説明

超音波モータの速度制御装置、方法及びプログラム

【課題】電流を上昇することなく低速駆動を可能にした超音波モータを提供する。
【解決手段】超音波モータの応答周波数範囲の周波数信号を決定するPID制御部13と、この周波数信号よりも高周波である他の周波数信号を生成する周波数信号生成部14と、この他の周波数信号をもとに、パルス幅を制御したPWM信号を生成するPWM制御部15とを具備した速度制御装置により、超音波モータの制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低速回転時でも消費電力を抑えることができる、超音波モータの速度制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波モータは、内蔵するピエゾ素子の機械共振を用いて回転するモータである。超音波モータでは、ピエゾ素子に90度位相の異なるA相供給信号、B相供給信号を、コイルを介して供給し、ピエゾ素子に歪みを発生させ、歪みエネルギを回転運動に変換している。
【0003】
共振は、機械共振だけでなく電気でも起こり、コイルとコンデンサとを組み合わせると共振する。このため、ピエゾ素子の電気的な等価回路として図13に示す回路で、ピエゾ素子は表現される。
【0004】
図13において、100はピエゾ素子である。ピエゾ素子100に含まれるコンデンサ102は電極間容量を示すコンデンサであり、機械的共振には寄与しない容量成分である。103、104,105で示される抵抗、コイル、コンデンサの直列回路はRLC直列共振回路と呼ばれる。直列共振回路のコイル104と、コンデンサ105が、電気的な共振をすることにより、機械的な共振が発生し、ピエゾ素子に歪が発生する。
【0005】
コンデンサ105とコイル104にて発生する電気的な共振は、外付けコイル101を経由して供給される、駆動信号の周波数に依存する。コンデンサ105とコイル104が最も共振する駆動信号の周波数は、f=1/(2π√LC)で表される。
【0006】
一例として出願人が用いている超音波モータにおいては、コンデンサ105が1.2nF、コイル104が15.8mHである。同例における超音波モータの共振周波数は、計算すると36.55KHzとなる。この共振周波数を以降、直列共振周波数と呼び説明する。
【0007】
駆動信号の周波数が、直列共振周波数に近づくほど、電気的な共振が大きくなり、このため機械的な共振も大きくなる。また、駆動信号の周波数が直列共振周波数に近づくほど、超音波モータは早く回転し、遠ざかるほど遅く回転する。また、超音波モータは直列共振周波数よりも高い周波数で駆動する。超音波モータを駆動する駆動信号は、通常方形波である。方形波をなまらせて正弦波にし、超音波モータに供給するため、外付けコイル101を用いる。
【0008】
外付けコイル101と電極間容量であるコンデンサ102においても、電気的な共振が発生する。
【0009】
一例としての超音波モータにおいて、電極間容量であるコンデンサ102は131nFであり、外付けコイル101は56uHである。同例における共振周波数は、f=1/(2π√LC)の計算式で計算すると58.76KHzとなる。この共振周波数を以降、外部共振周波数と呼び説明する。
【0010】
図14は、図13に示した1例に於けるピエゾ素子の等価回路をシミュレーションし、電流の周波数依存度を表したグラフである。図14において、横軸は周波数を示し、34KHzから69KHzである。縦軸は電流を示し、最大7Aである。
【0011】
110は直列共振周波数36.55KHzでの電流増加である。111は外部共振周波数58.76KHzでの電流増加である。
【0012】
直列共振周波数110よりも高い周波数では、まず電流が急激に下がり、周波数が高くなるにつれて、徐々に電流が増加し、外部共振周波数で再度電流のピークが発生する。前記したように、直列共振周波数に近いほど、メカ的な共振が大きくなり、超音波モータは回転が速くなる。直列共振周波数から遠ざかるほど、すなわち高周波になるほど、メカ的共振が小さくなり、超音波モータは回転がおそくなる。
【0013】
図18は、図14と同様、電流の周波数依存度を表したグラフであり、横軸を36KHzから44KHzとし、縦軸を最大1Aにし、図14のグラフを拡大したものである。
【0014】
例えば、1分間に1回転、すなわち1rpmで超音波モータを回転させる場合、駆動周波数が44KHz近辺となり、電流は127に示すように約0.47Aとなる。高速回転時の電流は、126に示すように約0.15Aであり、1rpmでの電流0.47Aは3倍以上となる。
【0015】
