超電導線材の製造方法および超電導線材
【課題】超電導相の結晶の配向性を向上させることにより、臨界電流などの超電導特性を向上させることが可能な超電導線材の製造方法および超電導線材を提供する。
【解決手段】超電導線材の製造方法は、前駆体粉末が金属からなる被覆層により被覆された構成を有する前駆体線材を準備する単芯線材準備工程、多芯化工程および1次圧延工程と、被覆層に通電して被覆層を第1の焼結温度に加熱することにより、被覆層に接触する領域である外周領域の前駆体粉末を焼結させる外周領域焼結工程と、外周領域焼結工程よりも後に、第1の焼結温度よりも低い第2の焼結温度に前駆体線材を加熱することにより、外周領域に取り囲まれた領域である中央領域の前駆体粉末を焼結させる中央領域焼結工程とを備えている。
【解決手段】超電導線材の製造方法は、前駆体粉末が金属からなる被覆層により被覆された構成を有する前駆体線材を準備する単芯線材準備工程、多芯化工程および1次圧延工程と、被覆層に通電して被覆層を第1の焼結温度に加熱することにより、被覆層に接触する領域である外周領域の前駆体粉末を焼結させる外周領域焼結工程と、外周領域焼結工程よりも後に、第1の焼結温度よりも低い第2の焼結温度に前駆体線材を加熱することにより、外周領域に取り囲まれた領域である中央領域の前駆体粉末を焼結させる中央領域焼結工程とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導線材の製造方法および超電導線材に関し、より特定的には、高い臨界電流値を確保することが可能な超電導線材の製造方法および超電導線材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、たとえばBi2223相などを含むBi系酸化物超電導体を金属被覆した多芯線からなる超電導線材は、液体窒素温度での使用が可能であるとともに、高い臨界電流密度が得られること、長尺化が容易であること等の利点を有していることから、超電導ケーブルやマグネットへの応用が期待されている。
【0003】
このような超電導線材は、たとえば次のように製造される。まず、超電導体の前駆体粉末を銀などからなる金属管に充填する。次に、前駆体粉末が充填された金属管を伸線加工することにより、単芯線材を作製する。さらに、複数の単芯線材を束ねて金属管内に挿入し、伸線加工して多芯線材とする。そして、当該多芯線材に対して圧延と熱処理(焼結処理)とを繰り返して実施することにより前駆体粉末から超電導相が生成し、線状の超電導体が金属に覆われて構成されたテープ状の超電導線材が得られる。
【0004】
ここで、上記超電導線材においては、焼結処理により生成する超電導相の結晶の配向性が臨界電流値等の超電導特性に大きな影響を及ぼすことが知られている。これに対し、超電導線材に通電を行ない、超電導線材全体を一様に、かつ厳密な温度管理のもと加熱することにより、長手方向の結晶配向性のばらつきを抑えることが可能な超電導線材の熱処理方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。これにより、超電導線材の長手方向における超電導特性のばらつきを抑制することができる。
【特許文献1】特開2004−71295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の熱処理方法を採用した場合でも、超電導線材に含まれる超電導相の結晶の配向性は必ずしも十分に高いとはいえず、配向性の更なる向上による臨界電流などの超電導特性の向上が求められていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、超電導相の結晶の配向性を向上させることにより、臨界電流などの超電導特性を向上させることが可能な超電導線材の製造方法および超電導線材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従った超電導線材の製造方法は、前駆体粉末が金属からなる被覆層により被覆された構成を有する前駆体線材を準備する工程と、被覆層に通電して被覆層を第1の焼結温度に加熱することにより、被覆層に接触する領域である外周領域の前駆体粉末を焼結させる工程と、外周領域の前駆体粉末を焼結させる工程よりも後に、第1の焼結温度よりも低い第2の焼結温度に前駆体線材を加熱することにより、外周領域に取り囲まれた領域である中央領域の前駆体粉末を焼結させる工程とを備えている。
【0008】
本発明者は、前駆体粉末が被覆層により被覆された前駆体線材を加熱して前駆体粉末から超電導相を生成させるプロセスにおいて、超電導相の結晶の配向性を向上させる方策について検討を行なった。その結果、以下のような知見を見出し、本発明に想到した。すなわち、従来の超電導線材の製造方法においては、超電導線材の長手方向に垂直な断面全体が超電導相の結晶の核発生に十分な温度に加熱されるため、当該断面全体において結晶核が生成し、結晶の成長が進行する。このとき、被覆層に接触する外周領域の前駆体粉末からは、被覆層に沿った方向に配向する超電導相が生成する。一方、被覆層から離れた中央領域の前駆体粉末から生成した超電導相の結晶は自由な方向に成長可能であるため、配向性に乏しい超電導相が生成する。その結果、超電導線材全体としては、超電導相の結晶の配向性が十分に向上しないという問題を生じていた。
【0009】
これに対し、本発明の超電導線材の製造方法においては、まず、前駆体線材の被覆層に通電して被覆層を第1の焼結温度に加熱することにより、被覆層に接触する領域である外周領域の前駆体粉末を焼結させる。このとき、上述のように、外周領域の前駆体粉末からは、被覆層に沿った方向に配向する超電導相が生成する。次に、第1の焼結温度よりも低い第2の焼結温度に前駆体線材を加熱することにより、中央領域の前駆体粉末を焼結させる。このとき、焼結温度が上記外周領域の焼結を行なう際よりも低いため、中央領域においては新たな核発生と当該核からの結晶成長よりも、外周領域に生成した配向性の高い超電導相からの結晶成長が優位となる。そのため、中央領域においても、被覆層に沿った方向に配向する超電導相が生成する。その結果、本発明の超電導線材の製造方法によれば、超電導相の結晶の配向性を向上させることにより、臨界電流などの超電導特性を向上させることが可能な超電導線材の製造方法を提供することができる。
【0010】
ここで、第1の焼結温度および当該温度に保持される時間は、被覆層に沿った方向に配向する超電導相が生成可能な厚みの外周領域において、前駆体粉末が焼結するように決定することが好ましく、たとえば第1の焼結温度は820℃以上900℃以下、当該温度に被覆層が加熱される時間は5分間以上60分間以下とすることができる。
【0011】
上記超電導線材の製造方法において好ましくは、外周領域の前駆体粉末を焼結させる工程では、前駆体線材の一方の端部における被覆層から他方の端部における被覆層にまで通電することにより、被覆層が加熱される。
【0012】
これにより、前駆体線材の長手方向の全域において同時に、外周領域における前駆体粉末の焼結を実施することができる。その結果、効率よく超電導線材を製造することができる。
【0013】
上記超電導線材の製造方法において好ましくは、中央領域の前駆体粉末を焼結させる工程では、前駆体線材を取り囲む雰囲気が加熱されることにより前駆体粉末が焼結する。
【0014】
中央領域の前駆体粉末を焼結させる工程では、中央領域における核発生を抑制しつつ、焼結による超電導相の結晶成長を進行させる必要があるため、精度よく加熱温度を制御することが重要である。そのため、加熱温度の厳密な制御が容易な雰囲気を介した加熱により、中央領域の前駆体粉末を焼結させる工程が実施されることが好ましい。ここで、前駆体線材を取り囲む雰囲気が加熱されることにより前駆体粉末を焼結させる方法としては、たとえば雰囲気を介して前駆体線材を加熱可能な電気炉において、渦巻状に巻かれた状態の前駆体線材を加熱する方法が挙げられる。
