超伝導線材用被覆材、超伝導電線及び電気機器
【課題】特性の低下が抑制された超伝導線材用被覆材、超伝導電線及び電気機器を提供する。
【解決手段】超伝導線材用被覆材10は、超伝導線材を被覆するための被覆材であって、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、−196℃における引張破断伸びが12%以上であることを特徴とする。超伝導線材用被覆材10は、ポリイミド樹脂からなる基材11を含むことが好ましい。また、超伝導線材用被覆材10は、基材11の一方の面上に形成された粘弾性体層12を含むことが好ましい。
【解決手段】超伝導線材用被覆材10は、超伝導線材を被覆するための被覆材であって、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、−196℃における引張破断伸びが12%以上であることを特徴とする。超伝導線材用被覆材10は、ポリイミド樹脂からなる基材11を含むことが好ましい。また、超伝導線材用被覆材10は、基材11の一方の面上に形成された粘弾性体層12を含むことが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導線材用被覆材、超伝導電線及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気機器に使用される回転機器、磁石等のコイル機器には、平角線材を絶縁性の被覆材で被覆した平角電線が用いられている(例えば特許文献1)。特許文献1には、並列に配置した平角線材に、ポリエステルテープを半重ねで6回巻回して絶縁を施した平角電線が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−4552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、超伝導線材は、液体窒素温度での使用が可能であり、比較的高い臨界電流密度が得られ、長尺化が可能なまでに開発が進んできている。このため、超伝導線材を電気機器に用いることが期待されている。
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示の平角線材を超伝導線材に適用した場合に、超伝導線材は液体窒素温度で使用されるため、特性が低下するという問題を本発明者は初めて明らかにした。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、特性の低下が抑制された超伝導線材用被覆材、超伝導電線及び電気機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、液体窒素温度のような極低温下における被覆材の特性に着目し、超伝導電線を備えた電気機器の動作中に特性の低下を抑制できる被覆材を鋭意研究した結果、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明における超伝導線材用被覆材は、超伝導線材を被覆するための被覆材であって、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、−196℃における引張破断伸びが12%以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の超伝導線材用被覆材によれば、−196℃における引張破断強度及び引張破断伸びが上記範囲であるので、液体窒素温度領域において、超伝導線材の応力による変化や温度変化等に対して、超伝導線材用被覆材の追従性が良好である。このため、本発明の超伝導線材用被覆材を超伝導線材に被覆した超伝導電線の動作中に、超伝導線材の膨張、振動、屈曲等が生じても、超伝導線材から浮くことや超伝導線材用被覆材の割れの発生を抑制できる。このため、特性の低下を抑制できる超伝導線材用被覆材を提供することができる。
【0010】
上記超伝導線材用被覆材において好ましくは、ポリイミド樹脂からなる基材を含む。
【0011】
ポリイミド樹脂は、耐熱性を有すると共に、不燃性材料であるので、電気機器に使用する絶縁材料として、優れた難燃性を有する。このため、ポリイミド樹脂からなる基材を備えた超伝導線材用被覆材の特性の低下がより抑制されたものとなる。
【0012】
上記超伝導線材用被覆材において好ましくは、基材と、この基材の一方の面上に形成された粘弾性体層とを含む。
【0013】
超伝導線材に粘弾性体層が接するように被覆すると、粘弾性体層は基材よりも接着力が大きいので、超伝導線材用被覆材が超伝導線材から浮いてしまうことが効果的に抑制される。このため、超伝導線材用被覆材の特性の低下がより抑制されたものとなる。
【0014】
上記超伝導線材用被覆材において好ましくは、粘弾性体層はシリコーン系粘弾性体組成物を含有する。
【0015】
シリコーン系粘弾性体組成物は、耐寒性、耐放射線性、耐熱性及び耐腐食性に優れるため、粘弾性体層の特性を向上できる。
【0016】
上記超伝導線材用被覆材において好ましくは、8.0μm以上30.0μm以下の厚みを有し、基材は5.0μm以上25.0μm以下の厚みを有する。
【0017】
超伝導線材用被覆材の厚みが8.0μm以上で、かつ基材の厚みが5.0μm以上であると、強度を向上することができる。超伝導線材用被覆材の厚みが30μm以下で、かつ基材の厚みが25.0μm以下であると、超伝導線材用被覆材を超伝導線材に被覆したときに形成される超伝導電線における超伝導線材の密度を高めることができるので、超伝導電線の特性の低下がより抑制されたものとなる。
【0018】
本発明の超伝導電線は、上記いずれかに記載の超伝導線材用被覆材と、この超伝導線材用被覆材に被覆された超伝導線材とを備える。
【0019】
本発明の超伝導電線によれば、−196℃における引張破断強度が12N/3mm以上であり、かつ−196℃における引張破断伸びが12%以上である超伝導線材用被覆材を備えているので、超伝導線材に被覆材を被覆した超伝導電線を電気機器に用い、液体窒素温度で動作させたときに、超伝導線材用被覆材が浮く場合や、割れてしまうことを抑制できるので、特性の低下が抑制された伝導電線を提供することができる。
【0020】
本発明の電気機器は、上記超伝導電線を用いて作製される。
【0021】
本発明の電機機器によれば、液体窒素温度で動作させたときに特性の低下が抑制された超伝導電線を備えているので、同様に、特性の低下が抑制された電気機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、特性の低下が抑制された超伝導線材用被覆材、超伝導電線及び電気機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における超伝導線材用被覆材を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における超伝導線材用被覆材を概略的に示す断面図であり、図1における領域IIの拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2における超伝導電線を概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態2における超伝導電線を概略的に示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態2における超伝導電線を概略的に示し、図3及び図4におけるV−V線に沿った断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3における電気機器の一例である超伝導コイルを概略的に示す斜視図である。
【図7】実施例において低温引張破断強度及び低温引張破断伸びを測定するための測定装置を概略的に示す模式図である。
【図8】実施例で低温引張破断強度及び低温引張破断伸びを測定するための測定装置において、内部を概略的に示す模式図である。
【図9】実施例で低温引張破断強度及び低温引張破断伸びを測定するための測定装置の内部おいて、評価サンプルを引っ張った状態を概略的に示す模式図である。
【図10】実施例において、部分放電開始電圧を測定するための測定装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0025】
(実施の形態1)
図1及び図2を参照して、本発明の一実施の形態における超伝導線材用被覆材について説明する。図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態1における超伝導線材用被覆材10は、超伝導線材を被覆するための被覆材である。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態における超伝導線材用被覆材10は、テープ状であり、例えば巻芯20にロール状に巻回されている。なお、超伝導線材用被覆材10は、テープ状に限定されず、シート状、フィルム状などの他の形状であってもよい。
【0027】
図2に示すように、超伝導線材用被覆材10は、表面11aと、表面11aと反対側の裏面11bとを有する基材11と、基材11の表面11a上に形成された粘弾性体層12とを備えている。なお、粘弾性体層12は省略されてもよく、裏面11bにも粘弾性体層が形成されていてもよいが、粘弾性体層12は基材11の一方面上のみに形成されていることが好ましい。
【0028】
また、基材11と粘弾性体層12との間には、別の層がさらに形成されていてもよい。また、粘弾性体層12の表面12a上に、表面12aを保護するための剥離ライナー(図示せず)が形成されていてもよい。
【0029】
基材11は、絶縁性であれば特に限定されないが、耐放射線性及び耐熱性を有していることが好ましい。このような基材11として、例えばポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの樹脂のうち、特にポリイミド樹脂を基材11として用いることが好ましい。ポリイミド樹脂は、耐熱性と共に、不燃性材料であるので、電気機器に使用する絶縁材料としては、優れた難燃性を有するという点で、本実施の形態の超伝導線材用被覆材10の基材11として優れた特性を有する。
【0030】
上記ポリイミド樹脂は、公知または慣用の方法により得ることができる。例えば、ポリイミドは有機テトラカルボン酸二無水物とジアミノ化合物(ジアミン)とを反応させてポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を合成し、このポリイミド前駆体を脱水閉環することにより得ることができる。
【0031】
上記有機テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物等が挙げられる。これらの有機テトラカルボン酸二無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記有機テトラカルボン酸二無水物のうち、柔軟性を重視する場合には、エーテル結合を含有する化合物が好ましく、例えばODPAが好ましい。上記有機テトラカルボン酸二無水物のうち、強度を重視する場合には、剛直な構造を有するPMDAを用いることができ、強度及び柔軟性のバランスを考慮する場合には、BPDAを用いることができる。
【0032】
上記ジアミノ化合物としては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。これらのジアミノ化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
上記ジアミノ化合物としては、エーテル結合を含有する化合物が好ましく、具体的には4,4’ −ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を用いることが好ましい。ODAを含むことで超伝導線材用被覆材10の伸びが向上し、柔らかいフィルムに設計することができる。ジアミン化合物成分中のODAの添加量としては、10モル%以上100モル%以下が好ましく、30モル%以上100モル%以下がより好ましく、50モル%以上100モル%以下がより一層好ましい。
