説明

超純水製造装置用のステンレス及びその製造方法、並びに超純水製造装置

【課題】金属成分が溶出しない、超純水製造装置用のステンレス及び超純水製造装置を提供する。
【解決手段】ステンレスを超純水製造装置用の構成部材の構造に成形する工程と、バフ研磨及び電解研磨を行うことなく、硝酸、フッ酸、塩酸、及び硫酸からなる群から選択された少なくとも一種の酸を含む酸溶液を用いてステンレスを洗浄する工程と、により製造した超純水製造装置用のステンレスを使用した超純水製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造装置用のステンレス及びその製造方法、並びに超純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超純水製造装置において使用される材料として、耐腐食性に優れたステンレスが使用されている。また、表面処理を行うことにより、ステンレス表面のクリーン化が行われている。
【0003】
ステンレスの表面処理の方法としては一般的に、酸洗浄、バフ研磨(バフ粉によりステンレス表面を研磨する処理)、電解研磨(電解液を満たした浴中にステンレスを浸漬させて電流を流すことにより研磨する処理)の順に処理を行う方法が用いられている。この方法は、下記(a)〜(c)のような利点を有している。
(a)ステンレス表面を滑らかにできる。
(b)耐腐食性に優れている。
(c)汚れが付着しにくい。
【0004】
特許文献1及び2(特開昭64−31956号公報、特開平10−280123号公報)には、電解研磨後に更に、ステンレスの表面処理を行う方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−31956号公報
【特許文献2】特開平10−280123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなバフ研磨、電解研磨、及びバフ研磨と電解研磨を組合わせた処理は、ステンレスに対して、腐食性の強い液体に対する耐腐食性や、表面への汚染物質の付着性低減、表面の平滑化を付与することを目的とするものであった。このため、ステンレスを超純水に接触させる環境下で使用した場合に、ステンレス表面から金属成分(鉄等)の溶出を抑制する方法については、現在まで検討されてこなかった。
【0007】
そこで、本発明者は電解研磨後のステンレスを超純水に接触させた場合における、ステンレスからの金属成分の溶出を調査した。この結果、電解研磨ではステンレスの表面を溶解させて平滑化させるため、電解研磨後にステンレス表面に金属成分(特に、鉄)が残留し、この金属成分が超純水中に溶出する場合があることが判明した。
【0008】
また、バフ研磨後のステンレスを超純水に接触させた場合における、ステンレスからの不純物の溶出を調査した。この結果、バフ研磨後にステンレスの表面からバフ粉に含まれる様々な不純物を完全に除去することは困難であった。従って、バフ研磨後にステンレスの表面にバフ粉由来の金属成分等が残留し、この金属成分が超純水中に溶出する場合があることが判明した。
【0009】
図1は、従来の、(a−1)、(a−2)バフ研磨および(b)電解研磨を行った場合に、ステンレス表面を水に接触させた状態を表す模式図である。図1(a−1)、(a−2)に示すように、ステンレス表面にバフ粉を塗布し(a−1)、研磨を行うことにより(a−2)、ステンレス3の表面部の凹凸は平滑化される。しかしながら、その過程において、凸部1が倒れ、この倒れた凸部1にバフ粉由来の金属等2が入り込むこととなっていた。この結果、バフ粉由来の金属等2が、超純水中に溶出することとなっているものと考えられる。
【0010】
図1(b)に示すように、電解研磨を行うと、ステンレス3表面の一部に、溶解した鉄4が残存し、それが超純水中に溶出するものと考えられる。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、電解研磨及びバフ研磨を行わないことにより、超純水に接触させる環境下で金属成分が溶出しない、超純水製造装置用のステンレス、及びそれを用いた超純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態は、
ステンレスを超純水製造装置用の構成部材の形状に成形する工程、及び
バフ研磨及び電解研磨を行うことなく、硝酸、フッ酸、塩酸、及び硫酸からなる群から選択された少なくとも一種の酸を含む酸溶液を用いてステンレスを洗浄する工程、によって製造した超純水製造装置用のステンレスを使用した超純水製造装置に関する。
【0013】
他の実施形態は、
ステンレスを超純水製造装置用の構成部材の形状に成形する工程と、
バフ研磨及び電解研磨を行うことなく、硝酸、フッ酸、塩酸、及び硫酸からなる群から選択された少なくとも一種の酸を含む酸溶液を用いてステンレスを洗浄する工程と、