【0015】
上記超電導線材の製造方法において好ましくは、上記第2の焼結温度は800℃以上830℃未満である。
【0016】
これにより、中央領域における超電導相の核発生を抑制しつつ、焼結による超電導相の結晶成長を進行させることができる。また、超電導相の核発生を一層抑制しつつ、焼結による超電導相の結晶成長を進行させるためには、上記第2の焼結温度は810℃以上825℃以下とすることが、より好ましい。ここで、当該条件の下で実施される超電導線材の製造方法は、たとえばBi2212、Bi2201などを含む前駆体粉末を採用し、酸素濃度0〜21体積%の雰囲気中で前駆体線材が加熱されることにより、最終的に超電導相としてBi2223、Bi2212などが生成する超電導線材の製造方法に好適である。
【0017】
本発明に従った超電導線材は、上記本発明の超電導線材の製造方法により製造されている。
【0018】
本発明の超電導線材によれば、上記本発明の超電導線材の製造方法により製造されていることにより、超電導相の結晶の配向性を向上させることによって、臨界電流などの超電導特性を向上させることが可能な超電導線材を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明の超電導線材の製造方法および超電導線材によれば、超電導相の結晶の配向性を向上させることにより、臨界電流などの超電導特性を向上させることが可能な超電導線材の製造方法および超電導線材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰り返さない。
【0021】
(実施の形態1)
まず、Bi2201、Bi2212、Bi2223などを含む前駆体粉末が準備され、最終的に得られる超電導相がBi2212相またはBi2223相を主相とする場合を例として、本発明の一実施の形態である実施の形態1について説明する。図1は、実施の形態1における超電導線材の製造方法の概略を示すフローチャートである。また、図2は、図1の前駆体粉末充填工程を説明するための概略図である。また、図3は、図1の1次伸線工程を説明するための概略図である。また、図4は、図1の挿入工程を説明するための概略図である。図5は、図1の2次伸線工程を説明するための概略図である。図6は、図1の1次圧延工程を説明するための概略図である。図7は、図1の1次圧延工程において作製される前駆体線材の構成を示す概略図である。図8は、図1の1次焼結工程における加熱パターンを示す概略図である。図9は、図1の外周領域焼結工程を説明するための概略図である。また、図10は、図7の一部を拡大して示す概略図である。また、図11は、実施の形態1における超電導線材の構成を示す概略図である。
【0022】
ここで、Bi2212とは、ビスマス(Bi)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)および酸素(O)を含み、さらに必要に応じて鉛(Pb)を含むBi−Sr−Ca−Cu−O系またはBi−Pb−Sr−Ca−Cu−O系の化合物(酸化物)であって、原子比でBi(およびPb):Sr:Ca:Cuが2:2:1:2の比率で近似的に表されるものをいう。また、Bi2223とは、Bi−Sr−Ca−Cu−O系またはBi−Pb−Sr−Ca−Cu−O系の化合物(酸化物)であって、原子比でBi(およびPb):Sr:Ca:Cuが2:2:2:3の比率で近似的に表されるものをいう。また、Bi2201とは、Bi−Sr−Cu−O系またはBi−Pb−Sr−Cu−O系の化合物(酸化物)であって、原子比でBi(およびPb):Sr:Cuが2:2:1の比率で近似的に表されるものをいう。
【0023】
図1を参照して、実施の形態1における超電導線材の製造方法においては、まず、工程(S10)として前駆体粉末充填工程が実施される。具体的には、図2を参照して、金属管であるAg(銀)製のシース31の内部に、Bi2201、Bi2212、Bi2223などを含む前駆体粉末21が充填される。
【0024】
次に、図1を参照して、工程(S20)として1次伸線工程が実施される。具体的には、図3を参照して、シース31の内部に前駆体粉末21が充填された原料線材11が、ダイス91を通して引き抜かれることにより伸線加工されて、単芯線材12が作製される。この工程(S10)および(S20)は、単芯線材を準備する単芯線材準備工程を構成する。
【0025】
次に、図1を参照して、工程(S30)として挿入工程が実施される。この工程(S30)では、まず工程(S20)において作製された単芯線材12が長手方向に交差する断面において切断され、複数本の単芯線材12とされる。その後、図4に示すように、当該複数本の単芯線材12が束ねられて金属管であるAg(銀)製のシース32の内部に挿入され、多芯原料線材13が作製される。
【0026】
次に、図1を参照して、工程(S40)として2次伸線工程が実施される。具体的には、図5を参照して、工程(S30)において作製された多芯原料線材13がダイス91を通して引き抜かれることにより伸線加工されて、多芯構造を有する多芯線材14が作製される。この工程(S30)および(S40)は、単芯線材を多芯化する多芯化工程を構成する。
【0027】
次に、図1を参照して、工程(S50)として1次圧延工程が実施される。この工程(S50)では、図6を参照して、上記工程(S40)において作成された多芯線材14が、一対の圧延ロール92を備えた圧延装置により圧延されて、扁平な断面形状を有するテープ状多芯線材15に加工される。このテープ状多芯線材15は、図7に示すように、前駆体粉末21が銀からなる被覆層としてのシース部30により被覆された構成を有する前駆体線材である。
【0028】
次に、図1を参照して、1次焼結工程が実施される。この1次焼結工程では、まず工程(S60)として外周領域焼結工程が実施された後、工程(S70)として中央領域焼結工程が実施される。
【0029】
図7および図8を参照して、工程(S60)では、被覆層としてのシース部30に通電してシース部30を第1の焼結温度である温度T1に加熱し、時間t1だけ保持する。その後、工程(S70)では、テープ状多芯線材15を温度T1よりも低い第2の焼結温度としての温度T2に加熱し、時間t2だけ保持する。
【0030】
工程(S60)は、たとえば以下のように実施することができる。図9を参照して、まず、渦巻状に巻き付けられたテープ状多芯線材15を準備し、当該テープ状多芯線材15の両端を引き出す。このテープ状多芯線材15の両端を、電源装置94に接続された導線94Aに接続する。そして、電源装置94を運転することにより、テープ状多芯線材15に通電する。このとき、図10を参照して、テープ状多芯線材15においては、前駆体粉末21の電気抵抗値が銀からなるシース部30に比べて十分に高いため、電流はテープ状多芯線材15の一方の端部におけるシース部30から他方の端部におけるシース部30にまで流れ、シース部30が通電により加熱される。これにより、シース部30に接触する領域である外周領域21Aの前駆体粉末21が焼結し、超電導相であるBi2212またはBi2223の結晶が生成する。このとき、Bi2212またはBi2223の結晶は、シース部30に接して生成するため、シース部30に沿った方向に配向する。この工程(S60)においては、温度T1は、たとえば830℃以上900℃以下とすることができる。また、時間t1は、たとえば5分間以上60分間以下とすることができる。さらに、工程(S60)は、たとえば酸素濃度0体積%以上21体積%以下の雰囲気中において実施することができる。これにより、工程(S60)が完了した状態においては、外周領域21Aにおいて前駆体粉末21の焼結が進行してシース部30に沿った方向に配向する超電導相が生成する一方、中央領域21Bの前駆体粉末21は、未焼結の状態が維持される。
【0031】
