説明

超音波センサ及びこれを用いた超音波流量計

【課題】 この発明は、振動子と導管の間、振動子と制振材料の間の接着状態のバラツキを防止し、ゼロ・ドリフトを軽減し、求める精度を測定することができる超音波センサを提供する。
【解決手段】 本願発明は、微少流量が流れる導管20の外周上に配置され、高周波が付与されて振動し、振動を受信して高周波信号を発生させるリング状の超音波振動子2と、該超音波振動子2を挟持固定するように配置される一対の制振部材3,4とによって構成される超音波センサ1A,1Bにおいて、前記超音波振動子2の内周面と前記導管20の外周面の間に、前記超音波振動子2の幅よりも大きな幅を有する環状の柔軟性のある略均一な整合部材7を設けると共に、該整合部材7は、音の伝搬速度が前記導管内を流れる物質の音の伝搬速度と略等しい材質からなることにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、微少流量を高精度に測定するための微少流量計に使用される超音波センサと、この超音波流量計を使用して微少流量を測定する超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2000−121404号公報)は、ガス流路と、前記ガス流路に設置する送受信用の超音波センサと、前記超音波センサの送受信の制御及び超音波の伝搬時間の計測を行い、計測データをデータバスラインで入出力する制御計測回路と、前記制御計測回路の制御内容の一部を記憶する不揮発メモリを備え、前記構成要素の組合せユニット部品毎に実流量の測定を行い、別に設けたデータ処理用パソコンでデータの送受信を実行して流量演算を行い、前記実流量との比較から前記ユニット部品毎の固有補正データを前記不揮発メモリに書き込み、固有補正データを保有した状態にした流量計測ユニットを開示する。この特許文献1に開示されるように、超音波式流量検出の原理は、ガス流路内の2点間の超音波の伝搬時間がガス流速を含んだ関数であり、伝搬時間を計測すればガス流速が逆算でき、流速がわかればこれと通過断面積とより流量がわかることを応用していることが開示されている。
【0003】
特許文献2(特開2010−14690号公報)は、応答性に優れた高精度な流量測定を実現するために、超音波の伝搬時間を予め計測する予備計測時に、超音波の送信時点から受信波の到達時点までの間に計測したクロックパルス数を順方向と逆方向について記憶しておき、予備計測後の本計測時に、超音波の送信時点からクロックパルス数を計数し始め、順方向と逆方向についてそれぞれ記憶したクロックパルス数の2個前のクロックパルスの出力時点で積分を開始し、受信波の到達時点で積分電圧を測定して微少時間を算出することによりクロックパルス時間と微少時間とから伝搬時間を計測するようにした超音波流量計を開示する。
【0004】
特許文献3(特開2011−7539号公報)は、流体の流れに沿って所定の距離を隔てて、測定管に取り付けられる複数の超音波振動子と、上流側の超音波振動子から発信された超音波を下流側の超音波振動子が受信するまでの伝搬時間と、下流側の超音波振動子から発信された超音波を上流側の超音波振動子が受信するまでの伝搬時間との時間差に基づいて流体の流速を求める演算回路とを備え、超音波振動子は、測定管に応じて予め定めた、第1の周波数の超音波と第2の周波数の超音波とを交互に発信し、演算回路は、第1の周波数の超音波での伝搬時間の第1の時間差を、流体の流速がゼロのときの時間差として求め、第2の周波数の超音波での伝搬時間の第2の時間差と、第1の時間差とに基づき、流体の流速を求める超音波流量計を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−121404号公報
【特許文献2】特開2010−14690号公報
【特許文献3】特開2011−7539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した超音波流量計において、特に微少流量を測定する場合には、特許文献3に開示されるように、微少流量の流体が通過する導管の内側に超音波振動子を設けることは難しく、流れそのものを阻害する恐れがあるため、導管の外側に超音波振動子を設けることが望ましい。
【0007】
また、微少流量の検出にあたっては、特許文献3に記載されているような上流側の超音波振動子から発振され、導管内の順方向に流れる流体を伝搬する超音波振動を下流側の超音波振動子で検出し、また下流側の超音波振動子から発振された超音波を逆方向に流れる流体を伝搬する超音波振動を上流側の超音波振動子で検出する場合に、検出する流量が微少であることから、超音波振動子と導管との接合部分の状態、特に超音波振動子と導管との接合部分を接着する接着剤の量及び偏心等接着状態にバラツキがある場合、振動子の減衰を含む振動子の振動状態にバラツキが生じることから、超音波の伝搬状態にもバラツキが生じ、これらの結果としてそれらが位相差に表れ、微少流量の検出に誤差が生じるという問題点があった。
