説明

起泡性飲料

【課題】 味、香り、物性(食感、色調など)に大きく影響を与えずに、改善された泡感(起泡性および泡の持続性等の泡の特性)および、飲用時に優れた喉越しを有する炭酸ガス含有飲料を提供することである。
【解決手段】 オクテニルコハク酸澱粉と、茶葉の水及び/又はエタノール抽出物とを配合することによる、改善された泡質及び優れた喉越し炭酸ガス含有飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭酸ガス含有飲料に関し、更に詳細には、きめ細かい泡を形成させ、飲用時に優れた喉越しを有する泡質が改善された炭酸ガス含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガス含有飲料はその飲用に際して爽快感を有する清涼飲料を代表する飲み物である。適度な発泡は口腔内、および、いわゆる喉越しといわれる喉通過時の刺激により飲用中、および、飲用後の爽快感を醸成するため、泡感は炭酸ガス含有飲料の特性を形成する一つの大きな因子となっている。形成された泡の大きさ、いわゆる泡径と喉通過時に感じる喉越しについては、長年多くの議論がされており、小さいほどその刺激が連続的に生じ、喉越しがよいとされている。
【0003】
特に、炭酸ガス含有アルコール飲料の場合、この喉越しが美味しさの大きな因子となっている。ビール、発泡酒などの炭酸ガス含有アルコール飲料は、飲用時にグラス等に注がれて発生する泡により炭酸ガスの抜けが抑制され、爽快感が維持される。また、泡は、うまみ成分(味、香り)の保持にも有効である、さらに、泡密度が高く、きめ細かい泡は、内容物の酸化を防ぎ、新鮮さを保つものである。
【0004】
従来のいわゆるサイダー、コーラと呼ばれる炭酸ガス含有飲料においては、その形成される泡径が大きく喉越しとしては粗いもので、爽快感の点で必ずしも好ましいものではなかった。したがって、上記のような炭酸ガス含有飲料において飲用時に細かい泡を形成し、喉越しを良好にする方策が望まれている。
【0005】
そこで、安定な泡の形成を促進したり、或いは長時間安定な泡の持続性を付与することを目的として、起泡剤や泡保持剤を使用した炭酸ガス含有飲料が提案されている。例えば、サポニン成分を含有する発泡性混成酒(特許文献1)や、ガラナ抽出液と起泡剤と着色剤を含有するビール様清涼飲料(特許文献2)や、ホップを含む麦芽発酵液、起泡剤(例えばサポニン)および泡保持剤(例えば、寒天、ゼラチン、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、タマリンドガム、ジェランガム、ローカストビーンガム等の増粘安定剤)を含有する炭酸ガス含有アルコール飲料(特許文献3)や、大豆又はえんどう豆より得られた窒素源を原料とし、さらに大豆サポニン、ユッカサポニン、キラヤサポニン、茶サポニン、高麗サポニン等の植物抽出サポニン系物質、卵白ペプタイド、牛血清アルブミン等のタンパク質系物質、キサンタンガム、プルラン、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギナン、アラビアガム、タマリンド種子多糖類、寒天、タラガム、ジェランガム等の増粘剤及びアルギン酸エステルの群より選択される起泡・泡持ち向上物質を原料として加えて発酵前液を調製して得られるビール様アルコール飲料(特許文献4)や、オクテニルコハク酸澱粉を使用した炭酸ガス含有飲料(特許文献5)等が知られている。
【特許文献1】特開昭61−88869号公報
【特許文献2】特開2007−82538号公報
【特許文献3】特開平11−299473号公報
【特許文献4】特開2005−124591号公報
【特許文献5】特開2004−81171号公報
【特許文献6】WO03/105610
