説明

起泡装置

【課題】起泡作業による操作者間の個人差が生じることがなく、また、効率的に起泡しうる起泡装置を提供すること。
【解決手段】先端に液体との接触端子を有して所定の回転軸L周りに回転しうる回転部材と、この回転部材を機械的に回転させる回転機構とを備えてなる起泡装置であって、この回転部材の接触端子を液体Oに接触させ、鉛直方向に対して、または接触端子と接触する液体の接触面に対して所定の傾斜角度θで傾斜した回転軸L周りに回転させることで液体を起泡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、母体の羊水をはじめとする生体液の泡立ち性や泡持ち性の試験、並び
に潤滑油、液状樹脂材等の種々材料の泡立ち試験を行うための起泡装置に関する。特に、
新生児(胎児)における肺の成熟度を判断するためのマイクロバブルテストをはじめとし
て、1ないし100μmの径の泡の泡立ち度及び泡安定度を測定するための起泡装置に関
する。
【背景技術】
【0002】
胎児の肺の成熟度は、母体の羊水または新生児の胃液に含まれる肺サーファクタントの
量によって推測する。ここで肺サーファクタントとは、肺胞内で表面張力をコントロール
し肺胞がつぶれるのを防ぐ物質であり、通常は妊娠10週頃から生成され始め、32〜3
6週頃に十分な量となる。ところが早産の場合、この肺サーファクタント量が不足してい
る可能性がある。肺サーファクタントが不足していると、肺胞が徐々に潰れてしまうこと
で、胎児が呼吸窮迫症候群(RDS)を発症する可能性がある。前記呼吸窮迫症候群(R
DS)への対策を講じるためにも、肺サーファクタント量を認識することが肝要である。
【0003】
この肺サーファクタント量の認識のためにマイクロバブルテストが行われる。このマイ
クロバブルテストは、母体の羊水もしくは胃液を起泡対象として起泡し、発生する所定大
以上のマイクロバブルの数量を数えることで、胎児の肺の成熟度を判断するものである。
これは、界面活性物質である肺サーファクタントが存在しない場合、発生したマイクロバ
ブルがすぐに消滅してしまうことを利用したものである。
【0004】
従来のマイクロバブルテストにおいては、例えば、バスツールピペットで泡を手作業に
よって作成し、カバーグラス上にとった起泡後の起泡対象を、顕微鏡で5視野分観察し、
15μm以下の泡の数を数え、各視野における平均値を算出するものであった(例えば、
特許文献1参照)。
【0005】
これは具体的には、起泡対象40μlをカバーグラスにとり、このカバーグラス上の起
泡対象を、バスツールピペットで泡立てる。次にこのカバーグラスを表裏反転させること
で、泡立てた起泡対象を、窪み穴状のホールを設けたホールグラスのホール内に乗せ、4
分間静置する。これを、顕微鏡で一視野当り1mm2の大きさずつ、五視野分観察する。
一視野あたりで確認できる15μmφの泡の数をカウントし、五視野の観察によるカウン
ト数の平均値を算出するというものである。
【特許文献1】特開2002−114125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような手作業によるマイクロバブルテストでは、起泡作業に習熟が
必要であり、またマイクロバブルのカウント精度にも問題が生じうることから、検者間で
個人差が生じることがあった。また、検査作業に時間がかかり、検査に手間やコストがか
かるものであった。
【0007】
そこで本願においては、起泡作業による操作者間の個人差が生じることがなく、また、
効率的に起泡しうる起泡装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では下記(1)ないし(6)の手段を講ずるものとし
ている。
【0009】
(1)すなわち、本発明の起泡装置は、先端に液体の起泡対象との接触端子を有して所
定の回転軸L周りに回転しうる回転部材10と、この回転部材を機械的に回転させる回転
機構とを備えてなる起泡装置であって、この回転部材の接触端子を液体の起泡対象Oに接
触させ、(鉛直方向に対して、または、液体の起泡対象の、接触端子との接触面に対して
)所定の傾斜角度θで傾斜した回転軸L周りに回転させることで液体の起泡対象を起泡さ
