説明

超広帯域無線通信装置

【課題】10GHz以上の超広帯域を簡易な構成で利用可能とすることで、短距離高速通
信が低価格で実現できる超広帯域無線通信装置を提供する。
【解決手段】超広帯域無線通信装置100は、所定の超広帯域を2分割して通信に用いる
構成としており、演算制御部111では送信データをもとに2つのトリガ信号を生成し、
これを信号生成部120に出力して2つのインパルス信号を出力する。一方のインパルス
信号は、ミキサ122で所定の連続波と混合されて所定の周波数までアップコンバートさ
れる。BPF123a及びBPF123bでろ波された2つのインパルス信号は、合波器
124で合波されて送信アンテナ131から送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超広帯域を利用して短距離通信を行う超広帯域無線通信装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新しいコンセプトの無線通信技術として、450GHz乃至数GHzの帯域幅を利用した超広帯域無線システムであるUWB(Ultra Wide Band)無線通信システムが注目されている。
【0003】
UWBは、広帯域を利用することでパルス幅がナノ秒程度かそれ以下の超短パルス波を用いたインパルス無線方式である。パルスを用いた無線通信システムでは、パルス幅が狭くなるほど平均送信電力が小さくなり、到達距離が短くなる。そのため、広帯域化してパルス幅を狭めるほど、同じ周波数帯を使う他の無線機器との混信の可能性が低くなり、消費電力も少なくなるという特徴がある。
【0004】
UWBは、その出力が極めて低いことから短距離の通信に好適な通信方式であり、ワイヤレスUSBの通信方式等に利用されている(特許文献1)。ワイヤレスUSBは高々1Gbpsを極近距離で通信するのを目的としており、1GHz程度の広帯域を利用することで機器間の距離が3m以内の場合には有線のUSB2.0と同等の480Mbpsでの高速通信を可能としており、また10m離れた場合でも110Mbpsを確保することができる。
【特許文献1】特開2006−186940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のUWBを用いた通信方式で実現できる通信速度は、高々1Gbpsまでであり、さらに高速なデータ通信を実現するためには、シャノンの定理で明らかなように、利用する帯域をさらに拡大する必要がある。しかし、さらに帯域を拡大して10GHz程度の超広帯域を実現するためには、従来は、光学的インパルス生成を利用するか、InPなどの高価な半導体材料を用いる必要があった。そのため、10GHz程度の超広帯域を利用した無線通信装置を低価格で実現することができない、といった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、10GHz以上の超広帯域を簡易な構成で利用可能とすることで、短距離高速通信が低価格で実現できる超広帯域無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超広帯域無線通信装置の第1の態様は、送信データの入力及び受信データの出力を行うデータ入出力部と、前記データ入出力部から前記送信データを入力し、前記送信データに基づいて2つ以上の系統のデータ列を作成し、該2つ以上の系統のデータ列にそれぞれ対応する第1のトリガ信号及び1つ以上の第2のトリガ信号を作成する演算制御部と、前記演算制御部から前記第1のトリガ信号及び1つ以上の第2のトリガ信号をそれぞれ入力して第1のトリガ信号及び1つ以上の第2のトリガ信号にそれぞれ対応する第1のインパルス信号及び1つ以上の第2のインパルス信号をベースバンドでそれぞれ生成する2つ以上の信号生成部と、前記第1のインパルス信号を所定のベースバンドの帯域にろ波して送信用ベースバンドインパルス信号を出力する第1の送信側帯域ろ波部と、前記1つ以上の第2の前記インパルス信号をそれぞれ入力し、それぞれ周波数の異なる高周波連続波と混合して1つ以上の混合波をそれぞれ出力する1つ以上のミキサと、前記1つ以上の混合波をそれぞれ入力して1つ以上の所定の高周波帯域にろ波して1つ以上の送信用高周波インパルス信号をそれぞれ出力する1つ以上の第2の送信側帯域ろ波部と、前記送信用ベースバンドインパルス信号と前記1つ以上の前記送信用高周波インパルス信号とを合波する合波器と、前記合波器の出力信号を所定のレベルに増幅して送信信号を出力する送信側増幅部と、前記送信信号を送信する送信アンテナと、受信波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナで受信した前記受信波を増幅する受信側増幅部と、前記受信側増幅部の出力信号を分波して入力し、前記ベースバンド及び前記1つ以上の高周波帯域のそれぞれにろ波して2つ以上の帯域別受信波をそれぞれ出力する2つ以上の受信側帯域ろ波部と、前記2つ以上の帯域別受信波をそれぞれ入力して検波する2つ以上の検波部と、前記2つ以上の検波部でそれぞれ検波された前記2つ以上の帯域別受信波をそれぞれ入力して閾値判定を行う2つ以上の相関回路と、前記2つ以上の相関回路からそれぞれ出力される2つ以上の前記閾値判定の出力値を統合して前記受信データを復元するデータ判定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、所定の広帯域を2以上の利用帯域に分割し、周波数が最も低い前記利用帯域を前記ベースバンドとし、それ以外の前記利用帯域を前記1つ以上の高周波帯域としていることを特徴とする。
【0009】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、前記ベースバンド及び前記1つ以上の高周波帯域は、それぞれ1GHzを超える広帯域であることを特徴とする。
【0010】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、前記2つ以上の信号生成部は、前記第1のトリガ信号又は前記1つ以上の第2のトリガ信号のそれぞれの立ち上がりをトリガとして前記第1のインパルス信号及び前記1つ以上の第2のインパルス信号をそれぞれ生成していることを特徴とする。
【0011】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、前記2つ以上の信号生成部は、前記第1のトリガ信号又は前記1つ以上の第2のトリガ信号をそれぞれ入力して2つの分配トリガ信号に分配する分配手段と、前記分配手段で分配された一方の前記分配トリガ信号に一定のバイアスを付加するバイアス手段と、前記バイアスを付加された前記分配トリガ信号を所定時間だけ遅延させる遅延手段と、他方の前記分配トリガ信号と前記遅延手段の出力信号とを比較して前記他方の分配トリガ信号が前記出力信号よりも大きい期間だけ出力するコンパレータと、をそれぞれ備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、前記検波部は、前記帯域別受信波を入力する入力側整合回路と、前記入力側整合回路の出力信号を整流するダイオードと、前記ダイオードで整流された信号を入力する出力側整合回路とを有し、前記相関回路で閾値判定可能なパルス幅の直流成分を有する出力信号を出力するダイオード検波器を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、前記ダイオードは、トンネルダイオードであることを特徴とする。
