説明

超微細含水カオリン顔料、前記顔料の製造方法そして前記顔料を光沢塗料配合で用いる方法

カオリンを処理して超微細含水カオリンを製造する方法を開示する。この方法は、グレーカオリン原料に浮選を受けさせた後に前記カオリンに遠心分離を受けさせることで微細な流れを生じさせそしてその微細な流れに精製を受けさせることでカオリン原料を処理することを伴う。また、超微細含水カオリンを製造する目的でグレーカオリン原料を自動的に処理するに適したシステムおよび前記超微細含水カオリンを含有させた塗料組成物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、超微細カオリン顔料、グレーカオリン原料(gray crude kaolin)から超微細カオリン顔料を製造すること、そして超微細カオリン顔料を塗料組成物で用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
カオリンは、アルミニウム含有鉱物(長石の如き)が風化作用を受けることで生じた通常は白色の微細粘土であり、これは主にカオリナイトで構成されている。カオリナイトは一般に化学式AlSi10(OH);Al・2SiO・2HOおよび/またはAlSi(OH)の中の1つ以上で表される。カオリンは今日採鉱される数多くの産業用鉱物の中の1つである。ジョージア州(米国)、エジプト、ブラジル、英国、クィーンズランド州(オーストラリア)、韓国、中国およびウクライナに埋蔵が確認されている。
【0003】
一般的に言って、異なる国に由来するカオリンおよび同じ国の中でも異なる埋蔵物は、数多くのカオリン特性が多様であることが理由で数多くの点で異なる。そのような特性の例には、結晶化度、粗さ、輝度、他の化合物、例えばチタンアおよび酸化鉄などの濃度、粒径、粒子形状、大きさおよび/または形状の分布が含まれる。特性が異なると結果としてもたらされるカオリン製品の性能も異なる。例えば、結晶化度は結果としてもたらされる製品が結果として示す輝度、白色さ、不透明度、光沢および粘度に影響を与える。不透明度および光沢は用途性能パラメーターである一方、挙げた他のパラメーターは顔料特性パラメーターであることを特記する。粒径、形状および分布は結果としてもたらされる製品の滑らかさ、光学特性および流動特性に影響を与える。滑らかさおよび光学特性は用途性能パラメーターである一方、流動特性は顔料特性パラメーターである。
【0004】
カオリンが基になった製品は数多くの用途で用いられ、そのような用途には、塗料、紙被覆、農業用組成物、ファイバーグラス製品、重合体およびゴム組成物、セラミック用途、触媒担体、薬剤、化粧品、電気部品、接着剤、濾過助剤などが含まれる。上等な用途では個別的特性を有する特定等級のカオリンが理想的に適する。従って、結果としてもたらされる等級のカオリンの品質を最大限にする目的で、カオリン原料に具体的に望まれる等級のカオリンをもたらす処理を受けさせる。
【0005】
塗料産業は溶媒および乳液型の消費者好みの製品を提供している。溶媒またはいわゆる「油が基になった」塗料は相対的に簡単な系であり、配合が容易であるが、消費者が使用するのは困難である。溶媒型塗料にはバインダー(樹脂の油)、溶媒(シンナー)、乾燥剤および顔料が入っている。アルキド塗料が油が基になった最も一般的な種類の塗料であり、従って、油が基になった多くの塗料は一般にアルキド塗料と呼ばれる。アルキドは単に合成樹脂の名称であり、通常は、バインダーとして用いられる植物油を含有する。乳液またはいわゆる「ラテックス」塗料は、ラテックス界面活性剤、保護用コロイド、乳化剤および水に加えて1種以上の種類の顔料を含有する複雑な混合物である。ラテックス塗料は第二次世界大戦後に紹介されてから実質的に市場に受け入れられている。現在では、ラテックス塗料が屋内および屋外用塗料取引の大部分を占めている。
【0006】
屋内用と屋外用の塗料の配合は一般に同様である。しかしながら、重要な差は屋外用等級の塗料にはバインダーおよび主要な顔料が相対的に多い量で入っているが、増量用顔料の量は屋内用塗料のそれよりも少ない。その理由は、屋外用塗料の方が屋内用等級に比べて塗膜の一体性および全体的耐久性が重要であるからである。従って、屋外用塗料では顔料および体質顔料を改良することが望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に本発明のいくつかの面の基本的理解を与える目的で本発明の簡単な要約を示す。この要約は本発明の広範な概説ではない。本発明の鍵または重要な構成要素を示すことを意図するものでも本発明の範囲を限定することを意図するものでもない。むしろ、この要約の単なる目的は本発明のいくつかの概念を本明細書の以下に示すより詳細な説明の前置きとして簡単な形態で示すことを目的したものである。
【0008】
本発明は、高い表面積、微細な粒径分布、低い油吸収度および高いGE輝度値の中の少なくとも1つを示す超微細なカオリン顔料を提供するものである。この超微細なカオリン顔料を製造する時に生じ廃棄物の量は少ない、と言うのは、選択的凝集を出発材料であるカオリン原料に対して実施しないからである。その上、この微細カオリン顔料を製造している時に副生成物としてもたらされる未使用粗顔料を紙被覆用途で有利に用いることができる。本超微細カオリン顔料は、表面積が高く、微細な粒径分布、油吸収度が低くかつGE輝度値が高いことから、これらは塗料配合、特に光沢塗料組成物で用いるに理想的に適する。
【0009】
本発明の1つの面は方法に関する。
【0010】
本発明の別の面は超微細含水カオリンに関する。
【0011】
前記および関連した目的を達成する目的で、本発明は、本明細書の以下に詳細に記述する特徴、特に本請求項に指摘する特徴を包含する。以下の説明および添付図に本発明の特定の具体的面および実施を詳細に示す。しかしながら、それらは本発明の原理の使用を可能にするいろいろな方法の中のほんの少しの方法の指標である。以下に示す本発明の詳細な説明を添付図と一緒に考慮することで本発明の他の目的、利点および新規な特徴が明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法は超微細な含水カオリンをグレーカオリン原料から効率良く製造することを可能にするものである。そのような超微細な含水カオリンを有利には塗料組成物で用いる。本発明の方法は、また、紙用途用の粗い工学処理カオリンを前記超微細カオリン製造の副生成物として製造することを可能にするものでもある。超微細カオリン顔料は油吸収度が低く、輝度が高く、表面積が大きく、粒子の少なくとも96重量%が約1ミクロン以下の大きさを有しかつ粒子の少なくとも97重量%が約2ミクロン以下の大きさを有することを特徴とする。粗いエンジニアリングカオリン顔料は表面積が小さく、粒子の少なくとも80重量%が約2ミクロン以下の大きさを有しかつ粒径分布が狭いことを特徴とする。
【0013】
