して再選別するように構成している。
【0032】
一方、図1及び図2に示す如く、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234と排藁カッタ235が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後部に設けられた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
【0033】
次に、図5を参照しながら、刈取装置3、脱穀装置5、フィードチェン6、排藁チェン234、排藁カッタ235等の駆動構造について説明する。図5に示す如く、エンジン14の左側にその出力軸150を突出する。エンジン14の出力軸150に走行駆動ベルト151を介してミッションケース50の走行入力軸152を連結し、エンジン14の回転駆動力が、前側の出力軸150からミッションケース50に伝達されて変速された後、左右の車軸153を介して左右の走行クローラ2に伝達され、左右の走行クローラ2がエンジン14の回転力によって駆動されるように構成している。
【0034】
図5に示す如く、エンジン14を冷却するためのラジエータ用の冷却ファン154が、エンジン14の右側に突出した出力軸150に設けられている。また、エンジン14の右側の出力軸150に排出オーガ駆動軸157を連結し、エンジン14の回転駆動力によって排出オーガ駆動軸157を介して排出オーガ8が駆動され、穀粒タンク7内の穀粒がコンテナ等に排出されるように構成している。
【0035】
また、図5、図7に示す如く、脱穀装置5の各部にエンジン14の回転駆動力を伝える脱穀選別作業入力軸165と、扱胴226及び処理胴230に脱穀選別作業入力軸165の回転駆動力を伝える脱穀駆動軸160を備える。エンジン14の左側の出力軸150には、テンションローラ形脱穀クラッチ161及び脱穀駆動ベルト162を介して、脱穀選別作業入力軸165を連結する。脱穀駆動軸160上に、扱胴低速ギヤ115及び扱胴高速ギヤ115を配置する。脱穀選別作業入力軸165の回転力が、扱胴低速ギヤ115又は扱胴高速ギヤ115を介して脱穀駆動軸160に伝達される。
【0036】
脱穀駆動軸160には、扱胴駆動ベルト117を介して扱胴226を軸支した扱胴軸163と、処理胴230を軸支した処理胴軸164とを連結する。エンジン14の略一定回転数の回転力によって、扱胴226及び処理胴230が所定回転数(低速回転数又は高速回転数)で回転するように構成している。また、エンジン14の略一定回転数の回転力によって、脱穀選別作業入力軸165を介して、揺動選別盤227、唐箕ファン228、一番コンベヤ231、二番コンベヤ232、選別ファン241、排塵ファン230が略一定回転数で回転するように構成している。
【0037】
図5、図6に示す如く、ミッションケース50に、1対の直進用第1油圧ポンプ55及び直進用第1油圧モータ56を有する直進(走行主変速)用の油圧式無段変速機構53と、1対の旋回用第2油圧ポンプ57及び旋回用第2油圧モータ58を有する旋回用の油圧式無段変速機構54とを設けている。第1油圧ポンプ55と、第2油圧ポンプ57に、ミッションケース50の走行入力軸152をそれぞれ連結させて駆動するように構成している。ミッションケース50にPTO軸99を配置する。PTO軸99は、第1油圧モータ56によって駆動される。ミッションケース50からこの左外側にPTO軸99の一端側を突設させている。
【0038】
図5に示す如く、エンジン14の左側方で、脱穀装置5の前側方の走行機体1上に、カウンタギヤケース89を設けている。カウンタギヤケース89には、上述した脱穀駆動軸160と、脱穀駆動軸160に連結する脱穀選別作業入力軸165と、PTO軸99に連結する車速同調軸100と、脱穀選別作業入力軸165又は車速同調軸100に連結する刈取伝動軸101と、刈取り入力軸17に連結する刈取駆動軸102と、フィードチェン6を駆動するフィードチェン駆動軸103とを配置している。
【0039】
図7に示す如く、カウンタギヤケース89内の車速同調軸100上に、車速同調軸100の車速同調回転力を伝える一方向クラッチ105を設ける。車速同調軸100に、刈取変速機構108と一方向クラッチ105とを介して、刈取伝動軸101を連結する。刈取変速機構108は、低速側変速ギヤ106と高速側変速ギヤ107とを有する。低速及び中立(零回転)及び高速の各刈取変速を行う刈取変速操作手段(図示省略)によって低速側変速ギヤ106又は高速側変速ギヤ107を刈取伝動軸101に択一的に係合させ、車速同調軸100から刈取変速機構108を介して刈取伝動軸101に刈取変速出力を伝えるように構成している。
【0040】
図7に示す如く、脱穀選別作業入力軸165に一定回転機構111を介して刈取伝動軸101を連結する。一定回転機構111は、低速側一定回転ギヤ109と高速側一定回転ギヤ110とを有する。刈取伝動軸101にトルクリミッタ114を介して刈取駆動軸102を連結する。刈取作業の維持に必要な一定回転数の回転出力が低速側一定回転ギヤ109を介して脱穀選別作業入力軸165から刈取伝動軸101に伝達される。したがって、走行機体1の移動速度に関係なく、低速側一定回転ギヤ109からの一定回転数で刈取り入力軸17を作動させて刈取作業を維持でき、圃場の枕地での方向転換作業性等を向上できる。
【0041】
また、車速同調軸100及び高速側変速ギヤ107からの車速同調出力の最高速よりも早い一定回転数の回転出力が高速側一定回転ギヤ110を介して脱穀選別作業入力軸165から刈取伝動軸101に伝達される。したがって、車速同調出力の最高速よりも早い高速側一定回転ギヤ110からの一定回転数で刈取り入力軸17を作動でき、倒伏穀稈の刈取り作業性等を向上できる。なお、トルクリミッタ114によって設定したトルク以下の回転力で刈取り入力軸17が作動して、刈刃132等が損傷するのを防止している。
【0042】
カウンタギヤケース89には、脱穀選別作業入力軸165にフィードチェン駆動軸103を連結する遊星ギヤ形変速構造のフィードチェン同調機構112が設けられている。脱穀選別作業入力軸165の回転出力が、フィードチェン同調機構112によって刈取伝動軸101の回転数に比例して変速されて、フィードチェン駆動軸103に伝達される。即ち、フィードチェン同調機構112を介してフィードチェン6を作動することによって、穀稈の搬送に必要な最低回転数(低速側一定回転ギヤ109からの一定回転数)を確保し乍ら、フィードチェン6の穀稈搬送速度を車速と同調させて変更可能に構成している。
【0043】
図6に示す如く、エンジン14の出力軸150から出力される駆動力は、走行駆動ベルト151及び走行入力軸152を介して、第1油圧ポンプ55のポンプ軸59及び第2油圧ポンプ57のポンプ軸59にそれぞれ伝達される。直進用油圧式無段変速機構53では、ポンプ軸59に伝達された動力にて、第1油圧ポンプ55から第1油圧モータ56に向けて作動油が適宜送り込まれる。同様に、旋回用油圧式無段変速機構54では、ポンプ軸59に伝達された動力にて、第2油圧ポンプ57から第2油圧モータ58に向けて作動油が適宜送り込まれる。
【0044】
