超薄膜を分離するガラス改質応力波及びナノエレクトロニクス素子作製
基板とコーティングとの間の引っ張り力を発生させる素子であって、基板は第1軸に対して第1面と第2面で画定される厚さを有し、コーティングは基板第1面に対して成膜され、その際、コーティング及び基板が、コーティング/基板界面を形成するように第1軸に沿って互いに近接するように設けられる。装置は基板の第2面上に設けられたガラス素子を有し、第1軸に沿って設置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にファイバー又は平坦基板上へのコーティングの成膜に関し、より詳細には超薄膜の剥離及び基板と超薄膜との間の界面引っ張り強度の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
膜及びコーティングは様々な産業で広範に使用されている。例としてはとりわけ、エンジンの断熱コーティング、切断工具、シール及び架橋部でのトライボロジカルコーティング、ペイント集合体におけるポリマー層、複合体におけるファイバーコーティング、エレクトロニクス素子における電気的、磁気的及び光学的な多重層並びに、MEMSベースの機械素子及び医療素子における金属及びセラミックス膜が含まれる。複合材料の分野では、薄いコーティングとファイバーとの界面は母体の亀裂を緩和すると考えられる。トライボロジーの分野では、たとえば磁気的、導電性、光学的若しくは電気的といった機能性コーティング、たとえば断熱性、耐腐食性若しくは耐水性の保護コーティング又は装飾性コーティングのような様々な種類のコーティングとその下にある基板との界面は興味の対象となっている。
【0003】
上述の様々な応用では、界面での引っ張り強度は、界面の剥離プロセスを直接的に制御し、かつコーティング構成要素の有用性及び信頼性をしばしば制御するものであって、重要な特性である。膜の架橋は意図した機能を実現するための前提条件である。よって、これらすべての応用における中心的目標は架橋強度を最大化することで膜の剥離及び膜の破断を回避し、コーティングされた構成要素の長期的信頼性を予測できるようにすることである。加えて、界面引っ張り強度の測定は上述の応用においてコーティングが信頼できる性能の示すうえで重要となってくる。これらの問題は大抵の場合、プロセス(成膜及び表面に関する変量)及びサービス(湿度及び温度)変量の影響を受ける、異なる層間の架橋に関する基本的理解を追究することで解決される。
【0004】
これらの目的は、当技術分野で一般に使用されているレーザー剥離技術のような架橋測定ツールを使用することで現在のところ実現されている。典型的には、高エネルギーレーザーパルスは閉じこめプレート(confining plate)、金属層、基板プレート及びコーティングの組み合わせが面状に配列したものに作用する。レーザーパルスは、基板背面の関心部分とレーザー波長に対して透明な溶融石英閉じこめプレートで挟まれている厚い金属膜に作用する。通常は金又はアルミニウムがレーザー吸収膜として使用される。閉じこめられた金にレーザーエネルギーが吸収されることで膜が突然膨張する。膜は集合体の軸の制約のため、テストコーティング界面に向かって圧縮性衝撃波を発生させる。圧縮性パルスは界面に衝撃を与えるので、その一部はコーティングへ透過する。この圧縮性パルスのコーティングの自由表面からの反射であって、十分大きな振幅が与えられれば引っ張りパルスとなってコーティングを剥離する。
【特許文献1】米国特許公開第5438402号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、平坦界面の引っ張り強度を1μmの厚さで決定するという当技術分野における重大な発展に寄与した。しかし、厚さ0.5μm未満の超薄膜が、ナノテクノロジーを使用した超高密度素子を発展させるマイクロエレクトロニクス産業における研究の主な対象である。加えて、動揺の長さスケールでの架橋はMEMSベースの機械及び医療装置を大量に製造するときの材料最適化で重要になる。従って測定能力を厚さ0.5μm未満へ拡張する必要がある。
【0006】
従って、本発明の目的はそのような非常に薄い膜間の界面引っ張り強度を測定することである。
【0007】
別な目的は、薄膜ライン又はそれらの完全構造を半導体及び設計基板からガラス改質応力波を使用して剥離し、所望の基板上にそれらを固定させ、構造を再構築する。これにより現在行われているウエットエッチング技術を省略できるのでより迅速なMEMS及びナノスケール素子が作製できるようになる。これらの目的のうちの少なくとも複数は以下の発明によって満足される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は基板とコーティングとの間の引っ張り応力を発生させる装置であって、基板は第1軸の第1面と第2面で画定される厚さを有し、コーティングは基板第1面に成膜され、その際コーティング及び基板は第1軸に沿って互いに近接して配置されることでコーティング/基板界面を形成することを特徴とする。その装置は基板第2面に配置され、第1軸に沿って設けられているガラス素子を有する。ガラス素子は応力波をコーティング/基板界面へ伝搬させ、基板とコーティングとの間に引っ張り力又は引っ張り応力を発生させるように構成されている。
【0009】
本態様の好適モードでは、引っ張り応力はコーティング/基板界面でコーティングを基板から剥離するように構成されている。一般に応力波は約5nsから約100nsの範囲の長さを有する。理想的には応力波は希釈衝撃波を有する。ガラス基板は約0.5μm未満の厚さを有するコーティングの剥離が可能なように構成されている。しかし、本発明はまた、約0.5μmより厚い様々なコーティングにも使用可能である。
【0010】
1つの実施例では、ガラスは、第1軸に沿って進行するNd−YAGレーザービームの作用によって発生する応力波を伝搬させるように構成されている。典型的には、ガラス素子は基板第2面と結合している。ガラス素子はパイレックス(登録商標)、ソーダライム、石英、ボロシリケート又は同様な材料を有して良い。ガラス素子は如何なる厚さを有しても良いが、約0.1mmから約5mmの範囲であることが好ましい。
【0011】
実施例によっては、装置がガラス素子に隣接して配置される固定素子(constraining element)をさらに有して良い。加えて、エネルギー吸収層が固定素子とガラス素子との間に設けられて良い。
【0012】
本発明の別な態様は、コーティングを基板から剥離する工程を有する。基板は第1軸を横切るように設けられている第1面及び第2面を有し、コーティングは基板第1面上に成膜され、その際コーティング及び基板は第1軸に沿って互いに近接して配置されることで、コーティング/基板界面を形成する。本方法はガラス素子を基板第2面上で第1軸に沿って設置する工程、ガラス素子の第1軸にレーザーパルスを進行させる工程、ガラス素子を介して応力波をコーティング/基板界面へ伝搬させることで基板とコーティングとの間の引っ張り応力を発生させる工程、及び応力波が発生させた引っ張り応力によって基板からコーティングを剥離する工程を有する。
【0013】
好適実施例では、伝搬された応力波は約0.5μm未満の厚さを有するコーティングを剥離するような長さを有する。
【0014】
別な実施例では、本方法は第1軸に沿ってガラス素子を設置する工程をさらに有し、ガラス素子を設置する工程はガラス素子を基板第2面に結合させる工程を有する。加えて、固定素子はガラス素子の自由面に隣接して設けられて良い。本方法は、固定素子とガラス素子との間にあるガラス素子の自由面上にエネルギー吸収層をコーティングする工程をさらに有して良い。その際、第1軸にレーザーパルスを進行させる工程はガラス素子上にコーティングされているエネルギー吸収層へレーザーパルスを進行させる工程を有する。本態様の1つのモードでは、コーティング/基板界面で発生する応力波によって生じる応力は約1.0GPaを超える。より具体的にはコーティング/基板界面で発生する応力波によって生じる応力は約2.0GPaを超える。
【0015】
本発明のさらに別な態様では、ナノ構造を平坦基板から剥離する装置が開示されている。ナノ構造は第1基板前面に取り付けられる。その装置はナノ構造の反対側である第1基板の背面上に配置されるガラス素子、レーザー光源及びNd−YAGレーザーを有する。これらはレーザービームをガラス素子へ進行させるように配置されている。ガラス素子はレーザービームによる作用によって発生する応力波をナノ構造へ伝搬させ、ナノ構造と第1基板との間に引っ張り応力を発生させ、第1基板からナノ構造を剥離する。
【0016】
本態様の1つのモードでは、装置は第1基板前面の反対側に位置する第2基板をさらに有する。ここで第2基板は一旦第1基板から剥離されたナノ構造を受け取るように構成されている。
【0017】
好適実施例では、装置は第2基板上に配置される架橋層をさらに有する。架橋層は一般にナノ構造と第2基板との間の結合を形成するように構成されている。第2基板から第1基板を剥離する1つ以上のスペーサがさらに含まれて良い。
【0018】
別な態様では、シリコンプラットフォームを受け取り基板(receiving substrate)に移行する装置はシリコンプラットフォームの背面上に配置されるガラス基板及びガラス素子へレーザービームを進行させるように構成されているレーザー光源を有する。ガラス素子はレーザービームが作用することによって、シリコンプラットフォームとガラス基板との間に引っ張り応力を発生させるように構成されている。その際、引っ張り応力は受け取り基板へ向けてシリコンプラットフォームを受け渡す。
【0019】
本態様の1つのモードでは、エネルギー吸収層はシリコンプラットフォームの反対にあるガラス基板に隣接して設けられて良い。その際、エネルギー吸収層及びガラス基板はガラス基板を通り抜ける応力波を伝搬させ、シリコンプラットフォームとガラス基板との間に引っ張り応力を発生させる。
【0020】
エネルギー吸収層を有していない別なモードでは、レーザービームはガラス基板を通過して、シリコンプラットフォームとガラス基板との間に引っ張り応力を発生させる。
【0021】
多くの実施例では、シリコンプラットフォームは1つ以上の回路を有する。シリコンプラットフォームはまた、Si薄膜をも有して良い。
【0022】
別なモードでは、受け取り基板はポリマーを有する。受け取り基板はまた、ポリマー膜でスピンコーティングされても良い。
【0023】
本発明のさらに別な態様は本明細書の以下の部分で明らかにされる。ここで詳細な説明は本発明の好適実施例の十分な開示が目的であり、制限をかけるものではない。
【実施例】
【0024】
本発明は以下の図を参照することで十分に理解される。なお図は例示目的でしかない。
【0025】
より詳細に図を参照し、例示目的で本発明は図4から図6、及び図7Bから図13で一般に図示されている装置で実施される。ここで開示されている基本構想から離れることなく、装置は構成部分の配置及び詳細に応じて変化して良く、かつ方法は特定の工程及び順序に応じて変化して良いということが分かるだろう。
【0026】
本発明の装置及び方法は超薄膜界面(厚さ0.5μm未満)及び設計基板上に堆積された多重層の引っ張り強度(架橋)を測定する。本発明は、ガラス改質応力波を使用することで半導体及び設計基板から薄膜ライン又はその完全構造の分離及び剥離を実現する。所望の基板上に薄膜又は構造を固定させて、構造を再構築する装置及び方法についてさらに開示する。これにより現在行われているウエットエッチング技術を省略できるのでより迅速なMEMS及びナノスケール素子が作製できるようになる。この方法はまた、ナノ回路又はマイクロ回路を作製する魅力的代替手段を提供することも可能である。
【0027】