【0014】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、前記ダイオードは、ショットキーダイオードであることを特徴とする。
【0015】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、前記演算制御部は、前記データ入出力部から入力した前記送信データを、Kを2以上の自然数として、K×i+j(i=0,1,2,・・・)番目のビットを各j(j=1,2,・・・,K)ごとに集めてなるK個のビット列に分割し、さらに、これらK個のビット列をそれぞれRZ符号化して前記第1のトリガ信号及び(K−1)個の前記第2のトリガ信号とをそれぞれ作成し、前記データ判定部は、前記2つ以上の相関回路からそれぞれ入力した2つ以上の前記閾値判定の出力値をビット列にそれぞれ変換し、前記2つ以上のビット列からそれぞれ偶数番目のビットを除去することによってNRZ符号化データに変換し、前記NRZ符号化データを、jの小さい順に1ビットずつ巡回配列して1つのビット列に合成することで前記受信データを復元していることを特徴とする。
【0016】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、前記演算制御部は、前記第1のトリガ信号及び1つ以上の第2のトリガ信号として、同じ信号を出力することを特徴とする。
【0017】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、前記演算制御部は、前記送信データをそのデータ系列よりM倍(Mは2以上の自然数)速い処理速度で処理することによって、M個の同じトリガ信号を生成することを特徴とする。
【0018】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、前記演算制御部は、前記第1のトリガ信号及び1つ以上の第2のトリガ信号を、時分割された互いに異なる時間帯に出力することを特徴とする。
【0019】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、前記演算制御部は、周期的に設定された出力許可時間帯のみ前記第1のトリガ信号及び1つ以上の第2のトリガ信号を出力することを特徴とする。
【0020】
本発明の超広帯域無線通信装置の他の態様は、送信データの入力及び受信データの出力を行うデータ入出力部と、前記データ入出力部から前記送信データを入力してビット列に変換し、前記ビット列の奇数番目のビットからなる奇数ビットデータ列と偶数番目のビットからなる偶数ビットデータ列とを作成し、さらに前記奇数ビットデータ列と偶数ビットデータ列とをそれぞれRZ符号化して第1のトリガ信号と第2のトリガ信号とをそれぞれ作成する演算制御部と、前記演算制御部から前記第1のトリガ信号と第2のトリガ信号とをそれぞれ入力して前記第1のトリガ信号と第2のトリガ信号とにそれぞれ対応する第1のインパルス信号及び第2のインパルス信号をベースバンドでそれぞれ生成する2つの信号生成部と、前記第1のインパルス信号を所定のベースバンドの帯域にろ波して送信用ベースバンドインパルス信号を出力する第1の送信側帯域ろ波部と、前記第2のインパルス信号を入力し、高周波連続波と混合して混合波を出力するミキサと、前記混合波を入力して所定の高周波帯域にろ波して送信用高周波インパルス信号を出力する第2の送信側帯域ろ波部と、前記送信用ベースバンドインパルス信号と前記送信用高周波インパルス信号とを合波する合波器と、前記合波器の出力信号を所定のレベルに増幅して送信信号を出力する送信側増幅部と、前記送信信号を送信する送信アンテナと、受信波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナで受信した前記受信波を増幅する受信側増幅部と、前記受信側増幅部の出力信号を分波して入力し、前記ベースバンド及び前記高周波帯域のそれぞれにろ波して2つの帯域別受信波をそれぞれ出力する2つの受信側帯域ろ波部と、前記2つの帯域別受信波をそれぞれ入力して検波する2つの検波部と、前記2つの検波部でそれぞれ検波された前記2つの帯域別受信波をそれぞれ入力して閾値判定を行う2つの相関回路と、前記2つの相関回路からそれぞれ入力した2つの前記閾値判定の出力値をビット列にそれぞれ変換し、前記2つのビット列からそれぞれ偶数番目のビットを除去することによってNRZ符号化データに変換し、前記NRZ符号化データの一方を奇数番目とし他方を偶数番目として交互に配列して1つのビット列に合成することで前記受信データを復元するデータ判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、10GHz以上の超広帯域を2以上の広帯域に分けて利用することにより、数Gbps程度の短距離高速通信を容易に実現する超広帯域無線通信装置を提供することができる。本発明の超広帯域無線通信装置では、2以上の広帯域を簡易な構成で利用できるとともに、広帯域化により電力スペクトル密度を低減することで、他システムへの干渉を低減した近距離高速通信を低価格で実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の好ましい実施の形態における超広帯域無線通信装置について、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0023】
本発明の超広帯域無線通信装置は、10GHz以上の超広帯域を利用して送受信を行っており、これにより数Gbps程度の短距離高速通信を実現している。また、この超広帯域を2以上に分割して使用することで、超広帯域な送信信号を簡易な構成で生成可能としている。本発明の超広帯域無線通信装置で利用する周波数帯域の一例を図2に示す。
【0024】
図2では、20GHz程度の帯域を利用する例を示しており、同図(a)ではこれを2つの帯域に分割して利用する例を示している。この場合、低周波側の帯域でベースバンドのインパルスを生成し、これを中心周波数F1のスペクトル11に波形整形して送信信号に用いている。また、高周波側の帯域を利用した中心周波数F2のインパルスのスペクトル12は、ベースバンドのインパルスを所定の高周波連続波でアップコンバートすることで実現することができる。上記と同様に、同図(b)ではこれを3つの帯域に分割して利用する例を示している。分割された各帯域は1GHz以上有するようにするのがよい。
【0025】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施の形態に係る超広帯域無線通信装置の構成を、図1に示すブロック図を用いて説明する。本実施形態の超広帯域無線通信装置100は、送信データの入力及び受信データの出力を行うデータ入出力部101と、送信データをもとに所定のインパルスからなる送信信号を要求するトリガ信号を作成するとともに、受信信号を処理して受信データを復元する通信データ処理部110と、通信データ処理部110からトリガ信号を入力して広帯域インパルスからなる送信信号を生成する送信信号生成部120と、送信信号を送信するための送信アンテナ131と、受信波を受信するための受信アンテナ132と、受信波を検波するための受信信号処理部140と、を備えている。
【0026】