その後、工程(S70)においては、たとえば渦巻状に巻き付けられたテープ状多芯線材15が電気炉内において温度T1よりも低い第2の焼結温度としての温度T2に加熱され、時間t2だけ保持される。これにより、テープ状多芯線材15を取り囲む雰囲気が加熱され、中央領域21Bの前駆体粉末21の焼結が進行する。このとき、温度T2が上記温度T1よりも低いため、図10を参照して、中央領域21Bにおいては新たな核発生と当該核からの結晶成長よりも、外周領域21Aに生成した配向性の高い超電導相からの結晶成長が優位となる。そのため、中央領域21Bにおいても、シース部30に沿った方向に配向する超電導相であるBi2212またはBi2223の結晶が生成する。この工程(S70)においては、温度T2は、たとえば800℃以上830℃未満とすることができる。また、時間t2は、たとえば5時間以上40時間以下とすることができる。さらに、工程(S70)は、たとえば酸素濃度0体積%以上21体積%以下の雰囲気中において実施することができる。
【0032】
次に、図1を参照して、工程(S80)として2次圧延工程が実施される。この工程(S80)では、工程(S70)までが実施されたテープ状多芯線材15が、たとえば工程(S50)の場合と同様に、一対の圧延ロール92を備えた圧延装置により圧延される。
【0033】
そして、図1を参照して、工程(S90)として2次焼結工程が実施される。この工程(S90)では、工程(S80)までが実施されたテープ状多芯線材15が、たとえば工程(S70)と同様に電気炉内において加熱され、前駆体粉末21の焼結がさらに進行する。ここで、工程(S90)においては、たとえば酸素濃度0体積%以上21体積%以下の雰囲気中においてテープ状多芯線材15が800℃以上850℃以下の温度に加熱され、10時間以上100時間以下だけ保持される。
【0034】
以上のプロセスにより、図11を参照して、Bi2212相またはBi2223相を含む線状の超電導相20が、銀からなるシース部30により被覆された多芯線形状を有する超電導線材10が得られる。そして、この超電導線材10は、工程(S60)においてシース部30に沿った方向に配向する超電導相が外周領域21Aに生成した後、工程(S70)において当該超電導相の結晶が成長することにより中央領域21Bにおける焼結が進行するプロセスで製造されている。そのため、超電導相20の結晶の配向性が向上しており、臨界電流などの超電導特性の向上した超電導線材となっている。また、工程(S60)において前駆体線材への通電を用いた焼結を採用することにより、雰囲気を介した加熱を採用する場合に比べて昇温および降温に要する時間を短縮することができる。そのため、超電導線材を効率よく製造することができる。また、所望の焼結温度以外の温度に加熱されることにより生成する異相の発生を抑制することができる。
【0035】
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2について説明する。図12は、実施の形態2の1次焼結工程における加熱パターンを示す概略図である。実施の形態2における超電導線材の製造方法は、基本的には実施の形態1の場合と同様に実施され、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2における超電導線材の製造方法は、1次焼結工程の手順において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0036】
すなわち、図1を参照して、実施の形態2における超電導線材の製造方法においては、まず、工程(S10)〜(S60)が実施の形態1の場合と同様に実施される。その後、工程(S70)では、テープ状多芯線材15の温度および当該温度における保持時間が実施の形態1の場合と同様になるように、図9を参照して、工程(S60)と同様に渦巻状に巻き付けられたテープ状多芯線材15に通電する。このとき、図12を参照して、工程(S60)において温度T1に加熱されたテープ状多芯線材15は、常温(室温)にまで冷却されることなく、工程(S70)においてT2に加熱される。そして、工程(S80)および(S90)が実施の形態1の場合と同様に実施されることにより、実施の形態2における超電導線材の製造方法は完了する。実施の形態2における超電導線材の製造方法によれば、工程(S60)および(S70)を同一の装置を用いて連続的に実施することにより、効率よく超電導線材を製造することができる。
【0037】
(実施の形態3)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態3について説明する。図13は、実施の形態3の1次焼結工程における外周領域焼結工程を説明するための概略図である。実施の形態3における超電導線材の製造方法は、基本的には実施の形態1の場合と同様に実施され、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態3における超電導線材の製造方法は、1次焼結工程の手順において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0038】
すなわち、図1を参照して、実施の形態3における超電導線材の製造方法においては、まず、工程(S10)〜(S50)が実施の形態1の場合と同様に実施される。その後、工程(S60)では、図13を参照して、保持リール95Aに渦巻状に巻き付けられたテープ状多芯線材15を準備し、当該テープ状多芯線材15の一方の端部を引き出す。そして、当該一方の端部を巻き取りリール95Bに接続することにより、保持リール95Aに巻き付けられたテープ状多芯線材15を順次巻き取りリール95Bに巻き取り可能とする。さらに、保持リール95Aから引き出され、巻き取りリール95Bに巻き取られるテープ状多芯線材15が、高周波電源(図示しない)に接続された高周波コイル96に対向する位置を通過するように、保持リール95A、巻き取りリール95Bおよび高周波コイル96を配置する。
【0039】
そして、保持リール95Aおよび巻き取りリール95Bを互いの回転軸が平行になるように同一の向きに回転させるとともに、図示しない高周波電源から高周波コイル96に高周波電流を供給する。これにより、保持リール95Aから巻き取りリール95Bに向かうテープ状多芯線材15が高周波コイル96に隣接する位置を通過する際、電磁誘導作用によりテープ状多芯線材15に電流が流れる。このとき、実施の形態1の場合と同様に当該電流はシース部30を流れ、シース部30が通電により加熱される。これにより、工程(S60)が完了した状態においては、外周領域21Aにおいて前駆体粉末21の焼結が進行してシース部30に沿った方向に配向する超電導相が生成する一方、中央領域21Bの前駆体粉末21は、未焼結の状態が維持される。その後、工程(S70)〜(S90)が実施の形態1の場合と同様に実施されることにより、実施の形態3における超電導線材の製造方法は完了する。
【0040】
実施の形態3における超電導線材の製造方法によれば、工程(S60)においてテープ状多芯線材15が渦巻状に巻き付けられた状態ではなく、テープ状多芯線材15の外表面同士が接触しない状態で加熱が実施されるため、テープ状多芯線材15の外表面同士の癒着を防止するためのセパレータを使用する必要がない。そのため、当該セパレータの存在に起因した傷の発生などの不具合を抑制することができる。
【0041】
なお、上記実施の形態においては、前駆体粉末または超電導相を覆う被覆層を構成する金属として、銀が採用される場合について説明したが、本発明の超電導線材の製造方法および超電導線材はこれに限られず、銀合金などを採用することができる。銀合金としては、たとえば銀と銅(Cu)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)などとの合金が挙げられる。
【実施例1】
【0042】
