説明

超音波プローブ

【課題】高次高調波の超音波に適した超音波プローブを提供する。
【解決手段】送信用アレイ10は、各々が基本波の超音波を送波する複数の送信用振動素子12により形成される。複数の送信用振動素子12は、基本波に対応した配列条件に従って配列される。受信用アレイ20は、各々が高次高調波の超音波を受波する複数の受信用振動素子22により形成される。複数の受信用振動素子22は、高調波に対応した配列条件に従って配列される。基本波に対応した配列条件と高調波に対応した配列条件との間には、高次高調波の次数に応じた相違がある。これにより、基本波を送波して高次高調波を受波するにあたって、極めて良好なビームプロファイルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本波と高次高調波の超音波に対応した超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロバブル(またはナノバブル)は、液体などに注入された微細な気泡を意味している。このマイクロバブルは、様々な優れた特性を備えているため、多くの分野で利用されている。例えば、医療分野への応用として、マイクロバブルが超音波の好適な反射体となることから、超音波画像を形成する際の造影剤として利用されている。
【0003】
造影剤を利用した超音波画像の形成においては、造影剤に含まれるバブルから得られる高調波成分が利用される。例えば特許文献1には、バブルの挙動に基づいた送信条件で超音波を送波し、バブルから得られる高調波成分に基づいた画像を形成する旨の画期的な技術が記載されている。また、特許文献2には、送信時と受信時においてトランスジューサ素子のピッチを異ならせて高調波信号を検出する旨の技術が記載されている(特許文献2の請求項3など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−136626号公報
【特許文献2】特開平11−221215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した背景技術に鑑み、本願の発明者は、バブル(マイクロバブルなど)を利用した超音波による画像化技術について研究開発を重ねてきた。特に、高調波成分を利用した画像化の技術について研究開発を重ねてきた。
【0006】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、高次高調波の超音波に適した超音波プローブを提供することにある。また、本発明の他の目的は、当該超音波プローブを用いた超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的にかなう好適な超音波プローブは、基本波の超音波に対応した複数の基本波振動素子で構成された基本波アレイと、前記基本波に関する高次高調波の超音波に対応した複数の高調波振動素子で構成された高調波アレイと、を有し、前記複数の基本波振動素子は、基本波に対応した配列条件に従って配列され、前記複数の高調波振動素子は、前記基本波に対応した配列条件と比較して前記高次高調波の次数に応じた相違がある高調波に対応した配列条件に従って配列される、ことを特徴とする。
【0008】
上記構成では、基本波に対応した配列条件と高調波に対応した配列条件との間に高次高調波の次数に応じた相違がある。そのため、例えば、基本波を送信して高次高調波を受信するのに適した超音波プローブが提供される。ちなみに、前述した特許文献2には、高次高調波の次数に応じて配列条件を異ならせる旨の技術は記載されていない。
【0009】
望ましい具体例において、前記各基本波振動素子は、配列方向に沿ってサイズSLで形成され、前記各高調波振動素子は、サイズSLを前記高次高調波の次数に応じて小さくしたサイズSHで配列方向に沿って形成される、ことを特徴とする。
【0010】
望ましい具体例において、前記高次高調波の次数はNであり、前記サイズSHは前記サイズSLの1/Nである、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記複数の基本波振動素子は、配列方向に沿ってピッチPLで配列され、前記複数の高調波振動素子は、ピッチPLを前記高次高調波の次数に応じて小さくしたピッチPHで配列方向に沿って配列される、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記高次高調波の次数はNであり、前記ピッチPHは前記ピッチPLの1/Nである、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記基本波アレイと前記高調波アレイは、互いに略平行に近接して配置され、前記高調波アレイは、前記基本波アレイに比べて配列方向に沿って長いことを特徴とする。