通信データ処理部110は、送信データを処理するための演算制御部111を備えるとともに、受信データを処理するために相関回路112とデータ判定部113とを備えている。演算制御部111は、データ入出力部101から送信データを入力するとともに、受信波を処理して得られた受信データをデータ入出力部101に出力する処理も行っている。
【0027】
本実施形態の超広帯域無線通信装置100では、所定の超広帯域を2分割して通信に用いる構成としており、演算制御部111では送信データをもとに2つの系統のトリガ信号を生成し、これを送信信号生成部120に出力している。送信信号生成部120は、演算制御部111からトリガ信号を入力して所定のインパルス信号を生成する信号生成部121aと121bを備えている。信号生成部121aと121bは、2つのトリガ信号の一方と他方をそれぞれ入力し、それぞれ第1のインパルス信号と第2のインパルス信号と出力する。ここで生成された第1のインパルス信号及び第2のインパルス信号の中心周波数を、F1と記すこととする。
【0028】
送信信号生成部120において、第1のインパルス信号及び第2のインパルス信号が、信号生成部121a、121bで生成された後どのように波形整形されるかを、図3に示す模式図を用いて説明する。図3は、各インパルス信号の周波数スペクトルを模式的に示したものである。第1のインパルス信号及び第2のインパルス信号は、図3(a)に示すように、例えば10GHz程度の広帯域なスペクトルを有するベースバンドで生成されたインパルスである。
【0029】
本実施形態では、第1のインパルス信号に対し、第1の送信側帯域ろ波部であるバンドパスフィルタ(BPF)123aを用いて低周波成分を低減するよう波形整形している。BPF123aで波形整形された第1のインパルス信号を図3(b)に示す。ここでは、BPF123aで波形整形された第1のインパルス信号を送信用ベースバンドインパルス信号という。
【0030】
他方、信号生成部121bで生成された第2のインパルス信号は、ミキサ122で所定の高周波連続波と混合されて所定の周波数までアップコンバートされる。ミキサ122から出力される混合波のスペクトルを図3(c)に示す。このアップコンバートのための高周波連続波を発生させるために高周波発振器126が備えられており、例えばVCO(Voltage Controlled Oscillator)を用いることができる。
【0031】
ミキサ122から出力された混合波は、第2の送信側帯域ろ波部であるバンドパスフィルタ(BPF)123bでろ波されることにより、図3(d)に示すようなアップコンバートされた高周波インパルス信号に整形される。ここでは、BPF123bで波形整形された第2のインパルス信号を送信用高周波インパルス信号という。この送信用高周波インパルス信号の中心周波数を、F2と記すこととする。
【0032】
BPF123a及びBPF123bでろ波された送信用ベースバンドインパルス信号及び送信用高周波インパルス信号は、ともに合波器124に出力されて合波され、これを送信側増幅部である増幅器125で増幅されて送信信号として送信アンテナ131から送信される。合波器124で合波された2つの信号は、それぞれの周波数帯域が異なっていることから、受信側でも受信波から2つの信号を別々に取り出すことは容易である。
【0033】
次に、受信アンテナ132で受信された受信波は、受信信号処理部140に入力され、ここで受信波の検波が行われる。受信信号処理部140に入力された受信波は、まず受信側増幅部である増幅器141で増幅された後、2つに分波されて受信側帯域ろ波部のBPF142a、142bにそれぞれ入力される。BPF142aと142bは、受信波を帯域別にろ波するもので、BPF142aは送信用ベースバンドインパルス信号と略等しいベースバンドの帯域にろ波して第1の帯域別受信波を出力する。また、BPF142bは、送信用高周波インパルス信号と略等しい帯域にろ波して第2の帯域別受信波を出力する。
【0034】
検波部143aと143bは、BPF142aと142bとから第1の帯域別受信波と第2の帯域別受信波をそれぞれ入力し、それぞれで受信波を検波する。検波された各受信波は、通信データ処理部110に出力されて所定のデータ処理が行われる。
【0035】
通信データ処理部110では、検波部143a及び143bから入力した各受信波を、それぞれ第1相関回路112a及び第2相関回路112bに入力し、ここで所定の閾値判定が行われる。第1相関回路112a及び第2相関回路112bによる閾値判定の結果は、ともにデータ判定部113に出力され、ここで両者を統合して受信データが復元される。
【0036】
データ入出力部101で入力した送信データをもとに、演算制御部111及び信号生成部121a、121bの処理で第1のインパルス信号及び第2のインパルス信号を生成する方法を、図4を用いて説明する。演算制御部111で行われる処理については、さらに図5に示すデータ処理の流れ図も用いて説明する。図5では、データ入出力部101から入力する送信信号の一例として、10ビットからなる信号を併せて記載している。
【0037】
演算制御部111では、データ入出力部101からビット数Nのシリアルデータである送信データを入力すると(図5のステップS1)、これを入出力処理部151でパラレルデータに変換している(図5のステップS2)。そして、データ分配部152において所定の方法で2つに分配している(図5のステップS3)。本第1の実施形態では、データ分配部152は、ビット数Nのビット列からなる入力データを1ビットずつ奇数番目のビットと偶数番目のビットとに分けてビット数N/2のビット列を2つ作成している。
【0038】
2つのビット列は、それぞれデータ変換部153a、153bに入力され、ここで各ビットの後ろに’0’を挿入するデータ変換を行っている(図5のステップS4)。これにより、変換されたデータは’1’が連続することのないRZ符号化されたデータとなっている。それぞれのデータ変換部153a、153bでRZ符号化された2つのデータは、それぞれ入出力処理部154a、154bに入力されてパラレルデータからシリアルデータに変換され(図5のステップS5)、各ビットがトリガ信号としてそれぞれ信号生成部121a、121bに順次出力される(図5のステップS6)。
【0039】
図5に示す送信信号の例では、ステップS1で送信データとして10ビットのビット列’1001110100’が入力されると、ステップS3でこれを奇数番目のビットからなるビット列’10100’と偶数番目のビットからなるビット列’01110’とに分配されている。さらに、ステップS4ではそれぞれのビット列の各ビットの後ろに’0’が挿入されることで、10ビットの2つの信号生成用トリガ信号’1000100000’と’0010101000’とが生成されている。これにより、入出力処理部154a、154bから出力されるトリガ信号は、’1’の後に’1’が再び出力されることはなく、必ず’0’が出力されるように変換されている。
【0040】
信号生成部121a、121bに入力された各トリガ信号は、分配器155a、155bに入力され、ここでそれぞれが2つのトリガ信号20a、20bに分配され、これらがそれぞれのコンパレータ156a、156bに出力されている。但し、トリガ信号20bは、バイアス手段157a、157bにおいて、トリガ信号20aより一定レベルだけ出力が高くなるよう一定のバイアスが付加され、さらに遅延回路158a、158bにおいて、トリガ信号20aより所定時間ΔTだけ遅れてコンパレータ156a、156bに到達するよう、遅延時間が付加されている。
