説明

起伏式防波装置

【課題】扉体(ゲート)のヒンジ金具等を不要にして(ヒンジレス式)、部品点数が少ない簡単な支持構造とするとともに、押し波にも引き波にも対応可能な起伏式防波装置を提供する。
【解決手段】倒伏位置Dと起立位置U1,U2とに揺動可能な起伏式防波装置である。扉体1は、倒伏位置Dにおいて、押し波方向aの波力を受ける一端部1aと引き波方向bの波力を受ける他端部1bとから水底面2に接触する下面1dとの間が、側面視で略円弧状若しくは略傾斜状に形成されている。押し波方向aの波力で偶力が発生すると、扉体1は転動した後に第1の固定ベルト4の連結部分で回転し、第1の保持部材(引き止めベルト)6で、押し波方向aの波力に抗して起立位置U1に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起伏式防波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防波提上に、略水平面に沿い歩廊として使用可能な倒伏姿勢と、上方に突出して波浪を防ぐ起立姿勢との間で、防波堤上に固定した回転支持部により起伏自在な防波板(ゲート)を設ける。そして、この防波板を倒伏姿勢と起立姿勢との間で起伏させる起伏駆動装置を設けた起伏式防波装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
また、津波の進行を阻止しようとする地点の海底に軸水平に揺動できる揺動支持部(ヒンジ)を持つ基礎を設ける。そして、この基礎上の揺動支持部と組み合わせることで機能する揺動支持部(ヒンジ)を備える止水板(ゲート)を揺動支持部のある側を陸地側として配置する。さらに、止水板起立時の安定をはかる止水板起立姿勢保持機構(引き止めベルト等)を設けた津波防波堤がある(特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1の起立式防波装置は、防波板を回転支持部(ヒンジ)で起伏自在に支持しているから、防波板側と防波堤側に複数個のヒンジ金具をそれぞれ取り付け、これら両金具を連結するヒンジ軸も必要とするので、ヒンジ構造が複雑で、部品点数も多くなるという問題がある。また、防波板の起伏を油圧シリンダ等の起伏駆動装置で行うから、装置コストが高くなるとともに、停電時のバックアップ等も必要になるという問題がある。
【0005】
これに対して、引用文献2の津波防波堤は、平常時には止水板が海底付近に倒伏し、津波到来時には、津波の波力で止水板が自動的に起立するから、引用文献1のような起伏駆動装置が不要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−239243号公報
【特許文献2】特開2006−342653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の津波防波堤では、止水板を揺動支持部(ヒンジ)で起伏自在に支持しているから、引用文献1と同様に、ヒンジ構造が複雑で、部品点数も多くなるという問題がある。
【0008】
また、津波水流が倒伏時の止水板下方に流入しやすくするために、止水板展開始動用基礎側突起で、止水板の仰角を保持する必要がある。この基礎側突起を省略するために、止水板の下面に隙間を形成して、津波水流を止水板下方に流入しやすくする技術が開示されているが、その構造上、押し波方向だけにしか対応できないという問題があった。
【0009】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、扉体(ゲート)のヒンジ金具等を不要にして(ヒンジレス式)、部品点数が少ない簡単な支持構造とするとともに、押し波にも引き波にも対応可能な起伏式防波装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、水底面に対して略平行状態で倒れる倒伏位置と、水底面に対して略垂直状態で起き上がる起立位置とに揺動可能な起伏式防波装置であって、前記倒伏位置において、押し波方向の波力を受ける一端部と引き波方向の波力を受ける他端部とがそれぞれ水底面よりも上方に設定され、この各端部から水底面に接触する下面との間が、側面視で略円弧状若しくは略傾斜状に形成されている扉体と、押し波方向の水底面に一端が連結され、他端が前記扉体の他端部付近に連結されて、扉体の他端部を揺動可能に支持する第1の固定ベルトと、引き波方向の水底面に一端が連結され、他端が前記扉体の一端部付近に連結されて、扉体の一端部を揺動可能に支持する第2の固定ベルトと、前記扉体を押し波方向の波力に抗して起立位置に保持する第1の保持部材と、前記扉体を引き波方向の波力に抗して起立位置に保持する第2の保持部材を備えていることを特徴とする起伏式防波装置を提供するものである。
【0011】
請求項2のように、請求項1において、前記第1の保持部材は、押し波方向の水底面に一端が連結され、他端が前記扉体の一端部付近に連結されて、扉体を押し波方向の波力に抗して起立位置に保持する第1の引き止めベルトであり、前記第2の保持部材は、引き波方向の水底面に一端が連結され、他端が前記扉体の一端部付近に連結されて、扉体を引き波方向の波力に抗して起立位置に保持する第2の引き止めベルトであることが好ましい。
