説明

超電導ケーブルの製造方法及び製造装置

【課題】冷却時の熱収縮代を充分に得られる程度の弛み状態が形成された超電導ケーブルを製造することができる製造装置を提供する。
【解決手段】複数のコアが弛みなく撚り合わされたコア束6を断熱管13の方に押し込み移動させるための押込手段1と断熱管13の間に配設され、冷却時の熱収縮を吸収するために必要な弛みをコア相互間に付与するための弛緩発生手段7を備え、弛緩発生手段7は、押込手段1によって押し出されるコア束6の中心に向けて先端を対向させて配置される先尖り状の棒状抵抗体8と、その棒状抵抗体8の後段に該棒状抵抗体8と同心状に転動自在に配設され、かつ軸方向への移動が規制される放射状抵抗体ユニット9を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数心のコアが撚り合わされた状態で断熱管に収納される超電導ケーブルの製造方法及び製造装置に関する。特に、冷却時の熱収縮を吸収するために必要な弛みをコア相互間に形成した状態で断熱管に収納するようにした超電導ケーブルの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多心一括型超電導ケーブル(以下、超電導ケーブルという)は、超電導層を有するケーブルコアと、このコアを収納する断熱管とを備える。このような超電導ケーブルは、超電導層を超電導状態とするために、布設後に、断熱管内に液体窒素などの冷媒を充填させてケーブルコアを冷却するようになっている。
【0003】
断熱管内のケーブルコアは、常温(約300K)から約80K以下(冷媒が液体窒素の場合、約77K)の極低温に冷却されると約0.3%熱収縮する。従って、例えばケーブル100mごとに30cm程度の熱収縮を生じる。
【0004】
通常、超電導ケーブルの両端部には、ケーブル同士を接続する中間接続部や、超電導ケーブルと常温側に配置される電力機器とを接続する終端接続部が設けられ、超電導ケーブルは両端末および所定の位置で固定される。従って、ケーブルコアが冷却により収縮すると、ケーブルコアが少なくとも両端末部で固定されているために、コア相互間の撚りが締まる方向にケーブルコアが収縮変形する。
【0005】
その結果、ケーブルコアは、ケーブル軸方向の応力と、側圧よる径方向の応力とが生じる。このような応力が過大になると、超電導層が破損して超電導ケーブルとして機能できなくなることが懸念される。
【0006】
このようなことから、例えば熱収縮を吸収するのに必要なだけの弛みを持たせるように撚り合わせた複数のケーブルコアを断熱管内に収納するように構成した超電導ケーブルが提案されている。
【0007】
例えば3心のケーブルコアの中心に熱収縮の大きい介在物を挿入させてケーブルコアを撚り合せるようにした方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。このように介在物を挿入することにより、各ケーブルコアが径方向に拡がった状態で撚り合わせることができる。そして、ケーブルコアを冷却した時には、ケーブルコアの熱収縮に伴って介在物も熱収縮させることにより、撚り合わされた3心ケーブルコアの径が縮小される方向に変化されて熱収縮を吸収できるようにしている。
【0008】
また、別の方法では、まず、3心のケーブルコアの間にテープ状のスペーサーを配置しながら、これらケーブルコアを撚り合せる。次に、この撚り合わせたケーブルコアを断熱管内に収納する前にスペーサーを取り除いて、撚りを弛ませた状態でケーブルコアを断熱管内に収納するようにしている(例えば特許文献2参照)。
【0009】
このような方法では、断熱管の内部にケーブルコアを収納する前に、ケーブルコア間のスペーサーが除去されるので、断熱管に収納されたケーブルコアは、スペーサーに拘束されることなく撚りに弛みを持たせることができる。その結果、撚り合わされたケーブルコアは、この弛みで冷却時の熱収縮を吸収できることになる。
【0010】
【特許文献1】特開平9−134620号公報
