説明

超純水製造用膜分離装置の洗浄装置

【課題】シリコンウェーハ、システムLSIなどの製造工場などで使用される超純水中へのアミンの溶出を効果的に防止し、純度の極めて高い超純水を安定して供給することができる超純水製造用膜分離装置の洗浄装置を提供する。
【解決手段】膜分離装置の給水入口と脱着可能な連結部を有する洗浄水供給配管、膜分離装置の透過水出口と脱着可能な連結部を有する透過水排出配管、膜分離装置の濃縮水出口と脱着可能な連結部を有する濃縮水排出配管を有し、洗浄水供給配管に弁と流量調整手段が、透過水排出配管に弁が、濃縮水排出配管に弁がそれぞれ設けられるとともに、洗浄水供給配管に分岐して弁を有するブロー水配管が接続されてなることを特徴とする超純水製造用膜分離装置の洗浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造用膜分離装置の洗浄装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、シリコンウェーハ、システムLSIなどの製造工場などで使用される超純水中へのアミンの溶出を効果的に防止し、純度の極めて高い超純水を安定して供給することができる超純水製造用膜分離装置の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶などの電子部品の製造においては、多量の純水や超純水が用いられている。超純水は、25℃において18.24MΩ・cmという理論純水の比抵抗に極めて近い比抵抗値を有する。図1は、超純水供給装置の一例の系統図である。超純水供給装置では、市水、工業用水、井水などを原水とし、前処理装置、一次純水装置及び二次純水装置で処理されて、超純水が製造される。前処理装置では、ろ過、凝集沈殿、精密ろ過膜などによる前処理が施される。一次純水装置では、イオン交換、膜分離、ガス放散、紫外線照射などが行われ、原水の水質と、要求される処理水の水質に合わせて、各装置が適宜組み合わされる。二次純水装置は、純水タンク、ポンプ、熱交換器、紫外線酸化装置、イオン交換ポリッシャ、限外ろ過膜装置などからなり、一次純水中に残存する極微量のイオン、シリカ、有機物、微粒子などが除去されて超純水が得られる。イオン交換ポリッシャとして、多孔質イオン交換膜装置を用いる場合があり、限外ろ過膜の代わりに、精密ろ過膜や逆浸透膜を用いる場合があり、さらに、限外ろ過膜の前段に膜脱気装置を組み込む場合がある。製造された超純水は、電子部品の洗浄工程などのユースポイントに送られて使用される。ユースポイントでは、濃厚排水、希薄排水、使用されなかった純水が発生する。濃厚排水は、排水処理されたのち、放流又は排水処理系で回収再利用される。希薄排水は排水回収装置で処理され、純水は純水回収装置で処理されて、それぞれ一次純水装置に供給され、再利用される。
このような超純水供給装置を用いて、有機体炭素、無機塩類、菌、溶存ガスが極力除去され、理論的な水質面では、超純水はほぼ満足する水準に達している。しかし、システムLSI製造工場では、二次純水装置の限外ろ過膜を交換したのち、酸化膜の耐圧不良やシリコン表面のアレが生じ、製品が不良となる状態が1週間ないし1か月継続するという問題が生じていた。酸化膜の厚さも、厚くなっていた。限外ろ過膜は、メーカーで製造したのち、製品検査をかねて超純水で洗浄し、透過水の水質がTOC溶出量20μg/L以下、抵抗率17.5MΩ・cmであることを確認して出荷され、電子産業の工場へ納入されている。したがって、超純水の保証水質は満足しているが、製品に対する要求品質が上がったことによるトラブルであり、何らかのトラブルを発生させる物質が限外ろ過膜から溶出していることが原因であると推定された。
この原因について本発明者らが鋭意検討したところ、超純水中のアミンが、製品不良の原因物質であるという結論にいたった。また、その発生源を特定したところ一次純水装置や二次純水装置に使用される精密ろ過膜、限外ろ過膜、逆浸透膜、多孔質イオン交換膜、脱気膜などのポッティング材料や、接着剤からアミンが溶出することをつきとめた。このために、超純水中の不純物としてこれまで注目されていた無機イオンとは別に、アミンの溶出を低減することが緊急の課題となった。
【特許文献1】特開平7−80260号公報