せることを特徴とする。
【0010】
ここで、回転軸Lの傾斜は、鉛直方向に対する傾斜でもよく、または、液体の起泡対象
の、接触端子との接触面に対する傾斜でも良い。
【0011】
(2)また前記起泡装置において、前記回転部材10が、複数本のブラシ毛12を有し
た回転ブラシからなり、接触端子が前記複数本のブラシ毛12のうち少なくともいずれか
1本以上の先端部からなるものであって、この回転ブラシの少なくともいずれか複数本の
ブラシ毛12同士の間隔(ブラシ間隔12w)が、回転ブラシが回転した状態で、ブラシ
毛の先端へ向かって拡がってなることが好ましい。
【0012】
(3)また、前記いずれかの起泡装置において、回転部材10の回転軸Lが、液体の起
泡対象Oの水平な接触面の法線(すなわち鉛直方向の仮想線)に対して所定の傾斜角度θ
を有することが好ましい。
【0013】
(4)また、前記いずれかの起泡装置において、所定の傾斜角度θが、液体の起泡対象
Oの回転部材との接触面に対して10度未満であることが好ましい。
【0014】
(5)また、前記いずれかの起泡装置において、前記回転部材10の下方に、上方に開
放して液体の起泡対象を収容する平形の容器を具備してなり、前記回転部材10が回転し
うる状態で、前記回転部材10の前記接触端子の一部が、容器の底面と当接してなること
が好ましい。
【0015】
なお、容器の底面と当接する接触端子の一部は、回転軸L周りに周設された接触端子の
うち、例えば、傾いた回転軸Lの下側にある、片側方向のものとすることができる。
【0016】
(6)また、前記いずれかの起泡装置において、前記回転部材10の回転による液体の
起泡対象Oの飛散を防止する飛散防止壁を、液体の起泡対象の周囲を囲う位置に設置及び
排除可能に備えてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本願では、上記手段を採用することにより、起泡作業による操作者間の個人差が生じる
ことがなく、また、効率的に起泡しうる起泡装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、各実施例として示す図面を参照して詳細に説明する。図
1ないし図7は、本発明の実施例1の起泡装置を示す。具体的には、実施例1の起泡装置
において、図1は、起泡前の静止状態における構成を示す側面視構造説明図であり、図2
は、起泡中の回転状態における構成を示す正面視構造説明図である。図3は、起泡前の静
止状態における起泡手段付近の構成を示す側面視部分説明図である。図4は、図2に示す
起泡中の回転状態における起泡手段付近の構成の側面視部分説明図である。図5は、回転
部材10の先端部付近を示す下方斜視説明図であり、図6は、図5に示す回転部材10の
先端部付近の側面方向の軸断面説明図である。そして図7は、回転状態における回転部材
10を示す側面視説明図である。
【0019】
また、図8は、実施例2の起泡装置の静止状態における回転部材10を示す側面視説明
図であり、図9は、実施例3の起泡装置の静止状態における回転部材10を示す側面視説
明図である。
【0020】
<本発明の起泡装置の全体構成(図1、図2)>
本発明の起泡装置は、図1及び図2に示すように、起泡させた起泡対象Oに含まれる泡
を検出する起泡装置であり、起泡対象Oに接触した接触端子を回転させることで起泡対象
Oを起泡させる起泡手段1を具備する。また、起泡対象Oを収容する平形の容器2と、起
泡時の起泡対象Oの飛散を防止する飛散防止壁13wを備えた飛散防止カバー13とを具
備する。
【実施例1】
【0021】
以下、実施例1における各構成につき詳述する。
【0022】
(起泡対象O)
本発明に言う起泡対象Oは、起泡させた状態を観察することで状態を認識しうるものを
いい、起泡検査における検体を含む。起泡対象Oは、液体からなるものである。ここでい
う液体とは、完全な固体、気体を除いたものという意味であり、半液体すなわちゲル状態
、及びコロイド状態のものを含む。肺サーファクタントの量を測量する肺サーファクタン
ト用の起泡装置においては、主に母体の羊水または新生児の胃液を検体とする。実施例に
おいては前記肺サーファクタント用の起泡装置の起泡対象Oとして、母体の羊水を示す。