本発明の方法は、逐次的様式でグレーカオリン原料に浮選を受けさせた後に高速遠心分離を受けさせることで超微細なカオリンを得ることを伴う。場合により、浮選前にデグリッテイング(degritting)を実施してもよいと同時に、場合により、浮選後であるが高速遠心分離の前にオゾン処理を実施することも可能である。1つの態様では、グレーカオリン原料またはデグリッテイングを受けさせておいたグレーカオリン原料に選択的凝集を受けさせない。逐次的とは浮選そして遠心分離を示す順で実施することを意味するが、場合により、この2つの逐次的作業を実施する前、実施中および/または実施後に他の作業(例えばデグリッテイングおよび/またはオゾン処理および/または精製)を実施することも可能である。
【0014】
本発明の方法を受けさせることができるカオリン原料は、グレーまたはハード(hard)カオリンを超主要量で含有し、場合により微細なホワイト(white)カオリンを主要ではない量で含有しかつ場合によりカオリン以外の粒子を少量含有する。グレーカオリンは一般に鉄含有量が高い。カオリン以外の粒子には、チタニア、石英、いろいろな含鉄鉱物、雲母およびカオリン質以外の粘土、例えばベントナイトおよびアタパルジャイトなどが含まれる。超主要量には少なくとも75重量%が含まれ、主要ではない量には50重量%未満が含まれ、そして少量には10重量%未満が含まれる。別の態様におけるカオリン原料は、グレーまたはハードカオリンを少なくとも約80重量%含有しそして微細なホワイトカオリンの含有量が約20重量%未満である。更に別の態様におけるカオリン原料は、グレーまたはハードカオリンを少なくとも約90重量%含有しそして微細なホワイトカオリンの含有量が約10重量%未満である。
【0015】
そのようなカオリン原料は、少なくとも約70重量%が約2ミクロン以下の粒径を有し、少なくとも約30重量%が約0.3ミクロン以下の粒径を有し、チタニア含有量が約1から約3重量%でありかつ少なくとも約18m/gの表面積を有する粒子を含有する。別の態様におけるカオリン原料は、少なくとも約80重量%が約2ミクロン以下の粒径を有し、少なくとも約35重量%が約0.3ミクロン以下の粒径を有し、チタニア含有量が約1.5から約2.5重量%でありかつ少なくとも約20m/gの表面積を有する粒子を含有する。
【0016】
そのようなカオリン原料に処理を受けさせる前に、そのカオリン原料を水および場合により分散剤と一緒にすることでスラリーを生じさせておいてもよい。本発明の1つの利点は、超微細な含水カオリンの流れを高速遠心分離で粗いカオリンから分離する前に分散剤を用いる必要がないかもしれない点にある。従って、1つの態様では、超微細な含水カオリンの流れを高速遠心分離で粗いカオリンから分離するまで分散剤を用いない。
【0017】
そのような分散剤は有機分散剤または無機分散剤であってもよい。無機分散剤には典型的に燐酸塩が含まれる。燐酸塩の例には無機ポリ燐酸塩およびピロ燐酸塩(これらは実際にある種類のポリ燐酸塩である)、例えばヘキサメタ燐酸ナトリウム(SHMP)、トリポリ燐酸ナトリウム(STPP)およびピロ燐酸テトラナトリウム(TSPP)などが含まれる。
【0018】
有機分散剤には、典型的に、アンモニアが基になった分散剤、スルホネート系分散剤、カルボン酸系分散剤および高分子量分散剤、例えばポリアクリレート系分散剤などばかりでなくカオリン顔料処理で通常用いられる他の有機分散剤も含まれる。
【0019】
そのようなカオリン原料に場合によりデグリッテイングを受けさせてもよい。カオリン原料はグリットを含有している可能性のある鉱石として存在し、グリットは比較的大きな粒子で構成されている。そのようなグリットは望ましくないことで、それを除去しておく。その結果としてデグリッテングされたカオリン原料は主にカオリン粒子で構成されており、それの大きさの範囲は一般にスライム(0.3ミクロンより微細)から約15ミクロンに及んで幅広い範囲である。
【0020】
デグリッテイングを実施する様式はふるい、砂箱、重力沈降またはヒドロサイクロンの中の1つ以上を用いた通常様式のいずれであってもよい。湿式または乾式いずれかのデグリッテイングを用いることができる。例えば、カオリン原料と水を一緒にしそしてそのスラリー状にした混合物をふるい、例えば325メッシュのふるいまたは200メッシュのふるいなどに通すことなどでデグリッテイングを実施してもよい。また、デグリッテイングを容易にする目的で、場合により、そのスラリーに粘土分散剤を添加することで追加的流動性を与えてもよい。粘土分散剤の例には、アンモニアが基になった分散剤、ホスフェートが基になった分散剤、スルホネート系分散剤、カルボン酸系分散剤および高分子系分散剤、例えばポリアクリレート系分散剤などばかりでなくカオリン顔料処理で用いられる他の有機分散剤も含まれる。そのスラリーで用いる分散剤の量をカオリン原料の重量を基準にして典型的に約0.01%から約1%にする。
【0021】
カオリン原料にデグリッテイングを受けさせた後、その結果としてデグリッテイングされたカオリン原料に浮選を受けさせる。浮選を用いてチタニア含有量を約1重量%未満にまで低下させそして/または酸化鉄含有量を約1.5重量%未満にまで低下させる。別の態様では、浮選を用いてチタニア含有量を約0.7重量%未満にまで低下させそして/または酸化鉄含有量を約1.25重量%未満にまで低下させる。更に別の態様では、浮選を用いてチタニア含有量を約0.5重量%未満にまで低下させそして/または酸化鉄含有量を約1重量%未満にまで低下させる。更に別の態様では、浮選を用いてチタニア含有量を約0.4重量%未満にまで低下させそして/または酸化鉄含有量を約0.75重量%未満にまで低下させる。そのデグリッテイングを受けさせておいた原料を遠心分離にかけた後に浮選を実施することで粒径分布を次の高速遠心分離操作の結果としてさらなる遠心分離作業を必要としない所望の粗い粒径分布がもたらされるように制御してもよい。
【0022】
浮選を実施する様式は通常の如何なる様式であってもよく、そのような様式には、湿式浮選、限外浮選(ultraflotation)、泡沫浮選、TREP浮選(チタニア除去および抽出処理)などが含まれる。一般的浮選方法がMathur,S.、「Kaolin Flotation」、Journal of Colloid and Interface Science、256、153−158頁、2002(これに関して引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。限外浮選は、粒状反応体を脂肪酸および選択した浮選用油と一緒に用いることでチタニアを純度が低い粘土のスラリーから除去することを伴う。限外浮選の1つの特徴は、精製されたカオリンを希スラリーとして回収した後に脱水を実施する点にある。泡沫浮選は、鉱物種の差を基にしてスラリーに入っている特定の鉱物粒子を他の粒子から分離することで機能する。その処理は一般に浮遊させるべき鉱物粒子に選択的に付着する反応体を添加することに依存しており、それによって、その反応体1種または2種以上が付着した粒子は他の粒子に比べて気泡に対して高い親和性を示すようになることで泡として除去可能になる。TREP浮選は、捕集剤、例えば脂肪酸系捕集剤、トール油系捕集剤またはヒドロキサメート系捕集剤などおよび金属塩を用いてカオリンを高強度粉砕装置内で条件付けすることを伴う。その後、分散剤、例えばアクリル酸塩系分散剤などを添加する。場合により、また、輝度(brightness stand)を単独または浮選と協力させて改良する目的で磁気による分離または選択的凝集を用いることも可能である。
【0023】