【0012】
請求項3のように、請求項1または2において、前記扉体は、一端部と他端部との間の上下面の双方が、側面視で略対称な外向き略円弧状若しくは略傾斜状に形成されていることが好ましい。
【0013】
請求項4のように、請求項1〜3において、前記扉体は、横並び状で複数個が配列され、隣り合う扉体の間に、扉体の横方向移動を規制するガイド板が設けられていることが好ましい。
【0014】
請求項5のように、請求項1〜4において、前記扉体は中空状に形成され、この中空部に液体が充填されていることが好ましい。
【0015】
請求項6のように、請求項5において、前記扉体の中空部に、液体を給排可能な液体用バルブと、気体を給排可能な気体用バルブとが設けられている構成とすることができる。
【0016】
請求項7のように、請求項5において、前記扉体の中空部は、一端部と他端部の略中間で2室に仕切られて、各室の中空部に、液体を給排可能な液体用バルブと、気体を給排可能な気体用バルブとがそれぞれ設けられている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、扉体(ゲート)は、平常時には水底面の倒伏位置(水底面に対して例えば約0度。以下同様)に倒れているから、船舶の航行等に影響を与えない。
【0018】
そして、津波、高潮、副振動等で押し波が発生すると、押し波方向の波力が扉体の一端部と水底面との間の隙間(仰角)に流入することで、扉体の一端部には上向き、他端部には下向きの偶力が発生する。
【0019】
このとき、扉体の下面が略円弧状であれば、扉体は、支点と重心が徐々に他端部方向に移動することで、下面が水底面を転動しながら所定の起立角度(例えば約30度)まで自然に起き上がるようになる。そして、支点と重心が他端部に移動すると、この他端部は第1の固定ベルトに連結されているから、扉体は他端部を中心に回転するようになる。つまり、扉体は、倒伏位置から所定角度まで転動した後に、起立位置(例えば約90度)まで回転するようになる。また、扉体は、第1の保持部材で押し波方向の波力に抗して起立位置に保持されるようになる。この結果、押し波は、起立位置の扉体で抑制されるようになる。
【0020】
一方、押し波が終わり、ついで引き波が発生すると、扉体は水底面の倒伏位置に倒れる。そして、引き波方向の波力が扉体の他端部と水底面との間の隙間に流入することで、扉体の他端部には上向き、一端部には下向きの偶力が発生する。
【0021】
このとき、扉体の下面が略円弧状であれば、扉体は、支点と重心が徐々に一端部方向に移動することで、下面が水底面を転動しながら所定の起立角度(例えば約30度)まで自然に起き上がるようになる。そして、支点と重心が一端部に移動すると、この一端部は第2の固定ベルトに連結されているから、扉体は一端部を中心に回転するようになる。つまり、扉体は、倒伏位置から所定角度まで転動した後に、起立位置(例えば約90度)まで回転するようになる。また、扉体は、第2の保持部材で引き波方向の波力に抗して起立位置に保持されるようになる。この結果、引き波は、起立位置の扉体で抑制されるようになる。
【0022】
したがって、起伏式防波装置を港湾の防波堤で仕切られた出入口(水路)に設置すれば、押し波で港湾内の潮位が急激に上がるのを抑制でき、引き波で港湾内の潮位が急激に下がるのを抑制できるようになる。また、河川の河口に設置すれば、押し波が河川を遡行して上流側の堤防等から溢水するのを抑制できる。なお、河川の河口に設置した場合、引き波の対策は特に必要ないので、このような場合には、第2の保持部材で、扉体を倒伏位置付近に保持することもできる。
【0023】
このように、扉体は、第1の固定ベルトで扉体の他端部を揺動可能に支持し、第2の固定ベルトで扉体の一端部を揺動可能に支持しているから、背景技術のような複数個のヒンジ金具やヒンジ軸が不要になるので(ヒンジレス式)、支持構造が簡単で、部品点数も少なくなる(ヒンジレスゲート)。
【0024】
また、第1の固定ベルトは、押し波方向の水底面に一端を連結し、他端を扉体の他端部付近に連結している。第2の固定ベルトは、引き波方向の水底面に一端を連結し、他端を扉体の一端部付近に連結している。したがって、扉体は、第1の固定ベルトと第2の固定ベルトとで、倒伏位置において、押し波方向または引き波方向の何れの方向にもずれ動かないように位置規制される。
【0025】
さらに、背景技術のようなヒンジ式の場合には、倒伏位置からの起立開始時には、扉体の自重による抵抗モーメントが最大で、起立に伴って抵抗モーメントが徐々に減少する。したがって、倒伏位置からの起立開始に際しては、空気力等を利用して、扉体をある程度の角度まで起き上がらせる機構を必要とする。これに対して、本発明のヒンジレス式では、押し波、引き波のいずれに対しても、倒伏位置からの起立開始時には、上述した偶力によって、所定の起立角度(例えば約30度)までは自然に起き上がり、その後は、波力で起立位置に自然に起き上がるようになる。したがって、倒伏位置からの起立開始時には、扉体の自重による抵抗モーメントがゼロ(0)で、起立に伴って抵抗モーメントが徐々に増加することから、ヒンジ式と比べて、空気力等の起き上がらせる機構が不要であり、波力だけでも容易に起立するようになる。また、波力が無くなった時には、ゆっくりと倒伏するようになる。
