説明

超電導マグネット用の励磁電源

【課題】クエンチ・内部異常・元電源の瞬低など異常状態を誤検知して励磁電源の出力両端を短絡させてしまったとしても、その後、迅速に通常状態(短絡していない状態)に復帰させることができる超電導マグネット用の励磁電源を提供すること。
【解決手段】電源1と、パワーユニット3と、超電導マグネット2の異常を誤検出した場合にパワーユニット3の出力の両端を短絡させる接点4aを閉じて保護状態とする保護回路16と、ループA内の電流値を検出する第1シャント抵抗5とを備える励磁電源101である。励磁電源101は、保護回路16により保護リレー4を動作させて接点4aが閉じられた際、第1シャント抵抗5および第2シャント抵抗8の検出値を用いてパワーユニット3の出力電流値と超電導コイル2Lを流れる電流値とを一致させたのち接点4aを開いて保護状態から復帰させる復帰回路31を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導マグネット用の励磁電源に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導マグネットには、クエンチという超電導状態がやぶれ抵抗ゼロが常電導化し電圧が発生する、また抵抗発生により電流が急変するため大きな超電導コイルにより構成されている超電導マグネットには大きな電圧が発生する現象がある。また逆に、励磁電源自体のトラブルにより急激に電流が変化すると上記クエンチが発生するなど相互に影響しあっている。励磁電源側では、高電圧や行き場を失った大きなエネルギーの逆流により、パワー素子が破損することがあり、超電導マグネット側では、電流の急変でクエンチが発生し、これにより当該超電導マグネットが破損することがある。
【0003】
そのため、励磁電源および超電導マグネットのうちのいずれかの異常を検知した場合、相互の関係(接続)を断つことが無難である。しかしながら、大きな電流が流れているときに相互の関係(接続)を断つ(遮断する)のは危険である。ここで、特許文献1に記載された技術では、遮断器に対して並列にコンデンサを配置するなどの工夫をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−177648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通電中の接点を遮断するような保護方法は、大電流の制御には不向きである。大電流の制御における保護方法では、一般に、励磁電源の出力両端を短絡させて当該励磁電源と超電導コイルとを実質的に切り離す方法が採用されている。
【0006】
ここで、励磁電源の出力両端を短絡させる方法には欠点がある。例えば、実際には超電導コイルがクエンチしていないのに誤検知で短絡させてしまうと(誤動作させてしまうと)、小さな抵抗(R)と超電導コイル(L)との組み合わせとなり貯積エネルギーの放出に長時間を要し、出力両端の短絡を長時間解除できない状態となる。
【0007】
また、励磁電源側からの異常(トラブル)としては、パワー素子が加熱したオーバーヒートと称する異常がある。使用しているシーケンサーやマイクロコンピューターが元電源の瞬低を検出した際に内部異常として電流出力を停止するが、この時に励磁電源の出力両端を短絡させると、長時間を要するLR放電の間、出力の短絡を同様に解除できない状態となる。なお、仮に瞬低対策としてUPSを使用していたとしても、そのバックアップ時間やバックアップできる範囲に制約があり、10分のみ保持できるとか、制御系のみ保持できるがパワー系までバックアップできないなどがあり、やはり、いずれかのタイミングで励磁電源の出力両端を短絡させてマグネットを保護する必要があり、通常状態への復帰が難しいという問題がある。
【0008】
また、例えば、励磁電源内部のヒューズが切れた場合の対応は、そのヒューズを交換すれば、ヒューズ切れの対応自体は完了する。しかしながら、前記したように、クエンチしていない超電導マグネットを保護状態から通常状態へ復帰させるには長い時間がかかってしまう。
【0009】
一方、励磁電源や超電導マグネットの破損を防止する観点からは、クエンチなどの異常状態検知レベルを上げることが望ましい。また、シーケンサーやマイクロコンピューターを誤動作させない観点からも瞬低を感度よく検出できることが望ましい。しかしながら、異常状態検知レベルを上げると誤動作の発生頻度を高めてしまう(トレードオフの問題)。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、クエンチ・内部異常・元電源の瞬低など異常状態を誤検知して励磁電源の出力両端を短絡させてしまったとしても、その後、迅速に通常状態(短絡していない状態)に復帰させることができる超電導マグネット用の励磁電源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、超電導コイルを具備してなる超電導マグネットを励磁する励磁電源であって、電源と、前記電源に接続されたパワーユニットと、前記電源、前記パワーユニット、または前記超電導マグネットの異常を誤検出した場合に、前記パワーユニットの出力の両端を短絡させる接点を閉じて保護状態とする保護手段と、前記超電導コイルと前記接点とを含むループ内に設けられ、当該ループ内の電流値を検出する第1電流検出器と、を備え、前記パワーユニットは、増幅器と、当該パワーユニットの出力電流値を検出する第2電流検出器と、当該出力電流値を制御する電流制御手段と、を有し、前記保護手段により前記接点が閉じられた際、前記第1電流検出器および前記第2電流検出器の検出値を用いて前記出力電流値と前記超電導コイルを流れる電流値とを一致させたのち当該接点を開いて保護状態から復帰させる復帰手段を備えている超電導マグネット用の励磁電源を提供する。
【0012】
この構成によると、上記第1電流検出器および上記第2電流検出器の検出値を用いてパワーユニットの出力電流値と超電導コイルを流れる電流値とを一致させたのち接点を開くことにより、接点を開いた後の電流の急変を防止できる。これにより、超電導コイルのクエンチを防止できる。すなわち、本発明によると、異常状態を誤検知して励磁電源の出力両端を短絡させてしまったとしても、パワーユニットの出力電流値と超電導コイルを流れる電流値とを一致させたのち接点を開くことで、迅速に通常状態(短絡していない状態)に復帰させることができる。
【0013】
また、本発明によると、迅速に通常状態(短絡していない状態)に復帰させることができるので、クエンチなどの異常状態検知レベルを上げることで誤動作の発生頻度が高まり誤動作が発生したとしても通常状態への復帰に手間取ることがない。すなわち、クエンチなどの異常状態検知レベルを上げたとしても支障がなく(通常状態への復帰に手間取ることがない)、異常状態検知レベルを上げて比較的敏感に接点を動作させる状態とすることができ、励磁電源や超電導マグネットの破損を従来よりも防止できる。
【0014】
なお、上記した「パワーユニットの出力電流値と超電導コイルを流れる電流値とを一致させたのち接点を開く」において、「一致」とは、完全な一致のみをいうものではなく、ほぼ一致していることをいう。すなわち、パワーユニットの出力電流値と超電導コイルを流れる電流値との間に少しの差があってもよい。接点を開いた後の超電導コイルを流れる電流値の急変を防止して、当該超電導コイルのクエンチを防止できる程度に、パワーユニットの出力電流値と超電導コイルを流れる電流値とを一致させればよいのである。
【0015】