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、起泡剤や泡保持剤を用いて泡感や喉越しを改善する方法は種々知られているが、これら起泡剤や泡保持剤となる物質は、それぞれ味、香り、及び特定の物性を有していて、多少たりとも飲料自体に影響を与えることが避けられないものであった。例えば、サポニンを使用した場合、その苦味が飲料の味を悪くするという問題があった(特許文献2〔0003〕、特許文献4〔0034〕参照)。また、泡保持剤として増粘安定剤を用いた場合やオクテニルコハク酸澱粉を使用した場合、十分な泡感を得るための量を配合すると、飲用時にベタツキが発生し口触りや喉越しを悪くするという問題が発生したり、溶解性(透明性)や耐熱性に関する問題が発生することもあった。つまりは、起泡剤や泡保持剤それぞれにおいて使用できる種類や量に限りがあり、飲料の泡感や喉越しの改善にも限りがあった。特に、微妙な味や香りが飲料自体に大きな影響を与える清涼飲料においては、その泡感や喉越しの改善を行おうとしても、それに適合する物質が存在していなかった。また、焼酎を炭酸飲料と混和した飲料や低アルコール含量のカクテルは、発泡性であっても泡の保持性はほとんどなく、長時間安定な泡の持続性を有するものは存在していなかった。焼酎を炭酸飲料と混和した飲料や低アルコール含量のカクテルは、香味バランスから、酸味や甘味を強調した重厚感のある設計のものが多いが、飲料の入った容器を開封後或いは飲料をグラス等に注いだ際に時間の経過と共に早く炭酸ガスが抜けてしまい、その結果、酸味や甘味がさらに強く感じられソフト感や清涼感、爽快感が失われたものとなっていた。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、味、香り、物性(食感、色調など)に大きく影響を与えずに、優れた泡感(起泡性および泡の持続性)および喉越しを有する炭酸ガス含有飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、起泡剤としてサポニンと、茶葉の水及び/又はエタノール抽出物とを含有する炭酸ガス含有飲料を開発している(WO03/105610)。本発明者は、さらに検討を進めた結果、起泡剤としてサポニンではなく、0.5重量%以下のオクテニルコハク酸澱粉を用いるとさらに泡感および喉越しを改善した炭酸ガス含有飲料を製造しうることを見出した。そして、この炭酸ガス含有飲料は、従来存在しなかった喉の奥で泡(炭酸刺激)を感じることができる新しいタイプの飲料であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のように要約できる。
1. オクテニルコハク酸澱粉と、茶葉の水及び/又はエタノール抽出物とを含有する、炭酸ガス含有飲料。
2. オクテニルコハク酸澱粉の含有量が、0.5重量%以下である、上記1に記載の炭酸ガス含有飲料。
3. 茶葉が、紅茶、緑茶又は烏龍茶の茶葉である、請求項1又は2に記載の炭酸ガス含有飲料。
4. さらに、サポニンを含有する、上記1、2又は3に記載の炭酸ガス含有飲料。
5. 炭酸ガス内圧が、0.5〜3.5kg/cm2である、上記1〜4のいずれかに記載の炭酸ガス含有飲料。
6. 低アルコール飲料である、上記1〜5のいずれかに記載の炭酸ガス含有飲料。
7. 密封容器入りである、上記1〜6のいずれかに記載の炭酸ガス含有飲料。
8. オクテニルコハク酸澱粉と、茶葉の水及び/又はエタノール抽出物とを有効成分とする、飲食品用泡質改善剤。
9. 飲食品が低アルコール飲料である、上記8に記載の飲食品用泡質改善剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炭酸ガス含有飲料は、オクテニルコハク酸澱粉等を由来とするベタツキがなく、泡感(泡立ち、泡持ち、きめ細かさなどの泡の総合的特性;本明細書中「泡質」と表記することもある)と喉越しに優れた炭酸ガス含有飲料であり、飲み始めにおいてはもちろんのこと、飲み続けておいる間にも優れた泡感と喉越しが継続している点に特徴を有する。また、グラス等に注いだ際、液面にビール様のきめ細かい泡部が形成され、かつこの泡部が長時間持続されるので、飲用したときには泡部によってソフトな口当たり(口ざわり)とまろやかな刺激感を得ることができる。また、液面に形成された泡部によって飲料の香りや味が保持される。さらに、本発明の炭酸ガス含有飲料は、醸造酒を含んでいないのに、醸造酒のような喉の奥で泡(炭酸刺激)を感じることができる新しいタイプの飲料であり、特に、焼酎を炭酸飲料と混和した飲料や低アルコール含量のカクテルなどの低アルコール飲料として提供できる。
【0011】