超音波モータを使用した機器で、1rpmでの電流、約0.47Aは、例えば電池駆動の携帯機器、デジタルカメラにおいて、大きな電流であり、従って1rpmのような低速駆動は採用できない。あるいは、イーサネット(登録商標)を使用した監視カメラなど、ネットワークケーブルから電源供給を受ける場合においても、低速駆動を利用できない大きな電流である。
【0016】
上記のように、低速駆動時における、電流の増加は、超音波モータを使用した機器において仕様上の制限になっている。
【0017】
低速回転での電流を制限する先行技術として、特許文献1では、回転数の遅いときは周波数を固定し、電圧を変えて速度制御することにより、駆動信号の周波数が高くなることによる電流増加を制限している。
【0018】
特許文献2では、駆動周波数の上限を記憶し、上限の周波数になると、駆動信号のON時間のパルス幅を減少させることにより、電流を増加することなく低速回転を可能としている。
【0019】
特許文献3では、ピエゾ素子に供給する複数の駆動信号の位相を周期的に変化させることにより、低速回転を可能にしている。
【0020】
【特許文献1】特開平09−247966号公報
【特許文献2】特開平09−84369号公報
【特許文献3】特開2004−304947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら上記先行技術において、特許文献1では、駆動信号の電圧を変えて速度制御するため、電圧を可変にするための回路が必要になり、コストアップの要因になる。
【0022】
特許文献2では、駆動信号のデューティ(ON時間のパルス幅)を減少させることで、ピエゾに供給する電圧波形に歪が生じてしまう。
【0023】
図15は、駆動信号のデューティを1/4に減少した際のシミュレーション波形である。図15において120は、図13に示したコイル101に供給される駆動信号の波形を示す。121は、コイル101の出力側でありピエゾ素子100に供給される電圧波形を示す。
【0024】
121の電圧波形に示すように、駆動信号のデューティを小さくしすぎると、ピエゾに供給する電圧波形に歪が生じてしまい、超音波モータが動かない、あるいは耳障りな騒音の発生が生じる。
【0025】
特許文献3においては、一定周期でA相とB相の位相を変化させているが、位相を変化させる周期が可聴周波数帯域になることにより、騒音が生じる。
【0026】
上記先行技術以外に、考えられる電流低減の方法として、図13に示した外部コイル101の値を小さくし、図14に示した外部共振周波数111を高周波にする方法が考えられる。
【0027】
背景技術において説明したように、外部共振周波数は、図13の外部コイル101と、電極間容量(コンデンサ102の)により、f=1/(2π√LC)で計算される。外部コイル101が56uHでは、外部共振周波数は、前述したように58.76KHzになる。この外部コイル101の値を小さくし、例えば10uHにすると、外部共振周波数は、139KHzとなる。58.76KHzの√(56uH/10uH)倍となる。外部共振周波数が高周波になると、図18で示した駆動周波数範囲での電流が抑えられる。
【0028】
しかしながら、単に外部コイル101の値を小さくすると、特許文献2に示したデューティを小さくした場合と同様、波形に歪が生じてしまう。
【0029】
図16及び図17は、図13に示した外部コイル101に、37KHzの駆動信号を加えた際の、ピエゾ素子100に供給される電圧波形を示す。
【0030】
図16は外部コイルを10uHにした際の波形を示し、図17は外部コイルを56uHにした際の波形を示す。
【0031】
図17において、駆動信号124を印加して、ピエゾ素子に供給される電圧波形125は、ほぼ正弦波を示している。図16では、図17と同じ周波数、同じデューティの駆動信号122を印加したにもかかわらず、ピエゾ素子に供給される電圧波形123は、正弦波とは全くいえない電圧波形となってしまう。この場合、超音波モータが動かない、あるいは耳障りな騒音の原因となる。このため、単に外部コイル101の値を小さくすることは出来ない。
【0032】
本発明は、上記のような不具合なく、電流を上昇することなく低速駆動を可能にした超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の超音波モータの速度制御装置は、超音波モータの応答周波数範囲の周波数信号を決定するPID制御手段と、前記周波数信号よりも高周波である他の周波数信号を生成する周波数信号生成手段と、前記他の周波数信号をもとに、パルス幅を制御したPWM信号を生成するPWM制御手段とを具備したことを特徴とする。