また本発明において、前記復帰手段は、復帰ボタンが押されると、前記第1電流検出器の検出値を目標値として読み込み、前記第2電流検出器の検出値を現在値として、所定のスイープレートで両検出値を一致させたのち前記接点を開くように構成されているのもよい。
【0016】
この構成によると、所定のスイープレートで両検出値を一致させることにより、保護状態から通常状態への復帰時、パワーユニットに与えるダメージを抑制できる。
【0017】
さらに本発明において、前記第1電流検出器は、前記ループ内において前記出力電流値を検出できる位置に設けられ、前記電流制御手段は、通常時、前記第1電流検出器の検出値を用いて前記出力電流値を制御し、保護状態からの復帰時、前記第2電流検出器の検出値を用いて前記出力電流値を制御することにより、当該通常時と当該復帰時とにおいて出力電流制御用の電流検出器を切り替えるように構成されているのもよい。
【0018】
保護状態からの復帰時の出力電流制御は、通常時の出力電流制御よりも比較的ラフな精度でよい。すなわち、この構成によると、第2電流検出器をラフな精度の電流検出器とすることができ、励磁電源の部品コストを削減できる。
【0019】
さらに本発明において、複数の前記パワーユニットを有し、前記第1電流検出器は、当該励磁電源全体の出力電流値を検出する電流検出器であり、前記第2電流検出器は、各パワーユニットに設けられ、当該パワーユニットの出力電流値を検出する電流検出器であり、前記第1電流検出器の検出値が当該励磁電源全体の設定出力電流値と等しくなるように電流指令値を出力するメイン制御手段と、前記メイン制御手段から出力された前記電流指令値を各パワーユニットに分配する指令値分配手段と、を備え、各パワーユニットに設けられた前記電流制御手段は、前記第2電流検出器の検出値が、前記指令値分配手段から分配された電流指令値と等しくなるように各パワーユニットの出力電流値を制御するように構成されているのもよい。
【0020】
この構成によると、仮に複数のパワーユニットの中のあるパワーユニット内の増幅器に部品不良などがおこり、当該パワーユニットが定まった電流を流せない状況が発生した場合、メイン制御手段からそれを補うような電流指令値が発せられる。また、指令値分配手段により各パワーユニットに対して電流指令値が分配される。そして、各パワーユニットの電流制御手段が指令値分配手段により分配された電流指令値と等しくなるように各出力電流値を制御するため、正常なパワーユニットに極端に電流が偏流することなく、全体として偏流現象を防止できる。
【0021】
また本発明において、前記第1電流検出器は、前記接点に対して直列な位置であって、かつ、前記接点が閉じた状態における前記パワーユニットの出力のループと前記超電導コイル側のループとの共通部分に設けられ、前記復帰手段は、復帰ボタンが押されると、前記第1電流検出器の検出値を現在値とし、かつ、当該第1電流検出器の目標値をゼロとして、パワーユニット部を所定のスイープレートで制御して、当該第1電流検出器の検出値をゼロに一致させたのち前記接点を開くように構成されているのもよい。
【0022】
この構成によると、所定のスイープレートで第1電流検出器の検出値をゼロに一致させることにより、保護状態から通常状態への復帰時、パワーユニットに与えるダメージを抑制できる。
【0023】
なお、上記した「第1電流検出器の検出値をゼロに一致させたのち接点を開く」において、「一致」とは、ゼロの値への完全な一致のみをいうものではなく、ほぼゼロの値になっていることをいう。すなわち、完全にゼロになっていなくてもよい。接点を開いた後の超電導コイルを流れる電流値の急変を防止して、当該超電導コイルのクエンチを防止できる程度に、第1電流検出器の検出値をゼロに一致させればよいのである。
【0024】
また本発明において、前記第1電流検出器は、前記接点に対して直列な位置であって、かつ、前記接点が閉じた状態における前記パワーユニットの出力のループと前記超電導コイル側のループとの共通部分に設けられ、前記復帰手段は、復帰ボタンが押されると、前記第1電流検出器の検出値と前記第2電流検出器の検出値とを加算した値を目標値として、パワーユニット部を所定のスイープレートで制御して、前記第2電流検出器の検出値を当該目標値に一致させたのち前記接点を開くように構成されているのもよい。ここでは、前記第1電流検出器の検出値と前記第2電流検出器の検出値との加算を順次繰り返して実施し、目標値を順次更新するのが好ましい。
【0025】
この構成によると、パワー部の制御が通常のスイープ制御と同じであるため制御を行いやすい。なお、ここでいう「一致」も、完全な一致のみをいうものではなく、ほぼ一致していることを含む。
【0026】
また本発明は、その第2の態様によれば、超電導コイルを具備してなる超電導マグネットを励磁する励磁電源であって、電源と、前記電源に接続されたパワーユニットと、前記電源、前記パワーユニット、または前記超電導マグネットの異常を誤検出した場合に、前記パワーユニットの出力の両端を短絡させる接点を閉じて保護状態とする保護手段と、前記保護手段により前記接点が閉じられた際、その時点またはその直前の前記パワーユニットの出力電流値を記憶する記憶手段と、を備え、前記パワーユニットは、増幅器と、当該パワーユニットの出力電流値を検出する電流検出器と、前記出力電流値を制御する電流制御手段と、を有し、前記保護手段により前記接点が閉じられた際、前記電流検出器の検出値および前記記憶手段の記憶値を用いて前記出力電流値と前記超電導コイルを流れる電流値とを一致させたのち当該接点を開いて保護状態から復帰させる復帰手段を備えている超電導マグネット用の励磁電源を提供する。
【0027】
この構成によると、電流検出器が1つで済む。元々、制御にマイクロコンピューターを使用していることを前提とすれば、計算や記憶はほぼマイクロコンピューターのプログラム(ソフトウェア)で対応できるので、ハード部品である電流検出器を省略できるメリットがある。
【0028】
また本発明において、前記記憶手段が前記出力電流値を記憶した時点からの経過時間を計測するタイマーと、前記タイマーの計測した経過時間および予め記憶している時間当たりの補正値より前記記憶手段の記憶値を補正する補正手段と、を備え、前記復帰手段は、前記保護手段により前記接点が閉じられた際、前記電流検出器の検出値および前記補正手段により補正された前記記憶手段の記憶値を用いて前記出力電流値と前記超電導コイルを流れる電流値とを一致させたのち当該接点を開くように構成されているのもよい。
【0029】
この構成によると、記憶手段だけでなく、タイマーおよび補正手段をさらに具備していることで、より確実に保護状態から復帰させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、保護手段により前記接点が閉じられた際、パワーユニットの出力電流値と超電導コイルを流れる電流値とを一致させたのち接点を開いて保護状態から復帰させることにより、異常状態を誤検知して、励磁電源の出力両端を短絡させてしまったとしても、その後、迅速に通常状態(短絡していない状態)に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図2】保護状態からの復帰時の動作を示すフロー図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る励磁電源101を示す構成図である。
【0034】
(励磁電源101の構成)
励磁電源101は、超電導コイル2Lを具備してなる超電導マグネット2を励磁するための電源であり、超電導コイル2Lに接続される。超電導コイル2Lは、超電導線材が巻回されてなるものである。