浮選は、デグリッテイングを受けさせておいたカオリン原料と水から生じさせたスラリーを用いて、適切な如何なる固体含有量、pHおよび温度でも実施可能である。1つの態様では、浮選中に下記のパラメーターの中の少なくとも1つを満足させる:固体含有量が約10%から約50%であること、pHが約5から約11であること、そして温度が約10℃から約90℃であること。別の態様では、浮選中に下記のパラメーターの中の少なくとも1つを満足させる:固体含有量が約20%から約40%であること、pHが約6から約10であること、そして温度が約20℃から約60℃であること。
【0024】
本発明の方法では、個別的な粒径/粒径分布を示すカオリン原料を得ようとしてカオリン原料の選択的凝集を行う必要はない。選択的凝集では、帯電している無機または有機分子を用いて、鉱物種の差を基にして鉱物を互いから選択的に凝集させる。カオリン原料の選択的凝集は、ある場合には、結果としてもたらされるカオリン顔料が示す輝度および/または粘度に悪影響をもたらす可能性がある。1つの態様では、本発明の方法に、カオリン原料の選択的凝集を含めない。別の態様では、本発明の方法に、高速遠心分離(以下に考察)を行う時まではカオリンの選択的凝集を含めない。更に別の態様では、本発明の方法にカオリン原料の層間剥離を含めない。
【0025】
浮選後、処理を受けさせるカオリンに場合によりオゾン処理を受けさせてもよい。オゾン処理は、存在する可能性がある有機変色剤などの如き、成分を漂白する目的でオゾンを用いて酸化的漂白を実施することを伴う。そのオゾンは変色する有機物の実質的部分を分解するばかりでなく有機分散剤(このような化合物を存在する場合)もまた酸化で分解する働きをする。しかしながら、そのオゾンが無機分散剤を分解することはない。
【0026】
オゾン処理を実施する様式は適切な如何なる様式であってもよい。例えば、オゾンをカオリン1トン当たり約0.1から約20ポンドの用量で用いてオゾン処理を実施してもよい。別の態様では、オゾンをカオリン1トン当たり約0.5から約10ポンドの用量で用いてオゾン処理を実施する。このオゾンは泡の流れとして適用可能であり、それがスラリーの中を上方に向かって流れるようにしてもよい。これはバッチ式工程または連続工程であってもよく、その場合には、オゾンの泡をパイプまたは他の導管、例えば混合および充填カラムなどの中の前記スラリーの流れに対して向流で流す。
【0027】
オゾン処理後、そのオゾン処理を受けたカオリンに場合により層間剥離を受けさせる。層間剥離は湿式粉砕、スラリー粉砕、湿式破砕などを伴い得る。そのような層間剥離工程は破砕用媒体および水の使用を伴う。カオリンを破砕用媒体および水と一緒にしてスラリーを生じさせた後、層間剥離装置の中に通して輸送、例えばポンプ輸送する。その層間剥離中のスラリーに入っているカオリン固体量を典型的に約5から約50重量%にする。
【0028】
その場合によりオゾン処理を受けさせておいてもよいカオリンを2つの流れに分離する目的で、オゾン処理後に高速遠心分離を用いる。この高速遠心分離を実施するのは浮選後であることを特記する。遠心分離でカオリンを粗い流れ(粒子の少なくとも約70重量%が2ミクロン以下の大きさを有する)および微細な流れ(粒子の少なくとも約80重量%が1ミクロン以下の大きさを有する)に分離させる。別の態様における粗い流れは粒子の少なくとも約80重量%が2ミクロン以下の大きさを有しそして微細な流れは粒子の少なくとも約85重量%が1ミクロン以下の大きさを有する。更に別の態様における粗い流れは粒子の少なくとも約90重量%が2ミクロン以下の大きさを有しそして微細な流れは粒子の少なくとも約90重量%が1ミクロン以下の大きさを有する。
【0029】
如何なる理論でも範囲を限定することを望むものでないが、超微細な粒径分布をもたらす目的で高速遠心分離を用いると結果としてまた着色している不純物も除去されることで製品の輝度も向上して製品が約91GEBを超える輝度を示すようになると考えている。
【0030】
本明細書に示す粒径は全部、Micromeretics,IncのSEDIGRAPH(商標)5100分析装置を用いた分析を利用した通常の沈降技術で測定した粒径である。大きさ(ミクロンで表す)を「e.s.d.」(球相当直径(equivalent spherical diameter))として報告する。粒子を分散剤と一緒に水に入れてスラリー状にした後、撹拌を伴わせて検出器にポンプ輸送することで拘束されていない凝集物を分散させる。
【0031】
遠心分離を2回以上実施することも可能ではあるが、少なくとも1回の遠心分離処理を高速遠心分離処理にする。高速遠心分離処理では、遠心分離を約1,000以上から約10,000の「g」力で実施してもよい。別の態様における高速遠心分離処理では、遠心分離を約2,000から約7,500の「g」力で実施してもよい。更に別の態様における高速遠心分離処理では、遠心分離を約2,500以上から約5,000の「g」力で実施してもよい。遠心分離機の例には、Bird固形ボウル機(solid bowl machines)、高速遠心分離機、水平三相遠心分離機などが含まれる。
【0032】
次に、その微細な流れに精製を受けさせるが、それは、超微細なカオリンを生じさせるための凝集、漂白、濾過、乾燥、混合および微粉砕の中の少なくとも1つを伴い得る。凝集は、ある種の鉱物を同じ種の鉱物から分離すること、例えば超微細なカオリン粒子を微細または粗いカオリン粒子から分離することなどを伴う。イオン性材料、例えば酸などを用いて凝集を実施する。硫酸が安価でありかつ幅広く利用されている酸である。
【0033】
漂白は、一般に、カオリンの輝度を高くすることを伴う。漂白は、粗いカオリンの流れを適切な量のハイドロサルファイト(ジチオナイト)塩、過マンガン酸カリウム、酸素ガス、アルカリの重クロム酸塩、アルカリの塩素酸塩、アルカリの亜塩素酸塩、過硫酸アンモニウムおよび可溶過酸化物、例えば過酸化ナトリウム、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウムなどの中の1種以上と接触させることを伴う。
【0034】
固体含有量を高くすること(例えば固体含有量を約55%以上にまで高くすること)および2ミクロンを超える粒子を実質的に除去することの中の少なくとも1つを実施する目的で濾過を利用してもよい。固体含有量を高くすると、ある場合には、次に行う噴霧乾燥操作の効率が向上する。濾過を実施する様式は適切な如何なる様式であってもよく、典型的には、回転式ドラム真空濾過装置を用いて実施する。
【0035】
カオリンの乾燥、例えば噴霧乾燥などを実施することでカオリンの水分量を低下させる。カオリンを乾燥させると次に行う任意の微粉砕作業が容易になる可能性がある。カオリンを乾燥させる技術は適切な如何なる技術であってもよい。カオリン乾燥の例には、噴霧乾燥、フラッシュ乾燥、回転式乾燥または他の集塊技術が含まれる。そのような乾燥技術は粘土産業で公知である。1つの態様では、超微細カオリンを乾燥させた後の水分量が約1.5重量%未満になるようにする。別の態様では、超微細カオリンを乾燥させた後の水分量が約1重量%未満になるようにする。更に別の態様では、超微細カオリンを乾燥させた後の水分量が約0.5重量%未満になるようにする。
【0036】
