説明

超音波イオン位相同期薬物注入・排出装置

【課題】従来超音波導入法とイオン導入法併用による薬物導入効率向上は強超音波振幅によって、導入目的とする物体の表面にキャビテーション孔を開け、機械的に傷ついたこの穴を通し導入効率を上げる方法が提案されている。しかしながら、この場合は体表面等が傷つけられ、更に直流電圧、交流電圧、非対称パルス電圧の過剰な電流により電極近傍に活性水素やアルカリ塩、対極には活性酸素等が作られ、被導入物体である体表等を機械的、化学的に傷つけるので可能な限り低超音波振幅で、且つ低電流導入が求められる。
【解決手段】弱超音波振幅を使う「超音波薬物注入装置」にイオン化薬物の電気導入法を組み合わせ、超音波駆動電圧と90度遅れ位相同期の半波整流イオン導入電圧を振動子面から振動振幅と供に身体の一部に設けた対極間に負荷し、超音波歪振幅との重畳により弱電流高効率導入を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体等の被注入体の表面に供給した薬物を、超音波振動と同期させた交流半波整流電界を同時に用いて当該被注入体の体内に注入する薬物注入装置及び排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非浸襲的薬物注入法は本出願申請の特許発明人により既出願特許文献1の「 薬物注入装置」と特許文献2の「薬物排出装置」がある。
この特許は拡散理論に基付き、超音波の振幅を鋸歯状波で変調し、この鋸歯状波振幅の増大速度を薬物の体内に対するドリフト速度同等か、以下とすれば、薬物は歪応力移動に追従し、拡散侵入させられる装置である。
【0003】
薬物注入法として、電気泳動法に基づくイオントフォレシスがあり、薬物駆動注入電圧として直流法、交流法、パルス法が提案されている。特許文献3、特許文献4の先行特許は薬物注入と薬物導入は同義と解釈され使われているので、注入と導入は慣用的言い回しに従う。
【0004】
薬物注入法として注入効率を上げるため、イオン導入路として超音波でキャビテーション孔を開け、超音波注入とイオン導入を同時に働かせるイオントソノフォレシスの特許が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2008−544134号
【特許文献2】特願2010―049761号
【特許文献3】特許2788307号
【特許文献4】特開2001―259045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波注入法とイオン導入法併用による薬物注入効率を向上させるためには強超音波振幅によるキャビテーションによって注入目的とする物体の表面にキャビテーション孔を開け、機械的に傷ついたこの穴を通して電気泳動で注入効率を上げる方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、この場合は体表面等を傷つけ、直流電圧、交流電圧、非対称パルス高電圧の過剰な電流により電極近傍に活性水素やアルカリ塩、対極には活性酸素等が作られ、被注入物体である体表を薬物的且つ機械的に傷つける特許文献3、特許文献4がある。
【0008】
本発明は上述の問題を鑑みてなされたものであり、薬物注入をキャビテーション孔注入に求めない本特許申請発明人同人発明の既存特許文献1、2の「薬物注入装置」と「薬物排出装置」と、電気泳動導入法を組み合わせ、超音波歪振幅と電気泳動駆動電圧振幅の位相を同期させ、泳動拡散するため超える活性化ポテンシャルを超音波歪応力と電気力の和で越えさす仕掛けで、電気泳動低電圧振幅で注入効率と排出効率を上げる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
先行技術の特許文献3、特許文献4のイオントソノフォレシスの導入効率向上は超音波作用に拠るキャビテーション孔導入に求めている。本技術は流動速度拡散理論に拠る注入特許で有る特許文献1のキャビテーションの起きない弱い超音波振幅注入装置で特許文献2は流動速度拡散理論に拠るキャビテーションの起きない弱い超音波振幅排出装置である。
この二つの注入排出両装置に超音波歪振幅と同位相半波整流イオン導入電圧を同時に重畳させ機械と電気力学同時作用で拡散流動速度の向上を図るもので既存発明と導入原理を異にする高効率注入、排出装置である。
【発明の効果】
【0010】
