説明

走行車

【構成】 スタッカークレーンのマスト12に沿ってケージ22の昇降用のチェーンを配置すると共に、マストに制振装置34を設けて、制振板50とレール32との間にチェーン24を挟み込む。制振装置34では制振板50を時計回りにも反時計回りにも回動自在にして、ケージ22が制振装置34を越えて昇降できるようにする。
【効果】 ケージの昇降用のチェーンを静音化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はスタッカークレーン等の走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
スタッカークレーンでは、係員による点検用にマストに沿ってケージを昇降させる(特許文献1)。マストの上部から下部へ向けて、マストに沿って錘で張力を加えたチェーンを配置し、ケージのスプロケットにチェーンを巻き掛け、スプロケットをケージに内蔵のモータで駆動して、ケージを昇降させる。ところでスタッカークレーンの走行速度を増すと、チェーンの振動が激しくなり、マストに衝突して騒音が発生する。このためチェーンの振動による騒音が、スタッカークレーンの高速走行を妨げる要因となる。
【特許文献1】特開平7−61522
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、チェーンの振動を抑制して、走行車を静音化することにある。
請求項2,3の発明での追加の課題は、簡単な機構で昇降体の昇降を妨げずに、チェーンの振動を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、支柱に沿ってチェーンを上下に配置すると共に、水平方向に走行自在な走行車において、
前記支柱に、チェーンを支柱との間に挟み込むように制振部材を設けたことを特徴とする。
走行車と支柱は例えばスタッカークレーンとそのマストとするが、支柱に沿って昇降体を昇降させながら、水平方向に走行する走行車で有ればよい。昇降体は、チェーンにより昇降するものであればよい。
【0005】
好ましくは、前記チェーンに沿って昇降体が昇降するように構成すると共に、前記制振部材を、鉛直面内で回動自在に前記支柱に取り付けることにより、制振部材が前記昇降体と接触すると、制振部材が昇降体に押されて回動し、前記チェーンから離れた位置へ退避させる。
特に好ましくは、前記制振部材の支柱への取付では、支柱に取り付けたベースに、鉛直面内で時計回りもしくは反時計回りに回動する第1の蝶番の第1の回動板を取り付け、該第1の蝶番の第2の回動板に、鉛直面内で第1の蝶番と逆向きに回動する第2の蝶番の第1の回動板を取り付け、該第2の蝶番の第2の回動板に制振部材を取り付けると共に、制振部材が前記チェーンを支柱との間に挟み込む位置へ、前記第2の蝶番の第2の回動板を付勢する弾性体を設ける。
【発明の効果】
【0006】
この発明では、チェーンは支柱と制振部材の間に挟み込まれるので、チェーンの振幅を制限し、また制振部材との接触でチェーンの振動エネルギーを吸収する。このためチェーンの振動を抑制して、走行車の高速走行を容易にすることができる。
【0007】
ここで制振部材が昇降体により押されて回動して退避するようにすると、簡単な機構で制振部材が昇降体の昇降を妨げないようにできる。なおこれ以外に、昇降体の位置を検出する機構と、制振部材を例えば水平方向に待避させる機構を設けて、昇降体が接近すると制振部材を退避させることも可能である。ただしこのような機構は大がかりで、好ましくない。
さらに、第1の蝶番と第2の蝶番を用いると、昇降体が上昇して接触するときと、下降して接触するときとで、制振部材の退避方向を逆向きにできる。そして昇降体が通過すると、弾性体により制振部材はチェーンを支柱との間に挟み込んで制振する位置へ復帰する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0009】
図1〜図7に、実施例のスタッカークレーン2とその変形とを示す。図1〜図6に実施例を示し、3は下部のレール、4は上部のレールで、5はスタッカークレーン2の下部の車輪、6は上部の車輪である。また8は下部の台車、10は上部の台車で、12,13は例えば一対のマストで、2本のマスト12,13に代えて1本のマストを用いても良く、マストの本数は任意である。14は昇降台で、マスト12,13に沿って昇降し、15はスライドフォークである。例えばマスト13に沿って巻き取りドラム16を設け、ロープ17などの吊持材により昇降台14を昇降させ、18は昇降モータである。20は走行モータで、車輪5などを介してスタッカークレーン2を水平面内で走行させる。水平面内という場合、例えば水平面から±5度程度シフトしているものを含むものとする。