【0034】
なお、本実施の形態において用いるポリイミド樹脂としては、有機テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用い、ジアミノ化合物としてp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0035】
このようなポリイミド樹脂として、カプトンH(東レ・デュポン社製)、カプトンEN(東レ・デュポン社製)、ユーピレックスR(宇部興産社製)、アピカルAH(カネカ社製)、「アピカルNPI(登録商標)」(カネカ社製)などの市販品を用いることもできる。
【0036】
基材11は、5.0μm以上25.0μm以下の厚みを有することが好ましく、10.0μm以上12.5μm以下の厚みを有することがより好ましい。厚みがこの範囲内であると、十分な絶縁性を確保でき、超伝導線材を被覆したときに超伝導線材の機能を十分に発揮できる。
具体的には、基材11の厚みが25.0μm以下であると、超伝導線材用被覆材を超伝導線材に被覆した際に形成される超伝導電線における超伝導線材の線占率を高めることができるので、超伝導電線の特性を向上できる。基材11の厚みが12.5μm以下であると、超伝導電線の特性をより向上できる。
一方、基材11の厚みが5.0μm以上であると、超伝導線材用被覆材10を超伝導線材に被覆した際に形成される超伝導電線の絶縁性を高めることができるので、動作中に絶縁破壊することを抑制できる。基材11の厚みが10.0μm以上であると、絶縁破壊することをより抑制できる。
【0037】
なお、本実施の形態における基材11は、後述する粘弾性体層12との投錨力を向上させるために、スパッタエッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理などの化学的処理がされていてもよく、下塗り剤などが塗布されていてもよい。
【0038】
また、本実施の形態における基材11は、1層で構成されていてもよく、複数層で構成されていてもよい。
【0039】
粘弾性体層12は、室温(23℃)において粘弾性を示す粘弾性体を構成するベースポリマーを含む。このようなベースポリマーとしては、特に限定されず、公知のベースポリマーから適宜選択して用いることができ、例えばアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ウレタン系ポリマー、フッ素系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が挙げられる。これらのベースポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのベールポリマーのうち、耐寒性、耐放射線性、耐熱性及び耐腐食性に優れる観点から、シリコーン系ポリマーを粘弾性体層12として用いることが好ましい。つまり、粘弾性体層12は、シリコーン系ポリマーを含有する粘弾性体組成物(シリコーン系粘弾性体組成物)を含むことが好ましく、シリコーン系粘弾性体組成物を主成分とし、残部が不可避的不純物からなることがより好ましい。
【0040】
ここで、上記シリコーン系粘弾性体組成物は、シリコーンガム及びシリコーンレジンを主成分とする配合物の架橋構造を含有している。
【0041】
シリコーンガムとしては、例えば、ジメチルシロキサンを主な構成単位とするオルガノポリシロキサンを好適に用いることができる。オルガノポリシロキサンには必要に応じてビニル基、または他の官能基が導入されてもよい。オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は通常18万以上であるが、28万以上100万以下が好ましく、50万以上90万以下がより好ましい。これらのシリコーンガムは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。重量平均分子量が低い場合には、架橋剤の量によりゲル分率を調整することができる。
【0042】
シリコーンレジンとしては、例えば、M単位(R3SiO1/2)、Q単位(SiO2)、T単位(RSiO3/2)及びD単位(R2SiO)から選ばれるいずれか少なくとも1種の単位(上記単位中、Rは一価炭化水素基または水酸基を示す)を有する共重合体からなるオルガノポリシロキサンを好適に用いることができる。この共重合体からなるオルガノポリシロキサンは、OH基を有する他に、必要に応じてビニル基等の種々の官能基が導入されていてもよい。導入する官能基は架橋反応を起こすものであってもよい。共重合体としては、M単位とQ単位とからなるMQレジンが好ましい。
【0043】
シリコーンガムとシリコーンレジンとの配合割合(重量比)は特に限定されないが、シリコーンガム:シリコーンレジン=100:0〜20:80程度が好ましく、100:0〜30:70程度がより好ましい。シリコーンガム及びシリコーンレジンは、単にそれらを配合してもよく、それらの部分縮合物であってもよい。
【0044】
上記配合物には、それを架橋構造物とするために、通常、架橋剤を含む。架橋剤により、シリコーン系粘弾性体組成物のゲル分率を調整することができる。
【0045】
粘弾性体層12のゲル分率は、粘弾性体組成物の種類によっても異なるが、概ね20%以上99%以下程度が好ましく、30%以上98%以下程度がより好ましい。ゲル分率がこの範囲内であると、接着力と保持力とのバランスがとりやすいという利点がある。具体的には、ゲル分率が99%以下の場合、初期接着力が低くなることを抑制できるので、貼り付きが良好になる。ゲル分率が20%以上の場合、十分な保持力が得られるので、超伝導線材用被覆材10のずれを抑制できる。
【0046】
本実施の形態における粘弾性体組成物のゲル分率(重量%)は、シリコーン系粘弾性体組成物から乾燥重量W1(g)の試料を採取し、これをトルエンに浸漬した後、この試料の不溶分をトルエン中から取り出し、乾燥後の重量W2(g)を測定し、(W2/W1)×100の式より求められる値である。
【0047】
本実施の形態におけるシリコーン系粘弾性体組成物は、一般に用いられる、過酸化物系架橋剤による過酸化物硬化型架橋と、Si−H基を含有するシロキサン系架橋剤による付加反応型架橋を用いることができる。
【0048】
過酸化物系架橋剤の架橋反応はラジカル反応であるため、通常150℃以上220℃以下の高温下で架橋反応が進められる。一方、ビニル基含有のオルガノポリシロキサンとシロキサン系架橋剤との架橋反応は付加反応であるので、通常80℃以上150℃以下の低温で反応が進む。本実施の形態においては、特に低温短時間で架橋を完了できる観点から、付加反応型架橋が好ましい。
【0049】
上記過酸化物系架橋剤としては、従来よりシリコーン系粘弾性体組成物に使用されている各種のものを特に制限なく使用でき、例えば過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、2,4−ジクロロ−ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキシン−3等が挙げられる。これらの過酸化物系架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。過酸化物系架橋剤の使用量は、通常、シリコーンゴム100重量部に対して0.15重量部以上2重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上1.4重量部以下であることがより好ましい。
【0050】
シロキサン系架橋剤として、例えば、ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に少なくとも平均2個有するポリオルガノハイドロジエンシロキサンが用いられる。ケイ素原子に結合した有機基としてはアルキル基、フェニル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられるが、合成及び取り扱いが容易である観点から、メチル基が好ましい。シロキサン骨格構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状が好ましい。
【0051】
シロキサン系架橋剤の添加量は、シリコーンゴム及びシリコーンレジン中のビニル基1個に対して、ケイ素原子に結合した水素原子が好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは4個以上17個以下になるように配合する。ケイ素原子に結合した水素原子が1個以上の場合には十分な凝集力が得られ、4個以上の場合にはより十分な凝集力が得られる。ケイ素原子に結合した水素原子が30個以下の場合には接着特性の低下を抑制でき、17個以下の場合には接着特性の低下をより抑制できる。
シロキサン系架橋剤を用いる場合には、通常、白金触媒が用いられるが、その他種々の触媒を使用することができる。
なお、シロキサン系架橋剤を用いる場合には、シリコーンゴムとしてビニル基を有するオルガノポリシロキサンを用い、そのビニル基は0.0001モル/100g以上0.01モル/100g以下程度であることが好ましい。
【0052】
本発明の粘弾性体層には、上記ベースポリマーの他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、粘着付加剤、可塑剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、安定剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、顔料、軟化剤、充填剤などの従来公知の各種の添加剤を適宜配合することができる。
【0053】
粘弾性体層12は、1.0μm以上25.0μm以下の厚みを有することが好ましく、3.0μm以上5.0μm以下の厚みを有することがより好ましい。粘弾性体層12の厚みがこの範囲内であると、適度な接着性が得られるという利点がある。
具体的には、粘弾性体層12の厚みが25.0μm以下であると、超伝導線材用被覆材10を超伝導線材に被覆した際に形成される超伝導電線における超伝導線材の線占率を高めることができるので、超伝導電線の特性をより向上できる。粘弾性体層12の厚みが5.0μm以下であると、特性をより一層向上できる。
一方、粘弾性体層12の厚みが1.0μm以上であると、超伝導線材への密着度を高めることができ、超伝導線材から超伝導線材用被覆材10が浮くことをより抑制できる。粘弾性体層12の厚みが3.0μm以上であると、超伝導線材用被覆材10の浮きをより一層抑制できる。
【0054】
超伝導線材用被覆材10は、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、13.8N/3mm以上であることが好ましく、15.4N/3mm以上であることがより好ましい。−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm未満であると、液体窒素温度下での強度が小さいため、振動などによる浮きや割れが生じやすい。−196℃における引張破断強度が13.8N/3mm以上であると、振動などによる浮きや割れを効果的に抑制でき、15.4N/3mm以上であると、振動などによる浮きや割れをより効果的に抑制できる。
【0055】
なお、超伝導線材用被覆材10の−196℃における引張破断強度は大きいほど好ましいが、製造上の観点から、上限は例えば19.4N/3mmである。
【0056】
ここで、上記「−196℃における引張破断強度」は、幅が3mmの超伝導線材用被覆材10を−196℃の雰囲気内に配置した状態で、超伝導線材用被覆材10を引っ張って破断した時の力を意味し、数値が大きいほど−196℃での強度が大きいことを示す。
