説明

超電導線材及びそれを用いた超電導コイル

基板面上に超電導薄膜を形成してテープ状にしてなる超電導線材において、少なくとも超電導薄膜部に、スリットを加工し、断面が矩形状の複数の超電導薄膜部に電気的に分離して並列化した並列導体としてなるものとすることにより、交流損失を抑制可能な超電導線材が提供できる。 また、前記超電導線材を巻回してなる超電導コイルにおいては、超電導コイルの構造もしくは配置上、超電導コイルによって生ずる磁場分布によって前記並列導体の各導体要素間に作用する垂直鎖交磁束が、互いに打ち消すように作用する部分を、少なくとも一部に有してなるコイル構成を備えるものとすることにより、転位なしの簡便な構成により線材に対する垂直磁界による鎖交磁束がキャンセル可能となり、かつ、垂直磁界による線材内循環電流を抑制して電流分流を均一化できる。これにより低損失の超電導コイルが提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通電電流が高速で変動する電気機器、例えばエネルギー貯蔵,磁場応用,変圧器,リアクトル,モータ,発電機等に用いる超電導線材及びそれを用いた超電導コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導コイルは高磁界発生手段として種々の分野で実用されている。一方、変圧器やリアクトルなどのような交流機器への超電導コイルの適用は、超電導導体が交流によって損失を発生するという現象があることから、その実用化は、あまり進んでいない。
【0003】
しかしながら、近年、超電導導体素線の細線化による交流損失の小さな超電導線が開発されて以来、変圧器などの交流機器への適用研究が進展し、その超電導コイルの構成に関しても、種々の提案が行われている。
【0004】
この場合の超電導導体としては、液体ヘリウムの蒸発温度である4Kの極低温で超電導状態を維持する金属超電導体を使用した超電導線が、実用的な超電導材料として、主に使用されるが、最近では、酸化物超電導体を適用した超電導コイルの開発も進められている。この酸化物超電導体は高温超電導体とも呼ばれており、この高温超電導体を使用した場合には、金属超電導体を使用した場合に比べて運転コストが低い利点がある(後記の特許文献1〜4参照)。
【0005】
ところで、通電電流が高速で変動する、例えば変圧器のような交流機器において、複数の導体を並列に使用するときには、導体の転位が行われる。これは、複数の導体の相対位置を変えることによってそれぞれの導体間の鎖交磁束を低減、即ち、これによる誘起電圧を小さくし、これによってそれぞれの導体の電流分担を均一にするためである。
【0006】
通電電流によって発生した磁束によるそれぞれの並列導体の誘起電圧の差によって、循環電流が誘起されるが、銅やアルミなどの通常の導体の場合には、インピーダンスは抵抗性成分が主であるので、循環電流は負荷電流に対し位相がおよそ90°ずれたものになる。そのため、例えば30%の循環電流が発生したとしても、1本の導体に流れる電流は、負荷電流の100%とこれに90°の位相差のある30%の循環電流とのベクトル和となって、その絶対値はそれぞれの二乗の和の平方根になることから、約105%となり、循環電流の割には電流値の増加は小さい。
【0007】
一方、導体として超電導線を用いた場合、超電導状態では抵抗はほぼ零であるので、循環電流をきめるインピーダンスはほとんどインダクタンスで決まる。従って循環電流は通電電流と同相になり、仮に循環電流が30%とすると、通電電流にこの循環電流が加算されて超電導線には130%の電流が流れることになる。この電流値が臨界電流に達すると、交流損失が増大したり、偏流が増進する。
【0008】
このように、超電導線を用いたコイルでは、循環電流を抑制することは非常に重要である。超電導導体でも転位を行うことで循環電流を抑制することができるが、酸化物超電導線の場合には、合金超電導体に比べて曲げの力に弱い性質を持っており、性能を発揮するための許容曲げ半径が存在し、転位作業には細心の注意を要する。従って、並列本数が多いほど、すなわち転位部が多いほど作業時間が掛かるので高価になる。また、転位部は十分に注意して作業しても、超電導線を曲げているので不安定箇所となることは避けられず、この不安定箇所も転位部が多いほど増える。
【0009】
超電導変圧器のようにコイルの層数が少なく、層の間隔に余裕があり、かつ巻線径が大きい場合には不安定箇所の対策は容易で従来の転位法で十分であるが、エネルギー貯蔵用や磁場応用のコイルの場合はコイルの層数が多く、層を密接させることが要求されるので、不安定箇所の対策をするスペースが小さくなる。したがって、不安定箇所の対策の影響が他の上下の層、または隣接する超電導線に及ぶ可能性があり、要求される仕様を満たせないだけでなく、安定した運転が行なえなくなってしまう問題がある。
【0010】
上記問題を解消し、循環電流を抑制しつつ不安定箇所としての転位部を少なくし、転位作業を簡単にして低コスト化を図ることを目的とした超電導コイルの構成は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0011】