【0035】
図1に示すように、励磁電源101は、電源1、パワーユニット3、第1シャント抵抗5(第1電流検出器)、および保護回路16(保護手段)を備えている。
【0036】
(電源)
電源1は、交流電源に接続された変圧器(不図示)や、変圧器の交流電力を整流し平滑した直流電流を超電導コイル2Lに供給するトランジスタ回路(不図示)などにより構成される。なお、電源1では、市販のスイッチングレギュレータなどを用いてもよい。
【0037】
(第1電流検出器)
電流検出器(第1電流検出器)としては、シャント抵抗ではなく、電流により発生する磁場をホール素子により検出する非接触型の電流検出器を用いてもよい(後述の第2シャント抵抗8についても同様)。第1シャント抵抗5は、超電導コイル2Lと保護リレー4の接点4aとを含むループA内の電流値を検出できる位置(さらには、接点4aが開いた状態においてパワーユニット3の出力電流値を検出できるループA内の位置)に設けられている。
【0038】
(パワーユニット)
電源1には、パワーユニット3が接続されている。パワーユニット3は、増幅器であるトランジスタ7(通常、複数のトランジスタ)と、保護状態(接点4aが閉じた状態)でもパワーユニット3の出力電流値を検出可能な第2シャント抵抗8(第2電流検出器)と、パワーユニット3の出力電流値を制御する電流制御回路9(電流制御手段)と、電流制御回路9に電流値を指令する電流指令回路10(電流指令手段)と、電流指令回路10にスイープレートを指示するスイープレート設定器33と、電流指令回路10と連携し保護状態から復帰させる復帰回路31(復帰手段)と、復帰回路31に復帰(復帰制御開始)を指示するための復帰ボタン32とを備えている。なお、スイープレート設定器33、復帰回路31、および復帰ボタン32を、パワーユニット3の構成品とみなす必要は必ずしもなく、すなわち、パワーユニット3とは別の構成品とみなしてもよい。
【0039】
(増幅器)
トランジスタ7には、一般的なバイポーラトランジスタを用いているが、電界効果トランジスタ(FET)や、IGBTや、MOSFETなどの各パワー素子を用いてもよい(後述のトランジスタ17についても同様)。
【0040】
(保護状態からの復帰手段)
復帰回路31は、電流制御回路9と連携して、保護回路16により接点4aが閉じられた際(復帰制御時において)、第1シャント抵抗5および第2シャント抵抗8の検出値を用いてパワーユニット3の出力電流値と超電導コイル2Lを流れる電流値とを一致させたのち接点4aを開いて保護状態(パワーユニット3の出力の両端が短絡している状態)から復帰させる(短絡していない状態にする)ように回路構成されている(回路が組まれている)。すなわち、復帰回路31は、保護回路16により接点4aが閉じられた後、復帰ボタン32が押され、パワーユニット3の出力電流値と超電導コイル2Lを流れる電流値とが一致すると、保護リレー4に対してその接点4aを開くように信号を出す。
【0041】
なお、上記した「パワーユニット3の出力電流値と超電導コイル2Lを流れる電流値とを一致させたのち接点4aを開く」において、「一致」とは、完全な一致のみをいうものではなく、ほぼ一致していることをいう。すなわち、パワーユニット3の出力電流値と超電導コイル2Lを流れる電流値との間に少しの差があってもよい。接点4aを開いた後の超電導コイル2Lを流れる電流値の急変を防止して、当該超電導コイル2Lのクエンチを防止できる程度に、パワーユニット3の出力電流値と超電導コイル2Lを流れる電流値とを一致させればよいのである。
【0042】
また、本実施形態のように電流制御回路9と復帰回路31とをそれぞれ別構成にするのではなく、1つの回路構成にしてもよい。
【0043】
さらには、本実施形態では、電流制御手段、復帰手段、および保護手段を回路構成としているが、マイコン(マイクロコンピューター)などを用いてプログラム制御するコントローラーを採用して、当該コントローラーにより制御を行ってもよい。この場合、プログラム設定に自由度があるので、設定変更を行いやすい(後述の電流指令回路10、電流制御回路(19、29)、分配器14、およびメイン制御回路12などについても同様)。
【0044】
また、詳しくは後述するが、復帰回路31を励磁電源101に組み込まず、第1シャント抵抗5を単なる電流表示用の検出器として用い、復帰回路31による制御を、オペレータ(人)が手動で行ってもよい。
【0045】
(電流指令手段)
電流指令回路10は、通常時、図示しない操作スイッチにより例えば電流を増加させる励磁時はスイープレート設定器33で定めた増加量に従い指令電流を徐々に増加させるなど、電流制御回路9に対して電流値を指令する(出力する)ように構成されている。電流制御回路9は、電流指令回路10から出力された電流指令値と第2シャント抵抗8の検出値とに基づき、パワーユニット3の出力電流値を制御するように構成されている。ここで、通常時とは、接点4aが開いている状態(短絡していない状態)のことをいう。
【0046】
また、復帰回路31は、保護状態からの復帰時、第1シャント抵抗5の検出値(電流検出値)を目標値として、電流指令回路10と連携して電流制御回路9に対して電流値を出力するように構成されている。復帰回路31は、電流制御回路9と連携して、第1シャント抵抗5の検出値を目標値として読み込み、当該目標値と第2シャント抵抗8の検出値とを一致させた後、接点4aを開くように構成されている(第2シャント抵抗8の検出値を用いてパワーユニット3の出力電流値を制御する。第1シャント抵抗5の検出値は目標値として使用する。)。ここで、保護状態とは、接点4aが閉じている状態(短絡している状態)のことをいう。復帰とは、閉じている状態から開いている状態に移行させる過程をいう。
【0047】
なお、一般に、電流シャントを用いた電流フィードバック制御では、指令された電流に対してフィードバックをかけ制御するので、基本的に指令が出ればリアルタイムに出力電流がその指令電流に調整される。これまでの説明はわかりやすさのために第2シャント抵抗8の検出値と一致させると説明したが、実際的な方法としては、電流指令回路10の出力値を、目標値である第1シャント抵抗5の値と一致させれば、電流制御回路9は第2シャント抵抗8とこの指令値をつきあわせてただちに調整するので、「第2シャント抵抗8の検出値」は「電流指令回路10の出力指令値」と読みかえる方法をとる。なお、最初の説明のように、実際に第2シャント抵抗8の検出値を用いて一致を確認する方法でもよい。
【0048】
なお、保護回路16(保護手段)には、前記マイクロコンピューターを用いたコントローラー(不図示)などから発する瞬低異常や停電などの内部異常信号100も入力されている。
【0049】
(保護リレー)
保護リレー4は接点4aを具備してなる。接点4aは、パワーユニット3の出力の両端を短絡させる位置に組み込まれる。換言すれば、超電導コイル2Lの両端を短絡させる位置に組み込まれる。保護リレー4の接点4aはA接点で構成されてもよいし、B接点で構成されてもよい。保護リレー4の接点4aをA接点で構成した場合、電気信号ONで接点4aが閉じ、電気信号OFFで接点4aが開くように構成される。保護リレー4の接点4aをB接点で構成した場合、電気信号OFFで接点4aが閉じ、電気信号ONで接点4aが開くように構成される。すなわち、B接点とは、リレー(保護リレー4)に電源を供給しないときはばねの復元力により閉じた状態となり、リレー(保護リレー4)に電源を供給しているときは電磁力により開いた状態となる電気接点のことをいう。
【0050】