以下、本発明の実施例1について説明する。中央領域の前駆体粉末を焼結させる際の適切な加熱温度について調査する実験を行なった。実験の手順は以下のとおりである。
【0043】
まず、Bi2O3、PbO、SrCO3、CaCO3およびCuOを、原子比でBi:Pb:Sr:Ca:Cuが1.81:0.40:1.98:2.21:3.03となるように配合して原料粉末とした。次に、原料粉末に対し、大気中において750℃に12時間保持する熱処理、800℃に8時間保持する熱処理、減圧雰囲気133Pa(1Torr)において760℃に8時間保持する熱処理を順次実施した。各熱処理の後には、粉砕を実施した。そして、得られた粉末をボールミルを用いて粉砕し、サブミクロンオーダーの粒径を有する粉末とした。さらに、当該粉末を800℃に加熱して2時間保持することにより前駆体粉末とした。
【0044】
次に、この前駆体粉末を用いて上記実施の形態1の工程(S10)〜(S90)までを実施した。工程(S10)においては、外径12mm、内径9mmの管状の形状を有する銀製のシースを用いた。工程(S20)では、シースの外径が1mmとなるように伸線を実施した。工程(S30)では、外径12mm、内径9mmの管状の形状を有する銀製のシースの内部に工程(S20)において得られた単芯線材を61本挿入した。工程(S40)では、シースの外径が1mmとなるように伸線を実施した。工程(S50)では、工程(S40)において得られた多芯線材を幅4mm、厚み0.22mmとなるように圧延した。
【0045】
そして、テープ状多芯線材の表面に接触するように配置した熱電対を用いて温度を測定しつつ、当該多芯線材に通電することにより、多芯線材の表面の温度が830℃に10分間保持されるように工程(S60)を実施した。このとき、通電される電流は、50〜80A程度であった。その後、工程(S70)において、酸素濃度8体積%の雰囲気に調整された電気炉の内部にて、多芯線材を種々の温度(第2の焼結温度)に加熱し、20時間保持した。さらに、工程(S80)では、工程(S60)および(S70)における焼結により厚みが増加したテープ状多芯線材を厚みが0.22mmとなるように圧延を実施した。その後、工程(S90)では、テープ状多芯線材を、酸素分圧が8kPa、全圧30MPaの雰囲気中で830℃に加熱し、50時間保持した。そして、このようにして得られた超電導線材の液体窒素温度における臨界電流値を調査した。
【0046】
次に、実験の結果について説明する。上記第2の焼結温度が800℃未満の場合、臨界電流値は0Aまたは0Aに近い値となった。これは、第2の焼結温度が800℃未満では、中央領域における焼結が進行せず、中央領域において超電導相が生成しなかったためであると考えられる。一方、第2の焼結温度が830℃以上である場合、臨界電流値は10A〜100A程度となった。これは、第2の焼結温度が830℃以上では、中央領域において焼結が進行して超電導相が生成するものの、中央領域において超電導相の結晶の核生成および生成した結晶核からの結晶成長が進行するため、超電導相の配向性が不十分となり、臨界電流値が十分に向上しなかったものと考えられる。これに対し、第2の焼結温度が800℃以上830℃未満の範囲においては、臨界電流値は200A〜300Aとなった。これは、第2の焼結温度が800℃以上830℃未満の範囲の場合、中央領域において焼結が進行して超電導相が生成するものの、中央領域においては新たな核発生と当該核からの結晶成長よりも、外周領域に生成した配向性の高い超電導相からの結晶成長が優位となるため、超電導相の結晶の配向性が向上し、臨界電流値が向上したものと考えられる。
【0047】
図14は、実施例1の実験において、第2の焼結温度を800℃とした場合の超電導線材の長手方向に沿った断面における顕微鏡写真である。また、図15は、実施例1の実験において、第2の焼結温度を850℃とした場合の超電導線材の長手方向に沿った断面における顕微鏡写真である。図14および図15において、色の薄い領域が銀からなるシース部、色の濃い領域が超電導相に対応する。
【0048】
図14を参照して、第2の焼結温度が800℃である場合、超電導相20がシース部30の延びる方向(写真の左右方向;超電導線材の長手方向)に沿って成長していることが確認される。これに対し、図15を参照して、第2の焼結温度が850℃である場合、超電導相20がシース部30を横切って成長しており、配向性が低いことが確認される。
【0049】
以上の実験結果より、第2の焼結温度を第1の焼結温度(830℃)よりも低い800℃以上830℃未満とすることにより、超電導相の結晶の配向性を向上させ、臨界電流値を向上させることが可能であることが確認された。
【0050】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の超電導線材の製造方法および超電導線材は、高い臨界電流値を確保することが求められる超電導線材の製造方法および超電導線材に、特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態1における超電導線材の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【図2】図1の前駆体粉末充填工程を説明するための概略図である。
【図3】図1の1次伸線工程を説明するための概略図である。
【図4】図1の挿入工程を説明するための概略図である。
【図5】図1の2次伸線工程を説明するための概略図である。
【図6】図1の1次圧延工程を説明するための概略図である。
【図7】図1の1次圧延工程において作製される前駆体線材の構成を示す概略図である。
【図8】図1の1次焼結工程における加熱パターンを示す概略図である。
【図9】図1の外周領域焼結工程を説明するための概略図である。
【図10】図7の一部を拡大して示す概略図である。
【図11】実施の形態1における超電導線材の構成を示す概略図である。
【図12】実施の形態2の1次焼結工程における加熱パターンを示す概略図である。
【図13】実施の形態3の1次焼結工程における外周領域焼結工程を説明するための概略図である。
【図14】第2の焼結温度を800℃とした場合の超電導線材の長手方向に沿った断面における顕微鏡写真である。
【図15】第2の焼結温度を850℃とした場合の超電導線材の長手方向に沿った断面における顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0053】
10 超電導線材、11 原料線材、12 単芯線材、13 多芯原料線材、14 多芯線材、15 テープ状多芯線材、20 超電導相、21 前駆体粉末、21A 外周領域、21B 中央領域、30 シース部、31,32 シース、91 ダイス、92 圧延ロール、94 電源装置、94A 導線、95A 保持リール、95B 巻き取りリール、96 高周波コイル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導線材の製造方法および超電導線材に関し、より特定的には、高い臨界電流値を確保することが可能な超電導線材の製造方法および超電導線材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、たとえばBi2223相などを含むBi系酸化物超電導体を金属被覆した多芯線からなる超電導線材は、液体窒素温度での使用が可能であるとともに、高い臨界電流密度が得られること、長尺化が容易であること等の利点を有していることから、超電導ケーブルやマグネットへの応用が期待されている。
【0003】
このような超電導線材は、たとえば次のように製造される。まず、超電導体の前駆体粉末を銀などからなる金属管に充填する。次に、前駆体粉末が充填された金属管を伸線加工することにより、単芯線材を作製する。さらに、複数の単芯線材を束ねて金属管内に挿入し、伸線加工して多芯線材とする。そして、当該多芯線材に対して圧延と熱処理(焼結処理)とを繰り返して実施することにより前駆体粉末から超電導相が生成し、線状の超電導体が金属に覆われて構成されたテープ状の超電導線材が得られる。