【0057】
上記「−196℃における引張破断強度」は、例えば分子内に芳香族系の剛直なユニットをもつ材料を基材として用いることにより調整することができる。
【0058】
超伝導線材用被覆材10は、−196℃における引張破断伸びが12%以上であり、16%以上であることが好ましく、34%以上であることがより好ましい。−196℃における引張破断伸びが12%未満であると、液体窒素温度下で膨張しにくいため、磁場や摩擦熱などによる浮きや割れが生じやすい。−196℃における引張破断伸びが16%以上であると、振動などによる浮きや割れを効果的に抑制でき、34%以上であると、振動などによる浮きや割れをより効果的に抑制できる。
【0059】
なお、超伝導線材用被覆材10の−196℃における引張破断伸びは大きいほど好ましいが、製造上の観点から、上限は例えば59%である。
【0060】
ここで、上記「−196℃における引張破断伸び」は、幅が3mmで長さがXmmの超伝導線材用被覆材10を−196℃の雰囲気内に配置した状態で、超伝導線材用被覆材10を引張速度100mm/分で引っ張って破断した時の超伝導線材用被覆材10の長さがYmmであった場合に、(Y−X)/X×100(%)を意味し、数値が大きいほど−196℃での伸びが大きいことを示す。
【0061】
上記「−196℃における引張破断伸び」は、エーテル結合、アミド結合、エステル結合のような、比較的分子鎖の回転しやすい柔軟な構造、ユニットをもつ材料を選択することにより調整することができる。
【0062】
上記引張破断強度及び引張破断伸びにおいて、−196℃を基準にしているのは、超伝導線材は一般的に液体窒素を冷媒として使用しているので、液体窒素の沸点での引張破断強度及び引張破断伸びを特定するためである。−196℃を基準にすることで、動作中に生じる超伝導線材用被覆材10の浮き、割れを効果的に抑制できる特性を本発明者は見出した。
【0063】
超伝導線材用被覆材10は、8.0μm以上30.0μm以下の厚みを有することが好ましく、13.0μm以上15.5μm以下の厚みを有することがより好ましい。超伝導線材用被覆材10の厚みが8.0μm以上であると、強度が十分であり、取り扱い性に優れ、13.0μm以上であると、強度がより十分であり、取り扱い性により優れる。超伝導線材用被覆材10の厚みが30.0μm以下であると、超伝導線材用被覆材を超伝導線材に被覆した際に形成される超伝導電線における超伝導線材の線占率を高めることができるので、超伝導電線の特性をより向上でき、15.5μm以下であると、特性をより一層向上できる。
【0064】
巻き回し角度が20°以上80°以下で、かつ超伝導線材用被覆材10の一部が重なり合うハーフラップで螺旋状に巻回される場合において、超伝導線材の幅と、巻き回し角度とを考慮すると、被覆する超伝導線材の幅の1倍以上2倍以下の幅を有することが好ましい。このような超伝導線材用被覆材10の幅は、例えば1mm以上80mm以下が好ましく、1.5mm以上60mm以下がより好ましく、2mm以上40mm以下がより一層好ましい。
【0065】
超伝導線材用被覆材10は、超伝導線材を被覆する際の接続部分であるつなぎ目を設けないことが好ましいので、長尺であることが好ましい。このような超伝導線材用被覆材10の長さは、例えば500mm以上が好ましく、1000mm以上がより好ましく、3000m以上がより一層好ましい。本実施の形態の超伝導線材用被覆材10は巻芯20にロール状に巻回されて保持されているが、1つの巻芯20に複数列に亘って巻回する、いわゆるボビン巻きにより保持されていてもよい。
【0066】
続いて、図1及び図2を参照して、本実施の形態における超伝導線材用被覆材10の製造方法について説明する。
【0067】
まず、上述したように、表面11aと、この表面11aと反対側の裏面11bとを有する基材11を準備する。
【0068】
次に、基材11の表面11a上に、粘弾性体層12を形成する。粘弾性体層12の形成方法は特に限定されないが、例えばシリコーン系粘弾性体組成物を基材11の表面11a上にコーティングする方法により、粘弾性体層12を形成することができる。
【0069】
具体的には、シリコーンゴム、シリコーンレジン、架橋剤、触媒等を含むシリコーン系粘弾性体組成物をトルエン等の溶剤に溶解した溶液を基材11の表面11aに塗布し、次いで上記配合物を加熱することで溶剤の留去と架橋とを行う。本実施の形態におけるシリコーン系粘弾性体組成物を含む粘弾性体層12の形成方法としては、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0070】
以上の工程を実施することにより、図2に示す超伝導線材用被覆材10を製造することができる。なお、超伝導線材用被覆材10の製造方法は、上述した方法に特に限定されない。超伝導線材用被覆材10が剥離ライナーを備えている場合には、例えば以下の方法で製造してもよい。
【0071】
具体的には、まず剥離ライナーを準備する。剥離ライナーとしては、例えば、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シート、金属箔、またはそれらのラミネート体等が挙げられる。
【0072】
次に、剥離ライナー上に、例えばシリコーン系粘弾性体組成物を含む粘弾性体層12を形成する。粘弾性体層12を形成する方法は特に限定されないが、トルエンを溶剤に用い、付加反応型架橋を行うシリコーン系粘弾性体組成物を含む粘弾性体層12を形成する場合には、加熱温度は、例えば80℃以上150℃以下が好ましく、100℃以上130℃以下がより好ましい。なお、加熱温度は、溶剤を留去でき、所定の架橋反応が進行できる温度であれば特に限定されない。
【0073】
次に、剥離ライナー上に形成された粘弾性体層12を、基材11に転写する。以上の工程を実施することにより、図2に示す超伝導線材用被覆材10を製造することができる。
【0074】
なお、本実施の形態では、図1に示すように、図2に示す超伝導線材用被覆材10を巻芯20に巻き付ける工程をさらに実施する。この工程は、超伝導線材用被覆材10の形状等により省略されてもよい。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態における超伝導線材用被覆材10は、超伝導線材を被覆するための被覆材であって、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、−196℃における引張破断伸びが12%以上であることを特徴とする。
【0076】
本実施の形態における超伝導線材用被覆材10によれば、−196℃における引張破断強度及び引張破断伸びが上記範囲内であるので、液体窒素温度領域において伸びやすく、かつやわらかいため、超伝導線材の温度変化や応力による変化が加えられても、超伝導線材用被覆材10の強度及び追従性が良好である。このため、液体窒素温度での動作中において、超伝導線材の膨張、振動、屈曲等が生じても、浮きや割れの発生を抑制できる。例えば、超伝導線材用被覆材10を超伝導線材に被覆した超伝導電線を用いて作製した超伝導コイルの動作時に、発生する磁場により超伝導線材が膨張しても、超伝導線材用被覆材10も追従して伸びるので、超伝導線材用被覆材10の浮きや割れの発生を抑制できる。したがって、特性の低下が抑制された超伝導線材用被覆材10を実現できる。
【0077】
(実施の形態2)
図3〜図5を参照して、本発明の実施の形態2における超伝導電線100について説明する。本実施の形態における超伝導電線100は、図3に示すように、実施の形態1の超伝導線材用被覆材と10と、この超伝導線材用被覆材10により被覆された超伝導線材110とを備えている。
【0078】
超伝導線材110が超伝導線材用被覆材10に被覆される態様は特に限定されず、螺旋状に巻回されてもよく、超伝導線材用被覆材10の長さ方向に超伝導線材110を添わせるように(タテ添えされるように)巻回されてもよい。本実施の形態における超伝導線材110は、図3〜図5に示すように、超伝導線材用被覆材10がラップ部120で一部重なるように螺旋状に巻回されるように被覆されている。
【0079】
図4に示すように、超伝導線材110の延在方向と超伝導線材用被覆材10の巻回する方向とのなす角度θ(巻き角度θまたは巻き回し角度θとも言う)は、例えば20°以上80°以下である。
【0080】
超伝導線材110は、テープ状の線材であり、各頂点は角張っていてもよく、湾曲していても(Rが設けられていても)よい。また、超伝導線材110は、ビスマス系、イットリウム系、ニオブ系などの各種超伝導材料からなるものを適宜用いることができる。
【0081】
超伝導線材110の具体的寸法の一例を示すと、厚みは例えば1mm以上10mm以下であり、幅は例えば1mm以上20mm以下であり、アスペクト比(断面形状における幅/厚みの比)は例えば1以上60以下程度である。
【0082】
続いて、本実施の形態における超伝導電線100の製造方法について説明する。
【0083】
まず、実施の形態1にしたがって超伝導線材用被覆材10を製造する。
【0084】
次に、超伝導線材110を準備して、図3〜図5に示すように、超伝導線材用被覆材10の一部が重なり合うハーフラップで螺旋状に巻回する。超伝導線材用被覆材10が粘弾性体層12を備えていない場合には、超伝導線材用被覆材10の基材11の表面11a(裏面11b)の一部が超伝導線材110に接触するように、かつ、超伝導線材用被覆材10の基材11の表面11a(裏面11b)の残部が超伝導線材110と表面11aで接触している超伝導線材用被覆材10の基材11の裏面11b(表面11a)の一部上に接触するように、超伝導線材用被覆材10を配置する。また、超伝導線材用被覆材10が粘弾性体層12を備えている場合には、粘弾性体層12の一部が超伝導線材110に接触するように、かつ、粘弾性体層12の残部が超伝導線材110と接触している超伝導線材用被覆材10の基材11の裏面11bの一部上に接触するように、超伝導線材用被覆材10を配置する。
【0085】
なお、超伝導線材用被覆材10が剥離ライナーを備えている場合には、超伝導線材110に巻回する際に、剥離ライナーと粘弾性体層12の表面12aとを剥離しながら、超伝導線材110を巻回する。
【0086】
上記工程を実施することにより、図3〜図5に示す本実施の形態の超伝導電線100を製造することができる。
【0087】
以上説明したように、本実施の形態における超伝導電線100は、実施の形態1の超伝導線材用被覆材10と、この超伝導線材用被覆材10に被覆された超伝導線材110とを備えている。
【0088】
本実施の形態における超伝導電線100によれば、−196℃における引張破断強度が12N/3mm以上であり、かつ−196℃における引張破断伸びが12%以上である超伝導線材用被覆材10を備えているので、超伝導線材110に超伝導線材用被覆材10を被覆した超伝導電線100を電気機器に用い、液体窒素温度で動作させたときに、超伝導線材用被覆材10の液体窒素温度下での伸びが良好であるため、超伝導線材用被覆材10が浮くことを抑制できると共に、割れてしまうことも抑制でき、さらに超伝導線材110と超伝導線材用被覆材10とがずれてしまうことも抑制できる。超伝導線材用被覆材10の浮きや割れを抑制できると、部分放電開始電圧の低下を抑制できる。また、超伝導線材と超伝導線材用被覆材10とのずれを抑制できるので、摩擦熱の発生を抑制できるため、動作中の超伝導状態を維持できる。したがって、特性の低下が抑制された超伝導電線100を実現できる。
【0089】
(実施の形態3)
図6を参照して、本発明の実施の形態3における電気機器の一例である超伝導コイル200を説明する。図6に示すように、本実施の形態の超伝導コイル200は、巻枠210と、この巻枠210に巻きつけられた実施の形態2の超伝導電線100とを備えている。
【0090】