図1はレーザードップラー変位干渉計12及びレーザー剥離セットアップを使用する界面引っ張り強度測定システムを図示する。入射レーザー20は第1軸に沿ったパルスレーザー光を発生させる。第1光学素子22は第1軸に沿って設けられ、入射ビーム光を受け取る。素子22は入射ビームをコリメートし、第1軸と実質的に平行でかつ試料集合体16と一致する第2軸に沿ってコリメートされたビーム24を通過させる。試料集合体16は一般に固定素子、エネルギー吸収層、基板素子及び試料コーティングを有する。これらは第2軸に沿って、第2軸を横切るように順次設けられている。
【0028】
レーザードップラー変位干渉計系12は、第2入射レーザー34、入射レーザー光34を受光するように設けられている第1コリメーションレンズL1及び第1固定ミラーM2を有する測定手段である。ミラーM2は第1コリメーションレンズL1から、レーザービームが第1反射軸38に沿って進行するように角度補正されている。第1反射軸38は実質的にレーザー34によって生成される入射ビームを横切る。ビームスプリッタ28は、入射ビーム38の選択部分を受光するように反射軸38に沿って配置されている。ビームスプリッタ28に入射するビームの一部はそこを通過して第2反射軸40に沿って進行する。加えて、反射軸38に沿って進行するビームの選択部分はビームスプリッタ28によって、第1射出軸41に沿って第2固定ミラーM1へ進行する。第2反射軸40に沿って進行するレーザービームは試料集合体16の自由表面に入射し、軸40に沿ってビームスプリッタ28へ戻るように反射される。ビームスプリッタ28は試料集合体16からの反射されたビームの選択部分を第2射出軸42に沿って進行させる。第1射出軸41及び第2射出軸42は反射軸38及び反射軸40を横切るように設けられている。第2コリメーションレンズL2はビームスプリッタ28からのビームの反射部分を受光するように第2射出軸42に沿って設置されている。第2コリメーションレンズL2はビームを第2射出軸42に沿ってフォトダイオード44へ向けて進行させる。フォトダイオード44もまた、第2射出軸42に沿って設置されることで反射ビームを受光する。フォトダイオード44は入射ビームの反射部分に応答して信号45を発生させる。フォトダイオード45はデジタイザ46と電気的に通信する。デジタイザ46もまた、コンピュータ48と電気的に通信する出力信号47を発生させる。
【0029】
試料集合体16の自由表面で発生する振動を計測するため、図1のレーザードップラー変位系12が用いられる。レーザー34は軸36に沿ったレーザービームを生成するように駆動される。第1コリメーションレンズL1はビームをコリメートし、ビームを固定ミラーM2へ向けて進行させる。ミラーM2は軸36に対して角度補正される。ミラーM2はレーザービーム34を反射軸38に沿って反射させる。ビームスプリッタ28は反射軸38に沿って設置され、反射レーザービームを受光する。ビームスプリッタ28は反射ビームの選択部分を反射軸40に沿って進行させ、その一方で同時に入射ビームの選択部分を第1射出軸41に沿って進行させる。好適実施例では、ビームスプリッタは反射軸38に対して如何なる角度で設けられても良いが、45°であるのが好ましい。しかもビームスプリッタはレーザービームを2つの均一なビームに分配するのが好ましい。
【0030】
固定ミラーM1から反射されるビームは参照ビームであって、コーティング26の自由表面から反射されて第2軸に沿ったビームは信号ビームである。参照ビーム及び信号ビームはビームスプリッタ28で混合し、第2射出軸42に沿って進行する。レンズ22、好適には凸レンズ、は混合ビームをコリメートし、軸42に沿ってフォトダイオード44へ進行させる。フォトダイオード44は信号45を生成する。信号45はコーティングの自由表面の変動、たとえば過渡的速度、に比例する。フォトダイオード44の出力電圧信号はデジタイザ46と電気的に通信する。デジタイザはコンピュータ48と通信する出力信号47を生成するように駆動される。
【0031】
デジタイザ46はフォトダイオード44の干渉記録に対応する信号47を生成する。干渉記録はコンピュータ48によって試料集合体16の自由表面の速度と関連づけられる。コーティングの自由表面の過渡的速度はそこで一連の波動方程式により界面での応力に関連づけられる。より詳細にはレーザーフルエンスの各レベルで発生する界面引っ張り応力のピーク値はコンピュータ48によって最大自由表面速度と関連づけられる。コンピュータ48は基板の自由表面で計測された応力パルス(それぞれ独立に計測される)を取得し、それを基板側の界面に作用させ、結果生じる界面とコーティング自由表面での応力の引っ張り振幅のピーク(これは規格化因子を介して規格化されている)を決定する。上述の振幅の比は移動係数を有する。移動係数はコーティング又は基板の自由表面で計測されたピーク応力を界面のピーク応力へ変換するのに使用される。
【0032】
図2Aは当技術分野で一般に使用されているレーザー剥離技術を使用した実験を図示している。3ns長さのNd:YAGレーザーパルスは試料集合体50へ進行し、基板ディスク背面(12mmから25mmの直径及び1mmの厚さを有する)と10μmから20μmの厚さを有するSiO2層に挟まれる0.5μmの厚さを有するアルミニウム膜52上の直径3mmの領域に作用させるようにする。
【0033】
駆動させるとき、第1入射レーザー20は第1軸に沿ってレンズ22へ進行するレーザーパルスを生成する。レンズ22はレーザーパルスを固定層50に入射するコリメートされたビーム24にする。
【0034】
エネルギー吸収層52によるレーザーパルスの吸収はアルミニウム層52の突然の融解誘起の膨張を引き起こす。集合体、たとえば固定材料54及び基板56、の軸的制約のため、膨張は基板56及び試験コーティング58へ向かう圧縮的な衝撃波又はパルスを生成する。試験コーティング58は基板56の前面上に成膜される。
【0035】
図2Bで図示されているように、基板56を介して伝搬する圧縮性応力パルスは基板56と試験コーティング又は試料58との間の界面へ入射する。圧縮性パルスは界面に衝突するので、その一部はコーティングへ透過する。圧縮性パルスはコーティングの自由表面60へ到達する。そこで反射され、引っ張りパルスTを生成する。界面での引っ張り応力はコーティングの自由表面60の過渡的変位履歴(パルス反射の間に誘起される)を計測することで得られる。計測には光干渉計70を使用する。その概略は図2Aに図示されている。十分大きな振幅が与えられたものとして、引っ張りパルスのこの形式こそが基板/コーティング界面からコーティング58を剥離する。
【0036】
応力パルスがコーティング58の表面60又は基板56から反射されるとき、自由表面の粒子は過渡的速度の影響を受ける。この速度は衝突する応力パルスの過渡的プロファイルに比例する。この過渡的速度は図2Aのレーザードップラー干渉計系70によって直接測定される。ドップラー干渉計系70は第2入力レーザー(Arイオン)72、一連のコリメーションレンズ、ミラーM1、ミラーM2、ミラーM3、フォトダイオード74及びデジタイザ76を有する。
【0037】
密度ρで厚さhのコーティングでは、界面での応力は、過渡的速度の測定値v(t)から以下のように求められる。
【0038】
δ(h,t)=ρc[v(t+h/c)− v(t+h/c)]/2
ここでcは膜中の縦応力波速度である。
【0039】
上述の基礎的技術で膜を剥離するのに使用される、レーザーによって発生する応力波履歴は図3で再現される。これらの測定はSiウエハ基板を用いて行われた。立ち上がり及びピーク後の減衰時間はレーザーフルエンスの増大に伴って得られる応力パルス振幅の増加に対して大きくは変化しない。典型的な応力パルスの特徴は1nsから2nsで立ち上がり、約16nsから20nsで徐々にピーク後の減衰が起こる。しかし、数百nsまでの応力波は複合基板で生成することが可能である。応力波の長さと比較して膜が非常に薄い場合、初期の圧縮パルスの後部は依然として界面にある一方で、前部は、膜の自由表面からの反射後引っ張り波として戻される。2つの波の干渉は破壊的なため、ピークの界面引っ張り応力は常に初期圧縮波の振幅よりも小さくなる。
【0040】
界面での引っ張り応力のピークの振幅は膜厚、立ち上がり時間及び応力パルスのピーク後の減衰時間に対して非線形に減少し、膜厚0の極限で0になる。よって層が薄い場合、界面での引っ張り応力のピークは基板内部での引っ張り応力のピークよりもはるかに小さくなりうる。本質的に強固な界面では、そのような条件は大抵の場合、所望の界面が剥離される前に基板内部の破断となる。
【0041】
表1は基本的なレーザー剥離技術を使用して、Siウエハ基板56上にスパッタによって堆積されたコーティング58を有するCu/TiNの2層系の界面引っ張り強度の測定結果をまとめている。コーティング58の膜厚が不十分なため、最初3つの試料については基板56内部で破断が観測された。3つの試料についてのSi基板内部での引っ張り応力のピークは一致していることを明記しておく。このことは、Siの引っ張り強度が5GPaであることを示唆している。これらの試料について、Si/TiN界面での引っ張り応力はむしろ小さく、界面強度よりも小さい。膜厚が増加することで、破断場所は基板から界面へ変化した。一貫して、Si内部の引っ張り応力のピークはこれまでの試料で測定されたSi基板強度よりも小さい。界面強度は最後2つの試料については等しいことが分かった。このことは、界面の化学的性質が厚さを変化させた膜について同じ場合、実験は同じ基本強度を測定するということを示唆している。よって超薄膜の界面強度は、単純に膜厚を増加させる又は上部に他の層を堆積させることで反射圧縮パルスの十分な“スペース(room)”を与えることで可能となる。
【0042】
しかし、複数の系において膜厚が増加するため、考えられる膜の構造及び化学的性質の変化に関する問題のため、好適な方法は常に初期の膜厚の小さい状態での試験、又は実際の装置及び用途で使用されるのと同一の形式での試験である。従って超薄膜(厚さ0.5μm未満)で上手に剥離を行い、続いてそれらの架橋を測定することはとても重要になる。
【0043】
有限要素法に基づくシミュレーションを行って、ユアンとグプタ(Yuan and Gupta)は所与のコーティング厚さで、ピーク後の減衰時間が、界面での引っ張り応力を最大にする上で最も重要になってくることを示した。特に、ピーク後の減衰時間がゼロになる、つまり波形が“希釈衝撃(rarefaction shock)”を有する場合、任意の薄さを有する薄膜の界面引っ張り応力は理論的には入射圧縮パルスの振幅と等しくなる。本発明に従うと、この理論的可能性はガラス層を使用した試料集合体で実験的に実現された。
【0044】
図4は本発明に従った典型的な試料集合体100を図示している。試料集合体100は固定素子102、エネルギー吸収層104、ガラス基板素子106、シリコン基板素子108及び自由表面112を有するコーティング110を有する。すべては軸に沿って軸を横切るように順次設けられ、近接している。
【0045】
図4で図示されているように、Nd−YAGレーザーパルス114は試料集合体100で一般に固定層102を交差する方向に進行する。レーザーパルスは水ガラスの固定層102を通過して、エネルギーを吸収するアルミニウム層104に作用し、加熱する。それに引き続いて起こるアルミニウム層104の膨張は、ガラス基板106及びシリコン基板108を通り抜けて伝搬する圧縮性衝撃波又はパルスを発生させる。パルス波はコーティング110を透過して引っ張りパルスを生成する。
【0046】
エネルギー吸収層104は金、ゲルマニウム又はさらに通常の黒のセロハンテープのような様々な金属又は非金属材料から構成されて良いが、アルミニウム薄膜から構成されるのが好ましい。固定素子102は固体水ガラスから構成されるのが好ましく、厚さは5μmから100μmで、5μmであることが好ましい。固定素子はまた、2−プロパノール、水、SiO2のような当技術分野で既知の同様の品質を有する多数の他の組成物を有しても良い。別な実施例では、固定素子は透明のセロハンテープを有しても良い。
【0047】
シリコン基板30は現実には円形であることが好ましく、直径10mmから30mmで好適には厚さ1mmの単結晶シリコン(Si)ウエハから構成される。試料コーティング32は厚さ0.5μm未満であって良い。