【0026】
請求項2によれば、各保持部材を引き止めベルトとしたから、各固定ベルトと同じベルト素材を共用できるので、製造や管理が容易になる。なお、引き波の対策は特に必要ない場合には、第2の引き止めベルトを予め短くしておけば、扉体を倒伏位置付近に保持することもできる。
【0027】
請求項3によれば、扉体の上下面の双方を略対称な外向き略円弧状若しくは略傾斜状に形成すれば(略木の葉形)、上下面が同形状であるから、製造作業が容易になるとともに、設置時に一端部と他端部の向きの制約がなくなるから、設置作業が容易になる。また、側面視で両凸状となるから、剛性が向上する。
【0028】
請求項4によれば、ガイド板で、横並び状の扉体の横方向移動を確実に規制することができる。
【0029】
請求項5によれば、扉体は1室の中空状であるから、製造時や搬送時は軽量であって、取扱いが容易であるとともに、設置現場で、液体(その現場の海水や川水等)を中空部に充填すると、その場で水底面に設置できるから、設置作業が容易になる。
【0030】
請求項6によれば、液体用バルブから液体を排出すると同時に、気体用バルブから気体を供給することで、扉体に浮力を付与すると、扉体の起立速度が速くなるとともに、小さな波力でも起立させることが可能になる。
【0031】
請求項7によれば、扉体の中空部は2室に仕切られているから、一端部と他端部のいずれか一方の室の液体用バルブから液体を排出すると同時に、気体用バルブから気体を供給することで、気体を供給した側(上室)に浮力を付与すると、扉体を強制的に起立させることができる。逆に、上室から気体を排出すると同時に、液体を供給し、下室から液体を排出すると同時に、気体を供給することで、液体を供給した側(上室)に重力を付与すると、扉体を強制的に倒伏させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の起伏式防波装置の原理を説明するための模式図であり、(a)は平常時の平面図、(b)は側面図である。
【図2】図1の模式図であり、(a)は押し波時の平面図、(b)は側面図である。
【図3】図1の模式図であり、(a)は引き波時の平面図、(b)は側面図である。
【図4】(a)は扉体に作用する偶力の説明図、(b)〜(d)は、扉体の変形例の側面図である。
【図5】(a)は扉体の支点と重心の移動の説明図、(b)は扉体の自重による抵抗モーメントを比較するための図表である。
【図6】(a)は背景技術の扉体の説明図、(b)は本発明に係る扉体の説明図である。
【図7】本発明の実施形態の起伏式防波装置を具体化した構成図であり、(a)は平常時の平面図、(b)は側面図である。
【図8】図7の構成図であり、(a)は押し波時の平面図、(b)は側面図である。
【図9】図7の構成図であり、(a)は引き波時の平面図、(b)は側面図である。
【図10】(a)は、図7(a)のI−I線断面図、(b)はブイを設けた扉体の側面図である。
【図11】1室式の扉体であり、(a)は平常時の側面図、(b)(c)は押し波時の側面図である。
【図12】1室式の扉体であり、(a)は平常時の側面図、(b)(c)は引き波時の側面図である。
【図13】2室式の扉体であり、(a)は平常時の側面図、(b)(c)は押し波時の側面図である。
【図14】2室式の扉体であり、(a)(b)は押し波の起立位置から強制転倒時の側面図である。
【図15】2室式の扉体であり、(a)は平常時の側面図、(b)(c)は引き波時の側面図である。
【図16】2室式の扉体であり、(a)(b)は引き波の起立位置から強制転倒時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜図4(a)は、本発明にかかる起伏式防波装置の原理を説明するための模式図である。
【0034】
図1(a)は平常時(押し波や引き波の無い時)の平面図、同(b)は側面図である。図2(a)は押し波時の平面図、同(b)は側面図である。図3(a)は引き波時の平面図、同(b)は側面図である。図4(a)は扉体(ゲート)1に作用する偶力の説明図である。
【0035】
扉体1は、港湾の防波堤で仕切られた出入口(水路)や河川の河口等の水底面2に設置され、平面視では、出入口等の幅方向に延在する略長方形状である。なお、出入口等の幅が広い場合には、後述するように、扉体1は、その幅をカバーできるように、横並び状で複数個が配列されることになる〔図7(a)参照〕。
【0036】
扉体1は、水底面2に対して略平行状態で倒れる倒伏位置D〔図1(a)参照〕と、水底面2に対して略垂直状態で起き上がる起立位置U1,U2〔図2(b)、図3(b)参照〕とに揺動可能となっている。
【0037】