を有する超純水製造装置用のステンレスの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
金属成分が溶出しない、超純水製造装置用のステンレス及びこのステンレスを使用した超純水製造装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のステンレスを水に接触させた場合を表す模式図である。
【図2】実施例1、比較例1の浸漬1日間における金属の溶出量を表すグラフである。
【図3】実施例1、比較例1の浸漬6日間における金属の溶出量を表すグラフである。
【図4】実施例2、比較例2、3の浸漬1日間における金属の溶出量を表すグラフである。
【図5】実施例2、比較例2、3の浸漬6日間における金属の溶出量を表すグラフである。
【図6】本発明の超純水製造装置の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
超純水製造装置用のステンレスの製造方法では、硝酸、フッ酸、塩酸、及び硫酸からなる群から選択された少なくとも一種の酸を含む酸溶液を用いてステンレスを洗浄することにより超純水製造装置用のステンレスを製造する。また、この超純水製造装置用のステンレスを、超純水製造装置の構成部材として用いる。超純水製造装置用のステンレスとして、従来、表面処理に使用されてきたバフ研磨及び電解研磨を行わないステンレスを使用する点に特徴がある。このようにバフ研磨及び電解研磨を行わないことにより、バフ研磨及び電解研磨後に、ステンレス表面にバフ粉由来の金属成分等や、電解研磨により一旦溶出した金属成分等が残留して、超純水中にこれらの成分が溶出するのを防止することができる。
【0017】
バフ研磨とは、バフ粉を外周面に塗布した回転体を、ステンレスに押し当てながら回転させることによって、ステンレス表面を研磨する方法である。
電解研磨とは、電解液を満たした浴中にステンレスを浸漬させ、ステンレスにアノード、浴等にカソードを接続し、浴中に電流を流すことによって、ステンレス表面の微小な凸部を溶解させる研磨を行う方法である。
【0018】
まず、ステンレスを超純水製造装置用の構成部材の形状に成形する(成形工程)。次に、酸溶液(硝酸、フッ酸、塩酸、及び硫酸からなる群から選択された少なくとも一種の酸を含む酸溶液)を用いてステンレスを洗浄する(洗浄工程)。バフ研磨及び電解研磨を行わないため、ステンレス表面には、バフ粉由来の金属成分等や、電解研磨により一旦溶出した金属成分等が残留しない。なお、超純水製造装置用のステンレスの製造方法では、成形工程と洗浄工程のうち何れの工程を先に行っても良い。すなわち、成形工程、洗浄工程の順番に処理を行っても良いし、洗浄工程、成形工程の順番に処理を行っても良い。
【0019】
この後、洗浄後のステンレスを超純水製造装置中で使用しても、ステンレス表面に存在する金属成分の量は従来のステンレスよりも極めて少ないため、ステンレス表面からの金属成分の溶出を低減させることが出来る。この結果、超純水製造装置で製造する超純水の純度を向上させることができる。
【0020】
酸溶液を用いて洗浄処理を行うステンレスとしては特に限定されるわけではなく例えば、JISに規定のステンレスで言えば、SUS201、SUS202、SUS301、SUS302、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316、SUS317、SUS329J1、SUS403、SUS405、SUS420、SUS430、SUS430LX、SUS630等を挙げることができる。マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、オーステナイト・フェライト系の何れのステンレスに対して洗浄処理を行っても良い。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、予めバフ研磨及び電解研磨以外の表面処理を行ったステンレスに対して洗浄処理を行っても良い。例えば、酸溶液を用いた洗浄に加えて、リン酸や粘性の高い有機物などを含有する化学研磨剤による化学研磨をあわせて行っても良い。
【0021】
これらのステンレスの中でも、特に耐食、耐熱性に優れるオーステナイト系のステンレスに対して洗浄処理を行うことが好ましい。
【0022】
酸溶液中に用いる酸としては、硝酸、フッ酸、塩酸、及び硫酸からなる群から選択された少なくとも一種の酸を使用する。好ましくは、酸として硝酸のみを含む酸溶液を用いるのが良い。硝酸のみを含む酸溶液を用いてステンレスを洗浄することにより、ステンレス表面に良好な不動態皮膜を形成すると共に、より効果的にステンレスからの不純物及び金属成分の溶出を防ぐことができる。
【0023】