【0014】
また、上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、前記超音波プローブを有する超音波診断装置において、基本波の超音波を送波するように前記基本波アレイを制御して前記高調波アレイから高次高調波の超音波に対応した受信信号を得る送受信部と、前記基本波アレイから選択されるいくつかの基本波振動素子と前記高調波アレイから選択されるいくつかの高調波振動素子を前記送受信部に接続するセレクタと、前記受信信号に基づいて超音波画像を形成する画像形成部と、を有することを特徴とする。
【0015】
望ましい具体例において、前記基本波アレイと前記高調波アレイは、互いに略平行に近接して配置され、前記複数の基本波振動素子と前記複数の高調波振動素子で構成された複合アレイを形成し、前記複合アレイの一方端から順に、複数の基本波振動素子と複数の高調波振動素子に対して、共通した通し番号が割り当てられ、前記セレクタは、連続的な番号が割り当てられたいくつかの基本波振動素子といくつかの高調波振動素子を選択して前記送受信部に接続する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高次高調波の超音波に適した超音波プローブが提供される。また、本発明により、当該超音波プローブを用いた超音波診断装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る超音波プローブの好適な実施形態を説明するための図である。
【図2】複数の振動素子の配列条件を説明するための図である。
【図3】基本波の送波した場合の送信ビームプロファイルを示す図である。
【図4】基本波を送波して高調波を受波した場合の送受信ビームプロファイルを示す図である。
【図5】高調波を送受した場合の送受信ビームプロファイルを示す図である。
【図6】複数の振動素子の配列構造の変形例を示す図である。
【図7】本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明に係る超音波プローブの好適な実施形態を説明するための図であり、図1には、その超音波プローブが備える複数の振動素子の配列構造が示されている。本実施形態において、超音波プローブは、送信用アレイ10と受信用アレイ20を備えている。送信用アレイ10と受信用アレイ20は、互いに平行に近接して配置される。
【0019】
送信用アレイ10は、各々が基本波の超音波を送波する複数の送信用振動素子12により形成される。複数の送信用振動素子12は、基本波に対応した配列条件に従ってX軸方向に沿って1次元的に配列される。その配列条件については後に詳述する。
【0020】
一方、受信用アレイ20は、各々が高次高調波の超音波を受波する複数の受信用振動素子22により形成される。複数の受信用振動素子22は、高調波に対応した配列条件に従ってX軸方向に沿って1次元的に配列される。その配列条件については後に詳述する。
【0021】
複数の送信用振動素子12と複数の受信用振動素子22には、送信用と受信用に関して共通した通し番号でチャンネル番号が割り当てられている。つまり、送信用アレイ10と受信用アレイ20(複合アレイ)の一方端から、すなわち図1に示すX軸の原点側から、まず、3つの受信用振動素子22に対してチャンネル1(CH1)からチャンネル3(CH3)が割り当てられ、これらに対向して配置された1つの送信用振動素子12に対してチャンネル4(CH4)が割り当てられる。さらに、3つの受信用振動素子22に対してチャンネル5(CH5)からチャンネル7(CH7)が割り当てられ、これらに対向して配置された1つの送信用振動素子12に対してチャンネル8(CH8)が割り当てられる。こうして、送信用アレイ10と受信用アレイ20からなる複合アレイに含まれる複数の振動素子に対して、複合アレイの一方端から他方端まで共通した通し番号でチャンネル番号が割り当てられる。
【0022】
