説明

超臨界流体処理によるルテニウム副生物の除去

超臨界流体処理技術を使用する有機溶媒中に式(I)
【化1】


(式中、RA、R3、R4、D及びAは本明細書に定義されたとおりである)
の化合物を含む反応混合物からのルテニウム又はルテニウム含有化合物の除去方法。本発明は閉環オレフィン複分解(RCM)反応から生じる反応混合物からルテニウム含有触媒及びルテニウム含有触媒副生物を除去するのに特別な用途を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に超臨界流体処理技術を使用する反応混合物からのルテニウム又はルテニウム含有化合物の除去方法に関する。本発明は閉環オレフィン複分解(RCM)反応から得られる反応混合物からルテニウム含有触媒及びルテニウム含有副生物を除去するのに特別な用途を有する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン複分解反応は有機合成に重要な方法になっていた(例えば、R.H. Grubbs及びS. Chang, Tetrahedron 1998, 54, 4413; D.L. Wright, Curr. Org. Chem., 1999, 3, 211; A. Furstner, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 2000, 39, 3012を参照のこと)。この反応では、2種のアルケンが結合されて夫々の初期のアルケンからの1個の炭素を有する新しいオレフィンを生成する。その反応は金属カルベン触媒の存在下で起こる。
一般に、三つの型のオレフィン複分解反応がある:開環複分解重合、非環式交差複分解及び閉環複分解(RCM)。RCMはジオレフィンから環状化合物を調製するのに有効な手段である(式1)。
【0003】
【化1】

その反応は種々のサイズの環を調製するのに使用でき、それはその分子中のヘテロ原子及び種々の官能基を許容する。オレフィン複分解反応に人気のある接触反応性種として、式2に示されたルテニウムビニリデン錯体の如き前触媒錯体から生成されるルテニウムカルベン及びモリブデンカルベンが挙げられる(グラッブス触媒、G. Fu及びR.H. Grubbs, J. Am. Chem. Soc. 1992, 114, 5426)。
【0004】
【化2】

複雑な有機分子の合成に有益な手段を与えるが、オレフィン複分解反応は幾つかのやっかいな問題を有する。触媒の使用が除去し難い潜在的に望ましくない、高度に着色された副生物の生成をもたらし得る。これらの副生物の存在は医薬品では許されない。しばしば幾つかのクロマトグラフィー工程がこのような副生物を除去するのに必要とされる。更に、不純物が除去されない場合、それらは分解及び二重結合移動を含む更なる問題を生じ得る。
幾つかの技術がルテニウム副生物をオレフィン複分解反応混合物から除去すると報告されていた。一つの技術はルテニウムと配位し、水性抽出による除去を促進する水溶性ホスフィンリガンドを使用する(H.D. Maynard及びR.H. Grubbs, Tetrahedron Letters 1999, 40, 4137)。文献に報告された別の方法はテトラ酢酸鉛と数時間撹拌してルテニウム副生物を酸化し、続いてシリカゲルで濾過することを伴う(L.A. Paquetteら, Org. Lett. 2000, 2, 1259)。第三の方法はトリフェニルホスフィンオキサイド又はDMSOによる粗反応混合物の処理、続いてシリカゲルによるクロマトグラフィー濾過を伴う(Y.M. Ahnら, Org. Lett. 2001, 3, 1411)。シリカゲル及び活性炭による反応混合物の処理、続いてシリカゲルによるクロマトグラフィーが別法に記載されている(J.H. Cho及びB.M. Kim, Org. Lett., 2003, 5, 531)。
しかしながら、上記技術の夫々がそれらを大規模調製又は医薬品に望ましくないようにする欠点を依然として問題としている。それらはまた精製されている所望の反応生成物と化学的に適合性ではないかもしれない新しい、潜在的に毒性の実体を導入する。水溶性リガンドは高価であり、除去される副生物に対し大過剰で使用されることを必要とする。夫々の方法はめんどうであるとともに、処理時間に追加する抽出又はクロマトグラフィー濾過を必要とする。更に、これらの方法はルテニウム触媒を化学的に変性し、これが触媒リサイクルの可能性を複雑化又は排除する。
下記の式(I)の大環状化合物及びそれらの調製方法がTsantrizosらの米国特許第6,608,027B1号、Llinas Brunetらの米国特許出願公開第2003/0224977A1号、2003年10月16日に出願された、Llinas Brunetらの米国特許出願第10/686,755号、2004年9月20日に出願された、Llinas Brunetらの米国特許出願第10/945,518号、2004年4月6日に出願された、Brandenburgらの米国特許出願第10/818,657号及びWO 2004/092203、2004年3月30日に出願された、Samstagらの米国特許出願第10/813,344号、及びWO 2004/089974から知られており、これらの特許の全てが参考として本明細書に含まれる。
【0005】
【化3】

