説明

超音波モータの駆動装置

【課題】駆動波形生成部が生成する駆動波形の周期を詳細に調整することが可能な超音波モータの駆動装置を提供する。
【解決手段】この超音波モータ1の駆動装置2は、圧電素子11a、11b、11cおよび11dを含む超音波モータ1の圧電素子11a〜11dを駆動する信号を生成する矩形波形生成器22、LPF23a、23b、および、増幅器24a、24bを備え、矩形波形生成器22は、周期の異なる複数の矩形波形221および矩形波形222を含む矩形波形を生成可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波モータの駆動装置に関し、特に、駆動波形生成部を備える超音波モータの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動波形生成部を備える超音波モータの駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1の超音波モータの駆動装置では、矩形波発生回路(駆動波形生成部)により生成された矩形波形(電圧)が、ローパスフィルタ、増幅器などを介して超音波モータに印加されるように構成されている。また、矩形波発生回路は、制御部からの指示によって、所望の周期を有する矩形波を生成するように構成されている。なお、矩形波発生回路が生成する矩形波の周期の調整は、制御部のクロックの1クロックの期間を単位として調整されていると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−301563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の超音波モータでは、矩形波発生回路が生成する矩形波の周期の調整は、制御部の1クロックの期間を単位として調整されていると考えられるため、1クロックより短い時間間隔での矩形波の周期の調整が困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、駆動波形生成部が生成する駆動波形の周期を詳細に調整することが可能な超音波モータの駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の一の局面による超音波モータの駆動装置は、圧電素子を含む超音波モータの圧電素子を駆動する信号を生成する駆動波形生成部を備え、駆動波形生成部は、周期の異なる複数の駆動波形を含む駆動波形を生成可能に構成されている。
【0008】
この一の局面による超音波モータの駆動装置では、上記のように、駆動波形生成部を、周期の異なる複数の駆動波形を含む駆動波形を生成可能に構成することによって、周期の異なる複数の駆動波形からなる駆動波形を1組の駆動波形とした場合、駆動波形の平均の周期は、複数の駆動波形の平均値と考えることができる。これにより、制御部が調整可能な周期の最小値(たとえば1クロック)よりも小さい間隔で駆動波形の周期を調整することができる。その結果、駆動波形生成部が生成する駆動波形の周期を詳細に調整することができる。なお、駆動波形生成部が生成可能な駆動波形の周期は、制御部のクロックの周期を小さくする(周波数を大きくする)ことにより、詳細に調整することが可能である一方、高速に動作させる回路が必要となる分、コストが上昇する。一方、上記のように、駆動波形生成部を、周期の異なる複数の駆動波形を含む駆動波形を生成可能に構成することによって、低速で動作する回路により駆動波形生成部が生成する駆動波形の周期を詳細に調整することができるので、装置のコストの上昇を抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による超音波モータの駆動装置において、好ましくは、駆動波形生成部は、周期の異なる複数の駆動波形を1組とした駆動波形を繰り返し生成可能に構成されている。このように構成すれば、周期の異なる複数の駆動波形を1組とした駆動波形が繰り返し生成されるので、周期の異なる複数の駆動波形を1組とした駆動波形によって、超音波モータの圧電素子を連続的に駆動することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、周期の異なる複数の駆動波形は、第1の駆動波形と第1の駆動波形と異なる周期を有する第2の駆動波形とを含み、駆動波形生成部は、1つの第1の駆動波形と1つの第2の駆動波形とを1組とした駆動波形を繰り返し生成可能に構成されている。このように構成すれば、1つの第1の駆動波形と1つの第2の駆動波形とを1組とした場合の駆動波形の平均の周期は、第1の駆動波形の周期と第2の駆動波形の周期との平均値になる。これにより、制御部が、第1の駆動波形の周期と第2の駆動波形の周期との間の周期を有する駆動波形を生成するように制御できない場合でも、擬似的に第1の駆動波形の周期と第2の駆動波形の周期との中間(平均値)の周期によって超音波モータの圧電素子を駆動することができる。