特許文献1に記載された発明の骨子は、下記のとおりである。即ち、「複数の超電導線を並列化し巻回してなる超電導コイルにおいて、巻線端部のみで転位を行なう構成とすること、加えてコイルの層数を、並列化している超電導線の並列本数の4倍(本数×4倍)の整数倍とすることで、転位部を少なくし、循環電流を抑制しつつ不安定部を少なくし得る。その結果、転位のための作業,時間が短縮されて安価となるだけでなく、少ない不安定部で循環電流を抑制できることから、高速の励磁,消磁を安定に行なうことが可能になるという利点も得られる。」ことにある。
【0012】
図10は、特許文献1の図1に記載された超電導コイルの転位構成の一例を示す。図10においては、例えば、コイルの半径方向に3本重ねた超電導線3aを、巻枠1aから巻枠1bの方向に巻回して形成するに当たり、超電導線3aが巻枠1a側の巻線の始まりではコイル内径方向から、例えば、図示しない(A1,A2,A3)の順に重ねて巻かれているとして、巻線端部の転位部2において、まず(A3)を次のターンに曲げ、同様に(A2,A1)と転位作業を行なうことで、巻枠1b側の巻線の終わりでは、例えば(A3,A2,A1)の順にする。上記により、特許文献1の図4に記載された従来の転位構成に比較して、転位部や巻線の曲げ数が少なくなるので、作業が著しく簡単になる。
【0013】
なお、前記の「コイルの層数を、並列化している超電導線の並列本数の4倍(本数×4倍)の整数倍とする」構成例については、ここでは説明を省略する(詳細は、特許文献1参照)。
【0014】
一方、前記超電導コイルにおいては、交流損失等に伴う発熱が効果的に除去され、常電導転位を生じることなく安定して運転できる構成が要請される。このような観点から好ましい構成として、特許文献2には、「電気絶縁性材料からなる円筒状巻枠の外周面上に円筒層状に巻回してなる超電導巻線の層間に、良熱伝導性材料からなる伝熱冷却板を備えた超電導コイル」が開示されている。
【0015】
また、前記酸化物超電導線材(高温超電導線材)の量産性の高い好ましい製造方法として、例えば、フレキシブルなテープ基板上に、酸化物超電導材料を膜状に形成する方法が考えられ、レーザアブレーション法、CVD法等の気相法を用いた製造方法の開発が進められている。上記のような、テープ基板上に酸化物超電導膜が形成された構造を有する酸化物超電導線材は、最外層に超電導膜が露出し、露出した側の表面は何ら安定化処理が施されていない。そのため、このような酸化物超電導線材に比較的大きな電流を流した場合に、局所的な熱発生のため、超電導膜が局所的に超電導状態から常電導状態へ転移し、電流輸送が不安定になるという問題があった。
【0016】
前記問題点を解決し、高い臨界電流値を有し、安定した電流輸送を行なうことができる、ならびに、長期間の保存によってもその安定性が低下しない酸化物超電導導体およびその製造方法を提供することを目的として、特許文献3には、下記のような構成を備えたテープ状の超電導線が開示されている。
【0017】
即ち、「フレキシブルなテープ基板とテープ基板上に形成された中間層と、中間層上に形成された酸化物超電導膜と、酸化物超電導膜上に形成された、厚さが0.5μm以上の金または銀からなる膜(常電導の金属層)とを備える超電導線」である。特許文献3に記載された実施形態の一例としては、「基板としてのハステロイテープの上に、中間層としてイットリア安定化ジルコニア層もしくは酸化マグネシウム層が設けられ、この上にY−Ba−Cu−O系酸化物超電導膜が形成され、さらにこの上に金または銀からなるコーティング膜が形成される。」
さらに、常電導の金属層を備えることにより、交流損失による発生熱を有効に放散して、熱的安定性を向上することを目的として、特許文献4には、下記のような構成を備えたテープ状の超電導線の製造方法が開示されている。
【0018】
即ち、同公報の記載によれば、「基板面上に高温超電導薄膜を被着したテープ状材の前記高温超電導薄膜を、1本乃至間隔をおいて平行に配置した複数本の長波長レーザ光により長手方向に照射して照射部分を非超電導化(常電導化)すると共に、前記複数本の長波長レーザ光のビーム径およびその間隔を選定して、前記非超電導部分間に位置する長波長レーザ光の非照射にもとづく超電導部分の幅を制御するようにしたことを特徴とする高温超電導線材の製造方法」である。
【0019】
【特許文献1】特開平11−273935号公報(第2−4頁、図1−4)
【特許文献2】特開平11−135318号公報(第2−4頁、図3)
【特許文献3】特開平7−37444号公報(第2−7頁、図1)
【特許文献4】特開平3−222212号公報(第1−2頁、図3)
【0020】
ところで、前記特許文献3や特許文献4に記載されたような量産性が高いテープ状の超電導線材を交流機器に用いた場合、超電導線材に発生する交流損失は、偏平なテープの形状異方性により、テープの偏平な面に垂直に作用する垂直磁界中の交流損失が支配的となる。その理由は、磁界の変動に伴って発生する反磁化、即ち磁界を打ち消すための磁気モーメントmは、遮蔽電流iと遮蔽電流の平均距離dとの積となるので、前記偏平テープ形状の場合、偏平な面の平均距離dが、テープの厚さ方向のそれに比較して格段に大きく、前記磁気モーメントmが、偏平な面に作用する垂直磁界中において格段に大きくなるからである。