なお、ポンプ軸59には、油圧ポンプ55,57及び油圧モータ56,58に作動油を供給するための作業ポンプ91が取付けられている。作業ポンプ91は、ポンプ軸59と連動して駆動するように構成されている。直進用油圧式無段変速機構53は、操縦部9に配置された主変速レバー43や操縦ハンドル11の操作量に応じて、第1油圧ポンプ55における回転斜板の傾斜角度を変更調節して、第1油圧モータ56への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、第1油圧モータ56から突出した直進用モータ軸60の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
【0045】
直進用モータ軸60の回転動力は、直進伝達ギヤ機構62から副変速ギヤ機構51に伝達される。副変速ギヤ機構51は、副変速シフタ64によって切換える副変速低速ギヤ62及び副変速高速ギヤ63を有する。レバーコラム47に配置された副変速スイッチ44の操作にて、直進用モータ軸60の出力回転数を低速又は高速という2段階の変速段に切換えるように構成している。なお、副変速の低速と高速との間には、中立(副変速の出力が零になる位置)を有している。副変速ギヤ機構51の出力側に設けられた駐車ブレーキ軸65には、湿式多板ディスク式の駐車ブレーキ66が設けられている。
【0046】
副変速ギヤ機構51からの回転動力は、駐車ブレーキ軸65に固着された副変速出力ギヤ67から差動機構52に伝達される。差動機構52は、左右対称状に配置された一対の遊星ギヤ機構68と、遊星ギヤ機構68と駐車ブレーキ軸65との間に位置した中継軸69とを備えている。駐車ブレーキ軸65の副変速出力ギヤ67は、中継軸69に取付けられた中間ギヤ70aに噛合う。
【0047】
左右各遊星ギヤ機構68は、1つのサンギヤ71と、サンギヤ71に噛合う複数の遊星ギヤ72と、遊星ギヤ72に噛合うリングギヤ73と、複数の遊星ギヤ72を同一円周上に回転可能に配置するキャリヤ74とをそれぞれ備えている。左右の遊星ギヤ機構68のキャリヤ74は、同一軸線上において適宜間隔を設けて相対向させて配置されている。左右のサンギヤ71が設けられたサンギヤ軸75にセンタギヤ76を固着している。
【0048】
左右の各リングギヤ73は、その内周面の内歯を複数の遊星ギヤ72に噛合わせた状態で、サンギヤ軸75に同心状に配置されている。また、左右の各リングギヤ73は、その外周面の外歯を左右中間ギヤ70bに噛合わせて、中継軸69に連結させている。各リングギヤ73は、キャリヤ74の外側面から左右外向きに突出した左右の車軸153に回転可能に軸支されている。左右の車軸153には左右の駆動スプロケット22が取付けられている。従って、副変速ギヤ機構51から左右の遊星ギヤ機構68に伝達された回転動力は、各キャリヤ74の車軸153から左右の駆動スプロケット22に同方向の同一回転数にて伝達され、左右の走行クローラ2を駆動させる。
【0049】
旋回用油圧式無段変速機構54は、操縦部9に配置された主変速レバー43や操縦ハンドル11の回動操作量に応じて、第2油圧ポンプ57における回転斜板の傾斜角度を変更調節して、第2油圧モータ58への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、第2油圧モータ58から突出した旋回用モータ軸61の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
【0050】
また、ミッションケース50内に、旋回用モータ軸61(操向ブレーキ軸)上に設ける操向ブレーキ79と、操向クラッチ81を有する操向クラッチ軸80と、左センタギヤ76に連結する左入力ギヤ機構82と、逆転ギヤ84を介して右センタギヤ76に噛合う右入力ギヤ機構83とを備えている。旋回用モータ軸61の回転動力は、操向クラッチ81を介して操向クラッチ軸80に伝達される。操向クラッチ軸80に伝達された回転動力は、これに対応する左右の入力ギヤ機構82,83に伝達される。
【0051】
副変速ギヤ機構51を中立にした場合は、第1油圧モータ56から左右の遊星ギヤ機構68への動力伝達が阻止される。副変速ギヤ機構51から中立以外の副変速出力時に、副変速低速ギヤ62又は副変速高速ギヤ63を介して第1油圧モータ56から左右の遊星ギヤ機構68へ動力伝達される。一方、操向ブレーキ79を入り状態とし且つ操向クラッチ81を切り状態とした場合は、第2油圧モータ58から左右の遊星ギヤ機構68への動力伝達が阻止される。操向ブレーキ79を切り状態とし且つ操向クラッチ81を入り状態とした場合は、第2油圧モータ58の回転動力が、左入力ギヤ機構82及び逆転ギヤ84を介して左センタギヤ76に伝達される一方、右入力ギヤ機構83を介して右センタギヤ76に伝達される。その結果、第2油圧モータ58の正回転(逆回転)時は、互いに逆方向の同一回転数で、左センタギヤ76が逆転(正転)し、右センタギヤ76が正転(逆転)する。
【0052】
以上の構成から分かるように、各モータ軸60,61からの変速出力は、副変速ギヤ機構51及び差動機構52を経由して左右の走行クローラ2の駆動スプロケット22(駆動スプロケット)にそれぞれ伝達される。その結果、走行機体1の車速(走行速度)及び進行方向が決まる。
【0053】
すなわち、第2油圧モータ58を停止させて左右サンギヤ71(センタギヤ76)を静止固定させた状態で、第1油圧モータ56が駆動すると、直進用モータ軸60からの回転出力は左右リングギヤ73に左右同一回転数で伝達され、遊星ギヤ72及びキャリヤ74を介して、左右の走行クローラ2が同方向の同一回転数にて駆動され、走行機体1が直進走行する。
【0054】
逆に、第1油圧モータ56を停止させて左右リングギヤ73を静止固定させた状態で、第2油圧モータ58を駆動させると、旋回用モータ軸61からの回転動力にて、左のサンギヤ71が正又は逆回転し、右のサンギヤ71は逆又は正回転する。その結果、左右の走行クローラ2の駆動スプロケット22のうち、一方が前進回転し、他方が後退回転し、走行機体1はその場で信地旋回(スピンターン)する。
【0055】
また、第1油圧モータ56によって左右リングギヤ73を駆動させながら、第2油圧モータ58によって左右サンギヤ71を駆動させると、左右の走行クローラ2の速度に差が生じ、走行機体1は前進又は後退しながら信地旋回半径より大きい旋回半径で左又は右に旋回(Uターン)する。このときの旋回半径は左右の走行クローラ2の速度差に応じて決定される。
【0056】
次に、図8を参照して、コンバインの油圧回路構造について説明する。図8に示す如く、油圧回路250には、上述した第1油圧ポンプ55と、第1油圧モータ56と、第2油圧ポンプ57と、第2油圧モータ58と、チャージポンプ251とを備える。第1油圧ポンプ55と第1油圧モータ56が、閉ループ状直進油路252によって接続される。第2油圧ポンプ57と第2油圧モータ58が、閉ループ状旋回油路253によって接続される。エンジン14によって第1油圧ポンプ55と第2油圧ポンプ57が駆動され、第1油圧ポンプ55の斜板角制御又は第2油圧ポンプ57の斜板角制御によって、第1油圧モータ56又は第2油圧モータ58を正転又は逆転作動するように構成している。
【0057】
また、図8に示す如く、上述した昇降用油圧シリンダ4と、排出オーガ8の籾投げ口9側を昇降させるオーガ昇降油圧シリンダ254と、走行機体1の左右端部を昇降させて走行機体1を左右に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダ38と、上述した作業ポンプ91と、走行機体1の前後部を昇降させて走行機体1を前後に傾動させる左右の前後傾斜用油圧シリンダ177とを備える。作業ポンプ91の吐出側に分流弁255とリリーフ弁256を接続する。分流弁255に第1高圧油路257と第2高圧油路258を接続する。リリーフ弁256に低圧のタンク油路259を接続する。