混合は、カオリンと他の粒状物、例えば異なるバッチのカオリン、チタニア、他の粘土、炭酸カルシウム、焼成カオリンなどと一緒にすることで最終使用者または次の使用者が望む特性を有する混合物に到達させることを伴う。
【0037】
微粉砕を実施する様式は適切な如何なる様式であってもよい。1つの態様では、超微細なカオリンに微粉砕を少なくとも1回受けさせる。別の態様では、超微細なカオリンに微粉砕を少なくとも2回の別々の作業で受けさせる(2回の微粉砕)。そのような微粉砕によって、存在する可能性のあるいかなる凝集物も壊すことができる。そのような凝集物は乾燥中に生じる可能性があり、それによって、高速遠心分離および他の工程作業で達成する粒径が変化する可能性がある。
【0038】
本超微細カオリン顔料製品は数多くの望ましい特性を有する。本超微細カオリン顔料製品は、例えば粒子の少なくとも約97重量%が2ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約96重量%が1ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約89重量%が0.5ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約67%が0.3ミクロン以下の大きさを有すること、表面積が少なくとも約23m/gであること、チタニアの量が約0.75重量%以下であること、酸化鉄の量が約1.5重量%以下であることおよび輝度が約91以上であることの中の1つ以上を有する。別の態様における本超微細カオリン顔料製品は、粒子の少なくとも約98重量%が2ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約97重量%が1ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約90重量%が0.5ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約70%が0.3ミクロン以下の大きさを有すること、表面積が少なくとも約25m/gであること、チタニアの量が約0.5重量%以下であること、酸化鉄の量が約1.25重量%以下であることおよび輝度が92以上であることの中の1つ以上を有する。更に別の態様における本超微細カオリン顔料製品は、粒子の少なくとも約99重量%が2ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約98重量%が1ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約92重量%が0.5ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約72%が0.3ミクロン以下の大きさを有すること、表面積が少なくとも約26m/gであること、チタニアの量が約0.4重量%以下であること、酸化鉄の量が約1重量%以下であることおよび輝度が93以上であることの中の1つ以上を有する。
【0039】
表面積の測定では本技術分野で認識されているBET方法を用いるが、この方法ではNを吸着質として用いる。別法として、ASTM D−1483−84が基になったGardner Coleman Oil Absorption Testを用いて表面積を測定するが、この場合には、カオリン100グラム当たりに吸着した油のグラム数を測定する。輝度測定をTAPPI標準方法T524を用いて実施して、「GE輝度」または「GEB値」として報告する。
【0040】
次に、前記粗い流れに精製を受けさせるが、この精製は、漂白、濾過、バルキング出し、噴霧乾燥および混合の中の少なくとも1つを伴い得る。混合は、前記粗いカオリンを他の粒状物、例えば異なるバッチのカオリン、チタニア、他の粘土、炭酸カルシウム、焼成カオリンなどと一緒にすることで最終使用者または次の使用者が望む特性を有する混合物に到達させることを伴う。
【0041】
そのような粗いカオリン顔料製品は、特に紙被覆用途に有用である数多くの望ましい特性を有する。そのような粗いカオリン顔料製品は、例えば粒子の少なくとも約95重量%が5ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約80重量%が2ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約20重量%が0.3ミクロン以下の大きさを有すること、表面積が約14から約20m/gであること、チタニアの量が約1重量%以下であること、酸化鉄の量が約1.5重量%以下であることおよび輝度が約85以上であることの中の1つ以上を有する。別の態様における粗いカオリン顔料製品は、粒子の少なくとも約96重量%が5ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約90重量%が2ミクロン以下の大きさを有すること、粒子の少なくとも約25重量%が0.3ミクロン以下の大きさを有すること、表面積が約15から約19m/gであること、チタニアの量が約0.75重量%以下であること、酸化鉄の量が約1.25重量%以下であることおよび輝度が約87.5以上であることの中の1つ以上を有する。
【0042】
一般的に言って、本発明の方法の前または後に1種以上の通常の粘土処理段階、例えば破砕、粉砕、フラショネーション(frationation)、層間剥離、磁気分離、凝集/濾過、熱処理などを用いてもよい。
【0043】
破砕はカオリン岩を小さくして砂利にする、即ち直径が約10cm未満の直径を有するカオリン岩にするものである。粉砕はカオリン原料を処理して所望の粒径分布を達成することを伴う。粉砕は乾式ミリング、乾式ボールミリング、乾式粉砕などで実施可能である。
【0044】
カオリンは自然に分離する板状カオリン粒子ばかりでなくカオリン小板の積み重ねを構成している「ブックレット」を含有する。そのような積み重ねは大きさが約2ミクロン以上の粒子の中に集中して存在する。そのようなブックレットの層間剥離は、そのブックレットを構成しているカオリン小板をこのカオリン小板を更に破砕することなく開裂させるにちょうどの衝撃エネルギーを与えることを伴う。層間剥離は湿式ミリング、スラリーミリング、湿式粉砕などを伴い得る。そのような任意の層間剥離工程は粉砕用媒体と水の使用を伴う。カオリンを粉砕用媒体および水と一緒にしてスラリーを生じさせた後、層間剥離装置の中に輸送、例えばポンプ輸送する。層間剥離中のスラリーに入っているカオリン固体量を典型的には約5から約50重量%にする。
【0045】
カオリンに場合により熱処理を1回以上受けさせてもよい。カオリンを加熱すると、それは一連の特徴的変化を起こすが、それはいろいろな方法で検出可能であり、そのような方法には示差熱分析(DTA)が含まれる。熱処理を用いると、この熱処理の温度/時間に応じて、メタカオリン、焼成をある程度受けたカオリンおよび焼成カオリンの中の1種以上を生じさせることができる。熱処理を不活性雰囲気、酸化性雰囲気および還元性雰囲気の中の1つの下で実施する。
【0046】