扉体1は、平常時の倒伏位置Dにおいて、押し波方向aの波力を受ける一端部1aと、引き波方向bの波力を受ける他端部1bとが、それぞれ水底面2よりも上方に設定されている。そして、少なくとも各端部1a,1bから水底面2に接触する下面1dとの間が、側面視で略円弧状に形成されている。これにより、各端部1a,1bから水底面2に接触する下面1dとの間に、波力が流入するための隙間(仰角)fが自然に形成されるようになる。
【0038】
具体的には、一端部1aと他端部1bとの間の上下面1c,1dの双方が、側面視で略対称な外向き略円弧状(略木の葉形)に形成されている。
【0039】
扉体1は、ステンレス鋼板等の上下面1c,1dと両側面1e,1fとを組み合わせて溶接することで中空状に形成され、この1室の中空部3〔図11(a)参照〕に適量の液体が充填されている。これにより、扉体1に浮力が生じないので、水底面2に倒伏位置Dで設置することが可能となる。なお、液体に代えて固体(鉄塊等)を充填することも可能である。
【0040】
扉体1に対しては、複数本(本例では幅方向に所定の間隔を隔てて2本)の第1の固定ベルト4が設けられている。この可撓性の第1の固定ベルト4は、押し波方向aの水底面2に一端4aが連結され、扉体1の下面1dに沿って延在して、他端4bが扉体1の他端部1bに連結されている。
【0041】
第1の固定ベルト4は、扉体1の他端部1bを揺動可能に支持するようになる。第1の固定ベルト4は、扉体1が倒伏位置Dから右方向に転動した後に右回転Q〔図2(b)参照〕し、水底面2に接する他端部1bを支点として、押し波方向aの起立位置U1に起き上がる程度の長さとする。なお、転動した後に回転する理由は後で説明する。
【0042】
各第1の固定ベルト4と同じ位置に、第1の引き止めベルト(第1の保持部材)6が設けられている。この可撓性に第1の引き止めベルト6は、押し波方向aの水底面2に一端6aが連結され、押し波方向aと反対方向にループ状で延在して、他端6bが扉体1の一端部1aに連結されている。
【0043】
第1の引き止めベルト6は、扉体1が倒伏位置Dから右方向に転動した後に右回転Q〔図2(b)参照〕し、第1の固定ベルト4で押し波方向aの起立位置U1に起き上がった時、扉体1を押し波方向aの波力に抗して起立位置U1に保持する程度の長さとする。
【0044】
扉体1に対しては、第1の固定ベルト4と重ならないように、複数本(本例では幅方向に所定の間隔を隔てて2本)の第2の固定ベルト5が設けられ、この可撓性の第2の固定ベルト5は、引き波方向bの水底面2に一端5aが連結され、扉体1の下面1dに沿って延在して、他端5bが扉体1の一端部1aに連結されている。
【0045】
第2の固定ベルト5は、扉体1の一端部1aを揺動可能に支持するようになる。第2の固定ベルト5は、扉体1が倒伏位置Dから左方向に転動した後に左回転R〔図3(b)参照〕し、水底面2に接する一端部1aを支点として、引き波方向bの起立位置U2に起き上がる程度の長さとする。なお、転動した後に回転する理由は後で説明する。
【0046】
各第2の固定ベルト5と同じ位置に、第2の引き止めベルト(第2の保持部材)7が設けられている。この可撓性に第2の引き止めベルト7は、引き波方向bの水底面2に一端7aが連結され、引き波方向bと反対方向にループ状で延在して、他端7bが扉体1の他端部1bに連結されている。
【0047】
第2の引き止めベルト7は、扉体1が倒伏位置Dから左方向に転動した後に左回転R〔図3(b)参照〕し、第2の固定ベルト5で引き波方向bの起立位置U2に起き上がった時、扉体1を引き波方向bの波力に抗して起立位置U2に保持する程度の長さとする。
【0048】
各ベルト4〜7は、例えば、補強されたゴム製であることが好ましいが、可撓性の金属製であってもよい。
【0049】
第1、第2引き止めベルト6,7に代えて、扉体1を押し波方向aの波力に抗して起立位置U1に保持するとともに、扉体1を引き波方向bの波力に抗して起立位置U2に保持するように、扉体1に対してストッパ部材(第1、第2の保持部材)を設けることも可能である。
【0050】
前記のように構成した起伏式防波装置の原理を詳細に説明する。扉体1は、図1のように、平常時には水底面2の倒伏位置D(水底面に対して例えば約0度。以下同様)に倒れているから、船舶の航行等に影響を与えない。この平常時の波の流れでは、扉体1は僅かに揺れ動く程度である。
【0051】
そして、図4(a)に示すように、津波、高潮、副振動等で押し波が発生すると、押し波方向aの波力が扉体1の一端部1aと水底面2との間の隙間(仰角)fに流入することで、扉体1の一端部1aには上向き、他端部1bには下向きの偶力Pが発生する。
【0052】
このとき、扉体1の下面1dが略円弧状であるから、扉体1は、支点Hと重心Gが徐々に他端部1bの方向に移動することで、下面1dが水底面2を転動しながら所定の起立角度(例えば約30度)まで自然に起き上がるようになる。そして、支点Hと重心Gが他端部1bに移動すると、この他端部1bは第1の固定ベルト4に連結されているから、扉体1は他端部1bを中心に回転するようになる。つまり、扉体1は、倒伏位置Dから所定角度まで転動した後に、起立位置(例えば約90度)U1まで回転するようになる。この扉体1の支点Hと重心Gの移動と転動の理由は後で説明する。