【0058】
第1高圧油路257には、昇降用油圧シリンダ4を作動する刈取昇降電磁弁260と、左の車高調節油圧シリンダ38を作動する左傾電磁弁261と、右の車高調節油圧シリンダ38を作動する右傾電磁弁262と、オーガ昇降油圧シリンダ254を作動する穀粒排出電磁弁263とが接続されている。また、刈取昇降電磁弁260を1グループとして、左傾電磁弁261と右傾電磁弁262と穀粒排出電磁弁263を2グループとして、各グループ別に優先作動電磁弁264に接続する。車高調節油圧シリンダ38又はオーガ昇降油圧シリンダ254の作動を禁止した状態で、刈取上昇用の優先作動電磁弁264を介して昇降用油圧シリンダ4を上昇作動するように構成している。一方、昇降用油圧シリンダ4の作動を禁止した状態で、優先作動電磁弁264を介して車高調節油圧シリンダ38又はオーガ昇降油圧シリンダ254を作動するように構成している。
【0059】
さらに、タンク油路259に、刈取装置3が下降する側に昇降用油圧シリンダ4を作動する刈取下降電磁弁265が接続されている。刈取昇降電磁弁260を切換える刈取装置3の昇降動とは別に、優先作動電磁弁264を切換えて刈取装置3を上昇させる一方、刈取下降電磁弁265を切換えて刈取装置3を下降させるように構成している。
【0060】
第2高圧油路258には、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動する前後傾動電磁弁266が接続されている。昇降用油圧シリンダ4又は車高調節油圧シリンダ38又はオーガ昇降油圧シリンダ254の作動状況に関係なく、分流弁255の分流作用によって、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177の作動に必要な高圧油が常に確保されている。即ち、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177の作動によって走行機体1を前上がりに傾動させ、走行機体1の前部の地上高を高くして、例えば圃場に入るときに、先頭の刈取装置3を俊敏に持上げて、田面等の障害物に刈取装置3が衝突するのを回避できるように構成している。
【0061】
次に、図9乃至図16を参照しながら、走行機体1の左右方向の傾斜角の調節構造について説明する。図9乃至図16に示す如く、走行機体1の下面側に設ける左右一対のローリング支点フレーム26と、左右一対の前側軸受体27と、左右一対の後側軸受体28を備える。走行機体1の下面側に固着されたローリング支点フレーム26の前端側に、左右一対の前側軸受体27を配置している。左右一対のローリング支点フレーム26の後端側に左右一対の後側軸受体28を配置している。左右の前側軸受体27に左右一対の前部ローリング支点軸29をそれぞれ貫通させ、左右の後側軸受体28に左右一対の後部ローリング支点軸30をそれぞれ貫通させている。なお、走行機体1の下面側に走行シャーシ1aを介して駆動スプロケット22(ミッションケース88)が配置されている。走行機体1の前部にミッションケース88の背面側が締結されている。
【0062】
左右方向に延長させた左右一対の前部ローリング支点軸29の一端側には、上下方向に延長した左右一対の上側前部ローリングアーム31の基端側を一体的にそれぞれ固着している。左右一対の前部ローリング支点軸29の他端側には、前後方向に延長した左右一対の下側前部ローリングアーム33の基端側を一体的にそれぞれ固着している。即ち、左右一対の上側前部ローリングアーム31と、左右一対の下側前部ローリングアーム33とは、左右一対の前部ローリング支点軸29回りに一体的にそれぞれ回動する。また、下側前部ローリングアーム33の先端側に連結軸体40を介してトラックフレーム21の前部を連結している。
【0063】
また、左右方向に延長させた後部ローリング支点軸30の一端側には、左右一対の上側後部ローリングアーム32の基端側を回動可能に被嵌させている。図7及び図15に示す如く、伸縮調節可能なターンバックル付きの左右一対の前後連結ローリングフレーム36を備える。長尺なロッド状の前後連結ローリングフレーム36は、走行機体1の上面よりも低位置で、走行機体1と平行に、前後方向に延長している。左右一対の上側前部ローリングアーム31の先端側に、軸体35を介して前後連結ローリングフレーム36の前端側を連結している。上側後部ローリングアーム32の上端側に、軸体37を介して前後連結ローリングフレーム36の後端側を連結している。
【0064】
図9乃至図16に示す如く、走行機体1の左右方向の傾斜角度を変更させる左右一対の車高調節油圧シリンダ38を備える。走行機体1に左右一対のシリンダ支持ブラケット39を設ける。左右一対のシリンダ支持ブラケット39に基部軸体48を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ連結させている。左右一対の上側後部ローリングアーム32の上端側に、先端側軸体42を介して左右一対の車高調節油圧シリンダ38のピストンロッド41をそれぞれ連結させている。
【0065】
左右一対の後部ローリング支点軸30の他端側には、左右一対の下側後部ローリングアーム34の基端側を一体的にそれぞれ固着している。即ち、左右一対の後部ローリング支点軸30と、左右一対の下側後部ローリングアーム34とは、左右一対の後部ローリング支点軸30の軸線回りに一体的にそれぞれ回動するように構成している。また、下側後部ローリングアーム34の先端側に連結軸体174を介して従動リンク体175の一端側を連結する。従動リンク体175の他端側に連結軸体179を介してトラックフレーム21の後部を連結している。
【0066】
図9乃至図16に示す如く、走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更させる前後傾斜用油圧シリンダ177を備える。左右一対の後部ローリング支点軸30の一端側には、左右一対のピッチングアーム176の基端側が固着されている。左右一対のピッチングアーム176と、左右一対の下側後部ローリングアーム34とは、左右一対の後部ローリング支点軸30の軸線回りに一体的にそれぞれ回動するように構成している。また、左右一対の上側後部ローリングアーム32に連結軸体180を介して左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ177をそれぞれ連結している。前後傾斜用油圧シリンダ177のピストンロッド178に、連結軸体181を介してピッチングアーム176の先端側を連結している。
【0067】
図9、図10に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ177は、側面視又は平面視で、前後に一列状に配置されている。左右一対の車高調節油圧シリンダ38の作動によって走行機体1の左右方向の傾斜角度を変更する左右一対のローリングリンク機構R1は、上側前部ローリングアーム(左右傾動アーム)31、上側後部ローリングアーム(左右傾動アーム)32、下側前部ローリングアーム(前側アーム)33、下側後部ローリングアーム(後側アーム)34、前後連結ローリングフレーム36、従動リンク体(ピッチングリンク)175を有する。車高調節油圧シリンダ38が作動したときに、上側前部ローリングアーム31と下側前部ローリングアーム33が前部ローリング支点軸29回りに一体的に回動すると同時に、上側後部ローリングアーム32、下側後部ローリングアーム34、ピッチングアーム176、前後傾斜用油圧シリンダ177が後部ローリング支点軸30回りに一体的に回動する。