【特許文献2】特開2002−216555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の前者の方法では、ケーブル全長に亘る介在物が必要となるためコスト高になる。また、後者の方法のように、スペーサーを繰り返して使用する場合、スペーサーを挿入したり取り外したりするための複雑な操作が必要となり装置も複雑化する。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、コア相互間に介在物を介在させることなく、また、スペーサー等を挿入したり取り外したりする面倒な操作を要することなく、各コア相互間に適切な弛みを形成することができる超電導ケーブルの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の超電導ケーブルの製造方法は、複数のコアが弛みなく撚り合わされたコア束を断熱管の方に押し込み移動させる押込工程の後段に、冷却時の熱収縮を吸収するために必要な弛みをコア相互間に形成する弛緩工程を設け、該弛緩工程でコア相互間に弛みを形成した後、該コア束を前記断熱管内に収納する超電導ケーブルの製造方法にあって、
前記弛緩工程では、前記押込工程によって押し込まれるコア束の中心に向けて先端を対向させて配置される先尖り状の棒状抵抗体により、押し込み力を利用して各コアを強制的に分離させることで撚りを弛ませることを特徴としている。
【0014】
このような方法では、弛緩工程において、コア束の中心に向けて先端を対向させて配置される先尖り状の棒状抵抗体により、コア束に作用する押し込み力を利用して各コアを強制的に分離させる。これにより、その棒状抵抗体の外径と略同等のコア中心隙間が形成されて各コア相互間に弛みを付与することができる。この状態の各コアを断熱管内に収納すれば、弛みが形成された超電導ケーブルを得ることができる。その弛みの度合いは、棒状抵抗体の径や長さを選択することによって調整することができる。
【0015】
前記弛緩工程では、さらに、押し込み力に抗する放射状抵抗体を各コア相互間に介在させて各コアの強制的な分離状態を維持させるようにしてもよい。その放射状抵抗体は、例えば、線材、棒材、板材等を軸部の周りに放射状に組み合わせて簡易に構成することができ、各コアを放射状抵抗体間に導入した状態にて、コア束に押し出し力を作用させれば、棒状抵抗体によって強制的に分離された状態を放射状抵抗体によって維持することができるため、各コア相互間により確実な状態で弛みを形成することができる。
【0016】
また、前記放射状抵抗体を押し込み力の作用する方向に複数同心状に設け、各コアの強制的な分離状態を連続的に維持させるようにしてもよい。このようにすれば、各コアの直線状態を維持しつつより一層確実な状態で弛みを形成することができる。
【0017】
本発明の超電導ケーブルの製造装置は、複数のコアが弛みなく撚り合わされたコア束を断熱管の方に押し込み移動させるための押込手段と前記断熱管との間に配設され、冷却時の熱収縮を吸収するために必要な弛みをコア相互間に付与するための弛緩発生手段を備えた超電導ケーブルの製造装置にあって、
前記弛緩発生手段は、前記押込手段によって押し出されるコア束の中心に向けて先端を対向させて配置される先尖り状の棒状抵抗体を有することを特徴としている。
【0018】
このような構成によれば、コア束の中心に向けて先端を対向させて配置される先尖り状の棒状抵抗体により、コア束に作用する押し込み力を利用して各コアを強制的に分離させて、その棒状抵抗体の外径と略同等のコア中心隙間を形成することができる。これにより、各コア相互間に弛みを付与することができ、この状態の各コアを断熱管内に収納すれば、弛みが形成された超電導ケーブルを得ることができる。その弛みの度合いは、棒状抵抗体の径や長さを選択することによって適宜に調整することができる。
【0019】