なお、停電時(リレー(保護リレー4)に電源が供給されない状態)を考慮すると、保護リレー4の接点4aはB接点(ノーマルクローズ)で構成されることが望ましい(後述の実施形態においても同様)。接点4aがB接点で構成されていると、停電時に、停電により復帰回路31(復帰手段)が作動しなくなっても接点4aが閉じて出力両端が短絡状態となる。これにより、クエンチしていない超電導コイル2Lに流れる電流を、接点4aを介して還流させることができる。その後、元電源が回復すれば、復帰回路31(復帰手段)の作動により保護状態から通常状態へ復帰させることができる。一方、接点4aがA接点で構成されていると、停電後の短い時間は、復帰回路31が作動するが、停電が長くなると、復帰回路31が作動しなくなって接点4aが開いてしまう。その結果、クエンチしていない超電導コイル2Lに流れる電流を還流させることができなくなってしまう。
【0051】
ここで、保護回路16は過電圧検出回路である。例えば、超電導コイル2Lの励磁電圧の設定値が10Vであれば、励磁電圧が12Vを超えると過電圧(異常)として保護リレー4および電流指令回路10に信号を出すように構成されている。なお、保護回路には様々なものがあり、過電圧検出回路に限られるものではない。
【0052】
ここで、電流指令回路10は、保護回路16からの信号を受け取ると、パワーユニット3の出力電流がゼロになるように電流制御回路9に対して指令するように構成されている。また、保護リレー4は、保護回路16からの信号を受け取ると、接点4aを閉じるように構成されている。
【0053】
本実施形態では、保護回路16を励磁電源101に組み込み、超電導マグネット2の異常を検出する例を示しているが、電源1やパワーユニット3の異常を検出する回路(手段)を励磁電源101に組み込み、この回路にクエンチ検出情報も加えて当該回路から保護リレー4および電流指令回路10に信号を出すように構成してもよい。電源1やパワーユニット3の異常を検出する回路は、例えば、電源1やパワーユニット3の過加熱、過電流、元電源の瞬低、および停電を検出するように構成された回路である。
【0054】
(励磁電源による保護状態からの復帰制御)
次に、保護状態からの復帰制御について説明する。図2は、保護状態からの復帰時の動作を示すフロー図である。
【0055】
超電導マグネット2の異常が保護回路16により検出されると、保護回路16により保護リレー4を介して接点4aが閉じられるとともに、電流制御回路9によりパワーユニット3の出力電流がゼロにされる。このとき、超電導コイル2Lに流れていた電流は、図1中にIAで示したように、超電導コイル2Lと保護リレー4の接点4aとを含むループAを流れる。一方、パワーユニット3のトランジスタ7から流れていた電流IBはゼロになる。電源1やパワーユニット3の異常を検出した場合も同様である。
【0056】
ここで、超電導コイル2Lがクエンチを発生している場合には、当該超電導コイル2Lは常電導化して抵抗をもつのでIAは早く減衰する。しかしながら、ノイズなどで保護回路16が誤動作する場合がある。また、超電導コイル2Lに一瞬電圧がたっても、その後、超電導の状態に戻る場合もある。また僅かな元電源の瞬低で保護回路16が動作することもある。このような場合、超電導コイル2Lは超電導の状態にあるため、ループAの抵抗は極めて小さく、電流IAがゼロになるには1日程度要する場合がある。接点4aを開いてしまえば、電流IAをゼロにすることができるが、そうすると超電導コイル2Lはクエンチする。無理にクエンチさせることは、超電導コイル2Lの損傷につながる。
【0057】
ここで、励磁電源101内では図2にフローを示したように制御が行われる。復帰ボタン32が押されると(S1、ステップ1の略である)、電流指令回路10は、第1シャント抵抗5の検出値(電流値)を目標値として、電流制御回路9に対して電流値を出力する。電流制御回路9は、第1シャント抵抗5の検出値(電流値)を目標値として読み込む(S2)。そして、電流制御回路9は、読み込んだ第1シャント抵抗5の目標値を設定値とする(S3)。また、電流制御回路9は、電流指令回路10を介して、予め定められたスイープレートの値またはスイープレート設定器33からのスイープレートの値を読み込む(S4)。そして、電流指令回路10は、電流制御回路9が、第2シャント抵抗8の検出値(パワーユニット3の出力電流値)が設定値に一致するよう所定のスイープレートで電流制御回路9へ電流指令値を上げていく(S5)。IAとIBとが一致するまで、S2〜S5を繰り返す。そして、IA=IBを確認したら(IA=IBとなれば)、復帰回路31は、保護リレー4に対してその接点4aを開くように信号を出し、接点4aは開く(S7)。なお、IA=IBとは、IBが実際に第2シャント抵抗8の検出値である場合もあれば、電流制御回路9への電流指令回路10からの電流指令値がIBである場合もよい。また、このフローの中でS2において毎回、第1シャント抵抗5の値を取り込んでいるが、処理の時間は短くその間に減衰するコイル電流(IA)もわずかなため、S2ステップは1度だけおこない、その後はS3〜S6を繰り返す方法でもよい。
【0058】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る励磁電源201を示す構成図である。第1実施形態との相違は、第1シャント抵抗(第1電流検出器)の位置である。本実施形態では、第1シャント抵抗5を、超電導コイル2Lに対して並列に位置させている。このように、第1シャント抵抗5は、保護リレー4の接点4aが閉じたときに超電導コイル2Lに流れる電流IAを検出できる位置に設けられていればよい。換言すれば、第1シャント抵抗5は、接点4aに対して直列な位置であって、かつ、接点4aが閉じた状態におけるパワーユニット3の出力のループBと超電導コイル2L側のループAとの共通部分に設けられている。
【0059】
本実施形態の場合、第1シャント抵抗5の検出値(電流検出値)がゼロになるように、電流制御回路9は、所定のスイープレートでパワーユニット3の出力電流値を上げていく。第1シャント抵抗5の検出値がゼロということは、互いに逆向きに流れるIAとIBとが一致したことを意味する。IA=IBを確認したら(IA=IBとなれば)、電流制御回路9は、保護リレー4に対してその接点4aを開くように信号を出し、接点4aは開く。
【0060】
なお、変形例として、復帰ボタン32が押されると、第1シャント抵抗5の検出値と第2シャント抵抗8の検出値とを加算した値を目標値として、所定のスイープレートで第2シャント抵抗8の検出値を当該目標値に一致させたのち接点4aを開くように構成するのもよい。ここでは、第1シャント抵抗5の検出値と第2シャント抵抗8の検出値との加算を順次繰り返して実施し、目標値を順次更新するのが好ましい。IAは、IBとは逆向きに流れるIBよりも大きな電流であるので、第1シャント抵抗5の検出値は、「IA−IB」である。第2シャント抵抗8の検出値は、「IB」である。よって、第1シャント抵抗5の検出値と第2シャント抵抗8の検出値とを加算した値は、「IA」となる。
【0061】
さらなる変形例としては、前記した制御の組み合せてとして、復帰ボタン32が押されると、所定のスイープレートで第1シャント抵抗5の検出値をゼロに一致させる制御を行うとともに、所定のスイープレートで第2シャント抵抗8の検出値を、第1シャント抵抗5の検出値と第2シャント抵抗8の検出値とを加算した値に一致させる制御を行う。そして、第1シャント抵抗5の検出値がゼロに一致する、第2シャント抵抗8の検出値が第1シャント抵抗5の検出値と第2シャント抵抗8の検出値とを加算した値に一致する、のいずれか早い段階で接点4aを開くように制御を行う。このように励磁電源を構成すると、より迅速に通常状態(短絡していない状態)に復帰させることができる。