図1に示す配列構造を備えた超音波プローブは、バブルなどから得られる高次高調波の抽出に適している。例えば、バブルを含む診断領域に対して、送信用アレイ10から、X軸とY軸に直交する方向に超音波の基本波が送波され、バブルから発せられた超音波に含まれる高次高調波が受信用アレイ20により受波される。
【0023】
本実施形態においては、複数の送信用振動素子12が基本波に対応した配列条件に従って配列され、さらに、複数の受信用振動素子22が高調波に対応した配列条件に従って配列される。そのため、例えば、基本波を送波して高次高調波を受波するにあたって、極めて良好なビームプロファイルを得ることができる。そこで、以下に本実施形態における配列条件とビームプロファイルについて説明する。
【0024】
図2は、複数の振動素子の配列条件を説明するための図である。図2には、送信用振動素子と受信用振動素子の素子数の割合(送信:受信)を異ならせた条件(1)〜(4)が示されている。但し、条件(1)〜(4)の全てにおいて、送信用振動素子数と受信用振動素子数の合計数(総数)を192個(1:4の場合は190個)とし、送信用アレイの長さと送信開口を一定とし、受信用アレイの長さと受信開口を一定とする。
【0025】
条件(1)は、送信用振動素子数と受信用振動素子数の比が1:1である。つまり、送信用振動素子数が96個であり受信用振動素子数も96個である。そして、送信用振動素子のピッチが0.4mmであり受信用振動素子のピッチも0.4mmである。ピッチは、互いに隣接する2つの振動素子に関する例えば中心間の距離である。複数の振動素子が隙間なく配列されていれば、各振動素子の配列方向の大きさ(サイズ)とピッチが等しくなる。
【0026】
条件(2)は、送信用振動素子数と受信用振動素子数の比が1:2である。つまり、送信用振動素子数が64個であり受信用振動素子数が128個である。そして、送信用振動素子のピッチが0.6mmであり受信用振動素子のピッチが0.3mmである。さらに、図2には、送信用振動素子数と受信用振動素子数の比が1:3である条件(3)と、送信用振動素子数と受信用振動素子数の比が1:4である条件(4)について、振動素子数やピッチの具体的な数値が記載されている。
【0027】
図2に示される各条件で得られるビームプロファイルをシミュレーションで解析した結果が図3から図5に図示されている。
【0028】
図3は、基本波を送波した場合の送信ビームプロファイルを示す図である。図3には、送信用アレイを利用して送信中心周波数2MHzのパルス波を深さ20mmにフォーカスした場合に、図2の条件(1)〜(4)の各々の配列条件で得られる、方位方向の送信ビームプロファイルが示されている。図2の条件(1)〜(4)の各々が、図3の波形(1)〜(4)に対応している。
【0029】
横軸に示す方位方向の0°付近のメインローブは、例えば画像の分解能に関連すると考えられる。このメインローブについて、例えばその高さや幅については、波形(1)〜(4)つまり条件(1)〜(4)の間で大きな差が現れていない。
【0030】
これに対し、メインローブから横軸方向の左右に広がるサイドローブについては、波形(1)〜(4)の順に高さが上昇している。つまり、サイドローブについては条件(1)が最も良好であり、条件(1)〜(4)の順に徐々に悪化している。
【0031】
図4は、基本波を送波して高調波を受波した場合の送受信ビームプロファイルを示す図である。図3に示す基本波の送信ビームプロファイルに基づいて3次高調波のプロファイルを推定し、その3次高調波を受信用アレイで受波することにより得られる送受信ビームプロファイルが図4に示されている。図4には、図2の条件(1)〜(4)の各々の配列条件で得られる送受信ビームプロファイルが示されており、図2の条件(1)〜(4)の各々が、図4の波形(1)〜(4)に対応している。
【0032】
横軸に示す方位方向の0°付近のメインローブについては、波形(1)〜(4)つまり条件(1)〜(4)の間で大きな差が現れていないものの、サイドローブについては条件(3)が最も小さく良好となっている。つまり、基本波(例えば中心周波数2MHz)の超音波を送波し、3次高調波(例えば6MHz)の超音波を受波する場合においては、送信用振動素子数と受信用振動素子数の比が1:3である条件(3)とすることにより、例えばサイドローブの小さい良好なビームプロファイルを得ることができる。
【0033】
条件(3)における送信用振動素子数と受信用振動素子数の比率、つまり1:3は、送波される超音波の周波数と受波される超音波の周波数との比率、つまり基本波と3次高調波の比率である1:3に対応している。