【0048】
応力波はガラス基板素子108で、図1及び特許文献1で実施される実験手順によって計測される。ガラス基板素子108はパイレックス(登録商標)ガラス、ソーダライムガラス、石英ガラス及びボロシリケートガラスを有する。ガラス片の入射応力波プロファイルを正確に画定するため、これらの試験は、名目上の厚さ1.0mmのガラススライドを厚さ0.7mmのSiウエハに架橋することで行われた。なお架橋には厚さ0.5μmの光学グレードEPOTECH 301 FL(商標)エポキシが使用された。水ガラスで固定されたAl膜104を上述の方法で剥離することで、応力波がSi内部で発生した。干渉計測定では、400ÅのAl層をガラスの自由表面上に堆積させた。
【0049】
図5A及び図5Bはレーザーフルエンスを増加させた一連の応力パルスプロファイルを図示している。測定はソーダライムガラスを有するガラス基板素子108で行われた。図5Aで図示されているように、応力振幅の小さいところでは、プロファイルはSi及び他の材料と同様で、有限の立ち上がり時間及び緩やかなピーク後の減衰を有する。しかし応力パルス振幅がある閾値を超えることで、応力波の立ち上がり時間120は長くなるが、ピーク後の応力プロファイルの開始122で急速に減衰する。究極的には、擬似的に即座に落ちるピーク後応力を有するプロファイルが実現する。それは“希釈衝撃”に酷似する。Si基板のみを有する試料集合体と比較したガラス基板素子の試料集合体100の応力波プロファイルの変化は図5Bに図示されている。
【0050】
図6はガラス素子としてパイレックス(登録商標)ガラス、ソーダライムガラス、石英ガラス及びボロシリケートガラスによって測定されたパルスプロファイルを図示している。上述の効果の大きさはガラスによって変化することが分かったが、すべてについて希釈衝撃が形成されることが示された。
【0051】
プレートに衝撃を与えるセットアップを使用したこれまでの研究では、ガラス中での希釈衝撃の形成を明らかにすることができなかった。その理由は、これまでの研究におけるパルス長は試料片の厚さよりも長かったからである。上述したように、希釈衝撃の効果は、パルスが材料へ伝搬する距離が有限のため発展する。応力波のパルス長(〜0.1mm)が試料片の厚さ(〜1mm)よりも短いので、本発明のセットアップでもこの結果を得ることは可能である。
【0052】
ガラス改質による応力波の使用を示すため、表IIにまとめられた試料セットが準備された。全ての膜(コーティング110)は基板上にスパッタで堆積された。各膜厚は表に示されている通りである。応力波はガラス内部で直接的に発生した。レーザー剥離方法と一致して、ガラスの自由表面は厚さ0.5μmのAl膜でコーティングされ、厚さ40μmから50μmの水ガラス層を使用することで上部が固定された。超薄膜界面を剥離するのにガラス改質波が適用できることを示すため、ディスプレイ技術において注目されているTiN/ガラス系及びNi/ガラス系が選ばれた。
【0053】
ガラス基板に加えて、Cu(1400nm)/TiN(70nm)2層系がSi基板ウエハ108の自由表面上にコーティング112として堆積された。これまでは応力パルスがSiウエハ内部で直接発生したときは表IIの試料1で示されているようにSi内部での破断が観測された。これは上述のように界面強度が非常に強いためである。
【0054】
本発明の試験では、コーティングしていないSi基板108の自由表面とはUV処理されたエポキシを使用してパイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス又はボロシリケートガラス層106に架橋された。それはガラス改質波による負荷をかけることができるようにするためである。剥離方法と調和するように、レーザー吸収Al層104がガラス基板106背面に堆積され、厚さ40μmから50μmの水ガラス層で上部から固定された。表IIは様々な構成における関心対象の界面で観測された破断について示している。なお各構成については具体的な引っ張り強度の値が付記している。表IIは、超薄膜界面の引っ張り強度も計測に本発明に従ったガラス基板を使用できる可能性があることを示している。図7A及び図7Bは表IIの試料#1及び試料#2で生じた破断場所を図で対比している。図7Aで図示されているように、ガラス基板が使用されていないときには、Cu(1400nm)/TiN(70nm)/Si系ではSi基板108内部に破断場所が発生した。それとは対照的に、図7Bは、本発明のガラス改質波が使用されたときの高倍率破断像を図示している。矢印は、Si基板108内部では破壊が起こらずにCu/TiN界面(つまりコーティング層110内部)で破断が発生したことを図示している。界面での引っ張り強度の値は2.62GPaと計算で求められた。これはむしろ大きな値で、基本的な剥離セットアップでは実現不可能である。
【0055】
図7A及び図7Bに図示された結果は、図7A及び図7Bで定量的に図示されている。図8Aは2つの計測された自由表面速度プロファイル130及び132を図示している。ボロシリケートガラス改質波及びSi基板で発生する波から得られたプロファイル130及びプロファイル132は図7A及び図7Bに図示されている破断に対応する。従って、希釈衝撃の振る舞いはボロシリケートガラス改質波が生成するプロファイル132で観測された。ボロシリケートガラス改質波プロファイルに対応する2つの界面での引っ張り応力履歴134及び136は図8Bで図示されている基板プロファイルである。図8Bから分かるように、界面での引っ張り応力プロファイル136の劇的な増大がガラス改質波で観測された。
【0056】
ナノテクノロジー領域で重要になってくると思われる関連用途は、エレクトロニクスで使用される基板(Si,Geなど)上にナノ細線から構成される構造を有するナノスケール回路及び素子のようなMEMS及びナノエレクトロニクス素子作製でこれらの特別な波を使用することである。ナノスケール回路に基づく素子は現在のミクロンスケール技術で可能な程度の処理速度より大幅に速くなることが期待されている。現在使用されているフォトリソグラフィ技術は、製造可能な最小素子サイズという点において本質的に限界に達している。ナノ細線製造の新たなアイディアには、電子ビームエッチング(これは極端に遅い)及び異方的な格子ミスマッチに基づく成膜アイディアが含まれる。後者のアプローチでは、膜及び基板に使用される材料は、実質的に1方向に格子ミスマッチが存在し、他の方向にはミスマッチが生じないように選択される。格子ミスマッチのない方向の薄膜成長を促進させる一方で、大きなミスマッチは薄膜成長を制限する。よってこの手順はごくわずかな薄膜/基板の組み合わせに制限される。
【0057】
図9A及び図9Bは、本発明に従ったナノ細線剥離及び取り込み集合体(retrieval assembly)200の概略を図示している。ナノ細線成長の合成に特化された基板上に成長するナノ細線202は本発明の原理を使用して剥離されることが可能である。図4で論じたように、レーザーパルスはガラス基板206の自由面側の薄いAl層に進行して良い。それによって、圧縮性衝撃波がガラス基板206及びそれに隣接するシリコン基板204を介して伝搬する。衝撃波はナノ細線202で反射してシリコン基板204からナノ細線202を剥離する引っ張り力を発生させる。上述のように、そのような薄い細線の剥離は本発明のガラス改質波の使用によってのみ可能である。
【0058】
図9Bで図示されているように、剥離された細線は続いてナノ細線202の自由表面の反対側に設けられている所望のエレクトロニクスで使用される基板上で、“固定され”又は取り込まれ(retrieve)、それによってスペーサ210を介することで剥離されて良い。エレクトロニクスで使用される基板212は超薄膜架橋層214又は自己集合分子層のいずれかを有して良い。この手順を繰り返し使用することで回路の構築が可能となる。この構成では、使用される基板の種類の制限はない。
【0059】
図9Aの系の物理的図示は図10Aで図示されているような断面を有する多層プラスチック基板220上で示される。上部層を表す図10Bの像はSi素子が基板回路とやり取りを行うことを可能にする電気的コンタクトに使用される鉛の隆起物222を図示している。レーザーは本発明に従ったプラスチック基板220の表面下に作用し、基板上部層へ応力波を送った(launch)。応力波は鉛の隆起物を剥離し、これらの剥離された隆起物は図10Bで図示したように柔軟性プラスチックテープ226によって固定された。
【0060】
この手順の成功は図10B及び図11で示されている。これらの像はテープ226上の剥離された鉛の隆起物222の低倍率及び高倍率顕微鏡像である。レーザーエネルギーが増加することで、鉛の隆起物がある領域の下の剥離もまた実現されるということも上記に加えて留意すべきである。
【0061】
よってそのような場合では、下地の膜と共に鉛の隆起物222は基板220から引き離されて自由になり、プラスチックテープ226に捕らえられた。図10Aの暗い領域224は隆起物下にある層である。その層は柔軟性テープ基板226のまさに上部に現れる。図11は剥離された鉛の隆起物の焦点図(focused view)を全体で図示している。ガラス改質波のさらに別な応用はプラスチックのような柔軟性基板上の高性能回路の作製である。それはたとえば、低コストRFIDタグ、TFTベースの高性能コンピュータ及びセンサシステムの製造への応用である。
【0062】
図12で図示されているように、上述のようにすでに十分確立されたプロセス変数を使用することによってガラス又は石英基板304上に非常に高品質なポリシリコン又は単結晶シリコン層302を(有限の領域で)設けて良い。ガラス基板304はその1つの面上にシリカ層310を有して良く、シリカ層310は任意でシリコン層302とガラス基板304の間に設けられて良い。そのとき、アルミニウム膜306及び水ガラス固定素子308がガラス基板304の自由面上に設けられている。
【0063】
すでに製造された高性能回路は最初にSi又はガラスプラットフォーム304上に作製して良い。続いて、ポリシリコン表面302全面をポリマー膜、つまり“受容基板”312でスピンコーティングして良い。この結果、ガラス/Si/ポリマーのサンドイッチ構造が形成される。
【0064】
ポリマー基板をスピンコーティングする代わりに、すでに形成されているポリマーホイル322もまた、図13で図示されているようにSiプラットフォーム324の近くに設置されて良い。Nd:YAGレーザーパルス326を、水ガラス(328)で固定されているAl膜330を有する直径0.5mmから4mmの領域に集束させることで、高振幅圧縮性応力波がガラス基板320の背面上に発生する。応力波は直接Si/ガラス界面を剥ぎ取り、全Si膜、Siプラットフォーム又は回路324を完全にプラスチック基板へ移行させる。
【0065】
さらに別な実施例では、基板320の背面にあるAl層330又は固定水ガラス層328は除去されて良い。この構成では、レーザーパルス326はガラス基板を通り抜け、Si表面と直接相互作用して応力波を送る。この波はSi/ガラス界面に入り込むことでSiプラットフォーム324をポリマー基板322上部へ移行させる。よって、パターンを移行させる機構は両アプローチで同一である。
【0066】
たとえ上述の説明が多くの詳細な事項を含むとしても、これらは本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明の現時点における好適実施例のいくつかを提供しているに過ぎない。従って本発明の範囲は当業者にとって明らかな他の実施例を十分含むし、本発明の範囲は添付請求項以外の何者によっても限定されないということは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】レーザードップラー変位干渉計を使用したレーザー剥離引っ張り強度測定システムの概略図である。