【特許文献2】特開平4−305231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、シリコンウェーハ、システムLSIなどの製造工場などで使用される超純水中へのアミンの溶出を効果的に防止し、純度の極めて高い超純水を安定して供給することができる超純水製造用膜分離装置の洗浄装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、超純水製造用膜分離装置を二次純水装置に装着する前に、極めて純度の高い超純水を用いて、該膜分離装置に対して通水工程、浸漬工程、排出工程からなる洗浄サイクルを繰り返すことにより、超純水製造装置の新設、膜分離装置の交換などを行っても、膜分離装置からのアミンの溶出がなく、不良品の発生を防止し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)膜分離装置の給水入口と脱着可能な連結部を有する洗浄水供給配管、膜分離装置の透過水出口と脱着可能な連結部を有する透過水排出配管、膜分離装置の濃縮水出口と脱着可能な連結部を有する濃縮水排出配管を有し、洗浄水供給配管に弁と流量調整手段が、透過水排出配管に弁が、濃縮水排出配管に弁がそれぞれ設けられるとともに、洗浄水供給配管に分岐して弁を有するブロー水配管が接続されてなることを特徴とする超純水製造用膜分離装置の洗浄装置、
(2)濃縮水排出配管に、弁を有する気体供給配管が接続されてなる第1項記載の超純水製造用膜分離装置の洗浄装置、及び、
(3)複数本の超純水製造用膜分離装置が並列して取り付けられる第1項記載の超純水製造用膜分離装置の洗浄装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の超純水製造用膜分離装置の洗浄装置によれば、超純水製造装置の二次純水装置に設置する膜分離装置からのアミンの溶出を防ぎ、新しい膜分離装置の設置直後から良好な水質の超純水を製造し、電子材料工場における不良品の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の超純水製造用膜分離装置の洗浄方法においては、粒径0.05μm以上の微粒子数が1個/mL以下、TOC(有機体炭素)濃度が2μgC/L以下、抵抗率が18.2MΩ・cm以上の超純水を洗浄水とし、該洗浄水を超純水製造用膜分離装置に通水する通水工程と、該膜分離装置に洗浄水を保持したまま通水を停止する浸漬工程と、該膜分離装置から洗浄水を排出する排出工程とを有する洗浄サイクルを繰り返す。
電子産業、特にシリコンウェーハや、フラッシュメモリーのような高集積度製品などのシステムLSIなどの高精度の電子材料の製造工場で使用される超純水には、粒径0.05μm以上の微粒子数が1個/mL以下、TOC濃度が2μgC/L以下、抵抗率が18.2MΩ・cm以上という高純度が要求される。使用される超純水と同じ水質の洗浄水で超純水製造用膜分離装置を洗浄し、膜分離装置の透過水の水質が洗浄水の水質と同じになったとき、膜分離装置の洗浄が完了したと判定し、膜分離装置を超純水製造装置の二次純水装置に設置して、製造される超純水が要求される水質基準を満たすことを保証することができる。
【0007】
本発明方法において、洗浄水のアミン濃度は、50ng/L以下であることが好ましく、20ng/L以下であることがより好ましい。高精度の電子材料の製造工場で使用される超純水には、アミン濃度20ng/L以下のアミン濃度が要求される。超純水中に含まれるアミンは、主として、ポッティング材料であるエポキシ樹脂の硬化剤として用いられる炭素数10〜30の長鎖アミンや、親水性の複素環型ジアミンなどである。膜分離装置を洗浄水と接触させることにより、膜分離装置からアミンを溶出させるが、アミンの溶出は洗浄水中のアミン濃度に左右されることはほとんどなく、洗浄水と膜分離装置との接触時間に応じて、膜分離装置から水にアミンが移行する。水に移行したアミンが、ふたたび膜分離装置へ移行することはない。したがって、アミン濃度が50ng/Lの超純水を洗浄水として用いても、膜分離装置から水へのアミンの溶出は進行する。そして、洗浄終了後、膜分離装置にアミンを含む洗浄水が若干残留しても、この洗浄済み膜分離装置を二次純水装置に設置して超純水を製造すると、残留する洗浄水は短時間で排除され、以後はアミン濃度が所定値以下となった超純水が製造される。