また、本発明の超音波モータの速度制御方法は、超音波モータの応答周波数範囲の周波数信号を決定するPID制御工程と、前記周波数信号よりも高周波である他の周波数信号を生成する周波数信号生成工程と、前記他の周波数信号をもとに、パルス幅を制御したPWM信号を生成するPWM制御工程とを具備したことを特徴とする。
また、本発明のプログラムは、上記に記載の超音波モータの速度制御方法の各工程をコンピュータにて実施させるプログラムである。
【発明の効果】
【0034】
本発明においては、超音波モータ駆動時、特に低速駆動時における電流を低減できる。このため、電池駆動やネットワークケーブル等を電源としている機器においても低速駆動が低消費電流で駆動できるようになり、超音波モータの応用範囲を広げることができる効果がある。また、すでに超音波モータを採用している機器においても、本発明を実施することにより、低速駆動を低消費電流で駆動できるようになり、環境性を考えた機器を製品化できる効果がある。また、本発明においては、コイルを従来よりも小さい定数を使用可能である。コイルの定数を小さくすることにより、コイルの小型化、低価格化を実現できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(第1の実施形態)
以下、本発明を実施した第1の実施形態を説明する。本実施形態に係る超音波モータは、内蔵するピエゾに正弦波を供給することにより、電気共振し、電気共振が機械共振に変換される。内蔵するピエゾは複数のエリアに分割され、分割されたエリアに、90度位相が異なる正弦波信号(周波数信号)を供給することにより、機械共振が回転運動となり、超音波モータは回転する。
【0036】
以下の説明で、駆動回路から出力され、外付けコイル(図13図示の101)に供給される信号を駆動信号と呼び説明する。また、外付けコイルを介して超音波モータに供給される信号をUSM供給信号と呼び説明する。また、90度位相の異なるUSM供給信号をA相供給信号及びB相供給信号として説明する。
【0037】
なお、超音波モータに供給されるUSM供給信号は、上記説明したように正弦波でなければならない。ただし、従来技術で説明した図13における外付けコイル101に加える駆動信号は、正弦波でなくてもよい。従来技術においても方形波である。
【0038】
本実施形態においては、図2のタイミング図に示すように、図13に図示した外付けコイル101には、32に示す高周波のPWM信号を駆動信号として供給し、コイルにより積分することで超音波モータには30に示す正弦波駆動信号を供給するようにしている。
【0039】
なお、図2に示したタイミング図で、32のPWM信号は、1周期の時間31を18分割したPWM信号を示しているが、本実施形態での、以降の説明では32分割した場合の例を説明する。
【0040】
図1は、高周波のPWM信号をもとに、外付けコイル101を介して生成される駆動信号をシミュレーションした波形である。
【0041】
図1において、40は駆動信号を示し、41はUSM供給信号を示す。USM供給信号41に示すようにほぼ正弦波が生成され、超音波モータに供給される。USM供給信号として、正弦波が供給されることにより、超音波モータは電気共振し、電気共振が機械共振に変換され、90度位相が異なるA相供給信号と、B相供給信号を超音波モータに供給することにより、回転運動が本実施形態において可能となる。
【0042】
図1においては、図13に示した外付けコイル101の値を10uHにしてシミュレーションした。従来例では、図16に示したように、コイルを小さくするとUSM供給信号に歪が生じていた。しかしながら、本実施形態においては、図1に示すようにほぼ正弦波が生成可能となり、図16に示したような波形歪がなく、従来例における課題を解決している。
【0043】
図5及び図6は、従来技術の方形波駆動における電流と、本実施形態における駆動方法での電流を示す。横軸が周波数で、縦軸が電流である。
【0044】
図5において、60は方形波駆動で、56uHのコイルを用いた際の電流を示す。図14で示した電流カーブと同じく、58.76KHzに電流のピークがある。
【0045】
61は本実施形態における駆動方法で、10uHのコイルを用いた際の電流を示す。
139KHzに電流のピークがある。
【0046】
図6は、図5の電流カーブを駆動周波数範囲(応答周波数範囲)36.7KHzから44KHzの部分を拡大して表示した電流カーブである。駆動周波数上限の44KHzにおいて、従来方式の方形波駆動では、62に示すように約0.47Aであったが、本実施形態を用いた駆動方式によれば、約0.23Aとなり半減している。