【図2A】従来技術の薄膜試料の架橋特性を試験する試験セットアップを図示している。
【図2B】従来技術の薄膜試料集合体断面の拡大図を図示している。
【図3】レーザーフルエンスを増加させながらシリコン中での測定された応力パルスプロファイルを図示している。
【図4】本発明に従った典型的な薄膜試料集合体の断面図である。
【図5A】レーザーフルエンスを増加させながらソーダライムガラスの応力波プロファイルのグラフを図示している。
【図5B】ソーダライムガラスの応力波プロファイルとSiの応力波プロファイルとを比較したグラフを図示している。
【図6】それぞれ異なる種類のガラスにおける応力波プロファイルのグラフを図示している。
【図7A】ガラスのないCu/TiN/Si系での破断位置を表す写真である。
【図7B】ガラスを有するCu/TiN/Si系での破断位置を表す写真である。
【図8A】図7Aの系の表面速度プロファイルと図7Bの系の表面速度プロファイルとを比較するグラフを図示している。
【図8B】図7Aの系のCu/TiN界面での応力履歴と図7Bの系のCu/TiN界面での応力履歴とを比較するグラフを図示している。
【図9A】本発明に従ったナノワイヤの剥離及び取り込み集合体200の概略図である。
【図9B】本発明に従ったナノワイヤの剥離及び取り込み集合体200の概略図である。
【図10A】本発明に従った鉛の隆起物を有する多層プラスチック基板の断面図である。
【図10B】本発明に従ったフレキシブルプラスチックテープに捕らえられている、応力波で剥離された鉛の隆起物を図示する写真である。
【図11】剥離された鉛の隆起物の焦点図を丸ごと図示する。
【図12】ポリマー膜をスピンコーティングで塗布したポリシリコン表面を有する本発明に従った別の実施例を図示する。
【図13】ポリマーホイルを使用した本発明の他の実施例を図示する。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にファイバー又は平坦基板上へのコーティングの成膜に関し、より詳細には超薄膜の剥離及び基板と超薄膜との間の界面引っ張り強度の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
膜及びコーティングは様々な産業で広範に使用されている。例としてはとりわけ、エンジンの断熱コーティング、切断工具、シール及び架橋部でのトライボロジカルコーティング、ペイント集合体におけるポリマー層、複合体におけるファイバーコーティング、エレクトロニクス素子における電気的、磁気的及び光学的な多重層並びに、MEMSベースの機械素子及び医療素子における金属及びセラミックス膜が含まれる。複合材料の分野では、薄いコーティングとファイバーとの界面は母体の亀裂を緩和すると考えられる。トライボロジーの分野では、たとえば磁気的、導電性、光学的若しくは電気的といった機能性コーティング、たとえば断熱性、耐腐食性若しくは耐水性の保護コーティング又は装飾性コーティングのような様々な種類のコーティングとその下にある基板との界面は興味の対象となっている。
【0003】
上述の様々な応用では、界面での引っ張り強度は、界面の剥離プロセスを直接的に制御し、かつコーティング構成要素の有用性及び信頼性をしばしば制御するものであって、重要な特性である。膜の架橋は意図した機能を実現するための前提条件である。よって、これらすべての応用における中心的目標は架橋強度を最大化することで膜の剥離及び膜の破断を回避し、コーティングされた構成要素の長期的信頼性を予測できるようにすることである。加えて、界面引っ張り強度の測定は上述の応用においてコーティングが信頼できる性能の示すうえで重要となってくる。これらの問題は大抵の場合、プロセス(成膜及び表面に関する変量)及びサービス(湿度及び温度)変量の影響を受ける、異なる層間の架橋に関する基本的理解を追究することで解決される。
【0004】
これらの目的は、当技術分野で一般に使用されているレーザー剥離技術のような架橋測定ツールを使用することで現在のところ実現されている。典型的には、高エネルギーレーザーパルスは閉じこめプレート(confining plate)、金属層、基板プレート及びコーティングの組み合わせが面状に配列したものに作用する。レーザーパルスは、基板背面の関心部分とレーザー波長に対して透明な溶融石英閉じこめプレートで挟まれている厚い金属膜に作用する。通常は金又はアルミニウムがレーザー吸収膜として使用される。閉じこめられた金にレーザーエネルギーが吸収されることで膜が突然膨張する。膜は集合体の軸の制約のため、テストコーティング界面に向かって圧縮性衝撃波を発生させる。圧縮性パルスは界面に衝撃を与えるので、その一部はコーティングへ透過する。この圧縮性パルスのコーティングの自由表面からの反射であって、十分大きな振幅が与えられれば引っ張りパルスとなってコーティングを剥離する。
【特許文献1】米国特許公開第5438402号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、平坦界面の引っ張り強度を1μmの厚さで決定するという当技術分野における重大な発展に寄与した。しかし、厚さ0.5μm未満の超薄膜が、ナノテクノロジーを使用した超高密度素子を発展させるマイクロエレクトロニクス産業における研究の主な対象である。加えて、動揺の長さスケールでの架橋はMEMSベースの機械及び医療装置を大量に製造するときの材料最適化で重要になる。従って測定能力を厚さ0.5μm未満へ拡張する必要がある。
【0006】
従って、本発明の目的はそのような非常に薄い膜間の界面引っ張り強度を測定することである。
【0007】
別な目的は、薄膜ライン又はそれらの完全構造を半導体及び設計基板からガラス改質応力波を使用して剥離し、所望の基板上にそれらを固定させ、構造を再構築する。これにより現在行われているウエットエッチング技術を省略できるのでより迅速なMEMS及びナノスケール素子が作製できるようになる。これらの目的のうちの少なくとも複数は以下の発明によって満足される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は基板とコーティングとの間の引っ張り応力を発生させる装置であって、基板は第1軸の第1面と第2面で画定される厚さを有し、コーティングは基板第1面に成膜され、その際コーティング及び基板は第1軸に沿って互いに近接して配置されることでコーティング/基板界面を形成することを特徴とする。その装置は基板第2面に配置され、第1軸に沿って設けられているガラス素子を有する。ガラス素子は応力波をコーティング/基板界面へ伝搬させ、基板とコーティングとの間に引っ張り力又は引っ張り応力を発生させるように構成されている。
【0009】
本態様の好適モードでは、引っ張り応力はコーティング/基板界面でコーティングを基板から剥離するように構成されている。一般に応力波は約5nsから約100nsの範囲の長さを有する。理想的には応力波は希釈衝撃波を有する。ガラス基板は約0.5μm未満の厚さを有するコーティングの剥離が可能なように構成されている。しかし、本発明はまた、約0.5μmより厚い様々なコーティングにも使用可能である。
【0010】
1つの実施例では、ガラスは、第1軸に沿って進行するNd−YAGレーザービームの作用によって発生する応力波を伝搬させるように構成されている。典型的には、ガラス素子は基板第2面と結合している。ガラス素子はパイレックス(登録商標)、ソーダライム、石英、ボロシリケート又は同様な材料を有して良い。ガラス素子は如何なる厚さを有しても良いが、約0.1mmから約5mmの範囲であることが好ましい。
【0011】
実施例によっては、装置がガラス素子に隣接して配置される固定素子(constraining element)をさらに有して良い。加えて、エネルギー吸収層が固定素子とガラス素子との間に設けられて良い。
【0012】
本発明の別な態様は、コーティングを基板から剥離する工程を有する。基板は第1軸を横切るように設けられている第1面及び第2面を有し、コーティングは基板第1面上に成膜され、その際コーティング及び基板は第1軸に沿って互いに近接して配置されることで、コーティング/基板界面を形成する。本方法はガラス素子を基板第2面上で第1軸に沿って設置する工程、ガラス素子の第1軸にレーザーパルスを進行させる工程、ガラス素子を介して応力波をコーティング/基板界面へ伝搬させることで基板とコーティングとの間の引っ張り応力を発生させる工程、及び応力波が発生させた引っ張り応力によって基板からコーティングを剥離する工程を有する。
【0013】
好適実施例では、伝搬された応力波は約0.5μm未満の厚さを有するコーティングを剥離するような長さを有する。
【0014】
別な実施例では、本方法は第1軸に沿ってガラス素子を設置する工程をさらに有し、ガラス素子を設置する工程はガラス素子を基板第2面に結合させる工程を有する。加えて、固定素子はガラス素子の自由面に隣接して設けられて良い。本方法は、固定素子とガラス素子との間にあるガラス素子の自由面上にエネルギー吸収層をコーティングする工程をさらに有して良い。その際、第1軸にレーザーパルスを進行させる工程はガラス素子上にコーティングされているエネルギー吸収層へレーザーパルスを進行させる工程を有する。本態様の1つのモードでは、コーティング/基板界面で発生する応力波によって生じる応力は約1.0GPaを超える。より具体的にはコーティング/基板界面で発生する応力波によって生じる応力は約2.0GPaを超える。
【0015】
本発明のさらに別な態様では、ナノ構造を平坦基板から剥離する装置が開示されている。ナノ構造は第1基板前面に取り付けられる。その装置はナノ構造の反対側である第1基板の背面上に配置されるガラス素子、レーザー光源及びNd−YAGレーザーを有する。これらはレーザービームをガラス素子へ進行させるように配置されている。ガラス素子はレーザービームによる作用によって発生する応力波をナノ構造へ伝搬させ、ナノ構造と第1基板との間に引っ張り応力を発生させ、第1基板からナノ構造を剥離する。
【0016】
本態様の1つのモードでは、装置は第1基板前面の反対側に位置する第2基板をさらに有する。ここで第2基板は一旦第1基板から剥離されたナノ構造を受け取るように構成されている。
【0017】
好適実施例では、装置は第2基板上に配置される架橋層をさらに有する。架橋層は一般にナノ構造と第2基板との間の結合を形成するように構成されている。第2基板から第1基板を剥離する1つ以上のスペーサがさらに含まれて良い。
【0018】
別な態様では、シリコンプラットフォームを受け取り基板(receiving substrate)に移行する装置はシリコンプラットフォームの背面上に配置されるガラス基板及びガラス素子へレーザービームを進行させるように構成されているレーザー光源を有する。ガラス素子はレーザービームが作用することによって、シリコンプラットフォームとガラス基板との間に引っ張り応力を発生させるように構成されている。その際、引っ張り応力は受け取り基板へ向けてシリコンプラットフォームを受け渡す。
【0019】
本態様の1つのモードでは、エネルギー吸収層はシリコンプラットフォームの反対にあるガラス基板に隣接して設けられて良い。その際、エネルギー吸収層及びガラス基板はガラス基板を通り抜ける応力波を伝搬させ、シリコンプラットフォームとガラス基板との間に引っ張り応力を発生させる。
【0020】
エネルギー吸収層を有していない別なモードでは、レーザービームはガラス基板を通過して、シリコンプラットフォームとガラス基板との間に引っ張り応力を発生させる。
【0021】
多くの実施例では、シリコンプラットフォームは1つ以上の回路を有する。シリコンプラットフォームはまた、Si薄膜をも有して良い。
【0022】
別なモードでは、受け取り基板はポリマーを有する。受け取り基板はまた、ポリマー膜でスピンコーティングされても良い。
【0023】
本発明のさらに別な態様は本明細書の以下の部分で明らかにされる。ここで詳細な説明は本発明の好適実施例の十分な開示が目的であり、制限をかけるものではない。