【0068】
即ち、図9、図11に示す如く、車高調節油圧シリンダ38が作動したときに、トラックフレーム21に対して走行機体1の前後方向傾斜角度を維持しながら、走行機体1とトラックフレーム21の相対間隔を変化させる。左右の走行クローラ2の沈下量が変化して走行機体1が左右に傾動した場合、又はオペレータが走行機体1を左右に傾動させたい場合、車高調節油圧シリンダ38の自動制御又は手動制御によって走行機体1の左右方向傾斜角度を変化させ、走行機体1の左右方向の対地傾斜角度を設定角度(略水平姿勢)に保つことができる。
【0069】
左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ177の作動によって走行機体1の前後方向の傾斜角度を変更する左右一対のピッチングリンク機構P1は、下側後部ローリングアーム(後側アーム)34、従動リンク体(ピッチングリンク)175、ピッチングアーム(前後傾動アーム)176を有する。前後傾斜用油圧シリンダ177が作動したときに、下側後部ローリングアーム34及びピッチングアーム176が後部ローリング支点軸30回りに一体的に回動して、従動リンク体175を介して前部ローリング支点軸29回りにトラックフレーム21を回動させる。
【0070】
即ち、図12乃至図15に示す如く、前後傾斜用油圧シリンダ177が作動したときに、走行機体1の左右方向の対地傾斜角度を維持しながら、トラックフレーム21に対して走行機体1の前後方向傾斜角度を変化させる。左右の走行クローラ2を移動させる走行路面が登り傾斜又は下り傾斜の斜面の場合、又は左右の走行クローラ2の前部(又は後部)の沈下量が変化して走行機体1が前後に傾動した場合、又はオペレータが走行機体1を前後に傾動させたい場合、前後傾斜用油圧シリンダ177の自動制御又は手動制御によって走行機体1の前後方向傾斜角度を変化させ、走行機体1の前後方向の対地傾斜角度を設定角度(略水平姿勢)に保つことができる。
【0071】
なお、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25は、走行機体1から横向きに突出させたローラ軸64に回転自在に軸支している。即ち、駆動スプロケット22と中間ローラ25間の走行クローラ2の非接地側は、車高調節油圧シリンダ38又は前後傾斜用油圧シリンダ177によって走行機体1の左右方向又は前後方向の傾斜角度が変更されたとしても、走行機体1の下面との間隔が常に略一定に維持される。
【0072】
上記の構成により、図11に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド41を進出させた場合、左右一対のトラックフレーム21いずれか一方又は両方が下動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押し下げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を高くするように構成している。
【0073】
また、図9に示す如く、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方を作動して、左右一対の車高調節油圧シリンダ38のいずれか一方又は両方のピストンロッド41を退入させた場合、左右一対のトラックフレーム21のいずれか一方又は両方が上動し、左右一対の走行クローラ2のいずれか一方又は両方の接地側を押し上げ、走行機体1の左側又は右側又は両方の車高を低くするように構成している。即ち、左右一対の車高調節油圧シリンダ38をそれぞれ作動させて、走行機体1に対して左右の走行クローラ2の接地面高さをそれぞれ変更することによって、走行機体1の左右方向の傾斜角が調節され、走行機体1が略水平(左右傾斜角0度)に支持されるように構成している。
【0074】
図12(図13)に示す如く、車高が高いピストンロッド41進出状態(又は車高が低いピストンロッド41退入状態)で、前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ177のピストンロッド178をそれぞれ退入させた場合、左右一対のピッチングアーム176がそれぞれ作動して、左右一対の従動リンク体175が下方にそれぞれ押下げられ、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時にそれぞれ下動する。
【0075】
その結果、下側前部ローリングアーム33に対して下側後部ローリングアーム34の平行姿勢が変更され、左右一対の走行クローラ2の後部の接地側が押下げられ、走行機体1の後端側の車高が高くなり、走行機体1が前下がりに傾斜するように構成している。即ち、前部ローリング支点軸29回りに走行機体1の後端側を上動させて、走行機体1の後端側が前端側よりも高くなる前方傾斜姿勢(前下がり傾斜姿勢)に傾動させるように構成している。その結果、前上がりに傾斜した走行路面を移動するときに、走行機体1の前後方向の傾きを略水平に維持できる。
【0076】
なお、図14、図15に示す如く、左右一対の前後傾斜用油圧シリンダ177のピストンロッド178をそれぞれ退入させることによって、前記とは逆に、左右一対のトラックフレーム21の両方の後端側が同時にそれぞれ上動し、走行機体1の後端側の車高が低くなり、走行機体1が後下がりに傾斜することは云うまでもない。
【0077】
図17は、コンバインの車高(走行機体1の対地高さ)を縦軸とし、コンバイン機体の前後方向の傾斜角度(走行機体1の前後傾斜角度)を横軸とし、走行機体1の対地高さ(左右方向の傾斜制御)と走行機体1の前後傾斜角度(前後方向の傾斜制御)の関係(姿勢制御動作範囲)を示す線図である。図17に太い実線で示した範囲(変形6角形状の枠)内で、前後傾斜センサ381の検出結果等に基づき、車高調節油圧シリンダ38と前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させ、車高調節油圧シリンダ38の左右方向の傾斜制御動作を所定範囲に維持して、前後傾斜用油圧シリンダ177の前後方向の傾斜制御が実行されるように構成している。
【0078】
例えば、車高調節油圧シリンダ38の左右方向の傾斜制御動作のうち、最高車高Dに対して約60パーセント(約3分の1)の車高Cと、最高車高Dに対して約10パーセント(約10分の1)の車高Aの間で、走行機体1の前後傾斜角度が0度から最大前傾角度F(例えば約5度)まで、前後傾斜用油圧シリンダ177の前方向の傾斜制御が実行され、走行機体1が前傾姿勢(前下り傾斜姿勢)にて支持されるように構成している。最高車高Dのときには、最大前傾角度Fに対して約60パーセント(約3分の1)の前傾角度F1以下の範囲で、前後傾斜用油圧シリンダ177の前方向の傾斜制御(前傾作動)が実行される。また、車高A以下のとき、又は車高C以上のときには、最大前傾角度F以下の範囲で、前後傾斜用油圧シリンダ177の前方向の傾斜制御が実行される。車高A以下の前傾作動規制エリアE1(斜線表示範囲)と、車高C以上の前傾作動規制エリアE3(斜線表示範囲)が形成される。車高C以下のとき、又は車高A以上のときには、走行機体1の前後傾斜角度が0度から最大前傾角度F(例えば約5度)の範囲で、前後傾斜用油圧シリンダ177の前方向の傾斜制御が実行される。