超純水製造装置の一例では、1次純水製造装置で処理を行うことにより可能な限り高純度の純水とし、当該純水を更にサブシステム(2次純水製造装置)で処理して超純水を得る。1次純水製造装置は一般的に、凝集沈殿装置、砂ろ過装置(以下、凝集沈殿装置、及び砂ろ過装置を「前処理装置」と記載する場合がある)、活性炭塔、イオン交換樹脂塔、逆浸透膜装置などから構成される。サブシステムは、主に1次純水タンク、紫外線酸化装置、膜脱気装置、非再生型混床式イオン交換装置、限外濾過膜、ユースポイントなどから構成される。サブシステムで処理後、超純水はユースポイントにおいてその一部は使用に供され、残部は返送ラインを介して1次純水タンクに戻る(この返送ラインを含めてサブシステムとする)。
【0024】
図6は、本発明の超純水製造装置の一例を表す図である。図6の超純水製造装置10は、前処理装置、活性炭、逆浸透膜装置、イオン交換樹脂塔、1次純水タンク、紫外線酸化装置、非再生型混床式イオン交換装置、及び限外濾過膜装置、ユースポイントから構成されている。原水は、超純水製造装置10内を矢印の方向に通水され、処理される。
【0025】
非再生型混床式イオン交換装置は、イオン交換塔にカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合して充填したものである。非再生型混床式イオン交換装置の使用期間が長くなりすぎると不純物のリークが発生する可能性があるため、一定期間の使用後(再生を行わずに)、装置内のイオン交換樹脂を新品のものと交換している。
【0026】
限外濾過膜装置を通水した後の水は高純度の超純水となっており、この超純水がユースポイントにおいて使用される。このように、超純水製造装置において超純水を使用するところをユースポイントとする。
【0027】
また、限外濾過膜装置を通水した後の超純水はユースポイントで使用され、残りが返送ラインを通って1次純水タンクに戻され、1次純水タンク、紫外線酸化装置、非再生型混床式イオン交換装置、及び限外濾過膜装置の順に再度、処理される。このように超純水製造装置10の中で、超純水を戻すタンクからユースポイントおよび返送ラインまでの部分がサブシステム(2次純水製造システム)11を構成する。ユースポイントで使用しなかった超純水の一部をサブシステムに戻すことによって、超純水の純度を安定的に保つことが出来る。
【0028】
超純水製造装置で製造した超純水は一般的には、15MΩ・cm以上の比抵抗を有する。しかし、製造した超純水はこれよりも高い比抵抗を有していても、これより若干、低い比抵抗を有していても良い。
【0029】
本発明の超純水製造装置用のステンレスは、図6の超純水製造装置中の何れの部分で使用する構成部材としても使用できる。好ましくは、非再生型混床式イオン交換装置からユースポイントまでのラインにおける構成部材として、使用するのが良い。このラインには、非再生型混床式イオン交換装置、限外濾過膜装置だけでなく、これらの装置間を連結して超純水を通水する配管、継手、装置のハウジング、ポンプのインペラー等も含まれる。このラインは、超純水製造装置の通水方向において最後の工程を構成している。また、このラインにおいて、通水方向の非再生型混床式イオン交換装置より後にはイオン成分を除去する装置が存在しない。このため、従来のステンレスをこのラインの材料として使用すると、ステンレスから金属成分が溶出して超純水の純度を大きく低下させると共に、後の工程で金属成分を除去することができなかった。これに対して、本発明の超純水製造装置用のステンレスをこのラインで使用すると、ステンレスからの不純物、金属成分の溶出を防止できるため、超純水を高純度に保つことが可能となる。
【0030】
より好ましくは、限外濾過膜装置からユースポイントまでのラインにおける構成部材として、ステンレスを使用するのが良い。このラインには、限外濾過膜装置だけでなく、超純水を通水する配管、継手、装置のハウジング、ポンプのインペラー等も含まれる。限外濾過膜装置では、水中の微粒子やバクテリアが除去される。このため、水中に存在するバクテリアのステンレス表面への吸着、スライム形成等による水質の低下が起こりにくいため、金属の溶出の方が問題となる。また、限外濾過膜装置は超純水製造装置の通水方向において最後の装置を構成している。このため、従来のステンレスを、限外濾過膜装置からユースポイントまでのラインの構成部材として使用すると、ステンレスから溶出した金属成分を除去することができなかった。これに対して、本発明の超純水製造装置用のステンレスをこのラインで使用すると、ステンレスからの金属成分の溶出を防止できるため、超純水をより高純度に保つことが可能となる。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