強超音波を用いキャビテーション孔を開けるイオン電流導入法と異なる導入原理を有する超音波イオン位相同期薬物注入・排出装置は超音波歪振幅と同位相半波整流イオン導入電圧を同時重畳させ、機械と電気両力学同時作用で薬物の流動拡散速度の向上を図るもので、既存発明と注入原理を異にする高効率注入・排出装置である。
【0011】
超音波イオン位相同期薬物注入・排出装置は電圧導入方式で人体にダメージを与える電流を少なく設定できるうえ、半波整流電圧は電圧負荷継続時間の二分の一になり、超音波歪応力ポテンシャルの助けと、縦振動超音波振動歪応力の指向性は注入方向をガイドする為、目的に向かっての注入効率を上げ、不必要な電流を減少させ電極近傍の電気生化学分解を緩和する。超音波駆動電圧は数十キロヘルツ以上のため、この駆動電圧を半波整流したイオン注入電圧は高周波脈流で、神経の痛覚応答速度を超え、治療者に不快感を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る薬物注入装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、超音波発振部から被注入体の皮膚に対して発振される振幅変調超音波群及びその調和確率関数と、位相同期を行ったイオン注入電極間の電圧振幅を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態として一実施例を図1から図2に基づいて説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る薬物注入・排出装置の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、薬物注入・排出装置は、薬物供給部114と、超音波発振部112と、薬物注入・排出装置10と、電圧極性非反転回路11と、回路電圧極性反転回路12と位相遅れ回路13、14とを有して構成されている。
【0015】
薬物供給部114は、被注入・排出物体19(本実施形態では、例えば人体)の表面に薬物を供給するものであり、特許文献1の図1の薬物供給部と同じ構成、または同じ性能を有する物である。
【0016】
薬物注入・排出装置10は特許文献1の図1の薬物注入装置100と同じ構成、または同じ性能を有する回路である。
【0017】
超音波発振部112は、例えばPZT等で構成されており、導電性を持つイオン注入・超音波振幅信号用対電極111を介して注入・排出物質110が供給された被注入・排出体19の表面に対して、超音波の振幅を変調させた振幅変調超音波群を発振するものである。この超音波発振部112による振幅変調超音波群 の発振により、注入・排出物質110が被注入・排出物体19に注入される。
【0018】
イオン注入電圧発生部の電圧極性非反転回路11と電圧極性反転回路12は陽イオン、陰イオンどちらの薬物も注入できるように制御される。位相遅れ回路13,14は超音波駆動電圧とそれに伴う歪振幅は共鳴状態で−90度の位相差が有る故、イオン注入電圧は超音波振動振幅と同位相とするため、超音波駆動電圧を−90度遅らす回路である。整流ダイオード15、16はそれぞれ正負注入・排出イオンに対応し、デューティ比が50%の半波整流波形を以て注入電圧とする。正負注入イオンの切り替えは電圧極性及び振幅調節用可変抵抗17により行い、注入電圧調整も行う。
【0019】
次に、薬物110の被注入体19に対するドリフト速度を考慮した、本発明に係る先行出願「超音波薬物注入方法」について簡潔に説明し、イオン導入法と相乗効果を起こす「超音波イオン位相同期薬物注入・排出装置」の統合方法を述べる。
【0020】
超音波振幅をゼロから高振幅へ時間に対して一定の傾きで増大させる。また超音波のサイン振幅は最大振幅点で静止するので時間位置存在確率が最大に成り、振幅最大点が作用力点となる。特定薬物の拡散物体に対するドリフトベロシティ以下のスピードで超音波振幅を増大させ、生体内または特定物質等へ効果的に薬物を注入する。超音波は格子を歪ませ、活性化体積が生じさせる。物質固有のドリフトベロシティVdは数5より小さい鋸歯状波増加勾配の振幅変調超音波は外力Fの粘性に抗しての位置の移動を示し、活性化体積を隣に移動し、薬物分子も隣の低下したポテンシャルへ追従移動させ、導入効率や導入深さを上げることを可能とした。逆鋸歯状波振幅変調は排出機能で、ニキビ等の排出が出来る。
【0021】
外力Fにより均質な系内(固体)に引き起こす流速Jは、拡散係数をD、濃度をC、ボルツマン定数をK、絶対温度をT、気体定数をR、粘性係数をη、粒子半径をr、粒子数をNA、濃度勾配による流速をJc、外力による流速をJfとすると、
【0022】
【数1】