式中、
RAは脱離基又は式IIの基であり、







【0006】
【化4】

WはCH又はNであり、
L0はH、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、ヒドロキシ、又はN(R23)2(式中、夫々のR23は独立にH、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルである)であり、
L1、L2は夫々独立にH、ハロゲン、C1-4アルキル、-O-C1-4アルキル、又は-S-C1-4アルキル(その硫黄はあらゆる酸化された状態である)であり、又は
L0とL1又はL0とL2は共有結合されてそれらが結合されている2個の炭素原子と一緒になって4員、5員又は6員炭素環式環〔互に直接に結合されていない1個又は2個(5員環又は6員環の場合)の-CH2-基が、夫々独立に-O-又はNRa(式中、RaはH又はC1-4アルキルである)により置換されていてもよく、かつ前記環は必要によりC1-4アルキルで一置換又は二置換されていてもよい〕を形成してもよく、
R22はH、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、C2-7アルコキシアルキル、C3-6シクロアルキル、C6もしくはC10アリール又はHetであり、Hetは窒素、酸素及び硫黄から選ばれた1個から4個までのヘテロ原子を含む5員、6員、又は7員飽和又は不飽和複素環であり、
前記シクロアルキル、アリール又はHetはR24で置換されており、
R24はH、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、NO2、N(R25)2、NH-C(O)-R25、又はNH-C(O)-NH-R25(式中、夫々のR25は独立にH、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルである)であり、又は
R24はNH-C(O)-OR26(式中、R26はC1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルである)であり、
R3はヒドロキシ、NH2、又は式-NH-R9(式中、R9はC6又は10アリール、ヘテロアリール、-C(O)-R20、-C(O)-NHR20又は-C(O)OR20であり、R20はC1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルである)の基であり、
Dは必要によりO、S又はN-R27(式中、R27はH、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル又はC(O)R28(式中、R28はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル又はC6又は10アリールである)である)から独立に選ばれた1個〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい5〜10原子の飽和又は不飽和アルキレン鎖であり、
R4はH、又は前記鎖Dのいずれかの炭素原子の位置にある1個から3個までの置換基であり、前記置換基はC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、オキソ、チオ、又はC1-6チオアルキルからなる群から独立に選ばれ、
Aは式-C(O)-NH-R11のアミドであり、式中、R11はC1-8アルキル、C3-6シクロアルキル、C6又は10アリール、C7-16アラルキル、又はSO2R5A(式中、R5AはC1-8アルキル、C3-7シクロアルキル、C1-6アルキル-C3-7シクロアルキルである)からなる群から選ばれ、又は
Aはカルボン酸又はその医薬上許される塩もしくはエステルである。
【0007】
式(I)の化合物はC型肝炎ウイルス(HCV)感染症の治療のための活性薬剤であるとして、又はそこに記載されたような坑HCV剤の調製に有益な中間体として上記特許書類に開示されており、そこではルテニウムをベースとする触媒を使用する非環式ジオレフィンのRCMにより調製される。これらの従来の方法では、環化生成物がカラムクロマトグラフィー又は脱除剤、例えば、トリスヒドロキシメチルホスフィン(THP)の使用により精製されて反応混合物からのルテニウム副生物の除去を行なう。しかしながら、このような方法は上記と同じ欠点を問題とし、それらを大規模調製又は医薬品に望ましくないようにする。
本発明者らは上記欠点を問題としない式(I)の環化生成物からのルテニウム触媒副生物の除去方法を本明細書に記載する。本発明の方法はルテニウム触媒副生物からの式(I)の大環状生成物を分離するための技術として超臨界流体処理を使用する。
超臨界二酸化炭素が或る種のオレフィン複分解反応を行なうための万能の反応媒体として使用されてもよく、閉環オレフィン複分解(RCM)反応の場合には、超臨界二酸化炭素の溶解性特性が選択的超臨界流体抽出により低分子量RCM生成物をルテニウム錯体から単離するのに利用し得ることが報告されていた(Furstnerら, J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 9000; W. Leitner, C.R. Acad. Sci. Paris, Serie IIc, Chimie, 2000, 3, 595; Furstnerら, Angew. Chem., 1997, 109, 2562、及びAngew. Chem. Int. Ed. Engl., 1997, 36, 2466)。しかしながら、低分子量RCM生成物を使用する多くの例が示されているが、このような技術が高分子量RCM生成物、例えば、式(I)の化合物をルテニウム副生物から抽出し、分離するのに有効であることは開示されておらず、また示唆されていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は
(i)既に示された式(I)の化合物、
(ii)有機溶媒、及び
(iii)ルテニウム又はルテニウム含有化合物
を含む混合物からルテニウム又はルテニウム含有化合物を除去するための方法であって、
前記方法が
(1)前記混合物を充分な量の加圧ガス流体に暴露して流体溶液(その中に、式(I)の化合物及び有機溶媒が実質的に可溶性であるが、前記ルテニウム又はルテニウム含有化合物が実質的に不溶性である)を生成し、その結果、ルテニウム又はルテニウム含有化合物の粒子が前記溶液から沈殿し、
(2)流体溶液を低圧領域に導入して前記ガス流体の少なくとも一部を流体溶液から追い出し、かつ式(I)の化合物及び有機溶媒を含む有機溶媒溶液を得、
(3)必要により工程(2)で得られた有機溶媒溶液を工程(1)で前記加圧ガス流体に暴露すべき混合物として使用して工程(1)及び(2)を1回以上繰り返し、そして
(4)必要により式(I)の化合物を有機溶媒溶液から回収することを特徴とするルテニウム又はルテニウム含有化合物の除去方法に関する。
使用される条件に応じて、この方法は式(I)の回収化合物中のルテニウムのレベルを、或る場合には約60ppm以下に有意に減少するのに使用し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
I. 定義
この出願において本明細書に使用される全ての用語は、特にことわらない限り、当業界で知られているようなそれらの通常の意味で理解されるべきである。本件出願に使用される或る用語についてのその他の一層特別な定義が以下に示される。
記載される値に関する“約”という用語は記載される値の±20%、好ましくは±10%、更に好ましくは±5%、更に好ましくは±1%を意味する。“約”という用語が値の範囲に関して使用される場合、“約”という用語はその範囲の夫々の記載される終点を修正することが意図されている。例えば、“約30〜150℃”という表現は“約30℃〜約150℃”に等しい。
“ガス流体”、又は“超臨界流体”は(1)大気条件下でガスであり、かつ適度の臨界温度(即ち、200℃以下)を有する流体もしくは流体の混合物、又は(2)超臨界流体として既に用途があった流体を意味する。ガス流体の例として、約200℃以下の臨界温度及び約689バール以下の臨界圧を有するものが挙げられる。特別な例として、二酸化炭素、亜酸化窒素、トリフルオロメタン、エタン、エチレン、プロパン、六フッ化硫黄、プロピレン、ブタン、イソブタン、ペンタン、及びこれらの混合物が挙げられる。
“処理条件”という用語は本発明の方法が実施される特別な条件を意味する。
例えば、流体溶液中の式(I)の化合物及び有機溶媒の溶解性に関する、“実質的に可溶性”という用語は選ばれた処理条件下で有機溶媒及び式(I)の化合物が流体溶液中で少なくとも約95%、更に好ましくは少なくとも約99%のレベルまで可溶化し得ることを意味する。
例えば、流体溶液中のルテニウム又はルテニウム含有化合物の溶解性に関する、“実質的に不溶性”という用語は、選ばれた処理条件下でルテニウム又はルテニウム含有化合物が流体溶液中で約10重量%以下で可溶性であり、更に好ましくは約5重量%以下で可溶性であり、更に好ましくは約1重量%以下で可溶性であるべきであることを意味する。選ばれた処理条件下でルテニウム又はルテニウム含有化合物は流体溶液中で実質的に完全に不溶性であることが好ましい。
下記の化学薬品がこれらの略号により表し得る。
【0010】