SUS316 シームレスパイプ(サイズ;25A×1m)を準備した。このシームレスパイプに対して、(1)第1の酸洗浄処理、(2)第2の酸洗浄処理、を行った。上記(1)、(2)の詳細な処理フロー及び処理条件を以下に示す。
【0032】
(1)第1の酸洗浄処理
処理フロー:脱脂→水洗→酸洗浄→水洗→中和→仕上げ水洗→乾燥
酸洗浄用の洗浄液:5質量%のフッ酸、13質量%の硝酸、82質量%の水を含有する酸溶液
水洗用の水:比抵抗1MΩ・cm以上の水
(2)第2の酸洗浄処理
処理フロー:水洗→酸洗浄→仕上げ水洗→乾燥
酸洗浄用の洗浄液:15質量%の硝酸水溶液
水洗用の水:比抵抗1MΩ・cm以上の水。
【0033】
上記(1)、(2)の処理後、シームレスパイプ内に比抵抗18.2MΩ・cmの超純水を1L/minの流量で、1時間、流した。この後、シームレスパイプ内に超純水を封入することでシームレスパイプを超純水に浸漬させた状態とした。この状態を25℃で、1日間、維持した。1日経過後、封入水を全量採取し、水中の鉄、ニッケル、マンガン、クロムの溶出量をICP−MS(ICP−Mass Spectrometry)で分析した。そして、各金属の溶出量を、シームレスパイプの内表面積及び浸漬を行った時間で除することにより、単位時間、単位面積当たりの金属溶出量を算出した。
【0034】
上記と同様にして、同じシームレスパイプ内に、比抵抗18.2MΩ・cmの超純水を1L/minの流量で、1時間、流した。この後、シームレスパイプ内に超純水を封入することでシームレスパイプを超純水に浸漬させた状態とした。この状態を25℃で、6日間、維持した。その後、上記と同様にして、金属溶出量を測定した。
【0035】
浸漬1日間(図2)、6日間(図3)における各金属(鉄、ニッケル、マンガン、クロム)の金属溶出量を、図2及び3に示す。なお、図2及び3中の金属溶出量は、1日当たりの金属溶出量を表す。また、6日間における金属(鉄、ニッケル、マンガン、クロム)の総溶出量を表1に示す。
【0036】
(比較例1)
実施例1と同様にして準備したSUS316 シームレスパイプ(サイズ;25A×1m)に対して、実施例1の(1)第1の酸洗浄処理、(3)電解研磨処理、を行った。上記(3)の詳細な処理フロー及び処理条件を以下に示す。
【0037】
(3)電解研磨処理
処理フロー:脱脂→水洗→電解研磨→水洗→中和→仕上げ水洗→乾燥
電解研磨液:リン酸及びクロム酸を含有する溶液
水洗用の水:比抵抗1MΩ・cm以上の水。
【0038】
上記(1)、(3)の処理後、実施例1と同様にして、単位時間、単位面積当たりの金属溶出量を算出した。浸漬1日間(図2)、浸漬6日間(図3)における各金属(鉄、ニッケル、マンガン、クロム)の金属溶出量を、図2及び3に示す。また、6日間における金属(鉄、ニッケル、マンガン、クロム)の総溶出量を表1に示す。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様にして準備したシームレスパイプに対して、実施例1の(1)第1の酸洗浄処理のみを行った。この後、実施例1と同様にして、単位時間、単位面積当たりの金属溶出量を算出した。図4及び5は、浸漬1日間(図4)、6日間(図5)における各金属(鉄、ニッケル、マンガン、クロム)の金属溶出量を示す。なお、図4及び5中の金属溶出量は、1日当たりの金属溶出量を表す。また、浸漬6日間における金属(鉄、ニッケル、マンガン、クロム)の総溶出量を表2に示す。
【0040】
(比較例2)
実施例1と同様にして準備したシームレスパイプに対して、実施例1の(1)第1の酸洗浄処理、(4)バフ研磨処理、を行った。上記(4)の詳細な処理フロー及び処理条件を以下に示す。
【0041】
(4)バフ研磨処理
処理フロー:バフ研磨(粗研磨→中研磨→#400研磨)→脱脂→仕上げ水洗→乾燥。
【0042】
この後、実施例1と同様にして、単位時間、単位面積当たりの金属溶出量を算出した。図4及び5は、浸漬1日間(図4)、6日間(図5)における各金属(鉄、ニッケル、マンガン、クロム)の金属溶出量を、示す。また、6日間における金属(鉄、ニッケル、マンガン、クロム)の総溶出量を表2に示す。
【0043】
(比較例3)
実施例1と同様にして準備したシームレスパイプに対して、実施例1の(1)第1の酸洗浄処理、(4)バフ研磨処理、比較例1の(3)電解研磨処理、を順に行った。この後、実施例1と同様にして、単位時間、単位面積当たりの金属溶出量を算出した。図4及び5は、浸漬1日間(図4)、6日間(図5)における各金属(鉄、ニッケル、マンガン、クロム)の金属溶出量を、示す。また、6日間における金属(鉄、ニッケル、マンガン、クロム)の総溶出量を表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