【0053】
一方、押し波が終わり、ついで引き波が発生すると、扉体1は水底面2の倒伏位置Dに倒れる。そして、引き波方向bの波力が扉体1の他端部1bと水底面2との間の隙間に流入することで、扉体1の他端部1bには上向き、一端部1aには下向きの偶力Pが発生する。
【0054】
このとき、扉体1の下面1dが略円弧状であるから、扉体1は、支点Hと重心Gが徐々に一端部1a方向に移動することで、下面1dが水底面2を転動しながら所定の起立角度(例えば約30度)まで自然に起き上がるようになる。そして、支点Hと重心Gが一端部1aに移動すると、この一端部1aは第2の固定ベルト5に連結されているから、扉体1は一端部1aを中心に回転するようになる。つまり、扉体1は、倒伏位置Dから所定角度まで転動した後に、起立位置(例えば約90度)U2まで回転するようになる。この扉体1の支点Hと重心Gの移動と転動の理由は後で説明する。
【0055】
したがって、図2に示したように、押し波が発生したとき、扉体1の他端部1bは第1の固定ベルト4に連結されているから、扉体1は右方向に転動した後に他端部1bを中心に右回転Qする。そして、扉体1の一端部1aは第1の引き止めベルト6に連結されているから、扉体1は押し波方向aの波力に抗して起立位置U1に保持されるようになる。この結果、押し波は、起立位置U1の扉体1で抑制されるようになる。
【0056】
また、図3に示したように、押し波が終わり、ついで引き波が発生したとき、扉体1の一端部1aは第2の固定ベルト5に連結されているから、扉体1は左方向に転動した後に一端部1aを中心に左回転Rする。そして、扉体1の他端部1bは第2の引き止めベルト7に連結されているから、扉体1は引き波方向bの波力に抗して起立位置U2に保持されるようになる。この結果、引き波は、起立位置U2の扉体1で抑制されるようになる。
【0057】
このように、起伏式防波装置を港湾の防波堤で仕切られた出入口(水路)に設置すれば、押し波で港湾内の潮位が急激に上がるのを抑制でき、引き波で港湾内の潮位が急激に下がるのを抑制できるようになる。
【0058】
また、河川の河口に設置すれば、押し波が河川を遡行して上流側の堤防等から溢水するのを抑制できる。なお、河川の河口に設置した場合、引き波の対策は特に必要ないので、この場合には、第2の引き止めベルト7を予め短くしておけば、扉体1を倒伏位置D付近に保持しておくことができる。
【0059】
ここで、扉体1の支点Hと重心Gの移動と転動と回転の理由を詳細に説明する。説明を分かりやすくするために、図5(a)に示すような扉体1の模型を作成した。扉体1は、側面視で、一端部1aと他端部1bの長さLは2000mm、上面1cと下面1dの最大厚さMは535.9mm、上面1cと下面1dの半径Nは2000mmに設定した。この半径Nによる円弧は、長さLの中間位置を中心とする正円弧である。すなわち、半径Nの中心Oから一端部1aと他端部1bとの間の側辺と、一端部1aと他端部1bとの間の底辺との距離が等しい正三角形を描くようになる。
【0060】
ここで、扉体1の倒伏位置Dでは、支点Hと重心Gは、長さLの中間位置(最大厚さMの位置)にある。また、一端部1aと他端部1bとの間の水平線Sは、水底面2に対して例えば約0度である。
【0061】
そして、押し波方向aの波力(引き波方向bの波力でも同様。)が扉体1の一端部1aと水底面2との間の隙間(仰角)fに流入することで、扉体1の一端部1aには上向き、他端部1bには下向きの偶力Pが発生する。
【0062】
このとき、図6(b)のように、扉体1は、倒伏位置Dにあると、支点Hと重心Gは0°の位置にあるが、偶力Pで例えば5°傾くと、支点Hと重心Gは5°の位置に移動する。同様に、10°、15°、20°、25°、30°傾くと、支点Hと重心Gは、それぞれ10°、15°、20°、25°、30°の位置に移動する。
【0063】
この結果、扉体1は、支点Hと重心Gが徐々に他端部1bの方向に移動することで、下面1dが水底面2を転動しながら所定の起立角度(例えば約30度)まで自然に起き上がるのである。
【0064】
そして、支点Hと重心Gが他端部1bに移動すると、この他端部1bは第1の固定ベルト4に連結されているから、扉体1は他端部1bを中心(支点Hとして)に回転するのである。
【0065】
図6(a)は、本発明に係るヒンジレス式扉体1と対比するための背景技術のヒンジ式扉体1´であり、扉体1´は、側面視で、一端部1aと他端部1bの長さLは2000mmである。一端部1aは自由端、他端部1bはヒンジ金具で固定された支点Hとなっている。
【0066】
扉体1´は、倒伏位置Dにあると、重心Gは0°の位置にあるが、例えば5°傾くと、重心Gは5°の位置に移動する。同様に、10°、15°、20°、25°、30°傾くと、重心Gは、それぞれ10°、15°、20°、25°、30°の位置に移動する。なお、支点Hは移動しない。
【0067】