本発明の泡質改善剤は、オクテニルコハク酸澱粉と茶葉の水及び/又はエタノール抽出物とを有効成分として含有するものである。この泡質改善剤は広い範囲の起泡性飲食品に適合し、種々の起泡性飲食品に用いることができる。本発明の泡質改善剤は、異質な香味や粘度の増大等、飲食品自体の香味及び物性に与える影響を極力抑えることができるので、特に炭酸ガス含有飲料に好適に用いられる。炭酸ガス含有飲料に本発明の泡質改善剤を配合することにより、優れた泡感及び喉越しを有する飲料を簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、少量のオクテニルコハク酸澱粉に、茶葉の水及び/又はエタノール抽出物を配合することにより、泡感および喉越しの優れた炭酸ガス配合飲料を得るものである。
ここで、「泡感(泡質)」とは、泡立ち(起泡性)、泡の大きさ(泡径;きめ細かさ)、泡の持続性(泡保持性、泡持ち)などの泡の総合的特性をいい、喉越しとは炭酸ガス含有飲料を飲用した際の喉通過時に感じる刺激の好ましさをいう。泡感は目視による外観で、喉越しは飲用時に泡を感じる場所及びその泡の大きさで評価することができる。
【0013】
前記オクテニルコハク酸澱粉とは、澱粉に無水オクテニルコハク酸を作用して得られるものであり、本発明で使用するオクテニルコハク酸澱粉としては、特開2004−81171号公報に記載のオクテニルコハク酸澱粉及び/又はその酵素処理分解物や、市販されているオクテニルコハク酸澱粉(例えば、商品名:エマルスター、松谷化学工業株式会社製)などを用いることができる。オクテニルコハク酸澱粉の使用量や種類は、飲料の香味や嗜好性を考慮して適宜設定すればよいが、通常、0.05〜0.5重量%、好ましくは0.10〜0.35重量%、より好ましくは0.10〜0.30重量%、さらに好ましくは0.10〜0.20重量%配合する。0.35重量%以上、特に0.5重量%以上配合すると、飲用時にベタツキ(特に、口周りのベタツキ)が発生する(参考例参照)。清涼感や爽快感を求める清涼飲料や低アルコール飲料において、ベタツキは嗜好性を低下させるものであるから、上記範囲内で使用することが好ましい。また、オクテニルコハク酸澱粉が0.10重量%以下、特に0.05重量%以下の量で配合すると、本発明に係る効果が得られないことがある。さらに、ベタツキと泡感を考慮すると、オクテニルコハク酸澱粉として、粘度が5.0〜20.0mPa・s程度のものを用いるのが好ましい。ここでいう粘度とは、B型粘度計によって30℃の粘度を測定したものである。
【0014】
前記茶葉の水及び/又はエタノール抽出物とは、通常の方法により、茶葉を水、エタノール又はエタノール水溶液のいずれかの溶媒を使用して抽出した茶葉抽出物である。ここで、用いる茶葉としては、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶などいずれであってもよく、例えば、紅茶、緑茶、ウーロン茶、あまちゃずる茶、マテ茶、プーアル茶、麦茶、はとむぎ茶、玄米茶、ドクダミ茶、その他飲用を目的として抽出される植物等のものが挙げられる。これらは、飲料への香味や物性の影響を考慮して適宜選択すればよいが、中でも、半発酵茶や発酵茶は飲料へコク味や旨みを付与することもできるので好適に選択される。
【0015】
抽出に用いる溶剤は、水、エタノール又はエタノール水溶液のいずれを用いてもよいが、水又はエタノール水溶液を用いるのが好ましい。抽出に際しての茶葉と溶剤の比率も特に限定されるものではなく、通常、茶葉1に対して溶剤2〜1000重量倍である。抽出操作、効率の観点から、茶葉1に対して溶剤5〜100重量倍がより好ましい。抽出温度は、室温から常圧下での溶剤の沸点の範囲とするのが便利であり、抽出時間は抽出温度により異なるが、通常、10分〜24時間程度である。
【0016】
本発明の茶葉抽出物は、上記の方法で得られた抽出物をさらに濃縮することにより得られる濃縮物も茶葉抽出物として使用することができる。濃縮物を得る手段は、通常の方法でよく、得られる抽出物をさらに減圧下で加熱して水分を除去する方法や、合成吸着剤等で処理する方法等が挙げられる。
【0017】