【0011】
上記周期の異なる複数の駆動波形を1組とした駆動波形を繰り返し生成可能に構成されている超音波モータの駆動装置において、好ましくは、周期の異なる複数の駆動波形は、第1の駆動波形と第1の駆動波形と異なる周期を有する第2の駆動波形とを含み、駆動波形生成部は、1つまたは複数の第2の駆動波形と、1つまたは複数の第1の駆動波形とを1組とした駆動波形を繰り返し生成可能に構成されている。このように構成すれば、たとえば複数の第2の駆動波形と1つの第1の駆動波形とを1組とした場合の駆動波形の平均の周期は、第1の駆動波形の周期と第2の駆動波形の周期との間でかつ第2の駆動波形の周期寄りの周期になる。これにより、制御部が、第1の駆動波形の周期と第2の駆動波形の周期との間の周期を有する駆動波形を生成するように制御できない場合でも、擬似的に第1の駆動波形の周期と第2の駆動波形の周期との間の平均値以外の周期にも微調整することができる。その結果、より細かく調整された周期によって超音波モータの圧電素子を駆動することができる。
【0012】
上記周期の異なる複数の駆動波形が第1の駆動波形と第2の駆動波形とを含む超音波モータの駆動装置において、好ましくは、周期の異なる複数の駆動波形は、矩形波形を含み、第1の駆動波形の周期は、第2の駆動波形の周期よりも制御部のクロックの1クロック分、または、1クロックの整数倍分、長くなるように構成されている。このように構成すれば、たとえば1つの第1の駆動波形と1つの第2の駆動波形とを1組とし、第1の駆動波形の周期を第2の駆動波形の周期よりも1クロック分長くした場合の駆動波形の平均の周期は、第1の駆動波形の周期よりも1/2クロック大きい周期になる。これにより、制御部が、1クロックの時間間隔でしか駆動波形の周期を調整できない場合でも、1クロックよりも小さい時間間隔で駆動波形の周期を調整することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、第1の駆動波形と第2の駆動波形とを1組とした駆動波形を生成することにより、第1の駆動波形の周期と第2の駆動波形の周期との間で、かつ、1クロックよりも小さい時間間隔で駆動波形の周期を調整可能に構成されている。このように構成すれば、たとえば駆動波形の周期を詳細に調整するためにクロックの周波数を変化させる場合と異なり、容易に、1クロックよりも小さい時間間隔で駆動波形の周期を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態による超音波モータの駆動装置のブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態による超音波モータの駆動装置の矩形波形生成器が生成する矩形波形の波形図である。
【図3】比較例による超音波モータの駆動装置の矩形波形生成器が生成する矩形波形の波形図である。
【図4】周波数に対する超音波モータの回転速度について行ったシミュレーションの結果を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態による超音波モータの駆動装置が生成する矩形波形の波形図である。
【図6】周波数に対する超音波モータの回転速度について行ったシミュレーションにおける矩形波形生成器が生成する矩形波形の条件を示す図である。
【図7】図6に示す条件3の場合のLPFから出力される正弦波形を示す図である。
【図8】図6に示す条件の矩形波形を超音波モータに印加した場合の周波数に対する超音波モータの回転速度について行ったシミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1を参照して、本発明の第1実施形態による超音波モータ1の駆動装置2について説明する。
【0017】
図1に示すように、駆動装置2は、超音波モータ1に接続されている。駆動装置2は、制御部21と、矩形波形生成器22と、ローパスフィルタ(LPF)23aおよび23bと、増幅器24aおよび24bとを含んでいる。なお、矩形波形生成器22、LPF23aおよび23b、増幅器24aおよび24bは、本発明の「駆動波形生成部」の一例である。
【0018】
制御部21は、矩形波形生成器22に接続されている。制御部21は、矩形波形生成器22によって生成される矩形波形を制御するように構成されている。また、矩形波形生成器22は、LPF23aおよびLPF23bに接続されている。矩形波形生成器22は、矩形波形(電圧)を生成するとともに、生成した矩形波形の位相を異ならせてLPF23aおよびLPF23bに出力する機能を有する。ここで、第1実施形態では、矩形波形生成器22は、周期の異なる複数の矩形波形を含む矩形波形を生成可能に構成されている。また、矩形波形生成器22は、周期の異なる複数の矩形波形を1組とした矩形波形を繰り返し生成可能に構成されている。