【0004】
ここで、上記超電導線材においては、焼結処理により生成する超電導相の結晶の配向性が臨界電流値等の超電導特性に大きな影響を及ぼすことが知られている。これに対し、超電導線材に通電を行ない、超電導線材全体を一様に、かつ厳密な温度管理のもと加熱することにより、長手方向の結晶配向性のばらつきを抑えることが可能な超電導線材の熱処理方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。これにより、超電導線材の長手方向における超電導特性のばらつきを抑制することができる。
【特許文献1】特開2004−71295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の熱処理方法を採用した場合でも、超電導線材に含まれる超電導相の結晶の配向性は必ずしも十分に高いとはいえず、配向性の更なる向上による臨界電流などの超電導特性の向上が求められていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、超電導相の結晶の配向性を向上させることにより、臨界電流などの超電導特性を向上させることが可能な超電導線材の製造方法および超電導線材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従った超電導線材の製造方法は、前駆体粉末が金属からなる被覆層により被覆された構成を有する前駆体線材を準備する工程と、被覆層に通電して被覆層を第1の焼結温度に加熱することにより、被覆層に接触する領域である外周領域の前駆体粉末を焼結させる工程と、外周領域の前駆体粉末を焼結させる工程よりも後に、第1の焼結温度よりも低い第2の焼結温度に前駆体線材を加熱することにより、外周領域に取り囲まれた領域である中央領域の前駆体粉末を焼結させる工程とを備えている。
【0008】
本発明者は、前駆体粉末が被覆層により被覆された前駆体線材を加熱して前駆体粉末から超電導相を生成させるプロセスにおいて、超電導相の結晶の配向性を向上させる方策について検討を行なった。その結果、以下のような知見を見出し、本発明に想到した。すなわち、従来の超電導線材の製造方法においては、超電導線材の長手方向に垂直な断面全体が超電導相の結晶の核発生に十分な温度に加熱されるため、当該断面全体において結晶核が生成し、結晶の成長が進行する。このとき、被覆層に接触する外周領域の前駆体粉末からは、被覆層に沿った方向に配向する超電導相が生成する。一方、被覆層から離れた中央領域の前駆体粉末から生成した超電導相の結晶は自由な方向に成長可能であるため、配向性に乏しい超電導相が生成する。その結果、超電導線材全体としては、超電導相の結晶の配向性が十分に向上しないという問題を生じていた。
【0009】
これに対し、本発明の超電導線材の製造方法においては、まず、前駆体線材の被覆層に通電して被覆層を第1の焼結温度に加熱することにより、被覆層に接触する領域である外周領域の前駆体粉末を焼結させる。このとき、上述のように、外周領域の前駆体粉末からは、被覆層に沿った方向に配向する超電導相が生成する。次に、第1の焼結温度よりも低い第2の焼結温度に前駆体線材を加熱することにより、中央領域の前駆体粉末を焼結させる。このとき、焼結温度が上記外周領域の焼結を行なう際よりも低いため、中央領域においては新たな核発生と当該核からの結晶成長よりも、外周領域に生成した配向性の高い超電導相からの結晶成長が優位となる。そのため、中央領域においても、被覆層に沿った方向に配向する超電導相が生成する。その結果、本発明の超電導線材の製造方法によれば、超電導相の結晶の配向性を向上させることにより、臨界電流などの超電導特性を向上させることが可能な超電導線材の製造方法を提供することができる。
【0010】
ここで、第1の焼結温度および当該温度に保持される時間は、被覆層に沿った方向に配向する超電導相が生成可能な厚みの外周領域において、前駆体粉末が焼結するように決定することが好ましく、たとえば第1の焼結温度は820℃以上900℃以下、当該温度に被覆層が加熱される時間は5分間以上60分間以下とすることができる。
【0011】
上記超電導線材の製造方法において好ましくは、外周領域の前駆体粉末を焼結させる工程では、前駆体線材の一方の端部における被覆層から他方の端部における被覆層にまで通電することにより、被覆層が加熱される。
【0012】
これにより、前駆体線材の長手方向の全域において同時に、外周領域における前駆体粉末の焼結を実施することができる。その結果、効率よく超電導線材を製造することができる。
【0013】
上記超電導線材の製造方法において好ましくは、中央領域の前駆体粉末を焼結させる工程では、前駆体線材を取り囲む雰囲気が加熱されることにより前駆体粉末が焼結する。
【0014】
中央領域の前駆体粉末を焼結させる工程では、中央領域における核発生を抑制しつつ、焼結による超電導相の結晶成長を進行させる必要があるため、精度よく加熱温度を制御することが重要である。そのため、加熱温度の厳密な制御が容易な雰囲気を介した加熱により、中央領域の前駆体粉末を焼結させる工程が実施されることが好ましい。ここで、前駆体線材を取り囲む雰囲気が加熱されることにより前駆体粉末を焼結させる方法としては、たとえば雰囲気を介して前駆体線材を加熱可能な電気炉において、渦巻状に巻かれた状態の前駆体線材を加熱する方法が挙げられる。
【0015】
上記超電導線材の製造方法において好ましくは、上記第2の焼結温度は800℃以上830℃未満である。
【0016】
これにより、中央領域における超電導相の核発生を抑制しつつ、焼結による超電導相の結晶成長を進行させることができる。また、超電導相の核発生を一層抑制しつつ、焼結による超電導相の結晶成長を進行させるためには、上記第2の焼結温度は810℃以上825℃以下とすることが、より好ましい。ここで、当該条件の下で実施される超電導線材の製造方法は、たとえばBi2212、Bi2201などを含む前駆体粉末を採用し、酸素濃度0〜21体積%の雰囲気中で前駆体線材が加熱されることにより、最終的に超電導相としてBi2223、Bi2212などが生成する超電導線材の製造方法に好適である。
【0017】
本発明に従った超電導線材は、上記本発明の超電導線材の製造方法により製造されている。
【0018】
本発明の超電導線材によれば、上記本発明の超電導線材の製造方法により製造されていることにより、超電導相の結晶の配向性を向上させることによって、臨界電流などの超電導特性を向上させることが可能な超電導線材を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明の超電導線材の製造方法および超電導線材によれば、超電導相の結晶の配向性を向上させることにより、臨界電流などの超電導特性を向上させることが可能な超電導線材の製造方法および超電導線材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰り返さない。
【0021】
(実施の形態1)
まず、Bi2201、Bi2212、Bi2223などを含む前駆体粉末が準備され、最終的に得られる超電導相がBi2212相またはBi2223相を主相とする場合を例として、本発明の一実施の形態である実施の形態1について説明する。図1は、実施の形態1における超電導線材の製造方法の概略を示すフローチャートである。また、図2は、図1の前駆体粉末充填工程を説明するための概略図である。また、図3は、図1の1次伸線工程を説明するための概略図である。また、図4は、図1の挿入工程を説明するための概略図である。図5は、図1の2次伸線工程を説明するための概略図である。図6は、図1の1次圧延工程を説明するための概略図である。図7は、図1の1次圧延工程において作製される前駆体線材の構成を示す概略図である。図8は、図1の1次焼結工程における加熱パターンを示す概略図である。図9は、図1の外周領域焼結工程を説明するための概略図である。また、図10は、図7の一部を拡大して示す概略図である。また、図11は、実施の形態1における超電導線材の構成を示す概略図である。