【0041】
遅延回路158a、158bにより所定時間ΔTの遅延時間が付加されたトリガ信号20bを、トリガ信号20aと比較して模式的に図6に示す。同図では、トリガ信号20bに遅延時間100psが付加された状態を示しており、これによりトリガ信号20bはトリガ信号20aより100psだけ遅れてコンパレータ156a、156bに入力される。
【0042】
コンパレータ156a、156bは、それぞれに入力された2つのトリガ信号20a、20bを比較し、トリガ信号20aがトリガ信号20bを超えるときのみ出力するように構成されている。コンパレータ156a、156bに入力されるトリガ信号20a、20bの一例を図7に示す。トリガ信号20bにはバイアス手段157a、157bで所定のバイアスが付加されているため、同図(a)に示すように、大部分の区間においてトリガ信号20bがトリガ信号20aより大きくなっており、この間はコンパレータ156a、156bからの出力はない。
【0043】
これに対し、トリガ信号20aが立ち上がる符号30の時点では、トリガ信号20aがトリガ信号20bより大きくなっており、この間のみコンパレータ156a、156bからの出力が発生する。その結果、図7(b)に示すような広帯域なインパルスが生成される。
【0044】
このように、本実施形態では、トリガ信号の立ち上がりを利用してインパルスを生成している。これが第1のインパルス信号及び第2のインパルス信号として、それぞれのコンパレータ156a、156bから出力される。第1のインパルス信号及び第2のインパルス信号のパルス幅は、遅延回路158a、158bで設定された遅延時間ΔTに略等しくなっており、遅延時間ΔTを100psとすることで、帯域幅10GHz程度の広帯域なインパルスを生成している。
【0045】
次に、受信アンテナ132で受信した受信波を検波するための検波部143a、143bの例について説明する。
通信データ処理部110において、受信信号から受信データを適切に判定できるためには、検波部143a、143bで検波された受信信号が通信速度に対応する適切なパルス幅を有していることが必要である。例えば、通信速度が2Gbpsの場合には、検波部143a、143bで検波されて通信データ処理部110に出力される受信信号は、500ps程度のパルス幅を有している必要がある。受信信号のパルス幅がこれより小さいと、通信データ処理部110内の第1相関回路112a及び第2相関回路112bにおける閾値判定が困難となる。
【0046】
これに対し、送信信号生成部120では、信号生成部121a、121bでパルス幅100psのインパルス信号を生成し、これを処理して送信アンテナ131から送信している。送信アンテナ131から送信された送信波のインパルス信号は、パルス幅が100ps程度となっていることから、これを受信アンテナ132で受信したのち、閾値判定に必要なパルス幅以上となるよう受信信号処理部140で拡大する(パルスストレッチ)必要がある。このようなパルスストレッチを、本実施形態では検波部143a、143bで行っている。
【0047】
信号生成部121a、121bでは、図8に示すようなパルス幅100psのインパルス信号が生成されるが、その後BPF(123a、123b、142a、142b)や増幅器(125、141)等を通過する間に幅が拡がり、検波器143a、143bに入力される段階では、例えば図9、10に示すような幅が拡大された波形になっている。ここで、図9は検波器143aに入力される低周波側(ベースバンド)の受信波の一例であり、図10は検波器143bに入力される高周波側の受信波の一例を示している。また、各図の(a)は受信波の時間波形を示しており、(b)は周波数スペクトルを示している。図9(a)、図10(a)に示す時間波形より、低周波側/高周波側とも受信波の幅が拡大していることがわかる。
【0048】
検波部143a、143bは、例えば図11に示すようなダイオード検波器170を用いて構成することができる。図11は、ダイオード検波器170の概略構成を示すブロック図である。ダイオード検波器170は、入力側整合回路171、ダイオード172及び出力側整合回路173を備えており、ダイオード172には、例えばトンネルダイオード(エサキダイオード)を用いることができる。入力側整合回路171は、検波対象の信号の搬送波周波数に合わせて、最も効率良く検波できるように調整している。一例として、ダイオード172にトンネルダイオードを用いた場合、入力側整合回路171の占有帯域幅を比較的広帯域に設定し、例えば−10dB帯域(主ローブの最大利得に対して10dB減衰するまでの帯域幅)を5GHz程度とすることができる。
【0049】
また、出力側整合回路173を構成する図示しないローパスフィルタ(LPF)は、第1相関回路112a及び第2相関回路112bにおける閾値判定の分解能に合わせた周波数特性を持つように構成するのがよい。一例として、出力側整合回路173のLPFの3dBカットオフ周波数を2GHz程度とすることができる。入力側整合回路171の3dBカットオフ周波数を5GHz程度とし、出力側整合回路173のLPFの3dBカットオフ周波数を2GHz程度としたトンネルダイオード検波器170を検波部143a、143bに用いた場合、検波部143a、143bはともに図12に示すような波形の信号を出力する。図12(a)は横軸を時間とした時間波形を示し、(b)は周波数スペクトルを示している。
【0050】
トンネルダイオード検波器170を用いた検波部143a、143bは、それぞれ低周波側の受信波及び高周波側の受信波を入力すると、ともに全波整流して図12(a)に示すようなパルス幅500ps程度のインパルスを持つ信号を出力する。また、このインパルス信号は、図12(b)の周波数スペクトルで示されるように高い電力の直流成分を有している。図12に示すような波形の信号が検波部143a、143bから出力されると、第1相関回路112a及び第2相関回路112bは、これを入力して閾値判定を適切に行うことができ、図13に示すように元のインパルスを検知することができる。
【0051】
ダイオード検波器170の別の実施例として、例えばショットキーダイオードを用いて構成することもできる。すなわち、ダイオード検波器170を構成するダイオード172として、トンネルダイオードに代えてショットキーダイオードを用いる。以下では、ショットキーダイオードを用いたダイオード検波器170を高周波側の検波部143bに用いた場合について説明する。
【0052】
高周波インパルス信号の周波数スペクトルが図3(d)に示すように、約12GHzでピーク電力となっている場合、入力側整合回路171の3dBカットオフ周波数を例えば12GHzとし、出力側整合回路173を構成するLPFの3dBカットオフ周波数を例えば4GHz程度とすることができる。このとき、高周波側の受信波は全波整流されて、図14に示すような信号が出力される。図14(a)は横軸を時間とした時間波形を示し、(b)は周波数スペクトルを示している。
【0053】
図14(a)に示すように、検波部143bはパルス幅500ps程度のインパルスを持つ信号を出力している。また図14(b)に示すように、この信号も直流成分の電力が高い信号である。検波部143bから図14に示すような波形の信号が出力されると、第2相関回路112bは、これを入力して閾値判定を行うことができ、図13に例示するように元のインパルスを検知することができる。
【0054】