【0019】
LPF23aおよびLPF23bは、それぞれ、増幅器24aおよび増幅器24bに接続されている。また、LPF23aおよびLPF23bは、所定の周波数以上の周波数を有する矩形波形を遮断する機能を有する。また、LPF23aおよびLPF23bに入力された矩形波形は、略正弦波形として出力される。LPF23aおよびLPF23bから出力された略正弦波形(電圧)は、それぞれ、増幅器24aおよび増幅器24bに入力されるとともに増幅されて出力されるように構成されている。増幅器24aによって増幅された電圧(たとえばcos(t)波)は、超音波モータ1の圧電素子11aに入力されるとともに、圧電素子11aに入力された電圧の正負を反転させた電圧(−cos(t)波)が、圧電素子11cに入力されるように構成されている。また、増幅器24bによって増幅された電圧(sin(t)波)は、圧電素子11bに入力されるとともに、圧電素子11bに入力された電圧の正負を反転させた電圧(−sin(t)波)が、圧電素子11dに入力されるように構成されている。
【0020】
次に、図2を参照して、第1実施形態による矩形波形生成器22の生成する矩形波形について説明する。
【0021】
図2に示すように、第1実施形態では、矩形波形生成器22は、制御部21のクロックのTクロック(Tは自然数)の周期を有する矩形波形221と、T+1クロックの周期を有する矩形波形222とを交互に生成する。つまり、矩形波形生成器22は、Tクロックの周期を有する矩形波形221と、T+1クロックの周期を有する矩形波形222とを1組として、1組の矩形波形を繰り返して生成する。これにより、Tクロックの周期を有する矩形波形221と、T+1クロックの周期を有する矩形波形222とを1組とした場合の矩形波形の平均の周期は、T+1/2クロックになる。なお、矩形波形221は、本発明の「第1の駆動波形」の一例である。また、矩形波形222は、本発明の「第2の駆動波形」の一例である。
【0022】
次に、図3および図4を参照して、超音波モータ1の周波数に対する回転速度について行ったシミュレーションについて説明する。なお、図3に示すように、比較例による矩形波形生成器22は、制御部21のクロックのTクロック分の長さの周期を有する矩形波形221が連続して生成するように構成されている。また、周期の逆数(1/周期)である周波数に対する超音波モータ1の回転速度についてシミュレーションを行った。
【0023】
まず、超音波モータ1の圧電素子11a〜11dに印加する電圧の周波数を細かな刻みで設定可能な理想的な場合についてシミュレーションを行った。その結果、図4の1点鎖線で示すように、周波数が83kHzから超音波モータ1の回転速度は、徐々に大きくなり、84kHzを超えてから急激に大きくなった。そして、84.29kHzの周波数において、回転速度が最大(413.05rpm)になった。その後、回転速度は、周波数の増加とともに、徐々に減少した。
【0024】
次に、矩形波形生成器22が図3の比較例に示されるような単一の周期(周波数)を有する矩形波形を生成する場合についてシミュレーションを行った。なお、制御部21が調整可能な周波数は、83.6kHz、85.5kHzおよび87.5kHzの3つであるとした。その結果、図4の点線(三角)で示すように、85.5kHzの周波数において、最大の回転速度(224.7rpm)が得られた。一方、比較例では、上記理想的な場合(図4の1点鎖線)と異なり、最大の回転速度(413.05rpm)が得られる周波数である84.29kHz近傍に制御部21が周波数を調整できないため、比較例による最大の回転速度は、理想的な場合の約54.4%(=224.7/413.05×100)になった。
【0025】
次に、矩形波形生成器22が図2に示されるような複数の周期を有する矩形波形を生成する場合(第1実施形態)についてシミュレーションを行った。つまり、周波数の異なる複数の矩形波形が矩形波形生成器22より出力される。なお、第1実施形態では、制御部21が調整可能な周波数は、上記比較例と同様に、83.6kHz、85.5kHzおよび87.5kHzの3つとした。そして、83.6kHzの周波数を有する矩形波形と、85.5kHzの周波数を有する矩形波形とを交互に生成する場合(平均84.55kHzの周波数を有する矩形波形)と、85.5kHzの周波数を有する矩形波形と、87.5kHzの周波数を有する矩形波形とを交互に生成する場合(平均86.5kHzの周波数を有する矩形波形)とについてシミュレーションを行った。その結果、図4の実線(四角)で示すように、平均の周波数が84.55kHzである場合において、最大の回転速度(346.1rpm)が得られた。第1実施形態では、矩形波形生成器22が、2つの異なる周期(周波数)を有する矩形波形を交互に生成するので、上記理想的な場合(図4の1点鎖線)の最大の回転速度(413.05rpm)が得られる周波数である84.29kHz近傍に平均の周波数を設定できる。これにより、第1実施形態による最大の回転速度は、理想的な場合の約83.8%(=346.1/413.05×100)になった。