【0010】
一方のマストに沿って、例えばマスト12に沿って、ケージ22を昇降させる。ケージ22に係員が乗り込んで、スタッカークレーン2の点検や、図示しないラックなどの点検を行う。なおマスト12,13の高さは例えば30mあるいは50mなどで、梯子によってマスト12,13の上部まで係員が昇ることは困難である。マスト12の上部から下部に向けてチェーン24を垂らし、ケージ22に設けたスプロケット26〜28にチェーン24を巻き掛けて昇降する。そしてチェーン24の下端に錘30を設けて、チェーン24に張力を加える。なおチェーン24に張力を加える手法自体は任意である。32はレールで、ケージ22はレール32に沿って昇降する。
【0011】
マスト12に沿って1箇所、好ましくは複数箇所に制振装置34を設けて、マスト12と制振装置34の制振板の間にチェーン24を挟み込んで、チェーン24の振幅を制限すると共に、制振板との接触でチェーンの振動エネルギーをダンピングし、チェーン24の振動を抑制する。これによって、スタッカークレーン2が高速走行した際のチェーン24の振動を抑制し、スタッカークレーン2を静音化する。
【0012】
図2〜図6に制振装置34とその周囲の構造を示す。35,36は昇降台14に設けたローラである。ケージ22にはブラケット38を設け、例えば一対のガイドローラ39,39を設けて、マスト12に取り付けたレール32によって、ガイドローラ39,39をガイドする。チェーン24は例えば一対設けて、レール32から見てケージ22寄りに配置する。チェーン24は1本のみ設けても、あるいは3本以上設けても良い。40はケージ22に設けた昇降モータで、スプロケット28を駆動して、ケージ22を昇降させる。
【0013】
41は制振装置のベースで、マスト12に水平に取り付けるが、レール32にベース41を取り付けても良い。42は第1の蝶番で、43は第2の蝶番、44〜47は蝶番42,43に設けた回動板で、48,49はコイルバネで、板バネなどの弾性体でも良い。コイルバネ48は回動板45を回動板44側へ引き寄せて、第1の蝶番42を閉じる向きに付勢し、コイルバネ49は回動板47を回動板45側へ引き寄せて、第2の蝶番43を閉じる向きに付勢する。なお回動板44,47間に、回動板47を回動板44側へ引き寄せる向きに付勢する弾性体を設けても良い。第2の蝶番43の第2の回動板47に、制振板50の基部プレート51を取り付ける。制振板50はウレタンゴムなどの弾性体や、鋼板にウレタンゴムなどの弾性体を被覆した材料から成る。図2の実線で、制振板50がケージ22により下方に押されて退避して行く姿を示す。なおケージ22との接触が断たれると、コイルバネ48,49により制振板50は水平な向きに復帰し、その姿を図2の鎖線で示す。
【0014】
制振装置34の構造と作用とを示す。ベース41は水平で、例えば支持体52を介して、第1の蝶番42の第1の回動板44が取り付けられ、蝶番42の第2の回動板45に、第2の蝶番43の第1の回動板46が取り付けられている。そして回動板44,45間にコイルバネ48が取り付けられ、蝶番43はベース41に固定されずに、蝶番42を軸に鉛直面内で回動自在である。蝶番43の第2の回動板47に、制振板50の基部プレート51を取り付け、回動板45,47の間にコイルバネ49を取り付ける。コイルバネ48,49により、ケージ22と接触していない場合、回動板47や制振板50を水平な位置に復帰する。
【0015】
ケージ22と接触していない場合、図4に示すように回動板47は水平な向きで安定しており、ここでケージ22が下から上向きに制振板50に接触すると、図5のように制振板50と連結した回動板47が押し上げられる。この結果、制振板50はケージ22と接触して上側に退避し、ケージ22が通過すると、コイルバネ48により図4の状態に戻る。またケージ22が制振板50を上から下向きに押圧すると、回動板47は図6のように回動し、制振板50をケージ22に対して退避させ、ケージ22が通過すると、コイルバネ49により図4の状態に戻る。
【0016】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 制振板50によりチェーン24をレール32との間に挟み込み、チェーン24の振動を制振板50で吸収するので、スタッカークレーンを静音化できる。