【0079】
即ち、最高車高Dのときには、最大前傾角度Fに対して約60パーセント(約3分の1)の前傾角度F1以下に走行機体1の前傾作動が規制される。車高C以上の車高が高い状態では、最大前傾角度F以下に走行機体1の前傾作動が規制され、刈取装置3の前端側が低く支持されるのを防止できる。その結果、昇降用油圧シリンダ4によって刈取装置3が非作業位置(高位置)に上昇されている場合であっても、走行機体1を適正に前傾作動できる。例えば、圃場への出入やトラック荷台への積み降ろし等の作業において、走行機体1が大きく前下り傾斜した姿勢で移動しても、田面や路面に刈取装置3の前端側が衝突するのを防止できる。
【0080】
一方、図17に示す如く、車高調節油圧シリンダ38の左右方向の傾斜制御動作のうち、車高が最高車高Dと、最高車高Dに対して約25パーセント(約4分の1)の車高Bとの間で、走行機体1の前後傾斜角度が0度から最大後傾角度R(例えば約3度)まで、前後傾斜用油圧シリンダ177の後方向の傾斜制御(後傾作動)が実行され、走行機体1が後傾姿勢(後下り傾斜姿勢)にて支持されるように構成している。また、車高B以下のときには、最大後傾角度R以下の範囲で前後傾斜用油圧シリンダ177の後方向の傾斜制御が実行される。車高B以下の後傾作動規制エリアE2(斜線表示範囲)が形成される。即ち、車高B(最高車高Dの約25パーセント)以上を維持しながら、最大後傾角度Rまで走行機体1を後傾できるから、昇降用油圧シリンダ4によって刈取装置3が非作業位置(高位置)に上昇されていても、走行機体1をスムーズに後傾作動させて、刈取装置3をさらに上昇でき、障害物に対して刈取装置3を上方に俊敏に回避させることができる。
【0081】
また、車高C以上の高い車高のとき、又は車高A又は車高B以下の低い車高のとき、前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させる前に車高調節油圧シリンダ38が作動して、車高調節油圧シリンダ38の車高上昇(左右方向の傾斜)制御動作を優先して、走行機体1の車高を所定車高以上に維持してから、前後傾斜用油圧シリンダ177の前後方向の傾斜制御が実行できる。その結果、圃場又は畦等の土中に刈取装置3の前部が突入するのを防止できる。なお、最高車高Dの約25パーセント(約4分の1)以下の低い車高(車高A又は車高B以下)のときには、走行機体1の前傾作動が規制される車高に比べ、走行機体1の後傾作動が規制される車高が高くなる(車高A<車高B)。最大後傾角度R(例えば約3度)と、最大前傾角度Fに対して約60パーセント(約3分の1)の前傾角度F1とを略等しく形成している。即ち、最大前傾角度Fに対して約60パーセントの傾斜角度の大きさに最大後傾角度Rを形成している。
【0082】
図17に示す如く、最大後傾角度Rに対して最大前傾角度Fを大きくすることによって、超湿田で走行クローラ2が大きく沈下し、走行機体1の車高を高くして刈取作業をしているときに、走行機体1の車高を下げて走行抵抗を増大させることなく、又は刈取装置3を下降させて刈刃装置222等を土中に突入させることなく、走行機体1を前傾させることによって、未刈り穀稈の株元を所定高さで刈刃装置222によって切断できる。
【0083】
図1、図9乃至図16に示す如く、左右の走行部としての走行クローラ2を有する走行機体1と、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を修正するローリングアクチュエータとしての車高調節油圧シリンダ38と、走行機体の前後方向の傾斜姿勢を修正するピッチングアクチュエータとしての前後傾斜用油圧シリンダ177を備えた走行車両において、車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ177を、平面視で一列状に配置しているから、前後傾斜用油圧シリンダ177の設置長さ(連結支持長さ)を従来よりも短縮でき、前後傾斜用油圧シリンダ177に作用する伸縮方向以外のこじれ力を低減でき、耐久性を向上できる。また、左右走行クローラ2間の走行機体1の下面側空間を広く形成でき、走行機体1の下面側に泥土が溜まるのを低減でき、湿田作業性等を向上できる。また、走行機体1の上面側構造又は前後傾斜用油圧シリンダ177の支持位置が互いに制限されるのを防止でき、走行機体1等を簡単に構成できる。
【0084】
図9乃至図16に示す如く、車高調節油圧シリンダ38と、前後傾斜用油圧シリンダ177を、側面視で一列状に配置したものであるから、前後傾斜用油圧シリンダ177の設置長さ(連結支持長さ)を従来よりも短縮でき、前後傾斜用油圧シリンダ177に作用する伸縮方向以外のこじれ力を低減でき、耐久性を向上できる。また、左右走行クローラ2間の走行機体1の下面側空間を広く形成でき、走行機体1の下面側に泥土が溜まるのを低減でき、湿田作業性等を向上できる。また、走行機体1の上面側構造又は前後傾斜用油圧シリンダ177の支持位置が互いに制限されるのを防止でき、走行機体1等を簡単に構成できる。
【0085】
図9乃至図16に示す如く、車高調節油圧シリンダ38に連結する左右傾動アームとしての上側前部ローリングアーム31及び上側後部ローリングアーム32と、前後傾斜用油圧シリンダ177に連結する前後傾動アームとしてのピッチングアーム176を、同一支点軸29,30上に配置しているから、前後傾斜用油圧シリンダ177等の前後傾斜機構の有無に関係なく、同一仕様の走行機体1を使用できる。走行機体1等を低コストに構成できる。
【0086】
図9乃至図16に示す如く、車高調節油圧シリンダ38によって作動させる平行リンク状の前側アームとしての下側前部ローリングアーム33及び後側アームとしての下側後部ローリングアーム34を設けた構造であって、下側前部ローリングアーム33又は下側後部ローリングアーム34のいずれか一方にピッチングアーム176を連結しているから、左右傾斜姿勢の走行機体1の車高を維持しながら、走行機体1を前後傾動できる。走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を修正する車高調節油圧シリンダ38の制御性能を維持でき、且つ走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を修正する前後傾斜用油圧シリンダ177の制御性能を向上できる。
【0087】
図1、図9乃至図16に示す如く、左右の走行部としての走行クローラ2を有する走行機体1と、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を修正するローリングアクチュエータとしての車高調節油圧シリンダ38と、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を修正するピッチングアクチュエータとしての前後傾斜用油圧シリンダ177を備え、左右のトラックフレーム21に左右のリンク機構R1,P1を介して走行機体1を昇降可能に搭載し、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢と、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を修正可能に構成した走行車両において、リンク機構R1,P1は、平行リンク状の前側アームとしての下側前部ローリングアーム33及び後側アームとしての下側後部ローリングアーム34を有する構造であって、トラックフレーム21にピッチングリンクとしての従動リンク体175を介して下側前部ローリングアーム33又は下側後部ローリングアーム34のいずれか一方を連結している。