カオリンを例えば約450から約650℃に充分な時間加熱すると、それは強力な吸熱脱水反応を起こし、その結果として、メタカオリンとして知られる材料に変化する。そのメタカオリン状態は便利に酸溶解試験で確かめられる、と言うのは、その粘土に入っているアルミナは強い鉱酸に実質的に完全に溶解するからである。
【0047】
焼成は、含水カオリンの結晶化度を壊すことでカオリンを実質的に非晶質にするものである。焼成は約700から約1200℃の範囲の温度で充分な時間加熱後に起こる。メタカオリン、焼成をある程度受けたカオリンおよび/または焼成カオリンを生じさせる目的で商業的垂直および水平回転式焼成装置を用いることができる。焼成が望まれないムライト(3Al・SiO)が生じるほど高い温度で起こることがないように操作を制御する。
【0048】
図1を参照して、超微細カオリン処理方法100のいろいろな面の高レベル図式図を示す。作業102では、グレーカオリンが少なくとも超主要量で入っているカオリン原料に場合によりデグリッテイングを受けさせることで、相対的に大きな粒子をグレーカオリン原料から除去してもよい。そのグレーカオリン原料から相対的に大きな粒子を除去した後に実施する作業104は、そのデグリッテイングを受けさせておいたカオリンに入っているチタニアおよび/または酸化鉄の中の少なくとも1種の量を少なくする浮選を伴う。作業106は、そのカオリンに任意のオゾン処理を受けさせることを伴う。オゾン処理後の作業108は、そのカオリンに高速遠心分離を受けさせることでカオリンを2つの異なる等級/流れに分離することを伴う。作業108で生じた粗い流れに追加的処理、例えば精製などを受けさせた後、それを紙用途110で用いる。作業112では、作業108で得た微細な流れに精製、例えば凝集、漂白、濾過および噴霧乾燥などを受けさせることで超微細なカオリン流れを生じさせる。その超微細なカオリンに場合により微粉砕116を受けさせることで本超微細カオリン顔料116を得る。
【0049】
図2を参照して、グレーカオリン原料を処理して超微細カオリンを生じさせるシステム200を示す。このシステム200には、カオリン原料にデグリッテイングを受けさせるデグリッテイングシステム202、浮選システム204、オゾン処理システム206および高速遠心分離システム208の中の1つ以上が含まれており、それらの中の少なくとも1つを試験装置210およびプロセッサ制御装置212につなげる。デグリッテイングシステム202では、カオリン原料から大きなグリットを除去することでグレーカオリン原料を処理し、浮選システム204では、前記デグリッテイング処理を受けたカオリンのチタニアおよびまたは酸化鉄含有量を低くし、オゾン処理システム206では、カオリン処理流れの中に入っている種に酸化を受けさせ、そして高速遠心分離システム208では、2つの個別のカオリン流れ(微細および粗い)を互いから分離させる。試験装置210は、処理すべきカオリンに関連した少なくとも1種のパラメーター(例えば粒径分布、表面積、輝度、白色度、粗さ、水分含有%、特別な化学物質、例えばチタニアなどの含有%など)またはデグリッテイングシステム202、浮選システム204、オゾン処理システム206および高速遠心分離システム208の中のいずれか1つに関連したパラメーター(例えば粒径および/または高速遠心分離システム208による「g」力など)のいずれかを測定する装置のいずれであってもよい。
【0050】
デグリッテイングシステム202、浮選システム204、オゾン処理システム206および高速遠心分離システム208の中のいずれか1つを稼働させている間、試験装置210を用いて、処理すべきカオリンを試験する。例えば、デグリッテイングシステム202、浮選システム204またはオゾン処理システム206を稼働させている間、カオリンのサンプルを取り出して試験を実施することで粒径分布などの如きパラメーターを測定してもよい。試験装置210は試験で生じたデータをプロセッサ制御装置212に送るが、この制御装置は、そのようなカオリンパラメーターデータを前記試験装置210から受け取るに適する制御装置である。別法として、試験装置210を用いてデグリッテイングシステム202、浮選システム204、オゾン処理システム206および遠心分離システム208のパラメーターを測定しそしてこのパラメーターに関連したデータをプロセッサ制御装置に送ることも可能である。
【0051】
プロセッサ制御装置212は前記データを分析し、そしてその分析を基にして、工程を継続するか、工程を修飾するか或は工程を停止させるかのシグナルをデグリッテイングシステム202、浮選システム204、オゾン処理システム206および遠心分離システム208の中のいずれかに送る。そのような分析を容易にする目的で、データ貯蔵または記憶装置214をプロセッサ制御装置212につなげてもよく、それによって、プロセッサ制御装置212が試験装置210が送ったデータと貯蔵されているデータを比較することができるようにすることができる。そのプロセッサ制御装置212は試験装置210が試験を実施するようにシグナルを送り得る。特定の所望粒径分布を達成することなどの目的でプロセッサ制御装置212によって工程を修飾することが可能な方法の例には、高速遠心分離システム208における「g」力の上昇または低下、浮選システム204における温度の上昇または低下、デグリッテイングシステム202、浮選システム204、オゾン処理システム206および/または遠心分離システム208のいずれかが要求する仕事/エネルギーの増加または低下、デグリッテイングシステム202、浮選システム204またはオゾン処理システム206のいずれかの稼働の継続または停止などが含まれる。従って、システム200は、瞬時に存在する要求に適合させる目的でカオリンの処理にリアルタイムで修飾を受けさせることができるようなリアルタイムの分析およびリアルタイムのフィードバックを提供し得る。
【0052】
本発明は、更に、塗料用媒体を主要量で含有しかつ本明細書に記述する超微細な含水カオリンを主要ではない量で含有する塗料組成物にも関する。主要量には少なくとも50%(乾燥した塗膜の体積パーセント)が含まれる一方、主要ではない量には50%未満(乾燥した塗膜の体積パーセント)が含まれる。塗料用媒体はラテックス塗料用の媒体、油が基になった塗料用の媒体、アルキド塗料用の媒体、アクリル系塗料用の媒体、スチレン系塗料用の媒体および/またはエポキシ塗料用の媒体のいずれか1つであってもよい。そのような塗料用媒体に塗膜を生じさせるに適した成分を含有させる。本明細書に記述する超微細な含水カオリンは、最も頻繁には、顔料増量剤または顔料として機能する。
【0053】
塗料組成物を製造する様式は適切な如何なる様式であってもよい。例えば、その成分を一緒にして混合してもよい。その成分を一度に全部一緒にしてもよいか或は逐次的に一緒にしてもよい。
【0054】
1つの態様における本発明の塗料組成物は、塗料用媒体を50%から約99.99%(乾燥した塗膜の体積パーセント)含有しかつ超微細含水カオリンを約0.01%から約49%(乾燥した塗膜の体積パーセント)含有する。別の態様における本発明の塗料組成物は、塗料用媒体を60%から約99.9%(乾燥した塗膜の体積パーセント)含有しかつ超微細含水カオリンを約0.1%から約40%(乾燥した塗膜の体積パーセント)含有する。更に別の態様における本発明の塗料組成物は、塗料用媒体を70%から約99%(乾燥した塗膜の体積パーセント)含有しかつ超微細含水カオリンを約1%から約30%(乾燥した塗膜の体積パーセント)含有する。