洗浄水中のアミン濃度は、極めて低濃度であることが好ましく、本発明の洗浄方法によって洗浄された超純水製造用膜分離装置を設置した超純水製造装置によって得られた超純水を使用することがより好ましい。すなわち、シリコンウェーハなどの製品の製造に悪影響を及ぼさない程度の高純度の超純水を使用して洗浄することが好ましく、製品に対して要求される品質に応じて超純水の水質が変わるが、アミン濃度が20ng/L以下であることがより好ましい。
【0008】
本発明方法においては、通水工程における通水量が、膜分離装置の設計最大流量であることが好ましい。図2は、膜分離装置の一例の説明図である。本図の膜分離装置は、中空糸モジュールであり、限外ろ過膜からなる中空糸1が束ねられて、圧力容器2に収められ、中空糸の両端がエポキシ樹脂により接着部3において固定されている。洗浄水は、モジュール下部から供給され、中空糸の外側を流れる。膜透過して中空糸の内側に入った透過水は、中空糸の中を通って取り出される。膜透過しなかった水は、濃縮水として濃縮水出口4から排出される。
このような膜分離装置では、透過水側は水が流れやすいが、供給水側は水が流れにくく、偏流を起こしやすい。通水量を膜分離装置の設計最大流量とすることにより、偏流の発生を防ぎ、膜分離装置内に均一に通水することができる。また、膜分離装置の接着部の近傍には、中空糸が密集して水が流れにくく、溜まりを生じやすい。膜分離装置への通水と浸漬と排出を繰り返すことにより、接着部の近傍における水の溜まりを防ぐことができる。中空糸モジュールに限らず、平面膜モジュール、管型モジュール、スパイラルモジュール、モノリス型モジュールなどにおいても、偏流と溜まりの問題は発生するが、通水量を膜分離装置の設計最大流量とすることにより、解決することができる。
【0009】
本発明方法においては、通水工程における通水時間が、1〜10分間であることが好ましく、2〜5分間であることがより好ましい。通水時間とは、膜分離装置の内部が完全に水で満たされたときから、通水を停止するまでの時間である。通水工程においては、透過水の抵抗率が18.0MΩ・cm以上になるまで通水することが好ましい。6インチの中空糸モジュールでは、通常は2〜5分で透過水の抵抗率が18.0MΩ・cmに達する。
本発明方法においては、洗浄水の温度が23〜50℃であることが好ましく、25〜40℃であることがより好ましい。洗浄水の温度が23℃未満であると、アミンの溶出速度が遅く、洗浄に長時間を要するおそれがある。洗浄水の温度が50℃を超えると、分離膜が劣化するおそれがある。
本発明方法においては、通水工程を終了したのち、膜分離装置に洗浄水を保持したまま通水を停止する浸漬工程に移行する。浸漬工程において、膜分離装置からアミンなどの水溶性成分が洗浄水中に溶出する。浸漬工程における浸漬時間は、0.5〜6時間であることが好ましく、2〜4時間であることがより好ましい。浸漬時間が0.5時間未満であると、水溶性成分が十分に溶出する以前に保持された洗浄水を排出し、洗浄水を無駄に費消するおそれがある。浸漬時間が6時間を超えると、膜分離装置の水溶性成分と溶出した水溶性成分が平衡に近づき、水溶性成分の溶出速度が遅くなるおそれがある。
【0010】
本発明方法においては、所定の浸漬工程が終了したとき、膜分離装置から洗浄水を排出する排出工程に移行する。排出工程において、膜分離装置の濃縮水側の水をすべて排出することにより、例えば、中空糸モジュールの接着部のように水の溜まりが生じやすい部分の洗浄水もすべて排出し、次の通水工程において、あらたに洗浄水を満たすことができるので、連続的に洗浄水を通水して洗浄する場合に比べて、より少量の洗浄水を用い、より短時間で、効果的に洗浄することができる。排出工程においては、膜分離装置の濃縮水側に気体を送入して保持している洗浄水を排出することが好ましい。