上記の茶葉抽出物は単独、或いは適宜組み合わせて使用することもできる。本発明で茶葉抽出物として使用する抽出物は、Brix濃度が5〜40°であるものが好ましく、8°以上であるものがより好ましい。また、上記茶葉抽出物は、所期の泡質に応じて添加されるが、例えば経済性や香味などの影響から、製品(飲料)に対し、茶由来の可溶性固形分重量換算で0.001〜3重量%が好ましく、0.002〜1重量%がより好ましい。
【0018】
このようにして得られる茶葉抽出物又はその濃縮物は、抽出後、そのままのもの、糖類を混合した高濃度シロップエキス、また、これら茶葉抽出物又はその濃縮物から溶剤を除去した乾燥物等、いかなる状態のものでも使用することができるが、ハンドリングのしやすさから茶抽出物の濃縮物(濃縮エキス)など液体状のものが好ましい。
【0019】
前記オクテニルコハク酸澱粉及び/又は前記茶葉抽出物が粉体状の場合、別々にまたは適宜一緒にして事前に完全に溶解・液化した後、調合液中に添加するのが好ましい。同時に溶解した場合、その溶解度の関係で沈殿を生じる可能性もあるため、オクテニルコハク酸澱粉と茶葉抽出物は別個に溶解することが好ましい。また、オクテニルコハク酸澱粉含有液を基液として用いても良い。
【0020】
ビールや発泡酒のように、製造工程で本来的に炭酸ガスが発生する炭酸飲料の場合には、オクテニルコハク酸澱粉及び前記茶葉抽出物の添加は、醸造前後のいずれのタイミングで添加してもよいが、オクテニルコハク酸澱粉が加熱分解されることもあるので、加熱処理の工程の終期又は後に添加することが好ましい。
【0021】
本発明のオクテニルコハク酸澱粉と、茶葉の水及び/又はエタノール抽出物とを含有する炭酸ガス含有飲料は、さらにサポニンを加えることで、より良好な泡感及び喉越しが得られる。サポニンの濃度は、サポニンの種類や起源、初期する泡の状態により異なるが、通常、有効成分であるサポニン重量として、0.0001〜0.01重量%が好ましく、0.0001〜0.003重量%がより好ましく、0.0002〜0.001重量%がさらに好ましい。サポニンは苦味を有するものであるため、0.003重量%以上、特に0.01重量%以上を配合すると、サポニンの苦味により炭酸ガス含有飲料において好ましい香味が得られない。本発明のオクテニルコハク酸澱粉と茶葉抽出物とを含有する炭酸ガス含有飲料においては、上記のごく微量のサポニンの添加で、相乗的に泡感が改善できることも特徴である。
【0022】
ここで、サポニンとしては起泡性を有するものであればいずれのものを用いてもよく、植物或いは動物から得られるサポニン抽出物、例えば、キラヤ抽出物、エンジュサポニン、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、植物性ステロール、植物レシチン、スフィンゴ脂質、大豆サポニン、胆汁末、動物性ステロール、トマト糖脂質、分別レシチン、ユッカ・フォーム抽出物、卵黄レシチン、オオムギ殻皮抽出物、酵素処理大豆サポニン抽出物、チャ種子サポニン、ビートサポニン等や、それらの精製物等が例示できる。
【0023】
本発明の炭酸ガス含有飲料において、付与するガス圧に特に限定はないが、通常、0.5〜3.5kg/cm2、好ましくは1.5〜2.6kg/cm2である。特に、本発明の炭酸ガス含有飲料は、グラスに注いだ際に、液面にビール様のきめ細かい、かつ長時間持続可能な泡部を形成させることができることを特徴とするものであり、このような態様の炭酸ガス含有飲料を得るには、付与するガス圧を1.9〜2.5kg/cm2とするのが好ましい。
【0024】
なお、本発明の炭酸ガス含有飲料では、通常配合するような、糖類、酸類、果汁、香料、ビタミン等を添加してよいが、飲料の糖含有量は、Brix濃度として0〜 25°程度のものが好ましく、0〜20°程度のものがより好ましい。Brix濃度25°以上の高糖度域においては、炭酸が発生しにくく、添加したオクテニルコハク酸澱粉及び茶葉抽出物の泡感への影響が少なくなることがある。また、炭酸ガス含有飲料のp H は2.0から5.0が好ましく、より好ましくは2.5から4.0である。pHが2.0を下回ると酸味が強すぎて香味の面からの嗜好性が下がり、また、5.0を上回ると炭酸飲料としての組成を保つことが困難となる。
【0025】
本発明の炭酸ガス含有飲料としては、アルコールを含有する飲料であっても、アルコールを含有しない飲料であってもよく、例えば、サイダー、ラムネ飲料、コーラ飲料、果汁入り炭酸飲料、清涼飲料、低アルコール類(アルコール度数12%以下のサワー類、カクテル類、チューハイ類など)、ノンアルコールビールなどが例示できる。