巻枠210は、超伝導電線100を巻装できれば特に限定されないが、例えば円筒型、レーストラック型等である。超伝導電線100は、1本であってもよく、必要な長さに応じて、複数本が接続されていてもよい。コイルは、シングルパンケーキ型であってもよく、ダブルパンケーキ型であってもよく、3つ以上のコイルが積層されていてもよい。
【0091】
実施の形態3における超伝導コイル200の製造方法は、巻枠210を準備する工程と、この巻枠210に超伝導電線100を巻きつける工程とを備えている。
【0092】
ここで、本実施の形態では、電気機器の一例として超伝導コイル200を例に挙げて説明したが、本発明の電気機器は超伝導コイルに限定されず、例えば超伝導マグネット、超伝導ケーブル、電力貯蔵装置などであってもよい。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態の電気機器の一例である超伝導コイル200は、実施の形態2の超伝導電線100を用いて作製されている。
【0094】
本発明の電機機器の一例である超伝導コイル200によれば、液体窒素温度下において動作させたときに特性の低下が抑制された超伝導線材用被覆材10を備えているので、特性の低下が抑制された超伝導コイル200を実現できる。
【実施例】
【0095】
本実施例では、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、−196℃における引張破断伸びが12%以上である超伝導線材用被覆材の効果について調べた。
【0096】
(実施例1)
実施例1では、実施の形態1にしたがって超伝導線材用被覆材10を製造した。具体的には、シリコーン系粘弾性体として「X−40−3229」(シリコーンガム、固形分60%、信越化学工業社製)70重量部及び「KR−3700」(シリコーンレジン、固形分60%、信越化学工業社製)30重量部と、白金触媒として「PL−50T」(信越化学工業社製)0.5重量部と、溶剤としてトルエン315重量部とを配合し、ディスパーで攪拌してシリコーン系粘弾性体組成物を作製した。ポリイミド樹脂からなる基材11として「カプトン50H」(厚み12.5μm、東レ・デュポン社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが3.0μmとなるように塗布し、乾燥温度150℃、乾燥時間1分の条件でキュアー・乾燥して、基材11上にゲル分率が74%の粘弾性体層12を形成した超伝導線材用被覆材10を作製した。これを巻芯20(内径76mm)に巻き取り、図1に示すロール状の巻回体を得た。
【0097】
(実施例2)
実施例2では、ポリイミド樹脂からなる基材11として、「カプトン50EN」(厚み12.5μm東レ・デュポン社製)を用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例2の超伝導線材用被覆材10を製造した。
【0098】
(実施例3)
実施例3では、ポリイミド樹脂として基材11として、「カプトン40EN」(厚み10.0μm、東レ・デュポン社製)を用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例3の超伝導線材用被覆材10を製造した。
【0099】
(実施例4)
粘弾性体層を形成しなかった点以外は実施例2と同様にして、実施例4の超伝導線材用被覆材を製造した。
【0100】
(実施例5)
実施例5では、基材11として、ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーS10」(厚み25.0μm、東レ株式会社製)を用い、かつ粘弾性体層を形成しなかった点以外は実施例1と同様にして、実施例5の超伝導線材用被覆材10を製造した。
【0101】
(比較例1)
比較例1では、基材11として、ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーS10」(厚み12.0μm、東レ株式会社製)を用い、かつ粘弾性体層を形成しなかった点以外は実施例1と同様にして、比較例1の超伝導線材用被覆材を製造した。
【0102】
(比較例2)
比較例2では、基材11として、ポリエチレンナフタレートフィルム「テオネックスQ51」(厚み16.0μm、帝人デュポン株式会社製)を用い、かつ粘弾性体層を形成しなかった点以外は実施例1と同様にして、比較例2の超伝導線材用被覆材を製造した。
【0103】
(評価方法)
実施例1〜5及び比較例1、2について、低温引張破断強度、低温引張破断伸び及び部分放電開始電圧をそれぞれ以下のように測定すると共に、浮き、割れを以下のように評価した。これらの結果を表1に示した。
【0104】
(低温引張破断強度及び低温引張破断伸びの測定)
低温引張破断強度及び低温引張破断伸びの測定には、図7及び図8に示す測定装置300により、液体窒素中での低温引張破断強度を測定した。
【0105】
具体的には、図7及び図8に示すように、測定装置300は、内部に液体窒素を収容するための容器301と、容器301を保温するための保温層302と、評価サンプルS1を引張試験器に固定するための冶具303、304と、評価サンプルS1を固定するためのチャック部305、306とを備えていた。チャック部305、306は、評価サンプルS1の長さを所定の範囲で調整可能であった。容器301内に満たされた液体窒素が漏れないように、容器301と下方の冶具304との結合部はスクリュー式であり、漏れ防止のために、市販の水道管等の継ぎ目に用いられるテフロン製のシール部材がさらに形成されていた。
【0106】
実施例1〜5及び比較例1、2において製造した超伝導線材用被覆材10を幅3mm、長さ80mmに切断して評価サンプルS1を作製した。図8に示すように、この評価サンプルS1をチャック部305、306で保持し、チャック間距離L1を50mmに設定した。この状態で液体窒素を少なくとも評価サンプルS1が浸漬するよう加え、15分間浸漬した。
その後、図9に示すように、評価サンプルS1を引張速度100mm/分で矢印に示すように上方に引っ張って、評価サンプルS1が破断したときの、評価サンプルS1の長さ(チャック部305、306間の距離)L2及び力をそれぞれ測定した。
低温引張破断強度は、評価サンプルS1が破断したときに加えていた力とし、下記の表1にその結果を記載する。
低温引張破断伸びは、(破断したときの評価サンプルS1の長さL2−チャック間距離L1)÷50mm×100(%)で求められる値とし、下記の表1にその結果を記載する。なお、(評価サンプルS1が破断したときの評価サンプルS1の長さL2−チャック間距離L1)とは、評価サンプルS1の伸びである。
なお、低温引張破断強度及び低温引張破断伸びの低温とは、上記測定方法によれば、液体窒素の沸点、すなわち−196℃と近似できる。
【0107】
ここで、上記測定装置300において、容器301の深さL3を220mmとし、評価サンプルS1の長さL2の最大を100mmとした。このような測定装置300として、例えばTOYO BALDWIN社製の「UTM−4−100」を用いることができる。
【0108】
(浮き、割れの評価)
実施例1〜5及び比較例1、2で作成した超伝導線材用被覆材について、幅5mmの試験片とし、超伝導線材として「Di−BSCCO」(線材:ビスマス系超伝導線、厚み0.23mm×幅4.3mm、住友電気工業社製)に対し、巻き回し角度(図4における角度θ)60度、超伝導線材用被覆材同士の重なり(図5におけるラップ部120の幅W120)を約2.0mmで螺旋状に被覆した長さ10cmの評価サンプルを作製した。
この評価サンプルを外径30mmのマンドレルに巻き付け、液体窒素中に15分間浸漬した。その後、マンドレルに巻き付けた評価サンプルの外周部を目視観察することで、超伝導線材用被覆材の浮き及び割れの有無を確認した。その結果を下記の表1に示す。表1において、浮き及び割れが見られなかった場合を「○」、浮き及び割れの少なくとも一方が見られた場合を「×」とした。
【0109】
(部分放電開始電圧の測定)
浮き、割れの評価サンプルをマンドレルからほどき、部分放電開始電圧測定の評価サンプルS2とし、図10に示す測定装置400により、液体窒素中での部分放電開始電圧を測定した。
具体的には、図10において、容器431内に、電極432及び支柱433で挟持する形で評価サンプルS2を配置した。上部の電極432に部分放電測定器434を接続し、評価サンプルS2の超伝導線材にアース435を接続した。その後、液体窒素436を、少なくとも評価サンプルS2が浸漬するよう加え、温度が安定した状態(約15分後)で、部分放電開始電圧の測定を開始した。
なお、電極432のサイズは25mmφ、R2.5mm、接触面積20mmφであり、昇圧速度200Vrms/秒で昇圧した際に、放電電荷量が100pC以上の放電が50PPS(単位時間当たりの放電電荷の発生数)以上確認された時の印加電圧を部分放電開始電圧とした。その結果を下記の表1に記載する。
【0110】
(評価結果)
【表1】
【0111】
表1に示すように、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、かつ−196℃における引張破断伸びが12%以上である実施例1〜5の超伝導線材用被覆材は、液体窒素温度において、超伝導線材に対して浮き及び割れがなく、良好であった。このため、実施例1〜5の超伝導線材用被覆材の部分放電開始電圧は260Vrms以上であり、特性の低下を抑制できた。
【0112】
一方、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm未満であった比較例1の超伝導線材用被覆材は、浮き、割れが発生したため、部分放電開始電圧が低く、特性が低下した。
【0113】
また、−196℃における引張破断伸びが12%未満であった比較例2の超伝導線材用被覆材は、浮き、割れが発生したため、部分放電開始電圧が低く、特性が低下した。
【0114】
以上より、本実施例によれば、超伝導線材用被覆材において、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、−196℃における引張破断伸びが12%以上であることにより、液体窒素温度領域において、浮き、割れを抑制できたので、特性の低下が抑制されることが確認できた。
【0115】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、各実施の形態及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
10 超伝導線材用被覆材、11 基材、11a,12a 表面、11b 裏面、12 粘弾性体層、20 巻芯、100 超伝導電線、110 超伝導線材、120 ラップ部、200 超伝導コイル、210 巻枠、300,400 測定装置、301,431 容器、302 保温層、303,304 冶具、305,306 チャック部、432 電極、433 支柱、434 部分放電測定器、435 アース、436 液体窒素、L1 距離、L2 長さ、L3 深さ、S1,S2 評価サンプル、W120 幅、θ 角度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導線材用被覆材、超伝導電線及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気機器に使用される回転機器、磁石等のコイル機器には、平角線材を絶縁性の被覆材で被覆した平角電線が用いられている(例えば特許文献1)。特許文献1には、並列に配置した平角線材に、ポリエステルテープを半重ねで6回巻回して絶縁を施した平角電線が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−4552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、超伝導線材は、液体窒素温度での使用が可能であり、比較的高い臨界電流密度が得られ、長尺化が可能なまでに開発が進んできている。このため、超伝導線材を電気機器に用いることが期待されている。