送入する気体は、純度99.999容量%以上の窒素又はHEPA(高効率微粒子、High Efficiency Particulate Air)フィルター以上のフィルターでろ過した空気であることが好ましい。純度99.999容量%以上の窒素又はHEPAフィルター以上のフィルターでろ過した空気を送入することにより、膜分離装置の汚染や微粒子の混入を防ぐことができる。HEPAフィルターは、定格風量において、圧力損失が25mmH2O以下で0.3μm粒子を99.97%以上で捕集するフィルターである。HEPAフィルターを超えるフィルターとしては、例えば、定格風量において、圧力損失が25mmH2O以下で0.1μm粒子を99.9995%以上で捕集するULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルターなどを挙げることができる。
送入する気体の圧力は、5〜20kPaであることが好ましく、8〜15kPaであることがより好ましい。送入する気体の圧力が5kPa未満であると、洗浄水の排出に長時間を要するおそれがある。送入する気体の圧力が20kPaを超えると、分離膜が損傷を受けるおそれがある。本発明方法においては、膜分離装置の濃縮水側に気体を送入して10〜30分放置したのち、通水工程に移行することが好ましい。気体を送入して10〜30分放置することにより、膜分離装置の内部の洗浄水を完全に排出して、洗浄効率を高めることができる。
【0011】
本発明方法においては、洗浄サイクルを10〜60日間繰り返すことが好ましい。洗浄サイクルを10〜60日間繰り返すことにより、通常は膜分離装置の洗浄を終了することができる。洗浄水として用いた超純水の水質と、膜分離装置の透過水の水質が同じになったとき、洗浄が終了したと判定することができ、あるいは、膜分離装置で得られた超純水を用いてシリコンウェーハを洗浄し、シリコンウェーハ表面にアレなどがなければ、洗浄が終了したと判定することができる。この場合、ウェーハのSEM観察、エリプソメータ等を利用して確認する。さらに、特定の装置を用いて洗浄を繰り返し、経験的に洗浄終了までの洗浄時間が把握できれば、所定の時間洗浄して洗浄を終了することができる。
本発明方法において、膜分離装置を洗浄して発生する洗浄排水、すなわち、膜分離装置の膜を透過した透過水、膜を透過せず濃縮側から生ずる濃縮水、排出工程において発生するブロー水は、ほとんど超純水に近い水質を有するので、回収して超純水製造装置の一次純水装置に返送し、超純水製造の原水とすることができ、あるいは、工場の純度が要求されない任意の用途に使用することもできる。
【0012】
本発明の超純水製造用膜分離装置の洗浄装置は、膜分離装置の給水入口と脱着可能な連結部を有する洗浄水供給配管、膜分離装置の透過水出口と脱着可能な連結部を有する透過水排出配管、膜分離装置の濃縮水出口と脱着可能な連結部を有する濃縮水排出配管とを有し、洗浄水供給配管に弁と流量調整手段が、透過水排出配管に弁が、濃縮水排出配管に弁がそれぞれ設けられるとともに、洗浄水供給配管に分岐して弁を有するブロー水配管が接続してなる装置である。本発明装置は、濃縮水排出配管に、弁を有する気体供給配管が接続してなる装置であることが好ましい。本発明装置は、複数本の超純水製造用膜分離装置が並列して取り付けられる装置であることが好ましい。
図3は、本発明装置の一態様の工程系統図である。本図に示す装置は、1系列に超純水製造用膜分離装置5本を取り付けることができ、3系列を備えているので、全部で15本の膜分離装置を取り付け、同時に洗浄することができる。本図においては、簡略化のために1系列5本の膜分離装置のみを図示し、他の2系列は一点鎖線の長方形で示す。図3に示す態様の装置は、膜分離装置Mの給水入口と脱着可能な連結部Cを有する洗浄水供給配管T、膜分離装置の透過水出口と脱着可能な連結部Dを有する透過水排出配管Q、膜分離装置の濃縮水出口と脱着可能な連結部Eを有する濃縮水排出配管Rを有する。洗浄水供給配管Tには、流量計Fと、弁A1と、流量調整手段としての弁A2を備えたサブ配管Sが設けられている。また、透過水排出配管Qには弁A5が、濃縮水排出配管Rには弁A4が設けられている。洗浄水供給配管Tに分岐して、弁A6と弁A7を有するブロー水配管Bが接続している。濃縮水排出配管Rに、弁A3を有する気体供給配管Gが接続している。さらに、膜分離装置Mの給水入口と脱着可能な連結部Cの前段に弁Umn1、膜分離装置の透過水出口と脱着可能な連結部Dの後段に弁Umn2、膜分離装置の濃縮水出口と脱着可能な連結部Eの後段に弁Umn3が設けられている。ただし、mは系列番号を、nは膜分離装置番号である。各弁は、自動弁であり、自動的に開閉が可能である。流量調整は、必要に応じて別途手動弁にて行うことができる。