また、前記弛緩発生手段は、前記棒状抵抗体の後段に該棒状抵抗体と同心状に転動自在に配設され、かつ軸方向への移動が規制される放射状抵抗体ユニットをさらに有し、前記放射状抵抗体ユニットは、各コアを相互に分離するための放射状抵抗体と、該放射状抵抗体によって分離される各コアの放射方向への飛び出しを阻止するために前記放射状抵抗体の外端を覆うように設けられる飛出阻止部材とからなるようにしてもよい。このようにすれば、各コアを放射状抵抗体間に導入した状態にて、コア束に押し出し力を作用させれば、棒状抵抗体によって各コアが強制的に分離された状態を放射状抵抗体によって維持することができ、各コア相互間により確実な状態で弛みを形成することができる。また、その分離状態を維持する過程で飛出阻止部材によって各コアの放射方向への飛び出しが阻止されるため、過度の弛みが防止され適切な分離状態が確実に維持される。
【0020】
前記放射状抵抗体は、軸部の周りに放射状に取り付けられる平板部材からなり、円環状に形成された前記飛出阻止部材の外周に配設された複数のローラによって、前記放射状抵抗体ユニットが転動自在に支持されるようにしてもよい。このようにすれば、放射状抵抗体ユニットを簡易な構成で形成することができ、その放射状抵抗体ユニットを安定に支持するための構成も簡易に形成することができる。また、軸部の径と略同等のコア中心隙間が形成された状態を維持することができる。
【0021】
複数の前記放射状抵抗体ユニットが、軸部同士を近接させた同心状態にて相互に拘束されることなく各独立に配設されるようにしてもよい。このようにすれば、複数の放射状抵抗体ユニットによって、コア束の直線状態を維持しやすくなり蛇行のない状態で弛みを形成することができる。
【0022】
前記平板部材の板面を、コアの撚り合わせ方向に沿うように偏向させるようにしてもよい。このようにすれば、各コアに対する平板部材の摩擦抵抗が少なくなるため、各コアの直線性を維持しやすくなり蛇行のない状態で弛みを形成しやすくなる。
【0023】
前記平板部材は、少なくとも上流側先端面が曲面状又は先細りの傾斜状に形成されるようにしてもよい。このようにすれば、各コアに対する平板部材の摩擦抵抗が少なくなるため、コア束の直線性を維持しやすくなり蛇行のない状態で弛みを形成しやすくなる。
【0024】
前記平板部材の表面に、コアに対する摩擦抵抗を低減するための滑動層を形成してもよい。このようにすれば、各コアに対する摩擦抵抗が少なくなるため、コア束の直線性を維持しやすくなり蛇行のない状態で弛みを形成しやすくなる。その滑動層は、例えばテフロン(登録商標)等をコーティングすることにより形成することができる。
【0025】
前記放射状抵抗体ユニットに軸方向に作用する抵抗値(荷重)に基づいて前記押込手段の押し込み速度を調整することによりコア相互間の弛み状態を調整するようにしてもよい。このようにすれば、適切な弛み状態を確実に形成することができる。即ち、抵抗値が(基準値よりも)高い場合には押し込み速度を遅く、抵抗値が低い場合には押し込み速度を早くすることによって、コア束の直線状態を維持しつつ適切な弛み状態を形成することができる。このような抵抗値に基づいた押し込み速度の調整については、例えば、コアの径や撚りピッチに対応する適切な抵抗値と押し込み速度の関係を、予め経験的に求めておき、そのデータに基づいて制御手段を介して自動的に押し込み速度を制御するようにしてもよい。その抵抗値の測定には、ロードセル等の各種荷重検出手段、装置を採用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の超電導ケーブルの製造方法では、複数のコアが弛みなく撚り合わされたコア束を断熱管の方に押し込み移動させる押込工程の後段に設けた弛緩工程で、押込工程によって押し込まれるコア束の中心に向けて先端を対向させて配置される先尖り状の棒状抵抗体により、押し込み力を利用して各コアを強制的に分離させることで撚りを弛ませる。これにより、その棒状抵抗体の外径と略同等のコア中心隙間が形成されて各コア相互間に弛みを付与することができ、この状態の各コアを断熱管内に収納すれば、各コア相互間に弛みが形成された超電導ケーブルを得ることができる。
【0027】