なお、高周波インパルス信号の周波数スペクトルが、図3(d)に示したように、約12GHzにピーク電力の周波数を有する場合、ピーク電力の周波数12GHzからずれた例えば11GHz近傍で最も検波効率の高いダイオード検波器170を検波部143bに用いたときには、検波部143bから出力される信号が1インパルスに対して複数のピークを有する不整合インパルスに変換されてしまい、例えば図15に示すような波形になり、第2相関回路112bがこれを入力して適切な閾値判定、すなわち一意に信号を検波することは困難である。
【0055】
上記の通り、適切な検波帯域を有するダイオード検波器170を用いることで、検波部143a、143bは、好適にパルスストレッチされたインパルス信号を出力することができ、第1相関回路112a及び第2相関回路112bはこれを入力して閾値判定を適切に行うことができる。検波部143a、143bに用いるダイオード検波器170として、上記の検波特性を満たすものであれば特に限定されないが、特にトンネルダイオードは出力抵抗値が他のダイオードに比べて小さいことから、これを用いることで出力電圧の高いパルスが得られるといった利点がある。
【0056】
なお、パルスストレッチを行う別の方法として、単純なLPFを用いて行う方法も考えられるが、送信信号生成部120で生成される送信信号は、図9(b)、図10(b)にそれぞれ示すように、低周波側、高周波側ともに直流成分を有していないことから、単純なLPFを用いて検波された信号は直流成分を持つことはできず、第1相関回路112aあるいは第2相関回路112bで適切な閾値判定を行うことは困難である。
【0057】
次に、通信データ処理部110において、検波部143a及び143bから出力された各受信波を、第1相関回路112a、第2相関回路112b、及びデータ判定部113で処理して受信データに復元する方法を、図16に示すブロック図を用いて以下に説明する。
【0058】
第1相関回路112a及び第2相関回路112bには、それぞれコンパレータ161aと閾値設定部162a、及びコンパレータ161bと閾値設定部162bが設けられている。ここでは、第1相関回路112aを例に、データ処理の内容を説明する。コンパレータ161aは、入力した受信波からインパルスを検知するものであり、入力信号を閾値設定部162aで設定された所定の閾値と比較し、入力信号が閾値を超える場合に所定の出力をデータ判定部113に出力する。
【0059】
データ判定部113で行われる処理について、さらに図17に示すデータ処理の流れ図も用いて説明する。図17では、コンパレータ161a及び161bから入力する受信信号の一例として、10ビットからなる信号を併せて記載している。
【0060】
データ判定部113では、コンパレータ161a及び161bからビット数Nのシリアルデータである受信信号を入力すると(図17のステップS11)、これを入出力処理部163a、163bでそれぞれパラレルデータに変換している(図17のステップS12)。そして、データ分配部164a、164bにおいて、それぞれの入力データを1ビットずつ奇数番目のビットと偶数番目のビットとに分けてビット数N/2のビット列に分配している(図17のステップS13)。
【0061】
そして、奇数番目のビットからなるビット列(NRZ符号化されたビット列)のみを、それぞれデータ合成部165に入力し、ここで2つのビット列を1つのビット列に合成する(図17のステップS14)。すなわち、データ分配部164aから入力したビット列の各ビットを奇数番目に、またデータ分配部164bから入力したビット列の各ビットを偶数番目に、それぞれ交互に配列して合成している。
【0062】
データ合成部165で1つに合成されたデータは、入出力処理部166に入力されてパラレルデータからシリアルデータに変換され(図17のステップS15)、受信データとして演算制御部111を経由してデータ入出力部101に出力される(図17のステップS16)。
【0063】
図17に示す例では、ステップS11で第1相関回路112a及び第2相関回路112bからそれぞれ10ビットのビット列’1000100000’及び’0010101000’が入力されると、ステップS13でそれぞれ奇数ビットからなるビット列と偶数ビットからなるビット列とに分配されている。ここで、偶数ビット列は、ともに’0’のみのビット列となっている。
【0064】
ステップS14では、ステップS13でそれぞれ2つに分配されたビット列のうち、奇数ビットからなるビット列のみをデータ合成部165に入力し、ここで1つに合成して受信データ’1001110100’を作成している。
【0065】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施の形態に係る超広帯域無線通信装置を以下に説明する。本実施形態では、演算制御部111及びデータ判定部113における処理が、第1の実施形態と異なっている。本実施形態では、送信するデータ系列を超広帯域無線通信装置100の通信能力より低いデータ系列の信号とし、同じデータ系列の信号を複数送信させて冗長性を持たせるようにしている。このように構成することで、仮に一つの周波数帯で通信が正常に行えない場合でも、別の周波数帯で通信することが可能となる。一例として、以下では超広帯域無線通信装置100の通信能力を2Gbpsとし、送信するデータ系列を1Gbpsとして説明する。
【0066】
本第2の実施形態では、演算制御部111の構成を示す図4において、入出力処理部151は、データ入出力部101からデータ系列1Gbpsの送信データを入力すると、これを2Gbpsの速度で処理してデータ系列1ビット当たり2ビットの同じデータを生成する。入出力処理部151における信号処理の一例を図18に示す。同図において、符号30がデータ系列1Gbpsの送信データを示しており、符号31が入出力処理部151から出力される2Gbpsのデータ系列を示している。入出力処理部151は、1Gbpsのデータ系列30の各ビット毎に2ビットのデータを生成し、これにより2Gbpsのデータ系列31を生成している。データ系列31は、パラレルデータに変換されてデータ分配部152に出力される。
【0067】
データ分配部152は、入出力処理部151から2Gbpsのデータ系列31からなるパラレルデータを入力すると、第1の実施形態と同様に、これを1ビットずつ奇数番目のビットと偶数番目のビットとに分けて2つのビット列を作成している。データ系列31は2ビット単位に同じデータで構成されていることから、データ分配部152の処理により同じデータ系列が2つ作成される。その結果、データ変換部153a、153bには同じデータ系列のデータが出力される。
【0068】
データ変換部153a、153bにおいても第1の実施形態と同じ処理が行われ、各ビットの後ろに’0’を挿入するデータ変換が行われる。その結果、入出力処理部154a、154bからは、図19に示すような同じ信号系列が信号生成部121aと121bにそれぞれ出力され、ベースバンドの第1のインパルス信号及び高周波帯の第2のインパルス信号が、ともに図20に示すような同じ系列のパルス列の信号となる。
【0069】
送信信号を上記のように生成するようにした場合、受信信号処理部140で処理され、第1相関回路112a及び第2相関回路112bで閾値判定されてデータ判定部113に入力される2つの受信信号は、ともに同じ系列の信号となっている。そこで、データ合成部165(図16)では、データ分配部164a、164bから入力したビット列を合成する代わりに、いずれか一方を選択するようにすればよい。この場合、入出力処理部166からは、1Gbpsの受信データとして出力する必要がある。