【0021】
従って、交流損失を低減するためには垂直磁界損失を低減する、即ち偏平な面における前記遮蔽電流iと遮蔽電流の平均距離dとを如何に小とするかが課題となる。この観点から、テープ状の超電導線材の超電導薄膜部を構造的に分離して、前記平均距離dを小とすることが有効であるが、前記特許文献4に記載された超電導線材の場合には、常電導薄膜部と超電導薄膜部とが交互に形成されているので、常電導薄膜部において渦電流損失が発生し、損失が増大する問題がある。
【0022】
また、前記特許文献3や特許文献4に記載されたような量産性が高いテープ状の超電導線材を用いて超電導コイルを構成する場合、特許文献1に記載されたように転位を行なうことは、超電導線の構成上困難であり、また転位を行なったとしても、転位に伴う不安定性が増大する。
【0023】
従って、テープ状の超電導線材を用いる場合には、転位させずに電流分流を均一化して循環電流を抑制する構成とすることが望ましく、コイル構成としては、超電導コイルの構造もしくは配置上、超電導線材に作用する垂直鎖交磁束が打ち消されるように構成することが、遮蔽電流による交流損失を低減する上で望ましい。さらに、超電導線材はできる限り均等に冷却でき、通電容量の拡大を図ることができるように構成することが望ましい。
【0024】
この発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、この発明の課題は、交流損失の抑制が可能な超電導線材を提供し、さらにこの超電導線材を用いた超電導コイルは、転位なしの簡便な構成により線材に対する垂直磁界による鎖交磁束がキャンセル可能な構成で、かつ、垂直磁界による線材内循環電流を抑制して電流分流を均一化でき、これにより低損失の超電導コイルを提供することにある。
【発明の開示】
【0025】
前述の課題を解決するために、この発明は、基板面上に超電導薄膜を形成してテープ状にしてなる超電導線材において、少なくとも超電導薄膜部を、断面が矩形状の複数の超電導薄膜部に電気的に分離して並列化した並列導体としてなるものとする(請求項1の発明)。
【0026】
上記により、詳細は後述するように、複数の超電導薄膜部に並列化してなる並列導体が、マルチフィラメント超電導体として機能し、電流分流の均一化が図れるとともに、交流機器用コイルに適用した場合の前記垂直磁界中の交流損失が低減できる。
【0027】
前述のように、前記特許文献4に開示されたテープ状の超電導線材も、超電導薄膜部が構造的に分離されているが、常電導薄膜部と超電導薄膜部とが交互に形成されているので、常電導薄膜部において渦電流損失が発生し、損失が増大する問題があるのに対して、上記本発明の超電導線材によれば、並列導体の各導体要素が電気的に分離しているので、前記特許文献4のような問題は生じない。なお、前記矩形状断面は、製造方法にもよるが、場合によっては台形状とする場合や、さらに、矩形や台形の角が面取りされる場合等、種々の変形があり得る。
【0028】
上記請求項1の発明の実施態様としては、下記請求項2ないし4の発明が好ましい。即ち、前記請求項1に記載の超電導線材において、基板面上に形成された超電導薄膜の上面に常電導の金属層を備え、前記並列導体は、前記金属層と超電導薄膜とを共に電気的に分離して並列化してなるものとする(請求項2の発明)。これにより、交流損失を抑制し、熱的安定性を向上することができる。
【0029】
また、前記請求項1または2に記載の超電導線材において、前記並列導体の電気的に分離する部分はスリット状の溝とし、このスリット状の溝に電気絶縁性材料を充填し、かつ前記並列導体の周囲全体を電気絶縁性材料で被覆してなるものとする(請求項3の発明)。スリット状の溝は、例えばレーザ加工やエッチング加工で形成し、この溝にエポキシ樹脂などの電気絶縁性材料を充填し、かつ前記並列導体の周囲全体を電気絶縁性材料で被覆することにより、簡便にして電気的に絶縁処理し、電気的により安定した並列導体を得ることができる。
【0030】
さらに、上記超電導線材を用いた超電導コイルの運転コスト低減の観点から、前記請求項1ないし3のいずれか1項に記載の超電導線材において、前記超電導薄膜は、高温超電導薄膜とする(請求項4の発明)。
【0031】
次に、超電導コイルの発明としては、下記請求項5ないし9の発明が好ましい。即ち、前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の超電導線材を巻回してなる超電導コイルにおいて、前記超電導コイルの構造もしくは配置上、超電導コイルによって生ずる磁場分布によって前記並列導体の各導体要素間に作用する垂直鎖交磁束が、互いに打ち消すように作用する部分を、少なくとも一部に有してなるコイル構成を備えるものとする(請求項5の発明)。