【0047】
本実施形態では、低速駆動時、駆動信号の周波数が高周波(図6の例では44KHz)になっても、電流の上昇が少なくなり、本発明の目的を達成している。
【0048】
従来技術の課題として図16と共に説明したように、従来技術の方形波駆動においては、外付けコイルの値を小さくすると、波形に歪みが生じる不具合があった。方形波駆動による、駆動周波数が外部共振周波数の1/2よりも小さい周波数にすると、USM供給信号がひずみ始める。このため、外部共振周波数が、駆動周波数の最小周波数の2倍以下になるよう、外付けコイル(図13の101)を設定する必要があった。
【0049】
なお、従来技術の一例によれば、外部共振周波数は図13に図示したコイル101とコンデンサ102での共振周波数であり、58.76KHzである。
【0050】
また、従来技術の一例によれば、図14に示したように駆動周波数範囲は、36.7KHzから44KHzであり、最小周波数は、36.7KHzである。つまり、58.76KHz<36.7KHz×2を満足している。
【0051】
本実施形態においては、外付けコイルを小さくしても従来技術による方形波駆動のように波形歪みが発生しない。言い換えれば、駆動周波数範囲の最小周波数の2倍以上に外部共振周波数を設定しても良い。このため本実施形態によれば、外付けコイルを小さく10uHにして、外部共振周波数を139KHzとしている。つまり、139KHz>36.7KHz×2となっている。
【0052】
図3は、第1の実施形態における、超音波モータの速度制御装置のブロック図を示す。図3において、10は電源回路であり、各制御部のロジック回路への3.3Vなどの電源を供給すると共に、A相のブリッジ回路16,B相のブリッジ回路23にモータ駆動用の電圧を供給する。
【0053】
11はクロックパルスジェネレータ(CPG)であり、各制御部へ処理タイミングの基本タイミングとなるクロックパルスを供給する。12はパラメータ設定部であり、外部装置から受け取る目標位置情報に基づき、加速時間、減速時間、定速時の速度などを求め、PID制御部13に供給する。
【0054】
PID制御部13は、パラメータ設定部12からのパラメータと、速度検出部21からの速度情報に基づき、駆動周期を求める制御部である。PID制御部13は、速度検出部21からの速度情報が、目標とする速度よりも低いと、駆動周期を長くし、駆動周波数を低くするように制御する。また、目標とする速度より高いと、駆動周期(最大パルス幅)を短くし、駆動周波数を高くするように制御する。
【0055】
ここでPID制御部13が求める駆動周期は、従来技術で説明した図14の駆動周波数範囲(一例では、36.7KHzから44KHz)の範囲内で、求める周期である。
【0056】
例えば、駆動周波数が、36.7KHzである場合、PID制御部13が求める駆動周期は1/36.7KHz=27.25uSとなる。周期分割部14は、PID制御部13が求めた駆動周期を細かく分割して、高周波にする処理部である。
【0057】
本実施形態では、駆動周期を周期分割部14で、32分割するようにしており、例えばPID制御部13が求めた駆動周期が、27.25uSの場合は、27.25uS÷32=0.851uSとなる。
【0058】
PWM制御部15は、22のルックアップテーブル(LUT)に前もって書き込まれたデューティデータに基づき、細分化されたPWM信号を生成する制御部である。コイルに供給するA相のブリッジ回路16,B相のブリッジ回路23出力信号の、駆動信号と区別するため、PWM制御部15からの出力をPWM信号と記載し、以降説明する。
【0059】
16はA相ブリッジ回路であり、PWM信号を電流増幅して駆動信号を出力し、コイル17を介して超音波モータのA相のピエゾ素子19に通電する。23はB相ブリッジ回路であり、PWM信号を電流増幅して駆動信号を出力し、コイル18を介して超音波モータのB相のピエゾ素子24に通電する。
【0060】
超音波モータのA相のピエゾ素子19および、超音波モータのB相のピエゾ素子24に通電されるUSM供給信号は、図1の41に示すようにPWM信号を積分した正弦波となる。また、超音波モータのB相のピエゾ素子24に通電されるB相供給信号は、A相のピエゾ素子19に通電されるA相供給信号と比べ、90度位相が遅れたB相供給信号となるよう、PWM制御部15で制御する。
【0061】
20はエンコーダであり、超音波モータの回転に応じて、エンコーダパルスを発生する。速度が遅いと、エンコーダパルスの周期が長くなり、回転速度が速いと、エンコーダパルスの周期が短くなる。
【0062】