背景技術のヒンジ式扉体1´と本発明に係るヒンジレス式扉体1の自重による抵抗モーメントの比較を図5(b)に示す。
【0068】
背景技術のヒンジ式扉体1´の場合には、倒伏位置からの起立開始時には、扉体の自重による抵抗モーメントが最大で、起立に伴って抵抗モーメントが徐々に減少する。したがって、倒伏位置からの起立開始に際しては、空気力等を利用して、扉体をある程度の角度まで起き上がらせる機構を必要とする。
【0069】
これに対して、本発明のヒンジレス式扉体1では、押し波、引き波のいずれに対しても、倒伏位置Dからの起立開始時には、上述した偶力によって、所定の起立角度(例えば約30度)までは自然に起き上がり、その後は、波力で起立位置Uに自然に起き上がるようになる。したがって、倒伏位置Dからの起立開始時には、扉体1の自重による抵抗モーメントがゼロ(0)で、起立に伴って抵抗モーメントが徐々に増加することから、背景技術のヒンジ式扉体1´と比べて、空気力等の起き上がらせる機構が不要であり、波力だけでも容易に起立するようになる。また、波力が無くなった時には、ゆっくりと倒伏するようになる。
【0070】
前記のように構成すれば、扉体1は、第1の固定ベルト4で扉体1の他端部1bを揺動可能に支持し、第2の固定ベルト5で扉体1の一端部1aを揺動可能に支持しているから、背景技術のような複数個のヒンジ金具やヒンジ軸が不要になるので(ヒンジレス式)、支持構造が簡単で、部品点数も少なくなる(ヒンジレスゲート)。
【0071】
また、第1の固定ベルト4は、押し波方向aの水底面2に一端4aを連結し、他端4bを扉体1の他端部1b付近に連結している。第2の固定ベルト5は、引き波方向bの水底面2に一端5aを連結し、他端5bを扉体1の一端部1a付近に連結している。したがって、扉体1は、第1の固定ベルト4と第2の固定ベルト5とで、倒伏位置Dにおいて、押し波方向aまたは引き波方向bの何れの方向にもずれ動かないように位置規制される。
【0072】
また、各引き止めベルト6,7は、各固定ベルト4,5と同じベルト素材を共用できるので、製造や管理が容易になる。
【0073】
さらに、扉体1の上下面1c,1dの双方を略対称な外向き略円弧状(略木の葉形)に形成しているから、上下面1c,1dが同形状であるから、製造作業が容易になる。また、設置時に一端部1aと他端部1bの向きの制約がなくなるから、設置作業が容易になる。さらに、側面視で両凸状となるから、剛性が向上する。
【0074】
また、扉体1は1室の中空状であるから、製造時や搬送時は軽量であって、取扱いが容易であるとともに、設置現場で、液体(その現場の海水や川水等)を中空部3に充填すると、その場で水底面2に設置できるから、設置作業が容易になる。
【0075】
図1〜図4(a)では、扉体1の上下面1c,1dの双方を略円弧状に形成しているが、図4(b)のように、扉体1の上面1cは平面(フラット)とし、下面1dのみを略円弧状に形成することもできる。また、図4(c)(d)のように、各端部1a,1bから水底面2に接触する下面1dとの間が、略円弧状ではなく、側面視で略傾斜状に形成することもできる。
【0076】
図7〜図9は、図1〜図3にそれぞれ対応するものであり、図1〜図3の原理を具体化した構成であって、図1〜図3と相違する点だけを説明する。
【0077】
第1の固定ベルト4は、押し波方向aの水底面2に一端4aが金具10aの軸で連結され、扉体1の下面1dに沿って延在して、扉体1の他端部1bを通過して、他端4bが他端部1b付近の上面の金具10bの軸に連結されている。
【0078】
第1の引き止めベルト6は、押し波方向aの水底面2に一端6aが金具11aの軸で連結され、押し波方向aと反対方向にループ状で延在して、他端6bが扉体1の一端部1a付近の上面の金具11bの軸に連結されている。金具11aには、第1の引き止めベルト6をガイドするローラ11cが設けられている。
【0079】
第2の固定ベルト5は、引き波方向bの水底面2に一端5aが金具12aの軸で連結され、扉体1の下面1dに沿って延在して、扉体1の一端部1aを通過して、他端5bが一端部付近の上面の金具12bの軸に連結されている。
【0080】
第2の引き止めベルト7は、引き波方向bの水底面2に一端7aが金具13aの軸で連結され、引き波方向bと反対方向にループ状で延在して、他端7bが扉体1の他端部1b付近の上面の金具13bの軸に連結されている。金具13aには、第2の引き止めベルト7をガイドするローラ13cが設けられている。
【0081】
図7〜図9の構成であっても、図1〜図3の構成と同様に、図7の平常時には、扉体1は水底面2の倒伏位置Dに倒れている。
【0082】
そして、図8のように、押し波が発生したとき、扉体1は右方向に転動した後に右回転Qし、第1の引き止めベルト6によって、押し波方向aの波力に抗して起立位置U1に保持されるようになる。また、図9のように、押し波が終わり、ついで引き波が発生したとき、扉体1は左方向に転動した後に左回転Rし、第2の引き止めベルト7によって、引き波方向bの波力に抗して起立位置U2に保持されるようになる。