【0008】
また、振動子の振動が減衰せず流量検出が不可能とならないよう、振動子を制振材料で挟持固定し、確実に残響を取り除くことが望ましいため、振動子と制振材料を接着剤にて固定していたが、この振動子と制振材料との間の接着剤の接着状態のばらつきによっても超音波の送受信に影響を与えることから、それらが位相差に表れ、微少流量の検出に誤差が生じるという問題があった。
【0009】
そもそも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)においてエポキシ等で接着する場合、それ自体が難しく生産性が悪いという問題があった。表面処理後に接着できたとしても、接着状態は予測不可能なばらつきを生み、精度良く接着できたとは言い難く、位相差は特に温度などによって増幅され、流量が無い状態で流量を示すゼロ・ドリフトが発生する問題があった。それらは同様に予測不可能であり、センサ間によって差異があった。
【0010】
このため、この発明は、振動子と導管の間、振動子と制振材料の間の接着状態のバラツキを防止し、ゼロ・ドリフトを軽減し、求める精度を測定することができる超音波センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本願発明は、微少流量が流れる導管の外周上に配置され、高周波が付与されて振動し、振動を受信して高周波信号を発生させるリング状の超音波振動子と、該超音波振動子を挟持固定するように配置される一対の制振部材とによって構成される超音波センサにおいて、前記超音波振動子の内周面と前記導管の外周面の間に、前記超音波振動子の幅よりも大きな幅を有する環状の柔軟性のある略均一な整合部材を設けると共に、該整合部材は、音の伝搬速度が前記導管内を流れる物質の音の伝搬速度と略等しい材質からなることにある。この「音の伝搬速度が前記導管内を流れる物質の音の伝搬速度と略等しい材質からなること」とは、整合部材が測定される流体の密度と略等しい密度を有することと同じ概念を有するものである。該整合部材は、特に均一であることが望ましい。
【0012】
さらに、前記超音波振動子と前記制振部材の接触面は、その粘着性が最小限となるように加工されることが望ましい。例えば、前記超音波振動子と前記制振部材との接触面の粘着性を最小限にする加工は、何れかの面若しくは両面に施される表面コーティングであり、またプラズマ表面処理であることが望ましい。さらに、超音波振動子と制振部材との間に非粘着性物質を挟むようにしても良いものである。さらにまた、片面若しくは両面に非粘着性処理が施された介在部材を設けるようにしても良いものである。
【0013】
さらにまた、前記超音波振動子と前記整合部材の間及び前記整合部材と前記導管の間には、導管を流れる物質の密度と略等しい密度を有するグリースが適用されることが望ましい。例えば導管を流れる物質が水である場合には、グリースの密度は略1.00であることが望ましい。
【0014】
また、前記制振部材は、硬度20〜25のゴム系物質であることが望ましい。
【0015】
経年変化による劣化を防ぐために、特に振動子と制振部材の間の面の防湿のため、外周側面に防湿処理用部材を設けるようにしても良い。
【0016】
また、本願発明の別の態様は、微細流量が流れる導管上に、上述した本願発明に係る超音波センサを所定の間隔で配置した超音波流量計を提供することである。
【0017】
また、前記超音波流量計は、前記導管を流れる流量の計測を実行して出力するコントロールユニットが載置されるコントロールユニット収納部と、一対の前記超音波センサが所定の間隔で配置されるセンサ保護部とによって構成されるケースを具備することが望ましく、さらに前記ケースのセンサ保護部が、導管とは離れた状態で制振部材を挟持固定することが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
この発明の超音波センサ及びそれを用いた超音波流量計によれば、超音波センサの超音波振動子を制振部材で挟持して導管に固定し、超音波振動子と導管の間に導管に流れる物質の同様の音波伝搬速度を有する材料からなるリング状の整合部材を介在させたことによって、超音波振動子の振動をバラツキ少なく均一に確実に導管内の流体に伝達することができると共に、導管内の流体を伝搬してきた振動を超音波振動子によってバラツキ少なく均一に確実に検出することができるため、導管内を通過する流体の流量、流速を精度良く検出することが可能となるものである。また、この発明では、位相差バラツキが少ないため、ゼロ・ドリフトが軽減されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本願発明に係る超音波センサが所定の間隔で配置された本願発明に係る超音波流量計の構成を示した説明図である。
【図2】図2は、本願発明に係る超音波センサの構造を示した説明図である。