速度検出部21は、エンコーダパルスをもとに、速度を算出する回路である。PWM制御部15の処理および、A相のブリッジ回路16,B相のブリッジ回路23の動作を図2のタイミング図、および図4のブリッジ回路図と共に説明する。
【0063】
図4のブリッジ回路図において、図3と同じブロックについては、同一番号を記載して説明する。図2のタイミング図において、30はコイル17および18を介して接続されている19の超音波モータに供給されるUSM供給信号を示す。30の正弦波の周期31は、PID制御部13が求めた周期である。
【0064】
駆動周波数が、例えば36.7KHzである場合は、30の正弦波の周期31は27.25uSになる。
【0065】
信号32はPWM制御部15が生成するPWM信号である。LUT22のデータに応じて、パルス幅を決定、変更する。32のPWM信号の1周期(図中34)は、周期分割部14で求めたPWM信号の周期(最大パルス幅)である。
【0066】
PWM信号32のデューティは、正弦波30の電圧レベルに比例するよう、22のLUTに記憶されている。電圧レベルが低いときは、デューティは低くしON時間を短く、OFF時間を長く設定している。電圧レベルが高いときは、デューティは高くしON時間を長く、OFF時間を短く設定している。
【0067】
図4は、図3のA相ブリッジ回路16の詳細を示したブリッジ回路図である。B相ブリッジ回路23も同様の回路である。本実施形態では、図4に示すようにハーフブリッジで駆動信号を生成している。
【0068】
図2のPWM信号32を、電流増幅し、19の超音波モータのA相に通電するのが、A相ブリッジ回路16である。図2に示すPWM信号32をもとに、高周波の周波数信号を生成する本実施形態における周波数信号生成手段であるFET50及び52を制御する。
【0069】
PWM信号32がハイレベルのときは、FET50をON、FET52をOFFにする。FET50をON状態にすることにより、コイル17を介して電流が、FET50から流れ、電極間容量であるコンデンサ54に充電する。
【0070】
図1のシミュレーションで、USM供給信号の電位が上昇している部分である。PWM信号32がローレベルのときは、FET50をOFF、FET52をONにする。FET52をON状態にすることにより、電極間容量であるコンデンサ54にためられた電荷が、ローレベルのパルス幅に応じて放電する。
【0071】
このように制御することで、図2に図示した正弦波30をUSM供給信号として生成可能となり、正弦波を19のUSM_A相(A相のピエゾ素子)に供給可能となる。
【0072】
以上、本実施形態につき説明した。本実施形態では、駆動信号を高周波のPWM信号をもとに生成し、コイルに供給することにより、超音波モータに供給する正弦波を生成することが可能となる。
【0073】
また、高周波のPWM信号を駆動信号とすることにより、外付けコイルの定数を小さくでき、低速駆動時の電流を低減することが可能となる。
【0074】
なお、本実施形態によれば、周期分割部14にて、駆動周期を32分割しているが、48分割や、64分割のようにもっと細かく分割しても良い。あるいは、1MHzなどの高周波を重畳させ、パルス数を増減する方法で、高周波を生成しても良い。
【0075】
また、本実施形態では、PWM制御部15で、LUT22を参照して、パルスデューティを設定する方法を用いているが、正弦波の角度ごとの電圧を計算して、パルスデューティを設定する方法を用いてもよい。
【0076】
(第2の実施形態)
以下、本発明を実施した第2の実施形態を図7および図8と共に説明する。本実施形態は、第1の実施形態において、図4で説明したハーフブリッジ回路をフルブリッジ回路に変更した実施形態である。
【0077】
図8において、図4に示したブリッジ回路と同一素子については、同一番号を記載し説明する。同様に図8において、図2と同一部分については、同一番号を記載して説明する。
【0078】
図7で38は、36の期間、PWM制御部15から出力されるPWM信号であり、図8図示のFET50からFET53に電流を流し、外付けコイル17を介して生成される駆動信号を、プラス電位にするPWM信号である。
【0079】
図7の33は、37の期間、PWM制御部15から出力されるPWM信号であり、図8図示のFET51からFET52に電流を流し、外付けコイル17を介して生成される駆動信号を、マイナス電位にするPWM信号である。
【0080】
図8のフルブリッジ回路につき説明する。図7の36の期間、PWM信号38がハイレベルのときは、FET50、53をON、FET51、52をOFFにする。FET50,53をON状態にすることにより、コイル17を介して電流が、FET50から流れ、電極間容量であるコンデンサ54がプラス電位に充電される。