【0034】
この事実を一般化すると、基本波の超音波を送波してその基本波に関するN次高調波の超音波を受波する場合には、送信用振動素子数と受信用振動素子数の比率を1:Nとする配列条件が望ましいと考えられる。振動素子数の比率を1:Nとすると、送信用振動素子のピッチと受信用振動素子のピッチの比率は1:1/NつまりN:1となる。同様に送信用振動素子のサイズと受信用振動素子のサイズの比率も1:1/NつまりN:1となる。
【0035】
このように、高次高調波の次数Nに応じて、振動素子数の割合を1:Nとする、つまり受信用振動素子数を送信用振動素子数のN倍とする条件が最適であると考えられる。例えば、基本波を送波して3次高調波を受波する場合には、受信用振動素子数を送信用振動素子数の3倍とする条件が望ましい。
【0036】
但し、図4に示すビームプロファイルのサイドローブを比較すると、波形(1)に比べて、波形(2)や波形(4)も比較的良好となっている。つまり、受信用振動素子数と送信用振動素子数を等しくする条件(1)よりも、受信用振動素子数を送信用振動素子数の2倍とする条件(2)や、受信用振動素子数を送信用振動素子数の4倍とする条件(4)の方が良好なビームプロファイルとなっている。したがって、例えば設計上の制約やコスト面の制約などにより、受信用振動素子数を送信用振動素子数の3倍とすることが困難な場合でも、例えば、受信用振動素子数を送信用振動素子数の2倍程度またはそれ以上(3倍以上でもよい)とすることにより、条件(1)よりも良好なビームプロファイルを実現できると考えられる。
【0037】
次に、例えばバブルを観察する場合には、基本波の超音波を送波してバブルから得られる3次高調波の成分に基づいてバブルの超音波画像が形成される。これに対し、例えば組織を観察する場合には、送波と受波において同じ周波数の超音波を利用することが望ましい。そこで、図1に示す配列構造を備えた超音波プローブで組織を画像化する場合には、例えば受信用アレイ10のみを利用して高調波の超音波を送受する。
【0038】
図5は、高調波を送受した場合の送受信ビームプロファイルを示す図である。図5には受信用アレイを高調波用(リニア)振動子として利用し、送信中心周波数6MHz(高調波)のパルスを送波して6MHzの超音波を受波した場合の送受信ビームプロファイルが示されている。なお、送信のフォーカスは深さ20mmとしている。図2の条件(1)〜(4)の各々が、図5の波形(1)〜(4)に対応している。条件(1)(2)の場合に比べて、条件(3)(4)の場合において、例えばサイドローブの小さい良好なビームプロファイルを得ることができる。また、バブルの画像化において好適な条件(3)では、条件(4)とほぼ同程度に良好なビームプロファイルが得られている。つまり、条件(3)はバブルの画像化においても組織の画像化においても好適な条件であることが分かる。
【0039】
図6は、複数の振動素子の配列構造の変形例を示す図である。図6(A)は、受信用アレイ20を挟むように、外側に2列の送信用アレイ10が配置された構造を示している。図1に示す配列構造と同様に、図6(A)においても、送信用アレイ10は、各々が基本波の超音波を送波する複数の送信用振動素子により形成され、複数の送信用振動素子が基本波に対応した配列条件に従って配列される。また、受信用アレイ20は、各々が高次高調波の超音波を受波する複数の受信用振動素子により形成され、複数の受信用振動素子が高調波に対応した配列条件に従って配列される。例えば、受信用アレイ20を構成する受信用振動素子数が、1列の送信用アレイ10を構成する送信用振動素子数の3倍(N次高調波の場合にはN倍)とされる。
【0040】
そして、図6(A)においては、受信用アレイ20が送信用アレイ10よりも配列方向に沿って長くなっている。例えば、受信用アレイ20が送信用アレイ10の1.2倍とされる。これに伴い、受信開口も送信開口の例えば1.2倍とされる。なお、受信用アレイ10を長くした結果、3次高調波の場合において、送信用振動素子のピッチは受信用振動素子のピッチの3倍よりも小さくなるものの、例えば2倍以上とすることが望ましい。
【0041】
さらに、図6(A)においても、送信用アレイ10と受信用アレイ20の一方端から、送信用と受信用に関して共通した通し番号でチャンネル番号が割り当てられる。但し、互いに対向して配置される2つの送信用振動素子に対して、同一のチャンネル番号が割り当てられ、それら2つの送信用振動素子が共通の信号線で制御される。例えば、チャンネル1(CH1)の2つの送信用振動素子に対して、共通の信号線を介して同一の送信信号が供給される。