また、データ判定部113において、2つの受信データを比較して両者が一致した場合にのみ真のデータであると判定させるようにすることも可能である。これにより、より正確な通信が可能となる。
【0070】
上記の通り、本実施形態によれば2つの周波数帯で同じデータ系列のインパルス信号が送信されることから、これを冗長系と考えることができ、いずれか一方の周波数帯が干渉波等により使用できない事態になっても、他方の周波数帯で通信を継続することが可能となる。
【0071】
なお、本第2の実施形態では、超広帯域無線通信装置100の通信能力(ビットレート)が送信するデータ系列のビットレートの2倍である場合について説明したが、一般に超広帯域無線通信装置100の通信能力が送信するデータ系列のビットレートのM倍(Mは2以上の自然数)である場合にも容易に拡張できる。
【0072】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施の形態に係る超広帯域無線通信装置を以下に説明する。本実施形態でも、演算制御部111及びにデータ判定部113おける処理が、第1の実施形態及び第2の実施形態と異なっている。本実施形態では、低周波帯で信号送信する時間帯と高周波帯で信号送信する時間帯とを分けることで、2つの周波数帯を交互に利用して信号送信するように構成している。本実施形態における演算制御部111から信号生成部121a、121bに出力されるトリガ信号の一例を図21に示す。ここで、符号40は低周波帯の信号生成部121aに出力されるトリガ信号の一例であり、符号41は高周波帯の信号生成部121bに出力されるトリガ信号の一例を示している。符号40のトリガ信号は、図18に例示したデータ系列30の前半部分としており、符号41のトリガ信号は、データ系列30の後半部分としている。
【0073】
信号生成部121a、121bは、図21に示すようなトリガ信号を入力することにより、図22に示すような第1のインパルス信号42及び第2のインパルス信号43を出力する。同図に示すように、第1のインパルス信号42でパルス列が生成されている期間と第2のインパルス信号43でパルス列が生成される期間が交互に入れ替わっており、信号送信に使用される周波数帯が交互に変わる周波数ホッピングを行っている。
【0074】
このような周波数ホッピングを行った場合、受信データを処理するデータ判定部113でも、データ合成部165(図16)において、データ分配部164aから入力するビット列とデータ分配部164bから入力するビット列とを周波数ホッピングの周期に合わせて交互に用いて組み合わせるようにする必要がある。
【0075】
周波数ホッピングを行う本実施形態によれば、各周波数帯を間歇的に使用することになり、各周波数帯において使用されていない期間は他の装置等で使用することが可能となり、複数の超広帯域無線通信装置100が使用されている時の混信を低減するのに特に効果的である。
【0076】
周波数を間歇的に使用する別の実施形態として、超広帯域無線通信装置100から送信できる期間(出力許可時間帯)を周期的に設定し、超広帯域無線通信装置100から送信できない期間を別の装置で使用させるようにすることも可能である。これにより、同一周波数帯域を使用する無線装置が時分割で利用可能となることから、至近距離に複数端末を設置することができる。この実施形態は、例えば、演算制御部111でトリガ信号を信号生成部121a、121bに出力させる期間を制限するようにすることで実現できる。本実施形態では、演算制御部111から信号生成部121a、121bにトリガ信号40,41が図23のように出力される。そして、信号生成部121a、121bからは、図24に示すような第1のインパルス信号42及び第2のインパルス信号43が出力される。
【0077】
(第4の実施形態)
上記では、いずれの実施形態においても、10GHz以上の超広帯域の周波数帯を2分割にして通信を行うよう構成された超広帯域無線通信装置について説明した。本発明の超広帯域無線通信装置では、2分割に限らず、所定の超広帯域の周波数帯を3以上に分割して用いるように構成することも可能である。使用する周波数帯を3分割した時の各周波数帯の一例は、すでに図2(b)に示した通りである。所定の超広帯域の周波数帯を3分割して使用する本発明の第4の実施形態に係る超広帯域無線通信装置の構成を、図25に示すブロック図を用いて説明する。以下では、図1に示した第1の実施形態の超広帯域無線通信装置100に対し、変更される構成部分について説明する。
【0078】
本実施形態の超広帯域無線通信装置200では、通信データ処理部210の演算制御部211において送信データをもとに3つの系統のトリガ信号を生成し、これを送信信号生成部220に出力している。演算制御部211の構成は、図26に示すように、図4に示した第1の実施形態の演算制御部111に対し、データ変換部253と入出力処理部254を追加し、データ分配部252で、先頭から3i+j番目(i=0,1,2,・・・)のビットを各j(j=1,2,3)ごとに集めて3分割されたパラレルデータの一つを入力して同様の処理を行っている。すなわち、3分割されたデータ列は、それぞれデータ変換部153a、153b、253に入力され、ここで各ビットの後ろに’0’を挿入するデータ変換が行われる。これにより、変換されたデータは’1’が連続することのないRZ符号化されたビット列となる。それぞれのデータ変換部153a、153b、253でRZ符号化された3つのビット列は、それぞれ入出力処理部154a、154b、254に入力されてパラレルデータからシリアルデータに変換され、各ビットがトリガ信号としてそれぞれ信号生成部121a、121b、221に順次出力される。
【0079】
送信信号生成部220では、演算制御部211から入力するトリガ信号の数に対応して信号生成部221が追加され、さらに高周波発振器226とミキサ222、及びBPF223が追加されている。信号生成部221は、図4に示した信号生成部121a、121bと同様に構成することができる。以下では、信号生成部221から出力されるインパルス信号を第3のインパルス信号とし、BPF123bから出力される信号を第1の送信用高周波インパルス信号、BPF223から出力される信号を第2の送信用高周波インパルス信号とする。
【0080】
BPF123a、BPF12・BR>Rb及びBPF223でろ波された送信用ベースバンドインパルス信号、第1の送信用高周波インパルス信号及び第2の送信用高周波インパルス信号は、合波器224に出力されて合波され、これを送信側増幅部である増幅器125で増幅されて送信信号として送信アンテナ131から送信される。
【0081】
また、受信信号処理部240では、受信アンテナ132で受信した受信波を3つの帯域に分割して検波するために、BPF242と検波部243が追加されている。以下では、BPF242でろ波された受信波を第3の帯域別受信波とする。
【0082】