(2) 制振装置34をマスト12の高さ方向に沿って複数箇所に設け、効率的に制振する。
(3) 制振板50はケージ22と接触すると鉛直面内で回動して退避し、ケージ22の通過が終わると、水平な向きに復帰する。このため制振板50は、ケージ22の昇降を妨げない。
(4) 一対の蝶番42,43を設けて、一方で時計回りの回動を、他方で反時計回りの回動をさせることにより、ケージの上昇と下降のいずれにも、制振板50を退避させることができる。
(5) コイルバネ46などの弾性体により、回動板47を水平な向きに付勢することにより、ケージ22が通過すると、制振板50を水平な向きに復帰させることができる。
【0017】
図7に変形例の制振装置70を示し、特に指摘した点以外は、図1〜図6の実施例と同様である。78は水平なベースで、マスト12などに取り付け、72はピンで、ケーシング73に対して回動し、ピン72の例えば両端にコイルバネ74を取り付け、コイルバネ74の他端を取付板56に固定する。さらにケーシング73はベース78に固定する。
【0018】
図7の変形例では、制振板50がケージ22により押し上げられると、ピン72は例えば時計回りに回動して、ケージ22から退避する。逆に制振板50がケージにより下向きに押し下げられると、ピン72は反時計回りに回動して、ケージ22から退避する。ケージの通過が終わると、コイルバネ74によりピン72が回動して、制振板50が水平な位置に戻るようにする。図7では、ケーシング73を固定してピン72を回動させたが、ケーシングを回転させてピンを固定し、基部プレート51をケーシングに取り付けても良い。さらに一対のコイルバネ74,74ではなく、1個のコイルバネを用いてもよい。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例のスタッカークレーンの要部側面図
【図2】実施例のスタッカークレーンの要部拡大平面図
【図3】実施例のスタッカークレーンでの制振装置の要部拡大平面図
【図4】図3の制振装置の通常時の状態を示す要部部分側面図
【図5】図3の制振装置で、制振板が上側に退避した時の状態を示す要部部分側面図
【図6】図3の制振装置で、制振板が下側に退避した時の状態を示す要部部分側面図
【図7】変形例の制振装置の要部拡大平面図
【符号の説明】
【0020】
2 スタッカークレーン
3,4 レール
5,6 車輪
8,10 台車
12,13 マスト
14 昇降台
15 スライドフォーク
16 巻き取りドラム
17 ロープ
18 昇降モータ
20 走行モータ
22 ケージ
24 チェーン
26〜28 スプロケット
30 錘
32 レール
34,70 制振装置
35,36 ローラ
38 ブラケット
39 ガイドローラ
40 昇降モータ
41,78 ベース
42,43 蝶番
44〜47 回動板
48,49 コイルバネ
50 制振板
51 基部プレート
52 支持体
72 ピン
73 ケーシング
74 コイルバネ
76 取付板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱に沿ってチェーンを上下に配置すると共に、水平方向に走行自在な走行車において、
前記支柱に、チェーンを支柱との間に挟み込むように制振部材を設けたことを特徴とする走行車。
【請求項2】
前記チェーンに沿って昇降体が昇降するように構成すると共に、前記制振部材を、鉛直面内で回動自在に前記支柱に取り付けることにより、制振部材が前記昇降体と接触すると、制振部材が昇降体に押されて回動し、前記チェーンから離れた位置へ退避するようにしたことを特徴とする、請求項1の走行車。
【請求項3】
前記制振部材の支柱への取付では、支柱に取り付けたベースに、鉛直面内で時計回りもしくは反時計回りに回動する第1の蝶番の第1の回動板を取り付け、該第1の蝶番の第2の回動板に、鉛直面内で第1の蝶番と逆向きに回動する第2の蝶番の第1の回動板を取り付け、該第2の蝶番の第2の回動板に制振部材を取り付けると共に、制振部材が前記チェーンを支柱との間に挟み込む位置へ、前記第2の蝶番の第2の回動板を付勢する弾性体を設けたことを特徴とする、請求項2の走行車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−35394(P2009−35394A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202052(P2007−202052)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】