【0022】
ここで、Bi2212とは、ビスマス(Bi)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)および酸素(O)を含み、さらに必要に応じて鉛(Pb)を含むBi−Sr−Ca−Cu−O系またはBi−Pb−Sr−Ca−Cu−O系の化合物(酸化物)であって、原子比でBi(およびPb):Sr:Ca:Cuが2:2:1:2の比率で近似的に表されるものをいう。また、Bi2223とは、Bi−Sr−Ca−Cu−O系またはBi−Pb−Sr−Ca−Cu−O系の化合物(酸化物)であって、原子比でBi(およびPb):Sr:Ca:Cuが2:2:2:3の比率で近似的に表されるものをいう。また、Bi2201とは、Bi−Sr−Cu−O系またはBi−Pb−Sr−Cu−O系の化合物(酸化物)であって、原子比でBi(およびPb):Sr:Cuが2:2:1の比率で近似的に表されるものをいう。
【0023】
図1を参照して、実施の形態1における超電導線材の製造方法においては、まず、工程(S10)として前駆体粉末充填工程が実施される。具体的には、図2を参照して、金属管であるAg(銀)製のシース31の内部に、Bi2201、Bi2212、Bi2223などを含む前駆体粉末21が充填される。
【0024】
次に、図1を参照して、工程(S20)として1次伸線工程が実施される。具体的には、図3を参照して、シース31の内部に前駆体粉末21が充填された原料線材11が、ダイス91を通して引き抜かれることにより伸線加工されて、単芯線材12が作製される。この工程(S10)および(S20)は、単芯線材を準備する単芯線材準備工程を構成する。
【0025】
次に、図1を参照して、工程(S30)として挿入工程が実施される。この工程(S30)では、まず工程(S20)において作製された単芯線材12が長手方向に交差する断面において切断され、複数本の単芯線材12とされる。その後、図4に示すように、当該複数本の単芯線材12が束ねられて金属管であるAg(銀)製のシース32の内部に挿入され、多芯原料線材13が作製される。
【0026】
次に、図1を参照して、工程(S40)として2次伸線工程が実施される。具体的には、図5を参照して、工程(S30)において作製された多芯原料線材13がダイス91を通して引き抜かれることにより伸線加工されて、多芯構造を有する多芯線材14が作製される。この工程(S30)および(S40)は、単芯線材を多芯化する多芯化工程を構成する。
【0027】
次に、図1を参照して、工程(S50)として1次圧延工程が実施される。この工程(S50)では、図6を参照して、上記工程(S40)において作成された多芯線材14が、一対の圧延ロール92を備えた圧延装置により圧延されて、扁平な断面形状を有するテープ状多芯線材15に加工される。このテープ状多芯線材15は、図7に示すように、前駆体粉末21が銀からなる被覆層としてのシース部30により被覆された構成を有する前駆体線材である。
【0028】
次に、図1を参照して、1次焼結工程が実施される。この1次焼結工程では、まず工程(S60)として外周領域焼結工程が実施された後、工程(S70)として中央領域焼結工程が実施される。
【0029】
図7および図8を参照して、工程(S60)では、被覆層としてのシース部30に通電してシース部30を第1の焼結温度である温度T1に加熱し、時間t1だけ保持する。その後、工程(S70)では、テープ状多芯線材15を温度T1よりも低い第2の焼結温度としての温度T2に加熱し、時間t2だけ保持する。
【0030】
工程(S60)は、たとえば以下のように実施することができる。図9を参照して、まず、渦巻状に巻き付けられたテープ状多芯線材15を準備し、当該テープ状多芯線材15の両端を引き出す。このテープ状多芯線材15の両端を、電源装置94に接続された導線94Aに接続する。そして、電源装置94を運転することにより、テープ状多芯線材15に通電する。このとき、図10を参照して、テープ状多芯線材15においては、前駆体粉末21の電気抵抗値が銀からなるシース部30に比べて十分に高いため、電流はテープ状多芯線材15の一方の端部におけるシース部30から他方の端部におけるシース部30にまで流れ、シース部30が通電により加熱される。これにより、シース部30に接触する領域である外周領域21Aの前駆体粉末21が焼結し、超電導相であるBi2212またはBi2223の結晶が生成する。このとき、Bi2212またはBi2223の結晶は、シース部30に接して生成するため、シース部30に沿った方向に配向する。この工程(S60)においては、温度T1は、たとえば830℃以上900℃以下とすることができる。また、時間t1は、たとえば5分間以上60分間以下とすることができる。さらに、工程(S60)は、たとえば酸素濃度0体積%以上21体積%以下の雰囲気中において実施することができる。これにより、工程(S60)が完了した状態においては、外周領域21Aにおいて前駆体粉末21の焼結が進行してシース部30に沿った方向に配向する超電導相が生成する一方、中央領域21Bの前駆体粉末21は、未焼結の状態が維持される。
【0031】
その後、工程(S70)においては、たとえば渦巻状に巻き付けられたテープ状多芯線材15が電気炉内において温度T1よりも低い第2の焼結温度としての温度T2に加熱され、時間t2だけ保持される。これにより、テープ状多芯線材15を取り囲む雰囲気が加熱され、中央領域21Bの前駆体粉末21の焼結が進行する。このとき、温度T2が上記温度T1よりも低いため、図10を参照して、中央領域21Bにおいては新たな核発生と当該核からの結晶成長よりも、外周領域21Aに生成した配向性の高い超電導相からの結晶成長が優位となる。そのため、中央領域21Bにおいても、シース部30に沿った方向に配向する超電導相であるBi2212またはBi2223の結晶が生成する。この工程(S70)においては、温度T2は、たとえば800℃以上830℃未満とすることができる。また、時間t2は、たとえば5時間以上40時間以下とすることができる。さらに、工程(S70)は、たとえば酸素濃度0体積%以上21体積%以下の雰囲気中において実施することができる。
【0032】
次に、図1を参照して、工程(S80)として2次圧延工程が実施される。この工程(S80)では、工程(S70)までが実施されたテープ状多芯線材15が、たとえば工程(S50)の場合と同様に、一対の圧延ロール92を備えた圧延装置により圧延される。
【0033】
そして、図1を参照して、工程(S90)として2次焼結工程が実施される。この工程(S90)では、工程(S80)までが実施されたテープ状多芯線材15が、たとえば工程(S70)と同様に電気炉内において加熱され、前駆体粉末21の焼結がさらに進行する。ここで、工程(S90)においては、たとえば酸素濃度0体積%以上21体積%以下の雰囲気中においてテープ状多芯線材15が800℃以上850℃以下の温度に加熱され、10時間以上100時間以下だけ保持される。
【0034】
以上のプロセスにより、図11を参照して、Bi2212相またはBi2223相を含む線状の超電導相20が、銀からなるシース部30により被覆された多芯線形状を有する超電導線材10が得られる。そして、この超電導線材10は、工程(S60)においてシース部30に沿った方向に配向する超電導相が外周領域21Aに生成した後、工程(S70)において当該超電導相の結晶が成長することにより中央領域21Bにおける焼結が進行するプロセスで製造されている。そのため、超電導相20の結晶の配向性が向上しており、臨界電流などの超電導特性の向上した超電導線材となっている。また、工程(S60)において前駆体線材への通電を用いた焼結を採用することにより、雰囲気を介した加熱を採用する場合に比べて昇温および降温に要する時間を短縮することができる。そのため、超電導線材を効率よく製造することができる。また、所望の焼結温度以外の温度に加熱されることにより生成する異相の発生を抑制することができる。