【0055】
1つの態様では、本明細書に記述する超微細含水カオリンを塗料組成物に入れる顔料としてのチタニアと一緒に顔料増量剤として用いてもよい。別の態様における本発明の塗料組成物は、塗料用媒体を50%から約99.9%(乾燥した塗膜の体積パーセント)、チタニアを約0.1から約40%(乾燥した塗膜の体積パーセント)および超微細含水カオリンを約0.1%から約40%(乾燥した塗膜の体積パーセント)含有する。更に別の態様における本発明の塗料組成物は、塗料用媒体を約60%から約98%(乾燥した塗膜の体積パーセント)、チタニアを約1から約30%(乾燥した塗膜の体積パーセント)および超微細含水カオリンを約1%から約30%(乾燥した塗膜の体積パーセント)含有する。更に別の態様では、本明細書に記述する超微細含水カオリンを他の顔料増量剤、例えば粘土、炭酸塩、タルクおよびシリカなどの中の1種以上と一緒に塗料組成物に入れる顔料としてのチタニアの有り無しで一緒に顔料増量剤として用いてもよい。
【0056】
塗料配合における1つのパラメーターは顔料の体積濃度(本明細書では以降PVC)である。PVCは、塗料配合を設計する時の制御要因である、と言うのは、塗料の特性は一般に重量効果ではなく体積に支配されるからである。以下の式はPVCを乾燥した塗膜の体積のパーセントとして定義するものである:
PVC%=100xVpigment/Vtotal
[式中、Vpigmentは、乾燥した塗膜に入っている顔料と他の非揮発物の体積であり、そしてVtotalは、Vpigment+塗料用媒体/樹脂の体積である]。臨界顔料体積濃度(本明細書では以降CPVC)は顔料を基準にした結合剤の量が充分でないことが理由で乾燥した塗膜の中に空気界面が生じる時のPVCであるとして定義する。数多くの塗料の体積特性はCPVCの所で劇的に変化することが良く知られている。PVCとCPVCの間の関係は典型的に非線形である。多くの場合、いろいろな塗料の比較は等しい低顔料体積濃度(equal reduced pigment volume concentration)(本明細書では以降RPVC)を基にして適切に行われる。RPVCを下記の式で定義する:
RPVC=PVC/CPVC
光沢等級の塗料が示すRPVCは屋外用または屋内用のいずれも一般に約1未満である。
【0057】
CPVCは顔料の粒子が「吸収する」結合剤の量と逆の関係にある。ある顔料または増量剤が吸収する能力を測定する1つの技術は、所定量の顔料がペーストを生じるに必要なアマニ油の量を測定する技術である。それを油吸収度と呼ぶことができる。本明細書で用いる如き用語「油吸収度」は、ASTM D281に記述されている手順を指す。一般的に言って、油吸収度が低い増量用顔料を油吸収度が高い増量用顔料に等しい量で置き換えると結果としてその塗料のCPVCが低下する。それによって、今度は、屋外用配合物で利用可能なPVCの範囲ばかりでなく使用可能な増量用顔料の量が制限される。
【0058】
PVCが臨界未満の塗料、例えば準光沢および高光沢塗料などは乾燥膜の中に空気を捕捉することはない。その固体表面全体が結合剤で湿っておりかつ不透明度は単に顔料および顔料増量剤の粒子のみで得られる。粒子濃度が決まっている場合、顔料および顔料増量剤の粒子の表面が光にさらされる度合が最大限であることを確保すると不透明度が改善されるか或は最適になる。本発明の超微細含水カオリンを顔料増量剤として当該顔料と同様な粒径で用いると、顔料粒子間の間隔が望ましくなり、顔料粒子の凝集が防止されかつ光にさらされる度合が最大限になることが確保される。
【0059】
CPVCより高い塗料はつや消しであると考えられる。つや消し度を85度の光沢でか或はつや(sheen)として一般に知られる光沢で決定する。CPVCより低い塗料は光沢があり、準光沢または高光沢のいずれかであると見なされる。光沢の測定を典型的には60度または20度の角度で実施する。
【0060】
本発明の超微細含水カオリンの構造(PSD、表面積)を利用して光沢の保持および顔料間の間隔を充分にする。1つの態様では、本発明の超微細含水カオリンの大きさをチタニアの大きさと同じにすることで、望ましくは、分散しているチタニア粒子/凝集物の間にそれが合致するようにする。言い換えれば、本超微細含水カオリンである増量剤が一般に顔料増量剤として働き、具体的には、TiO顔料用スペーサー(spacer)として働くことでTiOの如き顔料の表面が光にさらされる度合が最大限になるようにし、その結果として不透明度がより高くなる。
【0061】
高光沢および準光沢等級の塗料は、光学特性が優れていることが理由で主要な顔料としてしばしば用いられる二酸化チタンと一緒に主要な顔料と増量用顔料の混合物を含有する。ラテックスおよびアルキド塗料で最も一般的に用いられる増量用顔料は、含水カオリンおよび微細な品質の炭酸カルシウムおよびタルクである。エマルジョン塗料に入っている結合剤は、分子量が約10,000から約1,000,000の膜形成性重合体の小球(直径が典型的には約0.1から約1.0ミクロン)で構成されている。ラテックスの粒径および組成は多様であり、それによって、耐久性、光沢、ガラス転移温度などの如き特性が変化する。現在のところ、アクリル系およびビニル−アクリル系樹脂がラテックス塗料で用いられる結合剤の大部分を占めている。
【0062】
塗料産業では、通常、超微細カオリン顔料の表面積を大きくするとPVCが低い時およびCPVC未満の時には塗料の光沢性能が悪影響を受けると信じられている。しかしながら、本発明者らは、高い表面積を有する超微細含水カオリン顔料が他の市販含水カオリン顔料のいずれもが示す光沢性能よりも良好であるか或はそれに相当する光沢性能をもたらし得ることを予想外に見いだした。
【0063】
この見いだしたことの背景にある理由は下記の通りである。カオリン産業でカオリンが基になっていてGEBが90−91の光沢のある製品を製造する時には、典型的に、三級原料、例えばEast Georgiaで得られる原料を用いそしてそれに選択的凝集選鉱処理を受けさせている。J.M.Huber Corporationから入手可能なPolygloss(商標)90である1つの光沢用カオリン製品はそのような方法で作られたものであると考えており、それは数多くの塗料および産業用塗装用途で入手可能な商業的顔料の中で最も高い光沢を与える。本発明の超微細カオリンは、Polygloss(商標)90に比べて微細なPSDを示しかつ高い表面積を有するが、予想外に、塗膜が示す隠蔽力を犠牲にすることなく結果として高い光沢をもたらした。
【0064】
以下の実施例は本発明を例示するものである。特に明記しない限り、以下の実施例および本明細書の他の場所および請求項に示す部およびパーセントは全部重量部および重量パーセントであり、温度は全部摂氏度でありそして圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【実施例1】
【0065】
表1に、本発明の実施を成功裏に行うことを容易にするグレー原料の典型的な特性を示す。また、実施例2および3で本発明を例示する時に用いる具体的なグレーカオリン原料(実施例1)の特性も示す。
【0066】
【表1】

