説明

超伝導線材

【課題】超伝導線材の絶縁材形成時の損傷を減らし、超伝導線材の表面を均一にし、製造が簡単であり、ノイズ信号なしに、超伝導マグネットから電圧信号をうまく感知することができる超伝導線材を提供する。
【解決手段】緩衝層を介在して超伝導層と金属基板が接合された線材に安定化材層がメッキされた超伝導線材であって、安定化材層の全面にエポキシ樹脂絶縁材層がコートされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超伝導電力貯蔵装置などに使われる超伝導線材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度化及び情報化の社会に発展するにつれて、情報通信器機、電算器機、オンラインサービス器機、自動生産ライン及び精密制御器機が拡充され、このような敏感で重要な負荷に高品質の電力を供給する目的で超伝導電力貯蔵装置(SMES:superconducting magnetic energy storage)に対する研究及び開発が活発に進んでいる。超伝導電力貯蔵装置は、電力品質を制御するための小規模の超伝導電力貯蔵装置と、負荷平準化を目的とする大容量超伝導電力貯蔵装置に至るまで多様である。最近には敏感な負荷の電力品質を制御する目的で数MJ級小規模超伝導電力貯蔵装置が商用化して産業体用及び軍用に適用されてその効果を立証している。
【0003】
超伝導電力貯蔵装置は主に薄いテープ状の超伝導線材を巻線して積層した超伝導マグネットを主要部品として使っているが、超伝導線材が導電性物質を含むため、巻線のためには、超伝導線材を先に絶縁させる必要がある。従来には絶縁性材質のフィルムを超伝導線材の最外側に螺旋状に巻き付けて絶縁層を形成して使ったが、このようなフィルムは超伝導線材の縁で生じるバリ(bur)などによって破れ易く、超伝導線材の表面を不均一にして、巻線の際にいろいろの問題を引き起こし、製造工程も煩わしい問題点がある。
【0004】
一方、超伝導線材を巻線した超伝導マグネットは、クエンチ(quench)などを検出するために、その中心に別途のリード線を連結して電圧信号を感知したが、このリード線はもう一つの物理的/電気的ルーフを形成して誘導起電力によるノイズを発生させる問題点がある。すなわち、電磁気的ノイズによる誤判断/誤作動を引き起こしてクエンチ検出などが不可能な問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は前記のような問題を解決するためになされたもので、超伝導線材の絶縁材形成時の損傷を減らすことができ、超伝導線材の表面を均一にし、簡単に製造することができる超伝導線材を提供することにその目的がある。
【0006】
また、本発明は、ノイズ信号なしに、超伝導マグネットから電圧信号をうまく感知することができる超伝導線材を提供することにその他の目的がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は以上に言及した課題に限定されなく、ここで言及しなかった本発明が解決しようとするさらに他の課題は下記の説明から本発明が属する技術分野で通常の知識を持った者に明らかに理解可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するために、本発明は、緩衝層を介在して超伝導層と金属基板が接合された線材に安定化材層がメッキされた超伝導線材において、前記安定化材層の全面にエポキシ樹脂絶縁材層がコートされたことを特徴とする、超伝導線材を提供する。
【0009】
前記安定化材層は、銀(Ag)安定化材層または銅(Cu)安定化材層の中で少なくとも1種の安定化材層で形成されることができる。
【0010】
前記エポキシ樹脂絶縁材層の一面に導電性薄膜層がコートされ、前記エポキシ樹脂絶縁材層の一端には前記導電性薄膜層と前記安定化材層を電気的に連結する連結孔が形成されることができる。
【0011】
前記導電性薄膜層は少なくとも二つ以上が間隔を置いて平行に形成され、前記連結孔は前記導電性薄膜層に対応して複数形成されることができる。
【発明の効果】
【0012】
前記課題の解決手段によって、本発明の超伝導線材は、絶縁材の形成時に損傷を減らすことができ、超伝導線材の表面を均一にし、簡単に製造することができる効果がある。
【0013】
また、本発明の超伝導線材は、ノイズ信号なしに、超伝導マグネットから電圧信号をうまく感知することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の第1実施例による超伝導線材の一端を切り取った断面を含んで示す斜視図である。
【図2】図2は本発明の第2実施例による超伝導線材の一端を切り取った断面を含んで示す斜視図である。
【図3】図3は図2の超伝導線材を矢印A方向の直角方向に切り取って見た側断面図である。
【図4】図4は本発明の第2実施例による超伝導線材を巻線した形態を示す斜視図である。
【図5】図5は本発明の第3実施例による超伝導線材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以上のような本発明の解決課題、課題の解決手段、発明の効果を含む具体的な事項は以降の実施例及び図面に含まれている。本発明の利点及び特徴、かつ本発明の達成方法は添付図面に基づいて詳細に後述する実施例から明らかになるであろう。明細書全般にわたって同一参照符号は同一構成要素を示す。