【0088】
したがって、平行リンク状の下側前部ローリングアーム33及び下側後部ローリングアーム34の動作(車高調節油圧シリンダ38制御)によって、前記走行機体1を左右傾動できるものでありながら、下側前部ローリングアーム33又は下側後部ローリングアーム34のいずれか一方と従動リンク体175を介してトラックフレーム21の前側又は後側を昇降動させて(前後傾斜用油圧シリンダ177制御)、走行機体1を前後傾動できる。左右傾斜姿勢の走行機体1の車高を維持した状態(車高調節油圧シリンダ38制御を停止した状態)で、走行機体1を前後傾動できる。走行機体1とトラックフレーム21の連結構造を簡単に構成でき、又は前後傾斜用油圧シリンダ177の制御を簡単に実行できる。走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を変更させるピッチング構造を低コストに組付けることができ、又は走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を変更させるピッチング制御機能を向上できる。
【0089】
図9乃至図16に示す如く、車高調節油圧シリンダ38に下側前部ローリングアーム33及び下側後部ローリングアーム34の両方を連結し、従動リンク体175に連結する下側後部ローリングアーム34又は下側前部ローリングアーム33のいずれか一方に前後傾斜用油圧シリンダ177を連結している。したがって、車高調節油圧シリンダ38に近接させて前後傾斜用油圧シリンダ177をコンパクトに組付けることができる。また、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を変更させるローリング機能が複雑化するのを阻止できるものでありながら、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を変更させるピッチング機能を向上できる。
【0090】
図9乃至図16に示す如く、走行機体1の前部にミッションケース88を配置する構造であって、下側後部ローリングアーム34に前後傾斜用油圧シリンダ177を連結し、トラックフレーム21に従動リンク体175を介して下側後部ローリングアーム34を連結している。したがって、ミッションケース88の支持部にトラックフレーム21の前部を近接させて設置することによって、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を変更させるときに、走行機体1の下面側と走行クローラ2の上面側が干渉するのを防止できる。トラックフレーム21の中間乃至後部よりの位置で略同一高さ位置に一列状に、車高調節油圧シリンダ38に近接させて前後傾斜用油圧シリンダ177をコンパクトに組付けることができる。例えば、走行機体1の前後方向の傾斜変更範囲の確保、又は走行機体1とトラックフレーム21の連結構造の簡略化等を簡単に図ることができる。
【0091】
図9乃至図16に示す如く、車高調節油圧シリンダ38に連結する上側後部ローリングアーム32と、前後傾斜用油圧シリンダ177に連結するピッチングアーム176を、同一支点軸上に配置させる一方、車高調節油圧シリンダ38に連結する上側後部ローリングアーム32に前後傾斜用油圧シリンダ177を設け、車高調節油圧シリンダ38と前後傾斜用油圧シリンダ177を前後に向けて一列に配置している。したがって、前後傾斜用油圧シリンダ177を設ける仕様と、前後傾斜用油圧シリンダ177を設けない仕様とに、同一仕様の走行機体1を簡単に共用できる。また、走行機体1の下面側のうち、左右の走行クローラ2間の空間を広く形成して、走行クローラ2が大きく沈下しやすい湿田等の作業性、又は旋回走行によって田面等の泥土が大きく盛り上がりやすい圃場枕地等の走破性を向上できる。
【0092】
図9乃至図15、図22乃至図24に示す如く、走行シャーシ1aに前側最下げストッパ185を固着する。下側前部ローリングアーム33の上面側に前側最下げストッパ185の一端側を延長させる。走行機体1の前側車高が最も低い状態(図9又は図22の状態)、即ち、走行機体1の前側とトラックフレーム21が最も接近したときに、下側前部ローリングアーム33の上面に前側最下げストッパ185の下面が当接して、走行機体1の前側が最下げ位置に支持される。下側前部ローリングアーム33と前側最下げストッパ185の当接によって、走行機体1の前側下面に走行クローラ2の前側上面が干渉するのを防止している。
【0093】
また、後側軸受体28の下面に後側最下げストッパ186を固着する。トラックフレーム21に受止め体187を固着する。走行機体1の後側車高が最も低い状態(図9又は図22の状態)、即ち、走行機体1の後側とトラックフレーム21が最も接近したときに、受止め体187の上面に後側最下げストッパ186の下面が当接して、走行機体1の後側が最下げ位置に支持される。受止め体187と後側最下げストッパ186の当接によって、走行機体1の後側下面に走行クローラ2の後側上面が干渉するのを防止している。
【0094】
次に、図18を参照しながら、コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御と、前後方向の傾斜制御と、刈取装置3の昇降制御について説明する。図18は、コンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御手段、及び前後方向の傾斜制御手段、及び刈取装置3の昇降制御手段の機能ブロック図であり、マイクロコンピュータ等によって形成した作業コントローラ371を備える。作業コントローラ371は、制御プログラムを記憶したROMと各種データを記憶したRAMとを有する。
【0095】
図18に示す如く、作業コントローラ371には、入力系の各種センサ及びスイッチ類、即ち、刈取装置3によって刈取った刈取穀稈を検出する作物センサ372と、刈取装置3の作動を検出する作業スイッチ373と、走行機体1の左右方向の傾斜角度を検出する振子式の左右傾斜センサ374と、走行機体1と左側のトラックフレーム21との相対間隔(車高)を検出するポテンショメータ形の左車高センサ375と、走行機体1と右側のトラックフレーム21との相対間隔(車高)を検出するポテンショメータ形の右車高センサ376と、走行機体1の左右方向の傾斜角度の基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の左右傾斜設定器377が接続されている。
【0096】
また、作業コントローラ371には、出力系の各種電磁油圧バルブ、即ち、左傾電磁弁261と、右傾電磁弁262が接続されている。この構成により、左右傾斜センサ374の検出値と、左車高センサ375の検出値と、右車高センサ376の検出値とに基づき、左傾電磁弁261又は右傾電磁弁262を切換えて、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させ、走行機体1の左右方向の傾斜を修正して、走行機体1が略水平になるように自動制御する。
【0097】