本発明の超電導ケーブルの製造装置では、複数のコアが弛みなく撚り合わされたコア束を断熱管の方に押し込み移動させるための押込手段と断熱管の間とに配設した弛緩発生手段が、コア束の中心に向けて先端を対向させて配置される先尖り状の棒状抵抗体を有している。この棒状抵抗体により、コア束に作用する押し込み力を利用して各コアを強制的に分離させて、その棒状抵抗体の外径と略同等のコア中心隙間を形成して各コア相互間に弛みを付与することができ、この状態のコア束を断熱管内に収納することにより、各コア相互間に弛みが付与された超電導ケーブルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルの製造方法及び製造装置について説明する。図1は超電導ケーブルの製造装置の構成を示す斜視説明図である。この製造装置は、複数のコアが弛みなく撚り合わされたコア束6を断熱管13の方に押し込み移動させるための押込手段1と前記断熱管13との間に、冷却時の熱収縮を吸収するために必要な弛みをコア相互間に付与するための弛緩発生手段7を備えている。
【0029】
押込手段1は、図示省略の駆動源によって駆動される駆動プーリ2と従動プーリ3に掛張されたエンドレスベルト4からなる一対の駆動ユニット5,5が所定の間隔をおいて対向して配設されてなり、両エンドレスベルト4,4間にコア束6を挟んで押し込み方向(矢印C方向)に移動させるように構成される。
【0030】
弛緩発生手段7は、コア束6の中心に向けて先端を対向させて位置固定かつ回動自在に配置される先尖り状の棒状抵抗体8と、棒状抵抗体8の後段に該棒状抵抗体8と同心状に転動自在に配設され、かつ軸方向への移動が規制される放射状抵抗体ユニット9と、を備えている。その放射状抵抗体ユニット9は、放射状抵抗体11とリング状の飛出阻止部材12とからなる。その放射状抵抗体11は、棒状抵抗体8の最大径と略同等の外径を有する軸部10の周りに放射状に取り付けられて各コア61,62,63を相互に分離された状態に維持するための平板部材からなる。飛出阻止部材12は、放射状抵抗体11によって分離状態を維持される各コア61,62,63の放射方向への飛び出しを阻止するために放射状抵抗体11の外端を覆うように設けられる。本実施の形態では、3つの放射状抵抗体ユニット9を棒状抵抗体8と同心状に互いに近接させた状態に連設している。尚、棒状抵抗体8は、3つの放射状抵抗体ユニット9の中の最上流側の放射状抵抗体ユニット9の軸部10と凹凸嵌合等によって相対回動自在な状態に相互に接続されるのが好ましい。
【0031】
弛緩発生手段7によってコア相互間に弛み状態が形成された状態のコア束6を収納するための断熱管13は、例えばSUS材等によって内管と外管とからなる二重管構造に形成される(図1は断熱管13の内管のみを示す)。内管内にコア束6が押し込まれた後は、溶接機(図示省略)によってシームが溶接される。溶接された後は、内管の外側にスーパーインシュレーション(図示省略)等の断熱材巻き付け、さらにその外側に外管を被せて両管内が真空引きされる。
【0032】
以上のように構成される超電導ケーブルの製造装置では、まず、準備段階として、コア束6を捌いて各コア61,62,63を棒状抵抗体8の先端で分離させた状態として、さらに、3つの放射状抵抗体ユニット9の各放射状抵抗体11,11間に各コア61,62,63をそれぞれ挿通させた後、その先端部を断熱管13の内管内に導入しておく。あるいは、押込手段1と断熱管13の間に懸け渡されているコア束6を撚りを戻す等により捌いて、後述するように分解組立自在に構成した各放射状抵抗体ユニット9のパーツを棒状抵抗体8と共にコア束6の側方から挿入して、図示のように、棒状抵抗体8の先端で各コア61,62,63を分離させて各放射状抵抗体11,11間にそれぞれ挿通させた状態として各放射状抵抗体ユニット9を組み立てるようにしてもよい。
【0033】