【0032】
前記垂直鎖交磁束が互いに打ち消すように作用する部分は、超電導コイルを構成する全超電導線材にわたることが望ましいが、超電導線材の製造長さには限度があるので、小規模のコイルを除いて超電導線材の電気的接続部分が必要となる場合が多い。その場合でも、できる限り、互いに打ち消すように作用する部分が多くなる構成が望ましい。
【0033】
また、前記請求項5に記載の超電導コイルにおいて、前記超電導線材を、コイル軸方向に1もしくは複数ターン巻回し、かつコイル半径方向に1もしくは複数層巻回してなるものとする(請求項6の発明)。超電導コイルの巻線方式としては、シリンダ巻線方式,パンケーキ巻線方式,鞍型巻線方式等があるが、いずれの巻線方式においても、並列導体の各導体要素間に作用する垂直鎖交磁束が、できる限り互いに打ち消すように作用する部分が多くなる構成とすることが望ましい。詳細は後述する。
【0034】
下記請求項7ないし8の発明は、それぞれシリンダ巻線方式,パンケーキ巻線方式において好ましい実施態様の発明である。即ち、前記請求項6に記載の超電導コイルにおいて、超電導コイルがシリンダ巻線方式のコイルの場合であって、コイル軸方向の一部に、前記超電導線材の並列導体の各導体要素を一括して接続する超電導線一括接続方式の電気的接続部を少なくとも一箇所設ける場合、前記電気的接続部は、コイル軸端部に設けるものとする(請求項7の発明)。
【0035】
超電導線材の電気的接続方法としては、詳細は後述するように、前記超電導線材の並列導体の各導体要素を一括して接続する超電導線一括接続方式と、並列導体の各導体要素をそれぞれ電気的に分離して接続する導体要素分離接続方式とが考えられる。コイルの製造上は、前記一括接続方式の方が容易であり、電気的接続部としてこの方式を採用する場合には、前記請求項7の発明のように、電気的接続部をコイル軸端部に設けることで、コイル軸方向の対称性により、実質上、全体的に垂直鎖交磁束を打ち消すことができる。導体要素分離接続方式を採用する場合には、接続個所をコイル軸端部に限定する必要はなく、コイルの如何なる場所で接続しても、垂直鎖交磁束を打ち消すことができる。詳細は後述する。
【0036】
また、前記請求項5に記載の超電導コイルにおいて、超電導コイルがパンケーキ巻線方式のコイルの場合、2個のパンケーキコイル間を接続する複数個のコイル接続部をコイル内外周部に設け、前記コイル接続部の少なくとも一部は、前記超電導線材の並列導体の各導体要素がそれぞれ電気的に分離して接続する導体要素分離接続方式のコイル接続部とし、残りのコイル接続部は超電導線一括接続方式とし、全体として各パンケーキコイルの並列導体の各導体要素間に作用する垂直磁界の鎖交磁束が互いに打ち消すように、コイル接続部をコイル内外周部に設けてなるものとする(請求項8の発明)。
【0037】
パンケーキ巻線方式のコイルの場合、通常、隣接する2個のコイルパンケーキの外周部間にコイル接続部を設けるが、この場合には、鎖交磁束を互いに打ち消すことができないが、上記請求項8の発明によれば、実質上、全体的に垂直鎖交磁束を打ち消すことができる。詳細は後述する。
【0038】
さらに、前記請求項5ないし8のいずれか1項に記載の超電導コイルにおいて、複数層巻回してなる超電導コイルの場合、少なくとも一部の前記層間に、良熱伝導性材料からなる冷却板を配設してなるものとする(請求項9の発明)。これにより、超電導コイルの熱的安定性の向上を図ることができる。なお、超電導コイルの冷却方式は、上記のように冷却板を配設し、極低温の液体やガスで冷却する方式に限定されず、例えば、コイル全体を液体窒素に浸漬して冷却する方式とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態を示す超電導線材の模式的断面図。
【図2】冷却板を配設した本発明の実施形態を示す超電導コイルの模式的構成図。
【図3】コイル軸方向に1ターン巻回してなる本発明に関わる超電導コイルと、そのコイルに形成される磁束の模式的説明図。
【図4】本発明に関わるシリンダ巻線方式の超電導コイルの電気的接続部等の説明図。
【図5】本発明に関わる超電導線材の電気的接続方式の説明図。
【図6】本発明に関わるシリンダ巻線方式の超電導コイルの配置の説明図。
【図7】本発明に関わるパンケーキ巻線方式の超電導コイルの電気的接続部等の説明図。
【図8】本発明に関わる超電導コイルのトロイダル配置の説明図。
【図9】従来のパンケーキ巻線方式の超電導コイルの模式的構成と磁界分布を示す図。
【図10】特許文献1に記載された超電導コイルの転位構成の一例を示す図。
【符号の説明】
【0040】
13a〜13d,50 超電導線
14 コイル中心軸
21 冷却板
30 導体要素
31 基板
32 中間層
33 超電導層
34 金属層
35 スリット
36 電気絶縁性材料
60a〜60d 超電導コイル
70 導体要素接続部材
80 導体要素一括接続部材
100a,100b 超電導線材