【0011】
II. 方法の工程
工程1:ガス流体への混合物の暴露
この最初の工程では、式(I)の大環状化合物、ルテニウム又はルテニウム含有化合物及び有機溶媒を含む混合物が加圧ガス流体に暴露されて流体溶液を生成する。一実施態様において、暴露すべき混合物は有機溶媒に溶解された相当する非環式ジエン化合物の閉環オレフィン複分解(RCM)反応(ルテニウムをベースとする触媒により触媒作用される)から得られた反応混合物である。このRCM反応は一般に有機溶媒に溶解された大環状の式(I)の化合物、ルテニウム触媒及びルテニウム触媒副生物を含む反応混合物をもたらす。この実施態様において、加圧ガス流体に暴露されて超臨界流体抽出並びにルテニウム及びルテニウム含有触媒並びに触媒副生物からの有機溶媒に溶解された式(I)の大環状生成物の分離を行ない得るのはこのRCM反応混合物である。この抽出は適当な処理条件下で得られる流体溶液中の式(I)の大環状化合物、有機溶媒、ルテニウム及びルテニウム含有触媒並びに触媒副生物の差別的な溶解性のために可能である。
一般に、反応混合物は充分な量の加圧ガス流体に暴露され、その結果、式(I)の化合物及び有機溶媒が実質的に可溶性であるが、ルテニウム又はルテニウム含有化合物が実質的に不溶性である流体溶液が生成され、その結果、式(I)の化合物が溶液中に実質的に留まり、一方、ルテニウム及びルテニウム化合物が流体溶液から沈殿し、こうして所望の分離を行なう。使用されるガス流体の量は得られる流体溶液をルテニウム化合物で飽和させて、溶液からのルテニウム化合物の沈殿をもたらすのに充分であるべきである。あらゆる特別な場合に使用すべきガス流体の型及び量並びに処理条件は本明細書に示された記載及び例並びに既知の技術を参考にして超臨界流体処理技術の分野の当業者により容易に決められる。
【0012】
特別な実施態様において、混合物が(a)ガス流体を混合物を含む容器に導入し(一般にバッチ型方法)、又は(b)例えば、混合物をガス流体を含む溶液に注入することにより、混合物をガス流体を含む容器に導入すること(一般に連続処理に使用される)により加圧ガス流体に暴露し得る。加圧ガス流体を混合物を含む容器に導入する場合、ガスアンチソルベント再結晶(GAS)処理のために当業界で普通に使用される通常の条件(即ち、温度、圧力、流体流量、沈殿容器、ノズル変化等)のいずれかが使用し得る。混合物を加圧ガス流体を含む容器に導入する場合、超臨界流体アンチソルベント(SAS)処理のために当業界で普通に使用される通常の条件(即ち、温度、圧力、流体流量、沈殿容器、ノズル変化等)のいずれかが使用し得る。本発明に適し得るこのような技術の記載について、Saimらの米国特許出願公開第2003/0066800A1号(参考として本明細書に含まれる)を参照のこと。本明細書に記載された処理条件は勿論本発明の方法で所望の最適性能を得るために広範囲にわたって当業者により調節し得る。
連続処理では、混合物が典型的には、例えば、式(I)の化合物及び有機溶媒の抽出並びにルテニウム含有化合物の沈殿を行なうのに適した圧力レベルで加圧ガス流体を含む容器への適当な流量の混合物の連続注入により加圧ガス流体を含む容器に導入される。典型的には、適当な相対的流量の容器への混合物及びガス流体の両方の同時かつ連続の流れがある。混合物モル流量対ガス流体モル流量の比は好ましくは約0.001〜0.2の範囲、更に好ましくは約0.01〜0.05の範囲である。圧力、温度、ガス流体モル流量及び混合物モル流量は沈殿容器中の流体溶液が均一であるようなものであることが好ましい。混合物が沈殿容器に導入し得るノズルは、例えば、オリフィスノズル、キャピラリーノズル、超音波ノズル、又は同軸ノズル、例えば、既に説明されたSEDS方法に使用される型であってもよい。混合物はまた規則的フローライン又は噴霧能を有しないオリフィスにより導入されてもよい。
【0013】
本発明の方法に使用されるガス流体として、例えば、通常の超臨界流体方法に普通に使用されるあらゆるガス流体が挙げられる。使用し得るガス流体の例として、約200℃以下の臨界温度及び約689バール以下の臨界圧を有するものが挙げられる。特別な例として、二酸化炭素、亜酸化窒素、トリフルオロメタン、エタン、エチレン、プロパン、六フッ化硫黄、プロピレン、ブタン、イソブタン、ペンタン、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましいガス流体は二酸化炭素である。
暴露工程に好ましいプロセス条件は以下のとおりである。暴露が好ましくはガス流体の臨界温度(単位:ケルビン度)の約0.8〜2.0倍の範囲の温度、及びガス流体の臨界圧の約0.5〜30倍の範囲の圧力、更に好ましくはガス流体の臨界温度(単位:ケルビン度)の約1.0〜1.1倍の範囲の温度、及びガス流体の臨界圧の約1〜10倍の範囲の圧力で行なわれる。
特別な実施態様において、ガス流体が二酸化炭素であり、暴露工程が約30〜150℃の温度及び約74〜500バールの圧力で行なわれる。
ガス流体への混合物の暴露から得られる最終流体溶液は高レベルのガス流体を含むことが望ましい。得られる流体溶液中のガス流体の量は好ましくは約50〜99.9%、更に好ましくは約80〜99.9%の範囲である。
【0014】
別の実施態様において、暴露工程がルテニウム又はルテニウム含有化合物の沈殿粒子を保持することができる担体材料の床の存在下で行なわれてもよく、これは抽出された式(I)の化合物中のルテニウム又はルテニウム化合物の量を更に減少するのに有効であるかもしれない。本発明の方法に使用される担体材料はルテニウム又はルテニウム含有化合物の沈殿粒子を保持するのに有効であるあらゆる材料から選ばれる。使用し得る担体の例として、ラクトース(その水和形態を含む)、デキストロース、蔗糖、澱粉、ポリエチレングリコール、PVP、ポリビニルアルコール、レシチン、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩化ナトリウム及びケイソウ土が挙げられる。担体材料の床は、例えば、一つ以上の回転混合装置を使用して床を撹拌することにより混合状態で維持されることが好ましい。50〜3,000RPMの範囲の速度が好ましい。
使用し得る有機溶媒は式(I)の化合物が実質的に可溶性であり、かつそれ自体が選ばれた処理条件下でガス流体及び得られる流体溶液に実質的に可溶性であるあらゆる有機溶媒である。一実施態様において、この有機溶媒は先に説明されたように式(I)の大環状化合物を調製するためにRCM反応に使用される有機溶媒であってもよい。使用し得る有機溶媒の例として、トルエン、ジクロロメタン、THF、ジオキサン、酢酸エチル、tert-ブチルアセテート、メチル-tert-ブチルエーテル、メタノール、水、及びこれらの混合物が挙げられる。
抽出すべき混合物中に存在するルテニウム又はルテニウム含有化合物は典型的にはRCM反応に使用されるルテニウム触媒及びRCM反応から得られる反応混合物中のあらゆるルテニウム含有副生物である。
【0015】
工程2:ガス流体ガス抜き
流体溶液からのルテニウム又はルテニウム含有化合物の沈殿後に、流体溶液が低圧領域に導入されてガス流体の少なくとも一部をその溶液から追い出し、有機溶媒中に式(I)の化合物を含む有機溶媒溶液をもたらす。流体溶液が沈殿容器から流出し、次いで減圧レベルで膨張されてガス流体を有機溶媒溶液から分離する。有機溶媒溶液が冷トラップ中で回収でき、ガス流体がガス抜きされ、又はそのプロセスに循環される。典型的には、低圧領域中の圧力はほぼ大気圧である。
工程3:任意のプロセス循環
必要により、ガス流体への混合物の暴露及びガス流体ガス抜きの最初の二つの工程が最初のガス抜き工程後に得られた有機溶媒溶液をガス流体に再度暴露すべき混合物として使用して1回以上繰り返されてもよい。この循環は式(I)の生成物中のルテニウム含量を更に減少するのに有益であるかもしれない。一実施態様において、その操作が1回又は2回繰り返し得る。
工程4:式(I)の化合物の任意の回収
必要により、減少されたルテニウム含量を有する式(I)の化合物が、例えば、通常の技術を使用する蒸留又は沈殿により有機溶媒溶液から回収されてもよい。次いで回収された式(I)の化合物が、背景技術に先に引用された多くの特許書類から理解されるように、坑HCV医薬組成物の調製のために製剤化でき、又は坑HCV剤を調製するための中間体として使用し得る。
本発明の方法が回収された式(I)の化合物中のルテニウムのレベルを更に医薬処理に許されるレベルまで有意に減少することを示した。特別な実施態様において、回収された式(I)中のルテニウムのレベルが約10000ppm以下、好ましくは約1000ppm以下、好ましくは約300ppm以下、好ましくは約100ppm以下、好ましくは約60ppm以下である。本明細書に記載された処理条件は当業者により調節されて本発明の方法で可能な所望の最適性能及び減少されたルテニウムレベルを得ることができる。
III. 式(I)の化合物
式(I)の化合物の付加的な更に特別な実施態様は下記のものを含む。
III.A.
RAがOH、O-PG(式中、PGは保護基である)、又は-OSO2-R27(式中、R27はp-トリル、p-ブロモフェニル、p-ニトロフェニル、メチル、トリフルオロメチル、ペルフルオロブチル及び2,2,2-トリフルオロエチルから選ばれる)から選ばれた脱離基であり、又は
RAが式IIの基であり、かつ
WがNであり、
L0がH、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、クロロであり、
L1及びL2が夫々独立にH、ハロゲン又はC1-4アルキルであり、
R22がH、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ、フェニル又は
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、R24はH、C1-6アルキル、NH-R25、NH-C(O)-R25、NH-C(O)-NH-R25(式中、夫々のR25は独立にH、C1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキルである)、又はNH-C(O)-OR26(式中、R26はC1-6アルキルである)である)
からなる群から選ばれたHetであり、
R3がNH-C(O)-OR20(式中、R20はC1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキルである)であり、
Dが必要によりO、S又はN-R28(式中、R28はH、C1-6アルキル又はC2-7アシルである)から独立に選ばれた1個又は2個のヘテロ原子を含んでもよい6〜8原子の飽和又は不飽和アルキレン鎖であり、
R4がH又はC1-6アルキルであり、かつ
Aがカルボン酸又はその医薬上許される塩もしくはエステルである。
III.B.
RAがOH及び-OSO2-R27(式中、R27はp-トリル、p-ブロモフェニル、p-ニトロフェニル、メチル、トリフルオロメチル、ペルフルオロブチル及び2,2,2-トリフルオロエチルから選ばれる)から選ばれた脱離基であり、
R3がNH-C(O)-OR20(式中、R20はブチル、シクロブチル又はシクロペンチルである)であり、
R4がH又はC1-6アルキルであり、
Dが7原子の、飽和又は不飽和、全炭素アルキレン鎖であり、
Aがカルボン酸又はその医薬上許される塩もしくはエステルである。
【0018】
III.C.
RAが-OSO2-R27(式中、R27はp-ブロモフェニルである)であり、
R3がNH-C(O)-OR20(式中、R20はシクロペンチルである)であり、
R4がHであり、
Dが13位、14位に1個のシス二重結合を含む7原子の全炭素鎖であり、かつRBが下記の式の部分であり、その14位のシクロプロピル結合がエステル基に対しsynである。
【0019】
【化6】