このような準備状態が完了した時点で、押込手段1を起動させてコア束6の押し込み操作を開始する。そうすると、まず、各コア61,62,63が棒状抵抗体8によって強制的に分離されつつ、その棒状抵抗体8の(最大の)外径と略同等のコア中心隙間が形成され各コア相互間に弛みを付与することができる。次いで、このように分離された状態の各コア61,62,63は、3つの放射状抵抗体ユニット9の各放射状抵抗体11,11によってその分離状態が維持され、各コア相互間に確実な状態で弛みが形成された状態で断熱管13に導入される。即ち、放射状抵抗体ユニット9の軸部10は、棒状抵抗体8と略同等の外径を有しているため、棒状抵抗体8によって形成されたコア中心隙間がそのまま維持される。そして、放射状抵抗体11,11の間に挿通された各コア61,62,63の撚りぐせによって各放射状抵抗体ユニット9が撚り方向にそれぞれ従動回転しながら、放射状抵抗体11,11によって各コア61,62,63がそれぞれ個々に支持されるため蛇行することなく分離状態が維持され、その過程で飛出阻止部材12によって各コア61,62,63の放射方向への飛び出しが阻止されるため、その分離状態が確実に維持されることになる。
【0034】
図2は棒状抵抗体8と最上流側の放射状抵抗体ユニット9(7)の組み付け状態を示す斜視図である。棒状抵抗体8の基部は、放射状抵抗体ユニット9の軸部10の先端と凹凸嵌合(図示省略)等によって相対回動自在な状態に相互に接続されるのが好ましい。本発明では、前述したように、棒状抵抗体8のみによっても(放射状抵抗体ユニット9を要することなく)、各コア61,62,63を強制的に分離することができ、その棒状抵抗体8の(最大の)外径と略同等のコア中心隙間が形成され各コア相互間に弛みを付与することができる。従って、このような弛み状態が形成されたコア束6をそのまま断熱管13に収納すればよい。このように棒状抵抗体8を単独で設ける場合、その支持構造は、例えば棒状抵抗体8に放射状の支持部材を設けてその外周にリング状部材を取り付け、そのリング状部材の外周に複数の支持ローラを配設して、棒状抵抗体8を回動自在かつ軸方向への移動を規制した状態に支持させるようにしてもよい(図5,図6等に示す放射状抵抗体ユニット9の支持構造と略同様)。その支持部材はコア数に対応する本数(3心コアの場合は3本)を設けて各コアを各支持部材間に挿通させるようにすればよい。
【0035】
図3(a)(b)は分解組立自在に構成された放射状抵抗体ユニット9の飛出阻止部材12を省略した要部構成の一例を示す斜視図である。図3(a)は、3枚の放射状抵抗体11の基部の異なる位置にそれぞれ形成した軸孔部11aを丸棒状の軸部材10aに順次挿通させて各放射状抵抗体11を等間隔の放射状に固定保持できるようにした例を示す。図3(b)は、3つの放射状抵抗体11の基部を軸部10に形成した溝に嵌め込んで一体的に固定できるようにした例を示す。図4(a)(b)に示す例では、放射状抵抗体ユニット9に押し込み操作される各コア61,62,63に対する抵抗を低減するために、放射状抵抗体11の断面形状(図4(b)のハッチング参照)を翼型断面に形成し、その上流端及び下流端を面取り状に形成している。このような断面形状にすれば、各コアに対する放射状抵抗体11の摩擦抵抗が少なくなるため、コア束6の直線性を維持しやすくなり蛇行のない弛み状態を形成しやすくなる。尚、平板部材からなる放射状抵抗体11は、少なくとも上流側先端面が曲面状又は先細りの傾斜状に形成されていればよい。また、図4(a)では、放射状抵抗体11の板面を軸部10に沿う方向に取り付けているが、図4(b)に示すように、放射状抵抗体11の板面を、コアの撚り合わせ方向に沿うように軸部10に対して若干偏向させて取り付けた場合には、各コアに対する放射状抵抗体11の摩擦抵抗をより一層少なくすることができる。あるいは、放射状抵抗体11の表面に、コアに対する摩擦抵抗を低減するための滑動層を形成することによっても各コアに対する摩擦抵抗を少なくすることができコアの直線性を維持しやすくなり蛇行のない状態で弛みを形成しやすくなる。その滑動層は、例えばテフロン(登録商標)等をコーティングすることにより形成することができる。
【0036】