【0081】
PWM信号38がローレベルのときは、FET50,51をOFF、FET52,53をONにする。FET52をON状態にすることにより、電極間容量であるコンデンサ54にためられた電荷が、ローレベルのパルス幅に応じて放電する。
【0082】
PWM信号38により、駆動信号30の、図7に図示した35の中点電位よりも高い電位の部分が生成される。図7の37の期間、PWM信号33がハイレベルのときは、FET51、52をON、FET50、53をOFFにする。FET51、52をON状態にすることにより、A相のピエゾ素子19およびコイル17を介して電流が、FET51から流れ、電極間容量であるコンデンサ54がマイナス電位に充電される。
【0083】
PWM信号33がローレベルのときは、FET50,51をOFF、FET52,53をONにする。FET52をON状態にすることにより、電極間容量であるコンデンサ54にためられた電荷が、ローレベルのパルス幅に応じて放電する。PWM信号33により、駆動信号30の、図7に図示した35の中点電位よりも低い電位の部分が生成される。
【0084】
このように制御することで、外付けコイル17を介して生成される駆動信号は、図7に図示した35を中点としてプラスとマイナスにスイングする駆動信号を生成可能となる。
【0085】
第1の実施形態に比べ、電圧スイング幅が倍となる。なお、本実施形態では、PWM信号がローレベルのときは、FET52,53をONにし、電極間容量であるコンデンサ54にためられた電荷を放電するように制御しているが、放電しないように制御しても良い。すなわち、PWM信号がローレベルのとき、すべてのFET(51,52,53,54)をOFFにするよう制御しても良い。
【0086】
あるいは、駆動信号30の電圧を上昇させる期間:42,44の期間だけ、PWM信号がローレベルのとき、すべてのFET(51,52,53,54)をOFFにするよう制御しても良い。
【0087】
同様に、PWM信号がハイレベルのときは、FET50,53または51,52をONにし、電極間容量であるコンデンサ54に電荷を充電するように制御しているが、決められた区間充電しないように制御しても良い。すなわち、駆動信号30の電圧を下降させる期間:43,45の期間だけ、PWM信号がハイレベルのとき、すべてのFET(51,52,53,54)をOFFにするよう制御しても良い。
【0088】
(第3の実施形態)
以下、本発明を実施した第3の実施形態を説明する。本実施形態は、駆動周波数により、PWM信号の最大デューティを制御する回路を追加し、低速時における電流をより低減した実施形態である。
【0089】
図11は、本実施形態におけるブロック図を示す。第1の実施形態におけるブロック図、と同じブロックについては、同一番号を記載し、説明を省略する。
【0090】
図11において、最大デューティ設定部73はPID制御部13が求める駆動周期に基づき、最大デューティを設定する。PWM制御部15において、PWM信号のデューティを設定する際、LUT22からのデータに基づき設定する。
【0091】
本実施形態では、LUT22のデータにより、そのままPWMデューティを設定するのではなく、最大デューティ設定部73にて設定された最大デューティを、乗算器74にて掛け合わせる。これにより、PID制御部13で求めた駆動周期により、PWM信号のパルス幅を制御することが可能となる。
【0092】
図12はPWM信号の、最大デューティに応じたイメージを示す。80は最大デューティ設定部73にて設定された最大デューティが100%の場合のPWM信号である。81は最大デューティが75%、82は最大デューティが50%のPWM信号を示す。PWM信号のデューティが減少することにより、外部コイル17および18を経由して超音波モータに供給される駆動信号の電圧は低下する。
【0093】
USM供給信号の波形を図9に示す。図9において、70は最大デューティが100%のときのUSM供給信号、71は最大デューティが75%のときのUSM供給信号、72は最大デューティが50%のときのUSM供給信号を示す。最大デューティにより、USM供給信号の電圧が低下している。
【0094】
図10は、周波数に応じた超音波モータ内にある、ピエゾ素子の電流カーブを示す。図10において、図5と同じ電流カーブは同一番号を記載している。第1の実施形態では、PWM信号を外部コイルに供給することにより、63に示すように電流が減少した。
【0095】