【実施例2】
【0067】
実施例1の原料にデグリッテイング、限外浮選、オゾン処理および高速遠心分離を受けさせることで微細な流れと粗い流れを生じさせる。浮選をTiO含有量が0.7%未満にまで低下するように実施する。遠心分離を目標の粒径である18−22%が0.3μm未満になるような条件下で実施したが、その結果として典型的に74−78%が2μm未満の粒径がもたらされる。粗い流れには更に2番目の遠心分離作業を受けさせることで、90%が2μm未満の粒子を回収する。その2番目の遠心分離作業を受けさせる粗い流れおよび1番目の遠心分離作業で得られた微細な流れの特性を表2に示す。
【0068】
【表2】

【実施例3】
【0069】
表2に示した超微細物に硫酸を用いた凝集、漂白および濾過を受けさせる。その濾過ケーキをソーダ灰/ポリアクリレート/ホスフェートの指定混合物で分散させた後、噴霧乾燥を実施する。その噴霧乾燥品を微粉砕してHegmanグラインド(grind)が6.5になるようにする。本発明の超微細製品(UF1)の特性に加えて商業的Polygloss(商標)90カオリン顔料との比較を以下の表3に示す。また、Engelhard Corporationによる選択的凝集工程を用いて製造された製品であるASP(商標)超微細含水アルミノケイ酸塩も含める。
【0070】
【表3】