【0083】
前記実施形態では、1枚の扉体1について説明したが、前述のように、港湾の防波堤で仕切られた出入口等の幅が広い場合には、図7(a)およびそのI−I線方向から見た正面図である図10(a)に示したように、扉体1は、その幅をカバーできるように、横並び状で複数個が配列されることになる。
【0084】
この場合、隣り合う扉体1の間に、扉体1の横方向移動を規制するガイド板14を設けることが好ましい。このガイド板14によって、横並び状の扉体1の横方向移動を確実に規制することができる。
【0085】
扉体1は、水中において倒伏位置Dと起立位置U1,U2とに揺動するから、水上において、それを目視で確認することは困難なことがある。
【0086】
そこで、図10(b)に示すように、倒伏位置Dにおける扉体1の一端部1aと他端部1bとに、平常時に水面に浮上するブイ15a,15bをそれぞれ取付ける。
【0087】
そして、水面に2個のブイ15a,15bが見えると、扉体1は倒伏位置Dであることが簡易に確認できる。
【0088】
扉体1は、押し波時に起立位置U1に起き上がると、他端部1b側のブイ15bは下方に引っ張られて水中に沈む。また、引き波時に起立位置U2に起き上がると、一端部1a側のブイ15aは下方に引っ張られて水中に沈む。したがって、水面に1個のブイ15aまたは15bのいずれかが見えると、扉体1は起立位置U1またはU2であることが簡易に確認できる。なお、2個のブイ15a,15bの色を変えておけば、押し波時の起立位置U1か引き波時の起立位置U2かを確認できる。
【0089】
このようなブイ15a,15b以外に、例えば扉体1の上面1cに傾斜計16を取付け、この信号でランプを点灯等することにより、倒伏位置Dか起立位置U1,U2かを確認できる。
【0090】
前記実施形態では、扉体1の中空部3に液体を充填することで、扉体1を水底面2に設置しており、この液体の充填量は適宜に調整することができる。
【0091】
すなわち、図11(a)に示すように、扉体1の上面1cの一端部1aと他端部1bの略中間に、中空部3に対して、水(液体…ハッチンング部分参照)wを給排可能な水専用バルブ18aと、空気(気体…白抜き部分参照)eを給排可能な空気専用バルブ18bとを設ける。なお、上面1cの一端部1aと他端部1bの付近に、中空部3に対して、水wまたは空気eを選択的に給排可能な水・空気兼用バルブ18c,18dをそれぞれ設ける。各バルブ18a〜18dには、外部から水wまたは空気eを給排可能なパイプ(不図示)がそれぞれ接続されている。
【0092】
そして、押し波が到来する前に、図11(a)のように、水専用バルブ18aから水wを排出すると同時に、空気専用バルブ18bから空気eを供給することにより、水wの充填水位が下がって、扉体1に浮力が付与されるようになる。
【0093】
これにより、図11(b)から(c)のように、扉体1の起立速度が速くなるとともに、小さな押し波の波力でも起立させることが可能になる。
【0094】
同様に、引き波が到来する前に、図12(a)のように、水専用バルブ18aから水wを排出すると同時に、空気専用バルブ18bから空気eを供給することにより、水wの充填水位が下がって、扉体1に浮力が付与されるようになる。
【0095】
これにより、図12(b)から(c)のように、扉体1の起立速度が速くなるとともに、小さな引き波の波力でも起立させることが可能になる。
【0096】
図13〜図16は、図11、図12の変形例である。すなわち、図13(a)に示すように、扉体1の上面1cの一端部1aと他端部1bの略中間で中空部3を仕切り壁20で2室3A,3Bに仕切る。
【0097】
各室3A,3Bに対して、水wを給排可能な水専用バルブ18aと、空気eを給排可能な空気専用バルブ18bとを設ける。また、一端部1aと他端部1bの付近に、各室3A,3Bに対して、水wまたは空気eを選択的に給排可能な水・空気兼用バルブ18c,18dをそれぞれ設ける。
【0098】
そして、押し波が到来する前に、図13(a)のように、押し波側の室3Aの水専用バルブ18aから水wを排出すると同時に、空気専用バルブ18bから空気eを供給する。また、引き波側の室3Bの水専用バルブ18aから水wを供給すると同時に、空気専用バルブ18bから空気eを排出する。これにより、押し波側の室3Aの水wの充填水位が下がって、扉体1の押し波側の室(上室)3Aに浮力が付与されるようになる。
【0099】
これにより、図13(b)から(c)のように、扉体1を押し波方向aの起立位置U1に強制的に起立させることができる。
【0100】
この扉体1の起立位置U1において、図14(a)のように、押し波側の室3Aの水専用バルブ18aから水wを供給すると同時に、水・空気兼用バルブ18cから空気eを排出する。また、引き波側の室3Bの水・空気兼用バルブ18dから水wを排出すると同時に、空気専用バルブ18bから空気eを供給する。これにより、水を供給した押し波側の室(上室)3Aに重力が付与されるようになるから、図14(b)のように、扉体1を倒伏位置Dに強制的に倒伏させることができる。
【0101】