IV. 式(I)の化合物の合成方法
式(I)の化合物は先の背景技術の節に引用された多くの特許書類に記載された方法及び/又は以下に示される方法により調製されてもよい。式(I)の化合物はルテニウムをベースとする触媒の存在下で閉環オレフィン複分解(RCM)反応により調製されることが好ましい。
下記の合成スキームにおいて、特に明記されない限り、化学式中の全ての置換基は式(I)と同じ意味を有するべきである。以下に記載される合成スキームに使用される反応体は本明細書に記載されるように得られてもよく、又は本明細書に記載されない場合には、それら自体が市販され、又は当業界で知られている方法により市販の物質から調製されてもよい。例えば、或る種の出発物質が国際特許出願WO 00/09543及びWO 00/09558、米国特許第6,323,180B1号並びに米国特許第6,608,027B1号に記載された方法により得られてもよい。
最適反応条件及び反応時間は使用される特別な反応体に応じて変化してもよい。特に明記されない限り、溶媒、温度、圧力、及びその他の反応条件は当業者により容易に選択されてもよい。特別な操作が合成実施例の節に示される。典型的には、反応進行が所望により高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により監視されてもよく、中間体及び生成物がシリカゲルによるクロマトグラフィー及び/又は再結晶により精製されてもよい。
特別な実施態様において、以下に示された式Iの化合物



【0020】
【化7】

が式II
【0021】
【化8】

(式中、RA、R3、R4、D及びAは先に定義されたとおりである)
のジエン化合物をルテニウム触媒の存在下で複分解環化反応にかけ、Aが得られる式(I)の化合物中でカルボン酸エステル基である場合には、必要により式(I)の化合物を加水分解条件に暴露してAがカルボン酸基である式(I)の化合物を得、Aが得られる式(I)の化合物中でカルボン酸基である場合には、必要によりこの化合物をTBTU又はHATUの如き好適なカップリング剤の存在下で式R5ASO2NH2のスルホンアミドとカップリングしてAが-C(O)-NH-SO2R5Aである式(I)の化合物を得ることにより調製されてもよい。
複分解環化工程に適したルテニウム触媒として、式IV、V、VI、VII又はVIIIの化合物を含む、RCM反応に有益な公知のルテニウム触媒のいずれもが挙げられる。









【0022】
【化9】

【0023】
(式中、
X1及びX2は夫々独立に陰イオンリガンドを表し、
L1はルテニウム原子に結合され、必要によりフェニル基に結合されていてもよい中性電子ドナーリガンドを表し、かつ
L2はルテニウム原子に結合されている中性電子ドナーリガンドを表し、かつ
R5はベンゼン環の一つ以上の置換基から選ばれ、夫々の置換基は水素、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、HS-C1-6アルキル、HO-C1-6アルキル、ペルフルオロC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、イミノ、オキソ、チオ又はアリールから独立に選ばれ、また
X2及びL2は必要により一緒になって錯生成2座リガンドを形成してもよい)
更に特別な実施態様において、ルテニウム触媒が式(IV-A)又は(IV-B)の化合物である。
【0024】
【化10】

〔式中、
L1は式PR3(式中、RはC1-6アルキル及びC3-8シクロアルキルから選ばれる)の三置換ホスフィン基であり、
L2は式PR3(式中、RはC1-6アルキル及びC3-8シクロアルキルから選ばれる)の三置換ホスフィン基であり、又は
L2は式AもしくはBの基であり、
【0025】
【化11】

式中、
R7及びR8は夫々独立に水素原子又はC1-6アルキル基、C2-6アルケニル、C6-12アリール基又はC6-12アリール-C1-6アルキル基を表し、かつ
R9及びR10は夫々独立に水素原子又はC1-6アルキル基、C2-6アルケニル、C6-12アリール基又はC6-12アリール-C1-6アルキル基(夫々必要により水素、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、HS-C1-6アルキル、HO-C1-6アルキル、ペルフルオロC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、イミノ、オキソ、チオ又はアリールから選ばれた1個、2個又は3個の基により置換されていてもよい)を表し、
X1及びX2は夫々独立にハロゲン原子を表し、
R5は水素又はニトロを表し、かつ
R6はC1-6アルキル基を表す〕
別の更に特別な実施態様において、ルテニウム触媒が下記の触媒から選ばれる。























【0026】
【化12】

【0027】
(式中、Phはフェニルであり、かつMesは2,4,6-トリメチルフェニルである)
複分解環化工程に有益なルテニウムをベースとする触媒、例えば、先に示されたものは既知の合成技術により得られてもよい全ての既知の触媒である。例えば、このようなルテニウムをベースとする触媒の例について、先の背景技術の節に引用された文献だけでなく、下記の文献を参照のこと。
Organometallics 2002, 21, 671; 1999, 18, 5416;及び1998, 17, 2758;
J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 6543; 1999, 121, 791; 1999, 121, 2674; 2002, 124, 4954; 1998, 120, 2484; 1997, 119, 3887; 1996, 118, 100;及び1996, 118, 9606
J. Org. Chem. 1998, 63, 9904;及び1999, 64, 7202;
Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1998, 37, 2685; 1995, 34, 2038; 2000, 39, 3012及び2002, 41, 4038;
米国特許第5,811,515号;同第6,306,987B1号;及び同第6,608,027B1号。
複分解反応は希釈剤としての有機溶媒の存在下で約40℃から約120℃まで、好ましくは約60℃から約100℃までの範囲の温度、特に約80℃で行なわれてもよい。好ましい実施態様において、有機溶媒がアルカン、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン又はn-ヘプタン、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレン、及び塩素化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン又はジクロロエタンから選ばれる。
別の好ましい実施態様において、式IIのジエン化合物対触媒のモル比が1000:1から100:1まで、好ましくは500:1から110:1まで、特に250:1から150:1までの範囲である。
別の好ましい実施態様において、方法が1:400(重量基準)から1:25(重量基準)まで、好ましくは1:200(重量基準)から1:50(重量基準)まで、特に1:150(重量基準)から1:75(重量基準)までの範囲の式IIのジエン化合物対希釈剤の比で行なわれる。
別の特別な実施態様において、下記の式IA:
【0028】
【化13】

(式中、R3、R4、R27、A及びDは式Iについて示された意味を有する)
の化合物がルテニウム触媒の存在下で式IIA:
【0029】
【化14】

(式中、R3、R4、R27、D及びAは先に定義されたとおりである)
のジエン化合物を大環化することにより調製されてもよい。
大環状化合物IAへのジエン化合物IIAの複分解変換に適した条件及び触媒として、大環状化合物Iへのジエン化合物IIの複分解変換について既に示されたものが挙げられる。
出発物質として使用される式(II)のジエン化合物は米国特許第6,608,027B1号に記載された技術を使用して市販の物質から得られてもよい。
出発物質として使用される式(IIA)のジエン化合物は下記の工程(i)、(ii)及び(iii)に記載される技術を使用して市販の物質から得られてもよい。
工程(i)
この工程は式(1):
【0030】
【化15】