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図面に基づき、本発明の実施形態について以下に述べる。まず、図1および図2に基づき、本発明の超電導線材とこの線材を超電導コイルに適用する場合の基本的構成に関して述べる。
【0042】
図1は本発明の実施形態を示す超電導線材の模式的断面図を示したものであり、超電導薄膜を4分割した並列導体の構成を示す。図1(a)は分割前の超電導導体を示し、図1(b)はスリット加工による分割後の並列導体を示し、図1(c)は絶縁被覆された後の並列導体を示す。
【0043】
図1において、31は基板、32は中間層、33は超電導層、34は金属層、35は分割溝としてのスリット、36は電気絶縁性材料を示す。なお、部番30は、分割された金属層および超電導層からなる導体要素を示す。図1(a)に示す分割前の超電導導体は、例えば、基板31としてのハステロイテープの上に、電気絶縁層としての中間層32を設け、この上に超電導層33としてY−Ba−Cu−O系酸化物超電導膜を形成し、さらにこの上に、常電導の金属層34として、例えば金または銀からなるコーティング膜を形成したものを用いる。なお、前記中間層32としては、例えば、ガドリニウムジルコニウム酸化物(Gd2Zr2O7)層上に酸化セリウム(CeO2)層を形成した2層構造を用いる。
【0044】
上記超電導導体を、図1(b)に示すように、超電導導体の長手方向にスリット加工し、図1(c)に示すように、スリット加工して形成された溝の中および導体の周囲全体にわたって、エポキシ樹脂,エナメルなどの可とう性をもつ電気絶縁性材料36を充填して並列導体を構成する。上記のような超電導線材を超電導コイルに適用する場合には、前記並列導体からなる超電導線材を、図1(b)に示すように、コイル中心軸14を中心として、図示しない電気絶縁性材料からなる円筒状巻枠の外周面上に、円筒層状に巻回する。なお、図1(b)および図1(c)において、中間層32はスリット加工されていないが、スリット35を、中間層32まで延長してもよい。この場合、延長部分にも一括して電気絶縁性材料36を充填することが好ましい。
【0045】
次に図2について述べる。図2は、図1に示す超電導線材を用いて、複数層巻回してなる超電導コイルの場合であって、前記層間に、良熱伝導性材料からなる冷却板21を配設した超電導コイルの模式的構成を示す。図2において、超電導線13a〜13dは、図1(b)における並列導体の4分割された各セグメントを模式的に示す。
【0046】
次に、超電導コイルの発明に関わる実施形態について、その構成と作用原理等について述べる。まず、シリンダ巻線方式のコイル(ソレノイドコイル)について述べる。図3は、前記4分割された並列導体を、コイル半径方向に1層巻回してなる超電導コイルと、そのコイルに形成される磁束の模式的説明図を示す。
【0047】
図3(a)は、超電導コイルの断面図における磁束線の模式的状態図を示し、図3(b)および図3(c)は、図3(a)の矢印P方向からみた4分割された並列導体部における磁束線の模式的状態図を示し、図3(b)は、前記特許文献4に開示されたような超電導層にスリットが入っているが表面が電気的につながっている場合の比較例を、また図3(c)は、本発明の実施形態であって、超電導層にスリットがあり、かつ、電気的に絶縁されている場合を示す。
【0048】
なお、図3において、図1と同一機能部材には同一番号を付してその詳細説明を省略する。また、図3において、部番40は超電導コイルの巻枠、34aは超電導層33の各表面を電気的につなげた金属層を示す。図1の中間層32は図示を省略している。
【0049】
図3(a)に示すソレノイドコイルの場合、コイルに形成される磁束線は、同図において矢印Aで示すようになり、コイル軸方向の上下部において、各超電導層33に作用する磁束線A1およびA2の向きは、それぞれ逆方向となる。従って、図3(b)および図3(c)のように、前記コイル半径方向に1層巻回してなる超電導線材を平面的に展開して示した場合、超電導コイルによって生ずる磁場分布によって前記並列導体の各導体要素30間に作用する垂直鎖交磁束は、超電導コイルの軸方向の対称性に基づき、超電導線材全体としては、互いに打ち消すように作用するので、垂直磁界に基づく交流損失は抑制される。
【0050】
しかしながら、図3(b)の比較例のように、各導体要素が電気的につながっている場合には、図3(a)に示した磁束Aにより、図3(b)において矢印Bで示した遮蔽電流が流れ、結果としてスリットを入れた効果がなくなり、交流損失の低減はできない。これに対して、本発明の実施形態としての図3(c)のように、電気的に絶縁されている場合には、遮蔽電流が流れる経路が存在しないので、分割した超電導層がそれぞれ独立したフィラメントとして振舞うことができ、交流損失低減が可能となる。
【0051】
例えば、超電導素線の幅9mm、厚さ0.1mmとし、これを3分割し、コイル内半径40mm、コイル軸方向に30ターン、半径方向に12層巻回したコイルについて、電流分流比を計算した。その結果、3分割した各電流分流比は、それぞれ、0.3398,0.3203,0.3399であり、均等の0.3333に対して、かなり近い値となり、従って、付加的な損失の発生が少なくなることが確認された。