【実施例】
【0024】
本発明は以下の図を参照することで十分に理解される。なお図は例示目的でしかない。
【0025】
より詳細に図を参照し、例示目的で本発明は図4から図6、及び図7Bから図13で一般に図示されている装置で実施される。ここで開示されている基本構想から離れることなく、装置は構成部分の配置及び詳細に応じて変化して良く、かつ方法は特定の工程及び順序に応じて変化して良いということが分かるだろう。
【0026】
本発明の装置及び方法は超薄膜界面(厚さ0.5μm未満)及び設計基板上に堆積された多重層の引っ張り強度(架橋)を測定する。本発明は、ガラス改質応力波を使用することで半導体及び設計基板から薄膜ライン又はその完全構造の分離及び剥離を実現する。所望の基板上に薄膜又は構造を固定させて、構造を再構築する装置及び方法についてさらに開示する。これにより現在行われているウエットエッチング技術を省略できるのでより迅速なMEMS及びナノスケール素子が作製できるようになる。この方法はまた、ナノ回路又はマイクロ回路を作製する魅力的代替手段を提供することも可能である。
【0027】
図1はレーザードップラー変位干渉計12及びレーザー剥離セットアップを使用する界面引っ張り強度測定システムを図示する。入射レーザー20は第1軸に沿ったパルスレーザー光を発生させる。第1光学素子22は第1軸に沿って設けられ、入射ビーム光を受け取る。素子22は入射ビームをコリメートし、第1軸と実質的に平行でかつ試料集合体16と一致する第2軸に沿ってコリメートされたビーム24を通過させる。試料集合体16は一般に固定素子、エネルギー吸収層、基板素子及び試料コーティングを有する。これらは第2軸に沿って、第2軸を横切るように順次設けられている。
【0028】
レーザードップラー変位干渉計系12は、第2入射レーザー34、入射レーザー光34を受光するように設けられている第1コリメーションレンズL1及び第1固定ミラーM2を有する測定手段である。ミラーM2は第1コリメーションレンズL1から、レーザービームが第1反射軸38に沿って進行するように角度補正されている。第1反射軸38は実質的にレーザー34によって生成される入射ビームを横切る。ビームスプリッタ28は、入射ビーム38の選択部分を受光するように反射軸38に沿って配置されている。ビームスプリッタ28に入射するビームの一部はそこを通過して第2反射軸40に沿って進行する。加えて、反射軸38に沿って進行するビームの選択部分はビームスプリッタ28によって、第1射出軸41に沿って第2固定ミラーM1へ進行する。第2反射軸40に沿って進行するレーザービームは試料集合体16の自由表面に入射し、軸40に沿ってビームスプリッタ28へ戻るように反射される。ビームスプリッタ28は試料集合体16からの反射されたビームの選択部分を第2射出軸42に沿って進行させる。第1射出軸41及び第2射出軸42は反射軸38及び反射軸40を横切るように設けられている。第2コリメーションレンズL2はビームスプリッタ28からのビームの反射部分を受光するように第2射出軸42に沿って設置されている。第2コリメーションレンズL2はビームを第2射出軸42に沿ってフォトダイオード44へ向けて進行させる。フォトダイオード44もまた、第2射出軸42に沿って設置されることで反射ビームを受光する。フォトダイオード44は入射ビームの反射部分に応答して信号45を発生させる。フォトダイオード45はデジタイザ46と電気的に通信する。デジタイザ46もまた、コンピュータ48と電気的に通信する出力信号47を発生させる。
【0029】
試料集合体16の自由表面で発生する振動を計測するため、図1のレーザードップラー変位系12が用いられる。レーザー34は軸36に沿ったレーザービームを生成するように駆動される。第1コリメーションレンズL1はビームをコリメートし、ビームを固定ミラーM2へ向けて進行させる。ミラーM2は軸36に対して角度補正される。ミラーM2はレーザービーム34を反射軸38に沿って反射させる。ビームスプリッタ28は反射軸38に沿って設置され、反射レーザービームを受光する。ビームスプリッタ28は反射ビームの選択部分を反射軸40に沿って進行させ、その一方で同時に入射ビームの選択部分を第1射出軸41に沿って進行させる。好適実施例では、ビームスプリッタは反射軸38に対して如何なる角度で設けられても良いが、45°であるのが好ましい。しかもビームスプリッタはレーザービームを2つの均一なビームに分配するのが好ましい。
【0030】
固定ミラーM1から反射されるビームは参照ビームであって、コーティング26の自由表面から反射されて第2軸に沿ったビームは信号ビームである。参照ビーム及び信号ビームはビームスプリッタ28で混合し、第2射出軸42に沿って進行する。レンズ22、好適には凸レンズ、は混合ビームをコリメートし、軸42に沿ってフォトダイオード44へ進行させる。フォトダイオード44は信号45を生成する。信号45はコーティングの自由表面の変動、たとえば過渡的速度、に比例する。フォトダイオード44の出力電圧信号はデジタイザ46と電気的に通信する。デジタイザはコンピュータ48と通信する出力信号47を生成するように駆動される。
【0031】
デジタイザ46はフォトダイオード44の干渉記録に対応する信号47を生成する。干渉記録はコンピュータ48によって試料集合体16の自由表面の速度と関連づけられる。コーティングの自由表面の過渡的速度はそこで一連の波動方程式により界面での応力に関連づけられる。より詳細にはレーザーフルエンスの各レベルで発生する界面引っ張り応力のピーク値はコンピュータ48によって最大自由表面速度と関連づけられる。コンピュータ48は基板の自由表面で計測された応力パルス(それぞれ独立に計測される)を取得し、それを基板側の界面に作用させ、結果生じる界面とコーティング自由表面での応力の引っ張り振幅のピーク(これは規格化因子を介して規格化されている)を決定する。上述の振幅の比は移動係数を有する。移動係数はコーティング又は基板の自由表面で計測されたピーク応力を界面のピーク応力へ変換するのに使用される。
【0032】
図2Aは当技術分野で一般に使用されているレーザー剥離技術を使用した実験を図示している。3ns長さのNd:YAGレーザーパルスは試料集合体50へ進行し、基板ディスク背面(12mmから25mmの直径及び1mmの厚さを有する)と10μmから20μmの厚さを有するSiO2層に挟まれる0.5μmの厚さを有するアルミニウム膜52上の直径3mmの領域に作用させるようにする。
【0033】
駆動させるとき、第1入射レーザー20は第1軸に沿ってレンズ22へ進行するレーザーパルスを生成する。レンズ22はレーザーパルスを固定層50に入射するコリメートされたビーム24にする。
【0034】
エネルギー吸収層52によるレーザーパルスの吸収はアルミニウム層52の突然の融解誘起の膨張を引き起こす。集合体、たとえば固定材料54及び基板56、の軸的制約のため、膨張は基板56及び試験コーティング58へ向かう圧縮的な衝撃波又はパルスを生成する。試験コーティング58は基板56の前面上に成膜される。
【0035】
図2Bで図示されているように、基板56を介して伝搬する圧縮性応力パルスは基板56と試験コーティング又は試料58との間の界面へ入射する。圧縮性パルスは界面に衝突するので、その一部はコーティングへ透過する。圧縮性パルスはコーティングの自由表面60へ到達する。そこで反射され、引っ張りパルスTを生成する。界面での引っ張り応力はコーティングの自由表面60の過渡的変位履歴(パルス反射の間に誘起される)を計測することで得られる。計測には光干渉計70を使用する。その概略は図2Aに図示されている。十分大きな振幅が与えられたものとして、引っ張りパルスのこの形式こそが基板/コーティング界面からコーティング58を剥離する。
【0036】
応力パルスがコーティング58の表面60又は基板56から反射されるとき、自由表面の粒子は過渡的速度の影響を受ける。この速度は衝突する応力パルスの過渡的プロファイルに比例する。この過渡的速度は図2Aのレーザードップラー干渉計系70によって直接測定される。ドップラー干渉計系70は第2入力レーザー(Arイオン)72、一連のコリメーションレンズ、ミラーM1、ミラーM2、ミラーM3、フォトダイオード74及びデジタイザ76を有する。
【0037】
密度ρで厚さhのコーティングでは、界面での応力は、過渡的速度の測定値v(t)から以下のように求められる。
【0038】
δ(h,t)=ρc[v(t+h/c)− v(t+h/c)]/2
ここでcは膜中の縦応力波速度である。
【0039】
上述の基礎的技術で膜を剥離するのに使用される、レーザーによって発生する応力波履歴は図3で再現される。これらの測定はSiウエハ基板を用いて行われた。立ち上がり及びピーク後の減衰時間はレーザーフルエンスの増大に伴って得られる応力パルス振幅の増加に対して大きくは変化しない。典型的な応力パルスの特徴は1nsから2nsで立ち上がり、約16nsから20nsで徐々にピーク後の減衰が起こる。しかし、数百nsまでの応力波は複合基板で生成することが可能である。応力波の長さと比較して膜が非常に薄い場合、初期の圧縮パルスの後部は依然として界面にある一方で、前部は、膜の自由表面からの反射後引っ張り波として戻される。2つの波の干渉は破壊的なため、ピークの界面引っ張り応力は常に初期圧縮波の振幅よりも小さくなる。
【0040】
界面での引っ張り応力のピークの振幅は膜厚、立ち上がり時間及び応力パルスのピーク後の減衰時間に対して非線形に減少し、膜厚0の極限で0になる。よって層が薄い場合、界面での引っ張り応力のピークは基板内部での引っ張り応力のピークよりもはるかに小さくなりうる。本質的に強固な界面では、そのような条件は大抵の場合、所望の界面が剥離される前に基板内部の破断となる。
【0041】
表1は基本的なレーザー剥離技術を使用して、Siウエハ基板56上にスパッタによって堆積されたコーティング58を有するCu/TiNの2層系の界面引っ張り強度の測定結果をまとめている。コーティング58の膜厚が不十分なため、最初3つの試料については基板56内部で破断が観測された。3つの試料についてのSi基板内部での引っ張り応力のピークは一致していることを明記しておく。このことは、Siの引っ張り強度が5GPaであることを示唆している。これらの試料について、Si/TiN界面での引っ張り応力はむしろ小さく、界面強度よりも小さい。膜厚が増加することで、破断場所は基板から界面へ変化した。一貫して、Si内部の引っ張り応力のピークはこれまでの試料で測定されたSi基板強度よりも小さい。界面強度は最後2つの試料については等しいことが分かった。このことは、界面の化学的性質が厚さを変化させた膜について同じ場合、実験は同じ基本強度を測定するということを示唆している。よって超薄膜の界面強度は、単純に膜厚を増加させる又は上部に他の層を堆積させることで反射圧縮パルスの十分な“スペース(room)”を与えることで可能となる。
【0042】
しかし、複数の系において膜厚が増加するため、考えられる膜の構造及び化学的性質の変化に関する問題のため、好適な方法は常に初期の膜厚の小さい状態での試験、又は実際の装置及び用途で使用されるのと同一の形式での試験である。従って超薄膜(厚さ0.5μm未満)で上手に剥離を行い、続いてそれらの架橋を測定することはとても重要になる。
【0043】
有限要素法に基づくシミュレーションを行って、ユアンとグプタ(Yuan and Gupta)は所与のコーティング厚さで、ピーク後の減衰時間が、界面での引っ張り応力を最大にする上で最も重要になってくることを示した。特に、ピーク後の減衰時間がゼロになる、つまり波形が“希釈衝撃(rarefaction shock)”を有する場合、任意の薄さを有する薄膜の界面引っ張り応力は理論的には入射圧縮パルスの振幅と等しくなる。本発明に従うと、この理論的可能性はガラス層を使用した試料集合体で実験的に実現された。
【0044】