【0062】
以上説明したように、本発明によると、第1シャント抵抗5および第2シャント抵抗8の検出値を用いてパワーユニット3の出力電流値と超電導コイル2Lを流れる電流値とを一致させたのち接点4aを開くことにより、接点4aを開いた後の電流の急変を防止できる。これにより、超電導コイル2Lのクエンチを防止できる。すなわち、本発明によると、異常状態を誤検知して励磁電源(パワーユニット3)の出力両端を短絡させてしまったとしても、パワーユニット3の出力電流値と超電導コイル2Lを流れる電流値とを一致させたのち接点4aを開くことで、迅速に通常状態(短絡していない状態)に復帰させることができる。
【0063】
また、本発明によると、迅速に通常状態に復帰させることができるので、例えば、保護回路16の異常状態検知レベルを上げることで誤動作の発生頻度が高まり誤動作が発生したとしても通常状態への復帰に手間取ることがない。すなわち、クエンチなどの異常状態検知レベルを上げたとしても支障がなく(通常状態への復帰に手間取ることがない)、異常状態検知レベルを上げて比較的敏感に接点4aを動作させる状態とすることができ、励磁電源(101、201)や超電導マグネット2の破損を従来よりも防止できる。励磁電源内部の異常、元電源の瞬低・停電などの異常に関しても同様である。
【0064】
また、第1実施形態では、ループA内の超電導コイル2Lに流れる電流を検出する事用の第1シャント抵抗5を用い、この検出値を目標値としたが、この変形例として、通常時、第1シャント抵抗5の検出値を用いてパワーユニット3の出力電流値を制御し、保護状態からの復帰時においては、第2シャント抵抗8の検出値を用いてパワーユニット3の出力電流値を制御するようにしてもよい。このようにすると、励磁電源101内の制御では、通常時と復帰時とにおいて出力電流制御用の電流検出器を切り替えるように構成される。一方、保護状態からの復帰時の出力電流制御は、通常時の出力電流制御よりも比較的ラフな精度でよい。すなわち、この構成によると、第2シャント抵抗8をラフな精度(低い精度)の電流検出器とし、超電導コイル2Lに流れる電流については保護された状態(接点4aが閉じた状態)であっても精度の高い第1シャント抵抗5でより精度の高い電流検出(表示)が可能というメリットがある。
【0065】
なお、第1実施形態において、第2シャント抵抗8は通常時および復帰時のパワーユニット3の出力電流値制御に用い、第1シャント抵抗5は単なる表示用としてもよい。この場合、保護状態からの復帰時、オペレータが、第1シャント抵抗5の表示値を復帰用設定値としてセットしてパワーユニット3の出力電流値を上げていき、IAとIBとが一致したときに接点4aを開き復帰を完了させるのもよい。さらに上記において、IA、IBの一致は、オペレータが最終的に確認する。その後、オペレータは接点4aを手動で開くボタンを押す。
【0066】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る励磁電源301を示す構成図である。本実施形態と、第1実施形態との大きな相違点は、本実施形態の励磁電源301が、2つの(複数の)パワーユニットを具備してなることである。なお、励磁電源に3つ以上のパワーユニットを具備させてもよい。
【0067】
図4に示すように、励磁電源301は、電源1、第1パワーユニット13、第2パワーユニット23、第1シャント抵抗5(第1電流検出器)、メイン制御回路12(メイン制御手段)、分配器14(指令値分配手段)、スイープレート設定器33、保護回路16(保護手段)、復帰ボタン32、および復帰回路131を備えている。
【0068】
(第1電流検出器)
第1シャント抵抗5は、励磁電源301全体の出力電流値を検出する電流検出器である。また保護状態において超電導コイル2Lと保護リレー4の接点4aとを含むループA内の出力電流値(2つのパワーユニット13・23の全体出力電流値)を検出できる位置に設けられている。
【0069】
(パワーユニット)
電源1には、2つのパワーユニット13・23が接続されている。第1パワーユニット13は、増幅器であるトランジスタ17(通常、複数のトランジスタ)と、パワーユニット13の出力電流値を検出する第2シャント抵抗18(第2電流検出器)と、パワーユニット13の出力電流値を制御する電流制御回路19(電流制御手段)とを備えている。
【0070】
第2パワーユニット23も第1パワーユニット13と同様の構成であり、第2パワーユニット23は、増幅器であるトランジスタ27(通常、複数のトランジスタ)と、パワーユニット23の出力電流値を検出する第2シャント抵抗28(第2電流検出器)と、パワーユニット23の出力電流値を制御する電流制御回路29(電流制御手段)とを備えている。
【0071】
なお、メイン制御回路12、分配器14、スイッチ30、復帰回路131、復帰ボタン32、およびスイープレート設定器33を、パワーユニット13・23の構成品(パワーユニット13・23に共通の構成品)とみてもよい。
【0072】
(メイン制御手段)
メイン制御回路12は、励磁電源301全体の出力電流値を設定および制御するためのものであり、当該メイン制御回路12の設定機能部分にはデジタル-アナログ変換回路(DAC)を備えている。励磁電源301が維持すべき出力電流値を設定することで、マイコン回路からDACを経由してアナログ化された出力電流値を指令値としてメイン制御回路12内の制御部分に出力する。
【0073】
メイン制御回路12の制御部分は、第1シャント抵抗5の検出値(電流値)が励磁電源301全体の設定出力電流値と等しくなるように分配器14へ電流指令値を出力するように構成されている。具体的には、第1シャント抵抗5の検出値と設定出力電流値との偏差を求め、求めた偏差に比例した電流指令値を分配器14へ出力するように構成されている。
【0074】
(指令値分配手段)
分配器14は、メイン制御回路12から出力された電流指令値を各パワーユニット(13、23)に分配するように構成されている。なお、第1パワーユニット13および第2パワーユニット23の電流容量が等しい場合、メイン制御回路12から出力された電流指令値を均等に分配するように分配器14は構成される。第1パワーユニット13および第2パワーユニット23の電流容量比が2:3の場合、メイン制御回路12から出力された電流指令値を2:3に分配するように分配器14は構成される。
【0075】
(電流制御回路19・29について)
ここで、各パワーユニット13・23に設けられた電流制御回路19・29は、第2シャント抵抗18・28の検出値(電流値)が、分配器14から分配して出力された電流指令値と等しくなるように各パワーユニット13・23の出力電流値を制御するように構成されている。
【0076】
保護リレー4は、保護回路16からの信号を受け取ると、接点4aを閉じるように構成されている。なお、保護回路16には、マイクロコンピューターを用いたコントローラー(不図示)などから発する瞬低異常や停電などの内部異常信号100も入力されている。また、保護リレー4は、復帰回路131からの信号を受け取ると(IA=IB1+IB2の状態)、接点4aを開くように構成されている。
【0077】
(スイッチ)
スイッチ30は、メイン制御回路12からの信号および復帰回路131からの信号のうちのいずれかを切り替えて分配器14へ入れるためのスイッチである。スイッチ30は、復帰回路131により作動される。
【0078】
(励磁電源の動作)
次に、励磁電源301の通常状態(保護状態でない)の動作について説明する。