【0052】
以上のように、超電導層を電気的に分割して巻き回すことにより、電流分布の均一化、交流損失の低減が可能である。なお、本発明は、パンケーキ巻線方式,シリンダ巻線方式,鞍型巻線方式等の全ての巻線方式のコイルに対して適用可能であり、超電導コイルによって生ずる磁場分布によって前記並列導体の各導体要素間に作用する垂直鎖交磁束が、互いに打ち消すように作用する部分を、少なくとも一部に備えたコイル構成とすれば、その構成に応じた前記本発明の効果が得られる。上記コイル構成とその作用効果に関して、さらに、シリンダ巻線方式およびパンケーキ巻線方式の具体例により、以下に詳述する。
【0053】
まず、図4に基づき、シリンダ巻線方式について述べる。図4に示す超電導コイルは、超電導線50を、コイル軸方向に複数ターン巻回し、かつコイル半径方向に複数層巻回してなり、前記各層間には、冷却用配管20を配設した例を示す。なお、図4において、54はコイルフランジ、55は巻枠を示す。また、50a,50b,50cは、説明の便宜上示した超電導線材の電気的接続部である。
【0054】
ところで、前記電気的接続部は、前述のように、超電導線材の並列導体の各導体要素を一括して接続する超電導線一括接続方式と、並列導体の各導体要素をそれぞれ電気的に分離して接続する導体要素分離接続方式とがある。前記各方式について、図5に基づいて、説明する。
【0055】
図5(a)は、導体要素分離接続方式を説明する模式的平面図、図5(b)は、超電導線一括接続方式を説明する模式的平面図、図5(c)は、図5(a)および図5(b)において、それぞれA−A線およびB−B線に沿って見た共通的な模式的側断面図である。図5において、図1に示す部材と同一機能を有する部材には、同一番号を付して、その詳細説明を省略する。
【0056】
図5(a)に示す導体要素分離接続方式の場合には、2本の超電導線材100aおよび100bは、各導体要素30が、それぞれ、導体要素接続部材70によって接続され、各導体要素30はそれぞれ電気的に分離して接続される。なお、前記電気的な接続は、図5(c)に示すように、例えば、ハンダ接合75により接続される。
【0057】
一方、図5(b)に示す超電導線一括接続方式の場合には、2本の超電導線材100aおよび100bの各導体要素30は、それぞれ超電導線一括接続部材80に電気的にそれぞれ接続され、前記接続部材80は、4個の導体要素30にまたがって接続された電極部を構成する。
【0058】
従って、例えば、前記図4の50aと50cとに超電導線材の電気的接続部分が存在する場合に、電気的接続が前記超電導線一括接続方式で行なわれる場合には、前記垂直鎖交磁束が互いに打ち消すように作用する部分は、部分的であって、図3(c)に示したように、超電導コイルを構成する全超電導線材にわたることができない。この場合、電気的接続部分が存在する場合であっても、できる限り、互いに打ち消すように作用する部分が多くなる構成とすることが望ましく、そのためには、図4の50aと50bで示すように、電気的接続部は、コイル軸端部に設けることが望ましい。一方、電気的接続が前記導体要素分離接続方式で行なわれる場合には、電気的接続部を図4の50cに設けても垂直鎖交磁束は、図3(c)に示したように全体にわたって打ち消されることとなるので、電気的接続部をコイル軸端部に設ける必要がない。
【0059】
次に、図6に基づき、シリンダ巻線方式の超電導コイルの配置について述べる。図6(a),(b),(c)は、それぞれ複数のシリンダ状超電導コイル(60a〜60d)の配置例を示す図である。超電導コイルの配置上、超電導コイルによって生ずる磁場分布によって、並列導体の各導体要素間に作用する垂直鎖交磁束が、互いに打ち消すように作用する部分をできる限り設ける観点から、コイル軸方向の対称性が得られる配置、即ち、図6(b)および図6(c)の配置が好ましい。図6(a)の場合は、超電導コイル60aと60bとが、磁界分布上、上下方向において非対称となるので、交流損失が図6(b)に比べて大となる。コイルが多数あっても同様で、図6(c)はコイルが4個の場合を示す。
【0060】
次に、図7および図9に基づき、パンケーキ巻線方式のコイルの場合について説明する。まず、図9について述べる。図9は、従来のパンケーキ巻線方式の超電導コイルの模式的構成と磁界分布を示す。図9に示すパンケーキ巻線方式は、超電導テープを同心状に巻回したパンケーキコイルを、巻枠4の軸方向に電気絶縁部材9を介して積層し、隣接するパンケーキコイル間を、パンケーキの外周部に設けたコイル接続部8により電気的に接続した構成を有し、一つの巻枠に多層コイルを形成している。この場合、コイル接続部8による電気的な接続は、通常、前記超電導線一括接続方式が採用される。
【0061】