さらに、図18に示す如く、作業コントローラ371には、走行機体1の前後方向の傾斜角度を検出する振子式の前後傾斜センサ381と、走行機体1の後部とトラックフレーム21の後端側との相対間隔(トラックフレーム21の前後方向の対本機傾斜角度)を検出するポテンショメータ形の本機傾斜センサ382と、走行機体1の前後方向の傾斜角度の基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の前後傾斜設定器383が接続されている。
【0098】
また、作業コントローラ371には、前後傾動電磁弁266が接続されている。この構成により、前後傾斜センサ381の検出値と、本機傾斜センサ382の検出値と、前後傾斜設定器383の設定値とに基づき、前後傾動電磁弁266を切換えて、前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させ、走行機体1の前後方向の傾斜を修正して、走行機体1が略水平になるように自動制御する。
【0099】
一方、図18に示す如く、作業コントローラ371には、走行クローラ2の回転速度(車速)を検出する車速センサ385と、刈取装置3の対地高さを検出するポテンショメータ形の刈取高さセンサ386と、刈取装置3の対地高さの基準値を初期設定する手動ダイヤル切換式ポテンショメータ形の刈取高さ設定器387が接続されている。
【0100】
また、作業コントローラ371には、刈取昇降電磁弁260が接続されている。この構成により、車速センサ385の検出値と、刈取高さセンサ386の検出値と、刈取高さ設定器387の設定値とに基づき、刈取昇降電磁弁260を切換えて、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させ、刈取装置3の対地高さを修正して、刈取装置3の穀稈刈取高さが略一定になるように自動制御する。
【0101】
次に、図17に示す姿勢制御説明図、図18に示す機能ブロック図、図19乃至図21に示すフローチャートを参照しながら、刈取装置3の穀稈刈取高さ制御態様、及びコンバイン(走行機体1)の左右方向及び前後方向の傾斜制御態様を説明する。図19のフローチャートに示す如く、エンジン20が始動された場合、作物センサ372値、左右傾斜センサ374値、左車高センサ375値、右車高センサ376値、左右傾斜設定器377値、前後傾斜センサ381値、本機傾斜センサ382値、前後傾斜設定器383値、車速センサ385値、刈取高さセンサ386値、刈取高さ設定器387値が読込まれる。作業スイッチ373がオンの刈取作業中、図20のフローチャートに示す刈取高さ制御が実行される。また、作業スイッチ373がオン又はオフのいずれであっても、図21のフローチャートに示す傾斜制御が実行される。
【0102】
図20のフローチャートに示す如く、作業スイッチ373がオンの刈取作業中に、作物センサ372がオンになっていると、車速センサ385値と、刈取高さセンサ3386値と、刈取高さ設定器87値に基づき、刈取装置3の穀稈刈取高さが低いと判断された場合、刈取昇降電磁弁260が切換り、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させて刈取装置3を上昇制御して、刈取装置3の対地高さを修正する。一方、刈取装置3の穀稈刈取高さが高いと判断された場合、刈取昇降電磁弁260が切換り、刈取上昇用油圧シリンダ4を作動させて刈取装置3を下降制御して、刈取装置3の対地高さを修正する。図20の刈取高さ制御によって、刈取高さ設定器387によって設定された刈取装置3の穀稈刈取高さを自動的に維持できる。なお、刈取高さ設定器87がオペレータによって操作された場合、刈取高さ設定器387によって設定された穀稈刈取高さに刈取装置3が手動操作にて支持される。
【0103】
図21のフローチャートに示す如く、左右傾斜センサ374値と、左車高センサ375値と、右車高センサ376値と、左右傾斜設定器377値に基づき、走行機体1が左側に傾斜していると判断された場合は、左傾電磁弁261又は右傾電磁弁262が切換り、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の左側を上昇させるか、又は走行機体1の右側を下降させる。一方、走行機体1が右側に傾斜していると判断された場合は、左傾電磁弁261又は右傾電磁弁262が切換り、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の右側を上昇させるか、又は走行機体1の左側を下降させる。図21のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御によって、走行機体1の左右方向の傾斜角度が自動的に修正される。左右傾斜設定器377値に基づき、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を維持できる。なお、左右傾斜設定器377がオペレータによって操作された場合、左右傾斜設定器377によって設定された左右傾斜角度姿勢(対地水平姿勢)に走行機体1が手動操作にて支持される。
【0104】
また、図21のフローチャートに示す如く、前後傾斜センサ381値と、本機傾斜センサ382値と、前後傾斜設定器383値に基づき、走行機体1が前側方に下り傾斜している前傾姿勢と判断された場合は、図17の車高範囲(前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲)内のときには、前後傾動電磁弁266が切換り、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、走行機体1の後端側を下降させる。一方、図17の車高範囲(前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲)内ではないとき、即ち、図17の車高範囲外のときには、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の右側又は左側を昇降させて、図17の車高範囲(前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲)内に走行機体1の車高を変更した後、前後傾動電磁弁266が切換り、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、走行機体1の後端側を下降させる。その結果、図21のコンバイン(走行機体1)の後傾斜制御によって、走行機体1の後傾角度が自動的に修正される。前後傾斜設定器383値に基づき、走行機体1の後傾姿勢(対地水平姿勢)を維持できる。
【0105】