【0042】
図6(B)は、送信用アレイ10を挟むように、外側に2列の受信用アレイ20が配置された構造を示している。図6(B)においても、送信用アレイ10は、各々が基本波の超音波を送波する複数の送信用振動素子により形成され、複数の送信用振動素子が基本波に対応した配列条件に従って配列される。また、受信用アレイ20は、各々が高次高調波の超音波を受波する複数の受信用振動素子により形成され、複数の受信用振動素子が高調波に対応した配列条件に従って配列される。例えば、1列の受信用アレイ20を構成する受信用振動素子数が、送信用アレイ10を構成する送信用振動素子数の3倍(N次高調波の場合にはN倍)とされる。
【0043】
また、受信用アレイ20が送信用アレイ10よりも配列方向に沿って長くなっている。受信用アレイ20を長くした結果、3次高調波の場合において、送信用振動素子のピッチは、受信用振動素子のピッチの3倍よりも小さくなるものの、例えば2倍以上とすることが望ましい。
【0044】
さらに、送信用アレイ10と受信用アレイ20の一方端から、送信用と受信用に関して共通した通し番号でチャンネル番号が割り当てられる。但し、互いに対向して配置される2つの受信用振動素子に対して、同一のチャンネル番号が割り当てられる。そして、例えば、チャンネル1(CH1)の2つの受信用振動素子が共通の信号線を介して互いに接続される。
【0045】
図6に示すように、送信開口に比べて受信開口を広くすることにより、深さ方向に比較的均一な音圧分布をもった送信が可能になり、また、受信においては比較的良好な感度と方位分解能を実現することが可能になる。
【0046】
図7は、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態を説明するための図であり、図7には、その超音波診断装置の全体構成がブロック図で示されている。図7に示す超音波診断装置は、図1から図6を利用して説明した超音波プローブを有している。
【0047】
例えば、図7における複数の振動素子は、図1の送信用アレイ10を構成する複数の送信用振動素子12と受信用アレイ20を構成する複数の受信用振動素子22である。図1を利用して説明したように、複数の送信用振動素子12と複数の受信用振動素子22は、送信用と受信用に関して共通した通し番号でチャンネル番号が割り当てられている。図7の各振動素子に付されたチャンネル(CH)番号は、その共通した通し番号である。例えば、チャンネル1(CH1)からチャンネル3(CH3)の振動素子が受信用であり、チャンネル4(CH4)が送信用である。図1の例と同様に、図7においても総数192チャンネルの振動素子で超音波プローブが構成されている。
【0048】
図7においては、192チャンネルの振動素子に対して、96チャンネルの送受信回路40が設けられている。つまり、チャンネル1(CH1)からチャンネル96(CH96)の送受信回路40が設けられている。そして、192チャンネルの振動素子と96チャンネルの送受信回路40との間に、セレクタ30が設けられている。
【0049】
セレクタ30は、192チャンネルの振動素子の中から、96チャンネルの振動素子を選択し、選択した96チャンネルの振動素子と96チャンネルの送受信回路40を接続する。セレクタ30を介して、1チャンネルの振動素子と1チャンネルの送受信回路40が互いに電気的に接続される。
【0050】
セレクタ30は、連続的なチャンネル番号が割り当てられた96個の振動素子を選択して各送受信回路40に接続する。例えば、まずチャンネル1(CH1)からチャンネル96(CH96)までの96個の振動素子が選択されて96チャンネルの送受信回路40に接続される。この接続状態で超音波の送受信が終了すると、次にチャンネル2(CH1)からチャンネル97(CH96)までの96個の振動素子が選択されて96チャンネルの送受信回路40に接続され、超音波の送受信が実行される。こうして、振動素子のチャンネル番号を次々にずらしつつ、96個の振動素子が96チャンネルの送受信回路40に接続され、例えばリニア走査型の電子走査が実現される。
【0051】
ビームフォーマ50は、複数の送受信回路40から得られる受信信号に基づいて、受信ビームを形成する。つまり、96チャンネルの送受信回路40のうちの、受信用振動素子に接続された送受信回路40から受信信号を得て、複数の受信用振動素子から得られる受信信号を整相加算処理することにより受信ビームに沿った信号を形成する。そして、画像形成部60において、受信ビームに沿った信号から超音波画像が形成される。