【0023】
【数2】

【0024】
【数3】

【0025】
濃度勾配の流れより注入効率を上げるためにはJc << Jf になるように、外力Fを加える必要がある。ドリフトベロシティVdは、
【0026】
【数4】

【0027】
数3、数4より
【0028】
【数5】

【0029】
イオン導入電圧を同時重畳させ、機械と電気両力学成分を同時に作用させると、外力Fは超音波外力成分をFkとし、qをイオン化物質の電荷、qに働く電界をEとすると、イオン導入電圧に拠る電気外力成分Fe=qE との和になるので、
【0030】
【数6】

【0031】
注入薬物のドリフトベロシティは、外力と被注入体の粘性係数と球体近似の薬品の径のみで決まる。
【0032】
流速Jは、
【0033】
【数7】

【0034】
イオン化物質の流速イオン電流Iは物質の数をnとすると、C=nqと置け、濃度勾配の拡散は小さいので無視すると、
【0035】
【数8】

【0036】
超音波応力項によって物質の導入量であるイオン電流Iが協調的に増える。
同様に排出モードでは導入電圧の極性を切り替え、排出装置は薬物排出負勾配鋸歯状波振幅変調に切り替えると、数8が成立する。
【0037】
また、前述した本実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、人体等の被注入体の表面に超音波イオン位相同期薬物注入・排出法を用いて薬物を注入する際、当該薬物に応じた効率的な注入を実現することが可能となり、美容美顔器、デトックス機器、無侵襲幼児ワクチン注入装置、インシュリン注入用人工すい臓や体深部ドラッグデリバリー等に応用できる。
【符号の説明】
【0039】
10 薬物注入・排出装置
11 電圧極性非反転回路
12 電圧極性反転回路
13 位相遅れ回路
14 位相遅れ回路
15 正電圧整流ダイオード
16 負電圧整流ダイオード
17 電圧極性・振幅調節用可変抵抗
18 イオン導入用電極
19 被導入・排出物体
110 導入・排出物質
111 イオン導入・超音波振幅信号用対電極
112 超音波発振部
113 超音波振幅信号用電極
114 薬剤供給部
21 イオン導入用電源
22 イオン導入用電極
23 被導入・排出物体
24 導入・排出物質
25 超音波発振部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物をキャビテーション孔注入に依らない拡散理論に基付き、超音波の振幅を正勾配鋸歯状波で変調し、この鋸歯状波振幅の増加速度を薬物の体内に対するドリフト速度同等か、以下とすれば、薬物は歪応力移動に追従し、拡散侵入させる装置である「薬物注入装置」と、同様に負勾配鋸歯状波変調による逆拡散排出される「薬物排出装置」に超音波素子の振動振幅と位相を同期させるための位相同期回路とその出力電圧の半波整流回路その出力電圧から成るイオン導入・排出電圧の極性選択回路と導入電圧調整回路、イオン導入・排出用電極は振動子から直接、又は間接に超音波振動が駆動される形態を有し、イオン導入対極電極は注入物体や人体の全ての場所を選ばず置けることを特徴とする超音波イオン位相同期薬物注入・排出装置。
【請求項2】
注入・排出用超音波振動子は作業形態で切り替える装置で、例えば指向性と深部導入用として柱状縦型振動子や環状捻れ振動子と環状縦振動子、浅い体表表面導入用振動子として表面横振動子と捻れ振動子等がある事を特徴とする超音波イオン位相同期薬物注入・排出装置。
【請求項3】
本超音波イオン位相同期薬物注入・排出装置は新しい導入原理に基づく為先例が無く、導入・排出用超音波振動子と対電極組み合わせと操作形状は自由に選べ、例えば操作握り柄等を導入対極電極に指定出来る事を特徴とする超音波イオン位相同期薬物注入・排出装置。

【図1】
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【図2】
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