本実施形態では、周波数に応じて、PWM信号の最大デューティを変更することで、75に示すように、特に高周波になるほど電流の減少を図ることが可能となる。
【0096】
以上、第3の実施の形態につき説明した。本実施形態では、PWM信号の最大デューティを規定することにより、USM供給信号の電圧を低下させることが可能となり、第1の実施形態以上に、低速時における電流を低下することが可能となる。
【0097】
なお、本発明の方法は、コンピュータ等にインストールしたプログラムによっても実現できることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるUSM供給信号を示すタイミング図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における、PWM信号及びUSM供給信号を示すイメージ図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における、超音波モータの速度制御装置のブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるブリッジ回路の回路図である。
【図5】本発明の第1の実施形態での、周波数(0から160KHz)と電流の関係を示したグラフに係る図である。
【図6】本発明の第1の実施形態での、周波数(36Kから44KHz)と電流の関係を示すグラフに係る図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における、PWM信号及びUSM供給信号を示すイメージ図である。
【図8】本発明の第2の実施形態におけるブリッジ回路の回路図である。
【図9】本発明の第3の実施形態における、USM供給信号の電圧レベルを示したイメージ図である。
【図10】本発明の第3の実施形態での、周波数(36Kから44KHz)と電流の関係を示すグラフに係る図である。
【図11】本発明の第3の実施形態における、超音波モータの速度制御装置のブロック図である。
【図12】本発明の第3の実施形態における、PWM信号を示したイメージ図である。
【図13】従来技術における、超音波モータに使用されているピエゾ素子等価回路を示した図である。
【図14】従来技術での、周波数(34Kから69KHz)と電流の関係を示したグラフに係る図である。
【図15】従来技術での駆動信号とUSM供給信号の関係を示したタイミング図である。
【図16】従来技術での駆動信号とUSM供給信号の関係を示したタイミング図である。
【図17】従来技術での駆動信号とUSM供給信号の関係を示したタイミング図である。
【図18】従来技術での、周波数(36Kから44KHz)と電流の関係を示したグラフに係る図である。
【符号の説明】
【0099】
10 電源回路
11 クロックパルスジェネレータ(CPG)
12 パラメータ設定部
13 PID制御部
14 周期分割部
15 PWM制御部
16 A相ブリッジ回路
17,18 コイル
19 A相のピエゾ素子
20 エンコーダ
21 速度検出部
22 LUT
23 B相ブリッジ回路
24 B相のピエゾ素子
50〜53 FET
54 コンデンサ
73 最大デューティ設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波モータの応答周波数範囲の周波数信号を決定するPID制御手段と、
前記周波数信号よりも高周波である他の周波数信号を生成する周波数信号生成手段と、
前記他の周波数信号をもとに、パルス幅を制御したPWM信号を生成するPWM制御手段とを具備したことを特徴とする超音波モータの速度制御装置。
【請求項2】
前記PID制御手段が生成する前記周波数信号に基づき、PWM信号の最大パルス幅を決定する最大デューティ設定手段を設けることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータの速度制御装置。
【請求項3】
超音波モータの応答周波数範囲の周波数信号を決定するPID制御工程と、
前記周波数信号よりも高周波である他の周波数信号を生成する周波数信号生成工程と、
前記他の周波数信号をもとに、パルス幅を制御したPWM信号を生成するPWM制御工程とを具備したことを特徴とする超音波モータの速度制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法の各工程をコンピュータにて実施させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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