【0026】
第1実施形態では、上記のように、矩形波形生成器22を、周期の異なる複数の矩形波形(矩形波形221、222)を含む矩形波形を生成可能に構成することによって、周期の異なる複数の矩形波形からなる矩形波形を1組の矩形波形とした場合、矩形波形の平均の周期は、複数の矩形波形の平均値と考えることができる。これにより、制御部21が調整可能な周期の最小値(たとえば1クロック)よりも小さい間隔で矩形波形の周期を調整することができる。その結果、矩形波形生成器22が生成する矩形波形の周期を詳細に調整することができる。なお、矩形波形生成器22が生成可能な矩形波形の周期は、制御部21のクロックの周期を小さくする(周波数を大きくする)ことにより、詳細に調整することが可能である一方、高速に動作させる回路が必要となる分、コストが上昇する。一方、上記のように、矩形波形生成器22を、周期の異なる複数の矩形波形を含む矩形波形を生成可能に構成することによって、低速で動作する回路により矩形波形生成器22が生成する矩形波形の周期を詳細に調整することができるので、装置のコストの上昇を抑制することができる。
【0027】
また、第1実施形態では、上記のように、矩形波形生成器22を、周期の異なる複数の矩形波形(矩形波形221、222)を1組とした矩形波形を繰り返し生成可能に構成することによって、周期の異なる複数の矩形波形を1組とした矩形波形が繰り返し生成されるので、周期の異なる複数の矩形波形を1組とした矩形波形によって、超音波モータ1の圧電素子11a〜11dを連続的に駆動することができる。
【0028】
また、第1実施形態では、上記のように、周期の異なる複数の矩形波形が、矩形波形221と矩形波形221と異なる周期を有する矩形波形222とを含み、矩形波形生成器22を、1つの矩形波形221と1つの矩形波形222とを1組とした矩形波形を繰り返し生成可能に構成する。これにより、1つの矩形波形221と1つの矩形波形222とを1組とした場合の矩形波形の平均の周期は、矩形波形221の周期(Tクロック)と矩形波形222の周期(T+1クロック)との平均値(T+1/2クロック)になる。その結果、制御部21が、矩形波形221の周期と矩形波形222の周期との間の周期を有する矩形波形を生成するように制御できない場合でも、擬似的に矩形波形221の周期と矩形波形222の周期との中間(平均値)の周期によって超音波モータ1の圧電素子11a〜11dを駆動することができる。
【0029】
また、第1実施形態では、上記のように、矩形波形222の周期を、矩形波形221の周期よりも制御部21のクロックの1クロック分、長くなるように構成することによって、1つの矩形波形221と1つの矩形波形222とを1組とした場合の矩形波形の平均の周期は、矩形波形221の周期よりも1/2クロック大きい周期になる。これにより、制御部21が、1クロックの時間間隔でしか矩形波形の周期を調整できない場合でも、1クロックよりも小さい時間間隔で矩形波形の周期を調整することができる。
【0030】
また、第1実施形態では、上記のように、矩形波形221と矩形波形222とを1組とした矩形波形を繰り返し生成することにより、矩形波形221の周期と矩形波形222の周期との間で、かつ、1クロックよりも小さい時間間隔で矩形波形の周期を調整可能に構成することによって、たとえば矩形波形の周期を詳細に調整するためにクロックの周波数を変化させる場合と異なり、容易に、1クロックよりも小さい時間間隔で矩形波形の周期を調整することができる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記1つの矩形波形221と1つの矩形波形222とが交互に生成される第1実施形態と異なり、複数の矩形波形222と1つの矩形波形221とが1組として生成される。
【0032】
図5に示すように、第2実施形態では、矩形波形生成器22は、複数(図5では2つ)の矩形波形222と1つの矩形波形221とを1組として生成するように構成されている。また、矩形波形生成器22は、複数(図5では2つ)の矩形波形222と1つの矩形波形221とを1組とした矩形波形を繰り返し生成するように構成されている。図5に示すように、Tクロックの周期を有する1つの矩形波形221と、T+1クロックの周期を有する2つの矩形波形222とを1組とした場合では、平均の周期は、T+2/3クロックとなる。つまり、Tクロックの周期を有する1つの矩形波形221と、T+1クロックの周期を有する2つの矩形波形222とを1組とした場合では、平均の周期は、矩形波形222の周期に近くなる。すなわち、平均の周期は、1組の矩形波形のうち、生成される数の大きい矩形波形の周期寄りになる。