図4は本発明に従った典型的な試料集合体100を図示している。試料集合体100は固定素子102、エネルギー吸収層104、ガラス基板素子106、シリコン基板素子108及び自由表面112を有するコーティング110を有する。すべては軸に沿って軸を横切るように順次設けられ、近接している。
【0045】
図4で図示されているように、Nd−YAGレーザーパルス114は試料集合体100で一般に固定層102を交差する方向に進行する。レーザーパルスは水ガラスの固定層102を通過して、エネルギーを吸収するアルミニウム層104に作用し、加熱する。それに引き続いて起こるアルミニウム層104の膨張は、ガラス基板106及びシリコン基板108を通り抜けて伝搬する圧縮性衝撃波又はパルスを発生させる。パルス波はコーティング110を透過して引っ張りパルスを生成する。
【0046】
エネルギー吸収層104は金、ゲルマニウム又はさらに通常の黒のセロハンテープのような様々な金属又は非金属材料から構成されて良いが、アルミニウム薄膜から構成されるのが好ましい。固定素子102は固体水ガラスから構成されるのが好ましく、厚さは5μmから100μmで、5μmであることが好ましい。固定素子はまた、2−プロパノール、水、SiO2のような当技術分野で既知の同様の品質を有する多数の他の組成物を有しても良い。別な実施例では、固定素子は透明のセロハンテープを有しても良い。
【0047】
シリコン基板30は現実には円形であることが好ましく、直径10mmから30mmで好適には厚さ1mmの単結晶シリコン(Si)ウエハから構成される。試料コーティング32は厚さ0.5μm未満であって良い。
【0048】
応力波はガラス基板素子108で、図1及び特許文献1で実施される実験手順によって計測される。ガラス基板素子108はパイレックス(登録商標)ガラス、ソーダライムガラス、石英ガラス及びボロシリケートガラスを有する。ガラス片の入射応力波プロファイルを正確に画定するため、これらの試験は、名目上の厚さ1.0mmのガラススライドを厚さ0.7mmのSiウエハに架橋することで行われた。なお架橋には厚さ0.5μmの光学グレードEPOTECH 301 FL(商標)エポキシが使用された。水ガラスで固定されたAl膜104を上述の方法で剥離することで、応力波がSi内部で発生した。干渉計測定では、400ÅのAl層をガラスの自由表面上に堆積させた。
【0049】
図5A及び図5Bはレーザーフルエンスを増加させた一連の応力パルスプロファイルを図示している。測定はソーダライムガラスを有するガラス基板素子108で行われた。図5Aで図示されているように、応力振幅の小さいところでは、プロファイルはSi及び他の材料と同様で、有限の立ち上がり時間及び緩やかなピーク後の減衰を有する。しかし応力パルス振幅がある閾値を超えることで、応力波の立ち上がり時間120は長くなるが、ピーク後の応力プロファイルの開始122で急速に減衰する。究極的には、擬似的に即座に落ちるピーク後応力を有するプロファイルが実現する。それは“希釈衝撃”に酷似する。Si基板のみを有する試料集合体と比較したガラス基板素子の試料集合体100の応力波プロファイルの変化は図5Bに図示されている。
【0050】
図6はガラス素子としてパイレックス(登録商標)ガラス、ソーダライムガラス、石英ガラス及びボロシリケートガラスによって測定されたパルスプロファイルを図示している。上述の効果の大きさはガラスによって変化することが分かったが、すべてについて希釈衝撃が形成されることが示された。
【0051】
プレートに衝撃を与えるセットアップを使用したこれまでの研究では、ガラス中での希釈衝撃の形成を明らかにすることができなかった。その理由は、これまでの研究におけるパルス長は試料片の厚さよりも長かったからである。上述したように、希釈衝撃の効果は、パルスが材料へ伝搬する距離が有限のため発展する。応力波のパルス長(〜0.1mm)が試料片の厚さ(〜1mm)よりも短いので、本発明のセットアップでもこの結果を得ることは可能である。
【0052】
ガラス改質による応力波の使用を示すため、表IIにまとめられた試料セットが準備された。全ての膜(コーティング110)は基板上にスパッタで堆積された。各膜厚は表に示されている通りである。応力波はガラス内部で直接的に発生した。レーザー剥離方法と一致して、ガラスの自由表面は厚さ0.5μmのAl膜でコーティングされ、厚さ40μmから50μmの水ガラス層を使用することで上部が固定された。超薄膜界面を剥離するのにガラス改質波が適用できることを示すため、ディスプレイ技術において注目されているTiN/ガラス系及びNi/ガラス系が選ばれた。
【0053】
ガラス基板に加えて、Cu(1400nm)/TiN(70nm)2層系がSi基板ウエハ108の自由表面上にコーティング112として堆積された。これまでは応力パルスがSiウエハ内部で直接発生したときは表IIの試料1で示されているようにSi内部での破断が観測された。これは上述のように界面強度が非常に強いためである。
【0054】
本発明の試験では、コーティングしていないSi基板108の自由表面とはUV処理されたエポキシを使用してパイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス又はボロシリケートガラス層106に架橋された。それはガラス改質波による負荷をかけることができるようにするためである。剥離方法と調和するように、レーザー吸収Al層104がガラス基板106背面に堆積され、厚さ40μmから50μmの水ガラス層で上部から固定された。表IIは様々な構成における関心対象の界面で観測された破断について示している。なお各構成については具体的な引っ張り強度の値が付記している。表IIは、超薄膜界面の引っ張り強度も計測に本発明に従ったガラス基板を使用できる可能性があることを示している。図7A及び図7Bは表IIの試料#1及び試料#2で生じた破断場所を図で対比している。図7Aで図示されているように、ガラス基板が使用されていないときには、Cu(1400nm)/TiN(70nm)/Si系ではSi基板108内部に破断場所が発生した。それとは対照的に、図7Bは、本発明のガラス改質波が使用されたときの高倍率破断像を図示している。矢印は、Si基板108内部では破壊が起こらずにCu/TiN界面(つまりコーティング層110内部)で破断が発生したことを図示している。界面での引っ張り強度の値は2.62GPaと計算で求められた。これはむしろ大きな値で、基本的な剥離セットアップでは実現不可能である。
【0055】
図7A及び図7Bに図示された結果は、図7A及び図7Bで定量的に図示されている。図8Aは2つの計測された自由表面速度プロファイル130及び132を図示している。ボロシリケートガラス改質波及びSi基板で発生する波から得られたプロファイル130及びプロファイル132は図7A及び図7Bに図示されている破断に対応する。従って、希釈衝撃の振る舞いはボロシリケートガラス改質波が生成するプロファイル132で観測された。ボロシリケートガラス改質波プロファイルに対応する2つの界面での引っ張り応力履歴134及び136は図8Bで図示されている基板プロファイルである。図8Bから分かるように、界面での引っ張り応力プロファイル136の劇的な増大がガラス改質波で観測された。
【0056】
ナノテクノロジー領域で重要になってくると思われる関連用途は、エレクトロニクスで使用される基板(Si,Geなど)上にナノ細線から構成される構造を有するナノスケール回路及び素子のようなMEMS及びナノエレクトロニクス素子作製でこれらの特別な波を使用することである。ナノスケール回路に基づく素子は現在のミクロンスケール技術で可能な程度の処理速度より大幅に速くなることが期待されている。現在使用されているフォトリソグラフィ技術は、製造可能な最小素子サイズという点において本質的に限界に達している。ナノ細線製造の新たなアイディアには、電子ビームエッチング(これは極端に遅い)及び異方的な格子ミスマッチに基づく成膜アイディアが含まれる。後者のアプローチでは、膜及び基板に使用される材料は、実質的に1方向に格子ミスマッチが存在し、他の方向にはミスマッチが生じないように選択される。格子ミスマッチのない方向の薄膜成長を促進させる一方で、大きなミスマッチは薄膜成長を制限する。よってこの手順はごくわずかな薄膜/基板の組み合わせに制限される。
【0057】
図9A及び図9Bは、本発明に従ったナノ細線剥離及び取り込み集合体(retrieval assembly)200の概略を図示している。ナノ細線成長の合成に特化された基板上に成長するナノ細線202は本発明の原理を使用して剥離されることが可能である。図4で論じたように、レーザーパルスはガラス基板206の自由面側の薄いAl層に進行して良い。それによって、圧縮性衝撃波がガラス基板206及びそれに隣接するシリコン基板204を介して伝搬する。衝撃波はナノ細線202で反射してシリコン基板204からナノ細線202を剥離する引っ張り力を発生させる。上述のように、そのような薄い細線の剥離は本発明のガラス改質波の使用によってのみ可能である。
【0058】
図9Bで図示されているように、剥離された細線は続いてナノ細線202の自由表面の反対側に設けられている所望のエレクトロニクスで使用される基板上で、“固定され”又は取り込まれ(retrieve)、それによってスペーサ210を介することで剥離されて良い。エレクトロニクスで使用される基板212は超薄膜架橋層214又は自己集合分子層のいずれかを有して良い。この手順を繰り返し使用することで回路の構築が可能となる。この構成では、使用される基板の種類の制限はない。
【0059】
図9Aの系の物理的図示は図10Aで図示されているような断面を有する多層プラスチック基板220上で示される。上部層を表す図10Bの像はSi素子が基板回路とやり取りを行うことを可能にする電気的コンタクトに使用される鉛の隆起物222を図示している。レーザーは本発明に従ったプラスチック基板220の表面下に作用し、基板上部層へ応力波を送った(launch)。応力波は鉛の隆起物を剥離し、これらの剥離された隆起物は図10Bで図示したように柔軟性プラスチックテープ226によって固定された。
【0060】
この手順の成功は図10B及び図11で示されている。これらの像はテープ226上の剥離された鉛の隆起物222の低倍率及び高倍率顕微鏡像である。レーザーエネルギーが増加することで、鉛の隆起物がある領域の下の剥離もまた実現されるということも上記に加えて留意すべきである。
【0061】
よってそのような場合では、下地の膜と共に鉛の隆起物222は基板220から引き離されて自由になり、プラスチックテープ226に捕らえられた。図10Aの暗い領域224は隆起物下にある層である。その層は柔軟性テープ基板226のまさに上部に現れる。図11は剥離された鉛の隆起物の焦点図(focused view)を全体で図示している。ガラス改質波のさらに別な応用はプラスチックのような柔軟性基板上の高性能回路の作製である。それはたとえば、低コストRFIDタグ、TFTベースの高性能コンピュータ及びセンサシステムの製造への応用である。
【0062】
図12で図示されているように、上述のようにすでに十分確立されたプロセス変数を使用することによってガラス又は石英基板304上に非常に高品質なポリシリコン又は単結晶シリコン層302を(有限の領域で)設けて良い。ガラス基板304はその1つの面上にシリカ層310を有して良く、シリカ層310は任意でシリコン層302とガラス基板304の間に設けられて良い。そのとき、アルミニウム膜306及び水ガラス固定素子308がガラス基板304の自由面上に設けられている。
【0063】
すでに製造された高性能回路は最初にSi又はガラスプラットフォーム304上に作製して良い。続いて、ポリシリコン表面302全面をポリマー膜、つまり“受容基板”312でスピンコーティングして良い。この結果、ガラス/Si/ポリマーのサンドイッチ構造が形成される。
【0064】