【実施例4】
【0071】
実施例4には溶媒中性ベースクリアアルキド塗料配合(solvent neutral base clear alkyd paint formulation)を示す。実施例3に従って調製したUF1に光沢塗料用途に関する試験を受けさせる。実施例4から9の塗料配合は、体積が100ガロンでありそして原料の量を100ガロン当たりのポンドで表すことが基になっている。溶媒塗料では、UF1の方がPolygloss(商標)90よりも粒径が微細でありかつ表面積が大きいにも拘らず、光沢に悪影響が生じることはない。
【0072】
【表4】

【実施例5】
【0073】
実施例5では、屋内用準光沢ラテックス塗料配合物を示す。実施例3に従って調製したUF1に別の光沢塗料用途における試験を受けさせる。このラテックス塗料では、UF1を用いるとPolygloss(商標)90を用いた時に比べて光沢が有意に向上する。
【0074】
【表5】

【0075】
【表6】

【実施例6】
【0076】
実施例6では、水還元性高光沢アルキドエナメル塗料配合物を示す。実施例3に従って調製したUF1に高光沢塗料用途に関する試験を受けさせる。水還元性アルキド高光沢エナメル塗料では、20度の光沢値がPolygloss(商標)90のそれと比べて有意に向上する。
【0077】
【表7】

【0078】
【表8】

【実施例7】
【0079】
実施例7では、屋内用/屋外用光沢塗料配合物を示す。実施例3に従って調製したUF1に別の高光沢塗料用途に関する試験を受けさせる。スチレンアクリル系高光沢水性塗料では、UF1の方がPolygloss(商標)90よりも高い20度および60度光沢値を示した。
【0080】
【表9】

【0081】
【表10】

【実施例8】
【0082】
実施例8では、光沢白色エナメル塗料配合物を示す。実施例3に従って調製したUF1に別の高光沢塗料用途に関する試験を受けさせる。別のスチレンアクリル系エナメル塗料では、塗料のPVCを同じに維持するように、TiOの10%を同じ体積のUF1で増量する。UF1は、TiOが100%の塗料に比べて予想外に同様な不透明度および光沢性能を示した。この塗料でもまたUF1が示した光沢の方がPolygloss(商標)90のそれよりも高かった。
【0083】
【表11】

【0084】
【表12】

【実施例9】
【0085】
実施例9では、2つの部分から成る水性エポキシ塗料配合物を示す。実施例3に従って調製したUF1に別の高光沢塗料用途に関する試験を受けさせる。この高光沢水性エポキシ塗料配合では、UF1を用いるとPolygloss(商標)90を用いた時に比べて20度光沢値が向上する。
【0086】
【表13】

【0087】
【表14】

【0088】
本発明を特定の態様に関して説明してきたが、本明細書を読んだ後の本分野の技術者にそれのいろいろな修飾形が明らかになると理解されるべきである。従って、本明細書に開示する発明に添付請求項の範囲内に入る如きそのような修飾形を包含させることを意図すると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明に従ってカオリンを処理するシステムおよび方法の1つの面を示す流れ図である。
【図2】図2は、本発明に従ってカオリンを自動的に処理するシステムの別の面を示す図式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カオリンを処理する方法であって、逐次的に、
グレーカオリンを超主要量で含有するカオリン原料に浮選を受けさせることでチタニア含有量が低下したカオリンを生じさせ、
前記チタニア含有量が低下したカオリンを高速の遠心分離にかけることで、少なくとも約70重量%が2ミクロン以下の大きさを有するカオリンを含有する粗流れと、少なくとも約80重量%が1ミクロン以下の大きさを有するカオリンを含有する微細流れを生じさせ、そして
前記微細流れに精製を受けさせることで超微細なカオリン顔料を生じさせる、
ことを含んで成る方法。
【請求項2】
高速の遠心分離が約1,000から約10,000の「g」力を用いることを伴う請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カオリン原料がグレーカオリンを少なくとも約75重量%含有して成る請求項1記載の方法。
【請求項4】
浮選によって前記カオリンのチタニア含有量を約1重量%未満にまで低下させる請求項1記載の方法。
【請求項5】
浮選が泡沫浮選、限外浮選およびTREP浮選の中の1つを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項6】
更に、前記カオリン原料に浮選を受けさせる前に前記カオリン原料にデグリッテイングを受けさせておくことも含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項7】
超微細含水カオリンであって、粒子の少なくとも約97重量%が2ミクロン以下の大きさを有し、粒子の少なくとも約96重量%が1ミクロン以下の大きさを有し、粒子の少なくとも約89重量%が0.5ミクロン以下の大きさを有し、粒子の少なくとも約67%が0.3ミクロン以下の大きさを有し、粒子の表面積が少なくとも約23m/gでありかつ粒子の輝度が少なくとも約91である粒子を含有して成る超微細含水カオリン。
【請求項8】
粒子の少なくとも約98重量%が2ミクロン以下の大きさを有し、粒子の少なくとも約97重量%が1ミクロン以下の大きさを有し、粒子の少なくとも約90重量%が0.5ミクロン以下の大きさを有し、粒子の少なくとも約70%が0.3ミクロン以下の大きさを有しかつ粒子の表面積が少なくとも約25m/gである請求項7記載の超微細含水カオリン。
【請求項9】
粒子の輝度が約92より高い請求項7記載の超微細含水カオリン。
【請求項10】
塗料組成物であって、
塗料用媒体を主要量で含有し、そして
請求項7記載の超微細含水カオリンを主要ではない量で含有、
して成る塗料組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−510875(P2008−510875A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529895(P2007−529895)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/027845
【国際公開番号】WO2006/026066
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(591044371)バスフ・カタリスツ・エルエルシー (43)
【Fターム(参考)】