【0079】
本実施形態に係る励磁電源301には、保護回路作動(接点4aが閉じた状態)あるいは復帰モード(接点4aが閉じた状態から、IAとIBとを一致させ、その後、接点4aを開く、までの一連の状態)でない通常の状態では、電流の偏流現象を防止または軽減する機能がある。ここでの偏流現象とは、あるパワーユニットの内部で何らかの要因で部品の不良や導体の劣化等の不具合が発生した場合に、他の正常なパワーユニットに不具合が発生したパワーユニットの出力電流を補う作用が働き、他の正常なパワーユニットに出力電流が偏る現象のことをいう。
【0080】
電流の偏流現象が発生する場面としては、例えば、第1パワーユニット13内に備わった冷却装置(不図示)の性能が低下して第1パワーユニット13内の温度が上がることによって、第1パワーユニット13に他の正常な第2パワーユニット23に比べて電流が多く流れる場合がある。そして、この場合、第2パワーユニット23には、第1パワーユニット13に流れる過多電流を補うように、第1パワーユニット13よりも少ない電流が流れる(偏流現象)。また、例えば、第1パワーユニット13内のトランジスタ17などの素子が劣化することによって偏流現象が起こる場合がある。
【0081】
本実施形態に係る励磁電源301によれば、メイン制御回路12が第1シャント抵抗5の両端に発生した電圧を測定して求められた出力電流値が全体用電流設定指令部(不図示)において設定した出力電流値になるように第1パワーユニット13および第2パワーユニット23に電流指令値として出力するように制御し、分配器14がメイン制御回路12から出力された電流指令値を第1パワーユニット13および第2パワーユニット23に分配する。そして、第1パワーユニット13(第2パワーユニット23)の電流制御回路19(電流制御回路29)は、第2シャント抵抗18(第2シャント抵抗28)の両端に発生した電圧を測定することにより検出される出力電流値が分配器14より分配された電流指令値になるように制御する。これにより、もし第1パワーユニット13内のトランジスタ17などの素子に部品不良などが起こり、第1パワーユニット13が定まった電流を流せない状況が発生した場合、メイン制御回路12からそれを補うような電流指令値が発せられるが、分配器14により第1パワーユニット13および第2パワーユニット23に電流指令値が分配される。そして、第1パワーユニット13および第2パワーユニット23の電流制御回路19および電流制御回路29が分配器14より分配された電流指令値になるように制御するため、正常な第2パワーユニット23に極端に偏流することがなく、全体として電流が平準化され偏流現象を防止することができる。
【0082】
また、電流制御回路19および電流制御回路29の増幅率は、メイン制御回路12の増幅率より小さくなっている。これにより、第1パワーユニット13および第2パワーユニット23における電流制御回路19および電流制御回路29に若干の偏流現象を許容して、メイン制御回路12ではシビアに電流制御することで、全体を流れる電流の安定化を図ることができる。すなわち、励磁電源301全体での極端な偏流現象を防ぐことができる。
【0083】
また、第1シャント抵抗5には、第2シャント抵抗18・28よりも高精度な抵抗器を使用している。これにより、励磁電源301のコストを低減することができる。
【0084】
なお、分配器14は必ずしも本実施形態の構成でなくてもよく、全体制御系(励磁電源301全体(パワーユニット全体)の電流指令値)を各パワーユニット13・23の電流指令に分けて入力できればよい。
【0085】
(保護状態の説明)
さて、超電導コイル2Lに通電中に保護回路16がクエンチを検出すると、その信号が保護回路16を経由してメイン制御回路12に入り電流指令をゼロにする。これにより、パワー素子17・27から出力されるIB1・IB2はゼロになる。保護回路16は同時に接点4aを閉じる。それまで超電導コイル2Lに流れていたIAの電流は接点4aに流れる。ここで、超電導コイル2Lが本当にクエンチしている場合は、IAは急激に減衰していく。一方、このクエンチ検知が誤検知の場合は、IAはほとんど減衰せず減衰には長時間を要する。
【0086】
そこで、復帰ボタン32を押すと復帰回路131はまずメイン制御回路12の出力を復帰回路131の出力に切り替える。スイッチ30を30aから30bの接点に切り替える。復帰回路131には、メイン制御回路12と同様に第1シャント抵抗5から電流の検出値が入力されている。復帰回路131は第1シャント抵抗5の検出値を目標値としてスイープレート設定器33の値とから分配器14に対して徐々に電流指令を上げる指令値を作り出力する。分配器14は通常状態(保護状態でない状態)と同様に2つのパワーユニット(13・23)に対して電流指令を分配する。復帰回路131で決定したスイープレートを用いて目標値であるIAに指令電流が達すると、分配された2つのパワーユニット(13・23)の電流IB1、IB2の合計値もIAに一致する。
【0087】
このように、励磁電源301は、第1・2実施形態の励磁電源と同様、復帰回路131が作動し、第1シャント抵抗5および第2シャント抵抗18・28の検出値(第2シャント抵抗18・28の検出値の合計値)を用いてパワーユニット全体の出力電流値と超電導コイル2Lを流れる電流値とを一致させたのち接点4aを開くことにより、接点4aを開いた後の電流の急変を防止する機能ももっている。
【0088】
なお、復帰モードと通常モードとの違いは、通常モードでは、全体の電流を第1シャント抵抗5がとらえ、全体指令との誤差を修正するように分配器14に出力するが、復帰モードでは、分配器14に復帰回路131で作成された電流指令値のみを出力する。結果、IB1およびIB2は、第2シャント抵抗18・28の精度で制御される。ここで、例えば、第2シャント抵抗18・28は、全体のシャント(第1シャント抵抗5)と比べてコスト削減の観点からラフな精度のもの(電流検出精度が低いもの)を用いる。また、二重の制御系のため、各ユニット(パワーユニット13・23)のフィードバックゲインは比較的低めにしている。よって、IB1、IB2は、通常モードと比べてややラフな値になることがある。ただ、(IB1+IB2)≒IAであればよく、ほぼ一致さえすればその後は通常モードにもどるので多少の誤差は問題にならない。
【0089】
さて、IB1+IB2がほぼIAに一致すると復帰回路131は、メイン制御回路12に現在の電流値IAを転送する。そして、スイッチ30を30a側に切り替え、同時に接点4aを開く。その後は、通常モードで設定電流値IAにホールドされた状態で電流制御される。なお、IAはクエンチ発生時、メイン制御回路12が記憶している値を使用してもよい。検出電流値のIAを用いると、通常モードに戻ると本来制御したい超電導コイル2Lの電流値と多少誤差が発生するので、その場合は通常の方法で微調整する。
【0090】
なお、第3実施形態において、メイン制御回路12と復帰回路131とを分けて回路構成するように説明したが、機能面では、第1シャント抵抗5の電流検出値をフィードバック信号として利用する(メイン制御回路)、第1シャント抵抗5の電流検出値を目標値として利用する(復帰回路)違い、分配器14の出力値が多少異なる点はあるが、回路構成上は、第1シャント抵抗5の信号入力を受け、スイープレート設定器33の信号を受け、所定のスイープレートの電流信号を作成することは共通であって、一般にこれらの処置がマイコンおよびDA変換器でアナログ変換して出力されるので、(1)復帰ボタン32の入力をみるみない、(2)第1シャント抵抗5の検出値の取扱の差、(3)分配器14へ出力する信号の内容の違い、などは内蔵されたマイコンのプログラムの小差であり、メイン制御回路12と復帰回路131とを一体化するのが好ましい。