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示の平角線材を超伝導線材に適用した場合に、超伝導線材は液体窒素温度で使用されるため、特性が低下するという問題を本発明者は初めて明らかにした。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、特性の低下が抑制された超伝導線材用被覆材、超伝導電線及び電気機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、液体窒素温度のような極低温下における被覆材の特性に着目し、超伝導電線を備えた電気機器の動作中に特性の低下を抑制できる被覆材を鋭意研究した結果、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明における超伝導線材用被覆材は、超伝導線材を被覆するための被覆材であって、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、−196℃における引張破断伸びが12%以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の超伝導線材用被覆材によれば、−196℃における引張破断強度及び引張破断伸びが上記範囲であるので、液体窒素温度領域において、超伝導線材の応力による変化や温度変化等に対して、超伝導線材用被覆材の追従性が良好である。このため、本発明の超伝導線材用被覆材を超伝導線材に被覆した超伝導電線の動作中に、超伝導線材の膨張、振動、屈曲等が生じても、超伝導線材から浮くことや超伝導線材用被覆材の割れの発生を抑制できる。このため、特性の低下を抑制できる超伝導線材用被覆材を提供することができる。
【0010】
上記超伝導線材用被覆材において好ましくは、ポリイミド樹脂からなる基材を含む。
【0011】
ポリイミド樹脂は、耐熱性を有すると共に、不燃性材料であるので、電気機器に使用する絶縁材料として、優れた難燃性を有する。このため、ポリイミド樹脂からなる基材を備えた超伝導線材用被覆材の特性の低下がより抑制されたものとなる。
【0012】
上記超伝導線材用被覆材において好ましくは、基材と、この基材の一方の面上に形成された粘弾性体層とを含む。
【0013】
超伝導線材に粘弾性体層が接するように被覆すると、粘弾性体層は基材よりも接着力が大きいので、超伝導線材用被覆材が超伝導線材から浮いてしまうことが効果的に抑制される。このため、超伝導線材用被覆材の特性の低下がより抑制されたものとなる。
【0014】
上記超伝導線材用被覆材において好ましくは、粘弾性体層はシリコーン系粘弾性体組成物を含有する。
【0015】
シリコーン系粘弾性体組成物は、耐寒性、耐放射線性、耐熱性及び耐腐食性に優れるため、粘弾性体層の特性を向上できる。
【0016】
上記超伝導線材用被覆材において好ましくは、8.0μm以上30.0μm以下の厚みを有し、基材は5.0μm以上25.0μm以下の厚みを有する。
【0017】
超伝導線材用被覆材の厚みが8.0μm以上で、かつ基材の厚みが5.0μm以上であると、強度を向上することができる。超伝導線材用被覆材の厚みが30μm以下で、かつ基材の厚みが25.0μm以下であると、超伝導線材用被覆材を超伝導線材に被覆したときに形成される超伝導電線における超伝導線材の密度を高めることができるので、超伝導電線の特性の低下がより抑制されたものとなる。
【0018】
本発明の超伝導電線は、上記いずれかに記載の超伝導線材用被覆材と、この超伝導線材用被覆材に被覆された超伝導線材とを備える。
【0019】
本発明の超伝導電線によれば、−196℃における引張破断強度が12N/3mm以上であり、かつ−196℃における引張破断伸びが12%以上である超伝導線材用被覆材を備えているので、超伝導線材に被覆材を被覆した超伝導電線を電気機器に用い、液体窒素温度で動作させたときに、超伝導線材用被覆材が浮く場合や、割れてしまうことを抑制できるので、特性の低下が抑制された伝導電線を提供することができる。
【0020】
本発明の電気機器は、上記超伝導電線を用いて作製される。
【0021】
本発明の電機機器によれば、液体窒素温度で動作させたときに特性の低下が抑制された超伝導電線を備えているので、同様に、特性の低下が抑制された電気機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、特性の低下が抑制された超伝導線材用被覆材、超伝導電線及び電気機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における超伝導線材用被覆材を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における超伝導線材用被覆材を概略的に示す断面図であり、図1における領域IIの拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2における超伝導電線を概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態2における超伝導電線を概略的に示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態2における超伝導電線を概略的に示し、図3及び図4におけるV−V線に沿った断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3における電気機器の一例である超伝導コイルを概略的に示す斜視図である。
【図7】実施例において低温引張破断強度及び低温引張破断伸びを測定するための測定装置を概略的に示す模式図である。
【図8】実施例で低温引張破断強度及び低温引張破断伸びを測定するための測定装置において、内部を概略的に示す模式図である。
【図9】実施例で低温引張破断強度及び低温引張破断伸びを測定するための測定装置の内部おいて、評価サンプルを引っ張った状態を概略的に示す模式図である。
【図10】実施例において、部分放電開始電圧を測定するための測定装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0025】
(実施の形態1)
図1及び図2を参照して、本発明の一実施の形態における超伝導線材用被覆材について説明する。図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態1における超伝導線材用被覆材10は、超伝導線材を被覆するための被覆材である。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態における超伝導線材用被覆材10は、テープ状であり、例えば巻芯20にロール状に巻回されている。なお、超伝導線材用被覆材10は、テープ状に限定されず、シート状、フィルム状などの他の形状であってもよい。
【0027】
図2に示すように、超伝導線材用被覆材10は、表面11aと、表面11aと反対側の裏面11bとを有する基材11と、基材11の表面11a上に形成された粘弾性体層12とを備えている。なお、粘弾性体層12は省略されてもよく、裏面11bにも粘弾性体層が形成されていてもよいが、粘弾性体層12は基材11の一方面上のみに形成されていることが好ましい。
【0028】
また、基材11と粘弾性体層12との間には、別の層がさらに形成されていてもよい。また、粘弾性体層12の表面12a上に、表面12aを保護するための剥離ライナー(図示せず)が形成されていてもよい。
【0029】
基材11は、絶縁性であれば特に限定されないが、耐放射線性及び耐熱性を有していることが好ましい。このような基材11として、例えばポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの樹脂のうち、特にポリイミド樹脂を基材11として用いることが好ましい。ポリイミド樹脂は、耐熱性と共に、不燃性材料であるので、電気機器に使用する絶縁材料としては、優れた難燃性を有するという点で、本実施の形態の超伝導線材用被覆材10の基材11として優れた特性を有する。
【0030】
上記ポリイミド樹脂は、公知または慣用の方法により得ることができる。例えば、ポリイミドは有機テトラカルボン酸二無水物とジアミノ化合物(ジアミン)とを反応させてポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を合成し、このポリイミド前駆体を脱水閉環することにより得ることができる。
【0031】
上記有機テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物等が挙げられる。これらの有機テトラカルボン酸二無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記有機テトラカルボン酸二無水物のうち、柔軟性を重視する場合には、エーテル結合を含有する化合物が好ましく、例えばODPAが好ましい。上記有機テトラカルボン酸二無水物のうち、強度を重視する場合には、剛直な構造を有するPMDAを用いることができ、強度及び柔軟性のバランスを考慮する場合には、BPDAを用いることができる。
【0032】
上記ジアミノ化合物としては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。これらのジアミノ化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
上記ジアミノ化合物としては、エーテル結合を含有する化合物が好ましく、具体的には4,4’ −ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を用いることが好ましい。ODAを含むことで超伝導線材用被覆材10の伸びが向上し、柔らかいフィルムに設計することができる。ジアミン化合物成分中のODAの添加量としては、10モル%以上100モル%以下が好ましく、30モル%以上100モル%以下がより好ましく、50モル%以上100モル%以下がより一層好ましい。
【0034】
なお、本実施の形態において用いるポリイミド樹脂としては、有機テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用い、ジアミノ化合物としてp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0035】
このようなポリイミド樹脂として、カプトンH(東レ・デュポン社製)、カプトンEN(東レ・デュポン社製)、ユーピレックスR(宇部興産社製)、アピカルAH(カネカ社製)、「アピカルNPI(登録商標)」(カネカ社製)などの市販品を用いることもできる。
【0036】
基材11は、5.0μm以上25.0μm以下の厚みを有することが好ましく、10.0μm以上12.5μm以下の厚みを有することがより好ましい。厚みがこの範囲内であると、十分な絶縁性を確保でき、超伝導線材を被覆したときに超伝導線材の機能を十分に発揮できる。
具体的には、基材11の厚みが25.0μm以下であると、超伝導線材用被覆材を超伝導線材に被覆した際に形成される超伝導電線における超伝導線材の線占率を高めることができるので、超伝導電線の特性を向上できる。基材11の厚みが12.5μm以下であると、超伝導電線の特性をより向上できる。
一方、基材11の厚みが5.0μm以上であると、超伝導線材用被覆材10を超伝導線材に被覆した際に形成される超伝導電線の絶縁性を高めることができるので、動作中に絶縁破壊することを抑制できる。基材11の厚みが10.0μm以上であると、絶縁破壊することをより抑制できる。
【0037】
なお、本実施の形態における基材11は、後述する粘弾性体層12との投錨力を向上させるために、スパッタエッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理などの化学的処理がされていてもよく、下塗り剤などが塗布されていてもよい。