図2〜5の結果より、実施例1、2では、酸洗浄処理を行いバフ研磨及び電解研磨を行わないことにより、比較例1〜3と比べてステンレスからの各金属の溶出量が大きく減少していることが分かる。特に、実施例1、2では比較例1〜3と比べて、鉄(Fe)が大きく減少していることが分かる。また、第1の酸洗浄処理のみを行った実施例2が、最も鉄(Fe)の溶出量が少なくなっていることが分かる。
【0047】
更に、表1、2の結果より、総金属溶出量の点においても、実施例1、2は比較例1〜3よりも少なくなっており、第1の酸洗浄処理のみを行った実施例2が、総金属溶出量が最も少なくなっていることが分かる。
【0048】
(実施例3)
SUS304 シームレスパイプ(サイズ;25A×1m)を準備した。このシームレスパイプに対して、実施例1と同様の(1)第1の酸洗浄処理を行った。
【0049】
上記(1)の処理後、シームレスパイプ内に比抵抗18.2MΩ・cmの超純水を2m/sの流速で2ヶ月間、流した。この後、シームレスパイプ内に超純水を封入することでシームレスパイプを超純水に浸漬させた状態とした。この状態を25℃で1日間、維持した。浸漬後、シームレスパイプ中に封入した水中への単位時間、単位面積当たりの金属溶出量を実施例1と同様にして算出した。その後、同様の方法で6日間、超純水に浸漬し、金属溶出量を算出した。
【0050】
浸漬6日間における金属(鉄、ニッケル、マンガン、クロム)の総溶出量を表3に示す。なお、表3の総溶出量は、実施例3の場合を100%とした場合の、比較例4との相対比較の形で示す。
【0051】
(比較例4)
実施例3と同様にして準備したシームレスパイプに対して、比較例2の(4)バフ研磨処理、比較例1の(3)電解研磨処理、を順に行った。この後、実施例3と同様にして、単位時間、単位面積当たりの金属溶出量を算出した。浸漬6日間における金属(鉄、ニッケル、マンガン、クロム)の総溶出量を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
表3の結果より、2ヶ月間、シームレスパイプ内に超純水を流すことにより、ステンレス表面から溶出しやすい金属成分を流水中で除去した後であっても、実施例3では、比較例4よりも金属成分の溶出量を低減できていることが分かる。
【符号の説明】
【0054】
1 凸部
2 不純物
3 ステンレス
4 ステンレス表面に溶出した鉄
10 超純水製造装置
11 サブシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレスを超純水製造装置用の構成部材の形状に成形する工程、及び
バフ研磨及び電解研磨を行うことなく、硝酸、フッ酸、塩酸、及び硫酸からなる群から選択された少なくとも一種の酸を含む酸溶液を用いてステンレスを洗浄する工程、によって製造した超純水製造装置用のステンレスを使用した超純水製造装置。
【請求項2】
前記ステンレスを洗浄する工程において、硝酸を含む酸溶液を用いてステンレスを洗浄する、請求項1に記載の超純水製造装置。
【請求項3】
前記超純水製造装置は、通水方向に順に1次純水タンク、紫外線酸化装置、非再生型混床式イオン交換装置、限外濾過膜装置及びユースポイントが配置されたサブシステムを有し、
前記サブシステムのラインにおける構成部材として、前記超純水製造装置用のステンレスを使用する、請求項1又は2に記載の超純水製造装置。
【請求項4】
前記サブシステムにおいて、非再生型混床式イオン交換装置からユースポイントまでのラインにおける構成部材として、前記超純水製造装置用のステンレスを使用する、請求項3に記載の超純水製造装置。
【請求項5】
前記サブシステムにおいて、限外濾過膜装置からユースポイントまでのラインにおける構成部材として、前記超純水製造装置用のステンレスを使用する、請求項3又は4に記載の超純水製造装置。
【請求項6】
ステンレスを超純水製造装置用の構成部材の形状に成形する工程と、
バフ研磨及び電解研磨を行うことなく、硝酸、フッ酸、塩酸、及び硫酸からなる群から選択された少なくとも一種の酸を含む酸溶液を用いてステンレスを洗浄する工程と、
を有する超純水製造装置用のステンレスの製造方法。
【請求項7】
前記ステンレスを洗浄する工程において、硝酸を含む酸溶液を用いてステンレスを洗浄する、請求項6に記載のステンレスの製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のステンレスの製造方法により製造した超純水製造装置用のステンレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224489(P2011−224489A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97743(P2010−97743)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】