の化合物の調製方法に関するものであり、前記方法は式(2)の化合物、又はその塩を式(3)の化合物と反応させることを含む。
【0031】
【化16】

式(2)の化合物と式(3)の化合物の間のペプチドカップリングは通常のペプチドカップリング試薬、例えば、DCC、EDC、TBTU、HBTU、HATU、DMTMM、HOBT、又はHOATを非プロトン性溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、DMF、NMP、DMSO中で使用して当業界で知られている種々の条件下で得られる。
特別な実施態様において、式(2)の化合物がそのメシレート塩の形態で使用される。
出発物質として使用される、式(2)の環状ラクトンは下記の一般スキームに概説されるように通常の技術を使用して式(4)の市販の4-ヒドロキシプロリン化合物から得られる。
















【0032】
【化17】

【0033】
第一工程では、適当なアミノ保護基が通常の操作を使用して式(4)の4-ヒドロキシプロリン化合物の環窒素原子に導入される。例えば、式(4)の化合物が好適な溶媒に溶解され、適当なアミノ保護基導入試薬と反応させられてもよい。例えば、その範囲を限定することを意図しないが、Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)が所望の保護基である場合、化合物(4)が溶媒混合物、例えば、アセトン/水、MIBK/水、THF/水(これらに塩基、例えば、NaOH、KOH、LiOH、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、又はN-メチル-ピロリジンが添加されている)中で酸無水物Boc2O(又はBoc-ON)と反応させられ、その反応が20-60℃の温度で行なわれる。
第二工程では、式(5)の保護された4-ヒドロキシプロリン化合物が好適な溶媒中で適当な環化試薬との反応により式(6)の環状ラクトン化合物に変換される。一実施態様において、式(5)の化合物のOH官能基が最初に非プロトン性溶媒(例えば、THF、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、又はメチルイソブチルケトン)中で三級アミン塩基(例えば、N-メチル-ピロリジン、ジイソプロピルエチルアミン又はトリエチルアミン)の存在下で酸塩化物(例えば、メタンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリド、又はトリフルオロメタンスルホニルクロリド)と反応させられて好適な脱離基を有する化合物にし、続いて三級アミン塩基の存在下で極性非プロトン性溶媒(例えば、ジオキサン)中で得られた化合物を環化して式(6)の所望の環状ラクトンを得る。
第三工程では、式(6)の環状ラクトン化合物が、例えば、式(6)の化合物を好適な溶媒中で酸、例えば、p-トルエンスルホン酸、HCl、HBr、HI、HF、H2SO4、H3PO4、メタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸の存在下で加熱することにより通常の脱保護技術を使用して脱保護されて式(2)の化合物を得る。
式(2)の化合物は必要により適当な酸との反応により塩形態に変換されてもよい。式(4)の適当な4-ヒドロキシプロリン化合物から出発する式(2)の化合物のメシレート塩の調製の特別な例が下記の合成実施例の節に見られる。
出発物質として使用される式(3)の置換酸化合物は米国特許第6,608,027B1号に記載された技術を使用して市販の物質から得られてもよい。
工程(ii)
工程(ii)は式(7):
【0034】
【化18】

の化合物の調製方法に関するものであり、前記方法は式(1)の化合物を式(8)の化合物と反応させることを含む。
【0035】
【化19】

好適な溶媒(例えば、水、トルエン、ピリジン、トルエン/THFの如き好適な溶媒混合物又は水/トルエンの如き好適な2相の溶媒系)中の式(1)の化合物、式(8)の化合物及び好適な塩基、例えば、ナトリウム2-エチルヘキサノエート(SEH)の混合物が反応の完結まで約20℃から約80℃までの温度で撹拌される。処理のために、有機層が洗浄され、生成物が溶媒を除去した後に単離されてもよい。
出発物質として使用される式(8)の化合物は国際特許出願WO 00/09543、WO 00/09558、米国特許第6,323,180B1号及び米国特許第6,608,027B1号に記載された技術を使用して市販の物質から得られてもよい。
工程(iii)
工程(iii)は式(IIA):



【0036】
【化20】

の化合物の調製方法に関するものであり、前記方法は式(7)の化合物を式(9)の化合物と反応させることを含む。
【0037】
【化21】

(式中、Xは好適な脱離基を表し、かつR27はp-トリル、p-ブロモフェニル、p-ニトロフェニル、メチル、トリフルオロメチル、ペルフルオロブチル及び2,2,2-トリフルオロエチルから選ばれる)
有機溶媒(例えば、エーテル、ジクロロメタン、クロロホルム又はトルエン)中の式(7)の混合物及び有機塩基(例えば、DABCO、トリエチルアミン、1-メチルピロリジン又はピリジン)の混合物に、式(9)の化合物の溶液が添加され、得られる混合物が反応の完結まで周囲温度(15-25℃)で撹拌される。
下記のスキームは非環式中間体から式1hの主要化合物を調製するための既知の方法を使用する別法を示す。
スキーム1





【0038】
【化22】

スキームI:
工程A、C、D:簡単に言えば、P1部分、P2部分、及びP3部分が一般にWO 00/09543&WO 00/09558に開示された公知のペプチドカップリング技術により結合し得る。
工程B:この工程は4-ヒドロキシ置換基の配置の反転を伴う。これが当業者に認められるように達成し得る幾つかの方法がある。都合の良い方法の一例は公知のミツノブ反応(Mitsunobu Synthesis 1981, 1月, 1-28; Ranoら, Tet. Lett. 1994, 36, 3779-3792; Krchnakら, Tet. Lett. 1995, 36, 6193-6196)である。
工程E:大環状化合物の生成はルテニウムをベースとする触媒、例えば、大環状化合物Iへのジエン化合物IIの複分解変換について既に示されたものを使用してオレフィン複分解により行ない得る。
工程F:好適な脱離基(即ち、ブロシレート)へのプロリンのヒドロキシル基の変換は遊離OHを相当するハロ誘導体(即ち、4-ブロモベンゼンスルホニルクロリド)と反応させることにより行なわれた。
式Iのその他の化合物への式1hの主要化合物のその後の変換が以下の実施例に詳しく記載される。
一実施態様において、上記式IAの環化化合物は下記の順序を使用してRAが式IIの基である式Iのその他の化合物(即ち、下記の式IBの化合物)を調製するのに使用し得る。
【0039】
【化23】

その方法は式(IA)の大環状化合物を式(X)の化合物と反応させることを含む。
【0040】
【化24】

Aが得られる式(IB)の化合物中でカルボン酸エステル基である場合、必要により式(IB)の化合物を加水分解条件に暴露してAがカルボン酸基である式(IB)の化合物を得てもよく、またAが得られる式(IB)の化合物中でカルボン酸基である場合、必要によりこの化合物を好適なカップリング剤、例えば、TBTU又はHATUの存在下で式R11ASO2NH2のスルホンアミドとカップリングしてAが-C(O)-NH-SO2R11Aである式(IB)の化合物を得てもよい。
式(IA)の化合物と式(X)の化合物が反応の完結まで無機又は有機塩基(例えば、炭酸セシウム、又はDBU)の存在下で40℃〜100℃で極性非プロトン性有機溶媒(例えば、THF、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、又はメチルイソブチルケトン)中で混合される。水性処理、続いて好適な溶媒、例えば、酢酸エチル-ヘプタン又は酢酸エチル/メチルシクロヘキサンからの結晶化が式(IB)の化合物を与える。
Aが式(IB)中のカルボン酸エステル基である場合、式(IB)のエステル化化合物が必要により加水分解条件に暴露されて相当する遊離カルボン酸化合物を得てもよい。加水分解は当業界で知られている通常の加水分解条件を使用して行ない得る。
出発物質として使用される式(X)の化合物は国際特許出願WO 00/09543、WO 00/09558、米国特許第6,323,180B1号及び米国特許第6,608,027B1号に開示された技術を使用して市販の物質から得られてもよい。
式Iの化合物は環化生成物を生成するRCM反応工程後又はその他の化合物への環化生成物の更なる変換後に次の工程として本発明の方法にかけられる。例えば、環化化合物IAを含む反応生成物が式IAを生成するための化合物IIAのRCM後に本発明の方法にかけられ、かつ/又は反応生成物IBが先に示された化合物IBへの化合物IAの更なる変換後に本発明の方法にかけられる。
V. 方法の更に特別な実施態様
下記の実施態様は本発明の方法の付加的な特別な実施態様である。
(i)下記の式Iの化合物
【0041】
【化25】