図9に示す超電導コイルは、磁力線3で模式的に示したような磁束を生じることとなる。即ち、コイルの軸中心部には、主として軸方向、つまりテープ導体の幅広面に平行な方向の磁束が生じる。このうち、コイル積層方向中央部では軸方向の成分のみとなり、磁束密度の絶対値は図中にAで表示したテープ導体の巻枠4の内接部分において最大となる。コイルの内部を中央部から軸方向端部へと向かうにしたがって磁束が発散するので、磁束密度の絶対値は減少するが、一方、中心軸より隔たるにしたがい、径方向、つまりテープ導体の幅広面に垂直な方向成分の大きな磁束が生じることとなり、特に積層方向の両端のB部に位置する巻線では幅広面に垂直な成分が大きくなる。
【0062】
従って、前述のように、隣接する2個のコイルパンケーキの外周部間にコイル接続部を設けた場合には、鎖交磁束を互いに打ち消すことができない。そこで、前記請求項8の発明のように、コイル接続部を設けることが望ましい。これについて、図7に基づいて説明する。
【0063】
図7は、図9に示した超電導コイルの構成と同一で、コイル接続部8も、説明の便宜上、図9の従来方式を踏襲した図としている。図7において、部番Ao〜FoおよびAi〜Fiは、それぞれ、各パンケーキコイルの外周部のコイル接続部および内周部のコイル接続部を示す。
【0064】
図9で示した従来のパンケーキコイルの場合には、Ao〜Foまで、下記のような順序で接続されている。即ち、Ao〜Ai〜Bi〜Bo〜Co〜Ci〜Di〜Do〜Eo〜Ei〜Fi〜Foである。この場合、前述のように、鎖交磁束を互いに打ち消すことができない。
【0065】
これに対して、本件発明の接続例は、下記の3例のとおりである。まず、各パンケーキコイル間の超電導線材の接続が、全て、前記導体要素分離接続方式により行なわれる場合には、平易な表現で言えば、前記ソレノイドコイルと同様に、一筆書き的に接続することができる。即ち、図7において、Ao〜Ai〜Bi〜Bo〜Co〜Ci〜Di〜Do〜Eo〜Ei〜Fi〜Foのように接続できる。
【0066】
次に、前記超電導線一括接続方式を、一部の接続部に設ける場合の例について、2種類の例について述べる。まず、最初の方法は、図7のパンケーキコイルを上下方向に対称な2個のコイルを1組として、3組のパンケーキコイルに区分する。そして、各組内においては、前記導体要素分離接続方式により接続し、かつ、各組間の接続は、前記超電導線一括接続方式とする。
【0067】
即ち、図7において、Ao〜Ai〜Fi〜Foは、一筆書き的に導体要素分離接続方式により接続し、また、Bo〜Bi〜Ei〜EoおよびCo〜Ci〜Di〜Doも同様とする。さらに、FoとBoとの間およびEoとCoとの間は、前記超電導線一括接続方式とする。導体要素分離接続方式を〜で示し、超電導線一括接続方式を=で示す場合には、Ao〜Ai〜Fi〜Fo=Bo〜Bi〜Ei〜Eo=Co〜Ci〜Di〜Doとなる。
【0068】
同様にして、下記のような前記とは異なる接続方法とすることもできる。即ち、Ao〜Ai〜Bi〜Bo〜Eo〜Ei〜Fi〜Fo=Co〜Ci〜Di〜Doである。上記接続構成によれば、図9を照合すれば明らかなように、パンケーキコイル間の磁力線の軸方向対称性に基づき、垂直磁界の鎖交磁束が互いに打ち消す。
【0069】
即ち、請求項8に記載のように、超電導コイルがパンケーキ巻線方式のコイルの場合、2個のパンケーキコイル間を接続する複数個のコイル接続部をコイル内外周部に設け、前記コイル接続部の少なくとも一部は、前記超電導線材の並列導体の各導体要素がそれぞれ電気的に分離して接続する導体要素分離接続方式のコイル接続部とし、残りのコイル接続部は超電導線一括接続方式とし、全体として各パンケーキコイルの並列導体の各導体要素間に作用する垂直磁界の鎖交磁束が互いに打ち消すように、コイル接続部をコイル内外周部に設けてなることが望ましい。
【0070】
なお、図7は、パンケーキコイル個数が6個の場合を示したが、前記個数が変わった場合には、個数に応じて、鎖交磁束が互いに打ち消すようなコイル接続構成とすることが必要である。また、前記図6において、シリンダ状超電導コイルの配置例を示したが、トロイダル配置とした場合にも、本発明の超電導コイルを適用することにより、同様の効果が得られる。図8は、複数の超電導コイルを一つのシステムとしてトロイダル配置した場合の一例を示す。超電導コイル60a〜60fは、各コイル中心がそれぞれ、所定のトロイダル半径を有する円周上に位置するように配設される。一般に、これらの超電導コイルは、電磁力の観点から、磁界分布の対称性が得られるような運転が行われる。この場合、並列導体の各導体要素間に作用する垂直鎖交磁束は、単一コイルの運転時と同様に振舞うので、トロイダル配置においても、シリンダ巻線方式またはパンケーキ巻線方式等のコイル方式にかかわらず、前述の本発明のコイルを適用することにより、交流損失の低減が可能である。なお、コイルの配置数が変わっても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
上記のとおり、この発明によれば、基板面上に超電導薄膜を形成してテープ状にしてなる超電導線材において、少なくとも超電導薄膜部を、断面が矩形状の複数の超電導薄膜部に電気的に分離して並列化した並列導体としてなるものとし、