【0035】
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2について説明する。図12は、実施の形態2の1次焼結工程における加熱パターンを示す概略図である。実施の形態2における超電導線材の製造方法は、基本的には実施の形態1の場合と同様に実施され、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2における超電導線材の製造方法は、1次焼結工程の手順において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0036】
すなわち、図1を参照して、実施の形態2における超電導線材の製造方法においては、まず、工程(S10)〜(S60)が実施の形態1の場合と同様に実施される。その後、工程(S70)では、テープ状多芯線材15の温度および当該温度における保持時間が実施の形態1の場合と同様になるように、図9を参照して、工程(S60)と同様に渦巻状に巻き付けられたテープ状多芯線材15に通電する。このとき、図12を参照して、工程(S60)において温度T1に加熱されたテープ状多芯線材15は、常温(室温)にまで冷却されることなく、工程(S70)においてT2に加熱される。そして、工程(S80)および(S90)が実施の形態1の場合と同様に実施されることにより、実施の形態2における超電導線材の製造方法は完了する。実施の形態2における超電導線材の製造方法によれば、工程(S60)および(S70)を同一の装置を用いて連続的に実施することにより、効率よく超電導線材を製造することができる。
【0037】
(実施の形態3)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態3について説明する。図13は、実施の形態3の1次焼結工程における外周領域焼結工程を説明するための概略図である。実施の形態3における超電導線材の製造方法は、基本的には実施の形態1の場合と同様に実施され、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態3における超電導線材の製造方法は、1次焼結工程の手順において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0038】
すなわち、図1を参照して、実施の形態3における超電導線材の製造方法においては、まず、工程(S10)〜(S50)が実施の形態1の場合と同様に実施される。その後、工程(S60)では、図13を参照して、保持リール95Aに渦巻状に巻き付けられたテープ状多芯線材15を準備し、当該テープ状多芯線材15の一方の端部を引き出す。そして、当該一方の端部を巻き取りリール95Bに接続することにより、保持リール95Aに巻き付けられたテープ状多芯線材15を順次巻き取りリール95Bに巻き取り可能とする。さらに、保持リール95Aから引き出され、巻き取りリール95Bに巻き取られるテープ状多芯線材15が、高周波電源(図示しない)に接続された高周波コイル96に対向する位置を通過するように、保持リール95A、巻き取りリール95Bおよび高周波コイル96を配置する。
【0039】
そして、保持リール95Aおよび巻き取りリール95Bを互いの回転軸が平行になるように同一の向きに回転させるとともに、図示しない高周波電源から高周波コイル96に高周波電流を供給する。これにより、保持リール95Aから巻き取りリール95Bに向かうテープ状多芯線材15が高周波コイル96に隣接する位置を通過する際、電磁誘導作用によりテープ状多芯線材15に電流が流れる。このとき、実施の形態1の場合と同様に当該電流はシース部30を流れ、シース部30が通電により加熱される。これにより、工程(S60)が完了した状態においては、外周領域21Aにおいて前駆体粉末21の焼結が進行してシース部30に沿った方向に配向する超電導相が生成する一方、中央領域21Bの前駆体粉末21は、未焼結の状態が維持される。その後、工程(S70)〜(S90)が実施の形態1の場合と同様に実施されることにより、実施の形態3における超電導線材の製造方法は完了する。
【0040】
実施の形態3における超電導線材の製造方法によれば、工程(S60)においてテープ状多芯線材15が渦巻状に巻き付けられた状態ではなく、テープ状多芯線材15の外表面同士が接触しない状態で加熱が実施されるため、テープ状多芯線材15の外表面同士の癒着を防止するためのセパレータを使用する必要がない。そのため、当該セパレータの存在に起因した傷の発生などの不具合を抑制することができる。
【0041】
なお、上記実施の形態においては、前駆体粉末または超電導相を覆う被覆層を構成する金属として、銀が採用される場合について説明したが、本発明の超電導線材の製造方法および超電導線材はこれに限られず、銀合金などを採用することができる。銀合金としては、たとえば銀と銅(Cu)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)などとの合金が挙げられる。
【実施例1】
【0042】
以下、本発明の実施例1について説明する。中央領域の前駆体粉末を焼結させる際の適切な加熱温度について調査する実験を行なった。実験の手順は以下のとおりである。
【0043】
まず、Bi2O3、PbO、SrCO3、CaCO3およびCuOを、原子比でBi:Pb:Sr:Ca:Cuが1.81:0.40:1.98:2.21:3.03となるように配合して原料粉末とした。次に、原料粉末に対し、大気中において750℃に12時間保持する熱処理、800℃に8時間保持する熱処理、減圧雰囲気133Pa(1Torr)において760℃に8時間保持する熱処理を順次実施した。各熱処理の後には、粉砕を実施した。そして、得られた粉末をボールミルを用いて粉砕し、サブミクロンオーダーの粒径を有する粉末とした。さらに、当該粉末を800℃に加熱して2時間保持することにより前駆体粉末とした。
【0044】
次に、この前駆体粉末を用いて上記実施の形態1の工程(S10)〜(S90)までを実施した。工程(S10)においては、外径12mm、内径9mmの管状の形状を有する銀製のシースを用いた。工程(S20)では、シースの外径が1mmとなるように伸線を実施した。工程(S30)では、外径12mm、内径9mmの管状の形状を有する銀製のシースの内部に工程(S20)において得られた単芯線材を61本挿入した。工程(S40)では、シースの外径が1mmとなるように伸線を実施した。工程(S50)では、工程(S40)において得られた多芯線材を幅4mm、厚み0.22mmとなるように圧延した。
【0045】
そして、テープ状多芯線材の表面に接触するように配置した熱電対を用いて温度を測定しつつ、当該多芯線材に通電することにより、多芯線材の表面の温度が830℃に10分間保持されるように工程(S60)を実施した。このとき、通電される電流は、50〜80A程度であった。その後、工程(S70)において、酸素濃度8体積%の雰囲気に調整された電気炉の内部にて、多芯線材を種々の温度(第2の焼結温度)に加熱し、20時間保持した。さらに、工程(S80)では、工程(S60)および(S70)における焼結により厚みが増加したテープ状多芯線材を厚みが0.22mmとなるように圧延を実施した。その後、工程(S90)では、テープ状多芯線材を、酸素分圧が8kPa、全圧30MPaの雰囲気中で830℃に加熱し、50時間保持した。そして、このようにして得られた超電導線材の液体窒素温度における臨界電流値を調査した。
【0046】