〔式中、
RAは-OSO2-R22(式中、R22はp-ブロモフェニルである)であり、
R3はNH-C(O)-OR20(式中、R20はシクロペンチルである)であり、
R4はHであり、
Dは13位、14位に1個のシス二重結合を含む7原子の全炭素鎖であり、かつRBは下記の式の部分であり、その14位のシクロプロピル結合はエステル基に対しsynである



【0042】
【化26】

〕、
(ii)有機溶媒、及び
(iii)ルテニウム又はルテニウム含有化合物
を含む混合物からルテニウム又はルテニウム含有化合物を除去するための方法であって、
前記方法が
(1)前記混合物を約30〜150℃の温度及び約74〜500バールの圧力で加圧二酸化炭素に暴露して二酸化炭素、式(I)の化合物及び有機溶媒を含む溶液を生成し、その結果、ルテニウム又はルテニウム含有化合物の粒子が前記溶液から沈殿し、
(2)その溶液を低圧領域に導入して二酸化炭素の少なくとも一部を溶液から追い出し、かつ式(I)の化合物及び有機溶媒を含む有機溶媒溶液を得、
(3)必要により工程(2)で得られた有機溶媒溶液を工程(1)で前記加圧二酸化炭素に暴露すべき混合物として使用して工程(1)及び(2)を1回以上繰り返し、そして
(4)必要により式(I)の化合物を有機溶媒溶液から回収することを特徴とするルテニウム又はルテニウム含有化合物の除去方法。
混合物を加圧二酸化炭素を含む容器に注入することにより混合物を加圧二酸化炭素に暴露し、得られる溶液中の二酸化炭素の量が約80〜99%の範囲である、先に示された方法。
回収された式(I)の化合物中のルテニウムのレベルが約1000ppm以下、例えば、約300ppm以下、例えば、約100ppm以下、例えば、約60ppm以下である、先に示された方法。
下記の実施例は本発明の種々の局面を示す技術を示す。しかしながら、これらの実施例は説明のみのために示され、その中のいずれもが本発明の全範囲の限定と解されるべきではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0043】
実施例1:ブロシル化ジエン中間体1の調製
【0044】
【化27】

工程1:Boc保護基の導入;(2)の合成
【0045】
【化28】

アミノ保護をBoc保護基で行なった。(1)(トランス-4-ヒドロキシL-プロリン)(249.8g、1.905モル)を水(375ml)及び45%の水酸化ナトリウム溶液(203g、2.286モル)に溶解した。良好な相移動を確実にするために、tert-ブタノール(106g)を添加した。異なる操作では、THF/tert-ブタノールに代えてアセトンを使用した。その反応混合物を50℃に加熱し、酸無水物Boc2O(424g、1.943モル)をTHF(425ml、又はアセトン)に溶解し、徐々に添加する。その反応は発熱性であり、Boc2Oを添加した際にガス(CO2)を発生する。その反応が望まれるように進行しない場合、触媒量のDMAP(2.3g、19ミリモル)を添加することができる。Boc2Oの添加後に、反応混合物を1/2-1時間にわたって50℃に保ち、THFを部分蒸留により除去した。残っている溶液のpHを濃HCl(204g、2.076モル)で約pH3に調節し、次いで生成物をMIBK(1リットル)そして再度MIBK(375ml)で抽出した。有機層を加熱し、溶媒の一部を蒸留して除いて痕跡の水を除去した。MCH(1.25リットル)を添加することにより生成物をこの溶液から結晶化し、濾過により単離し、MCH(375ml)で2回洗浄し、40℃で一夜乾燥させた。
収率:77-78%、無色の結晶、Fp=126-128℃。
工程2:ラクトンの生成;(3)の合成
【0046】
【化29】

(2)(416.3g、1.8モル)をTHF(2.08リットル)に溶解し、氷で約-5℃〜約-10℃の温度に冷却する。メシルクロリド(392g、3.4モル)及びN-メチルピロリジン(429g、5モル)を添加し、その混合物を約1.5時間にわたって約-5℃で撹拌する。その混合物を水洗し、還流まで加熱する。ジオキサン(2.08リットル)を注入し、THFを蒸留して除く。室温に冷却した後、DIPEA(233g、1.8モル)を添加し、その混合物を加熱、還流する。1時間後に、溶媒の一部(830ml)を蒸留して除き、周囲温度に冷却し、KHSO4溶液(水2.08リットル中14.4g)を注入し、その溶液を室温に冷却する。得られる結晶を濾過により単離し、水洗し、45℃で一夜乾燥させる。
収率:78-82℃、無色の針状体、Fp=111℃。
工程3:ラクトンの脱保護;(4)の合成
【0047】
【化30】

ラクトン(3)(267g、1.25モル)をメチル-イソブチルケトン(1467ml)に溶解する。ラクトンが完全に溶解されるまで、その懸濁液を50℃まで加熱し、溶媒の一部(130ml)を蒸留して除いて痕跡の水を除去する。メタンスルホン酸(240g、2.5モル)をその反応混合物に徐々に添加する。その添加中に、ガスが発生される(CO2、イソブテン)。その反応混合物を室温に冷却し、得られる結晶を濾過により単離し、アセトン(夫々400ml)で2回洗浄し、40℃で一夜乾燥させる。
収率:93-98%、無色の結晶、208-210℃。
工程4:(5)とのカップリング;ジペプチド(6)の合成
【0048】
【化31】

化合物(5)は必要によりそれをその化合物の塩形態から放出することにより得られてもよい。例えば、DCHA塩形態が使用される場合、(5)・DCHA(61.4g、132ミリモル)をトルエン(160ml)に溶解し、得られる溶液を希硫酸(水80ml中5.3g)及び水(80ml)で洗浄する。相分離後、その溶液を木炭で処理し、濾過し、得られる溶液を室温で貯蔵する。
脱保護されたラクトン(4)(24.9g、119ミリモル)及びEDC・HCl(26.8g、140ミリモル)をジクロロメタン(140ml)中で懸濁させ、室温に冷却する。その懸濁液を先に生成された(5)溶液で処理する。この懸濁液に、ジ-イソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基、16.3g、130ミリモル)を徐々に添加し、その間に反応液を窒素雰囲気下で20℃以下の温度に保つ。懸濁液を濾過し、得られる溶液を水(80ml)、希酢酸(水80ml中1.3g)、5%の重炭酸ナトリウム溶液(80ml)で洗浄し、再度水(80ml)で洗浄する。相分離後、ジクロロメタンを減圧で蒸留して除く。得られる溶液を次の工程に直接使用することができる。そうでなければ、生成物をMCHからの結晶化により単離することができる。
収率:95%(GC)、黄色の溶液、Fp=58-60℃。
工程5:(8)の合成
【0049】
【化32】