【0026】
本発明の炭酸ガス含有飲料が、アルコールを含有する飲料である場合、本発明の飲料を製造する際に用いる原酒は特に制限されるものではなく、焼酎、ウイスキー、スピリッツなどの蒸留酒、清酒、ビール、ワインなどの醸造酒、リキュールなどの混成酒であってもよい。本発明の炭酸ガス飲料は、添加したオクテニルコハク酸澱粉や茶葉抽出物由来の異質な香味や粘度の増大、ベタツキ等、飲食品自体の香味及び物性に与える影響を抑えることができるので、ビールを連想させる美味しさや雰囲気、泡感や喉越しを有する炭酸ガス含有飲料に適する飲料である。すなわち、アルコール度数12%、特に7%以下の低アルコール飲料で、原料に醸造酒を用いていない飲料に、醸造酒(ビール)の様な喉の奥で感じられる爽快な泡感と喉越しを付与することができる。
【0027】
また、アルコールを含有しない飲料である場合、特に添加物の微妙な味や香りが飲料自体に大きな影響を与える清涼飲料や果汁入り炭酸飲料などにおいて、本発明の泡質改善手段が好適に用いられる。
【0028】
これら炭酸ガス含有飲料を製品化するには、ガラスビン、ペットボトル、金属缶などの密封容器に、定法に従って、充填し、密封容器入り炭酸飲料のような形態で製品化することができる。
【0029】
さらに、本発明は、オクテニルコハク酸澱粉と、茶葉の水及び/又はエタノール抽出物とを有効成分として含有する飲食品用泡質改善剤をも提供する。この泡質改善剤は広い範囲の起泡性飲食品に適合し、種々の起泡性飲食品に用いることができる。本発明の泡質改善剤は、異質な香味や粘度の増大等、飲食品自体の香味及び物性に与える影響を極力抑えることができるので、特に炭酸ガス含有飲料に好適に用いられる。炭酸ガス含有飲料に本発明の泡質改善剤を配合することにより、優れた泡感及び喉越しを有する飲料を簡便に製造することができる。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
実施例1 泡質評価試験(1)
1.茶抽出物の製造
茶葉(ウーロン茶)を熱水にて20分間抽出し、減圧下濃縮して茶葉抽出物の濃縮物(濃縮エキス)を得た。この濃縮物中の茶葉由来可溶性固形分(Brix濃度)は10%である。
2.泡質評価試験
1)試料の調製
ニュートラルスピリッツ(アルコール度数59%)90mlに、Brix濃度が4.9±0.3になるように果糖ブドウ糖を加え、さらにクエン酸を添加し固形分3.0%の溶液を調製した。これに表1に示す配合の茶抽出物(上記1.で調製した濃縮エキス)、オクテニルコハク酸澱粉(エマルスター(30℃における粘度が10mPa・sのもの;松谷化学工業(株))及びサポニン(キラヤ由来)を混合し、全量が1Lとなる溶液(試料1〜7)を調製した。なお、表1中、+は添加を、−は非添加を示す。
【0031】
得られた試料を炭酸ガスを溶解させた高圧ソーダ水を用いて希釈してアルコール度数5.3%、炭酸ガス内圧2.3±0.2kg/cm2・20℃に調整した試料250mlを缶に封入して、以下の試験に使用した。
2)泡質(泡感)評価試験
上記のように調製した各試料全量(5℃)を、グラス(φ65mm)の底部中心付近を目掛けて、一定時間(10秒)で注いだ。注ぎ終えた直後の泡立ち及び泡のキメと、その後5分後の泡持ち状態について、目視により評価した。評価は基準となる無添加(試料No.1)を2点として、以下の5点法により行った。結果は表1に示す。
+5:優れた効果あり
+4:効果あり
+3:わずかに効果あり
+2:効果なし
+1:悪影響あり
【0032】
【表1】

【0033】
表1から明らかなように、キラヤ抽出物と茶抽出物を含有する試料No.4と比べ、オクテニルコハク酸澱粉と茶葉抽出物を含有する試料No.5において泡立ち、泡保持性、泡のキメが改善された。このことは、茶葉抽出物とオクテニルコハク酸が、泡質の改善において、より相乗作用を発揮していると考えられる。また、試料No.7の結果から、茶葉抽出物とオクテニルコハク酸に、さらにキラヤ抽出物を含有させると、より泡質(泡立ち、泡保持性、泡のキメ)が優れることも明らかになった。
【0034】
以上の結果から、オクテニルコハク酸澱粉と茶葉抽出物を組合せたものが、泡質改善剤として優れていることが明らかとなった。