図5及び図6は、分解組立自在に構成した放射状抵抗体ユニット9とその支持構造の例を示す。これらの例では、放射状抵抗体ユニット9は、放射状抵抗体11と飛出阻止部材12を一体的に形成した3つのパーツを、軸部10に対して分解組立自在に構成して、前述したように、コア束6の撚りを戻す等して捌いた状態の各コアの横から各パーツを挿入して放射状抵抗体ユニット9を組み立ることができるようにしている。即ち、まず、各コアの中心に軸部10を挿入し、次いで、飛出阻止部材12と一体化された放射状抵抗体11の基部を、それぞれ軸部10に形成した溝に嵌め込む。そして、飛出阻止部材12の外周両側に固定ベルト14,14を巻回して、そのベルト14,14の両端をボルト15,15で固定することによって全体を一体化することができる。さらに、固定ベルト14,14間に溝状に露出した飛出阻止部材12の外周面を、装置基台(図示省略)に固定支持された支持部材17に遊転自在に支持された3つのローラ16に摺接支持させることで、放射状抵抗体ユニット9を軸方向への移動を規制した状態で転動自在に支持させることができる。
【0037】
図7は、コア束6が矢印C方向に押し込まれることによって放射状抵抗体ユニット9に作用する軸方向の押圧荷重(抵抗値)を検出できるようにした基本的な構成の一例を示す。この場合、放射状抵抗体11と飛出阻止部材12を高剛性に形成し、飛出阻止部材12の背面側(下流側)端面にスラストベアリング18を配設し、さらにその背面側に固定状態に配設したリング状の固定支持部材19とスラストベアリング18の間に圧縮型のロードセル20を介設している。
【0038】
このような構成にすれば、ロードセル20によって検出される抵抗値が基準値よりも高い場合には押し込み速度を遅く、抵抗値が低い場合には押し込み速度を早くすることによって、直線状態を維持しつつ適切な弛み状態を形成することができる。このような抵抗値に基づいた押し込み速度の調整については、例えば、コアの径や撚りピッチに対応する適切な抵抗値と押し込み速度の関係を、予め経験的に求めておき、そのデータに基づいて制御手段を介して自動的に押し込み速度を制御すればよい。
【0039】
尚、本発明は、押込手段を図1に示す構成に限定するものではなく、コア束6を押し込み操作することができるものであれば、その構成や形式の如何を問わず採用することができる。また、本実施の形態では、3つの放射状抵抗体ユニット9によって弛緩発生手段7を構成しているが、放射状抵抗体ユニット9は単一であってもよく、2つ又は4つ以上設けられてもよい。また、ケーブルコアの撚り合わせ本数は2心、3心、4心など何れの本数でもよく、放射状抵抗体ユニット9の放射状抵抗体11の本数は、心数に一致させるように構成すればよい。また、飛出阻止部材12は円環状に形成されるのが好ましいが、例えば四角形状等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の超電導ケーブルの製造装置によって製造された超電導ケーブルは、交流送電又は直流送電といった電力供給に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルの製造装置の構成を示す斜視説明図である。
【図2】同棒状抵抗体と最上流側の放射状抵抗体ユニットの組み付け状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は同放射状抵抗体ユニットの要部構成を示す斜視図、(b)は同放射状抵抗体ユニットの要部断面図である。
【図4】(a)は同放射状抵抗体ユニットの斜視図、(b)は同放射状抵抗体ユニットの一部破断斜視図である。
【図5】同放射状抵抗体ユニットの支持構造の説明図である。
【図6】同放射状抵抗体ユニットの支持構造の斜視図である。
【図7】同放射状抵抗体ユニットの断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 押込手段
2 駆動プーリ
3 従動プーリ
4 エンドレスベルト
5 駆動ユニット
6 コア束
7 弛緩発生手段
8 棒状抵抗体
9 放射状抵抗体ユニット
10 軸部 10a 軸部材
11 放射状抵抗体 11a 軸孔部