ポリマー基板をスピンコーティングする代わりに、すでに形成されているポリマーホイル322もまた、図13で図示されているようにSiプラットフォーム324の近くに設置されて良い。Nd:YAGレーザーパルス326を、水ガラス(328)で固定されているAl膜330を有する直径0.5mmから4mmの領域に集束させることで、高振幅圧縮性応力波がガラス基板320の背面上に発生する。応力波は直接Si/ガラス界面を剥ぎ取り、全Si膜、Siプラットフォーム又は回路324を完全にプラスチック基板へ移行させる。
【0065】
さらに別な実施例では、基板320の背面にあるAl層330又は固定水ガラス層328は除去されて良い。この構成では、レーザーパルス326はガラス基板を通り抜け、Si表面と直接相互作用して応力波を送る。この波はSi/ガラス界面に入り込むことでSiプラットフォーム324をポリマー基板322上部へ移行させる。よって、パターンを移行させる機構は両アプローチで同一である。
【0066】
たとえ上述の説明が多くの詳細な事項を含むとしても、これらは本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明の現時点における好適実施例のいくつかを提供しているに過ぎない。従って本発明の範囲は当業者にとって明らかな他の実施例を十分含むし、本発明の範囲は添付請求項以外の何者によっても限定されないということは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】レーザードップラー変位干渉計を使用したレーザー剥離引っ張り強度測定システムの概略図である。
【図2A】従来技術の薄膜試料の架橋特性を試験する試験セットアップを図示している。
【図2B】従来技術の薄膜試料集合体断面の拡大図を図示している。
【図3】レーザーフルエンスを増加させながらシリコン中での測定された応力パルスプロファイルを図示している。
【図4】本発明に従った典型的な薄膜試料集合体の断面図である。
【図5A】レーザーフルエンスを増加させながらソーダライムガラスの応力波プロファイルのグラフを図示している。
【図5B】ソーダライムガラスの応力波プロファイルとSiの応力波プロファイルとを比較したグラフを図示している。
【図6】それぞれ異なる種類のガラスにおける応力波プロファイルのグラフを図示している。
【図7A】ガラスのないCu/TiN/Si系での破断位置を表す写真である。
【図7B】ガラスを有するCu/TiN/Si系での破断位置を表す写真である。
【図8A】図7Aの系の表面速度プロファイルと図7Bの系の表面速度プロファイルとを比較するグラフを図示している。
【図8B】図7Aの系のCu/TiN界面での応力履歴と図7Bの系のCu/TiN界面での応力履歴とを比較するグラフを図示している。
【図9A】本発明に従ったナノワイヤの剥離及び取り込み集合体200の概略図である。
【図9B】本発明に従ったナノワイヤの剥離及び取り込み集合体200の概略図である。
【図10A】本発明に従った鉛の隆起物を有する多層プラスチック基板の断面図である。
【図10B】本発明に従ったフレキシブルプラスチックテープに捕らえられている、応力波で剥離された鉛の隆起物を図示する写真である。
【図11】剥離された鉛の隆起物の焦点図を丸ごと図示する。
【図12】ポリマー膜をスピンコーティングで塗布したポリシリコン表面を有する本発明に従った別の実施例を図示する。
【図13】ポリマーホイルを使用した本発明の他の実施例を図示する。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板とコーティングとの間の引っ張り応力を発生させる装置であって:
第1軸の第1面と第2面で画定される厚みを有する基板;
前記の基板第1面に成膜され、その際前記基板と共に前記第1軸に沿って互いに近接して配置されることで基板との界面を形成することを特徴とするコーティング;及び、
前記基板第2面に配置され、前記第1軸に沿って設けられているガラス素子;
を有し、
前記ガラス素子は応力波を前記コーティング/基板界面へ伝搬させ、前記基板と前記コーティングとの間に引っ張り応力を発生させるように構成されていること、
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記引っ張り応力は前記のコーティング/基板界面で前記基板から前記コーティングを剥離するようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガラスは前記第1軸を進行するNd−YAGレーザービームによる作用によって前記応力波を伝搬させるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記応力波は約5nsから約1μsの範囲の長さを有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記応力波は希釈衝撃の形式を有することを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記コーティングは約0.5μm未満の厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ガラス素子は前記の基板第2面に結合していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ガラス素子は、パイレックス(登録商標)、ソーダライム、石英又はボロシリケートのうちの1つを有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ガラス素子は約0.1mmから約5mmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記基板はシリコンを有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ガラス素子に隣接して設けられている固定素子をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記固定層と前記ガラス素子との間に設けられるエネルギー吸収層をさらに有する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
コーティングを基板から剥離し、前記基板は第1軸を横切るように設けられている第1面及び第2面を有し、前記コーティングは基板第1面に成膜され、その際前記コーティング及び基板は前記第1軸に沿って近接して配置されることで、コーティング/基板界面を形成することを特徴とする方法であって:
ガラス素子を前記の基板第2面上で前記第1軸に沿って設置する工程;
前記ガラス素子へ前記第1軸方向にレーザーパルスを進行させる工程;
前記ガラス素子を介して応力波をコーティング/基板界面へ伝搬させることで前記基板と前記コーティングとの間に引っ張り応力を発生させる工程;及び、
前記応力波が発生させる引っ張り応力によって、前記基板から前記コーティングを剥離する工程;
を有する方法。
【請求項14】
前記の第1軸方向にレーザーパルスを進行させる工程は前記第1軸方向にNd−YAGレーザービームを進行させる工程を有することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記の応力波を伝搬させる工程は約5nsから約1μsの範囲の長さを有する応力波を伝搬させる工程を有することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記応力波は希釈衝撃の形式を有することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記応力波は約5μm未満の厚さを有するコーティングを剥離することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記の第1軸に沿ってガラス素子を配置する工程は前記ガラス素子を前記の基板第2面に結合させる工程を有することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ガラス素子は、パイレックス(登録商標)、ソーダライム、石英又はボロシリケートのうちの1つを有することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記ガラス素子は約0.1mmから約5mmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ガラス素子の自由面に隣接する固定素子をさらに有する、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記ガラス素子自由面上であって、前記固定層と前記ガラス素子との間にあるエネルギー吸収層をコーティングする工程;
をさらに有し、
前記の第1軸に沿ってレーザーパルスを進行させる工程は前記ガラス素子をコーティングする前記エネルギー吸収層へ前記レーザーパルスを進行させる工程を有することを特徴とする、
請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記のコーティング/基板界面での前記の応力波によって発生する応力は約1.0GPaを超えることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記のコーティング/基板界面での前記の応力波によって発生する応力は約2.0GPaを超えることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
第1基板からナノ構造を剥離する装置であって:
前記ナノ構造の反対側である前記第1基板の背面上に配置されるガラス素子;及び、
前記ガラス素子へレーザービームを進行させるように構成されているレーザー光源;
を有し、
前記ナノ構造は第1基板前面に取り付けられていて、
前記ガラス素子は、前記レーザービームの作用によって応力波を前記ナノ構造へ伝搬させ、前記ナノ構造と前記第1基板との間に引っ張り応力を発生させ、前記第1基板から前記ナノ構造を剥離すること、
を特徴とする装置。
【請求項26】
前記レーザー光源はNd−YAGレーザーを有することを特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記ガラス素子は、パイレックス(登録商標)、ソーダライム、石英又はボロシリケートのうちの1つを有することを特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記固定層と前記ガラス素子との間に設けられているエネルギー吸収層をさらに有する、請求項25に記載の装置。
【請求項29】
前記の第1基板前面の反対側に位置する第2基板;
をさらに有し、
前記第2基板は一旦前記第1基板から剥離された前記ナノ構造を受け取るように構成されていること、
を特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項30】
前記第2基板上に設けられる架橋層を有し、
前記架橋層は前記ナノ構造と前記第2基板との間の結合を形成するように構成されていること、
を特徴とする、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記第2基板から前記第1基板を剥離する1つ以上のスペーサをさらに有する、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
シリコンプラットフォームを受け取り基板(receiving substrate)に移行する装置であって:
前記シリコンプラットフォームの背面上に設けられるガラス基板;及び、
前記ガラス素子へレーザービームを進行させるように構成されているレーザー光源;
を有し、
前記ガラス素子はレーザービームが作用することで、前記シリコンプラットフォームと前記ガラス基板との間に引っ張り応力を発生させるようになっていて、かつ、
前記引っ張り応力は前記受け取り基板へシリコンプラットフォームを受け渡すようになっていること、
を特徴とする装置。
【請求項33】
前記シリコンプラットフォームの反対側で前記ガラス基板に隣接するエネルギー吸収層をさらに有し、