【0038】
また、本実施の形態における基材11は、1層で構成されていてもよく、複数層で構成されていてもよい。
【0039】
粘弾性体層12は、室温(23℃)において粘弾性を示す粘弾性体を構成するベースポリマーを含む。このようなベースポリマーとしては、特に限定されず、公知のベースポリマーから適宜選択して用いることができ、例えばアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ウレタン系ポリマー、フッ素系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が挙げられる。これらのベースポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのベールポリマーのうち、耐寒性、耐放射線性、耐熱性及び耐腐食性に優れる観点から、シリコーン系ポリマーを粘弾性体層12として用いることが好ましい。つまり、粘弾性体層12は、シリコーン系ポリマーを含有する粘弾性体組成物(シリコーン系粘弾性体組成物)を含むことが好ましく、シリコーン系粘弾性体組成物を主成分とし、残部が不可避的不純物からなることがより好ましい。
【0040】
ここで、上記シリコーン系粘弾性体組成物は、シリコーンガム及びシリコーンレジンを主成分とする配合物の架橋構造を含有している。
【0041】
シリコーンガムとしては、例えば、ジメチルシロキサンを主な構成単位とするオルガノポリシロキサンを好適に用いることができる。オルガノポリシロキサンには必要に応じてビニル基、または他の官能基が導入されてもよい。オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は通常18万以上であるが、28万以上100万以下が好ましく、50万以上90万以下がより好ましい。これらのシリコーンガムは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。重量平均分子量が低い場合には、架橋剤の量によりゲル分率を調整することができる。
【0042】
シリコーンレジンとしては、例えば、M単位(R3SiO1/2)、Q単位(SiO2)、T単位(RSiO3/2)及びD単位(R2SiO)から選ばれるいずれか少なくとも1種の単位(上記単位中、Rは一価炭化水素基または水酸基を示す)を有する共重合体からなるオルガノポリシロキサンを好適に用いることができる。この共重合体からなるオルガノポリシロキサンは、OH基を有する他に、必要に応じてビニル基等の種々の官能基が導入されていてもよい。導入する官能基は架橋反応を起こすものであってもよい。共重合体としては、M単位とQ単位とからなるMQレジンが好ましい。
【0043】
シリコーンガムとシリコーンレジンとの配合割合(重量比)は特に限定されないが、シリコーンガム:シリコーンレジン=100:0〜20:80程度が好ましく、100:0〜30:70程度がより好ましい。シリコーンガム及びシリコーンレジンは、単にそれらを配合してもよく、それらの部分縮合物であってもよい。
【0044】
上記配合物には、それを架橋構造物とするために、通常、架橋剤を含む。架橋剤により、シリコーン系粘弾性体組成物のゲル分率を調整することができる。
【0045】
粘弾性体層12のゲル分率は、粘弾性体組成物の種類によっても異なるが、概ね20%以上99%以下程度が好ましく、30%以上98%以下程度がより好ましい。ゲル分率がこの範囲内であると、接着力と保持力とのバランスがとりやすいという利点がある。具体的には、ゲル分率が99%以下の場合、初期接着力が低くなることを抑制できるので、貼り付きが良好になる。ゲル分率が20%以上の場合、十分な保持力が得られるので、超伝導線材用被覆材10のずれを抑制できる。
【0046】
本実施の形態における粘弾性体組成物のゲル分率(重量%)は、シリコーン系粘弾性体組成物から乾燥重量W1(g)の試料を採取し、これをトルエンに浸漬した後、この試料の不溶分をトルエン中から取り出し、乾燥後の重量W2(g)を測定し、(W2/W1)×100の式より求められる値である。
【0047】
本実施の形態におけるシリコーン系粘弾性体組成物は、一般に用いられる、過酸化物系架橋剤による過酸化物硬化型架橋と、Si−H基を含有するシロキサン系架橋剤による付加反応型架橋を用いることができる。
【0048】
過酸化物系架橋剤の架橋反応はラジカル反応であるため、通常150℃以上220℃以下の高温下で架橋反応が進められる。一方、ビニル基含有のオルガノポリシロキサンとシロキサン系架橋剤との架橋反応は付加反応であるので、通常80℃以上150℃以下の低温で反応が進む。本実施の形態においては、特に低温短時間で架橋を完了できる観点から、付加反応型架橋が好ましい。
【0049】
上記過酸化物系架橋剤としては、従来よりシリコーン系粘弾性体組成物に使用されている各種のものを特に制限なく使用でき、例えば過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、2,4−ジクロロ−ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキシン−3等が挙げられる。これらの過酸化物系架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。過酸化物系架橋剤の使用量は、通常、シリコーンゴム100重量部に対して0.15重量部以上2重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上1.4重量部以下であることがより好ましい。
【0050】
シロキサン系架橋剤として、例えば、ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に少なくとも平均2個有するポリオルガノハイドロジエンシロキサンが用いられる。ケイ素原子に結合した有機基としてはアルキル基、フェニル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられるが、合成及び取り扱いが容易である観点から、メチル基が好ましい。シロキサン骨格構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状が好ましい。
【0051】
シロキサン系架橋剤の添加量は、シリコーンゴム及びシリコーンレジン中のビニル基1個に対して、ケイ素原子に結合した水素原子が好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは4個以上17個以下になるように配合する。ケイ素原子に結合した水素原子が1個以上の場合には十分な凝集力が得られ、4個以上の場合にはより十分な凝集力が得られる。ケイ素原子に結合した水素原子が30個以下の場合には接着特性の低下を抑制でき、17個以下の場合には接着特性の低下をより抑制できる。
シロキサン系架橋剤を用いる場合には、通常、白金触媒が用いられるが、その他種々の触媒を使用することができる。
なお、シロキサン系架橋剤を用いる場合には、シリコーンゴムとしてビニル基を有するオルガノポリシロキサンを用い、そのビニル基は0.0001モル/100g以上0.01モル/100g以下程度であることが好ましい。
【0052】
本発明の粘弾性体層には、上記ベースポリマーの他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、粘着付加剤、可塑剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、安定剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、顔料、軟化剤、充填剤などの従来公知の各種の添加剤を適宜配合することができる。
【0053】
粘弾性体層12は、1.0μm以上25.0μm以下の厚みを有することが好ましく、3.0μm以上5.0μm以下の厚みを有することがより好ましい。粘弾性体層12の厚みがこの範囲内であると、適度な接着性が得られるという利点がある。
具体的には、粘弾性体層12の厚みが25.0μm以下であると、超伝導線材用被覆材10を超伝導線材に被覆した際に形成される超伝導電線における超伝導線材の線占率を高めることができるので、超伝導電線の特性をより向上できる。粘弾性体層12の厚みが5.0μm以下であると、特性をより一層向上できる。
一方、粘弾性体層12の厚みが1.0μm以上であると、超伝導線材への密着度を高めることができ、超伝導線材から超伝導線材用被覆材10が浮くことをより抑制できる。粘弾性体層12の厚みが3.0μm以上であると、超伝導線材用被覆材10の浮きをより一層抑制できる。
【0054】
超伝導線材用被覆材10は、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、13.8N/3mm以上であることが好ましく、15.4N/3mm以上であることがより好ましい。−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm未満であると、液体窒素温度下での強度が小さいため、振動などによる浮きや割れが生じやすい。−196℃における引張破断強度が13.8N/3mm以上であると、振動などによる浮きや割れを効果的に抑制でき、15.4N/3mm以上であると、振動などによる浮きや割れをより効果的に抑制できる。
【0055】
なお、超伝導線材用被覆材10の−196℃における引張破断強度は大きいほど好ましいが、製造上の観点から、上限は例えば19.4N/3mmである。
【0056】
ここで、上記「−196℃における引張破断強度」は、幅が3mmの超伝導線材用被覆材10を−196℃の雰囲気内に配置した状態で、超伝導線材用被覆材10を引っ張って破断した時の力を意味し、数値が大きいほど−196℃での強度が大きいことを示す。
【0057】
上記「−196℃における引張破断強度」は、例えば分子内に芳香族系の剛直なユニットをもつ材料を基材として用いることにより調整することができる。
【0058】
超伝導線材用被覆材10は、−196℃における引張破断伸びが12%以上であり、16%以上であることが好ましく、34%以上であることがより好ましい。−196℃における引張破断伸びが12%未満であると、液体窒素温度下で膨張しにくいため、磁場や摩擦熱などによる浮きや割れが生じやすい。−196℃における引張破断伸びが16%以上であると、振動などによる浮きや割れを効果的に抑制でき、34%以上であると、振動などによる浮きや割れをより効果的に抑制できる。
【0059】
なお、超伝導線材用被覆材10の−196℃における引張破断伸びは大きいほど好ましいが、製造上の観点から、上限は例えば59%である。
【0060】
ここで、上記「−196℃における引張破断伸び」は、幅が3mmで長さがXmmの超伝導線材用被覆材10を−196℃の雰囲気内に配置した状態で、超伝導線材用被覆材10を引張速度100mm/分で引っ張って破断した時の超伝導線材用被覆材10の長さがYmmであった場合に、(Y−X)/X×100(%)を意味し、数値が大きいほど−196℃での伸びが大きいことを示す。
【0061】
上記「−196℃における引張破断伸び」は、エーテル結合、アミド結合、エステル結合のような、比較的分子鎖の回転しやすい柔軟な構造、ユニットをもつ材料を選択することにより調整することができる。
【0062】
上記引張破断強度及び引張破断伸びにおいて、−196℃を基準にしているのは、超伝導線材は一般的に液体窒素を冷媒として使用しているので、液体窒素の沸点での引張破断強度及び引張破断伸びを特定するためである。−196℃を基準にすることで、動作中に生じる超伝導線材用被覆材10の浮き、割れを効果的に抑制できる特性を本発明者は見出した。
【0063】