【0091】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係る励磁電源401を示す構成図である。本実施形態の励磁電源401は、第3実施形態に係る励磁電源301の変形例である。図5に示すように、励磁電源401は、電源1、第1パワーユニット13、第2パワーユニット23、第1シャント抵抗5(第1電流検出器)、メイン制御回路12(メイン制御手段)、分配器14(指令値分配手段)、スイープレート設定器33、保護回路16(保護手段)、復帰ボタン32、および復帰回路231を備えている。
【0092】
例えば、保護回路16により接点4aが閉じたあとの復帰制御について以下に説明する。第1シャント抵抗5でIAの電流値を検出した後、これを目標値として(IB1+IB2)を制御するが、復帰動作にあたっては第2シャント抵抗18および第2シャント抵抗28の電流検出値の合計値を作り出す加算器304で(IB1+IB2)を求める。メイン制御回路12には、通常モードでの第1シャント抵抗5からの信号の代わりに加算器304からスイッチ302・303で切替信号を入力する。復帰回路231からの信号によりスイッチ302・303は作動する(切り替わる)。
【0093】
IAと(IB1+IB2)とが一致した時点で、接点4aおよびスイッチ302・303を復帰回路231により切り替えて通常の状態に復帰する(接点4aを開く。スイッチ302・303は302a・303a側にする。)。スイッチ302・303の302a・303a側が通常モード、302b・303b側が復帰モードである。さらに、第1シャント抵抗5の検出値を常に(常時)メイン制御回路12に入力して、少しずつ減衰するIAに対応してもよい。
【0094】
復帰モード(復帰制御)では、第1シャント抵抗5に代えて偏流防止用の第2シャント抵抗18・28の電流検出値の合計値を用いるので、コスト設計の関係で第2シャント抵抗18・28は比較的ラフな精度のものを使用してもよい。この場合は、復帰時(復帰モード時)に限って電流の検出精度は低下する。しかしながら、復帰後は通常モードになり、第1シャント抵抗5(全体シャント)を用いた制御に移行するので、その後の電流制御精度は通常にもどる。本復帰モードの役割は、復帰時に大きな電流変化を超電導コイル2Lに与えてクエンチなどを発生させないことにあり、この程度の誤差(電流測定精度の誤差)は問題にならない(大きな電流変化は生じない)。
【0095】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態に係る励磁電源501を示す構成図である。本実施形態の励磁電源501は、第1実施形態の励磁電源101で用いていた第1シャント抵抗5を省略し、代わりに記憶回路50をパワーユニット43に組み込んでいる。記憶回路50は、復帰回路31により接点4aが閉じられた際、その時点またはその直前のパワーユニット43の出力電流値を記憶する記憶手段である。なお、図6に示した例では、シャント抵抗8(電流検出器)の検出値を記憶回路50が記憶する構成とされているが、電流制御回路9への電流指令値を記憶回路50が記憶する構成とされてもよい。記憶手段にはいろいろあり、バッテリバックアップしたRAMのほか、不揮発のメモリなどがある。なお、通常はデジタル化するためADC(アナログーデジタル変換器)などを経由して記憶手段に記憶する。
【0096】
なお、本実施形態の復帰回路31は、保護回路16により接点4aが閉じられた際、シャント抵抗8の検出値および記憶回路50の記憶値を用いてパワーユニット43の出力電流値と超電導コイル2Lを流れる電流値とを一致させたのち接点4aを開いて保護状態から復帰させる復帰手段である。以下、具体的に説明する。
【0097】
例えば超電導マグネット2の異常が検出された時、保護回路16は、記憶回路50、電流指令回路10、および保護リレー4に対してほぼ同時に信号を送る。これにより、記憶回路50はこの時点でのパワーユニット43の出力電流値を記憶する。電流指令回路10は電流制御回路9への電流指令値をゼロにし、パワーユニット43の出力はゼロにされる。また、保護リレー4の動作により接点4aが閉じパワーユニット43の出力は短絡される。なお、保護回路16は、接点4aが閉じる前であって、且つパワーユニット43の出力がゼロに落ちる前の(通常時の)出力電流値を記憶回路50が記憶できるタイミングで、記憶回路50に対して信号を送る。
【0098】
なお、当然ではあるが、異常処置を含めたコントロールをマイクロコンピューターまたはシーケンサーで行う場合は、これらに内蔵する瞬停検出回路の信号を保護回路16に入力することはできないので(瞬停をシーケンサーが検知すると外部に状態出力し、シーケンサー自らは停止するため、それ以降使用できない。)、別途瞬停検出回路を設けてこの信号を保護回路16に入力するか、例えば異常処置につかっていないマイクロコンピューターまたはシーケンサーがあればそれに内蔵する瞬停検出回路の信号を保護回路16に入力する。その上で、異常処置を含めたコントロールをするマイクロコンピューターまたはシーケンサーあるいは他の機器は、瞬停検出回路が元電源の瞬停検出した後もしばらく(例えば3秒程度)機能できるよう、その電源部分に通常より大きい電解コンデンサーを持っているとか、バッテリ駆動に切り替えられる手段が必要である。
【0099】
ここで、超電導マグネット2の異常が誤検出であった場合、LとRで電流IAは減衰するが、Lが極めて大きくRが極めて小さいため減衰は僅かであり、例えば5分経過しても減衰は1%程度である。一方、異常状態にオペレータが気がつけば、オペレータは復帰ボタン32を押す。これにより記憶回路50の例えば200Aの記憶値を復帰回路31が読み取り、パワーユニット43の出力IBを200Aに制御する。IBを200Aに制御する指令を出した時点で、IBとIAとが一致したと復帰回路31が判断し、復帰回路31は接点4aを開く。実際には、IAが198Aに減衰していてもこの程度の差であれば超電導マグネット2をクエンチさせたり、励磁電源501本体が故障したりすることはなく、直ちにマグネットに流れる電流が200Aに調整される。
【0100】
励磁電源501によると、電流検出器が1つで済む。元々、制御にマイクロコンピューターを使用していることを前提とすれば、計算や記憶はほぼマイクロコンピューターのプログラム(ソフトウェア)で対応できるので、ハード部品である電流検出器を省略できるメリットがある。
(第6実施形態)
図7は、本発明の第6実施形態に係る励磁電源601を示す構成図である。本実施形態の励磁電源601は、第5実施形態に係る励磁電源501の変形例である。本実施形態では、さらに、タイマー51および補正回路52をパワーユニット53に組み込んでいる
【0101】
タイマー51は、パワーユニット53の出力電流値を記憶回路50が記憶した時点からの経過時間を計測するタイマーである。また、補正回路52は、タイマー51の計測した経過時間および予め記憶している時間当たりの補正値より記憶回路50の記憶値を補正する電流値の補正手段である。
【0102】
なお、本実施形態の復帰回路31は、保護回路16により接点4aが閉じられた際、シャント抵抗8の検出値および補正回路52により補正された記憶回路50の記憶値を用いてパワーユニット53の出力電流値と超電導コイル2Lを流れる電流値とを一致させたのち接点4aを開くように構成されている。以下、具体的に説明する。
【0103】