【0023】
(起泡手段1)
起泡手段1は、起泡対象Oと接触しうる接触端子を有してなり、この接触端子が起泡対
象Oに接触し、接触端子と起泡対象Oの相対位置を可変させることで起泡対象Oを起泡さ
せる手段である。起泡には種々の形態を採用することができるが、具体的には例えば、先
端に接触端子を有した回転部材10を備えてなり、起泡対象Oに接触した接触端子を回転
させる。また、この回転部材10の接触端子を、任意の接触長さ又は任意の接触圧をもっ
て起泡対象Oに接触させ、鉛直方向又は鉛直方向から傾斜した回転軸L回りに回転左右い
ずれか一方向又は両方向に回転させることで起泡対象Oを起泡させるものである。
【0024】
(回転部材10)
回転部材10は例えば、接触端子として複数本のブラシ毛12を有した回転ブラシから
なる。そして、この回転ブラシの少なくともいずれか複数本のブラシ毛12同士の間隔が
、回転ブラシが回転した状態で、ブラシ毛12の基端(固定端)から先端(開放端)へ向
かうにしたがって拡がってなる。
【0025】
実施例1の回転ブラシは、回転軸Lに沿って伸び、回転機構たる回転モーターMによっ
て回転する円柱型のブラシホルダー11と、ブラシホルダー11の外周に固定される複数
本のブラシ毛12とからなる(図2、図3、図5ないし図7)。
【0026】
(ブラシホルダー11)
ブラシホルダー11は、回転軸Lを中心軸として伸び、回転機構たる回転モーターMに
よって回転する円柱型の棒体からなる。具体的には例えば、直径4mmの円筒型の中空シ
ャフトからなる(図5、図6)。
【0027】
(ブラシ毛12)
ブラシ毛12は、細い線状のワイヤーブラシからなる。具体的には、直径0.1mmの
ワイヤを、ブラシホルダー11の先端付近の外周に沿って0.1mmの等間隔で固設され
る。ブラシホルダー11から先側に突出するブラシ毛12の開放長さ12lは15mmで
ある。
【0028】
回転ブラシが回転した状態静止した静止状態において、各本はいずれも回転軸L方向と
平行な方向を向き、少なくともいずれか複数本のブラシ毛12同士のブラシ間隔12wは
、ブラシ毛12の基端(固定端)から先端(開放端)のいずれの位置にわたっても略等間
隔である(図5、図6)。
【0029】
回転ブラシが回転した回転状態において、少なくともいずれか複数本のブラシ毛12同
士の間隔は、ブラシ毛12の基端(固定端)から先端(開放端)へ向かうにしたがって拡
がってなる(図7)。
【0030】
(飛散防止カバー13)
飛散防止カバー13は、起泡時に起泡対象Oが飛散するのを防止する飛散防止壁13w
を備えた、筒状のカバーである。起泡状態の様子を確認すべく、例えば内径15mmの透
明筒体が使用される。飛散防止カバー13は、昇降機能によって起泡時に容器2の底面近
傍の位置まで降りる。飛散防止カバー13が前記位置まで降りた後に、回転部材10が回
転する。飛散防止カバー13の飛散防止壁は垂直円筒面を構成するものでも良いが、他に
、下方を頂点とする部分錐面を構成するものでも良い。このように飛散防止壁に傾斜を設
けることで、飛散した起泡対象Oを容器内に迅速に回収することができ、起泡対象Oの量
の誤差を抑制することができる。
【0031】
(回転位置調節手段)
回転部材10は、回転位置調節手段によって、静止状態の回転部材10の先端の接触端
子の少なくとも一部が起泡対象Oと接触する位置まで昇降する。この回転位置調節手段に
よって、回転部材10が起泡可能な状態にセットされる。なお実施例では、接触端子たる
複数のブラシ毛12の全部が起泡対象Oと接触する。
【0032】
好ましい回転位置たる回転部材10の昇降高さ(ブラシのセット高さ)は、静止状態に
おいて複数本あるブラシ毛12の全ての先端部が、容器2の底板たるガラスの表面と接触
する高さである。たとえば容器2の側方に配したセンサによって位置決めを行う。このセ
ンサは、容器2の底板の上面とブラシ毛12の空隙の有無を側面からの視認光によって判
断する非接触視認センサであってもよく、ブラシ毛12と容器2の接触による圧力を検知
する圧力センサであってもよい。このほか、ブラシ毛12と容器2を導電体からなるもの
としておき、ブラシ毛12と容器2の接触による導電量を検知する導電センサなど、種々