【0052】
なお、図7に示す超音波診断装置において、特許文献1(特開2009−136626号公報)に記載された画像形成処理が利用されてもよい。例えば、互いに位相が反転関係にある超音波の組を送波し、その組のうちの一方に対応した第1受信信号と他方に対応した第2受信信号を得て、第1受信信号と第2受信信号の差分を算出して高調波成分を抽出するようにしてもよい。もちろん、他の手法を利用して高調波成分が抽出されてもよい。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0054】
10 送信用アレイ、12 送信用振動素子、20 受信用アレイ、22 受信用振動素子、30 セレクタ、40 送受信回路、50 ビームフォーマ、60 画像形成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波の超音波に対応した複数の基本波振動素子で構成された基本波アレイと、
前記基本波に関する高次高調波の超音波に対応した複数の高調波振動素子で構成された高調波アレイと、
を有し、
前記複数の基本波振動素子は、基本波に対応した配列条件に従って配列され、
前記複数の高調波振動素子は、前記基本波に対応した配列条件と比較して前記高次高調波の次数に応じた相違がある高調波に対応した配列条件に従って配列される、
ことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波プローブにおいて、
前記各基本波振動素子は、配列方向に沿ってサイズSLで形成され、
前記各高調波振動素子は、サイズSLを前記高次高調波の次数に応じて小さくしたサイズSHで配列方向に沿って形成される、
ことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波プローブにおいて、
前記高次高調波の次数はNであり、
前記サイズSHは前記サイズSLの1/Nである、
ことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波プローブにおいて、
前記複数の基本波振動素子は、配列方向に沿ってピッチPLで配列され、
前記複数の高調波振動素子は、ピッチPLを前記高次高調波の次数に応じて小さくしたピッチPHで配列方向に沿って配列される、
ことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波プローブにおいて、
前記高次高調波の次数はNであり、
前記ピッチPHは前記ピッチPLの1/Nである、
ことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波プローブにおいて、
前記基本波アレイと前記高調波アレイは、互いに略平行に近接して配置され、
前記高調波アレイは、前記基本波アレイに比べて配列方向に沿って長い、
ことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波プローブを有する超音波診断装置において、
基本波の超音波を送波するように前記基本波アレイを制御して前記高調波アレイから高次高調波の超音波に対応した受信信号を得る送受信部と、
前記基本波アレイから選択されるいくつかの基本波振動素子と前記高調波アレイから選択されるいくつかの高調波振動素子を前記送受信部に接続するセレクタと、
前記受信信号に基づいて超音波画像を形成する画像形成部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波診断装置において、
前記基本波アレイと前記高調波アレイは、互いに略平行に近接して配置され、前記複数の基本波振動素子と前記複数の高調波振動素子で構成された複合アレイを形成し、
前記複合アレイの一方端から順に、複数の基本波振動素子と複数の高調波振動素子に対して、共通した通し番号が割り当てられ、
前記セレクタは、連続的な番号が割り当てられたいくつかの基本波振動素子といくつかの高調波振動素子を選択して前記送受信部に接続する、
ことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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