【0013】
本発明装置において、系列数は1系列とすることができ、あるいは、複数系列とすることもできる。また、1系列に取り付ける膜分離装置の本数も任意であり、1本とすることも、複数本とすることもできる。洗浄する膜分離装置の本数は、超純水製造装置の規模に応じて適宜選択することができる。例えば、二次純水装置に設置する膜分離装置1本の処理水量が10t/hであり、超純水の生産量が150t/hの規模である場合、膜分離装置は少なくとも15本必要となる。このような規模の場合は、洗浄装置にも15本の膜分離装置が取り付けられることが好ましい。また、超純水の生産量が極めて少ない場合は、1本の膜分離装置が取り付けられればよいが、通常は、複数本の膜分離装置を必要とするので、洗浄装置においても複数本の膜分離装置を取り付けられることが好ましい。
洗浄に際して、各連結部を用いて、膜分離装置の給水入口、透過水出口及び濃縮水出口を、それぞれ洗浄水供給配管、透過水排出配管及び濃縮水排出配管と連結し、膜分離装置を洗浄装置に取り付ける。複数本の膜分離装置を洗浄する場合には、複数本の膜分離装置を取り付ける。例えば、図3において、15本の膜分離装置を洗浄するときは、3系列すべてに膜分離装置を取り付け、5本の膜分離装置を洗浄するときは、1系列のみに膜分離装置を取り付け、3本の膜分離装置を洗浄するときは、1系列に3本の膜分離装置を取り付け、膜分離装置が取り付けられていない系の弁はすべて閉として、弁の自動制御の対象から外しておくことができる。
【0014】
通水工程の開始にあたっては、弁A3、A6及びA7を閉とし、他の弁はすべて開にする。弁A1を通って洗浄水が供給され、取り付けられ膜分離装置の内部と各配管は満水状態になる。満水状態にするための所要時間は、供給水量に支配されるが、1分程度であることが好ましい。
通水工程においては、最初に弁U111、U112、U113、A1、A5、A4を開とし、他の弁はすべて閉として、膜分離装置M1のみに通水する。このとき、膜分離装置内での偏流を防止するために、サブ配管Sの弁A2も開として供給水量を増大し、通水量を膜分離装置の設計最大流量とすることが好ましい。通水により膜分離装置内の水は置換され、膜分離装置から溶出した水溶性成分は洗い出される。通水量は、膜分離装置内の水量の10〜30倍程度でよく、通水時間は1〜10分であることが好ましく、2〜5分であることがより好ましい。
膜分離装置M1への通水を所定時間行ったのち、弁U111、U112、U113を閉として、膜分離装置M1への通水を停止し、膜分離装置内が洗浄水で満水となり、膜分離装置の内部が洗浄水により浸漬された状態とする。浸漬状態は、0.5〜6時間保持することが好ましい。この間に、弁U121、U122、U123を開として、2番目の膜分離装置M2を通水工程に移行する。膜分離装置M2の通水工程が終了したとき、浸潰工程に移行する。このようにして、順次各膜分離装置が通水工程を経て浸漬工程に移行していく。浸漬工程において、各膜分離装置内で、洗浄水と膜や、膜の接続部が長時間接触し、接続部から水溶性成分の洗浄水への溶出が徐々に進む。
【0015】
排出工程においては、弁A3、Umn3、Umn1、A6、A7を開とし、弁A1、A2、U112、A4を閉とすることにより、膜分離装置M1内の洗浄水は流下し、排出される。このとき、弁A3を介して、清浄な気体を濃縮水出口から膜分離装置内へ送入し、膜分離装置内の洗浄水を押し出すことにより、膜分離装置内の洗浄水を完全に排出する。気体の供給圧力は、5〜20kPaであることが好ましい。排出工程において、洗浄水の排出に要する時間は、通常は2〜4分であるが、10〜30分放置して内部の水を確実に排出することが好ましい。
本発明装置においては、膜分離装置1本ずつに順次通水して通水工程を行うことができ、取り付けた膜分離装置すべてに同時に通水することもでき、あるいは、全部でないまでも複数本の膜分離装置に同時に通水することもできる。しかし、通水工程において膜分離装置1本ずつに通水すると、必要な洗浄水の供給能力は膜分離装置1本でよいので、洗浄水の供給設備は小型の装置ですむ。もし、5本の膜分離装置に同時に通水すると、5倍の洗浄水供給能力が必要になる。