のセンサを使用することができる。
【0033】
液量120μlの場合、回転部材10の昇降高さ(ブラシのセット高さ)は、プラスマ
イナス1mm以内の誤差であることが好ましい。
【0034】
(回転軸L)
回転軸Lは、起泡対象Oの回転部材との接触面または鉛直方向に対して、所定の傾斜角
度θをもって傾斜してなる。この所定の傾斜角度θは、起泡対象Oの回転部材との接触面
に対して10度未満であることが好ましい。
【0035】
実施例では回転軸Lの下方側が、側面視(図1)にて、所定の傾斜角度θたる3度だけ
鉛直方向に対して前方に傾いている。また回転軸Lは正面視(図2)にて鉛直方向を向く
。これにより、水平面の液面の法線に対して3度だけ回転ブラシが傾いて接触することと
なる。具体的に言えば、ブラシ毛12の低い側(図4の回転軸Lよりも向かって左側)に
ある下方側接触先端121は、飛散防止カバー13と容器2の底面の接触面を周回する一
方、高い側(図4の回転軸Lよりも向かって右側)にある上方側接触先端122は、悲惨
防止カバーの内壁に沿って周回する(図4)。これにより、接触端子たるブラシ毛12の
先端は、回転軸Lの平面視投射軸を長軸とする楕円軌道を描く。
【0036】
具体的には例えば、内径15mmの円上にブラシ毛12を配置し、回転軸Lの傾斜を鉛
直方向に対して3度だけとしたとき、ブラシ毛12の先端は、長径15.02mm、短径
15mmの楕円軌道を描く。これにより、ブラシ上昇時には起泡対象Oを掻き上げ、下降
時すなわち起泡対象Oの液中に戻るときに起泡対象Oを剪断することとなり、また起泡対
象Oの攪拌を効率的に行うものとなる。
【0037】
さらに効率的な起泡のためには、図4(回転軸Lよりも向かって左側)に示すように、
前記ブラシ毛12の低い側のブラシ毛の先端たる下方側接触先端121は、回転部材10
の回転状態において、容器2の底面と接触してめくれ上がった状態となることが好ましい
。これは、接触端子のブラシ毛12が、起泡対象Oの内外を高速で回転移動しながら、容
器2内でめくれあがることで、容器2の底面とブラシ毛12の間に微細な泡が連続的に取
り込まれることによる。
【0038】
(容器2)
容器2は、上方に開放して起泡対象Oをその内部に収容する平形のものであり、回転部
材10の下方に配置される。容器2は具体的には、底面となる底板と、この底板より上方
に伸びるスペーサー21とを一体的に具備する。例えば、ガラス板からなる底板と、底板
の上面へ、所定範囲(起泡対象を収容する所定範囲)を囲うように固定された、粘着フィ
ルムからなるスペーサー21とが使用される。
【0039】
(スペーサー21)
容器2の底板の上面には、起泡対象Oを載置する載置箇所を覆うようにして所定厚さの
スペーサー21が配設固定される。スペーサー21は、容器2の上方にカバーグラスを被
せたときに、カバーグラスと容器2の底面とが直接接するのを防ぐべく、容器2の底面の
上面側に所定高さのスペースを確保するものである。実施例のスペーサー21として、所
定厚さとして厚さ0.2mmのプラスチックテープを、容器2の底面上であって、起泡対
象Oの収容或いは滴下箇所を囲う平面視四方の位置に貼付している。
【実施例2】
【0040】
実施例2の起泡装置の静止状態における回転部材10の先端部分について、図8及び図
9にそれぞれ側面視及び下方斜視説明図を示す。
【0041】
実施例2の回転部材10は、ブラシホルダー11が、先端に半球部11bを設けた柱体
からなり、前記半球部11bの表面の同心円上の位置へ、複数本のブラシ毛12が等間隔
に固設される(図8)。
【0042】
ブラシ毛12同士の間隔12wは、回転部材10が回転しない静止状態においても、回
転軸L下方に向かうに従って広くなる(図8)。また、ブラシ毛12は、半球部11bの
中心付近の位置から球面表面側たる下方へ放射状に向かう方向へ伸びる。複数本のブラシ
毛12の先端すなわち接触端子の先端は、全て回転軸L方向の同一位置すなわち同一高さ
に揃って、三重の同心円を形成する(図9)。その他の特記しない具体的な構成は、実施
例1と同様である。
【実施例3】
【0043】
図10に、実施例3の起泡装置の静止状態における回転部材10の側面視説明図を示す

【0044】