例えば、超電導マグネット2の異常誤検出により保護リレー4が動作して接点4aが閉じ、その5分後に異常状態にオペレータが気付き、オペレータが復帰ボタンを押したとする。このとき、補正回路52は、記憶回路50の例えば200Aの記憶値を読み取り、且つタイマー51の例えば5分(計測した経過時間)の値を読み取る。そして、補正回路52は、この200Aと5分の値とから多少減衰しているはずのIAを推測する(計算する)。短時間であれば減衰カーブは直線的であり、1分あたり0.4A減衰と補正値を補正回路52に予め記憶させておけば5分で2A減衰しているはずとの計算は補正回路52にて容易にできる。接点4aが閉じた時刻とオペレータが復帰ボタンを押した時刻との差が長時間であることを前提にすれば、更に複雑な計算を補正回路52にさせることも可能である。例えば、LおよびRを記憶しておき、これらLおよびRの値と計測された経過時間とで電流の減衰を求めるなど、更に複雑な計算を補正回路52にさせることも可能である。元々、制御にマイクロコンピューターを使用していることを前提とすれば、補正回路52は、記憶回路50などの他の回路と統合されてマイクロコンピューターで構成されることが好ましい。
【0104】
その後、補正値198A(200−0.4×5)を復帰回路31が読み取り、パワーユニット53の出力IBを198Aに制御する。IBを198Aに制御する指令を出した時点で、IBとIAとが一致したと復帰回路31が判断し、復帰回路31は接点4aを開く。
【0105】
励磁電源601によると、タイマー51および補正回路52をさらに具備していることで、励磁電源501に比べて、より確実に保護状態から復帰させることができる。なお、励磁電源501においても励磁電源601においても、復帰可能な時間制約を設けるほうが好ましい。励磁電源501では例えば10分以内は復旧可能、励磁電源601では、計算誤差しだいではあるが例えば3時間以内は復旧可能となど定めて、復帰可能な時間制約を設けるほうが好ましい。なお、第1シャント抵抗5を記憶回路50に置き換えるなどの励磁電源501・601に示した方法は、励磁電源101だけでなく、励磁電源201・301・401にも採用できる。
【0106】
(瞬低検出後の処理)
上記した全ての実施形態において、瞬低検出後の処理は下記のようになる。例えばマイクロコンピューター(図示せず)が瞬低を検出すると電流の指令をゼロにするにするとともに接点4aを閉じるように回路構成されている。接点4aが閉じられると超電導マグネット2はこの接点経由で電流を巡回され、超電導コイル2Lには電流が流れ続ける。超電導マグネット2内の抵抗はゼロ、他に励磁電源と超電導マグネット2とを繋ぐリード線、接点の接触抵抗、シャント5など僅かな抵抗があるが、超電導マグネット2に貯まったエネルギーを消費する比率はわずかであり、少々の時間では流れる電流は減少しない。例えば5分の異常常態があっても1%程度しか減衰しない。
【0107】
瞬低で異常状態になっていることをオペレータが確認後、復旧ボタンを押せば、例えば電流200Aで使用していたものが短絡状態でIA=198Aに減衰していたとすれば、復帰処理でIB=198Aに調整後接点4aを開いてパワーユニットからの電流供給に切り替えた後、再び200Aに回復することができる。これにより、磁場を使っていた作業に実害なく、復旧を行える。また、瞬停検出回路復電確認の機能を付けこの復電確認の信号を、復帰ボタン32を押す代わりに用いてもよい。一方、停電用にUPSを搭載し、制御系のみをバックアップするとしてもパワー系までは大掛かりでバックアップできない場合が多く、この場合、制御が生きていてもパワーユニットは動かせないので、接点4aの短絡が効果的である。
【0108】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【符号の説明】
【0109】
1:電源
2:超電導マグネット
2L:超電導コイル
3:パワーユニット
4:保護リレー
4a:接点
5:第1シャント抵抗(第1電流検出器)
7:トランジスタ(増幅器)
8:第2シャント抵抗(第2電流検出器)
9:電流制御回路(電流制御手段)
16:保護回路(保護手段)
100:内部異常信号
101:励磁電源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導コイルを具備してなる超電導マグネットを励磁する励磁電源であって、
電源と、
前記電源に接続されたパワーユニットと、
前記電源、前記パワーユニット、または前記超電導マグネットの異常を誤検出した場合に、前記パワーユニットの出力の両端を短絡させる接点を閉じて保護状態とする保護手段と、
前記超電導コイルと前記接点とを含むループ内に設けられ、当該ループ内の電流値を検出する第1電流検出器と、
を備え、
前記パワーユニットは、
増幅器と、
当該パワーユニットの出力電流値を検出する第2電流検出器と、
前記出力電流値を制御する電流制御手段と、
を有し、
前記保護手段により前記接点が閉じられた際、少なくとも前記第1電流検出器の検出値を用いて、所定のスイープレートで前記出力電流値を上げていき、当該出力電流値と前記超電導コイルを流れる電流値とを一致させたのち当該接点を開いて保護状態から復帰させる復帰手段を備えていることを特徴とする、超電導マグネット用の励磁電源。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導マグネット用の励磁電源において、
前記復帰手段は、復帰ボタンが押されると、前記第1電流検出器の検出値を目標値として読み込み、前記第2電流検出器の検出値を現在値として、所定のスイープレートで両検出値を一致させたのち前記接点を開くように構成されていることを特徴とする、超電導マグネット用の励磁電源。
【請求項3】
超電導コイルを具備してなる超電導マグネットを励磁する励磁電源であって、
電源と、
前記電源に接続されたパワーユニットと、
前記電源、前記パワーユニット、または前記超電導マグネットの異常を誤検出した場合に、前記パワーユニットの出力の両端を短絡させる接点を閉じて保護状態とする保護手段と、
前記保護手段により前記接点が閉じられた際、その時点またはその直前の前記パワーユニットの出力電流値を記憶する記憶手段と、
を備え、
前記パワーユニットは、
増幅器と、
当該パワーユニットの出力電流値を検出する電流検出器と、
前記出力電流値を制御する電流制御手段と、
を有し、
前記保護手段により前記接点が閉じられた際、前記電流検出器の検出値および前記記憶手段の記憶値を用いて、所定のスイープレートで前記出力電流値を上げていき、当該出力電流値と前記超電導コイルを流れる電流値とを一致させたのち当該接点を開いて保護状態から復帰させる復帰手段を備えていることを特徴とする、超電導マグネット用の励磁電源。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−257455(P2012−257455A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204703(P2012−204703)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2010−214800(P2010−214800)の分割
【原出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(502147465)ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社 (56)
【Fターム(参考)】