図3に示す態様においては、洗浄装置は膜分離装置5本を1系列とする3系列から構成されているが、1系列に取り付ける膜分離装置の本数と洗浄装置の系列数は必要に応じて増減することができる。洗浄装置の自動弁は、シーケンス制御され、通水工程、浸漬工程、排出工程を順次自動的に移行することが好ましい。
【実施例】
【0016】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、実施例において、アミンの分析は、クロマトグラフカラム濃縮−TD−GCMSにより行った。
実施例1
限外ろ過膜装置[栗田工業(株)、KU−1510HS]の洗浄を行った。この限外ろ過膜装置は、直径176mm、長さ1,284mmの中空糸モジュールであり、膜材質はポリサルホンであり、透過流量は15t/hである。
洗浄水として、粒径0.05μm以上の微粒子数0.3個/mL、TOC濃度1μgC/L、抵抗率18.24MΩ・cm、ヘキサデシルアミン20ng/L、水温30℃の超純水を用いた。洗浄水の排出には、HEPAフィルターでろ過した圧力10kPaの空気を用いた。
通水時間4分、浸漬時間3.5時間、排出時間3分、排出後の放置時間23分、洗浄サイクル4時間として、洗浄を行った。洗浄開始直後の透過水のヘキサデシルアミン濃度は、47μg/Lであった。洗浄サイクルを繰り返すにつれて、透過水のヘキサデシルアミン濃度は徐々に低下し、30日後、180サイクルを終わったとき、洗浄水と同じ20ng/Lとなり、洗浄の終了が確認された。
図4に、経過日数と透過水のヘキサデシルアミン濃度の関係を示す。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の超純水製造用膜分離装置の洗浄装置によれば、超純水製造装置の二次純水装置に設置する膜分離装置からのアミンの溶出を防ぎ、新しい膜分離装置の設置直後から良好な水質の超純水を製造し、電子材料工場における不良品の発生を防止するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、超純水供給装置の一例の系統図である。
【図2】図2は、膜分離装置の一例の説明図である。
【図3】図3は、本発明装置の一態様の工程系統図である。
【図4】図4は、経過日数と透過水のヘキサデシルアミン濃度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0019】
1 中空糸
2 圧力容器
3 接着部
4 濃縮水出口
A 弁
B ブロー水配管
C 連結部
D 連結部
E 連結部
F 流量計
G 気体供給配管
M 膜分離装置
Q 透過水排出配管
R 濃縮水排出配管
S サブ配管
T 洗浄水供給配管
U 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜分離装置の給水入口と脱着可能な連結部を有する洗浄水供給配管、膜分離装置の透過水出口と脱着可能な連結部を有する透過水排出配管、膜分離装置の濃縮水出口と脱着可能な連結部を有する濃縮水排出配管を有し、洗浄水供給配管に弁と流量調整手段が、透過水排出配管に弁が、濃縮水排出配管に弁がそれぞれ設けられるとともに、洗浄水供給配管に分岐して弁を有するブロー水配管が接続されてなることを特徴とする超純水製造用膜分離装置の洗浄装置。
【請求項2】
濃縮水排出配管に、弁を有する気体供給配管が接続されてなる請求項1記載の超純水製造用膜分離装置の洗浄装置。
【請求項3】
複数本の超純水製造用膜分離装置が並列して取り付けられる請求項1記載の超純水製造用膜分離装置の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−229718(P2007−229718A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161033(P2007−161033)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【分割の表示】特願2002−224749(P2002−224749)の分割
【原出願日】平成14年8月1日(2002.8.1)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】