【図3】図3(a)は、常温時において、制振部材で挟持された振動子を導管に接着した超音波流量計の波数に対する位相差を示した特性(A)、導管に振動子を、整合部材を介して配置した超音波流量計の波数に対する位相差を示した特性(B)、及び導管に、制振部材で挟持された振動子を、整合部材を介して配置した超音波流量計の波数に対する位相差を示した特性(C)を示した特性線図であり、図3(b)は、高温時若しくは低温時において、制振部材で挟持された振動子を導管に接着した超音波流量計の波数に対する位相差を示した特性(A’)、導管に振動子を、整合部材を介して配置した超音波流量計の波数に対する位相差を示した特性(B’)、及び導管に、制振部材で挟持された振動子を、整合部材を介して配置した超音波流量計の波数に対する位相差を示した特性(C’)を示した特性線図である。
【図4】制振部材の硬度と位相差との関係を示した特性線図である。
【図5】図5は、常温時、接着剤使用時のオシロスコープ一般波形の例である。
【図6】図6は、常温時、冷却時オシロスコープ一般波形の比較例である。
【図7】図7は、常温時、導管に振動子を、整合部材を介して配置した超音波流量計の波形例である。
【図8】図8は、常温時、導管に、制振部材で挟持された振動子を、整合部材を介して配置した超音波流量計の波形例である。
【図9】図9は、常温時、45℃、65℃、85℃における、導管に、制振部材で挟持された振動子を、整合部材を介して配置した超音波流量計の波形例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施例について、図面により説明する。
【実施例】
【0021】
本願発明に係る超音波センサ1(1A,1B)は、例えば図1に示す微少流量計100に使用されるものである。例えば図1に示す微少流量計100は、上流側超音波センサ1Aと下流側超音波センサ1Bが所定の間隔をあけて微少量の流体が流れる導管20に外設される。これらの超音波センサ1A,1Bは、コントロールユニット(C/U)30に電気的に接続され、上流側超音波センサ1Aに高周波を印加して振動させ、流れに対して垂直に伝搬した振動は、導管20の中心部で方向を変え、流れる流体を伝搬し、下流側超音波センサ1Bにおいて振動子を振動させ、コントロールユニット30によって電気的に検出される。さらに下流側超音波センサ1Bに高周波を印加して振動させ、流れに対して垂直に伝搬した振動は、導管20の中心部で方向を変え、流れる流体を伝搬し、上流側超音波センサ1Aにおいて振動子を振動させ、コントロールユニット30によって電気的に検出される。これによって、それぞれの位相差から導管20を流れる流体の速度を計測し、平均流体速度Vと、導管20の断面積Sとによって流量を演算し求め、例えば流量値または流速値として表示、あるいは出力信号に変換するものである。
【0022】
また、前記超音波流量計100は、前記コントロールユニット30が載置されるコントロールユニット収納部120と、前記所定の間隔で配置された一対の超音波センサ1A,1Bが配置されたセンサ保護部130とを具備するケース110を有する。前記センサ保護部130は、前記ケース110と一体に形成され、前記超音波センサを挟持固定する超音波センサ保持部131を有する。この超音波センサ保持部131は、前記導管20に接触しないように前記超音波センサ1A,1Bを保持することが望ましい。
【0023】
この微少流量計100で使用される本願発明に係る超音波センサ1は、例えば図2に示すように、環状の超音波振動子2と、この超音波振動子2を挟持する一対の制振部材3,4とによって構成され、さらに前記超音波振動子2の内周面と前記導管20の外周面の間には、リング状の柔軟性のある略均一な整合部材7が設けられる。
【0024】
前記制振部材3,4と超音波振動子2との間の表面8の防湿のため、外周側面に防湿処理用部材を設ける場合、振動子外周側面は、制振部材3,4と超音波振動子2との間の表面8同様、接着剤、粘着等、振動子の自由振動を妨げないのが望ましい。
【0025】
通常、前記導管20は、3mm、4mm、6mm径のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によって形成されるものであり、測定される流体が水である場合、前記整合部材7は、ポリエチレン等、水を伝わる音の速度とほぼ等しい音速を持つ柔軟性のあるビニール系材料からなることが望ましい。さらに、超音波振動子2と前記整合部材7との間の面9及び整合部材7と導管20との間の面10には、測定される流体(例えば水)を伝わる音速と同等の音速を有するグリース(例えば密度が極力1.00に近いグリース)が塗布されることが望ましい。
【0026】