実施例2 泡質評価試験(2)官能試験
実施例1で調製した7種類の試料(5〜10℃)を官能試験に供した。官能試験は、専門パネラー5名で評価した。評価項目は、炭酸ガスを感じる位置、泡の細かさ、ベタツキ、嗜好度の良否を総合点数で表し、その平均点を算出した。それぞれの評価方法は以下のとおり。
【0035】
炭酸ガスを感じる位置(舌先ではなく、喉の奥で感じることと泡がより細かく感じることが官能的に優れたものとして評価した)
+5:喉の奥で炭酸刺激を感じる
+4:喉で炭酸刺激を感じる
+3:舌の奥で炭酸刺激を感じる
+2:舌の中央で炭酸刺激を感じる
+1:舌先で炭酸刺激を感じる
泡の細かさ(基準となる無添加(試料No.1)を2点として目視により評価した)
+5:優れた効果あり
+4:効果あり
+3:わずかに効果あり
+2:効果なし
+1:悪影響あり
ベタツキ(基準となる無添加(試料No.1)を2点して評価した)
+5:ベタツキ強い
+4:ベタツキあり
+3:ベタツキややあり
+2:ベタツキなし
+1:ベタツキ抑制あり
嗜好度(5点満点で、+1〜+5点で評価した)
結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2から明らかなように、キラヤ抽出物と茶抽出物を含有する試料No.4と比べ、オクテニルコハク酸澱粉と茶葉抽出物を含有する試料No.5において炭酸ガスを感じる位置が喉に近い位置に改善され、また、泡の細かさ、嗜好度においても優れたものであることが確認された。さらに、オクテニルコハク酸澱粉と茶葉抽出物にキラヤ抽出物を添加した試料No.7について、全ての評価が向上することが明らかとなった。
実施例3 チューハイ
表3に示す配合で調製した溶液を、高ガス圧ソーダ水で所定量まで希釈し、チューハイを調合した。なお、炭酸ガス内圧は2.3kg/cm2となるようにした。
【0038】
【表3】

【0039】
実施例4 チューハイ
表4に示す配合で調製した溶液を、高ガス圧ソーダ水で所定量まで希釈し、チューハイを調合した。なお、炭酸ガス内圧は2.3kg/cm2となるようにした。
【0040】
【表4】

【0041】
参考例
表5に示す配合で、オクテニルコハク酸を種々の濃度で配合し、実施例1と同様にして炭酸ガス含有飲料について、実施例2と同様にその泡感及び喉越しを評価した。
【0042】
【表5】

【0043】
結果を表6に示す。試料1と試料3及び試料4を比較するとオクテニルコハク酸澱粉は濃度が低い水準よりも濃度が高い水準のほうが泡立ち、泡持ち、泡のキメは優れているが、炭酸の感じる場所は、喉の奥まで達することは無かった。また、オクテニルコハク酸澱粉の量が増えるに従い、口の周辺へのベタツキが増し、嗜好度が下がるという結果となった。
【0044】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オクテニルコハク酸澱粉と、茶葉の水及び/又はエタノール抽出物とを含有する、炭酸ガス含有飲料。
【請求項2】
オクテニルコハク酸澱粉の含有量が、0.5重量%以下である、請求項1に記載の炭酸ガス含有飲料。
【請求項3】
茶葉が、紅茶、緑茶又は烏龍茶の茶葉である、請求項1又は2に記載の炭酸ガス含有飲料。
【請求項4】
さらに、サポニンを含有する、請求項1、2又は3に記載の炭酸ガス含有飲料。
【請求項5】
炭酸ガス内圧が、0.5〜3.5kg/cm2である、請求項1〜4のいずれかに記載の炭酸ガス含有飲料。
【請求項6】
低アルコール飲料である、請求項1〜5のいずれかに記載の炭酸ガス含有飲料。
【請求項7】
密封容器入りである、請求項1〜6のいずれかに記載の炭酸ガス含有飲料。
【請求項8】
オクテニルコハク酸澱粉と、茶葉の水及び/又はエタノール抽出物とを有効成分とする、飲食品用泡質改善剤。
【請求項9】
飲食品が低アルコール飲料である、請求項8に記載の飲食品用泡質改善剤。

【公開番号】特開2009−11199(P2009−11199A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174550(P2007−174550)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】