水(43ml)及びトルエン(12ml)中の(6)(10.0g、23.7ミリモル、1.0当量)、(7)(7.6g、24.2ミリモル、1.02当量)及びナトリウム2-エチルヘキサノエート(SEH)(5.9g、35.6ミリモル、1.5当量)の混合物を80℃で2時間撹拌する。処理のために、トルエン(75ml)を80℃で添加する。撹拌そして水層の分離後に、有機層を1MのNa2CO3(3x30ml)、0.5MのHCl(30ml)及び水(2x30ml)で洗浄する。溶媒を真空で除去する。
(8)の収量:11.7g、22.5ミリモル、95%;純度:わずかに黄色の油として>95%(ピーク面積HPLC)。
工程6:(8)のブロシル化;1の合成
【0050】
【化33】

(8)(10.7g、18.5ミリモル、1.0当量)及びDABCO(3.3g、29.7ミリモル、1.6当量)並びにトルエン(23ml)の混合物に、トルエン(15ml)中の4-ブロモベンゼンスルホニルクロリド(ブロシルクロリド、6.6g、26.0ミリモル、1.4当量)の溶液を室温で徐々に添加する。その混合物を2時間撹拌する。処理のために、有機層を1MのNa2CO3(2x21ml)で洗浄し、THF(21ml)で希釈し、0.5MのHCl(21ml)及び水(2x21ml)で洗浄する。溶媒を真空で除去する。
(9)の収量:12.3g、16.7ミリモル、90%;純度:わずかにオレンジ色の油として>95%(ピーク面積HPLC)。粗生成物の木炭処理が可能である。
実施例2:RCM反応混合物の単一実施抽出のための操作





【0051】
【化34】

化合物1(g)を0.01Mの濃度でトルエンに溶解し、5モル%のルテニウム触媒2を添加した。その反応液を70℃で24時間撹拌した。次いで得られる反応混合物の一部(81g)を1Lの加圧反応器に入れた。反応器を40℃に加熱し、CO2を導入して96.5バールの圧力を得た。その混合物を約30分間にわたってこれらの条件下で平衡にし、次いで容器出口を慎重に開けて、流出物を約1.5mL/分の速度で不活性管材により収集フラスコ(これは0℃に冷却された)に導いた。ほぼ等しい容積の三つの画分を回収した。有機抽出液を濃縮し、残渣を高真空下で乾燥させて生成物3を無定形固体(三つの画分)として得た。全回収は濃縮された回収物質の質量を基準として約90%であった。三つの画分は殆ど専ら所望の環化生成物3を含んでいた。HPLC(220nM)は所望の生成物の純度が>99%(1%未満の望ましくない二量体又はその他の副生物)であることを示した。比較のために、粗反応混合物のHPLCは所望の生成物の約85%の純度を示した。ICP-MS分析(誘導結合型プラズマ質量分光測定、H.D. Maynard及びR.H. Grubbs, Tetrahedron Lett, 1999, 40, 4137, 文献11を参照のこと)は回収された生成物3中の56ppmのルテニウムのレベルを示した。
反応器中で回収された固体は高度に着色され、環化からの二量体副生物及び触媒副生物とともに殆ど回収された触媒2を含んでいた。回収された触媒混合物を新しい複分解反応に循環し、触媒として良好に機能した(36時間後に約95%の転化率)。
【0052】
実施例3:RCM反応混合物の連続抽出のための操作
超臨界流体抽出のために装備され、セットアップされた加圧反応器(本明細書に参考として含まれる米国特許第6,294,194号を参照のこと)に0.5ミクロンの多孔性フィルターを入口及び出口に装備した。容器を40℃にセットし、CO2を137.9バールの圧力まで仕込み、100mL/分の連続流量を維持した。複分解粗反応混合物(1,000mL;実施例2と同じ操作を使用して得られた)を別の入口により5mL/分で連続的に注入した。流出物を不活性管材により5mL/分の速度で収集フラスコ(0℃に冷却された)に導き、脱気した。合計1,000mLの反応溶液を注入した後、集められた流出物を完全に脱気し、次いで濃縮し、残渣を高真空下で乾燥させた。残渣のHPLC(220nM)は>98%の純度の生成物3を示し、<2%の望ましくない二量体又はその他の副生物が存在した。3の回収は>95%であった。ICP-MS分析は839ppmのRuレベルを示した。
実施例4:添加ラクトースによる連続抽出のための操作
反応器に最初にラクトース(5-10ミクロンの粒子サイズ、注入された反応溶液の重量の10重量%)を仕込んだ以外は、操作を実施例2と同じ様式で繰り返した。反応生成物を実施例2のように単離し、ICP-MS分析は668ppmのRuを実測した。
また、ラクトースに代えてケイソウ土を使用して生成物中のRuの量を減少してもよい。また、その方法の流量を調節することにより生成物中のRuの量を調節してもよい。
実施例5:化合物3の可能なその後の変換
工程1:(12)の合成
【0053】
【化35】

NMP中の(3)(1当量)、Cs2CO3(1当量)、及び(11)(1当量)の混合物を55〜65℃で8時間撹拌する。反応の完結後に、混合物を酢酸エチルで希釈し、2.5%のNaHCO3溶液で洗浄する。有機層をNaHCO3の2.5%の溶液とNMPの混合物で3回抽出する。有機層を木炭で処理し、濾過し、生成物をn-ヘプタン(又はメチルシクロヘキサン)の添加により結晶化する。その懸濁液を5℃に冷却し、沈殿を濾過し、酢酸エチル/n-ヘプタン(又は酢酸エチル/メチルシクロヘキサン)で洗浄し、真空で乾燥させる。
収率:60-70%、白色の結晶。
必要により、生成物を酢酸エチル/メチルシクロヘキサンから再結晶することができる。
工程2:化合物#822(HCVインヒビター化合物)の合成
【0054】
【化36】

(12) 20g(0.025モル)をTHF160mlに溶解し、LiOH・H2O 2.45g(0.0583ミリモル)をその溶液に添加する。水54mlの添加後に、その反応混合物を40-45℃の温度で少なくとも8時間撹拌する。完全転化(HPLC)後に、2相系を20-25℃に冷却する。層の分離(少量の水相が分離される)後に、エタノール54mlを有機層に添加し、そのpHを1M HCl溶液の添加によりpH5.5-5.7に調節する。その混合物を40-45℃に温め、水80mlを少なくとも30分間の期間にわたって添加する(40-45℃)。この操作中に、溶液が濁るようになる。その混合物を40-45℃の温度で更に60分間撹拌する(15分後に生成物が沈殿すべきである)。水更に80mlを少なくとも30分間の期間にわたって40-45℃で添加し、その混合物を同温度で更に60分間撹拌する。その懸濁液を20-25℃に冷却し、この温度で1時間撹拌する。濾過後、沈殿を水20mlにより3回洗浄し、真空で35℃で乾燥させる(N2のわずかな流れ)。
収量:(#822)粗生成物17.7-18.7g(90-95%)
生成物は3〜5%の水を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)下記の式(I)の化合物
【化1】