これによって、超音波振動子2と導管20との接合部分の状態が、例えばエポキシ系接着剤では、密度(ρ)、物質中の音速(c)を掛け合わせた音響インピーダンス(z=ρc)が、PTFEとエポキシ系接着剤とではほぼ同等となり、それぞれ物質中の音速(c)が1300m/sec程度、2500m/sec程度となっていることから、液体中を伝わって来た振動は、液体中からPTFE及び振動子の幅よりも大きな幅を有する予測不可能なばらつきを持つ接着箇所を通して、2倍の速度で一気に超音波振動子に伝わることになるが、超音波振動子2の幅よりも大きな幅を有する略均一な整合部材7では、密度(ρ)、物質中の音速(c)等、水とほぼ同一に合わせることによって、略均一な整合部材7を通して2倍の速度で一気に超音波振動子に伝わることはなくなり、また生来略均一に作られている材質を選んでいるので、そのバラつきを気にする必要はなく、バラツキ少なく均一に送受信可能となるものである。
【0027】
また、柔軟性のある略均一な整合部材7によって、導管20に対する方向については超音波振動子2が円滑に振動することが可能となるため、導管20を流れる流体にバラツキ少なく均一に振動を伝えることが可能となるものである。
【0028】
また、前記制振部材3,4は、図4で示すように、超音波振動子2の残響がバラツキなく均一に取り除けるよう、硬度20〜25の間の硬度を有するゴム系材料から形成されることが望ましい。
【0029】
さらに、制振部材3,4と超音波振動子2との間の表面8は、粘着性が生じないように加工されることが望ましい。この加工は、表面コーティングによる方法、特にプラズマ処理を施して表面を粘着性が生じないように表面処理する方法、両面若しくは片面に粘着性が生じないように表面処理されたフィルムを介在させる方法、粘着性を有しない材料からなるフィルムを介在させる方法等がある。
【0030】
これによって、導管20に対して、流体の流れ方向に対して、制振部材3,4、柔軟性のある略均一な整合部材7によって、つまりは接着剤を使って固め固定端振動にするのではなく、固着させず自由振動させることで円滑に振動することが可能となり、流れ方向の振動は制振部材3,4によって制振され、超音波振動子2の残響がバラツキなく均一に取り除け、導管20に対する方向についても、制振部材3,4及び柔軟性のある略均一な整合部材7によって、つまりは接着剤を使って固め固定端振動にするのではなく、固着させず自由振動させることで振動子が円滑に振動することが可能となるため、導管20を流れる流体にバラツキ少なく均一に振動を伝えることが可能となるものである。
【0031】
以上の構成により、本願発明によれば、上述した効果、超音波振動子の振動をバラツキ少なく均一に確実に導管内の流体に伝達することができると共に、導管内の流体を伝搬してきた振動を超音波振動子によってバラツキ少なく均一に確実に検出することができるため、導管内を通過する流体の流量、流速を精度良く検出することができるという効果を達成することができるものである。
【0032】
また、以上のような構造を有する超音波センサ1を具備した超音波流量計100は、図3(a)(b)で示すように、位相差バラツキが少ないため、ゼロ・ドリフトが軽減されるという効果を達成するものである。PTFEと環状の超音波振動子の編心等ばらつきを減少させ、精度良く製造でき、センサ間の再現性の悪さも軽減され、さらに、構造が簡単なことから、原価的、生産性効果も高く、製造が飛躍的に容易になるという効果を達成するものである。
【0033】
超音波センサ1は、ケース110で衝撃、防湿から保護するものであることから、センサ保護部130に超音波センサ1A,1Bを装着した時でも、導管20内を通過する流体の流量、流速を精度良く検出することができるという効果、ゼロ・ドリフトが軽減されるという効果等が達成されなければならないため、プラスチックまたは金属等からなるケース110に、センサ保護部130を設ける。この場合は、制振部材3,4をそれらに設けられた超音波センサ保持部131で狭持し、導管20とは離れた状態で、導管20に接着剤で接着しない形で支持することが望ましい。その場合、それ以外に超音波センサ1を支持しなければならない部位については、特に限定されるものではない。また、センサ保護部130、コントロールユニット収納部120についても、一体型であるか無いかには特に限定されるものではない。
【0034】
図5は、超音波振動子2と制振部材3,4を接着剤を使用して固定し、振動させた場合のオシロスコープ一般波形の例であり、その接着状態のバラツキから、上流と下流の波形の振幅差が著しく異なっている。
【0035】
図6は、常温時、冷却時オシロスコープ一般波形比較の例であり、波形中心部と後方部に、温度差による振幅の違いが見られる。このように、接着状態のバラツキ、温度差により波形に差異が現れ、位相差に影響を及ぼすのである。
【0036】
図7は、導管に振動子を、整合部材7を介して配置し、常温時において振動させた、超音波流量計の上流と下流の実施波形例である。
【0037】
図8は、導管に、制振部材3,4で挟持された振動子を、整合部材7を介して配置し、常温時において振動させた、超音波流量計の上流と下流の実施波形例である。
【0038】
図9は、導管に、制振部材3,4で挟持された振動子を、整合部材7を介して配置し、常温時、45℃、65℃、85℃において振動させた、超音波流量計の上流の実施波形例である。実際に流量測定に使われる波形は、図7及び図8で示すように、上流と下流の実施波形の差異はほとんどない。