【0033】
次に、図6〜図8を参照して、矩形波形222の数を異ならせた場合の超音波モータ1の周波数に対する回転速度について行ったシミュレーションについて説明する。
【0034】
まず、超音波モータ1の圧電素子11a〜11dを駆動する電圧の波形(矩形波形)の調整について説明する。図6に示すように、条件1では、矩形波形生成器22は、85.9kHzの周波数を有する矩形波形と、85.1kHzの周波数を有する1つの矩形波形とを1回ずつ交互に生成した。つまり、条件1では、矩形波形の周波数の平均値は、85.5kHzとなる。また、条件2では、矩形波形生成器22は、85.9kHzの周波数を有する矩形波形を1回生成した後に、85.1kHzの周波数を有する矩形波形を3回生成した。つまり、条件2では、矩形波形の周波数の平均値は、85.3kHzとなる。また、条件3では、矩形波形生成器22は、85.9kHzの周波数を有する矩形波形を1回生成した後に、85.1kHzの周波数を有する矩形波形を4回生成した。つまり、条件3では、矩形波形の周波数の平均値は、85.26kHzとなる。また、条件4では、矩形波形生成器22は、85.9kHzの周波数を有する矩形波形を1回生成した後に、85.1kHzの周波数を有する矩形波形を9回生成した。つまり、条件4では、矩形波形の周波数の平均値は、85.18kHzとなる。なお、図6に示すように、85.1kHzの周波数の矩形波形を多く生成することにより、矩形波形の周波数の平均値は、85.1kHzに近づく。
【0035】
そして、図7に示すように、たとえば条件2では、1つの85.9kHzの周波数を有する電圧と、3つの85.1kHzの周波数を有する電圧とが1組として超音波モータ1の圧電素子11a〜11d(図1参照)に印加される。なお、図7では、LPF23aおよび23bによって、矩形波形が略正弦波形に変換された後の波形を示している。
【0036】
次に、上記条件1〜条件4の場合おいて生成された矩形波形(電圧)によって、超音波モータ1の圧電素子11a〜11dを駆動するシミュレーションを行った。また、比較例として、周波数が85.1kHz、85.18kHz、85.26kHz、85.3kHz、85.5kHzおよび85.9kHzであり、かつ、単一の周波数(周期)からなる電圧によって、超音波モータ1の圧電素子11a〜11dを駆動するシミュレーションを行った。その結果、図8の実線(四角)に示すように、条件4、条件3、条件2および条件1の順に周波数の平均値が小さくなるにしたがって徐々に超音波モータ1の回転速度が低下することが確認された。また、矩形波形生成器22が周期(周波数)の異なる複数の矩形波形を生成する場合(図8の実線(四角))の回転速度と、矩形波形生成器22が単一の周期(周波数)を生成する場合(図8の点線(ひし形))の回転速度とでは、矩形波形生成器22が周期(周波数)の異なる複数の矩形波形を生成する場合(図8の実線(四角))の回転速度が多少大きくなる一方、略同様の回転速度が得られることが確認された。つまり、周期(周波数)の異なる複数の矩形波形を合成した場合と、単一の周期を生成する場合とでは、同様の回転速度が得られることが確認された。
【0037】
第2実施形態では、上記のように、周期の異なる複数の矩形波形が、矩形波形221と矩形波形221と異なる周期を有する矩形波形222とを含み、矩形波形生成器22を、1つの矩形波形221と、複数の矩形波形222とを1組とした矩形波形を繰り返し生成可能に構成する。これにより、複数の矩形波形222と1つの矩形波形221とを1組とした場合の矩形波形の平均の周期は、矩形波形221の周期と矩形波形222の周期との間でかつ矩形波形222の周期寄りの周期になる。その結果、制御部21が、矩形波形221の周期と矩形波形222の周期との間の周期を有する矩形波形を生成するように制御できない場合でも、擬似的に矩形波形221の周期と矩形波形222の周期との間の平均値以外の周期にも微調整することができる。その結果、より細かく調整された周期によって超音波モータ1の圧電素子11a〜11dを駆動することができる。