12 飛出阻止部材
13 断熱管
14 固定ベルト
15 ボルト
16 ローラ
17 支持部材
18 スラストベアリング
19 固定支持部材
20 ロードセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアが弛みなく撚り合わされたコア束を断熱管の方に押し込み移動させる押込工程の後段に、冷却時の熱収縮を吸収するために必要な弛みをコア相互間に形成する弛緩工程を設け、該弛緩工程でコア相互間に弛みを形成した後、該コア束を前記断熱管内に収納する超電導ケーブルの製造方法であって、
前記弛緩工程では、前記押込工程によって押し込まれるコア束の中心に向けて先端を対向させて配置される先尖り状の棒状抵抗体により、押し込み力を利用して各コアを強制的に分離させることで撚りを弛ませることを特徴とする超電導ケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記弛緩工程では、さらに、押し込み力に抗する放射状抵抗体を各コア相互間に介在させて各コアの強制的な分離状態を維持させることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの製造方法。
【請求項3】
前記放射状抵抗体を押し込み力の作用する方向に複数同心状に設け、各コアの強制的な分離状態を連続的に維持させることを特徴とする請求項2に記載の超電導ケーブルの製造方法。
【請求項4】
複数のコアが弛みなく撚り合わされたコア束を断熱管の方に押し込み移動させるための押込手段と前記断熱管との間に配設され、冷却時の熱収縮を吸収するために必要な弛みをコア相互間に付与するための弛緩発生手段を備えた超電導ケーブルの製造装置であって、
前記弛緩発生手段は、前記押込手段によって押し出されるコア束の中心に向けて先端を対向させて配置される先尖り状の棒状抵抗体を有することを特徴とする超電導ケーブルの製造装置。
【請求項5】
前記弛緩発生手段は、前記棒状抵抗体の後段に該棒状抵抗体と同心状に転動自在に配設され、かつ軸方向への移動が規制される放射状抵抗体ユニットをさらに有し、
前記放射状抵抗体ユニットは、各コアを相互に分離するための放射状抵抗体と、該放射状抵抗体によって分離される各コアの放射方向への飛び出しを阻止するために前記放射状抵抗体の外端を覆うように設けられる飛出阻止部材とからなることを特徴とする請求項4に記載の超電導ケーブルの製造装置。
【請求項6】
前記放射状抵抗体は、軸部の周りに放射状に取り付けられる平板部材からなり、円環状に形成された前記飛出阻止部材の外周に配設された複数のローラによって、前記放射状抵抗体ユニットが転動自在に支持されることを特徴とする請求項5に記載の超電導ケーブルの製造装置。
【請求項7】
複数の前記放射状抵抗体ユニットが、軸部同士を近接させた同心状態にて相互に拘束されることなく各独立に配設されることを特徴とする請求項6に記載の超電導ケーブルの製造装置。
【請求項8】
前記平板部材の板面を、コアの撚り合わせ方向に沿うように偏向させたことを特徴とする請求項6又は7に記載の超電導ケーブルの製造装置。
【請求項9】
前記平板部材は、少なくとも上流側先端面が曲面状又は先細りの傾斜状に形成されることを特徴とする請求項6乃至8の何れかに記載の超電導ケーブルの製造装置。
【請求項10】
前記平板部材の表面に、コアに対する摩擦抵抗を低減するための滑動層を形成したことを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載の超電導ケーブルの製造装置。
【請求項11】
前記放射状抵抗体ユニットに軸方向に作用する抵抗値に基づいて前記押込手段の押し込み速度を調整することによりコア相互間の弛み状態を調整することを特徴とする請求項5乃至10の何れかに記載の超電導ケーブルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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