実施例3の回転部材10は、ブラシホルダー11が、中実の円柱体からなり、その先端
付近の外側面に、複数本のブラシ毛12が、回転軸Lと垂直な横方向を向くように、複数
の列を成して等間隔に固設される(図9)。ブラシ毛12の各列の固設位置は、ブラシホ
ルダー11の外側面を、回転軸L方向に対して斜進する位置である(図9)。ブラシ毛1
2同士の間隔12wは、回転部材10の静止状態及び回転状態のいずれにおいても互いに
等しい。その他の特記しない具体的な構成は、実施例1と同様である。
【0045】
その他各部の具体的な構成は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣
旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0046】
(マイクロバブルテストの実施機構によるマイクロバブルテストの方法)
本発明の起泡装置によって、起泡対象Oは下記の機構を経て起泡及び泡数検出され、こ
のマイクロバブルテストの方法によってマイクロバブルテストが達成される。
(1)先ず、容器2の底面のガラスの中央部へ、起泡対象Oを滴下する。装置内の自動滴
下手段によるものでもよく、手動で容器2の底面上へ滴下したものを装置の起泡位置或い
は起泡位置へ誘導される適宜位置へセットするものとしても良い。
(2)次に、容器2の底面上に、円筒状の飛散防止カバー13を昇降機構によって降ろし
てセットする。なお手動で飛散防止カバー13を容器2の底面上に載置してセットするも
のでも良い。
(3)次に、回転手段たる回転ブラシを、回転ブラシの接触端子の少なくともいずれかが
起泡対象Oと接触する状態となるまでセットする。
(4)次に、回転手段たる回転ブラシを回転させる。この回転状態において、ブラシ毛1
2の毛先が広がりながら回転する。
(5)起泡後、昇降機構によって、容器2の底面上から飛散防止カバー13を撤去する。
【0047】
(泡のたて方について)
回転部材10たる回転ブラシはディスポーサブルで使用する。起泡時(泡立て時)の回
転駆動手段たるモーターMの回転数は10,000rpmであり、回転時間は10秒であ
る。これらは回転駆動手段の一つの構成として備えられた、回路を制御するマイコンで設
定される。
【0048】
前記回転駆動手段による回転手段の回転開始とともに、ブラシ先端部が遠心力により広
がり、起泡対象Oを剪断および撹拌しながら起泡する。ここで、回転手段の回転軸Lを、
起泡対象Oの液面たる水平方向面の法線にたいして斜めに3°程度傾斜させて配置させて
いることで、起泡対象Oを掻き上げる効果が得られ、起泡効率が上がる。
【0049】
なお本実施例では、起泡時にブラシを押しつける必要はなく、前述のブラシが広がった
状態で起泡対象Oに触れる程度の高さであれば起泡可能である。
【0050】
(生体液の泡立ち試験)
生体液の流動特性を知ることができる。肺サーファクタント量の推定による肺機能試験
のほか、グルコース濃度の推定に用いられうる。また、血液の表面張力、血液或いは血清
の、蛋白溶液としての界面化学的物性の低下の程度、あるいは血清と血管内皮との界面粘
度を推定しうる。
【0051】
これらによって、例えば、肥満と高血圧の症状の把握(一部に表面張力が増大する例が
しられる)、アレルギー疾患や悪性腫瘍の把握(一部に表面張力が低下する例が知られる
)を行いうる。
【0052】
なお、泡立ち性や泡持ち性は、血清の表面張力及び血圧と相関し、血清蛋白分屑とも一
部相関する。他に、細菌のPCR検査(感染症の核酸増幅検査)の際に用いることもでき
る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の起泡装置は、生体液(血液、血清、鼻粘膜、尿を含む)を起泡対象Oとする医
学的な使用のほか、潤滑油等の泡立ち試験として、直径が1ないし100μmの泡立ち度
及び泡安定度を測定するために使用しうる。
【0054】
たとえば、溶剤やエラストマー樹脂を起泡対象Oとした、界面活性剤の不純物の析出の
ための泡立ち試験に使用することができる。或いは、潤滑油等の工業用油剤を起泡対象と
した、添加剤たる消泡剤の機能確認試験のためにも使用しうる。また、固化前の発泡材に