【0038】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0039】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0040】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、矩形波形生成器が矩形波形を生成した後に、LPFによって矩形波形が略正弦波形に変換される例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、超音波モータの駆動装置が矩形波形を生成せずに、直接正弦波形(余弦波形)を生成するようにしてもよい。
【0041】
また、上記第1および第2実施形態では、矩形波形生成器が生成する2つの異なる周期(Tクロック、T+1クロック)を有する矩形波形の周期が1クロック分異なる例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、矩形波形生成器が生成する2つの異なる周期を有する矩形波形の周期が2クロック分以上異なるようにしてもよい。
【0042】
また、上記第1および第2実施形態では、2つの異なる周期を有する矩形波形が生成される例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、3つ以上の異なる周期を有する矩形波形が生成されてもよい。
【0043】
また、上記第1および第2実施形態では、複数の異なる周期を有する矩形波形を1組として、1組の矩形波形が繰り返し生成される例を示したが、本発明はこれに限らない。複数の異なる周期を有する矩形波形が組をなさずにばらばらに生成されるようにしてもよい。
【0044】
また、上記第2実施形態では、1つのTクロックの周期を有する矩形波形と、複数のT+1クロックの周期を有する矩形波形とが生成される例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、複数のTクロックの周期を有する矩形波形と、1つのT+1クロックの周期を有する矩形波形とが生成されるようにしてもよい。つまり、複数生成される矩形波形が、周期が短い方の矩形波形でもよいし、長い方の矩形波形でもよい。また、本発明では、複数のTクロックの周期を有する矩形波形と、複数のT+1クロックの周期を有する矩形波形とが生成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 超音波モータ
2 駆動装置
11a、11b、11c、11d 圧電素子
21 制御部
22 矩形波形生成器(駆動波形生成部)
23a、23b LPF(駆動波形生成部)
24a、24b 増幅器(駆動波形生成部)
221 矩形波形(第1の駆動波形)
222 矩形波形(第2の駆動波形)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を含む超音波モータの前記圧電素子を駆動する信号を生成する駆動波形生成部を備え、
前記駆動波形生成部は、周期の異なる複数の駆動波形を含む駆動波形を生成可能に構成されている、超音波モータの駆動装置。
【請求項2】
前記駆動波形生成部は、前記周期の異なる複数の駆動波形を1組とした駆動波形を繰り返し生成可能に構成されている、請求項1に記載の超音波モータの駆動装置。
【請求項3】
前記周期の異なる複数の駆動波形は、第1の駆動波形と前記第1の駆動波形と異なる周期を有する第2の駆動波形とを含み、
前記駆動波形生成部は、1つの前記第1の駆動波形と1つの前記第2の駆動波形とを1組とした駆動波形を繰り返し生成可能に構成されている、請求項2に記載の超音波モータの駆動装置。
【請求項4】
前記周期の異なる複数の駆動波形は、第1の駆動波形と前記第1の駆動波形と異なる周期を有する第2の駆動波形とを含み、
前記駆動波形生成部は、1つまたは複数の前記第2の駆動波形と、1つまたは複数の前記第1の駆動波形とを1組とした駆動波形を繰り返し生成可能に構成されている、請求項2に記載の超音波モータの駆動装置。
【請求項5】
前記周期の異なる複数の駆動波形は、矩形波形を含み、前記第2の駆動波形の周期は、前記第1の駆動波形の周期よりも制御部のクロックの1クロック分、または、1クロックの整数倍分、長くなるように構成されている、請求項3または4に記載の超音波モータの駆動装置。
【請求項6】
前記第1の駆動波形と前記第2の駆動波形とを1組とした駆動波形を生成することにより、前記第1の駆動波形の周期と前記第2の駆動波形の周期との間で、かつ、1クロックよりも小さい時間間隔で駆動波形の周期を調整可能に構成されている、請求項5に記載の超音波モータの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−254610(P2011−254610A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126421(P2010−126421)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】