【0039】
尚、図3(a)(b)において、A,A’は、超音波振動子2を、制振部材3,4で挟持接着固定し、導管20に接着固定した場合の超音波流量計の特性を示したものであり、超音波流量計の上流下流の波形差は少ないが図5のような接着状態のバラツキによる波形差に、図6のような温度による波形差も加わり、位相差が悪くなるのである。
【0040】
B,B’は、前記超音波振動子2を、整合部材7を介して導管20に固定した場合の超音波流量計の特性を示したものであり、制振部材3,4で狭持していない分、図5、図6のような波形差が現れることになるが、接着剤による固定ほどではなく、バラツキも少ないため、A,A‘のように悪くはならない。
【0041】
C,C’は、前記超音波振動子2を、制振部材3,4で挟持固定し、整合部材7を介して導管20に固定した場合の超音波流量計の特性を示したものである。制振部材3,4、整合部材7という構成のため、常に図7、図8のような、上流下流の波形差が極めて少ない状態になり、位相差が少なくなるのである。このように、本願発明の係る超音波流量計100の特性C,C’が最も位相差が少なくなることがこの特性線図から読み取ることができるものである。
【符号の説明】
【0042】
1,1A,1B 超音波センサ
2 超音波振動子
3,4 制振部材
7 整合部材
8 振動子と制振部材の間の面
9 振動子の整合部材の間の面
10 整合部材と導管の間の面
20 導管
30 コントロールユニット
100 超音波流量計
110 ケース
120 コントロールユニット収納部
130 超音波センサ保護部
131 超音波センサ保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微少流量が流れる導管の外周上に配置され、高周波が付与されて振動し、振動を受信して高周波信号を発生させるリング状の超音波振動子と、該超音波振動子を挟持固定するように配置される一対の制振部材とによって構成される超音波センサにおいて、
前記超音波振動子の内周面と前記導管の外周面の間に、前記超音波振動子の幅よりも大きな幅を有する環状の柔軟性のある均一な整合部材を設けると共に、該整合部材は、音の伝搬速度が前記導管内を流れる物質の音の伝搬速度と略等しい材質からなることを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
前記超音波振動子と前記制振部材の接触面は、その粘着性が最小限となるように加工されることを特徴とする請求項1記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記超音波振動子と前記制振部材との接触面の粘着性を最小限にする加工は、表面コーティングであることを特徴とする請求項2記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記超音波振動子と前記制振部材との接触面の粘着性を最小限にする加工は、プラズマ表面処理であることを特徴とする請求項2記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記超音波振動子と前記制振部材の接触面に非粘着性物質を挟むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項6】
前記超音波振動子と前記制振部材の接触面の少なくとも一方の面に非粘着性処理が施された介在部材を設けること特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの記載の超音波センサ。
【請求項7】
前記超音波振動子と前記整合部材の間及び前記整合部材と前記導管の間には、導管を流れる物質の密度と略等しい密度を有するグリースが適用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の超音波センサを、微少流量が流れる導管上に所定の間隔で配置したことを特徴とする超音波流量計。
【請求項9】
前記導管を流れる流量の計測を実行して出力するコントロールユニットが載置されるコントロールユニット収納部と、一対の前記超音波センサが所定の間隔で配置されるセンサ保護部とによって構成されるケースを具備し、
該ケースのセンサ保護部は、導管とは離れた状態で制振部材を挟持固定することを特徴とする請求項8記載の超音波流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−68589(P2013−68589A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−241803(P2011−241803)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(511267837)
【Fターム(参考)】