次に、実験の結果について説明する。上記第2の焼結温度が800℃未満の場合、臨界電流値は0Aまたは0Aに近い値となった。これは、第2の焼結温度が800℃未満では、中央領域における焼結が進行せず、中央領域において超電導相が生成しなかったためであると考えられる。一方、第2の焼結温度が830℃以上である場合、臨界電流値は10A〜100A程度となった。これは、第2の焼結温度が830℃以上では、中央領域において焼結が進行して超電導相が生成するものの、中央領域において超電導相の結晶の核生成および生成した結晶核からの結晶成長が進行するため、超電導相の配向性が不十分となり、臨界電流値が十分に向上しなかったものと考えられる。これに対し、第2の焼結温度が800℃以上830℃未満の範囲においては、臨界電流値は200A〜300Aとなった。これは、第2の焼結温度が800℃以上830℃未満の範囲の場合、中央領域において焼結が進行して超電導相が生成するものの、中央領域においては新たな核発生と当該核からの結晶成長よりも、外周領域に生成した配向性の高い超電導相からの結晶成長が優位となるため、超電導相の結晶の配向性が向上し、臨界電流値が向上したものと考えられる。
【0047】
図14は、実施例1の実験において、第2の焼結温度を800℃とした場合の超電導線材の長手方向に沿った断面における顕微鏡写真である。また、図15は、実施例1の実験において、第2の焼結温度を850℃とした場合の超電導線材の長手方向に沿った断面における顕微鏡写真である。図14および図15において、色の薄い領域が銀からなるシース部、色の濃い領域が超電導相に対応する。
【0048】
図14を参照して、第2の焼結温度が800℃である場合、超電導相20がシース部30の延びる方向(写真の左右方向;超電導線材の長手方向)に沿って成長していることが確認される。これに対し、図15を参照して、第2の焼結温度が850℃である場合、超電導相20がシース部30を横切って成長しており、配向性が低いことが確認される。
【0049】
以上の実験結果より、第2の焼結温度を第1の焼結温度(830℃)よりも低い800℃以上830℃未満とすることにより、超電導相の結晶の配向性を向上させ、臨界電流値を向上させることが可能であることが確認された。
【0050】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の超電導線材の製造方法および超電導線材は、高い臨界電流値を確保することが求められる超電導線材の製造方法および超電導線材に、特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態1における超電導線材の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【図2】図1の前駆体粉末充填工程を説明するための概略図である。
【図3】図1の1次伸線工程を説明するための概略図である。
【図4】図1の挿入工程を説明するための概略図である。
【図5】図1の2次伸線工程を説明するための概略図である。
【図6】図1の1次圧延工程を説明するための概略図である。
【図7】図1の1次圧延工程において作製される前駆体線材の構成を示す概略図である。
【図8】図1の1次焼結工程における加熱パターンを示す概略図である。
【図9】図1の外周領域焼結工程を説明するための概略図である。
【図10】図7の一部を拡大して示す概略図である。
【図11】実施の形態1における超電導線材の構成を示す概略図である。
【図12】実施の形態2の1次焼結工程における加熱パターンを示す概略図である。
【図13】実施の形態3の1次焼結工程における外周領域焼結工程を説明するための概略図である。
【図14】第2の焼結温度を800℃とした場合の超電導線材の長手方向に沿った断面における顕微鏡写真である。
【図15】第2の焼結温度を850℃とした場合の超電導線材の長手方向に沿った断面における顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0053】
10 超電導線材、11 原料線材、12 単芯線材、13 多芯原料線材、14 多芯線材、15 テープ状多芯線材、20 超電導相、21 前駆体粉末、21A 外周領域、21B 中央領域、30 シース部、31,32 シース、91 ダイス、92 圧延ロール、94 電源装置、94A 導線、95A 保持リール、95B 巻き取りリール、96 高周波コイル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体粉末が金属からなる被覆層により被覆された構成を有する前駆体線材を準備する工程と、
前記被覆層に通電して前記被覆層を第1の焼結温度に加熱することにより、前記被覆層に接触する領域である外周領域の前記前駆体粉末を焼結させる工程と、
前記外周領域の前記前駆体粉末を焼結させる工程よりも後に、前記第1の焼結温度よりも低い第2の焼結温度に前記前駆体線材を加熱することにより、前記外周領域に取り囲まれた領域である中央領域の前記前駆体粉末を焼結させる工程とを備えた、超電導線材の製造方法。
【請求項2】
前記外周領域の前記前駆体粉末を焼結させる工程では、前記前駆体線材の一方の端部における前記被覆層から他方の端部における前記被覆層にまで通電することにより、前記被覆層が加熱される、請求項1に記載の超電導線材の製造方法。
【請求項3】
前記中央領域の前記前駆体粉末を焼結させる工程では、前記前駆体線材を取り囲む雰囲気が加熱されることにより前記前駆体粉末が焼結する、請求項1または2に記載の超電導線材の製造方法。
【請求項4】
前記第2の焼結温度は800℃以上830℃未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超電導線材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の超電導線材の製造方法により製造された、超電導線材。
【請求項1】
前駆体粉末が金属からなる被覆層により被覆された構成を有する前駆体線材を準備する工程と、
前記被覆層に通電して前記被覆層を第1の焼結温度に加熱することにより、前記被覆層に接触する領域である外周領域の前記前駆体粉末を焼結させる工程と、
前記外周領域の前記前駆体粉末を焼結させる工程よりも後に、前記第1の焼結温度よりも低い第2の焼結温度に前記前駆体線材を加熱することにより、前記外周領域に取り囲まれた領域である中央領域の前記前駆体粉末を焼結させる工程とを備えた、超電導線材の製造方法。
【請求項2】
前記外周領域の前記前駆体粉末を焼結させる工程では、前記前駆体線材の一方の端部における前記被覆層から他方の端部における前記被覆層にまで通電することにより、前記被覆層が加熱される、請求項1に記載の超電導線材の製造方法。
【請求項3】
前記中央領域の前記前駆体粉末を焼結させる工程では、前記前駆体線材を取り囲む雰囲気が加熱されることにより前記前駆体粉末が焼結する、請求項1または2に記載の超電導線材の製造方法。
【請求項4】
前記第2の焼結温度は800℃以上830℃未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超電導線材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の超電導線材の製造方法により製造された、超電導線材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−40255(P2010−40255A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199745(P2008−199745)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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