前記エネルギー吸収層及び前記ガラス基板は前記ガラス基板を通り抜けるように応力波を伝搬させ、前記シリコンプラットフォームと前記ガラス基板との間に前記引っ張り応力を発生させること、
を特徴とする、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記レーザービームは前記ガラス基板を通り抜けることで、前記シリコンプラットフォームと前記ガラス基板との間に前記引っ張り応力を発生させることを特徴とする、請求項32に記載の装置。
【請求項35】
前記シリコンプラットフォームは1つ以上の回路を有することを特徴とする、請求項32に記載の装置。
【請求項36】
前記受け取り基板はポリマーを有することを特徴とする、請求項32に記載の装置。
【請求項37】
前記受け取り基板はポリマー膜でスピンコーティングされることを特徴とする、請求項36に記載の装置。
【請求項1】
基板とコーティングとの間の引っ張り応力を発生させる装置であって:
第1軸の第1面と第2面で画定される厚みを有する基板;
前記の基板第1面に成膜され、その際前記基板と共に前記第1軸に沿って互いに近接して配置されることで基板との界面を形成することを特徴とするコーティング;及び、
前記基板第2面に配置され、前記第1軸に沿って設けられているガラス素子;
を有し、
前記ガラス素子は応力波を前記コーティング/基板界面へ伝搬させ、前記基板と前記コーティングとの間に引っ張り応力を発生させるように構成されていること、
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記引っ張り応力は前記のコーティング/基板界面で前記基板から前記コーティングを剥離するようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガラスは前記第1軸を進行するNd−YAGレーザービームによる作用によって前記応力波を伝搬させるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記応力波は約5nsから約1μsの範囲の長さを有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記応力波は希釈衝撃の形式を有することを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記コーティングは約0.5μm未満の厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ガラス素子は前記の基板第2面に結合していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ガラス素子は、パイレックス(登録商標)、ソーダライム、石英又はボロシリケートのうちの1つを有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ガラス素子は約0.1mmから約5mmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記基板はシリコンを有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ガラス素子に隣接して設けられている固定素子をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記固定層と前記ガラス素子との間に設けられるエネルギー吸収層をさらに有する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
コーティングを基板から剥離し、前記基板は第1軸を横切るように設けられている第1面及び第2面を有し、前記コーティングは基板第1面に成膜され、その際前記コーティング及び基板は前記第1軸に沿って近接して配置されることで、コーティング/基板界面を形成することを特徴とする方法であって:
ガラス素子を前記の基板第2面上で前記第1軸に沿って設置する工程;
前記ガラス素子へ前記第1軸方向にレーザーパルスを進行させる工程;
前記ガラス素子を介して応力波をコーティング/基板界面へ伝搬させることで前記基板と前記コーティングとの間に引っ張り応力を発生させる工程;及び、
前記応力波が発生させる引っ張り応力によって、前記基板から前記コーティングを剥離する工程;
を有する方法。
【請求項14】
前記の第1軸方向にレーザーパルスを進行させる工程は前記第1軸方向にNd−YAGレーザービームを進行させる工程を有することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記の応力波を伝搬させる工程は約5nsから約1μsの範囲の長さを有する応力波を伝搬させる工程を有することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記応力波は希釈衝撃の形式を有することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記応力波は約5μm未満の厚さを有するコーティングを剥離することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記の第1軸に沿ってガラス素子を配置する工程は前記ガラス素子を前記の基板第2面に結合させる工程を有することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ガラス素子は、パイレックス(登録商標)、ソーダライム、石英又はボロシリケートのうちの1つを有することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記ガラス素子は約0.1mmから約5mmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ガラス素子の自由面に隣接する固定素子をさらに有する、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記ガラス素子自由面上であって、前記固定層と前記ガラス素子との間にあるエネルギー吸収層をコーティングする工程;
をさらに有し、
前記の第1軸に沿ってレーザーパルスを進行させる工程は前記ガラス素子をコーティングする前記エネルギー吸収層へ前記レーザーパルスを進行させる工程を有することを特徴とする、
請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記のコーティング/基板界面での前記の応力波によって発生する応力は約1.0GPaを超えることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記のコーティング/基板界面での前記の応力波によって発生する応力は約2.0GPaを超えることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
第1基板からナノ構造を剥離する装置であって:
前記ナノ構造の反対側である前記第1基板の背面上に配置されるガラス素子;及び、
前記ガラス素子へレーザービームを進行させるように構成されているレーザー光源;
を有し、
前記ナノ構造は第1基板前面に取り付けられていて、
前記ガラス素子は、前記レーザービームの作用によって応力波を前記ナノ構造へ伝搬させ、前記ナノ構造と前記第1基板との間に引っ張り応力を発生させ、前記第1基板から前記ナノ構造を剥離すること、
を特徴とする装置。
【請求項26】
前記レーザー光源はNd−YAGレーザーを有することを特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記ガラス素子は、パイレックス(登録商標)、ソーダライム、石英又はボロシリケートのうちの1つを有することを特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記固定層と前記ガラス素子との間に設けられているエネルギー吸収層をさらに有する、請求項25に記載の装置。
【請求項29】
前記の第1基板前面の反対側に位置する第2基板;
をさらに有し、
前記第2基板は一旦前記第1基板から剥離された前記ナノ構造を受け取るように構成されていること、
を特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項30】
前記第2基板上に設けられる架橋層を有し、
前記架橋層は前記ナノ構造と前記第2基板との間の結合を形成するように構成されていること、
を特徴とする、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記第2基板から前記第1基板を剥離する1つ以上のスペーサをさらに有する、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
シリコンプラットフォームを受け取り基板(receiving substrate)に移行する装置であって:
前記シリコンプラットフォームの背面上に設けられるガラス基板;及び、
前記ガラス素子へレーザービームを進行させるように構成されているレーザー光源;
を有し、
前記ガラス素子はレーザービームが作用することで、前記シリコンプラットフォームと前記ガラス基板との間に引っ張り応力を発生させるようになっていて、かつ、
前記引っ張り応力は前記受け取り基板へシリコンプラットフォームを受け渡すようになっていること、
を特徴とする装置。
【請求項33】
前記シリコンプラットフォームの反対側で前記ガラス基板に隣接するエネルギー吸収層をさらに有し、
前記エネルギー吸収層及び前記ガラス基板は前記ガラス基板を通り抜けるように応力波を伝搬させ、前記シリコンプラットフォームと前記ガラス基板との間に前記引っ張り応力を発生させること、
を特徴とする、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記レーザービームは前記ガラス基板を通り抜けることで、前記シリコンプラットフォームと前記ガラス基板との間に前記引っ張り応力を発生させることを特徴とする、請求項32に記載の装置。
【請求項35】
前記シリコンプラットフォームは1つ以上の回路を有することを特徴とする、請求項32に記載の装置。
【請求項36】
前記受け取り基板はポリマーを有することを特徴とする、請求項32に記載の装置。
【請求項37】
前記受け取り基板はポリマー膜でスピンコーティングされることを特徴とする、請求項36に記載の装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−527538(P2007−527538A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502074(P2007−502074)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/007304
【国際公開番号】WO2005/084393
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(501325945)ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア (10)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/007304
【国際公開番号】WO2005/084393
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(501325945)ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア (10)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】
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