さらに、通信データ処理部210では、検波部243から第3の帯域別受信波を入力して所定の閾値判定を行う第3相関回路212が追加されている。第3相関回路212は、図16に示した第1相関回路112a及び第2相関回路112bと同様の構成とすることができる。そして、データ判定部213は、第1相関回路112a、第2相関回路112b及び第3相関回路212からそれぞれの閾値判定の結果を入力して受信データの復元を行っている。データ判定部213は、図27に示すように、第3相関回路212からの閾値判定結果を入力・処理する入出力処理部263とデータ分配部264を追加している。データ分配器264は、データ分配器164a、164bと同様、入力データを奇数番目のビットと偶数番目のビットとに分け、データ合成部265ではデータ分配部164a、164b及び264から入力する奇数番目のビットからなる3つのビット列(NRZ符号化されたビット列)を、データ分配部164aから入力するビット列、データ分配部164bから入力するビット列、データ分配部264から入力するビット列の順に1ビットずつ巡回配列することにより受信データを復元している。
【0083】
なお、本明細書では、超広帯域の周波数帯を2分割する場合(第1〜第3の実施形態)及び3分割する場合(第4の実施形態)について説明したが、同様にして、一般にK分割(K≧3)する場合についても容易に拡張できる。
【0084】
上記の通り本発明によれば、10GHz以上の超広帯域を2以上の広帯域に分けて利用することにより、数Gbps程度の短距離高速通信を実現する超広帯域無線通信装置を提供することができる。本発明の超広帯域無線通信装置では、簡易な構成で2以上の広帯域インパルスをベースバンドで発生させ、これを2以上に分割された帯域に割り当てるようアップコンバートすることで、10GHz以上の超広帯域を効率的に利用することができる。さらに、広帯域化により電力スペクトル密度を低減することで、他システムへの干渉を低減した超広帯域無線通信装置を提供することができる。
【0085】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る超広帯域無線通信装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における超広帯域無線通信装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1の実施形態に係る超広帯域無線通信装置のブロック図である。
【図2】本発明の超広帯域無線通信装置で利用する周波数帯域の一例を示す図である。
【図3】波形成形されるインパルス信号の周波数スペクトルを模式的に示す図である。
【図4】演算制御部及び信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図5】演算制御部で行われるデータ処理を示す流れ図である。
【図6】遅延時間が付加されたトリガ信号を模式的に示す図である。
【図7】コンパレータに入力されるトリガ信号一例を示す図である。
【図8】信号生成部で生成されるパルス幅100psのインパルス信号の一例を示す図である。
【図9】検波器に入力される低周波側(ベースバンド)の受信波の一例を示す図である。
【図10】検波器に入力される高周波側の受信波の一例を示す図である。
【図11】ダイオード検波器の概略構成を示すブロック図である。
【図12】トンネルダイオード検波器を検波部に用いたときの信号波形の一例を示す図である。
【図13】第1相関回路及び第2相関回路で検知される元のインパルスの一例を示す図である。
【図14】ショットキーダイオード検波器を検波部に用いたときの信号波形の一例を示す図である。
【図15】周波数特性がずれたダイオード検波器を検波部に用いたときの信号波形の一例を示す図である。
【図16】相関回路及びデータ判定部の構成を示すブロック図である。
【図17】データ判定部で行われるデータ処理を示す流れ図である。
【図18】第2の実施形態の入出力処理部における信号処理の一例を示す図である。
【図19】第2の実施形態の入出力処理部から出力される同じ信号系列の一例を示す図である。
【図20】第2の実施形態の第1のインパルス信号及び第2のインパルス信号の一例を示す図である。
【図21】第3の実施形態の演算制御部から信号生成部に出力されるトリガ信号の一例を示す図である。
【図22】第3の実施形態の信号生成部から出力される第1のインパルス信号及び第2のインパルス信号の一例を示す図である。
【図23】周波数を間歇的に使用する別の実施形態の演算制御部から出力されるトリガ信号の一例を示す図である。
【図24】周波数を間歇的に使用する別の実施形態の信号生成部から出力される第1のインパルス信号及び第2のインパルス信号の一例を示す図である。
【図25】第4の実施形態に係る超広帯域無線通信装置のブロック図である。
【図26】第4の実施形態の演算制御部の構成を示すブロック図である。
【図27】第4の実施形態のデータ判定部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0087】
11、12 インパルス
20 トリガ信号
100、200 超広帯域無線通信装置
101 データ入出力部
110、210 通信データ処理部
111、211 演算制御部
112、212 相関回路
113、213 データ判定部
120、220 送信信号生成部
121、221 信号生成部
122、222 ミキサ
123、142、223、242 バンドパスフィルタ
124、224 合波器
125、141 増幅器
126、226 高周波発振器
131 送信アンテナ
132 受信アンテナ
140、240 受信信号処理部
143、243 検波部
151、154、163、166、254、263 入出力処理部
152、164、252、264 データ分配部
153、253 データ変換部
155 分配器
156、161 コンパレータ
157 バイアス手段
158 遅延回路
162 閾値設定部
165,265 データ合成部
170 ダイオード検波器 171 入力側整合回路
172 ダイオード
173 出力側整合回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信データの入力及び受信データの出力を行うデータ入出力部と、
前記データ入出力部から前記送信データを入力し、前記送信データに基づいて2つ以上の系統のデータ列を作成し、該2つ以上の系統のデータ列にそれぞれ対応する第1のトリガ信号及び1つ以上の第2のトリガ信号を作成する演算制御部と、
前記演算制御部から前記第1のトリガ信号及び1つ以上の第2のトリガ信号をそれぞれ入力して前記第1のトリガ信号及び1つ以上の第2のトリガ信号にそれぞれ対応する第1のインパルス信号及び1つ以上の第2のインパルス信号をベースバンドでそれぞれ生成する2つ以上の信号生成部と、
前記第1のインパルス信号を所定のベースバンドの帯域にろ波して送信用ベースバンドインパルス信号を出力する第1の送信側帯域ろ波部と、
前記1つ以上の第2のインパルス信号をそれぞれ入力し、それぞれ周波数の異なる高周波連続波と混合して1つ以上の混合波をそれぞれ出力する1つ以上のミキサと、
前記1つ以上の混合波をそれぞれ入力して1つ以上の所定の高周波帯域にろ波して1つ以上の送信用高周波インパルス信号をそれぞれ出力する1つ以上の第2の送信側帯域ろ波部と、
前記送信用ベースバンドインパルス信号と前記1つ以上の送信用高周波インパルス信号とを合波する合波器と、
前記合波器の出力信号を所定のレベルに増幅して送信信号を出力する送信側増幅部と、
前記送信信号を送信する送信アンテナと、
受信波を受信する受信アンテナと、
前記受信アンテナで受信した前記受信波を増幅する受信側増幅部と、