〔式中、
RAは脱離基又は式IIの基であり、
【化2】

WはCH又はNであり、
L0はH、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、ヒドロキシ、又はN(R23)2(式中、夫々のR23は独立にH、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルである)であり、
L1、L2は夫々独立にH、ハロゲン、C1-4アルキル、-O-C1-4アルキル、又は-S-C1-4アルキル(その硫黄はあらゆる酸化された状態である)であり、又は
L0とL1又はL0とL2は共有結合されてそれらが結合されている2個の炭素原子と一緒になって4員、5員又は6員炭素環式環〔互に直接に結合されていない1個又は2個(5員環又は6員環の場合)の-CH2-基が、夫々独立に-O-又はNRa(式中、RaはH又はC1-4アルキルである)により置換されていてもよく、かつ前記環は必要によりC1-4アルキルで一置換又は二置換されていてもよい〕を形成してもよく、
R22はH、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、C2-7アルコキシアルキル、C3-6シクロアルキル、C6もしくはC10アリール又はHetであり、Hetは窒素、酸素及び硫黄から選ばれた1個から4個までのヘテロ原子を含む5員、6員、又は7員飽和又は不飽和複素環であり、
前記シクロアルキル、アリール又はHetはR24で置換されており、
R24はH、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、NO2、N(R25)2、NH-C(O)-R25、又はNH-C(O)-NH-R25(式中、夫々のR25は独立にH、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルである)であり、又は
R24はNH-C(O)-OR26(式中、R26はC1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルである)であり、
R3はヒドロキシ、NH2、又は式-NH-R9(式中、R9はC6又は10アリール、ヘテロアリール、-C(O)-R20、-C(O)-NHR20又は-C(O)OR20であり、R20はC1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルである)の基であり、
Dは必要によりO、S又はN-R27(式中、R27はH、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル又はC(O)R28(式中、R28はC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル又はC6又は10アリールである)である)から独立に選ばれた1個〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい5〜10原子の飽和又は不飽和アルキレン鎖であり、
R4はH、又は前記鎖Dのいずれかの炭素原子の位置にある1個から3個までの置換基であり、前記置換基はC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、オキソ、チオ、又はC1-6チオアルキルからなる群から独立に選ばれ、
Aは式-C(O)-NH-R11のアミドであり、式中、R11はC1-8アルキル、C3-6シクロアルキル、C6又は10アリール、C7-16アラルキル、又はSO2R5A(式中、R5AはC1-8アルキル、C3-7シクロアルキル又はC1-6アルキル-C3-7シクロアルキルである)からなる群から選ばれ、又は
Aはカルボン酸又はその医薬上許される塩もしくはエステルである〕、
(ii)有機溶媒、及び
(iii)ルテニウム又はルテニウム含有化合物
を含む混合物からルテニウム又はルテニウム含有化合物を除去するための方法であって、
前記方法が
(1)前記混合物を充分な量の加圧ガス流体に暴露して流体溶液(その中に、式(I)の化合物及び有機溶媒が実質的に可溶性であるが、前記ルテニウム又はルテニウム含有化合物が実質的に不溶性である)を生成し、その結果、ルテニウム又はルテニウム含有化合物の粒子が前記溶液から沈殿し、
(2)流体溶液を低圧領域に導入して前記ガス流体の少なくとも一部を流体溶液から追い出し、かつ式(I)の化合物及び有機溶媒を含む有機溶媒溶液を得、
(3)必要により工程(2)で得られた有機溶媒溶液を工程(1)で前記加圧ガス流体に暴露すべき混合物として使用して工程(1)及び(2)を1回以上繰り返し、そして
(4)必要により式(I)の化合物を有機溶媒溶液から回収することを特徴とするルテニウム又はルテニウム含有化合物の除去方法。
【請求項2】
ガス流体が約200℃以下の臨界温度及び約689バール以下の臨界圧を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ガス流体が二酸化炭素、亜酸化窒素、トリフルオロメタン、エタン、エチレン、プロパン、六フッ化硫黄、プロピレン、ブタン、イソブタン、ペンタン、及びこれらの混合物から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ガス流体が二酸化炭素である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
工程(1)をガス流体の臨界温度(単位:ケルビン度)の約0.8〜2.0倍の範囲の温度、及びガス流体の臨界圧の約0.5〜30倍の範囲の圧力で行なう、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程(1)で、(a)ガス流体を混合物を含む容器に導入し、又は(b)混合物をガス流体を含む容器に導入することにより混合物を加圧ガス流体に暴露する、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(1)で、得られる流体溶液中のガス流体の量が約50〜99.9%の範囲である、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程(1)をルテニウム又はルテニウム含有化合物の沈殿粒子を保持することができる担体材料の床の存在下で行なう、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程(2)で得られた有機溶媒溶液を工程(1)で前記加圧ガス流体に暴露すべき混合物として使用して工程(1)及び(2)を1回以上繰り返す、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
RAがOH、O-PG(式中、PGは保護基である)、又はOSO2-R27(式中、R27はp-トリル、p-ブロモフェニル、p-ニトロフェニル、メチル、トリフルオロメチル、ペルフルオロブチル及び2,2,2-トリフルオロエチルから選ばれる)から選ばれた脱離基であり、又は
RAが式IIの基であり、かつ
WがNであり、
L0がH、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、クロロであり、
L1及びL2が夫々独立にH、ハロゲン又はC1-4アルキルであり、
R22がH、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ、フェニル又は
【化3】

(式中、R24はH、C1-6アルキル、NH-R25、NH-C(O)-R25、NH-C(O)-NH-R25(式中、夫々のR25は独立にH、C1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキルである)、又はNH-C(O)-OR26(式中、R26はC1-6アルキルである)である)
からなる群から選ばれたHetであり、
R3がNH-C(O)-OR20(式中、R20はC1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキルである)であり、
Dが必要によりO、S又はN-R28(式中、R28はH、C1-6アルキル又はC2-7アシルである)から独立に選ばれた1個又は2個のヘテロ原子を含んでもよい6〜8原子の飽和又は不飽和アルキレン鎖であり、
R4がH又はC1-6アルキルであり、かつ
Aがカルボン酸又はその医薬上許される塩もしくはエステルである、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
有機溶媒がトルエン、ジクロロメタン、THF、ジオキサン、酢酸エチル、tert-ブチルアセテート、メチル-tert-ブチルエーテル、メタノール、水及びこれらの混合物から選ばれる、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
(i)下記の式Iの化合物
【化4】

〔式中、
RAは-OSO2-R27(式中、R27はp-ブロモフェニルである)であり、
R3はNH-C(O)-OR20(式中、R20はシクロペンチルである)であり、
R4はHであり、
Dは13位、14位に1個のシス二重結合を含む7原子の全炭素鎖であり、かつRBは下記の式の部分であり、その14位のシクロプロピル結合はエステル基に対しsynである
【化5】

〕、
(ii)有機溶媒、及び
(iii)ルテニウム又はルテニウム含有化合物
を含む混合物からルテニウム又はルテニウム含有化合物を除去するための請求項1記載の方法であって、
前記方法が
(1)前記混合物を約30〜150℃の温度及び約74〜500バールの圧力で加圧二酸化炭素に暴露して二酸化炭素、式(I)の化合物及び有機溶媒を含む溶液を生成し、その結果、ルテニウム又はルテニウム含有化合物の粒子が前記溶液から沈殿し、
(2)その溶液を低圧領域に導入して二酸化炭素の少なくとも一部を溶液から追い出し、かつ式(I)の化合物及び有機溶媒を含む有機溶媒溶液を得、
(3)必要により工程(2)で得られた有機溶媒溶液を工程(1)で前記加圧二酸化炭素に暴露すべき混合物として使用して工程(1)及び(2)を1回以上繰り返し、そして
(4)必要により式(I)の化合物を有機溶媒溶液から回収することを特徴とするルテニウム又はルテニウム含有化合物の除去方法。
【請求項13】
混合物を加圧二酸化炭素を含む容器に注入することにより混合物を加圧二酸化炭素に暴露し、得られる溶液中の二酸化炭素の量が約80〜99%の範囲である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
回収された式(I)の化合物中のルテニウムのレベルが約10000ppm以下である、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
回収された式(I)の化合物中のルテニウムのレベルが約1000ppm以下である、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
回収された式(I)の化合物中のルテニウムのレベルが約300ppm以下である、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
回収された式(I)の化合物中のルテニウムのレベルが約100ppm以下である、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
回収された式(I)の化合物中のルテニウムのレベルが約60ppm以下である、請求項1から17のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2007−513200(P2007−513200A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543903(P2006−543903)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/040627
【国際公開番号】WO2005/056182
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】