さらに、走行機体1が後側方に下り傾斜している後傾姿勢と判断された場合は、図17の車高範囲(前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲)内のときには、前後傾動電磁弁266が切換り、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、走行機体1の後端側を上昇させる。一方、図17の車高範囲(前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲)内ではないとき、即ち、図17の車高範囲外のときには、左車高調節油圧シリンダ38又は右車高調節油圧シリンダ38を作動させて、走行機体1の右側又は左側を上昇させて、図17の車高範囲(前後傾斜角度の修正が可能な車高範囲)内に走行機体1の車高を変更した後、前後傾動電磁弁266が切換り、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動させて、走行機体1の後端側を上昇させる。即ち、図21のコンバイン(走行機体1)の前後方向の傾斜制御によって、走行機体1の前後方向の傾斜角度が自動的に修正される。前後傾斜設定器383値に基づき、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を維持できる。なお、前後傾斜設定器383がオペレータによって操作された場合、前後傾斜設定器383によって設定された前後傾斜角度姿勢に走行機体1が手動操作にて支持される。
【0106】
穀稈の刈取作業中は、図21のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御又は前後方向の傾斜制御に優先して、図20の刈取高さ制御が実行されることによって、分草体225が田面の泥土に突込むのを防止できる。図20の刈取高さ制御が実行された後に、図21のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御又は前後方向の傾斜制御が実行されることによって、圃場の枕地等の乱れた田面の泥土に分草体225が突込むのを防止できる。図21のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御又は前後方向の傾斜制御が実行されることによって、走行機体1の対地高さが高くなった場合でも(図9乃至図16参照)、テンションローラ23と最後部のトラックローラ24によって支持された走行クローラ2の対地迎え角が適正大きさに維持され、走行クローラ2の走破性能が保持される。
【0107】
また、図21のコンバイン(走行機体1)の前後方向の傾斜制御に優先して、図21のコンバイン(走行機体1)の左右方向の傾斜制御が実行されることによって、刈取装置3の左側又は右側の分草体225の対地高さを所定以上に維持しながら、コンバイン(走行機体1)の前後方向の傾斜制御を実行できる。その結果、走行機体1の対地高さを高くした状態で、支持分草体225の対地高さを低く支持する湿田における刈取作業のときにも、前後方向の傾斜制御によって、刈取装置3の分草体225又は刈刃装置222等が田面の泥土中に突込むのを防止できるものでありながら、未刈り穀稈の株元を低い位置で切断でき、刈り後の株の長さを短く形成できる。
【0108】
図17、図18、図21に示す如く、走行部としての走行クローラ2を有する走行機体1と、走行機体1の左右方向の傾斜姿勢を修正するローリングアクチュエータとしての車高調節油圧シリンダ38と、走行機体1の前後方向の傾斜姿勢を修正するピッチングアクチュエータとしての前後傾斜用油圧シリンダ177を備えた走行車両において、走行機体1が最下げ位置に支持されているときに、車高調節油圧シリンダ38を車高上げ動作させて、走行機体1を所定高さ位置に支持した状態で、前後傾斜用油圧シリンダ177を前傾動作又は後傾動作させるように構成している。したがって、従来構造に比べ、走行機体1と走行クローラ2(トラックフレーム等)の連結構造を簡単に構成できる。また、走行クローラ2(トラックフレームに装着した走行クローラ等)と、走行機体1とが干渉するのを簡単に防止できる。例えば車高調節油圧シリンダ38の車高調節範囲の下限を設定する最下げストッパ185,186等に規制されることなく、走行機体1を前方傾動できる。また、前後傾斜用油圧シリンダ177を後傾作動させるときに、走行機体1に前記走行クローラ2等が干渉するのを防止でき、走行機体1を後傾姿勢にスムーズに作動できる。
【0109】
図17、図18、図21に示す如く、走行機体1の左右方向の傾斜を検出する左右傾斜センサ374と、走行機体の左対地高さ及び右対地高さを検出する左車高センサ375及び右車高センサ376と、走行機体1の前後方向の傾斜を検出する前後傾斜センサ381を備え、車高調節油圧シリンダ38を車高上げ又は車高下げ動作させて、走行機体1の左右方向の傾斜を変更可能に構成した構造であって、左車高センサ375及び右車高センサ376の検出結果と前後傾斜センサ381の検出結果に基づいて、前後傾斜用油圧シリンダ177を前後傾斜動作可能に構成している。したがって、前後傾斜用油圧シリンダ177を前傾作動又は後傾作動させるときに、走行機体1に走行クローラ2等が干渉するのを防止でき、走行機体1をスムーズに前後傾動できる。
【0110】
図17、図18、図21に示す如く、走行機体1が最上げ位置に支持されているときに、前後傾斜用油圧シリンダ177を前傾動作可能に構成している。したがって、走行機体1を最上げ位置に維持しながら、走行機体1を所定の前傾姿勢に簡単に変更できる。即ち、車高を下げることなく、走行機体1を前傾姿勢にスムーズに作動できる。
【0111】
図17、図18、図21に示す如く、走行機体1が最上げ位置に支持されているときに、車高調節油圧シリンダ38を車高下げ動作させて、走行機体1を所定高さ位置に支持した状態で、前後傾斜用油圧シリンダ177を後傾動作可能に構成している。したがって、前後傾斜用油圧シリンダ177を後傾作動させるときに、走行機体1に前記走行クローラ2等が干渉するのを防止でき、走行機体1を後傾姿勢にスムーズに作動できる。
【符号の説明】
【0112】
1 走行機体
2 走行クローラ(走行部)
29 前部ローリング支点軸
30 後部ローリング支点軸
31 上側前部ローリングアーム(左右傾動アーム)
32 上側後部ローリングアーム(左右傾動アーム)
33 下側前部ローリングアーム(前側アーム)
34 下側後部ローリングアーム(後側アーム)
38 車高調節油圧シリンダ(ローリングアクチュエータ)
176 ピッチングアーム(前後傾動アーム)
177 前後傾斜用油圧シリンダ(ピッチングアクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の走行部を有する走行機体と、前記走行機体の左右方向の傾斜姿勢を修正するローリングアクチュエータと、前記走行機体の前後方向の傾斜姿勢を修正するピッチングアクチュエータを備えた走行車両において、
前記ローリングアクチュエータと、前記ピッチングアクチュエータを、平面視で一列状に配置したことを特徴とする走行車両。
【請求項2】
前記ローリングアクチュエータと、前記ピッチングアクチュエータを、側面視で一列状に配置したことを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
【請求項3】
前記ローリングアクチュエータに連結する左右傾動アームと、前記ピッチングアクチュエータに連結する前後傾動アームを、同一支点軸上に配置したことを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
【請求項4】
前記ローリングアクチュエータによって作動させる平行リンク状の前側アーム及び後側アームを設けた構造であって、前記前側アーム又は後側アームのいずれか一方に前記前後傾動アームを連結したことを特徴とする請求項3に記載の走行車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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