【0016】
以下、添付図面に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0017】
<第1実施例>
図1は本発明の第1実施例による超伝導線材の一端を切り取った断面を含んで示す斜視図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の第1実施例による超伝導線材は、金属基板110、緩衝層120、超伝導層130、安定化材層140及びエポキシ樹脂絶縁材層150を含む。
【0019】
金属基板110は超伝導線材の基部をなし、セラミック材でなる超伝導層130に対して可撓性を与えて、超伝導電力貯蔵装置などに使用されるときに容易に巻線されるようにする。また、金属基板110は耐酸化性を有し、主にステンレススチール、ニッケル合金などの材質で形成される。
【0020】
緩衝層120は金属基板110と超伝導層130の間に形成されていろいろの緩衝作用をする。具体的に、超伝導線材の製造の際、超伝導層130は700℃程度の高温で形成される。この際、金属基板110の金属物質が超伝導層130に拡散して汚染させることを防止し、超伝導層130の超伝導特性を向上させる作用をする。このために、緩衝層120は、アルミナなどのセラミック材質でなる拡散防止層と、MgO、MnOなどでなる特性向上層とを含む。
【0021】
超伝導層130は超伝導線材の主要特性である超伝導特性を有する層で、希土類系の高温超伝導材質で主に形成される。
【0022】
安定化材層140は、金属基板110、緩衝層120及び超伝導層130でなる超伝導線材を外部から保護して安定化材の役目を担当する。安定化材層140は、銀(Ag)安定化材層141または銅(Cu)安定化材層142の中で少なくとも一つの安定化材層でなる。銀安定化材層141は安定化特性を向上させるためのものであり、銅安定化材層142は高価の銀を使うことによる費用負担を考慮したものである。本発明の第1実施例においては、超伝導線材を中心として銀を非常に薄くコートして銀安定化材層141を形成し、銀安定化材層141上に十分な安定化特性のために銅をメッキして銅安定化材層142を形成して使っているが、必要によっては銀安定化材層141または銅安定化材層142のいずれか一安定化材層のみを形成しても構わない。
【0023】
また、図1は単位超伝導線材のそれぞれに銀コーティングを行う面倒さを改善するために、広幅の超伝導線材に銀コーティングを行った後、単位超伝導線材にカットして形成された構造のもので、このように製造工程を簡素化するために側面の銀安定化材層141を除去することも可能である。
【0024】
エポキシ樹脂絶縁材層150は導電性物質でなる超伝導線材を外部から絶縁するための絶縁材層で、本発明の第1実施例においては、従来とは異なり、エポキシ樹脂を安定化材層140の全面にコートすることで絶縁材層を形成する。これにより、超伝導線材にエポキシ樹脂絶縁材層150を手軽く形成することができ、製造時に絶縁材が破れる問題点を考慮する必要がないので、製造不良を最小化し製造工程を簡素化することができる。
【0025】
また、超伝導線材の表面が均一になり、超伝導線材の寸法の不正確性、マグネット巻線の際、超伝導線材の巻数による巻線厚さの不正確性、超伝導線材の変形、商品性低下などの問題点を解決することができる。よって、より予測可能なマグネットの磁場及び大きさを得ることができる。
【0026】
<第2実施例>
図2〜図4は本発明の第2実施例による超伝導線材を説明する図である。具体的に、図2は本発明の第2実施例による超伝導線材の一端を切り取った断面を含む斜視図、図3は図2の超伝導線材を矢印A方向の直角方向に切り取って見た側断面図、図4は本発明の第2実施例による超伝導線材を巻線した形態を示す斜視図である。
【0027】
図2〜図4に示すように、本発明の第2実施例による超伝導線材は、金属基板110、緩衝層120、超伝導層130、安定化材層140、エポキシ樹脂絶縁材層150及び導電性薄膜層160を含む。
【0028】
ここで、本発明の第2実施例による金属基板110、緩衝層120、超伝導層130、安定化材層140及びエポキシ樹脂絶縁材層150は本発明の第1実施例による金属基板110、緩衝層120、超伝導層130、安定化材層140及びエポキシ樹脂絶縁材層150と同一ないし類似の特性、作用及び材質を有するので、これらについての具体的な説明は図1を参照して説明した本発明の第1実施例を参考し、以下では省略する。
【0029】
導電性薄膜層160は銀、銅などの導電性材質でエポキシ樹脂絶縁材層170の一面にコートされる。導電性薄膜層160は、超伝導線材を巻線した超伝導マグネットを超伝導電力貯蔵装置などに使用する場合、超伝導電力貯蔵装置の運転時にクエンチ(quench)などを検出するために電圧信号を感知する感知手段として使われる。このために、図3のように、エポキシ樹脂絶縁材層150の一端には連結孔151が形成され、この連結孔151を通じて導電性薄膜層160と安定化材層140の一部が電気的に連結され、残り部分はエポキシ樹脂絶縁材層150によってまったく絶縁される。
【0030】