超伝導線材用被覆材10は、8.0μm以上30.0μm以下の厚みを有することが好ましく、13.0μm以上15.5μm以下の厚みを有することがより好ましい。超伝導線材用被覆材10の厚みが8.0μm以上であると、強度が十分であり、取り扱い性に優れ、13.0μm以上であると、強度がより十分であり、取り扱い性により優れる。超伝導線材用被覆材10の厚みが30.0μm以下であると、超伝導線材用被覆材を超伝導線材に被覆した際に形成される超伝導電線における超伝導線材の線占率を高めることができるので、超伝導電線の特性をより向上でき、15.5μm以下であると、特性をより一層向上できる。
【0064】
巻き回し角度が20°以上80°以下で、かつ超伝導線材用被覆材10の一部が重なり合うハーフラップで螺旋状に巻回される場合において、超伝導線材の幅と、巻き回し角度とを考慮すると、被覆する超伝導線材の幅の1倍以上2倍以下の幅を有することが好ましい。このような超伝導線材用被覆材10の幅は、例えば1mm以上80mm以下が好ましく、1.5mm以上60mm以下がより好ましく、2mm以上40mm以下がより一層好ましい。
【0065】
超伝導線材用被覆材10は、超伝導線材を被覆する際の接続部分であるつなぎ目を設けないことが好ましいので、長尺であることが好ましい。このような超伝導線材用被覆材10の長さは、例えば500mm以上が好ましく、1000mm以上がより好ましく、3000m以上がより一層好ましい。本実施の形態の超伝導線材用被覆材10は巻芯20にロール状に巻回されて保持されているが、1つの巻芯20に複数列に亘って巻回する、いわゆるボビン巻きにより保持されていてもよい。
【0066】
続いて、図1及び図2を参照して、本実施の形態における超伝導線材用被覆材10の製造方法について説明する。
【0067】
まず、上述したように、表面11aと、この表面11aと反対側の裏面11bとを有する基材11を準備する。
【0068】
次に、基材11の表面11a上に、粘弾性体層12を形成する。粘弾性体層12の形成方法は特に限定されないが、例えばシリコーン系粘弾性体組成物を基材11の表面11a上にコーティングする方法により、粘弾性体層12を形成することができる。
【0069】
具体的には、シリコーンゴム、シリコーンレジン、架橋剤、触媒等を含むシリコーン系粘弾性体組成物をトルエン等の溶剤に溶解した溶液を基材11の表面11aに塗布し、次いで上記配合物を加熱することで溶剤の留去と架橋とを行う。本実施の形態におけるシリコーン系粘弾性体組成物を含む粘弾性体層12の形成方法としては、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0070】
以上の工程を実施することにより、図2に示す超伝導線材用被覆材10を製造することができる。なお、超伝導線材用被覆材10の製造方法は、上述した方法に特に限定されない。超伝導線材用被覆材10が剥離ライナーを備えている場合には、例えば以下の方法で製造してもよい。
【0071】
具体的には、まず剥離ライナーを準備する。剥離ライナーとしては、例えば、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シート、金属箔、またはそれらのラミネート体等が挙げられる。
【0072】
次に、剥離ライナー上に、例えばシリコーン系粘弾性体組成物を含む粘弾性体層12を形成する。粘弾性体層12を形成する方法は特に限定されないが、トルエンを溶剤に用い、付加反応型架橋を行うシリコーン系粘弾性体組成物を含む粘弾性体層12を形成する場合には、加熱温度は、例えば80℃以上150℃以下が好ましく、100℃以上130℃以下がより好ましい。なお、加熱温度は、溶剤を留去でき、所定の架橋反応が進行できる温度であれば特に限定されない。
【0073】
次に、剥離ライナー上に形成された粘弾性体層12を、基材11に転写する。以上の工程を実施することにより、図2に示す超伝導線材用被覆材10を製造することができる。
【0074】
なお、本実施の形態では、図1に示すように、図2に示す超伝導線材用被覆材10を巻芯20に巻き付ける工程をさらに実施する。この工程は、超伝導線材用被覆材10の形状等により省略されてもよい。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態における超伝導線材用被覆材10は、超伝導線材を被覆するための被覆材であって、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、−196℃における引張破断伸びが12%以上であることを特徴とする。
【0076】
本実施の形態における超伝導線材用被覆材10によれば、−196℃における引張破断強度及び引張破断伸びが上記範囲内であるので、液体窒素温度領域において伸びやすく、かつやわらかいため、超伝導線材の温度変化や応力による変化が加えられても、超伝導線材用被覆材10の強度及び追従性が良好である。このため、液体窒素温度での動作中において、超伝導線材の膨張、振動、屈曲等が生じても、浮きや割れの発生を抑制できる。例えば、超伝導線材用被覆材10を超伝導線材に被覆した超伝導電線を用いて作製した超伝導コイルの動作時に、発生する磁場により超伝導線材が膨張しても、超伝導線材用被覆材10も追従して伸びるので、超伝導線材用被覆材10の浮きや割れの発生を抑制できる。したがって、特性の低下が抑制された超伝導線材用被覆材10を実現できる。
【0077】
(実施の形態2)
図3〜図5を参照して、本発明の実施の形態2における超伝導電線100について説明する。本実施の形態における超伝導電線100は、図3に示すように、実施の形態1の超伝導線材用被覆材と10と、この超伝導線材用被覆材10により被覆された超伝導線材110とを備えている。
【0078】
超伝導線材110が超伝導線材用被覆材10に被覆される態様は特に限定されず、螺旋状に巻回されてもよく、超伝導線材用被覆材10の長さ方向に超伝導線材110を添わせるように(タテ添えされるように)巻回されてもよい。本実施の形態における超伝導線材110は、図3〜図5に示すように、超伝導線材用被覆材10がラップ部120で一部重なるように螺旋状に巻回されるように被覆されている。
【0079】
図4に示すように、超伝導線材110の延在方向と超伝導線材用被覆材10の巻回する方向とのなす角度θ(巻き角度θまたは巻き回し角度θとも言う)は、例えば20°以上80°以下である。
【0080】
超伝導線材110は、テープ状の線材であり、各頂点は角張っていてもよく、湾曲していても(Rが設けられていても)よい。また、超伝導線材110は、ビスマス系、イットリウム系、ニオブ系などの各種超伝導材料からなるものを適宜用いることができる。
【0081】
超伝導線材110の具体的寸法の一例を示すと、厚みは例えば1mm以上10mm以下であり、幅は例えば1mm以上20mm以下であり、アスペクト比(断面形状における幅/厚みの比)は例えば1以上60以下程度である。
【0082】
続いて、本実施の形態における超伝導電線100の製造方法について説明する。
【0083】
まず、実施の形態1にしたがって超伝導線材用被覆材10を製造する。
【0084】
次に、超伝導線材110を準備して、図3〜図5に示すように、超伝導線材用被覆材10の一部が重なり合うハーフラップで螺旋状に巻回する。超伝導線材用被覆材10が粘弾性体層12を備えていない場合には、超伝導線材用被覆材10の基材11の表面11a(裏面11b)の一部が超伝導線材110に接触するように、かつ、超伝導線材用被覆材10の基材11の表面11a(裏面11b)の残部が超伝導線材110と表面11aで接触している超伝導線材用被覆材10の基材11の裏面11b(表面11a)の一部上に接触するように、超伝導線材用被覆材10を配置する。また、超伝導線材用被覆材10が粘弾性体層12を備えている場合には、粘弾性体層12の一部が超伝導線材110に接触するように、かつ、粘弾性体層12の残部が超伝導線材110と接触している超伝導線材用被覆材10の基材11の裏面11bの一部上に接触するように、超伝導線材用被覆材10を配置する。
【0085】
なお、超伝導線材用被覆材10が剥離ライナーを備えている場合には、超伝導線材110に巻回する際に、剥離ライナーと粘弾性体層12の表面12aとを剥離しながら、超伝導線材110を巻回する。
【0086】
上記工程を実施することにより、図3〜図5に示す本実施の形態の超伝導電線100を製造することができる。
【0087】
以上説明したように、本実施の形態における超伝導電線100は、実施の形態1の超伝導線材用被覆材10と、この超伝導線材用被覆材10に被覆された超伝導線材110とを備えている。
【0088】
本実施の形態における超伝導電線100によれば、−196℃における引張破断強度が12N/3mm以上であり、かつ−196℃における引張破断伸びが12%以上である超伝導線材用被覆材10を備えているので、超伝導線材110に超伝導線材用被覆材10を被覆した超伝導電線100を電気機器に用い、液体窒素温度で動作させたときに、超伝導線材用被覆材10の液体窒素温度下での伸びが良好であるため、超伝導線材用被覆材10が浮くことを抑制できると共に、割れてしまうことも抑制でき、さらに超伝導線材110と超伝導線材用被覆材10とがずれてしまうことも抑制できる。超伝導線材用被覆材10の浮きや割れを抑制できると、部分放電開始電圧の低下を抑制できる。また、超伝導線材と超伝導線材用被覆材10とのずれを抑制できるので、摩擦熱の発生を抑制できるため、動作中の超伝導状態を維持できる。したがって、特性の低下が抑制された超伝導電線100を実現できる。
【0089】
(実施の形態3)
図6を参照して、本発明の実施の形態3における電気機器の一例である超伝導コイル200を説明する。図6に示すように、本実施の形態の超伝導コイル200は、巻枠210と、この巻枠210に巻きつけられた実施の形態2の超伝導電線100とを備えている。
【0090】
巻枠210は、超伝導電線100を巻装できれば特に限定されないが、例えば円筒型、レーストラック型等である。超伝導電線100は、1本であってもよく、必要な長さに応じて、複数本が接続されていてもよい。コイルは、シングルパンケーキ型であってもよく、ダブルパンケーキ型であってもよく、3つ以上のコイルが積層されていてもよい。
【0091】
実施の形態3における超伝導コイル200の製造方法は、巻枠210を準備する工程と、この巻枠210に超伝導電線100を巻きつける工程とを備えている。
【0092】
ここで、本実施の形態では、電気機器の一例として超伝導コイル200を例に挙げて説明したが、本発明の電気機器は超伝導コイルに限定されず、例えば超伝導マグネット、超伝導ケーブル、電力貯蔵装置などであってもよい。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態の電気機器の一例である超伝導コイル200は、実施の形態2の超伝導電線100を用いて作製されている。
【0094】
本発明の電機機器の一例である超伝導コイル200によれば、液体窒素温度下において動作させたときに特性の低下が抑制された超伝導線材用被覆材10を備えているので、特性の低下が抑制された超伝導コイル200を実現できる。
【実施例】
【0095】
本実施例では、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、−196℃における引張破断伸びが12%以上である超伝導線材用被覆材の効果について調べた。
【0096】
(実施例1)
実施例1では、実施の形態1にしたがって超伝導線材用被覆材10を製造した。具体的には、シリコーン系粘弾性体として「X−40−3229」(シリコーンガム、固形分60%、信越化学工業社製)70重量部及び「KR−3700」(シリコーンレジン、固形分60%、信越化学工業社製)30重量部と、白金触媒として「PL−50T」(信越化学工業社製)0.5重量部と、溶剤としてトルエン315重量部とを配合し、ディスパーで攪拌してシリコーン系粘弾性体組成物を作製した。ポリイミド樹脂からなる基材11として「カプトン50H」(厚み12.5μm、東レ・デュポン社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが3.0μmとなるように塗布し、乾燥温度150℃、乾燥時間1分の条件でキュアー・乾燥して、基材11上にゲル分率が74%の粘弾性体層12を形成した超伝導線材用被覆材10を作製した。これを巻芯20(内径76mm)に巻き取り、図1に示すロール状の巻回体を得た。