生成された微小泡の確認のために使用しうる。
【0055】
例えば、合成樹脂材やエラストマーを対象サンプルとして行われる、界面活性剤の不純
物の析出のための泡立ち試験として、従来は、50℃、150mLの純水にサンプル5g
を入れ、5分間浸漬後、60mLを試験管にとり、20回振とうしたのちに1分放置し、
放置後の状態を観察していた。
【0056】
これに対して、本発明によれば、数ミクロン単位の微小な泡を立てる起泡作業を、効率
的に、且つ同条件を容易に再現可能なものとして行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1の起泡装置の、静止状態における構成を示す側面視構造説明図である。
【図2】実施例1の起泡装置の、回転状態における構成を示す正面視構造説明図である。
【図3】実施例1の起泡装置の、静止状態における起泡手段付近の構成を示す側面視部分説明図である。
【図4】図2に示す実施例1の起泡装置の、回転状態における起泡手段付近の構成の側面視部分説明図である。
【図5】実施例1の起泡装置の、静止状態における回転部材10の先端部付近を示す下方斜視拡大説明図である。
【図6】図5に示す実施例1の回転部材10の先端部付近の側面方向の軸断面拡大説明図である。
【図7】実施例1の起泡装置の回転状態における回転部材10を示す側面視説明図である。
【図8】実施例2の起泡装置の静止状態における回転部材10を示す側面視説明図である。
【図9】実施例2の起泡装置の静止状態における回転部材10を示す下方斜視説明図である。
【図10】実施例3の起泡装置の静止状態における回転部材10を示す側面視説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 起泡手段
10 回転部材
11 ブラシホルダー
12 ブラシ毛
12l 開放長さ
12w ブラシ間隔
13 飛散防止カバー
13w 飛散防止壁
2 容器
21 スペーサー
L 回転軸
O 起泡対象
M 回転モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に液体との接触端子を有して所定の回転軸周りに回転しうる回転部材と、この回転部材を機械的に回転させる回転機構とを備えてなる起泡装置であって、この回転部材の接触端子を起泡対象に接触させ、回転部材を所定の傾斜角度で傾斜した回転軸回りに回転させることで液体を起泡させることを特徴とする起泡装置。
【請求項2】
回転部材が、複数本のブラシ毛を有した回転ブラシからなり、接触端子が前記複数本のブラシ毛のうち少なくともいずれか1本以上の先端部からなるものであって、この回転ブラシの少なくともいずれか複数本のブラシ毛同士の間隔が、回転ブラシが回転した状態で、ブラシ毛の先端へ向かって拡がってなる請求項1記載の起泡装置。
【請求項3】
液体の水平な接触面に対し、前記回転ブラシの回転軸が所定の傾斜角度θを有する請求項1又は2記載の起泡装置。
【請求項4】
傾斜角度θが、液体の水平な接触面に対して10度未満である請求項1、2または3記載の起泡装置。
【請求項5】
回転部材の下方に、上方に開放して液体を収容する容器を具備してなり、前記回転部材が回転しうる状態で、前記回転部材の前記接触端子の一部が、容器の底面と当接してなる請求項1、2、又は3記載の起泡装置。
【請求項6】
前記回転部材の回転による液体起泡対象の飛散を防止する飛散防止壁を、起泡対象の周囲を囲う位置に設置及び排除可能に備えてなる請求項1、2、3、又は4記載の起泡装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−309942(P2007−309942A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141846(P2007−141846)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3123967号
【原出願日】平成18年5月20日(2006.5.20)
【出願人】(598026758)東京マイクロデバイス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】