同様に、押し波が到来する前に、図15(a)のように、引き波側の室3Bの水専用バルブ18aから水wを排出すると同時に、空気専用バルブ18bから空気eを供給する。また、押し波側の室3Aの水専用バルブ18aから水wを供給すると同時に、空気専用バルブ18bから空気eを排出する。これにより、引き波側の室3Bの水wの充填水位が下がって、扉体1の引き波側の室(上室)3Bに浮力が付与されるようになる。
【0102】
これにより、図15(b)から(c)のように、扉体1を引き波方向aの起立位置U2に強制的に起立させることができる。
【0103】
この扉体1の起立位置U2において、図16(a)のように、引き波側の室3Bの水専用バルブ18aから水wを供給すると同時に、水・空気兼用バルブ18dから空気eを排出する。また、押し波側の室3Aの水・空気兼用バルブ18cから水wを排出すると同時に、空気専用バルブ18bから空気eを供給する。これにより、水を供給した引き波側の室(上室)3Bに重力が付与されるようになるから、図16(b)のように、扉体1を倒伏位置Dに強制的に倒伏させることができる。
【0104】
前記実施形態の起伏式防波装置は、港湾の防波堤で仕切られた出入口(水路)や河川の河口等の水底面2に設置することを前提としたが、これらに限られるものではない。例えば、港湾や河川の防波堤等の上面(押し波や引き波で水がくれば、水底面となる。)に設置することも可能である。また、水門、樋門、防潮堤の防潮扉等に代えて設置することも可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 扉体
1a 一端部
1b 他端部
1c 上面
1d 下面
2 水底面
3 中空部
3A,3B 室
4 第1の固定ベルト
5 第2の固定ベルト
6 第1の引き止めベルト(第1の保持部材)
7 第2の引き止めベルト(第2の保持部材)
18a〜18d バルブ
20 仕切り壁
a 押し波方向
b 引き波方向
D 倒伏位置
U1,U2 起立位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底面に対して略平行状態で倒れる倒伏位置と、水底面に対して略垂直状態で起き上がる起立位置とに揺動可能な起伏式防波装置であって、
前記倒伏位置において、押し波方向の波力を受ける一端部と引き波方向の波力を受ける他端部とがそれぞれ水底面よりも上方に設定され、この各端部から水底面に接触する下面との間が、側面視で略円弧状若しくは略傾斜状に形成されている扉体と、
押し波方向の水底面に一端が連結され、他端が前記扉体の他端部付近に連結されて、扉体の他端部を揺動可能に支持する第1の固定ベルトと、
引き波方向の水底面に一端が連結され、他端が前記扉体の一端部付近に連結されて、扉体の一端部を揺動可能に支持する第2の固定ベルトと、
前記扉体を押し波方向の波力に抗して起立位置に保持する第1の保持部材と、
前記扉体を引き波方向の波力に抗して起立位置に保持する第2の保持部材を備えていることを特徴とする起伏式防波装置。
【請求項2】
前記第1の保持部材は、押し波方向の水底面に一端が連結され、他端が前記扉体の一端部付近に連結されて、扉体を押し波方向の波力に抗して起立位置に保持する第1の引き止めベルトであり、
前記第2の保持部材は、引き波方向の水底面に一端が連結され、他端が前記扉体の一端部付近に連結されて、扉体を引き波方向の波力に抗して起立位置に保持する第2の引き止めベルトであることを特徴とする請求項1に記載の起伏式防波装置。
【請求項3】
前記扉体は、一端部と他端部との間の上下面の双方が、側面視で略対称な外向き略円弧状若しくは略傾斜状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の起伏式防波装置。
【請求項4】
前記扉体は、横並び状で複数個が配列され、隣り合う扉体の間に、扉体の横方向移動を規制するガイド板が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の起伏式防波装置。
【請求項5】
前記扉体は中空状に形成され、この中空部に液体が充填されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の起伏式防波装置。
【請求項6】
前記扉体の中空部に、液体を給排可能な液体用バルブと、気体を給排可能な気体用バルブとが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の起伏式防波装置。
【請求項7】
前記扉体の中空部は、一端部と他端部の略中間で2室に仕切られて、各室の中空部に、液体を給排可能な液体用バルブと、気体を給排可能な気体用バルブとがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項5に記載の起伏式防波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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