【0097】
(実施例2)
実施例2では、ポリイミド樹脂からなる基材11として、「カプトン50EN」(厚み12.5μm東レ・デュポン社製)を用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例2の超伝導線材用被覆材10を製造した。
【0098】
(実施例3)
実施例3では、ポリイミド樹脂として基材11として、「カプトン40EN」(厚み10.0μm、東レ・デュポン社製)を用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例3の超伝導線材用被覆材10を製造した。
【0099】
(実施例4)
粘弾性体層を形成しなかった点以外は実施例2と同様にして、実施例4の超伝導線材用被覆材を製造した。
【0100】
(実施例5)
実施例5では、基材11として、ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーS10」(厚み25.0μm、東レ株式会社製)を用い、かつ粘弾性体層を形成しなかった点以外は実施例1と同様にして、実施例5の超伝導線材用被覆材10を製造した。
【0101】
(比較例1)
比較例1では、基材11として、ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーS10」(厚み12.0μm、東レ株式会社製)を用い、かつ粘弾性体層を形成しなかった点以外は実施例1と同様にして、比較例1の超伝導線材用被覆材を製造した。
【0102】
(比較例2)
比較例2では、基材11として、ポリエチレンナフタレートフィルム「テオネックスQ51」(厚み16.0μm、帝人デュポン株式会社製)を用い、かつ粘弾性体層を形成しなかった点以外は実施例1と同様にして、比較例2の超伝導線材用被覆材を製造した。
【0103】
(評価方法)
実施例1〜5及び比較例1、2について、低温引張破断強度、低温引張破断伸び及び部分放電開始電圧をそれぞれ以下のように測定すると共に、浮き、割れを以下のように評価した。これらの結果を表1に示した。
【0104】
(低温引張破断強度及び低温引張破断伸びの測定)
低温引張破断強度及び低温引張破断伸びの測定には、図7及び図8に示す測定装置300により、液体窒素中での低温引張破断強度を測定した。
【0105】
具体的には、図7及び図8に示すように、測定装置300は、内部に液体窒素を収容するための容器301と、容器301を保温するための保温層302と、評価サンプルS1を引張試験器に固定するための冶具303、304と、評価サンプルS1を固定するためのチャック部305、306とを備えていた。チャック部305、306は、評価サンプルS1の長さを所定の範囲で調整可能であった。容器301内に満たされた液体窒素が漏れないように、容器301と下方の冶具304との結合部はスクリュー式であり、漏れ防止のために、市販の水道管等の継ぎ目に用いられるテフロン製のシール部材がさらに形成されていた。
【0106】
実施例1〜5及び比較例1、2において製造した超伝導線材用被覆材10を幅3mm、長さ80mmに切断して評価サンプルS1を作製した。図8に示すように、この評価サンプルS1をチャック部305、306で保持し、チャック間距離L1を50mmに設定した。この状態で液体窒素を少なくとも評価サンプルS1が浸漬するよう加え、15分間浸漬した。
その後、図9に示すように、評価サンプルS1を引張速度100mm/分で矢印に示すように上方に引っ張って、評価サンプルS1が破断したときの、評価サンプルS1の長さ(チャック部305、306間の距離)L2及び力をそれぞれ測定した。
低温引張破断強度は、評価サンプルS1が破断したときに加えていた力とし、下記の表1にその結果を記載する。
低温引張破断伸びは、(破断したときの評価サンプルS1の長さL2−チャック間距離L1)÷50mm×100(%)で求められる値とし、下記の表1にその結果を記載する。なお、(評価サンプルS1が破断したときの評価サンプルS1の長さL2−チャック間距離L1)とは、評価サンプルS1の伸びである。
なお、低温引張破断強度及び低温引張破断伸びの低温とは、上記測定方法によれば、液体窒素の沸点、すなわち−196℃と近似できる。
【0107】
ここで、上記測定装置300において、容器301の深さL3を220mmとし、評価サンプルS1の長さL2の最大を100mmとした。このような測定装置300として、例えばTOYO BALDWIN社製の「UTM−4−100」を用いることができる。
【0108】
(浮き、割れの評価)
実施例1〜5及び比較例1、2で作成した超伝導線材用被覆材について、幅5mmの試験片とし、超伝導線材として「Di−BSCCO」(線材:ビスマス系超伝導線、厚み0.23mm×幅4.3mm、住友電気工業社製)に対し、巻き回し角度(図4における角度θ)60度、超伝導線材用被覆材同士の重なり(図5におけるラップ部120の幅W120)を約2.0mmで螺旋状に被覆した長さ10cmの評価サンプルを作製した。
この評価サンプルを外径30mmのマンドレルに巻き付け、液体窒素中に15分間浸漬した。その後、マンドレルに巻き付けた評価サンプルの外周部を目視観察することで、超伝導線材用被覆材の浮き及び割れの有無を確認した。その結果を下記の表1に示す。表1において、浮き及び割れが見られなかった場合を「○」、浮き及び割れの少なくとも一方が見られた場合を「×」とした。
【0109】
(部分放電開始電圧の測定)
浮き、割れの評価サンプルをマンドレルからほどき、部分放電開始電圧測定の評価サンプルS2とし、図10に示す測定装置400により、液体窒素中での部分放電開始電圧を測定した。
具体的には、図10において、容器431内に、電極432及び支柱433で挟持する形で評価サンプルS2を配置した。上部の電極432に部分放電測定器434を接続し、評価サンプルS2の超伝導線材にアース435を接続した。その後、液体窒素436を、少なくとも評価サンプルS2が浸漬するよう加え、温度が安定した状態(約15分後)で、部分放電開始電圧の測定を開始した。
なお、電極432のサイズは25mmφ、R2.5mm、接触面積20mmφであり、昇圧速度200Vrms/秒で昇圧した際に、放電電荷量が100pC以上の放電が50PPS(単位時間当たりの放電電荷の発生数)以上確認された時の印加電圧を部分放電開始電圧とした。その結果を下記の表1に記載する。
【0110】
(評価結果)
【表1】
【0111】
表1に示すように、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、かつ−196℃における引張破断伸びが12%以上である実施例1〜5の超伝導線材用被覆材は、液体窒素温度において、超伝導線材に対して浮き及び割れがなく、良好であった。このため、実施例1〜5の超伝導線材用被覆材の部分放電開始電圧は260Vrms以上であり、特性の低下を抑制できた。
【0112】
一方、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm未満であった比較例1の超伝導線材用被覆材は、浮き、割れが発生したため、部分放電開始電圧が低く、特性が低下した。
【0113】
また、−196℃における引張破断伸びが12%未満であった比較例2の超伝導線材用被覆材は、浮き、割れが発生したため、部分放電開始電圧が低く、特性が低下した。
【0114】
以上より、本実施例によれば、超伝導線材用被覆材において、−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、−196℃における引張破断伸びが12%以上であることにより、液体窒素温度領域において、浮き、割れを抑制できたので、特性の低下が抑制されることが確認できた。
【0115】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、各実施の形態及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
10 超伝導線材用被覆材、11 基材、11a,12a 表面、11b 裏面、12 粘弾性体層、20 巻芯、100 超伝導電線、110 超伝導線材、120 ラップ部、200 超伝導コイル、210 巻枠、300,400 測定装置、301,431 容器、302 保温層、303,304 冶具、305,306 チャック部、432 電極、433 支柱、434 部分放電測定器、435 アース、436 液体窒素、L1 距離、L2 長さ、L3 深さ、S1,S2 評価サンプル、W120 幅、θ 角度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導線材を被覆するための被覆材であって、
−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、
−196℃における引張破断伸びが12%以上であることを特徴とする、超伝導線材用被覆材。
【請求項2】
基材と、
前記基材の一方の面上に形成された粘弾性体層とを含む、請求項1に記載の超伝導線材用被覆材。
【請求項3】
前記粘弾性体層はシリコーン系粘弾性体組成物を含有する、請求項2に記載の超伝導線材用被覆材。
【請求項4】
8.0μm以上30.0μm以下の厚みを有し、
前記基材は5.0μm以上25.0μm以下の厚みを有する、請求項2または3に記載の超伝導線材用被覆材。
【請求項5】
前記基材はポリイミド樹脂からなる、請求項2〜4のいずれか1項に記載の超伝導線材用被覆材。
【請求項6】
ポリイミド樹脂からなる基材を含む、請求項1に記載の超伝導線材用被覆材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の超伝導線材用被覆材と、
前記超伝導線材用被覆材に被覆された超伝導線材とを備えた、超伝導電線。
【請求項8】
請求項7に記載の超伝導電線を用いて作製された、電気機器。
【請求項1】
超伝導線材を被覆するための被覆材であって、
−196℃における引張破断強度が12.0N/3mm以上であり、
−196℃における引張破断伸びが12%以上であることを特徴とする、超伝導線材用被覆材。
【請求項2】
基材と、
前記基材の一方の面上に形成された粘弾性体層とを含む、請求項1に記載の超伝導線材用被覆材。
【請求項3】
前記粘弾性体層はシリコーン系粘弾性体組成物を含有する、請求項2に記載の超伝導線材用被覆材。
【請求項4】
8.0μm以上30.0μm以下の厚みを有し、
前記基材は5.0μm以上25.0μm以下の厚みを有する、請求項2または3に記載の超伝導線材用被覆材。
【請求項5】
前記基材はポリイミド樹脂からなる、請求項2〜4のいずれか1項に記載の超伝導線材用被覆材。
【請求項6】
ポリイミド樹脂からなる基材を含む、請求項1に記載の超伝導線材用被覆材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の超伝導線材用被覆材と、
前記超伝導線材用被覆材に被覆された超伝導線材とを備えた、超伝導電線。
【請求項8】
請求項7に記載の超伝導電線を用いて作製された、電気機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−20725(P2013−20725A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151054(P2011−151054)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]