また、前記超電導線材を巻回してなる超電導コイルとしては、超電導コイルの構造もしくは配置上、超電導コイルによって生ずる磁場分布によって前記並列導体の各導体要素間に作用する垂直鎖交磁束が、互いに打ち消すように作用する部分を、少なくとも一部に有してなるコイル構成を備えるものとすることにより、
交流損失の抑制が可能な超電導線材を提供し、さらにこの超電導線材を用いた超電導コイルは、転位なしの簡便な構成により線材に対する垂直磁界による鎖交磁束がキャンセル可能な構成で、かつ、垂直磁界による線材内循環電流を抑制して電流分流を均一化でき、これにより低損失の超電導コイルを提供することができる。
【0072】
さらに、複数層巻回してなる超電導コイルの場合、少なくとも一部の前記層間に、良熱伝導性材料からなる冷却板を配設してなるものとすることにより、超電導線材をできる限り均等に冷却することによって、超電導コイルの熱的安定性の向上を図ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板面上に超電導薄膜を形成してテープ状にしてなる超電導線材において、少なくとも超電導薄膜部を、断面が矩形状の複数の超電導薄膜部に電気的に分離して並列化した並列導体としてなることを特徴とする超電導線材。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導線材において、基板面上に形成された超電導薄膜の上面に常電導の金属層を備え、前記並列導体は、前記金属層と超電導薄膜とを共に電気的に分離して並列化してなることを特徴とする超電導線材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超電導線材において、前記並列導体の電気的に分離する部分はスリット状の溝とし、このスリット状の溝に電気絶縁性材料を充填し、かつ前記並列導体の周囲全体を電気絶縁性材料で被覆してなることを特徴とする超電導線材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の超電導線材において、前記超電導薄膜は、高温超電導薄膜とすることを特徴とする超電導線材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の超電導線材を巻回してなる超電導コイルにおいて、前記超電導コイルの構造もしくは配置上、超電導コイルによって生ずる磁場分布によって前記並列導体の各導体要素間に作用する垂直鎖交磁束が、互いに打ち消すように作用する部分を、少なくとも一部に有してなるコイル構成を備えることを特徴とする超電導コイル。
【請求項6】
請求項5に記載の超電導コイルにおいて、前記超電導線材を、コイル軸方向に1もしくは複数ターン巻回し、かつコイル半径方向に1もしくは複数層巻回してなることを特徴とする超電導コイル。
【請求項7】
請求項6に記載の超電導コイルにおいて、超電導コイルがシリンダ巻線方式のコイルの場合であって、コイル軸方向の一部に、前記超電導線材の並列導体の各導体要素を一括して接続する超電導線一括接続方式の電気的接続部を少なくとも一箇所設ける場合、前記電気的接続部は、コイル軸端部に設けることを特徴とする超電導コイル。
【請求項8】
請求項5に記載の超電導コイルにおいて、超電導コイルがパンケーキ巻線方式のコイルの場合、2個のパンケーキコイル間を接続する複数個のコイル接続部をコイル内外周部に設け、前記コイル接続部の少なくとも一部は、前記超電導線材の並列導体の各導体要素がそれぞれ電気的に分離して接続する導体要素分離接続方式のコイル接続部とし、残りのコイル接続部は超電導線一括接続方式とし、全体として各パンケーキコイルの並列導体の各導体要素間に作用する垂直磁界の鎖交磁束が互いに打ち消すように、コイル接続部をコイル内外周部に設けてなることを特徴とする超電導コイル。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれか1項に記載の超電導コイルにおいて、複数層巻回してなる超電導コイルの場合、少なくとも一部の前記層間に、良熱伝導性材料からなる冷却板を配設してなることを特徴とする超電導コイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【国際公開番号】WO2005/008687
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【発行日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511822(P2005−511822)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009965
【国際出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(592054605)
【出願人】(595113392)
【出願人】(503157308)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【Fターム(参考)】