前記受信側増幅部の出力信号を分波して入力し、前記ベースバンド及び前記1つ以上の高周波帯域のそれぞれにろ波して2つ以上の帯域別受信波をそれぞれ出力する2つ以上の受信側帯域ろ波部と、
前記2つ以上の帯域別受信波をそれぞれ入力して検波する2つ以上の検波部と、
前記2つ以上の検波部でそれぞれ検波された前記2つ以上の帯域別受信波をそれぞれ入力して閾値判定を行う2つ以上の相関回路と、
前記2つ以上の相関回路からそれぞれ出力される2つ以上の前記閾値判定の出力値を統合して前記受信データを復元するデータ判定部と、を備える
ことを特徴とする超広帯域無線通信装置。
【請求項2】
所定の広帯域を2以上の利用帯域に分割し、周波数が最も低い前記利用帯域を前記ベースバンドとし、それ以外の前記利用帯域を前記1つ以上の高周波帯域としている
ことを特徴とする請求項1に記載の超広帯域無線通信装置。
【請求項3】
前記ベースバンド及び前記1つ以上の高周波帯域は、それぞれ1GHzを超える広帯域である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超広帯域無線通信装置。
【請求項4】
前記2つ以上の信号生成部は、前記第1のトリガ信号又は前記1つ以上の第2のトリガ信号のそれぞれの立ち上がりをトリガとして前記第1のインパルス信号及び前記1つ以上の第2のインパルス信号をそれぞれ生成している
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超広帯域無線通信装置。
【請求項5】
前記2つ以上の信号生成部は、前記第1のトリガ信号又は前記1つ以上の第2のトリガ信号をそれぞれ入力して2つの分配トリガ信号に分配する分配手段と、前記分配手段で分配された一方の前記分配トリガ信号に一定のバイアスを付加するバイアス手段と、前記バイアスを付加された前記分配トリガ信号を所定時間だけ遅延させる遅延手段と、他方の前記分配トリガ信号と前記遅延手段の出力信号とを比較して前記他方の分配トリガ信号が前記出力信号よりも大きい期間だけ出力するコンパレータと、をそれぞれ備える
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超広帯域無線通信装置。
【請求項6】
前記検波部は、前記帯域別受信波を入力する入力側整合回路と、前記入力側整合回路の出力信号を整流するダイオードと、前記ダイオードで整流された信号を入力する出力側整合回路とを有し、前記相関回路で閾値判定可能なパルス幅の直流成分を有する出力信号を出力するダイオード検波器を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の超広帯域無線通信装置。
【請求項7】
前記ダイオードは、トンネルダイオードである
ことを特徴とする請求項6に記載の超広帯域無線通信装置。
【請求項8】
前記ダイオードは、ショットキーダイオードである
ことを特徴とする請求項6に記載の超広帯域無線通信装置。
【請求項9】
前記演算制御部は、前記データ入出力部から入力した前記送信データを、Kを2以上の自然数として、K×i+j(i=0,1,2,・・・)番目のビットを各j(j=1,2,・・・,K)ごとに集めてなるK個のビット列に分割し、さらに、これらK個のビット列をそれぞれRZ符号化して前記第1のトリガ信号及び(K−1)個の前記第2のトリガ信号とをそれぞれ作成し、
前記データ判定部は、前記2つ以上の相関回路からそれぞれ入力した2つ以上の前記閾値判定の出力値をビット列にそれぞれ変換し、前記2つ以上のビット列からそれぞれ偶数番目のビットを除去することによってNRZ符号化データに変換し、前記NRZ符号化データを、jの小さい順に1ビットずつ巡回配列して1つのビット列に合成することで前記受信データを復元している
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の超広帯域無線通信装置。
【請求項10】
前記演算制御部は、前記第1のトリガ信号及び1つ以上の第2のトリガ信号として、同じ信号を出力する
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の超広帯域無線通信装置。
【請求項11】
前記演算制御部は、前記送信データをそのデータ系列よりM倍(Mは2以上の自然数)速い処理速度で処理することによって、M個の同じトリガ信号を生成する
ことを特徴とする請求項10に記載の超広帯域無線通信装置。
【請求項12】
前記演算制御部は、前記第1のトリガ信号及び1つ以上の第2のトリガ信号を、時分割された互いに異なる時間帯に出力する
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の超広帯域無線通信装置。
【請求項13】
前記演算制御部は、周期的に設定された出力許可時間帯のみ前記第1のトリガ信号及び1つ以上の第2のトリガ信号を出力する
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の超広帯域無線通信装置。
【請求項14】
送信データの入力及び受信データの出力を行うデータ入出力部と、
前記データ入出力部から前記送信データを入力してビット列に変換し、前記ビット列の奇数番目のビットからなる奇数ビットデータ列と偶数番目のビットからなる偶数ビットデータ列とを作成し、さらに前記奇数ビットデータ列と偶数ビットデータ列とをそれぞれRZ符号化して第1のトリガ信号と第2のトリガ信号とをそれぞれ作成する演算制御部と、
前記演算制御部から前記第1のトリガ信号と第2のトリガ信号とをそれぞれ入力して前記第1のトリガ信号と第2のトリガ信号とにそれぞれ対応する第1のインパルス信号及び第2のインパルス信号をベースバンドでそれぞれ生成する2つの信号生成部と、
前記第1のインパルス信号を所定のベースバンドの帯域にろ波して送信用ベースバンドインパルス信号を出力する第1の送信側帯域ろ波部と、
前記第2のインパルス信号を入力し、高周波連続波と混合して混合波を出力するミキサと、
前記混合波を入力して所定の高周波帯域にろ波して送信用高周波インパルス信号を出力する第2の送信側帯域ろ波部と、
前記送信用ベースバンドインパルス信号と前記送信用高周波インパルス信号とを合波する合波器と、
前記合波器の出力信号を所定のレベルに増幅して送信信号を出力する送信側増幅部と、
前記送信信号を送信する送信アンテナと、
受信波を受信する受信アンテナと、
前記受信アンテナで受信した前記受信波を増幅する受信側増幅部と、
前記受信側増幅部の出力信号を分波して入力し、前記ベースバンド及び前記高周波帯域のそれぞれにろ波して2つの帯域別受信波をそれぞれ出力する2つの受信側帯域ろ波部と、
前記2つの帯域別受信波をそれぞれ入力して検波する2つの検波部と、
前記2つの検波部でそれぞれ検波された前記2つの帯域別受信波をそれぞれ入力して閾値判定を行う2つの相関回路と、
前記2つの相関回路からそれぞれ入力した2つの前記閾値判定の出力値をビット列にそれぞれ変換し、前記2つのビット列からそれぞれ偶数番目のビットを除去することによってNRZ符号化データに変換し、前記NRZ符号化データの一方を奇数番目とし他方を偶数番目として交互に配列して1つのビット列に合成することで前記受信データを復元するデータ判定部と、を備える
ことを特徴とする超広帯域無線通信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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