このように、本発明の第2実施例による超伝導線材は、従来とは異なり、電圧信号を感知する感知手段である導電性薄膜層160が超伝導線材に一体的に形成されることにより、別途のリード線によるルーフ形成を除去して、ノイズ信号なしに、超伝導マグネットから電圧信号をうまく感知することができる。また、電圧信号感知のための別途のリード線を設置する面倒さを無くすことができ、製造工程を簡素化することができる。さらに、表面が均一なエポキシ樹脂絶縁材層150に一体的な薄膜で形成されるので、導電性薄膜層160の製造性を向上させることができる。
【0031】
一方、図4は本発明の第2実施例による超伝導線材をボビン200に巻線した形状を示すもので、導電性薄膜層160は巻線中心の一端が安定化材層140と連結され、巻線の外側他端が外部に露出されて感知端子として使用される。
【0032】
<第3実施例>
図5は本発明の第3実施例による超伝導線材を示す斜視図である。
【0033】
図5に示すように、本発明の第3実施例による超伝導線材は、金属基板110、緩衝層120、超伝導層130、安定化材層140、エポキシ樹脂絶縁材層150及び導電性薄膜層170を含む。
【0034】
ここで、本発明の第3実施例による金属基板110、緩衝層120、超伝導層130、安定化材層140及びエポキシ樹脂絶縁材層150は本発明の第1実施例及び第2実施例による金属基板110、緩衝層120、超伝導層130、安定化材層140及びエポキシ樹脂絶縁材層150と同一ないし類似の特性、作用及び材質を有するので、これらについての具体的な説明は図1を参照して説明した本発明の第1実施例を参考し、以下では省略する。
【0035】
また、本発明の第3実施例による導電性薄膜層170は、本発明の第2実施例による導電性薄膜層160と類似ないし一部同一の特性、作用及び材質を有する。但し、本発明の第3実施例による導電性薄膜層170は、本発明の第2実施例による導電性薄膜層160とは異なり、少なくとも二つ以上が互いに間隔を置いて平行に形成され、上述した連結孔は導電性薄膜層170a、179b、170c、・・・のそれぞれに対応して複数で形成される形状を有する。
【0036】
したがって、本発明の第3実施例による超伝導線材は、超伝導電力貯蔵装置の運転の際、それぞれの連結孔(図示せず)に連結された複数の導電性薄膜層170の他端を通じて複数の信号を感知することができる。すなわち、多様なパラメーターの信号を同時に感知することができる。
【0037】
このように、前述したような本発明の技術的構成は本発明が属する技術分野の当業者が本発明の技術的思想または必須特徴を変更しなくても他の具体的な形態に実施することができるのが理解可能であろう。
【0038】
したがって、前述した実施例らはすべての面で例示的なもので限定的なものではないことが理解されなければならなく、本発明の範囲は前記詳細な説明よりは後述する特許請求範囲によって決まれ、特許請求範囲の意味及び範囲かつその等価の概念から導出されるすべての変更または変形の形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、敏感で重要な情報通信器機、電算器機、オンラインサービス器機、自動生産ライン及び精密制御器機に高品質の電力を供給するための超伝導電力貯蔵装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
110 金属基板
120 緩衝層
130 超伝導層
140 安定化材層
141 銀安定化材層
142 銅安定化材層
150 エポキシ樹脂絶縁材層
151 連結孔
160、170、170a、170b、170c 導電性薄膜層
200 ボビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝層を介在して超伝導層と金属基板が接合された線材に安定化材層がメッキされた超伝導線材において、
前記安定化材層の全面にエポキシ樹脂絶縁材層がコートされたことを特徴とする、超伝導線材。
【請求項2】
前記安定化材層は、銀(Ag)安定化材層または銅(Cu)安定化材層の中で少なくとも1種の安定化材層で形成されることを特徴とする、請求項1に記載の超伝導線材。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂絶縁材層の一面に導電性薄膜層がコートされ、前記エポキシ樹脂絶縁材層の一端には前記導電性薄膜層と前記安定化材層を電気的に連結する連結孔が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の超伝導線材。
【請求項4】
前記導電性薄膜層は少なくとも二つ以上が間隔を置いて平行に形成され、前記連結孔は前記導電性薄膜層に対応して複数形成されることを特徴とする、請求項3に記載の超伝導線材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−181500(P2011−181500A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−38027(P2011−38027)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(507296791)コリア エレクトロテクノロジー リサーチ インスティテュート (24)
【Fターム(参考)】